(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/378 20110101AFI20220621BHJP
【FI】
H04N5/378
(21)【出願番号】P 2019010937
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 修
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正則
(72)【発明者】
【氏名】森下 玄
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-098895(JP,A)
【文献】特開平09-154029(JP,A)
【文献】特開2010-016656(JP,A)
【文献】特開2009-278169(JP,A)
【文献】特開平10-256884(JP,A)
【文献】特開2011-114785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30-5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光量に応じた輝度信号電圧を輝度信号線に出力する画素と、
第1参照電圧を第1参照電圧配線に出力し、第2参照電圧を第2参照電圧配線に出力し、所定のスルーレートのランプ信号をランプ信号線に出力し、前記ランプ信号と向きの異なる逆ランプ信号を逆ランプ信号線に出力する参照電圧生成回路と、
前記輝度信号電圧をAD変換するAD変換回路と、
を備え、
前記AD変換回路は、
前記輝度信号線に接続された第1入力端子と、第1キャパシタを介して、前記第1参照電圧配線、前記第2参照電圧配線及び前記ランプ信号線のそれぞれとオンオフ可能に接続されるとともに、第2キャパシタを介して前記第1参照電圧配線及び前記ランプ信号線のそれぞれとオンオフ可能に接続された第2入力端子と、を有するアンプを含むコンパレータと、
キャンセルキャパシタを含み、前記逆ランプ信号線を、前記キャンセルキャパシタを介して前記第1参照電圧配線及び前記第2参照電圧配線のそれぞれとオンオフ可能に接続されたランプ電流キャンセル回路と、
を有する固体撮像装置。
【請求項2】
前記画素は、フォトダイオードを含み、
前記フォトダイオードからの電荷が転送される前のDark電圧が前記輝度信号電圧として前記輝度信号線に出力された、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記アンプの前記第1入力端子と、前記アンプの第1出力端子と、がオン状態で接続され、
前記アンプの前記第2入力端子と、前記アンプの第2出力端子と、がオン状態で接続され、
前記第2入力端子は、前記第1キャパシタを介して前記第1参照電圧配線にオン状態で接続されるとともに、前記第2キャパシタを介して前記第1参照電圧にオン状態で接続される、
請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記第2入力端子は、前記第1キャパシタを介して前記ランプ信号線にオン状態で接続されるとともに、前記第2キャパシタを介して前記第1参照電圧配線にオン状態で接続され、
前記ランプ電流キャンセル回路は、前記逆ランプ信号線を、前記キャンセルキャパシタを介して前記第1参照電圧配線にオン状態で接続させた、
請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記画素は、フォトダイオードを含み、
前記フォトダイオードで光電変換された電荷の転送によるSignal電圧が前記輝度信号電圧として前記輝度信号線に出力された、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記第2入力端子は、前記第1キャパシタを介して前記第2参照電圧配線にオン状態で接続されるとともに、前記第2キャパシタを介して前記第1参照電圧にオン状態で接続される、
請求項5に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記輝度信号電圧が、前記第1参照電圧及び前記第2参照電圧の和の1/2よりも大きい場合には、
前記第2入力端子は、前記第1キャパシタを介して前記第2参照電圧配線にオン状態で接続されるとともに、前記第2キャパシタを介して前記ランプ信号線にオン状態で接続され、
前記ランプ電流キャンセル回路は、前記逆ランプ信号線を、前記キャンセルキャパシタを介して前記第2参照電圧配線にオン状態で接続させた、
請求項5に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記輝度信号電圧が、前記第1参照電圧及び前記第2参照電圧の和の1/2よりも小さい場合には、
前記第2入力端子は、前記第1キャパシタを介して前記ランプ信号線にオン状態で接続されるとともに、前記第2キャパシタを介して前記第1参照電圧配線にオン状態で接続され、
前記ランプ電流キャンセル回路は、前記逆ランプ信号線を、前記キャンセルキャパシタを介して前記第1参照電圧配線にオン状態で接続させた、
請求項5に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記第1キャパシタと前記第2キャパシタとは略同じ容量である、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記コンパレータは、
前記第2入力端子と、前記第1参照電圧配線及び前記第2参照電圧配線と、の間に接続させるキャパシタの数を調整して、前記第2入力端子に入力される前記第1参照電圧及び前記第2参照電圧の大きさを調整可能である、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記アンプは、第1アンプであり、
前記コンパレータは、第3キャパシタと、第4キャパシタと、第2アンプと、2値化回路と、をさらに備え、
前記第1アンプの第1出力端子は、前記第3キャパシタを介して前記第2アンプの一方の入力端子に接続され、
前記第1アンプの第2出力端子は、前記第4キャパシタを介して前記第2アンプの他方の入力端子に接続され、
前記第2アンプの出力端子は、前記2値化回路に接続された、
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記第2アンプと、前記2値化回路との間にさらに第3アンプが接続された、
請求項11に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記第2アンプの電源電圧は、前記第1アンプの電源電圧と異なる、
請求項11に記載の固体撮像装置。
【請求項14】
入射光量に応じた輝度信号電圧を輝度信号線に出力する画素と、
第1参照電圧を第1参照電圧配線に出力し、第2参照電圧を第2参照電圧配線に出力し、所定のスルーレートのランプ信号をランプ信号線に出力し、前記ランプ信号と向きの異なる逆ランプ信号を逆ランプ信号線に出力する参照電圧生成回路と、
前記輝度信号電圧をAD変換するAD変換回路と、
を備え、
前記AD変換回路は、
前記輝度信号線に接続された第1入力端子と、第1キャパシタが接続されるとともに、第2キャパシタが接続された第2入力端子と、を有するアンプを含むコンパレータと、
前記逆ランプ信号線に接続されたキャンセルキャパシタを含むランプ電流キャンセル回路と、
を備え、
前記コンパレータは、
前記第1キャパシタと前記第1参照電圧配線との間をオンオフする第1スイッチと、
前記第1キャパシタと前記ランプ信号線との間をオンオフする第2スイッチと、
前記第1キャパシタと前記第2参照電圧配線との間をオンオフする第3スイッチと、
前記第2キャパシタと前記第1参照電圧配線との間をオンオフする第4スイッチと、
前記第2キャパシタと前記ランプ信号線との間をオンオフする第5スイッチと、
を有し、
前記ランプ電流キャンセル回路は、
前記キャンセルキャパシタと前記第1参照電圧配線との間をオンオフする第1キャンセルスイッチと、
前記キャンセルキャパシタと前記第2参照電圧配線との間をオンオフする第2キャンセルスイッチと、
を有する固体撮像装置。
【請求項15】
前記コンパレータは、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、前記第4スイッチ及び前記第5スイッチを第1セットとした場合に、複数の前記第1セットを有し、
前記ランプ電流キャンセル回路は、前記第1キャンセルスイッチ及び前記第2キャンセルスイッチを第2セットとした場合に、複数の前記第2セットを有する、
請求項14に記載の固体撮像装置。
【請求項16】
前記画素は、フォトダイオードを含み、
前記フォトダイオードからの電荷が転送される前のDark電圧が前記輝度信号電圧として前記輝度信号線に出力され、
前記第2スイッチ、前記第4スイッチ及び前記第1キャンセルスイッチは、オン状態に接続され、
前記第1スイッチ、前記第3スイッチ、前記第5スイッチ及び前記第2キャンセルスイッチはオフ状態にされる、
請求項14に記載の固体撮像装置。
【請求項17】
前記画素は、フォトダイオードを含み、
前記フォトダイオードで光電変換された電荷の転送によるSignal電圧が前記輝度信号電圧として前記輝度信号線に出力された、
請求項14に記載の固体撮像装置。
【請求項18】
前記第3スイッチ及び前記第4スイッチは、オン状態に接続され、
前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第5スイッチ、前記第1キャンセルスイッチ及び前記第2キャンセルスイッチはオフ状態にされる、
請求項17に記載の固体撮像装置。
【請求項19】
前記輝度信号電圧が、前記第1参照電圧及び前記第2参照電圧の和の1/2よりも大きい場合には、
前記第3スイッチ、前記第5スイッチ及び前記第2キャンセルスイッチは、オン状態に接続され、
前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第4スイッチ及び前記第1キャンセルスイッチはオフ状態にされる、
請求項17に記載の固体撮像装置。
【請求項20】
前記輝度信号電圧が、前記第1参照電圧及び前記第2参照電圧の和の1/2よりも小さい場合には、
前記第2スイッチ、前記第4スイッチ及び前記第1キャンセルスイッチは、オン状態に接続され、
前記第1スイッチ、前記第3スイッチ、前記第5スイッチ及び前記第2キャンセルスイッチはオフ状態にされる、
請求項17に記載の固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関し、例えば、アナログ/デジタル変換器(ADC:Analog/Digital Converter、AD変換回路とも称する。)を内蔵したCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AD変換回路を内蔵したCMOSイメージセンサにおいて、AD変換回路の入力範囲を複数のサブレンジに分割してAD変換する場合には、レンジの境界で変換特性が不連続となり直線性が劣化する。よって、複雑なキャリブレーションが必要となる。これは、分割数が2より大きい場合には、境界のオフセットのみならず、各サブレンジの変換ゲインも補正する必要があるためである。これに対して、2つのサブレンジで変換する方法は、傾きのキャリブレーションが不要となる。このため、高速化とキャリブレーションの両立に有効である。
【0003】
AD変換回路に使用されるコンパレータは、画素から出力された輝度信号電圧と参照電圧とを比較判定する。輝度信号電圧と参照電圧との差を十分なゲインで増幅するために、1段または複数段の前置アンプを用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-114785号公報
【文献】特開2013-098895号公報
【文献】特許第4661876号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2ステージ積分型では、Fine変換期間に、参照電圧を出力されたVRT配線、または、VRB配線にランプ信号からキャパシタを介して流れる電流(以下、ランプ電流と称する)が流れる場合がある。その場合には、配線抵抗によるIRドロップにより、参照電圧が変動するという問題となる。Coarse変換を上位1ビットにした場合には、ランプ電流は大きく、先に挙げた2分割型は、2ステージ積分型のADCの中で、その影響を最も受けやすい。例えば、参照電圧として、VRB配線が選択された場合には、ランプ信号のスイープに伴って、キャパシタを介して、VRB配線にランプ電流が流れる。VRB配線に流れたランプ電流は、ADCの各カラム共通のVRB配線に渡って流れる。そして、寄生抵抗の影響により、VRB配線の参照電圧がカラム位置により変動し、横スミア特性が劣化してしまう。VRT配線の参照電圧が選択された場合も同様である。VRT配線、VRB配線のどちらに接続されるかは、入力される輝度信号電圧、つまり、画像に依存する。このような参照電圧の変動は、カラム共通のVRT配線及びVRB配線の寄生抵抗が原因であるため、VRT配線及びVRB配線を拡幅することで抵抗値を低くする対策もできるが、チップ面積が増加する。
【0006】
コンパレータの第1のアンプは、広い画素信号振幅(例えば1.2V)を入力可能とするために、高い電源電圧(例えば3.3V)で動作させる必要がある。従来のコンパレータでは、第1のアンプの出力が第2のアンプの入力に直接接続されている。このため、第2のアンプの電源電圧も第1のアンプの電源電圧と同じ、3.3Vにする必要があった。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態によれば、固体撮像装置は、入射光量に応じた輝度信号電圧を輝度信号線に出力する画素と、第1参照電圧を第1参照電圧配線に出力し、第2参照電圧を第2参照電圧配線に出力し、所定のスルーレートのランプ信号をランプ信号線に出力し、前記ランプ信号と向きの異なる逆ランプ信号を逆ランプ信号線に出力する参照電圧生成回路と、前記輝度信号電圧をAD変換するAD変換回路と、を備え、前記AD変換回路は、前記輝度信号線に接続された一方の入力端子と、第1容量を介して前記第1参照電圧配線、前記第2参照電圧配線及び前記ランプ信号線のそれぞれとオンオフ可能に接続するとともに、第2容量を介して前記第1参照電圧配線及び前記ランプ信号線のそれぞれとオンオフ可能に接続された他方の入力端子と、を有するアンプを含むコンパレータと、キャンセルキャパシタを含み、前記逆ランプ信号線を、前記キャンセルキャパシタを介して前記第1参照電圧配線及び前記第2参照電圧配線のそれぞれとオンオフ可能に接続されたランプ電流キャンセル回路と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
前記一実施の形態によれば、参照電圧の変動を抑制し、性能を向上させることができるとともに、低消費電力化が可能な固体撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る固体撮像装置を例示した構成図である。
【
図2】実施形態1に係る固体撮像装置の画素を例示した構成図である。
【
図3】実施形態1に係る固体撮像装置におけるランプ電流キャンセル回路とコンパレータを例示した構成図である。
【
図4】(a)は、実施形態1に係る固体撮像装置におけるスイッチ制御回路を例示した構成図であり、(b)は、スイッチ制御回路の制御信号を例示した図である。
【
図5】(a)は、実施形態1に係る固体撮像装置におけるランプ電流キャンセル回路を例示した構成図であり、(b)は、ランプ電流キャンセル制御回路の制御信号を例示した図である。
【
図6】実施形態1に係る固体撮像装置におけるコンパレータ、ランプ電流キャンセル回路及びスイッチ制御回路の動作を例示したタイミング図である。
【
図7】実施形態1に係る固体撮像装置において、コンパレータのリセット期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間IIの接続状態を示す。
【
図8】実施形態1に係る固体撮像装置において、Dark電圧の変換期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間IIIの接続状態を示す。
【
図9】実施形態1に係る固体撮像装置において、Coarse変換期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間VIの接続状態を示す。
【
図10】実施形態に係る固体撮像装置において、MSBがHレベルのときのFine変換期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間VIIの接続状態を示す。
【
図11】実施形態に係る固体撮像装置において、MSBがLレベルのときのFine変換期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間VIIの接続状態を示す。
【
図12】実施形態1に係る固体撮像装置において、輝度信号電圧及び比較信号電圧の動作を例示したタイミング図である。
【
図13】実施形態1に係る固体撮像装置において、Dark電圧変換時及びSignal電圧変換時で、MSBがLレベルのときの第1アンプ近傍の回路図と、逆ランプ信号、ランプ信号及び参照電圧VRTに着目した等価回路を説明する図である。
【
図14】実施形態1に係る固体撮像装置において、Signal電圧変換時で、MSBがHレベルのときの第1アンプ近傍の回路図と、逆ランプ信号、ランプ信号及び参照電圧VRBに着目した等価回路を説明する図である。
【
図15】実施形態に係る固体撮像装置において、第1アンプの入力端子の寄生キャパシタによるキャンセルキャパシタの容量値への影響を説明する図である。
【
図16】実施形態2に係る固体撮像装置において、第1アンプの入力端子に接続されるキャパシタ、スイッチおよびランプ電流キャンセル回路を例示した構成図である。
【
図17】(a)は、実施形態2に係る固体撮像装置において、スイッチ制御回路およびランプ電流キャンセル回路の制御を説明する図であり、(b)は、制御信号を例示した図である。
【
図18】実施形態2に係る固体撮像装置において、変換ゲインが1倍のときのDark変換時のスイッチ制御回路およびランプ電流キャンセル回路のスイッチの接続を説明する図である。
【
図19】実施形態2に係る固体撮像装置において、変換ゲインが2倍のときのDark変換時のスイッチ制御回路およびランプ電流キャンセル回路のスイッチの接続を説明する図である。
【
図20】実施形態3に係る固体撮像装置におけるコンバータを例示した構成図である。
【
図21】実施形態3に係る固体撮像装置におけるコンバータの負荷回路を例示した図である
【
図22】実施形態3に係る固体撮像装置において、Coarse変換結果を保持するMSBラッチの回路を説明する図である。
【
図23】実施形態4に係る固体撮像装置におけるコンバータを例示した構成図である。
【
図24】実施形態4に係る固体撮像装置における第1アンプ、第2アンプ及び2値化回路を例示した構成図である
【
図25】CMOSイメージセンサを例示した構成図である。
【
図26】ランプ信号を例示したグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
実施形態1~4の固体撮像装置をより明確にするため、まず、本発明者が見出した固体撮像装置における課題を説明する。
【0013】
近年、ADC内蔵のCMOSイメージセンサが盛んに開発されている。CMOSイメージセンサでは、フレームレートの向上の市場要求がある。フレームレート向上のためには、2ステージ変換(特許文献1)、3ステージ変換(特許文献2)が提案されている。これらのAD変換回路では、変換に用いる参照電圧として、参照電圧VRT及びVRB、ランプ信号RAMPFが用いられている。これらの参照電圧が出力されたVRT配線及びVRB配線は、CMOSイメージセンサ内で、例えば、横方向に配線されており、AD変換回路間で共通して使用されている。なお、参照電圧VRTが出力された配線をVRT配線と称する。同様に、参照電圧VRBが出力された配線をVRB配線と称する。また、ランプ信号RAMPFが出力された信号線を、RAMPF信号線と称する。
【0014】
従来のAD変換回路では、Fine変換において、ランプ信号RAMPFから流れる電流と配線抵抗により、参照電圧VRT及びVRBに誤差が生じ、横スミアが生じる課題があった。これらのAD変換回路では、Fine変換の前に、上位3ビット(特許文献1)、上位5ビット(特許文献2)を確定する。確定する上位ビットが大きいほど、Fine変換期間を短縮することができる。しかしながら、キャパシタの接続先を決定する制御回路やスイッチが増大し、面積が大きくなる欠点があった。
【0015】
また、隣接する2つのサブレンジの境界付近における入出力特性の不連続性を低減するためのキャリブレーションが複雑になり、キャリブレーション回路の増大やキャリブレーション期間の長期化の欠点が生じていた。したがって、キャリブレーション機構が単純で、面積の小さい上位1ビットの2ステージ変換AD変換回路が有望である。
【0016】
しかしながら、上位1ビットの2ステージ変換の場合、RAMPF信号線に接続されるキャパシタは、参照電圧側のキャパシタの総容量値の1/2となり、上位2ビット以上の2ステージ型よりも大きくなる。このため、上記電流による横スミアの課題がより厳しくなる。例えば、参照電圧側には2個の等しい容量値のキャパシタが接続される。参照電圧側に接続されるキャパシタの合計の容量値をCtot、各キャパシタの容量値を(Ctot/2)と仮定する。Fine変換期間中には2個のキャパシタのうち、一方がRAMPF信号線に接続され、もう一方のキャパシタは、輝度信号電圧に応じて、VRT配線もしくはVRB配線に接続される。
【0017】
図25に示すように、CMOSイメージセンサには、複数のAD変換回路が設けられている。参照電圧生成回路は、参照電圧VRT及びVRBと、ランプ信号RAMPFを生成する。CMOSイメージセンサ内のすべてのコンパレータ120において、RAMPF信号線に接続されていない方のキャパシタが、VRT配線に接続されている場合に、参照電圧VRTに生じる最大誤差電圧を計算する。RAMPF信号線からVRT配線には、2個の(Ctot/2)のキャパシタが直列接続されている。第1アンプ121の入力キャパシタや配線の寄生キャパシタを無視した場合、RAMPF信号線とVRT配線間には(Ctot/4)の等価キャパシタが接続されていることに等しい。
【0018】
図26に示すように、ランプ信号を8μsの期間に1V低下する信号を仮定すると、そのスルーレート(dV/dt)は-125KV/sとなる。参照電圧側に接続されるキャパシタの合計の容量値Ctotを、0.5pFと仮定すると、ADC毎に(dV/dt)×(Ctot/4)=-15.625nAのランプ電流が流れる。
【0019】
隣接するAD変換回路間のVRT配線の配線抵抗をRcol=0.01Ω、ADC数Nadc=4000を仮定すると、参照電圧生成回路から最も離れたAD変換回路での参照電圧VRTの誤差電圧VRTerrは以下の計算式で求まる。
【0020】
VRTerr=Nadc×(Nadc+1)/2×Rcol×(dV/dt)×(Ctot/4)=-1.25mV
【0021】
この誤差電圧は、Fine変換期間中にRAMPF信号線に接続されていない参照電圧側のキャパシタがVRT配線とVRB配線のどちらに接続されているかに依存する。したがって、画像依存の誤差電圧となり横スミアの画像劣化となる。
【0022】
なお、RAMPF信号線の配線抵抗により、同様の誤差電圧が発生するが、これは、Fine変換期間中に、RAMPF信号線に接続されていない参照電圧側のキャパシタがVRT配線とVRB配線のどちらに接続されていても同じである。したがって、Dark信号の変換結果と、Signal信号の変換結果の減算(これを、デジタル相関二重サンプリングと称する。)により、キャンセルされる。
【0023】
このように、固体撮像素子において、1ビットの2ステージ変換ADCを用いる場合に、ランプ電流がVRT配線及びVRB配線に流れることが課題として見出された。このようなランプ電流は、参照電圧VRT及びVRBを変動させ、固体撮像装置の性能を向上させることができない。
【0024】
また、デジタルカメラや携帯電話等のバッテリ駆動のイメージセンサにおいては、低消費電力の要求も強い。CMOSイメージセンサに搭載されるADCの数は一般に数千であり、ADC電力低減が要求されている。そこで、消費電力を低減する固体撮像素子も提案する。
【0025】
(実施形態1)
次に、実施形態1に係る固体撮像装置を説明する。
図1は、実施形態1に係る固体撮像装置を例示した構成図である。
図1に示すように、固体撮像装置1は、画素アレイAL、制御回路10、行選択回路11、参照電圧生成回路12、バイアス回路13、カウンタ回路14、水平転送回路15、信号処理回路16、複数のAD変換回路を備えている。固体撮像装置1は、例えば、CMOSイメージセンサである。
【0026】
行選択回路11は、制御回路10によって制御され、複数の画素PXが複数行及び複数列にマトリックス状に配置された画素アレイALにおいて、一行ずつ順次選択し、選択した行の制御線を有効化する。
【0027】
画素アレイALは、複数の画素PXを含んでいる。画素アレイALにおいて、複数の画素PXは、複数行及び複数列から構成されるマトリックス状に配置されている。各画素PXは、対応する制御線CLを有効化レベルにされたことに応じて有効化される。そして、有効化された各画素PXは、入射光量に応じた電圧の輝度信号電圧を対応する輝度信号線ADCINに出力する。画素PXの動作は、制御回路10により制御されている。
【0028】
<画素について>
図2は、実施形態1に係る固体撮像装置の画素を例示した構成図である。画素PXは、光電変換素子フォトダイオードPDと、例えば、4つのトランジスタを含んでいる。4つのトランジスタは、例えば、リセットトランジスタTR1、転送トランジスタTR2、行選択トランジスタTR3、増幅トランジスタTR4である。
【0029】
リセットトランジスタTR1は、リセット制御信号RSTにしたがって、フローティングディフュージョンFDを所定の電圧レベルにリセットする。転送トランジスタTR2は、転送制御信号TXにしたがって、フォトダイオードPDによって生成された電気信号を伝達する。行選択トランジスタ3は、行選択信号SELにしたがって、増幅トランジスタTR4より伝達された信号を輝度信号線ADCINに出力する。増幅トランジスタTR4は、フローティングディフュージョンFDの電位を増幅する。
【0030】
フォトダイオードPDは、入射光の光量に応じた量の電子に光電変換する。転送トランジスタTR2は、転送制御信号TXがハイレベル(以下、Hレベルと略す)のとき、オン状態となり、フォトダイオードPDで光電変換された電子をフローティングディフュージョンFDに転送する。
【0031】
行選択信号SELがHレベルになると、増幅トランジスタTR4と輝度信号線ADCINとが接続される。増幅トランジスタTR4のゲート電極にはFDが接続されており、画素電流源とソースフォロワ回路を構成する。これにより、フローティングディフュージョンFDの電位に応じた電圧を輝度信号線ADCINに出力する。
【0032】
より具体的には、画素PXをHレベルにして転送トランジスタTR2がオンすることによりフォトダイオードPDの電荷をフローティングディフュージョンFDに転送してフォトダイオードPDを初期化する。次に、画素PXをLレベルにして転送トランジスタTR2をオフにして、所定の期間光電変換を行い、電荷を蓄積する。
【0033】
読み出し時においては、リセット制御信号RSTをHレベルとすることにより、リセットトランジスタTR1が導通し、フローティングディフュージョンFDがリセットされる。続いて、行選択信号SELがHレベルとなることにより、行選択トランジスタTR3が輝度信号線ADCINと接続され、ソースフォロワ回路が構成される。リセット制御信号RSTがLレベルになり、リセットトランジスタTR1がオフすると、輝度信号線ADCINには、フォトダイオードPDからの電荷が転送される前の暗状態の電圧値(「Dark電圧」とも称する。)が出力される。
【0034】
次に、転送制御信号TXがHレベルになり、転送トランジスタTR2が導通し、フォトダイオードPDにより光電変換されて蓄積された電荷が、フローティングディフュージョンFDに転送される。転送された電荷に応じてフローティングディフュージョンFDが変化し、輝度信号線ADCINには、画素の光量に応じた電圧値(「Signal電圧」とも称する。)が出力される。
【0035】
Dark電圧とSignal電圧の差分を画像信号とすることで、いわゆる相関二重サンプリング動作を行って、画素PXのDC成分のばらつきやリセットノイズの影響を相殺することができる。
【0036】
画素PXの読み出しが完了すると、行選択信号SELがLレベルとなり、行選択トランジスタTR3がオフ状態になる。これらの読み出し動作は、リセットトランジスタTR1、転送トランジスタTR2、行選択トランジスタTR3の各リセット制御信号RST、転送制御信号TX、行選択信号SELが行単位で共有されていることから、1行の画素PXについて、並列に行われる。
【0037】
<AD変換回路の動作>
AD変換回路は、各輝度信号線ADCINに対応して複数設けられている。例えば、数千個設けられている。イメージセンサ内にコラム状に配置されており、輝度信号電圧をAD変換する。各AD変換回路は、コンパレータ20、ランプ電流キャンセル回路30、ラッチ40を有している。ラッチ40は、Coarse変換結果を取り込む出力用MSBラッチ41、及び、コンパレータ20の出力によってカウンタ信号の取り込みタイミングが制御されるカウンタラッチ42を含んでいる。
【0038】
カウンタ回路14は、制御回路10によって制御され、各AD変換回路のラッチ40に接続される。バイアス回路13は、コンパレータ20内の前置アンプにバイアス電圧を供給する。
【0039】
参照電圧生成回路12は、参照電圧VRT及びVRB、スルーレートの絶対値が等しい下降するランプ信号RAMPFと上昇する逆ランプ信号RAMPRを生成する。具体的には、参照電圧生成回路12は、参照電圧VRTをVRT配線に出力し、参照電圧VRBをVRB配線に出力する。また、参照電圧生成回路12は、所定のスルーレートのランプ信号RAMPFをRAMPF信号線に出力し、例えば、ランプ信号RAMPFのスルーレートの絶対値と等しく向きの異なる逆ランプ信号RAMPRをRAMPR信号線に出力する。例えば、参照電圧VRTは、参照電圧VRBよりも大きい電圧である。
【0040】
本実施形態の固体撮像装置1は、AD変換回路に、ランプ電流キャンセル回路30を備える。ランプ電流キャンセル回路30は、コンパレータ20の出力及び制御回路10からの制御信号によって制御される。
【0041】
図3は、実施形態1に係る固体撮像装置におけるランプ電流キャンセル回路とコンパレータを例示した構成図である。
図3に示すように、コンパレータ20は、画素PXから輝度信号線ADCINに出力された輝度信号電圧と、参照電圧VRT及びVRB、ランプ信号RAMPFを用いて生成される比較信号と、を比較する。比較信号の方が小さいとき、その出力COMPOUTは、Lレベルを出力するように動作する。
【0042】
コンパレータ20は、1段または複数段の前置アンプと2値化回路24とを備える。
図3の例では、第1アンプ21、第2アンプ22、第3アンプ23の3段構成の前置アンプの例である。また、コンパレータ20は、MSBラッチ43を備える。MSBラッチ43は、2値化回路24の出力が入力される。
【0043】
第1アンプ21の入力端子VIN1N及び第1アンプ21の出力端子VOUT1Pと、第2アンプ22の入力端子VIN2Pとの間はキャパシタを介して接続されている。また、第1アンプ21の入力端子VIN1P及び第1アンプ21の出力端子VOUT1Nと、第2アンプ22の入力端子VIN2Nとの間はキャパシタを介して接続されている。よって、第1アンプ21の入出力端子間及び第2アンプ22の入出力端子間に入れられたスイッチを閉じるオートゼロ動作により、外部の信号DCレベルに依存せず、各アンプに最適な動作点で動作させることが可能である。
【0044】
第1アンプ21の入力端子VIN1Nは、キャパシタを介して画素PXからの輝度信号線ADCINに接続されている。これにより、輝度信号線ADCINの入力電圧に応じた電圧が生成される。以下、この電圧を輝度信号電圧と称する。第1アンプ21の入力端子VIN1Pは、キャパシタ及びスイッチを介してVRT配線、VRB配線、RAMPF信号線に接続されており、容量分圧により比較信号電圧が生成される。具体的には、入力端子VIN1Pは、キャパシタCAを介して、VRT配線、VRB配線及びRAMPF信号線のそれぞれとスイッチSWA~SWCを介してオンオフ可能に接続されている。また、入力端子VIN1Pは、キャパシタCBを介して、VRT配線及びRAMPF信号線のそれぞれとスイッチSWD~SWEを介してオンオフ可能に接続されている。例えば、キャパシタCAとキャパシタCBとは同じ容量である。
【0045】
ランプ電流キャンセル回路30は、ランプ電流をキャンセルする。ランプ電流キャンセル回路30は、キャンセルキャパシタC1を含み、RAMPR信号線を、キャンセルキャパシタC1を介してVRT配線及びVRB配線のそれぞれと、キャンセルスイッチSW1~SW2を介してオンオフ可能に接続されている。ランプ電流キャンセル回路30は、出力信号MSBに応じて、RAMPR信号線を、キャンセルキャパシタC1を介して、VRT配線、または、VRB配線に接続する。出力信号MSBは、所定のタイミングでMSBラッチ43に取り込んだ2値化回路24の出力である。
【0046】
コンパレータ20は、第2アンプ22、第3アンプ23、2値化回路24に加えて、複数のキャパシタを備えてもよい。第1アンプ21の出力端子VOUT1Pは、キャパシタを介して、第2アンプ22の入力端子VIN2Pに接続されている。第1アンプ21の出力端子VOUT1Nは、キャパシタを介して第2アンプ22の入力端子VIN2Nに接続されている。よって、第1アンプ21と第2アンプ22との間にキャパシタが配置されている。これにより、第1アンプ21の電源電圧と第2アンプ22の電源電圧とを異なるようにしてもよい。例えば、第2アンプ22の電源電圧を、第1アンプ21の電源電圧よりも小さくしてもよい。このようにすることで、低消費電力化することができる。
【0047】
第2アンプ22の出力端子VOUT2Pは、第3アンプ23の入力端子に接続されている。第3アンプ23の出力端子VOUT3は、2値化回路24に入力される。したがって、第2アンプ22と、2値化回路24との間に第3アンプ23が接続されている。第2アンプ22の出力端子は、第3アンプ23を介して、2値化回路24に接続されている。
【0048】
図4(a)は、実施形態1に係る固体撮像装置におけるスイッチ制御回路を例示した構成図であり、(b)は、スイッチ制御回路の制御信号を例示した図である。
図4(a)に示すように、コンパレータ20は、スイッチ制御回路25、キャパシタCA及びCB、スイッチSWA~SWEを含んでいる。第1アンプ21の入力端子VIN1Pには、キャパシタCAが接続するとともに、キャパシタCBが接続されている。
【0049】
キャパシタCAの参照電圧側は、VRT配線、VRB配線、または、RAMPF信号線への接続が必要である。このため、三者択一のスイッチSWA~SWCを備える。具体的には、コンパレータ20は、キャパシタCAとVRT配線との間をオンオフするスイッチSWAと、キャパシタCAとRAMPF信号線との間をオンオフするスイッチSWBと、キャパシタCAとVRB配線との間をオンオフするスイッチSWCとを有している。
【0050】
また、キャパシタCBの参照電圧側は、VRT配線またはRAMPF信号線への接続が必要である。このため、二者択一のスイッチSWD~SWEを備える。具体的には、コンパレータ20は、キャパシタCBとVRT配線との間をオンオフするスイッチSWDと、キャパシタCBとRAMPF信号線との間をオンオフするスイッチSWEを有している。
【0051】
スイッチ制御回路25は、
図4(b)に示す論理式により、必要な機能を実現する。ここで、“+”は論理和、”*”は論理積、”!”は否定を表し、論理式の結果が1のときスイッチはオンする。キャパシタCA及びCBは等しい容量値(Ctot/2)である。
【0052】
図5(a)は、実施形態1に係る固体撮像装置において、ランプ電流キャンセル回路を例示した構成図であり、(b)は、ランプ電流キャンセル制御回路の制御信号を例示した図である。
図5(a)に示すように、ランプ電流キャンセル回路30は、キャンセルキャパシタC1、キャンセルスイッチSW1及びSW2、ランプ電流キャンセル制御回路31を有している。RAMPR信号線は、キャンセルキャパシタC1を介してVRT配線またはVRB配線に接続されている。具体的には、ランプ電流キャンセル回路30は、キャンセルキャパシタC1とVRT配線との間をオンオフするキャンセルスイッチSW1と、キャンセルキャパシタC1とVRB配線との間をオンオフするキャンセルスイッチSW2と、を有している。
【0053】
ランプ電流キャンセル制御回路31は、
図5(b)に示す論理式により、必要な機能を実現する。キャンセルキャパシタC1の容量値は、例えば、逆ランプ信号RAMPRが、ランプ信号RAMPFのスルーレートと絶対値が等しく向きが逆のとき、入力端子VIN1Pの寄生容量を無視すると(Ctot/4)となる。
【0054】
次に、本実施形態の固体撮像装置1におけるコンパレータ、ランプ電流キャンセル回路及びスイッチ制御回路の動作を説明する。
図6は、実施形態1に係る固体撮像装置におけるコンパレータ、ランプ電流キャンセル回路及びスイッチ制御回路の動作を例示したタイミング図である。
【0055】
まず、
図6に示す各パルスの詳細について説明する。
図6に示す動作の期間が1回のAD変換に必要な期間である。このような動作の期間を、動作状況により期間I~期間VIIの7つのフェーズに分けることができる。期間Iは、リセット期間RSTである。期間IIは、Dark電圧のための設定期間である。期間IIIは、Dark電圧のAD変換期間である。期間IVは、転送制御信号TXにより制御する期間である。期間Vは、Signal電圧のための設定期間である。期間VIは、Course変換期間である。期間VIIは、Signal電圧のFine変換期間である。
【0056】
ランプ信号RAMPF及び逆ランプ信号RAMPRはDark電圧のAD変換期間(III)及びSignal電圧のFine変換期間(VII)でスイープされ、それ以外の期間は所定の電圧を保持する。
【0057】
リセット制御信号RST及び転送制御信号TX:画素PXに必要なパルスで、期間Iにおいて、リセット制御信号RSTパルスをアクティブ(Hレベル)にすることで、画素PXのリセットを行う。また、期間IVにおいて、転送制御信号TXをアクティブにすることでSignal電圧の読み出しを行う。
【0058】
PAZ1B、PAZ2T:期間IIにおいて、コンパレータ20の第1アンプ21及び第2アンプ22のオートゼロ動作を行う。パルスをアクティブ(第1アンプ21はLレベル、第2アンプ22はHレベル)とすることで、各アンプが自己バイアスを掛ける。
【0059】
PCOMPRSTN、PCOMPENT:コンパレータ20内の2値化回路24を制御するパルスである。前者がLレベルでリセット動作を行う、後者がHレベルで有効化するパルスである。期間I、II、IV、Vでは、リセット、非イネーブル状態とし、Dark電圧変換(期間III)、Course変換期間(期間VI)、Fine変換期間(期間VII)で、非リセット、イネーブル状態とする。Fine変換に入る直前、すなわち、期間VIの終わりで一度リセット、非イネーブルを掛け、Fine変換の準備を行う。
【0060】
MSBLATRST:MSBラッチ43のリセットパルスである。Hレベルでリセット状態にあり、Coarse変換直前に解除される。
【0061】
MSBLATEN:MSBラッチ43のイネーブルパルスである。Coarse変換時ラッチのリセットを解除後にアクティブ(Hレベル)にすることで2値化回路24の出力を取り込む。
【0062】
P01:制御論理回路にフェーズ状態を指定する信号の1つで、期間I、IIの間において、Hレベルとなる。
P02:同じくフェーズ状態を指定する信号の1つで、期間IIIにおいて、Hレベルとなる。
P03:同じくフェーズ状態を指定する信号の1つで、期間IV、V、VIにおいて、Hレベルとなる。
P04:同じくフェーズ状態を指定する信号の1つで、期間I~VIにおいて、Hレベルとなる。
P05:同じくフェーズ状態を指定する信号の1つで、期間VIIにおいて、Hレベルとなる。
【0063】
次に、各期間I~VIIについて、説明する。
図7は、実施形態1に係る固体撮像装置において、コンパレータのリセット期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間IIの接続状態を示す。
図8は、実施形態1に係る固体撮像装置において、Dark電圧の変換期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間IIIの接続状態を示す。
図9は、実施形態1に係る固体撮像装置において、Coarse変換期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間VIの接続状態を示す。
図10は、実施形態に係る固体撮像装置において、MSBがHレベルのときのFine変換期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間VIIの接続状態を示す。
図11は、実施形態に係る固体撮像装置において、MSBがLレベルのときのFine変換期間のスイッチの接続を例示した構成図であり、期間VIIの接続状態を示す。
【0064】
期間I:この期間は、画素PXのリセット期間である。AD変換回路側は、特に動作の必要はない。
【0065】
期間II:この期間は、オートゼロと呼ばれるコンパレータ20のリセット期間である。
図7に、期間IIの接続を示す。
図7に示すように、第1アンプ21、第2アンプ22の入出力端子間に入れられたスイッチを閉じる。すなわち、第1アンプ21の入力端子VIN1Nと、出力端子VOUT1Pとがオン状態で接続され、第1アンプ21の入力端子VIN1Pと、出力端子VOUT1Nとがオン状態で接続される。また、第2アンプ22の入力端子VIN2Pと、出力端子VOUT2Nとがオン状態で接続され、第2アンプ22の入力端子VIN2Nと、出力端子VOUT2Pとがオン状態で接続される。
【0066】
同時に、コンパレータ20に接続された輝度信号線ADCINには、画素PXからのDark電圧を印加する。コンパレータ20の参照電圧側は、キャパシタCA及びキャパシタCBのいずれのキャパシタにも、参照電圧VRTを印加する。具体的には、入力端子VIN1Pは、キャパシタCAを介してVRT配線にオン状態で接続されるとともに、キャパシタCBを介してVRT配線にオン状態で接続される。各接点電圧の整定を待ったのち、第1アンプ21、第2アンプ22の入出力端子間に入れられたスイッチを開く。
【0067】
期間III:この期間は、Dark電圧の変換期間である。
図8に期間IIIの接続を示す。
図8に示すように、スイッチSWBを、VRT配線からRAMPF信号線へ切り替える。電圧レベルの既知である入力信号に合わせて低輝度領域のみをスイープするランプ信号RAMPFを与える。そして、コンパレータ20の出力反転までの時間を計測する。これにより、Dark電圧をアナログデジタル変換する。
【0068】
期間IIIにおいて、入力端子VIN1Pは、キャパシタCAを介してRAMPF信号線にオン状態で接続されるとともに、キャパシタCBを介してVRT配線にオン状態で接続される。そして、ランプ信号RAMPFのスイープに伴い、ランプ電流がVRT端子側へ流れる。これをキャンセルするため、ランプ電流キャンセル回路30は、RAMPR信号線を、キャンセルキャパシタC1を介してVRT配線にオン状態で接続させる。具体的には、スイッチSWB、スイッチSWD及びキャンセルスイッチSW1は、オン状態に接続され、スイッチSWA、スイッチSWC、スイッチSWE及びキャンセルスイッチSW2はオフ状態にされる。これにより、絶対値が等しく極性の異なる電流をVRT配線に流し込む。こうして、ランプ電流をキャンセルすることができる。
【0069】
期間IV及び期間V:この期間は、それぞれの画素PXからの信号の読み出し動作、及び、Signal電圧の整定を待つ期間である。AD変換回路は、RAMPRの電位を元に戻すなどSignal電圧変換の準備を行う。
【0070】
期間VI:この期間は、Signal電圧のCoarse変換を行う期間である。
図9に期間VIの接続を示す。
図9に示すように、輝度信号線ADCINには引き続き、画素PXからの輝度信号電圧が印加されている。画素PX側での期間IV、Vの動きで、Dark電圧に代わり、Signal電圧が入力される。入力端子VIN1Pは、キャパシタCAを介してVRB配線にオン状態で接続されるとともに、キャパシタCBを介してVRT配線に接続される。
【0071】
具体的には、スイッチSWC及びスイッチSWDは、オン状態に接続され、スイッチSWA、スイッチSWB、スイッチSWE、キャンセルスイッチSW1及びキャンセルスイッチSW2は、オフ状態に接続される。これにより、キャパシタCA及びキャパシタCBのスイッチ側電極にそれぞれ参照電圧VRT及びVRBを印加する。この動作により、入力端子VIN1Pの電位は、オートゼロ時の電圧から(VRT+VRB)/2だけシフトする。他方、入力端子VIN1N側では、Signal電圧が印加されている。これらの電圧の大小を判定することにより、輝度信号線ADCINの電圧と(VRT+VRB)/2の比較が行われ、Coarse変換が実施される。
【0072】
Coarse変換結果は、出力用MSBラッチ41に保持される。また、続く、Fine変換のために、MSBラッチ43にもあわせて取り込まれ、その出力信号MSBとして保持される。輝度信号線ADCINの電圧が(VRT+VRB)/2よりも大きいときに、出力信号MSBは、Hレベルであり、小さいときに、出力信号MSBは、Lレベルになる。
【0073】
期間VII:この期間は、Signal電圧のFine変換を行う期間である。期間VIのCoarse変換結果がスイッチ制御回路25に入力される。そして、その結果により、次のように接続が決定される。
【0074】
出力信号MSBがHレベルの場合は、
図10に示される接続が採られる。すなわち、入力端子VIN1Pは、キャパシタCAを介してVRB配線にオン状態で接続されるとともに、キャパシタCBを介してRAMPF信号線にオン状態で接続される。ランプ電流キャンセル回路30は、RAMPR信号線を、キャンセルキャパシタC1を介してVRB配線にオン状態で接続させる。具体的には、スイッチSWC、スイッチSWE及びキャンセルスイッチSW2は、オン状態に接続される。スイッチSWA、スイッチSWB、スイッチSWD及びキャンセルスイッチSW1はオフ状態に接続される。
【0075】
ランプ信号RAMPFのスイープにより、VRB配線にランプ電流が発生する。このため、これをキャンセルするように、ランプ電流キャンセル回路30側では、スイッチSW2がオンし、キャンセルキャパシタC1を介して、VRB配線に逆ランプ信号RAMPRが出力される。
【0076】
出力信号MSBがLレベルの場合は、
図11に示される接続が採られる。すなわち、入力端子VIN1Pは、キャパシタCAを介してRAMPF信号線にオン状態で接続されるとともに、キャパシタCBを介してVRT配線にオン状態で接続される。ランプ電流キャンセル回路30は、RAMPR信号線を、キャンセルキャパシタC1を介してVRT配線にオン状態で接続させる。具体的には、スイッチSWB、スイッチSWD及びキャンセルスイッチSW1は、オン状態に接続され、スイッチSWA、スイッチSWC、スイッチSWE及びキャンセルスイッチSW2はオフ状態に接続される。
【0077】
ランプ信号RAMPFのスイープにより、VRT配線にランプ電流が発生する。このため、これをキャンセルするように、ランプ電流キャンセル回路30側では、スイッチSW1がオンし、キャンセルキャパシタC1を介して、VRT配線に逆ランプ信号RAMPRが出力される。
【0078】
以上の接続を実施したのち、ランプ信号RAMPF、逆ランプ信号RAMPRをスイープする。カウンタ回路14は、ランプ信号RAMPF、逆ランプ信号RAMPRをスイープ開始に同期して動作開始する。入力信号に応じた時間の経過後、コンパレータ20の出力がHレベルからLレベルに反転する。このタイミングで、カウンタ回路14の出力をカウンタラッチ42に取り込むことにより、Signal電圧のAD変換が行われる。
【0079】
図12は、実施形態1に係る固体撮像装置において、輝度信号電圧及び比較信号電圧の動作を仮想的に例示したタイミング図である。実際の輝度信号電圧と比較信号電圧は、オートゼロ動作により、参照電圧VRT及びVRB、ランプ信号RAMPFとは異なる電圧レベルとなる。しかしながら、参照電圧VRT及びVRB、ランプ信号RAMPFを説明するために、
図12に示すように、参照電圧VRT及びVRBに合わせたレベルで表記している。
【0080】
出力用MSBラッチ41とカウンタラッチ42に取り込まれた信号は、水平転送回路15により、信号処理回路16に送られる。信号処理回路16では、最終的なAD変換結果を得るために下式の演算を実施する。
【0081】
AD変換結果=Signal電圧変換結果+(フルコード/2)×(Coarse判定結果)-Dark電圧変換結果
【0082】
Coarse判定結果は、MSBがHレベルのとき1であり、MSBがLレベルのとき0である。フルコードは、14ビットのAD変換回路であれば、2の14乗の16384である。
【0083】
次に、本実施形態の効果を説明する。
図13は、実施形態1に係る固体撮像装置において、Dark電圧変換時、及び、Signal電圧変換時で出力信号MSBがLレベルのときの第1アンプ21の近傍の回路図と、RAMPR信号線、RAMPF信号線及びVRT配線に着目した等価回路を説明する図である。
図14は、実施形態1に係る固体撮像装置において、Signal電圧変換時で出力信号MSBがHレベルのときの第1アンプ21の近傍の回路図と、RAMPR信号線、RAMPF信号線およびVRB配線に着目した等価回路を説明する図である。
図15は、実施形態に係る固体撮像装置において、入力端子VIN1Pの寄生キャパシタCpによるキャンセルキャパシタC1の容量値への影響を説明する図である。
【0084】
図13に示すように、Dark電圧変換時、及び、Signal電圧変換時で出力信号MSBがLレベルの場合には、入力端子VIN1Pの寄生容量を無視すると、VRT配線には、(dV/dt)×(Ctot/4)の電流が流れる。逆ランプ信号RAMPRのスルーレートを、ランプ信号RAMPFのそれと絶対値が等しく、向きが逆の(-dV/dt)にして、キャンセルキャパシタC1の容量値を(Ctot/4)にすることによって、VRT配線のランプ電流をキャンセルすることができる。
【0085】
また、
図14に示すように、Signal電圧変換時で出力信号MSBがHレベルの場合には、逆ランプ信号RAMPR及びキャンセルキャパシタC1により、ランプ電流をキャンセルすることができる。
【0086】
図15に示すように、出力信号MSBがLレベルの場合には、入力端子VIN1Pの寄生キャパシタCpの容量値cpとするとき、ランプ電流は、以下となる。
(dV/dt)×(Ctot/2)
2/(Ctot+cp)
【0087】
この場合は、キャンセルキャパシタC1の容量値を、(Ctot/2)2/(Ctot+cp)にする必要がある。例として、cp=Ctot/2のとき、C1の容量値は(Ctot/6)が最適となる。実際の設計においては、レイアウトから入力端子VIN1Pの配線キャパシタを計算し、さらに、第1アンプ21の入力容量も考慮して、キャンセルキャパシタC1の容量値を決定する。
【0088】
このように、本実施形態の固体撮像装置1は、ランプ信号RAMPFのスイープ時に、RAMPR配線を、VRT配線またはVRB配線にオン状態で接続させる。これにより、VRT配線及びVRB配線に流れるランプ電流をキャンセルすることができるので、参照電圧VRT及びVRBの変動を抑制することができる。よって、固体撮像装置1の性能を向上させることができる。
【0089】
ランプ電流キャンセル回路30は、RAMPF配線からVRT配線またはVRB配線までの等価容量値に応じたキャパシタを有しており、逆ランプ信号をVRT配線またはVRB配線に印加することで、ランプ電流を打ち消すことができる。よって、ADCカラムに共通のVRT配線及びVRB配線にランプ電流が流れ出るのを防ぐことができる。よって、VRT配線及びVRB配線の配線幅を拡張する必要がなく、固体撮像装置を小型化することができる。
【0090】
また、本実施形態の固体撮像装置1では、第1アンプ21の出力端子と第2アンプ22の入力端子間に、キャパシタを挿入している。これにより、第2アンプ22の電源電圧(以下DVDDと称する。)を第1アンプ21の電源電圧(以下AVDDと称する。)と異なるようにすることができる。例えば、DVDDをAVDDよりも小さくする(例えば1.2V)ことにより、第2アンプ22の消費電力を下げることができる。また、第1アンプ21と第2アンプ22の電源を分離することにより、第2アンプ22の電流変化による電源電圧ノイズの干渉を防ぐことができる。
【0091】
(実施形態2)
次に、実施形態2の固体撮像装置を説明する。本実施形態の固体撮像装置は、AD変換回路の内部で、変換ゲインを2倍にする構成となっている。
図16は、実施形態2に係る固体撮像装置において、第1アンプ21の入力端子VIN1Pに接続されるキャパシタ、スイッチおよびランプ電流キャンセル回路を例示した構成図である。
【0092】
図16に示すように、第1アンプ21の入力端子VIN1Pに接続されるキャパシタCA、CB、CC及びCDを用いた容量分圧によって、比較信号電圧を1/2倍に減衰させる。これにより、変換ゲインを2倍にすることを実現する。第1アンプ21、第2アンプ22、第3アンプ23及び2値化回路24からなるコンパレータ20、並びに、ADCIN側信号の構成は、実施形態1と同様である。第1アンプ21の入力端子VIN1P側の回路は、実施形態1における1倍のみの構成時の回路と同様の回路が二組備わる。
【0093】
具体的には、コンパレータ20は、スイッチSWA、スイッチSWB、スイッチSWC、スイッチSWD及びスイッチSWEを1つのセットとした場合に、複数のセットを有している。また、ランプ電流キャンセル回路30は、キャンセルキャパシタC1、キャンセルスイッチSW1及びキャンセルスイッチSW2を1つのセットとした場合に、複数のセットを有している。
【0094】
このように、第1アンプ21の入力端子VIN1P側の接続を変更することにより、ランプ信号RAMPFの波形を1/2に減衰させる。よって、輝度信号線ADCINの輝度出力信号は、見かけ上、2倍に見える。ランプ信号RAMPFを減衰させることで、ランプ電流が変わる。このため、ランプ電流キャンセル回路30もこれに合わせる必要がある。図では、ゲイン1倍用、ゲイン2倍用を備え、ゲインの指定に応じて切り替えて動作させる。なお、ゲインは、1倍用及び2倍用に限らず、これ以外の倍数でもよい。コンパレータ20は、入力端子VIN1Pと、VRT配線及びVRB配線との間に接続させるキャパシタの数を調整して、入力端子VIN1Pに入力される参照電圧VRT及び参照電圧VRBの大きさを調整可能である。
【0095】
図17(a)は、実施形態2に係る固体撮像装置において、スイッチ制御回路およびランプ電流キャンセル回路の制御を説明する図であり、(b)は、制御信号を例示した図である。
図17(a)において、キャパシタCA、CB、CC及びCDは、すべて等しい値(Ctot/4)である。スイッチ制御回路25には、パルスP01、P02、P03、P04、P05、X2EN、MSB信号が入力される。ゲイン設定X2ENは、変換ゲイン2倍のときにHレベルとなる制御信号である。P01、P02、P03、P04、P05、X2ENは、
図1の制御回路10における制御信号として生成され、AD変換回路に入力される。これらの信号により、スイッチSWA~SWJを切り替える。この回路に必要な機能を論理式で示したものが
図17(b)となる。
【0096】
また、ランプ電流キャンセル回路30は、キャンセルキャパシタC1とキャンセルスイッチSW1及びSW2は、実施形態1と同様に、ゲイン1倍時のものである。キャンセルキャパシタC2及びC3、並びに、キャンセルスイッチSW3、SW4、SW5は、ゲイン2倍時に使用する回路である。
【0097】
変換ゲイン1倍のとき、端子VIN1Pの寄生キャパシタを無視するとキャンセルキャパシタC1の容量値は、実施形態1と同様に(Ctot/4)になる。変換ゲイン2倍のとき、キャパシタCC及びCDは、常に、VRT配線に接続されており、比較信号は、1/2に減衰される。このとき、キャパシタCC及びCDを流れるランプ電流をキャンセルするキャパシタとして、キャンセルキャパシタC3が用いられる。また、キャパシタCA及びCBは、一方がランプ信号RAMPFに接続され、もう一方は、出力信号MSBに応じて、VRT配線もしくはVRB配線に接続される。
【0098】
キャパシタCAまたはキャパシタCBを流れるランプ電流をキャンセルするキャパシタとして、キャンセルキャパシタC2が用いられる。入力端子VIN1Pの寄生キャパシタを無視すると、キャンセルキャパシタC2及びC3の容量値は、それぞれ(Ctot/8)、(Ctot/6)になる。
【0099】
次に、AD変換回路の内部でゲインを持つ構成に本実施形態を適用した例を示す。各動作期間の動きは、内部ゲインを持たない構成と同一のため、ここでは、Dark電圧変換期間のみを取り上げる。
図18及び
図19を用いて、本実施形態を適用した内部ゲインを有するAD変換回路の動作を述べる。
【0100】
図18は、実施形態2に係る固体撮像装置において、変換ゲインが1倍のときのDark変換時のスイッチ制御回路およびランプ電流キャンセル回路のスイッチの接続を説明する図である。
図18に示すように、AD変換回路の内部ゲインを1倍とした場合のDark電圧変換期間において、コンパレータ20の第1アンプ21の入力端子VIN1P側では、スイッチSWB及びSWGがオンし、キャパシタCA及びCCに、ランプ信号RAMPFを印加する。また、スイッチSWD及びSWIがオンし、キャパシタCB及びCDに参照電圧VRTを印加する。キャパシタCA~CDを介して、VRT配線とRAMPF信号線が接続される。このため、VRT配線にランプ電流が流れる。これをキャンセルするため、ランプ電流キャンセル回路30では、ゲイン1倍時用の回路であるキャンセルキャパシタC1に、キャンセルスイッチSW1を介してVRT配線を接続する。すなわち、キャンセルスイッチSW1をオンするように動く。
【0101】
図19は、実施形態2に係る固体撮像装置において、変換ゲインが2倍のときのDark変換時のスイッチ制御回路およびランプ電流キャンセル回路のスイッチの接続を説明する図である。
図19に示すように、AD変換回路の内部ゲインを2倍とするためには、キャパシタ分圧により、比較信号電圧を1/2に減衰させる。このため、キャパシタCC及びCDをVRT配線に接続する。スイッチSWA~SWEと、キャパシタCA及びCB側の回路は、1倍時と同一の接続となる。すなわち、キャパシタCAは、スイッチSWBを介して、RAMPF信号線に接続される。キャパシタCBは、スイッチSWDを介して、VRT配線に接続される。キャパシタCC及びCDがVRT配線に接続されることから、入力端子VIN1P側で生成される比較信号電圧は、
図18の場合に比べて、1/2に減衰される。
【0102】
キャパシタCAと、キャパシタCB、CC、CDの直列接続により、RAMPF信号線は、VRT配線に接続される。このため、ランプ電流が発生する。これをキャンセルするため、ランプ電流キャンセル回路30のうち、ゲイン2倍時用の回路により、逆ランプ電流を生成させる。キャンセルスイッチSW3及びSW5を介して、キャンセルキャパシタC2及びC3に逆ランプ信号RAMPRを印加し、キャンセル用ランプ電流を生成する。
【0103】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る固体撮像装置を説明する。本実施形態の固体撮像装置は、第2アンプ、第3アンプ、2値化回路を、第1アンプの電源電圧(以下AVDDと称する。)よりも、より小さい第2の電源電圧(以下DVDDと称する。)で駆動させる。これにより、特許文献3の単一電源のコンパレータよりも消費電力を低減することができる。
【0104】
図20は、実施形態3に係る固体撮像装置におけるAD変換回路を例示した構成図である。
図21は、実施形態3に係る固体撮像装置におけるコンバータの負荷回路を例示した図である。
図20に示すように、トランジスタMP11P、MP11N、MP12P、MP12N、MN11N、MN11P、MN12は、第1アンプ21aを構成している。これにより、入力端子VIN1P、VIN1Nの差動入力を増幅する。トランジスタMP11P、MP11N、MP12P、MP12Nは、負荷回路であり、実際には、
図21の構成となっている。すなわち、トランジスタMP12P及びMP12Nは、8個のトランジスタを含み、トランジスタMP11P及びMP11Nは、7個のトランジスタを含む。トランジスタ群MP11P、MP11Nは、互いの反転出力がゲート電極に接続されているため、負性抵抗として機能し、負荷抵抗を増加させて第1アンプ21aのゲインを大きくする。
【0105】
MPAZ1P、MPAZ1Nは、オートゼロスイッチとして機能する。
図6のタイミングチャートにしたがって動作する。PAZ1BがLレベルのとき、MPAZ1P、MPAZ1Nは、オン状態になり、入力端子とそれぞれの反転出力端子とを短絡する。これにより、オートゼロ電圧を生成する。PAZ1BがLレベルからHレベルに切り替わるときに、VIN1P、VIN1Nに接続されるキャパシタに信号のサンプリングが行われる。
【0106】
トランジスタMP21P、MP21N、MP22、MN21P、MN21N、MN22は、第2アンプ22aを構成する。これにより、第2アンプ22aの差動入力電圧を増幅するシングルエンドアンプとして機能する。トランジスタMN22は、VOUT2Pの電圧がVOUT2Nの電圧よりも、しきい電圧以上に大きくなると、オン状態となり第2アンプ22aの出力をクリップする。これにより、第2アンプ22aの出力反転前後で、第2アンプ22aの電流変化を防止する。したがって、アナログ電源の状態が異なるいわゆる電源段差を発生させない。
【0107】
MNAZ2P、MNAZ2Nは、オートゼロスイッチとして機能する。
図6のタイミングチャートにしたがって動作する。PAZ2TがHレベルのとき、MNAZ2P、MNAZ2Nは、オン状態になりオートゼロ電圧を生成する。PAZ2TがHレベルからLレベルに切り替わるときに、第1アンプ21aと第2アンプ22a間のキャパシタに信号のサンプリングが行われる。これにより、第1アンプ21aのオフセット誤差をキャンセルすることができる。
【0108】
トランジスタMP31、MN31、MN32は、第3アンプ23aを構成する。トランジスタMN31及びMP31は、トランジスタMN31のゲート電極を入力とするソース接地増幅回路である。トランジスタMP31は、定電流源として動作する負荷トランジスタである。
【0109】
Fine変換においては、初期状態の第3アンプ23aの入力電圧は、Hレベルにある。したがって、第3アンプ23aの出力VOUT3は、Lレベルとなっている。このとき、トランジスタMP31のドレイン電流は、トランジスタMN31のドレイン-ソース間を通ってグランドに流れる。
【0110】
入力端子VIN1Pの電圧が、入力端子VIN1Nの電圧よりも小さくなると、出力は反転する。このとき、トランジスタMN31は、オフ状態になり、トランジスタMP31のドレイン電流は、MN32を流れる。これにより、第3アンプ23aの出力反転前後で第2アンプ22aの電流変化を防止する。したがって、アナログ電源の状態が異なるいわゆる電源段差を発生させない。
【0111】
トランジスタMP41、MN41、MN42、インバータ回路は、2値化回路24aを構成する。トランジスタMP41、MN42は、
図6の制御信号PCOMPREST、PCOMPENによって制御される。PCOMPRSTがLレベルのとき、トランジスタMP41は、オン状態になる。これにより、VSENSEは、Hレベルになる。PCOMPRSTがHレベルになるとVSENSEは配線キャパシタなどの寄生キャパシタに電圧が保持されてHレベルを維持する。
【0112】
FINE変換においては、PCOMPENがHレベルのとき2値化回路24aが有効化される。2値化回路24の入力電圧がMN41のしきい電圧を超えると、トランジスタMN41がオンし、VSENSEがLレベルに引き下げられる。したがって、COMPOUTがLレベルに変化してこれにより出力が確定する。
【0113】
なお、COMPOUTは、DVDDの振幅でHレベル/Lレベルを出力する。
図22は、実施形態3に係る固体撮像装置において、Coarse変換結果を保持するMSBラッチの回路を説明する図である。Course変換結果のCOMPOUTは、
図22に示すMSBラッチ43に入力される。MSBラッチ43は、レベルシフタの機能を兼ねており、その出力MSBはAVDDの振幅でHレベル/Lレベルを出力する。
【0114】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係る固体撮像装置を説明する。
図23は、実施形態4に係る固体撮像装置におけるコンバータを例示した構成図である。
図24は、実施形態4に係る固体撮像装置における第1アンプ、第2アンプ及び2値化回路を例示した構成図である。本実施形態のAD変換回路は、2値化回路の前置アンプを2段構成にしたものである。
【0115】
図23及び
図24に示すように、第1アンプ21bは、AVDDを電源電圧とし、第2アンプ22b及び2値化回路24bは、DVDDを電源電圧として動作する。2段構成としたことにより、一層の低消費電力化と、回路規模削減による小面積化を図ることができる。
【0116】
トランジスタMP111P、MP111N、MP13、MN11P、MN11N、MN12は、第1アンプ21bを構成し、第1アンプ21bの差動入力電圧を増幅するシングルエンドアンプとして機能する。トランジスタMP13は、VOUT1PがVOUT1Nよりもしきい電圧を超えて下がるとオン状態となり、第1アンプ21bの出力をクリップする。これにより、第1アンプ21bの出力反転前後で、第1アンプ21bの電流変化を防止する。したがって、アナログ電源の状態が異なるいわゆる電源段差を発生させない。
【0117】
また、出力電圧をクリップすることにより、第2アンプ22bの入力電圧VIN2がグランド電圧未満となり、MNAZ2のソース電極のPN接合が順方向となる、いわゆる電荷リークが生じることを防ぐ。以下、第2アンプ22b、2値化回路24bは、実施形態3の第3アンプ23a、2値化回路24aと同様である。
【0118】
以上、各実施形態を説明したが、上記の構成に限らず、技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。また、実施形態1~4の各構成を組み合わせた半導体装置も、技術的思想の範囲である。例えば、下記の固体撮像装置も、本実施形態1~4の技術的思想の範囲である。
【0119】
(付記1)
入射光量に応じた輝度信号電圧を輝度信号配線に出力する画素と、
参照電圧を参照電圧配線に出力する参照電圧生成回路と、
前記輝度信号電圧をAD変換するAD変換回路と、
を備え、
前記AD変換回路は、
第1アンプ、第2アンプ及び2値化回路を含み、
第1アンプの出力端子は、第1キャパシタを介して第2アンプの入力端子に接続された固体撮像装置。
【0120】
(付記2)
第2アンプと、2値化回路との間にさらに第3アンプが接続された付記1記載の固体撮像装置。
【符号の説明】
【0121】
1 固体撮像装置
10 制御回路
11 行選択回路
12 参照電圧生成回路
13 バイアス回路
14 カウンタ回路
15 水平転送回路
16 信号処理回路
20 コンパレータ
21 第1アンプ
22 第2アンプ
23 第3アンプ
24 2値化回路
25 スイッチ制御回路
30 ランプ電流キャンセル回路
31 ランプ電流キャンセル制御回路
40 ラッチ
41 出力用MSBラッチ
42 カウンタラッチ
43 MSBラッチ
120 コンパレータ
121 第1アンプ
ADC コンバータ
ADCIN 輝度信号線
AL 画素アレイ
CL 制御線
FD フローティングディフュージョン
MSB 出力信号
PD フォトダイオード
PX 画素
RST リセット制御信号
RAMPF ランプ信号
RAMPR 逆ランプ信号
SEL 行選択信号
TR1 リセットトランジスタ
TR2 転送トランジスタ
TR3 行選択トランジスタ
TR4 増幅トランジスタ
TX 転送制御信号
VIN1P 入力端子
VRB、VRT 参照電圧