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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】安全装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 27/00 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
H01H27/00 G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019058432
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020161291
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲城 健司
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-159401(JP,A)
【文献】特開2006-216484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーの抜き差しにより通電状態を変更できるスイッチの安全装置であって、
前記スイッチの一側面に設けられた前記キーの差し込み口を閉鎖するシャッターと、
前記シャッターが前記差し込み口を閉鎖する位置と前記差し込み口に前記キーを差し込み可能な位置との間で移動可能に取り付けられた支持部材とを備え、
前記支持部材は、
スイッチの上方に位置してシャッターの上下方向の移動を誘導するガイド部と、
スイッチを挟んで、差し込み口を閉鎖した状態のシャッターの反対側に配置されてスイッチに固定される固定部と、
ガイド部と固定部とを接続する接続部とを備え、
前記接続部は前記スイッチの上面部との間に隙間を有して配置されており、
前記隙間の少なくとも一部を塞ぐスペーサが該接続部に取付けられている
ことを特徴とする安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内の設備周り等に設置された安全柵、フェンス、間仕切り等の囲いの出入口に取付けられて、出入口の扉の開閉に応じて、設備への電力を供給あるいは停止させるためのスイッチの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等の施設内には各種産業機械を有する設備が多数配置されており、施設内の作業者の安全性を確保するために、設備周辺の危険領域を囲むように安全柵、フェンス、間仕切り等の囲いが設置されて危険領域への作業者の立入りを制限されている。一方、設備の点検時や故障の修繕時は、囲いに設けられた出入口から作業者が囲いの中に入って作業する。通常、点検や修繕等の作業時は設備への電力の供給が停止される。
【0003】
電力の供給停止手段として、出入口の扉付近にスイッチが取付けられることがある。具体的なスイッチの形態としては、例えば、差し込み口にキーを差し込むと設備は通電状態となり、キーを抜くと設備への電力供給が停止されるものであって、キーが扉の開閉に連動するタイプと、キーの抜き差しにより扉の施錠・解錠するタイプとがある。ただし、いずれの場合であっても、扉が開いているとき、又は解錠時に、他の作業者が、誤って扉を閉じたり、又は施錠したりして、設備が通電状態となってしまうおそれがある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、スイッチに取付けられて、ワンタッチ操作によりアクチュエータ挿入口(キーの差し込み口)を塞ぐことが可能な安全保持具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-159401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されている安全保持具は、作業者がアクチュエータ(キー)を引き抜くと挿入口が塞がれるため、他の作業者が誤ってアクチュエータを挿入口に挿入するようなことは起こりにくくなる。一方、スイッチは設備への電力供給や停止に直結するので、安全保持具の取付けにより、スイッチに対して応力等が生じて電気回路に通電不良や断線等の不具合が生じにくい取付形態が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、作業者がスイッチからキーを引き抜いた時に差し込み口を確実に閉鎖しつつ、スイッチの電気回路の不具合が生じにくい、安全装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。すなわち本発明に係る安全装置は、キーの抜き差しにより通電状態を変更できるスイッチの安全装置であって、前記スイッチの一側面に設けられた前記キーの差し込み口を閉鎖するシャッターと、前記差し込み口を閉鎖する位置と前記差し込み口にキーを差し込み可能な位置との間で前記シャッターが移動可能に取り付けられた支持部材とを備え、前記支持部材は、スイッチの上方に位置してシャッターの上下方向の移動を誘導するガイド部と、スイッチを挟んで、差し込み口を閉鎖した状態のシャッターの反対側に配置されてスイッチに固定される固定部と、ガイド部と固定部とを接続する接続部とを備え、前記接続部は前記スイッチの上面部との間に隙間を有して配置されており、前記隙間の少なくとも一部を塞ぐスペーサが該接続部に取付けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持部材は、差し込み口から離れた位置に固定されているので、キーを差し込み口から引き抜いた時は、この差し込み口をシャッターで確実に閉鎖するとともに、スイッチの通電に対する誤作動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る安全装置を取付けたスイッチの実施の一形態を示す正面図である。
図2】本発明に係る安全装置を取付けたスイッチの実施の一形態を示す側面図である。
図3図1のA-A線の要部拡大断面図である。
図4】本発明に係る安全装置を用いたスイッチの使用状態を示す説明図である。
図5】本発明に係る安全装置を用いたスイッチの使用状態を示す他の説明図である。
図6図2の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1図2は、本実施形態に係る安全装置10を取付けられたスイッチ100を示す説明図であって、図1は正面図、図2は側面図である。
【0012】
図1図2に示すように、スイッチ100は、一般的には、縦長の直方体状であって、一側面にキー120を挿入可能な差し込み口110を有している。キー120を差し込み口110に挿入するとスイッチ100は通電状態となり、キー120を引き抜くとスイッチ100は通電が停止した状態となる。なお、スイッチ100の差し込み口110を有する一側面側を前側、その反対面側を後側として説明する。
【0013】
スイッチ100は、図示しないが、工場の設備周りに配置された囲いの出入り口に設けられており、例えば、出入り口の扉にキー120が取付けられ、囲い側にスイッチ100が取付けられていれば、扉を開けるとキー120が差し込み口110から引き抜かれてスイッチ100の通電が停止されるので、作業者が囲い内に移動して設備のメンテナンスや故障の修理作業を安全に実施することができる。また、扉を閉めるとスイッチ100は通電状態となるので、設備を稼働させることができる。
【0014】
このため、作業者が囲い内で作業しているときは、他の作業者が誤って扉を閉めても、差し込み口110にキー120が挿入できないようにするために、スイッチ100に安全装置10が取付けられている。
【0015】
安全装置10は、スイッチ100に取付けられる支持部材20と、スイッチ100の差し込み口110を閉鎖するシャッター30とを備えている。
【0016】
支持部材20は、スイッチ100に固定するための固定部21と、シャッター30の上下方向の移動を誘導するためのガイド部22と、固定部21とガイド部22とを接続する接続部23とを備えている。本形態では、図2に示すように、固定部21、ガイド部22及び接続部23は、ステンレス合金製の板材を折り曲げ加工して、固定部21、接続部23、ガイド部22が断面Z字状に形成されたものである。
【0017】
固定部21は、スイッチ100の差し込み口110とは反対側の一側面である後側に配置されており、ビスBを介してスイッチ100に固定されている。これにより、支持部材20がスイッチ100に取付けられた状態となる。
【0018】
シャッター30は、板状であって、後側の後面部30aが差し込み口110側であるスイッチ100の前側の一側面に対向して配置され、上下方向に移動可能であって、差し込み口110を閉鎖する位置と、差し込み口110を解放する位置との間で上下方向に移動可能である。本形態においては、差し込み口110は横長形状であり、シャッター30の横方向の幅は、差し込み口110の横幅よりも広くなっており、シャッター30によって差し込み口110全体を覆うことができる。
【0019】
次に、支持部材20のガイド部22とシャッター30との関係について詳しく説明する。図3図1のA-A線の要部拡大断面図である。ガイド部22は、板状であって、シャッター30の後側の後面部30aと該ガイド部22の前側の前面部22aとが対向して配置されている。そして、シャッター30の上部の両側部は、図1図3に示すように、ガイド部22と係合する係合部31を有している。係合部31は、断面略L字状に形成されており、ガイド部22の側方に配置される側部32と、ガイド部22の後面部22b側に配置される後部33とを有している。これにより、シャッター30はガイド部22に沿って上下方向に移動することができる。
【0020】
また、図2に示すように、ガイド部22の上端部にはストッパー24が設けられている。これによって、シャッター30は、上方への移動がストッパー24によって規制されており、ガイド部22から外れることが抑えられる。
【0021】
一方、シャッター30の下方向の移動は、係合部31によって規制されている。すなわち、シャッター30の下方へ移動した際、係合部31が、支持部材20によってそれ以上下方に移動できなくなるところがシャッター30の移動下限となる。
【0022】
ここで、図2に示すように、ガイド部22の後面部22bの下端部は、凹曲面部25を経て接続部23の上面部と繋がっている。従って、シャッター30は、係合部31の後部33の下端部が凹曲面部25と当接する箇所で下方向の移動が阻止されて、ここがシャッター30の移動下限となる。
【0023】
これにより、係合部31の下端部が接続部23の上面部に当接することがないので、シャッター30の下方向の移動が阻止されるときにそれを受け止める支持部材20の衝撃が緩和されて、スイッチ100に対する前記衝撃の影響も緩和され、スイッチ100の通電に対する誤作動が生じにくくなる。
【0024】
図4図5は安全装置10を取付けたスイッチ100の使用状態を示す説明図であって、いずれも(a)は正面図、(b)は側面図である。図4に示すように、差し込み口110にキー120が差し込まれている時は、シャッター30は、キー120によって下方への移動が阻止されている。そして、図5に示すように、差し込み口110からキー120を引き抜くと、シャッター30は、下方に移動して差し込み口110を閉鎖し、係合部31の後部33の下端部が凹曲面部25に当接する箇所で止まる。本形態では、前述のシャッター30が止まる位置において、ガイド部22を前後方向に貫通し、かつ、シャッター30と前後方向で重なり合わない位置に貫通孔26が形成されている。貫通孔26に、例えば、南京錠のような錠(図示せず)を掛けることによって、シャッター30を上方に移動しても錠に阻止されて、差し込み口110が閉鎖された状態を保持できる。これにより、錠を掛けた作業者以外は錠を解錠することができないので、他の作業者がシャッター30を移動させて、差し込み口110にキー120を差し込むことができなくなる。
【0025】
ここで、スイッチ100は通電状態を変更できるものであるから、安全装置10による通電への影響を抑えるために、支持部材20は、スイッチ100に取付け、取り外し可能な形態が好ましく、更に、その取付け時には、スイッチ100で用いられているビス、又はそれらが取付けられるビス孔を利用できる形態が好ましい。
【0026】
一般にスイッチ100は、その外周部に筐体130の上部に合成樹脂製のカバー材140が取付けられ、カバー材140に差し込み口110が形成され、更にカバー材140の上面部の四隅からスイッチ100内部のスイッチ本体のビス孔(図示せず)に向けてビスを締結する形態が多く用いられている。従って、上記ビスやビス孔を利用して接続部23をスイッチ100の上面部に位置するカバー材140に直接取付ける形態も考えられる。しかしながら、特に合成樹脂製のカバー材140は、成型上、中央が上方に僅かに突出した凸曲面状に形成されることが多く、接続部23の四隅をビスで締結すると、接続部23の中央部がカバー材140を下方に強く押圧することになるため、カバー材140に歪みが生じ、これによって、スイッチ100の通電に対する誤作動が生じる恐れがある。
【0027】
図6図2の接続部23付近の部分拡大図であって、接続部23は、スイッチ100の上面部に位置するカバー材140との間に隙間40が形成されている。また、図2に示すように、支持部材20は、接続部23ではなく、固定部21を介して、スイッチ100の筐体130に取付けられている。これにより、上記の様なカバー材140の歪みは生じにくくなる。
【0028】
隙間40をスイッチ100の上面部全体にわたって形成しておくと、作業者が誤ってガイド部22を触ってしまうと、支持部材20が変形して、ガイド部22の向きが変わり、シャッター30がうまく上下方向に移動できなくなるおそれがある。そこで、隙間40には、スペーサ50が配置されている。スペーサ50は、接続部23の下部に固定されており、カバー材140の上面の全部を覆うものではなく、本形態では、前後方向中央部をスペーサ50によって覆い、前側と後側に当たる、シャッター30側と固定部21側にそれぞれ隙間40が残存している。
【0029】
これにより、作業者が誤ってガイド部22を触っても、支持部材20が大きく変形することはない。また、隙間40が一部残存しているので、本形態のように、支持部材20が板材を折り曲げ加工して作成されてものであっても、固定部21から接続部23に掛けての折り曲げ部27がカバー材140と離れた状態となっており、前記の折り曲げ部27がカバー材140を押圧して歪みが生じるような不具合を抑えることができる。
【0030】
スペーサ50は、本形態では、支持部材20と同じ材質のものを用いているが、他の金属でもよく、プラスチックやゴムといった合成樹脂を用いてもよい。また、本形態では、スペーサ50と接続部23とは、上下方向に貫通する貫通孔(図示せず)にボルト51を通し、接続部23の上面部に固定されたナット52を用いて締結されたものであるが、他の接合方法を用いてもよい。
【0031】
以上、本発明の安全装置について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、工場内の設備周り等に設置される囲いの出入り口の扉付近に取り付けられる設備の通電用のスイッチに取り付けられる安全装置において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 安全装置
20 支持部材
21 固定部
22 ガイド部
22a 前面部
22b 後面部
23 接続部
24 ストッパー
25 凹曲面部
26 貫通孔
27 折り曲げ部
30 シャッター
30a 後面部
31 係止部
32 側部
33 後部
40 隙間
50 スペーサ
51 ボルト
52 ナット
100 スイッチ
110 差し込み口
120 キー
130 筐体
140 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6