(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】マルチモーダルポリエチレン重合用の反応器システム
(51)【国際特許分類】
C08F 2/01 20060101AFI20220621BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20220621BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20220621BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08F2/01
C08L23/06
C08F10/02
C08F2/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019147671
(22)【出願日】2019-08-09
(62)【分割の表示】P 2019513836の分割
【原出願日】2017-09-07
【審査請求日】2020-08-26
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517301210
【氏名又は名称】タイ ポリエチレン カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514163756
【氏名又は名称】エスシージー ケミカルズ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ティヤピブーンチャイヤ,ピヤワン
(72)【発明者】
【氏名】サムファワモントリ,パッチャリン
(72)【発明者】
【氏名】クロムカモル,ワラチャド
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/049551(WO,A1)
【文献】特表2009-508975(JP,A)
【文献】国際公開第2018/046604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器システムにおいてマルチモーダルポリエチレン組成物を製造する方法であって、
前記反応器システムは、
(a1)第一反応器と;
(b1)
減圧装置に接続された少なくとも1つの容器を備える、第一反応器と第二反応器との間に配置された水素除去ユニットであって、前記減圧装置が作動圧力を100~200kPa(絶対)の範囲の圧力に調整することを可能にする、ユニットと;
(c1)第二反応器と;
(d1)第三反応器と、を備え、
前記方法は、
(a2)チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンから選択される触媒系および前記第一反応器中の気相中に存在する全ガスに対して0.1~95mol%の量の水素の存在下、前記第一反応器中の不活性炭化水素媒体中でエチレンを重合して、低分子量ポリエチレンまたは中分子量ポリエチレンを得る工程と;
(b2)103~145kPa(絶対)の範囲の圧力で前記第一反応器から得られたスラリー混合物中に含まれる水素の98.0~
99.1重量%を前記水素除去ユニット中で除去し、得られた残留混合物を前記第二反応器へ移す工程と;
(c2)チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンから選択される触媒系の存在下、および工程(b2)で得られた量の水素の存在下、前記第二反応器中でエチレンおよび場合によりC
4~C
12α-オレフィンコモノマーを重合して、ホモポリマーまたはコポリマーの形態の第1の高分子量ポリエチレンまたは第1の超高分子量ポリエチレンを得て、得られた混合物を前記第三反応器に移す工程と;
(d2)チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンから選択される触媒系および水素の存在下(前記第三反応器中の水素の量は前記第三反応器中の気相中に存在する全ガスに対して
1~70mol%の範囲である)または場合により水素の実質的非存在下、前記第三反応器中でエチレンおよび場合によりα-オレフィンコモノマーを重合して、第2の高分子量ポリエチレンまたは第2の超高分子量ポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーを得る工程と
を含む、マルチモーダルポリエチレン組成物を製造する方法。
【請求項2】
前記水素除去ユニットが、水素と液体希釈剤を分離するためのストリップ塔をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素除去ユニット内の作動圧力が、
103~145kPa(絶対)の範囲である、
請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチモーダルポリエチレン重合法用の反応器システム、該反応器システム
を使用してマルチモーダルポリエチレン組成物を製造する方法、およびこの方法で得られ
るマルチモーダルポリエチレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン樹脂の需要は、種々の用途でますます使用されている。比較的新しいプラ
スチックについてポリエチレンの高性能が要求されるので、新しいポリマー材料の製造を
支援するための重合法技術が開発されてきた。エチレンコポリマーの加工性と物理的特性
のバランスをとるために、マルチモーダル重合法における開発が研究されてきた。
【0003】
先行技術では、マルチモーダルポリエチレン重合を使用して、別々の反応器中で各樹脂
画分を作り出すことによって異なる分子量を有するポリマーを製造している。最終ポリマ
ーの優れた加工性を提供するのに適したポリマーの分子量を制御するために、低分子量画
分が過剰の水素を用いて反応器中で製造される。物理的特性に影響を及ぼす高分子量画分
は、低水素濃度の重合条件下で製造される。低分子量ポリマーが好ましくは第一反応器中
で製造されることは当分野で周知である。優れた物理的特性を有するマルチモーダルポリ
マーを得るために、第一反応器からの全ての水素を除去したのち、重合スラリーポリマー
を第二反応器に渡し、ここで高分子量ポリマーの製造が行われる。
【0004】
米国特許出願第2010/0092709号明細書は、バイモーダルポリエチレンコポ
リマーを調製する方法を記載している。第二反応器中での重合を、低いコモノマー対エチ
レン比および低い水素対エチレン比で高温で作動して、改善された耐応力亀裂性および溶
融強度を有する樹脂を得る。
【0005】
米国特許第6716936号明細書は、バイモーダルポリエチレンコポリマーを製造す
る方法を記載している。ポリエチレンスラリー流を第一反応器から水素除去システムに向
けることによって、第二反応器を水素枯渇ポリエチレン重合下で作動する。第一反応器と
第二反応器の両方における重合が、軽溶媒としてプロパンまたはイソブタンを使用するこ
とによって泡立ち点で作動する。この方法は、高度に均質な高分子量樹脂用のバイモーダ
ルポリエチレンの製造に適している。
【0006】
米国特許第6291601号明細書は、比較的高分子量のポリエチレンを含むバイモー
ダルコポリマーを製造する方法を記載している。水素化触媒を第二反応器に導入して、水
素をエタンに変換することによって第一反応器からの残留水素ガスを消費し、第二反応器
内の低い水素濃度をもたらす。この技術を使用すると、未反応ガスの変換のために、水素
とエチレンの両方の原料消費のコストが増加する。
【0007】
米国特許出願公開第2003/0191251号明細書は、希釈剤として軽溶媒を使用
するカスケード反応器の間に配置された2つのフラッシュドラムを使用することによって
、ポリマースラリーから残留水素を除去する方法を開示している。スラリー移送ポンプの
閉塞を防ぐために、第1のフラッシュドラム出口への補給溶媒の添加が必要である。さら
に、スラリーを次のフラッシュドラムに移す前に、温かい補給溶媒が必要である。
【0008】
欧州特許第1655334号明細書は、MgCl2系チーグラー・ナッタ触媒を用いて
多段階工程で製造されるエチレンポリマーのマルチモーダル製造を開示している。重合段
階は、最初に超高分子量ポリマーを達成し、引き続いて低分子量ポリマーを達成し、最後
に最終段階で高分子量ポリマーを達成するために以下の順序で行われる。重合触媒を予備
重合工程に投入して超高分子量画分を調製する。
【0009】
国際公開第2013/144328号パンフレットは、成形用途に使用するためのチー
グラー・ナッタ触媒を使用して製造されるマルチモーダル高密度ポリエチレンの組成物を
記載している。15重量%未満の少量の超高ポリエチレンが第三反応器中で製造される。
【0010】
米国特許出願公開第2009/0105422号明細書は、マルチモーダルポリエチレ
ンを製造する方法を記載している。重合は3つのカスケード反応器中で行われ、各反応器
中のポリマーの分子量が水素の存在によって制御される。その後、各反応器中の水素の濃
度は、第一反応器中の最高水素濃度および第三反応器中の最低水素濃度を提供することに
よって低下する。
【0011】
国際公開第2013/113797号パンフレットは、第一反応器、第二反応器および
第三反応器の順序によってそれぞれ、低分子量エチレンポリマー、第1の高分子量エチレ
ンポリマーおよび第2の高分子量エチレンポリマーを含むポリエチレンを得るための重合
したポリエチレンおよび少なくとも1種の他のα-オレフィンの3つの主要なその後の工
程を含むポリエチレンを調製する方法を記載している。
【0012】
マルチモーダルポリエチレンを調製する多くの方法が公知であり、記載されているが、
マルチモーダル重合のための、特にポリエチレン組成物の機械的特性をさらに改善するた
めの新しい方法を開発する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許出願第2010/0092709号明細書
【文献】米国特許第6716936号明細書
【文献】米国特許第6291601号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0191251号明細書
【文献】欧州特許第1655334号明細書
【文献】国際公開第2013/144328号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2009/0105422号明細書
【文献】国際公開第2013/113797号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そのため、特にこのような反応器に含まれる水素除去ユニットの性能を向上させるため
の、先行技術の欠点を克服する反応器システムおよびマルチモーダルポリエチレンを調製
する方法を提供することが本発明の目的である。
【0015】
特に改善された機械的特性、例えばシャルピー指数を有する、先行技術の欠点を克服す
るマルチモーダルポリエチレン組成物を提供することがさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
当分野のこの目的は、独立請求項の主題による本発明によって達成される。好ましい実
施形態は従属請求項から生じる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本目的はまず第一に、マルチモーダルポリエチレン重合法のための反応器システムであ
って、
(a)第一反応器と;
(b)好ましくは真空ポンプ、コンプレッサ、ブロワ、エジェクタまたはこれらの組み
合わせから選択される減圧装置に接続された少なくとも1つの容器を備える、第一反応器
と第二反応器との間に配置された水素除去ユニットであって、減圧装置が作動圧力を10
0~200kPa(絶対)の範囲の圧力に調整することを可能にするユニットと;
(d)第二反応器と;
(e)第三反応器と
を備える反応器システムによって達成される。
【0018】
好ましくは、減圧装置が、水素除去ユニット内の作動圧力を103~145kPa(絶
対)、好ましくは104~130kPa(絶対)、最も好ましくは105~115kPa
(絶対)の範囲の圧力に調整することを可能にする。
【0019】
好ましくは、水素除去ユニットが、水素と液体希釈剤を分離するためのストリップ塔を
さらに含む。
【0020】
本目的はさらに、本発明の反応器システムにおいてマルチモーダルポリエチレン組成物
を製造する方法であって、
(a)チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンから選択される触媒系および第一反応
器中の気相中に存在する全ガスに対して0.1~95mol%の量の水素の存在下、第一
反応器中の不活性炭化水素媒体中でエチレンを重合して、低分子量ポリエチレンまたは中
分子量ポリエチレンを得る工程と;
(b)103~145kPa(絶対)の範囲の圧力で第一反応器から得られたスラリー
混合物中に含まれる水素の98.0~99.8重量%を水素除去ユニット中で除去し、得
られた残留混合物を第二反応器へ移す工程と;
(c)チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンから選択される触媒系の存在下、およ
び工程(b)で得られた量の水素の存在下、第二反応器中でエチレンおよび場合によりC
4~C12α-オレフィンコモノマーを重合して、ホモポリマーまたはコポリマーの形態
の第1の高分子量ポリエチレンまたは第1の超高分子量ポリエチレンを得て、得られた混
合物を第三反応器に移す工程と;
(d)チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンから選択される触媒系および水素の存
在下(第三反応器中の水素の量は第三反応器中の気相中に存在する全ガスに対して0.1
~70mol%、好ましくは1~60mol%の範囲である)または場合により水素の実
質的非存在下、第三反応器中でエチレンおよび場合によりα-オレフィンコモノマーを重
合して、第2の高分子量ポリエチレンまたは第2の超高分子量ポリエチレンのホモポリマ
ーまたはコポリマーを得る工程と
を(この順序で)含む方法によって達成される。
【0021】
この点について「実質的非存在」とは、水素が技術的手段によって回避することができ
ない量でしか第三反応器中に含まれないことを意味する。
【0022】
第一反応器から得られ、水素除去ユニット中で水素を除去する工程に供されるスラリー
混合物は、第一反応器中で得られる固体および液体成分の全て、特に低分子量ポリエチレ
ンまたは中分子量ポリエチレンを含有する。さらに、第一反応器から得られるスラリー混
合物は、第一反応器で使用される水素の量にかかわらず、水素で飽和されている。
【0023】
好ましくは、除去が、水素の98.0~99.8重量%、より好ましくは98.0~9
9.5重量%、最も好ましくは98.0~99.1重量%の除去である。
【0024】
好ましくは、水素除去ユニット内の作動圧力が、103~145kPa(絶対)、より
好ましくは104~130kPa(絶対)、最も好ましくは105~115kPa(絶対
)の範囲である。
【0025】
好ましくは、工程(a)が低分子量ポリエチレンまたは中分子量ポリエチレンをもたら
し、工程(c)が高分子量ポリエチレンまたは超高分子量ポリエチレンをもたらし、工程
(d)が高分子量ポリエチレンまたは超高分子量ポリエチレンをもたらす、ただし、工程
(c)および(d)の一方のみが高分子量ポリエチレンをもたらし、工程(c)および(
d)の他方が超高分子量ポリエチレンをもたらす。
【0026】
本明細書に記載される低分子量ポリエチレン、または中分子量ポリエチレン、高分子量
ポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、それぞれ20
,000~90,000g/mol(低)、90,000超~150,000g/mol
(中)、150,000超~1,000,000g/mol(高)および1,000,0
00超~5,000,000g/mol(超高)である。
【0027】
最後に、本目的は、本発明の方法によって得られるマルチモーダルポリエチレン組成物
であって、
(A)30~65重量部の低分子量ポリエチレンまたは中分子量ポリエチレンと;
(B)5~40重量部の第1の高分子量ポリエチレンまたは第1の超高分子量ポリエチ
レンと;
(C)10~60重量部の第2の高分子量ポリエチレンのコポリマーまたは第2の超高
分子量ポリエチレンと
を含むマルチモーダルポリエチレン組成物によって達成される。
【0028】
好ましい実施形態では、マルチモーダルポリエチレン組成物が、ゲル浸透クロマトグラ
フィーによって測定して、80,000~5,000,000g/mol、好ましくは1
50,000~3,000,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0029】
さらに、マルチモーダルポリエチレン組成物が、ゲル浸透クロマトグラフィーによって
測定して、5,000~100,000g/mol、好ましくは5,000~80,00
0g/molの数平均分子量を有することが好ましい。
【0030】
好ましくは、マルチモーダルポリエチレン組成物が、ゲル浸透クロマトグラフィーによ
って測定して、700,000~10,000,000g/mol、好ましくは700,
000~8,000,000g/molのZ平均分子量を有する。
【0031】
好ましくは、マルチモーダルポリエチレン組成物が、ASTM D 1505による密
度0.930~0.965g/cm3および/または0.01~60g/10分のメルト
フローインデックスMI5、および/または0.05~800g/10分のMI21、お
よび/またはISO1628-3によって測定して、1.0~30、好ましくは1.5~
30の固有粘度を有する。
【0032】
本発明の反応器システム、本発明の方法および本発明のマルチモーダルポリエチレン組
成物の好ましい実施形態では、「を含む」が「からなる」である。
【0033】
好ましい実施形態では、「重量部」が「重量%」である。
【0034】
好ましいと述べられた上記の実施形態は、得られたマルチモーダルポリエチレン組成物
のさらに改善された機械的特性をもたらした。上記の好ましい態様の2つまたはそれ以上
を組み合わせることによって最良の結果が達成された。同様に、より好ましい、または最
も好ましいと上述された実施形態は、機械的特性の最良の改善をもたらした。
【0035】
本発明は、マルチモーダルポリエチレン重合用の反応器システムに関する。このシステ
ムは、第一反応器、第二反応器、第三反応器、および第一反応器と第二反応器との間に配
置された水素除去ユニットを備える。
【0036】
第一反応器からの水素枯渇ポリエチレンは、後続の反応器における高分子量の重合に影
響を及ぼす。特に、高分子量は、射出成形、吹込成形および押出を含む種々の製品用途に
有利なポリエチレンの改善された機械的特性をもたらす。本発明のマルチモーダルポリエ
チレン樹脂を製造するための触媒は、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン系触媒および
非メタロセン系触媒を含むシングルサイト触媒である、またはクロム系が使用され得、好
ましくは従来のチーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト触媒である。触媒は典型的
には当分野で周知の助触媒と一緒に使用される。
【0037】
不活性炭化水素は、好ましくはヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソブタンを含む
脂肪族炭化水素である。好ましくは、ヘキサン(最も好ましくはn-ヘキサン)が使用さ
れる。配位触媒、エチレン、水素および場合によりα-オレフィンコモノマーを第一反応
器中で重合する。次いで、第一反応器から得られた全生成物を水素除去ユニットに移して
、水素の98.0~99.8重量%、未反応ガスおよびいくらかの揮発性物質を除去した
後、第二反応器に供給して重合を続ける。第二反応器から得られるポリエチレンは、第一
反応器から得られる生成物と第二反応器から得られる生成物の組み合わせであるバイモー
ダルポリエチレンである。次いで、このバイモーダルポリエチレンを第三反応器に供給し
て重合を続ける。第三反応器から得られる最終マルチモーダル(トリモーダル)ポリエチ
レンは、第一、第二および第三反応器からのポリマーの混合物である。
【0038】
第一、第二および第三反応器中の重合は、異なる工程条件下で行われる。これらは、気
相中のエチレンおよび水素の濃度、温度または各反応器に供給されるコモノマーの量の変
動であり得る。所望の特性、特に所望の分子量のそれぞれのホモポリマーまたはコポリマ
ーを得るための適切な条件は、当分野で周知である。当業者は、自身の一般的な知識に基
づいて、これに基づいてそれぞれの条件を選択することが可能になる。結果として、各反
応器で得られるポリエチレンは異なる分子量を有する。好ましくは、低分子量ポリエチレ
ンまたは中分子量ポリエチレンは第一反応器中で製造される一方、高分子量または超高分
子量ポリエチレンはそれぞれ第二および第三反応器中で製造される。
【0039】
第一反応器という用語は、低分子量ポリエチレン(LMW)または中分子量ポリエチレ
ン(MMW)が製造される段階を指す。第二反応器という用語は、第1の高分子量または
超高分子量ポリエチレン(HMW1)が製造される段階を指す。第三反応器という用語は
、第2の高分子量または超高分子量ポリエチレン(HMW2)が製造される段階を指す。
【0040】
LMWという用語は、20,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw
)を有する第一反応器中で重合された低分子量ポリエチレンポリマーを指す。
【0041】
MMWという用語は、90,000超~150,000g/molの重量平均分子量(
Mw)を有する第一反応器中で重合された中分子量ポリエチレンポリマーを指す。
【0042】
HMW1という用語は、150,000超~5,000,000g/molの重量平均
分子量(Mw)を有する第二反応器中で重合された高分子量または超高分子量ポリエチレ
ンポリマーを指す。
【0043】
HMW2という用語は、150,000超~5,000,000g/molの重量平均
分子量(Mw)を有する第三反応器中で重合された高分子量または超高分子量ポリエチレ
ンポリマーを指す。
【0044】
LMWまたはMMWは、ホモポリマーを得るためにコモノマーの非存在下、第一反応器
中で製造される。
【0045】
本発明の改善されたポリエチレン特性を得るために、0.965g/cm3以上の密度
およびLMWについて10~1000g/10分およびMMWについて0.1~10g/
10分の範囲のMI2を有する高密度LMWまたはMMWポリエチレンを得るために、エ
チレンをコモノマーの非存在下、第一反応器中で重合する。第一反応器で標的密度および
MIを得るために、重合条件を制御および調整する。第一反応器内の温度は70~90℃
、好ましくは80~85℃に及ぶ。ポリエチレンの分子量を制御するために水素を第一反
応器に供給する。第一反応器を250~900kPa、好ましくは400~850kPa
の圧力で作動する。第一反応器の気相中に存在する水素の量は、0.01~95mol%
、好ましくは0.01~90mol%の範囲である。
【0046】
第二反応器に供給する前に、好ましくはヘキサン中のLMWまたはMMWポリエチレン
を含有する第一反応器から得られたスラリーを、好ましくは真空ポンプ、コンプレッサ、
ブロワおよびエジェクタの1つまたは組み合わせを含む減圧装置と接続したフラッシュド
ラムを有し得る水素除去ユニットに移し、フラッシュドラム内の圧力を揮発性物質、未反
応ガスおよび水素がスラリー流から除去されるように低下させる。水素除去ユニットの作
動圧力は、典型的には103~145kPa(絶対)、好ましくは104~130kPa
(絶対)に及び、水素の98.0~99.8重量%、好ましくは98.0~99.5重量
%の水素が除去され得る。
【0047】
本発明では、水素の98.0~99.8重量%が除去され、重合がこれらの水素含量の
条件下で行われる場合、極めて高分子量のポリマーがこのようにして達成され得、シャル
ピー衝撃および曲げ弾性率が改善される。驚くべきことに、水素の98.0~99.8重
量%の除去の範囲外での作業では、極めて高分子量のポリマーを得る、ならびにシャルピ
ー衝撃および曲げ弾性率を改善するという本発明の効果は、同程度には観察できないこと
が分かった。この効果は、好ましいと述べられた範囲においてより顕著であった。
【0048】
第二反応器の重合条件は、第一反応器の条件とは著しく異なる。第二反応器内の温度は
65~90℃、好ましくは68~80℃に及ぶ。水素は第二反応器に供給されないので、
水素とエチレンのモル比は制御されない。第二反応器中の水素は、水素除去ユニットでフ
ラッシュされた後にスラリー流中に残っている第一反応器から残った水素である。第二反
応器内の重合圧力は100~3000kPa、好ましくは150~900kPa、より好
ましくは150~400kPaに及び、不活性ガス、例えば窒素の添加によって制御され
る。
【0049】
水素除去は、水素除去ユニットを通過する前後のスラリー混合物中に存在する水素の量
の比較結果である。水素除去の計算は、ガスクロマトグラフィーによる第一および第二反
応器中のガス組成の測定によって行われる。
【0050】
相当量の水素を除去して本発明の濃度を達成した後、水素除去ユニットからのスラリー
を第二反応器に移して重合を続ける。この反応器では、第一反応器から得られたLMWま
たはMMWポリエチレンの存在下、α-オレフィンコモノマーを用いてまたは用いないで
エチレンを重合してHMW1ポリエチレンを形成することができる。共重合に有用なα-
オレフィンコモノマーとしては、C4~12、好ましくは1-ブテンおよび1-ヘキセン
が挙げられる。
【0051】
第二反応器中での重合後、得られたスラリーを第三反応器に移して重合を続ける。
【0052】
HMW2は、第一および第二反応器から得られたLMWまたはMMWおよびHWM1の
存在下でエチレンを場合によりα-オレフィンコモノマーと共重合させることによって第
三反応器で製造される。共重合に有用なα-オレフィンコモノマーとしては、C4~12
、好ましくは1-ブテンおよび1-ヘキセンが挙げられる。
【0053】
第三反応器で標的密度および標的MIを得るために、重合条件を制御および調整する。
しかしながら、第三反応器の重合条件は、第一および第二反応器とは著しく異なる。第三
反応器内の温度は68~90℃、好ましくは68~80℃に及ぶ。ポリエチレンの分子量
を制御するために水素を第三反応器に供給する。第三反応器内の重合圧力は150~90
0kPa、好ましくは150~600kPaに及び、不活性ガス、例えば窒素の添加によ
って制御される。
【0054】
本発明のマルチモーダルポリエチレン組成物中に存在するLMWまたはMMWの量は3
0~65重量部である。本発明のポリエチレン中に存在するHMW1は5~40重量部で
あり、本発明のポリエチレン中に存在するHMW2は10~60重量部である。使用され
る重合条件に応じて、HMW1>HMW2またはHMW1<HMW2であることが可能で
ある。
【0055】
最終(自由流動)マルチモーダルポリエチレン組成物は、第三反応器から排出されたス
ラリーからヘキサンを分離することによって得られる。
【0056】
得られたポリエチレン粉末を直接使用してもよく、または次いで抗酸化剤および場合に
より添加剤と混合した後、押出してペレットに造粒してもよい。
【0057】
MI
5
およびMI
21
:それぞれ、5kgおよび21.6kgの負荷で190℃での試
験条件下でポリマーの流動性を決定するポリエチレンのメルトフローインデックス(MI
)を、ASTM D 1238によって測定し、g/10分で示す。
【0058】
密度:ポリエチレンの密度は、公知の密度の標準と比較して、液柱傾斜管内でペレット
が沈むレベルを観察することによって測定した。この方法は、ASTM D 1505に
準拠した120℃でアニーリングした後の固形プラスチックの測定である。
【0059】
分子量および多分散指数(PDI):重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
およびZ平均分子量(MZ)(g/mol)をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に
よって分析した。多分散指数は、Mw/Mnによって計算した。
【0060】
試料約8mgを1,2,4-トリクロロベンゼン8mlに160℃で90分間溶解した
。次いで、試料溶液200μlを、IR5、赤外検出器(Polymer Char、ス
ペイン)を備える高温GPCに、カラムゾーン145℃、検出器ゾーン160℃で流量0
.5ml/分で注入した。データを、GPC One(登録商標)ソフトウェア、Pol
ymer Char、スペインによって処理した。
【0061】
固有粘度(IV)
試験方法は、135℃でのHDPEまたは150℃でのUHMWPEの希溶溶液粘度の
測定を包含する。ポリマー溶液は、ポリマーを0.2%wt/vol安定剤(Irgan
ox 1010または同等物)と共にデカリンに溶解することによって調製した。詳細は
、ASTM D 2515によってIVの決定について与えられる。
【0062】
結晶化度:結晶化度は、ASTM D 3418に準拠する示差走査熱量測定(DSC
)による特性評価のために頻繁に使用される。試料をピーク温度およびエンタルピーによ
り識別すると同時に、結晶化度%をピーク面積から計算した。
【0063】
シャルピー衝撃強度:シャルピー衝撃強度を、23℃でISO179によって決定し、
単位kJ/m2で示す。
【0064】
曲げ弾性率:標本を調製し、ISO178によって試験を行った。曲げ試験は、三点曲
げ器具を備えた万能試験機を使用して行った。
【実施例】
【0065】
実験および実施例
中密度または高密度ポリエチレンの調製を3つの反応器中で連続して行った。エチレン
、水素、ヘキサン、触媒およびTEA(トリエチルアルミニウム)助触媒を表1に示され
る量で第一反応器に供給した。市販のチーグラー・ナッタ触媒を使用した。適切な触媒調
製は、例えばハンガリー特許出願番号第0800771R号明細書に記載されている。第
一反応器中での重合を行って低分子量または中分子量ポリエチレンを調製した。次いで、
第一反応器からの重合スラリーポリマーの全てを水素除去ユニットに移して、未反応ガス
およびヘキサンのいくらかをポリマーから除去した。水素除去ユニット内の作動圧力を1
00~115kPa(絶対)の範囲で変化させ、残留水素をヘキサンから98重量%超か
つ99.8重量%以下除去した後、第二重合反応器に移した。いくらかの新鮮なヘキサン
、エチレンおよび/またはコモノマーを第二反応器に供給して、第1の高分子量ポリエチ
レン(HMW1)を製造した。第二反応器からの重合ポリマーの全てを、第2の高分子量
ポリエチレン(HMW2)を製造する第三反応器に供給した。エチレン、コモノマー、ヘ
キサンおよび/または水素を第三反応器に供給した。
【0066】
比較実施例1(CE1)
ホモポリマーを第一反応器中で製造して低分子量部分を得た後、このようなポリマーを
水素除去ユニットに移した。反応混合物を水素除去ユニットに導入して、ポリマーから未
反応混合物を分離した。水素除去ユニットを150kPa(絶対)の圧力で作動すると、
残留水素は97.6重量%除去された。次いで、低分子量ポリマーを第二反応器に移して
、第1の高分子量ポリマーを製造した。最後に、第二反応器からの製造したポリマーを第
三反応器に移して、第2の高分子量ポリマーを調製した。第三に、コモノマーとして1-
ブテンを供給することによって、共重合を行った。
【0067】
実施例1(E1)
水素除去ユニットを115kPa(絶対)の圧力で作動したことを除いて、比較実施例
1と同様に実施例1を行った。第一反応器からの水素の残りを98.0重量%除去した。
これらのマルチモーダルポリマーの特徴的な特性を表2に示す。分かるように、比較実施
例1の特性と比較して、除去された水素の残りの割合が増加すると、剛性-衝撃バランス
の改善が観察された。
【0068】
実施例2(E2)
水素除去ユニットを105kPa(絶対)の圧力で作動したことを除いて、比較実施例
1と同様に実施例2を行った。第一反応器からの残留水素を99.1重量%程度除去した
。この圧力下での水素除去ユニットの作動はポリマー特性範囲の拡大をもたらす。表2に
見られるように、E2の最終メルトフローレートはCE1の最終メルトフローレートより
も低く、依然として曲げ弾性率を維持しながらシャルピー衝撃の改善をもたらした。
【0069】
比較実施例2(CE2)
水素除去ユニットを102kPa(絶対)の圧力で作動したことを除いて、比較実施例
1と同様に比較実施例2を行った。第一反応器からの水素の残りを99.9重量%程度除
去した。この圧力下での水素除去ユニットの作動はポリマー特性範囲の拡大をもたらす。
表2に見られるように、CE2の最終メルトフローレートおよび密度は、E2の最終メル
トフローレートおよび密度と非常に類似していた。E2と比較してシャルピー衝撃の減衰
がCE2において示された。
【0070】
比較実施例3(CE3)
ホモポリマーを第一反応器中で製造して低分子量部分を得た後、ポリマーを水素除去ユ
ニットに移した。反応混合物を水素除去ユニットに導入して、ポリマーから未反応混合物
を分離した。水素除去ユニットを150kPa(絶対)の圧力で作動すると、水素残留は
97.9重量%程度除去された。次いで、低分子量ポリマーを第二反応器に移して、第1
の高分子量ポリマーを製造した。第二反応器で、コモノマーとして1-ブテンを供給する
ことによって、共重合を行った。最後に、第二反応器からのインサイツバイモーダルコポ
リマーを第三反応器に移して、第2の高分子量コポリマー部分を調製した。このマルチモ
ーダルポリマーの特徴的な特性を表2に示す。第二反応器と第三反応器の両方でコポリマ
ーを製造すると、最終ポリマーの密度を低下させることによって、室温でのシャルピー衝
撃における有意な改善を得ることができた。
【0071】
実施例3(E3)
水素除去ユニットを105kPaの圧力で作動したことを除いて、比較実施例3と同様
に実施例3を行った。第一反応器からの水素の残りを98.8重量%程度除去した。この
工程操作によって得られたポリマーは、CE3から得られた値よりも低い0.195g/
10分(5kg負荷)のメルトフローレートを有していた。表2に見られるように、比較
実施例3の特性と比較して、除去された水素の残りの割合が増加すると、剛性-衝撃バラ
ンスの改善が明らかになった。
【0072】
実施例4(E4)
ホモポリマーを第一反応器中で製造して中分子量部分を得た後、このようなポリマーを
水素除去ユニットに移した。水素除去ユニットを105kPa(絶対)の圧力で作動して
ポリマーから未反応混合物を分離した。第一反応器からの水素の残りを98.9重量%程
度除去した。次いで、中分子量ポリマーを第二反応器に移して、第1の超高分子量ポリマ
ーを製造した。最後に、第二反応器からの製造したポリマーを第三反応器に移して、第2
の超高分子量ポリマーを調製した。第二および第三反応器を水素枯渇ポリエチレン重合下
で作動した。この方法操作によって製造された加工可能なインサイツ超高分子量ポリエチ
レンは、曲げ弾性率を依然として維持しながら、シャルピー衝撃強度の優れた改善をもた
らす。極めて高いIVを有する従来のUHMWPEは、MI21を測定することができな
いことが知られていた。IVが9dl/gである発明実施例E4は、公知の技術を超える
優れたメルトフロー能力を示す。
【0073】
比較実施例4(CE4)
ホモポリマーを第一反応器中で製造して低分子量部分を得た後、このようなポリマーを
水素除去ユニットに移した。反応混合物を水素除去ユニットに導入して、ポリマーから未
反応混合物を分離した。水素除去ユニットを150kPa(絶対)の圧力で作動すると、
残留水素は97.6重量%除去された。次いで、低分子量ポリマーを第二反応器に移して
、第1の高分子量ポリマーを製造した。最後に、第二反応器からの製造したポリマーを第
三反応器に移して、第2の高分子量ポリマーを調製した。第三に、コモノマーとして1-
ブテンを供給することによって、共重合を行った。表2および表3に見られるように、C
E4の最終メルトフローレートはE5の最終メルトフローレートと非常に類似していた。
E5のより低い密度を示した場合でさえ、E5と比較してCE4においてシャルピー衝撃
および曲げ弾性率の減衰が示された。
【0074】
実施例5(E5)
水素除去ユニットを115kPa(絶対)の圧力で作動したことを除いて、比較実施例
4と同様に実施例5を行った。第一反応器からの水素の残りを98.5重量%程度除去し
た。この工程操作によって得られたポリマーは、CE3から得られた値よりも低い48g
/10分(5kg負荷)のメルトフローレートを有していた。表2に見られるように、比
較実施例4の特性と比較して、除去された水素の残りの割合が増加すると、剛性-衝撃バ
ランスの改善が明らかになった。
【0075】
実施例6(E6)
コモノマーを第3の超高分子量ポリエチレンに供給することを除いて、実施例4と同様
に実施例6を行った。この方法によって製造されたポリマーは、曲げ弾性率を依然として
維持しながら、シャルピー衝撃強度の優れた改善をもたらす。表2に示されるように、I
Vが23dl/gの発明実施例6は、比較試料と比較して高い衝撃強度(破断なしの1ノ
ッチ付き衝撃)および曲げ弾性率を示すが、高い粘度および高いMwのためにメルトフロ
ーインデックスは測定不可能である。
【0076】
WAは第一反応器中のポリマーの重量%を意味する。
WBは第二反応器中のポリマーの重量%を意味する。
WCは第三反応器中のポリマーの重量%を意味する。
【0077】
【0078】
【0079】
前記説明および特許請求の範囲に開示される特徴は、別々にも任意の組み合わせでも、本発明をその多様な形態で実現するための材料となり得る。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
マルチモーダルポリエチレン重合法のための反応器システムであって、
(a)第一反応器と;
(b)好ましくは真空ポンプ、コンプレッサ、ブロワ、エジェクタまたはこれらの組み合わせから選択される減圧装置に接続された少なくとも1つの容器を備える、第一反応器と第二反応器との間に配置された水素除去ユニットであって、前記減圧装置が作動圧力を100~200kPa(絶対)の範囲の圧力に調整することを可能にする、ユニットと;
(c)第二反応器と;
(d)第三反応器と
を備える反応器システム。
項2.
前記減圧装置が、前記水素除去ユニット内の作動圧力を103~145kPa(絶対)、好ましくは104~130kPa(絶対)、最も好ましくは105~115kPa(絶対)の範囲の圧力に調整することを可能にする、項1に記載の反応器システム。
項3.
前記水素除去ユニットが、水素と液体希釈剤を分離するためのストリップ塔をさらに含む、項1または2に記載の反応器システム。
項4.
項1から3のいずれか一項に記載の反応器システムにおいてマルチモーダルポリエチレン組成物を製造する方法であって、
(a)チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンから選択される触媒系および前記第一反応器中の気相中に存在する全ガスに対して0.1~95mol%の量の水素の存在下、前記第一反応器中の不活性炭化水素媒体中でエチレンを重合して、低分子量ポリエチレンまたは中分子量ポリエチレンを得る工程と;
(b)103~145kPa(絶対)の範囲の圧力で前記第一反応器から得られたスラリー混合物中に含まれる水素の98.0~99.8重量%を前記水素除去ユニット中で除去し、得られた残留混合物を前記第二反応器へ移す工程と;
(c)チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンから選択される触媒系の存在下、および工程(b)で得られた量の水素の存在下、前記第二反応器中でエチレンおよび場合によりC4~C12α-オレフィンコモノマーを重合して、ホモポリマーまたはコポリマーの形態の第1の高分子量ポリエチレンまたは第1の超高分子量ポリエチレンを得て、得られた混合物を前記第三反応器に移す工程と;
(d)チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンから選択される触媒系および水素の存在下(前記第三反応器中の水素の量は前記第三反応器中の気相中に存在する全ガスに対して1~70mol%、好ましくは1~60mol%の範囲である)または場合により水素の実質的非存在下、前記第三反応器中でエチレンおよび場合によりα-オレフィンコモノマーを重合して、第2の高分子量ポリエチレンまたは第2の超高分子量ポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマーを得る工程と
を含む方法。
項5.
前記除去が水素の98.0~99.7%、より好ましくは98.0~99.5%、最も好ましくは98.0~99.1%の除去である、項4に記載の方法。
項6.
前記水素除去ユニット内の作動圧力が、103~145kPa(絶対)、より好ましくは104~130kPa(絶対)、最も好ましくは105~115kPa(絶対)の範囲である、項4または5に記載の方法。
項7.
項4から6のいずれか一項に記載の方法によって得られるマルチモーダルポリエチレン組成物であって、
(A)30~65重量部の前記低分子量ポリエチレンまたは前記中分子量ポリエチレンと;
(B)5~40重量部の前記第1の高分子量ポリエチレンまたは前記第1の超高分子量ポリエチレンと;
(C)10~60重量部の前記第2の高分子量ポリエチレンまたは前記第2の超高分子量ポリエチレンのコポリマーと
を含むマルチモーダルポリエチレン組成物。
項8.
ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して、80,000~5,000,000g/mol、好ましくは150,000~3,000,000g/molの重量平均分子量を有する、項7に記載のマルチモーダルポリエチレン組成物。
項9.
ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して、5,000~100,000g/mol、好ましくは5,000~80,000g/molの数平均分子量を有する、項7または8に記載のマルチモーダルポリエチレン組成物。
項10.
ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して、700,000~10,000,000g/mol、好ましくは700,000~8,000,000g/molのZ平均分子量を有する、項7から9のいずれか一項に記載のマルチモーダルポリエチレン組成物。
項11.
ASTM D 1505による密度0.930~0.965g/cm3および/または0.01~60g/10分のメルトフローインデックスMI5、および/または0.05~800g/10分のMI21、および/またはISO1628-3によって測定して、1.0~30、好ましくは1.5~30の固有粘度を有する、項7から10のいずれか一項に記載のマルチモーダルポリエチレン組成物。