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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】プレハブ式階段
(51)【国際特許分類】
   E04G 27/00 20060101AFI20220621BHJP
   E04G 5/14 20060101ALI20220621BHJP
   E04F 11/02 20060101ALI20220621BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
E04G27/00
E04G5/14 302A
E04F11/02
E04F11/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019156796
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021032043
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507001070
【氏名又は名称】株式会社西宮産業
(73)【特許権者】
【識別番号】599112076
【氏名又は名称】新東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087712
【弁理士】
【氏名又は名称】山木 義明
(72)【発明者】
【氏名】宮田 稔久
(72)【発明者】
【氏名】戸田 達也
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-076684(JP,A)
【文献】登録実用新案第3184856(JP,U)
【文献】特開2011-241560(JP,A)
【文献】特開2012-132157(JP,A)
【文献】米国特許第06527081(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00- 7/34
E04G 27/00
E04F 11/00-11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜面の上にその傾斜方向に沿って配置された棒状部材の上に、複数のステップ部材が階段状に並べて配置されたプレハブ式階段において、
前記ステップ部材の長さ方向の端部からその長さ方向の外側の位置に、階段の進行方向に沿って所定の間隔をおいて並ぶように立設され、外周面の水平断面形状が円形に形成された複数の支柱と、
前記複数の支柱のそれぞれの上端部に設けられた手摺取付具と、
前記複数の支柱の隣り合う前記支柱の上端部に設けられた前記手摺取付具に、長さ方向の両端部がそれぞれ連結された手摺部材と、を備え、
前記手摺取付具は、前記手摺部材の端部が連結される手摺支持部と、前記支柱の外周面に固定される支柱固定部を備え、
前記手摺支持部は、その水平断面形状が前記支柱の外周面の水平断面形状の円形に沿うように形成された円弧状の背板部を有し、
前記支柱固定部は、その水平断面形状が前記支柱の外周面の水平断面形状の円形に沿うように円弧状の板状に形成されると共に、その円形に沿う円弧方向の長さ部分の一方の端部が、前記手摺支持部の前記円弧状の背板部に固定され、前記円弧方向の長さ部分の他方の端部が前記手摺支持部の前記円弧状の背板部から遠ざかるように前記円弧方向に突出することにより、前記手摺支持部の前記円弧状の背板部より長く円弧状に延びるような延板部が前記支柱固定部に形成され、
前記延板部が前記支柱の外周面に固定される
ことを特徴とするプレハブ式階段。
【請求項2】
前記手摺支持部は、前記円弧状の背板部の円弧方向の両端部から前記支柱固定部と反対側に折れ曲がって互いに略平行に延びるように形成された2つの側板部を備えるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のプレハブ式階段。
【請求項3】
前記延板部に、前記延板部を厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記支柱に形成された貫通孔と前記延板部に形成された貫通孔に連続して挿通されるボルトのオネジ部にナットがネジ締結することにより、前記手摺取付具が前記支柱の外周面に固定される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプレハブ式階段。
【請求項4】
前記延板部に形成された貫通孔は、その開口形状が前記延板部の円弧方向に細長く伸びる長孔状に形成され、
前記延板部に形成された貫通孔における前記ボルトのオネジ部が挿通される位置を、前記延板部の円方向に移動させることにより、前記支柱に対する前記手摺取付具の支柱固定部の円弧方向の取付角度を変更することができる
ことを特徴とする請求項3に記載のプレハブ式階段。
【請求項5】
前記支柱は、その下端部が前記傾斜面に固定される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプレハブ式階段。
【請求項6】
前記支柱は、その下端部が前記棒状部材に固定される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプレハブ式階段。
【請求項7】
前記支柱の下端部に、前記棒状部材の前記支柱に対向する側の側面に対向する支持部を備えた支柱支持部が設けられ、
前記棒状部材に形成された貫通孔と前記支持部に形成された取付け孔に連続して挿通されるボルトのオネジ部にナットがネジ締結することにより、前記支柱の下端部が前記棒状部材に固定される
ことを特徴とする請求項6に記載のプレハブ式階段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、山間部における登山道や工事現場等の傾斜面に簡単に取り付けて使用することができるプレハブ式階段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプレハブ式階段には、手摺が設けられていないもの(特許文献1参照)の他に、手摺が無いとその階段を昇る人の体が不安定になるような場所に設置される、手摺を付けたもの(特許文献2の図7等参照)があった。
【0003】
図5及び図6は、そのような手摺を付けた従来のプレハブ式階段2について説明するために参照する図である。
【0004】
従来のプレハブ式階段2は、図5及び図6に示すように、傾斜面3の上に設けられた2本の棒状部材4と、その棒状部材4の上に階段状に並べて配置された複数のステップ部材6と、ステップ部材6の両側(図6中左右両側)に設けられた複数の支柱8と、複数の支柱8の上端部を繋ぐように設けられた複数の手摺部材10を備えていた。
【0005】
従来のプレハブ式階段2の棒状部材4は、それぞれが細長い角棒状に形成され、図5に示すように、傾斜面3の上にその傾斜方向(図中左上から右下方向)に沿って伸びるように配置されると共に、図6に示すように、2本の棒状部材4が、その長さ方向に対して直角方向(図中左右方向)に所定の間隔をおいて互いに平行に配置されていた。
【0006】
そして、棒状部材4の長さ途中部に形成された、棒状部材4を厚さ方向に貫通する貫通孔に、下端部が傾斜面3の地中に打ち込まれたアンカーボルト5の上端部が挿通され、そのアンカーボルト5の上端部に形成されたオネジ部に、一対のナットNが棒状部材4を厚さ方向の表裏両側から挟み込むようにネジ締結されることによって、それぞれの棒状部材4が傾斜面3に固定されていた。
【0007】
また、従来のプレハブ式階段2のステップ部材6は、図5に示すように、略水平に配置される踏み板6aと、踏み板6aと一体的に形成され、踏み板6aの下面から踏み板6aに対して略垂直に配置される蹴上げ板6bを備え、ステップ部材6の踏み板6aの幅方向(図中左右方向)の傾斜面3側(図中左側)の端部には、上方に所定の高さを有する取付け板部6cが踏み板6aと一体的に形成されていた。
【0008】
そして、そのようなステップ部材6が、上段側(図5中左上側)に配置されたステップ部材6の蹴上げ板6bの下端部が、そのステップ部材6の下段側(図中右下側)に配置された別のステップ部材6の、踏み板6aの上面(踏み面)と取付け板部6cの傾斜面3と反対側(図中右側)の側面(立ち上がり面)に接触するように配置されることにより、階段状に並べて配置されていた。
【0009】
そのようにして階段状に配置された複数のステップ部材6は、上段側のステップ部材6の蹴上げ板6bと下段側のステップ部材6の取付け板部6cを貫通するように、略水平方向(図5中左右方向)に打ち込まれる釘部材12によって、互いに連結されていた。
【0010】
また、それぞれのステップ部材6は、踏み板6aの上面の取付け板部6cの近傍から棒状部材4に向かって、棒状部材4の長さ方向に対して略直角方向に打ち込まれる釘部材14によって、棒状部材4に固定されていた。
【0011】
そして、図5に示すように、階段状に配置された複数のステップ部材6の最下段側(図中右下側)の傾斜面3の地中に杭16が略垂直に打ち込まれ、この杭16の上端部に、棒状部材4の下端部やステップ部材6の蹴上げ板6bが接触するように配置されることにより、棒状部材4やステップ部材6が、土圧や降雨時の水流の力等を受けて傾斜面3の傾斜方向の下方に移動しないように強固に支持されていた。
【0012】
このように、複数のステップ部材6を、傾斜面3の上に配置された棒状部材4の上に、その傾斜方向に沿って階段状に並べて配置して固定することにより、傾斜面3の凹凸の影響を直接受けることなくステップ部材6を設置できるようになっていた。
【0013】
また、従来のプレハブ式階段2の支柱8は、それぞれが細長い円筒状に形成され、図6に示すように、ステップ部材6の長さ方向(図中左右方向)の両端部からその長さ方向の外側に少し離れた位置に略垂直に立設されると共に、階段状に連結されたステップ部材6の長さ方向の両側に、複数の支柱8が階段の進行方向(図中上下方向)に沿って所定の間隔をおいて並ぶように配置されていた。
【0014】
そして、それぞれの支柱8の下端部は、図5及び図6に示すように、開口した上端部以外の殆どが傾斜面3の地中に埋設された略円筒状の鋼管18の内部に配置されると共に、鋼管18の内周面と支柱8の外周面の間の隙間にモルタル20が充填されることにより、傾斜面3に固定されていた。
【0015】
そして、従来のプレハブ式階段2の手摺部材10は、それぞれが細長い角棒状に形成され、階段の進行方向に沿って並ぶ複数の支柱8の、隣り合う支柱8の上端部を繋ぐように設けられていた。
【0016】
ところで、このような従来のプレハブ式階段2には、図5に示すように、支柱8が傾斜面3に固定されるようになっていたため、傾斜面3の凹凸、特に傾斜面3と棒状部材4の間の隙間の有無やその大きさによって、必要な支柱8の長さ寸法が変わってしまうという問題があり、これを解決するために、傾斜面3の凹凸によらず、常に支柱8の長さ寸法が変わらないプレハブ式階段が提案されていた(特許文献2の図1参照)。
【0017】
図7及び図8は、そのような別の従来のプレハブ式階段22について説明するために参照する図である。なお、図5及び図6に示す従来のプレハブ式階段2と同様の部分には、一部を除き同じ符号を付し、重複する説明は一部を除き省略するものとする。
【0018】
従来のプレハブ式階段22は、図7に示すように、従来のプレハブ式階段2と同様に、傾斜面3の上に設けられた2本の棒状部材4と、その棒状部材4の上に階段状に並べて配置された複数のステップ部材6を備えていた。
【0019】
そして、従来のプレハブ式階段22においては、従来のプレハブ式階段2が、図5に示すように、下端部が傾斜面3に固定される支柱8を備えていたのに代わって、下端部が支柱支持部26を介して棒状部材4の側面に固定される支柱24を備えていた点において、従来のプレハブ式階段2とはその構成が異なるものであった。
【0020】
従来のプレハブ式階段22の支柱24は、従来のプレハブ式階段2の支柱8と同様に、それぞれが細長い円筒状に形成され、その下端部に設けられた支柱支持部26は、図8に示すように、支柱24の下端部に設けられた板状の接続部26aと、接続部26aの支柱24と反対側の端部に設けられた板状の支持部26bを備えていた。
【0021】
支柱支持部26の接続部26aは、図8(b)に示すように、支柱24の長さ方向(図中上下方向)に所定の長さ寸法、支柱24から棒状部材4へと向かう方向(図中左右方向)に所定の幅寸法をそれぞれ有する板状に形成され、接続部26aの幅方向の支柱24側(図中左側)の端部が、溶接等により、支柱24の下端部の外周面の棒状部材4と対向する側(図中右側)に接合されていた。
【0022】
支柱支持部26の支持部26bは、図8(a)に示すように、棒状部材4の長さ方向(図中左上から右下方向)に所定の長さ寸法を有する板状に形成され、図8(b)に示すように、その板面が棒状部材4の支柱24と対向する側(図中左側)の側面と対向するように配置されると共に、反対側(図中左側)の板面の略中央が、溶接等により、接続部26aの幅方向の棒状部材4側(図中右側)の端部に接合されていた。
【0023】
そして、支持部26bの長さ方向の中央部を挟んで互いに略対象となるような長さ方向の両端部寄りの位置に、支持部26bを板厚方向に貫通し、その開口形状が支持部26bの長さ方向の両端部側に凸状となるような円弧状に形成された2つの取付け孔26cがそれぞれ形成されていた。
【0024】
このような支柱24が、図8(b)に示すように、支柱支持部26の支持部26aの棒状部材4と対向する側(図中右側)の板面を、棒状部材4の側面に接触させるように配置されると共に、支持部26bに形成された取付け孔26cと棒状部材4に形成された貫通孔に、ボルトB1のオネジ部が連続して挿通され、そのオネジ部の先端部にナットN1がネジ締結されることにより、棒状部材4の側面に固定されていた。
【0025】
このように、支柱24の下端部に設けられた支柱支持部26を介して支柱24を棒状部材4に固定することにより、傾斜面3の凹凸によらず、支柱24を常に一定の長さ寸法で使用することができるようになっていた。
【0026】
また、傾斜面3の傾斜角度が多少大きい(又は小さい)場合であっても、ボルトB1のオネジ部が挿通される支持部26bの取付け孔26cの位置を、その円弧形状の長さ方向に移動させることにより、支柱24の取付角度を変更することができるため、支柱24が垂直となるように調節することができるようになっていた。
【0027】
そして、従来のプレハブ式階段22の手摺部材10も、図7に示すように、従来のプレハブ式階段2と同様に、それぞれが細長い角棒状に形成され、隣り合う支柱24の上端部を繋ぐように設けられていた。
【0028】
ところで、上述したような従来のプレハブ式階段2,22の手摺部材10は、いずれの場合においても、図9に示すように、それぞれの支柱8,24の上端部に設けられた、水平断面形状が略コの字型の板状(図9(b)参照)に形成された手摺取付具30を介して、支柱8,24に取り付けられていた。
【0029】
手摺取付具30は、図9(b)に示すように、水平断面形状が支柱8,24の外周面に沿うような円弧状に湾曲する板状に形成された背板部30aと、背板部30aの水平方向(図中上下方向)の両端部から同一方向に折れ曲がって略平行に形成された2つの側板部30bを備え、それら背板部30aと2つの側板部30bのそれぞれの板部の略中央には、それぞれの板部を厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されていた。
【0030】
このような手摺取付具30が、支柱8,24の上端部の、支柱8,24の中心を挟んでその直径方向(図9(b)中左右方向)の両側に、それぞれの背板部30aの板面が支柱8,24の外周面に沿って接触するように配置され、それぞれの手摺取付具30の背板部30aに形成された貫通孔と、支柱8,24の上端部に形成された、支柱8,24をその直径方向に貫通する貫通孔に、ボルトB2のオネジ部が連続して挿通され、そのオネジ部の先端部にナットN2がネジ締結されることにより、支柱8,24の上端部に固定されていた。
【0031】
そして、手摺部材10の長さ方向の先端部が手摺取付具30の2つの側板部30bの間に挟まれるように配置され、それぞれの側板部30bに形成された貫通孔と、手摺部材10の先端部に形成された、手摺部材10をその幅方向(図9(b)中上下方向)に貫通する貫通孔に、ボルトB3のオネジ部が連続して挿通され、そのオネジ部の先端部にナットN3がネジ締結されることにより、手摺部材10が手摺取付具30に連結されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【文献】実用新案登録第3119522号公報
【文献】実用新案登録第3184856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
しかしながら、上述したような従来のプレハブ式階段2,22では、手摺部材10を支柱8,24の上端部に取り付ける際に、階段の進行方向に対する左右の角度を変更して手摺部材10を取り付けることが難しいという問題点があった。
【0034】
すなわち、上述したような従来のプレハブ式階段2,22は、常に図6に示すような一直線状に設置されるわけではなく、傾斜面3の傾斜角度や凹凸に応じて、図10に示すように、階段の進行方向が左右に曲げられて設置されることがあり、その場合は、手摺部材10も、階段の進行方向に沿って左右に角度を変更して取り付ける必要があった。
【0035】
ところが、従来のプレハブ式階段2,22では、図9(b)に示すように、手摺部材10を支柱8,24に取り付けるための手摺取付具30は、支柱8,24を直径方向に貫通するボルトB2によって、支柱8,24の中心を挟んでその両側に対称となる位置に固定されるようになっており、そのままでは、2つの手摺部材10を支柱8,24に角度を変えてに取り付けることができなかった。
【0036】
そのため、従来は、図10左側に示すように、階段の進行方向が変わる箇所に、2本の支柱8,24を隣り合うように配置して、それぞれの支柱8,24に、手摺部材10をそれぞれ取り付けるようにしていた。
【0037】
または、図10右側及び図11に示すように、1本の支柱8,24の上端部に、手摺取付具30を固定するためのボルトB2を挿通するための貫通孔を、それぞれの高さ位置と中心軸線の角度を変えて2つ形成して、それぞれの貫通孔に手摺取付具30を取り付けることにより、1本の支柱8,24に2つの手摺部材10を、高さと角度を変えて取り付けるようにしていた。
【0038】
しかしながら、上述したような、2本の支柱を設ける方法では、設置する支柱の本数が増加し、支柱を設置するための工程の数も増加するため、材料費の増加や施工期間の長期化を招くおそれがあった。
【0039】
また、1本の支柱に高さを変えて2つの貫通孔を形成する方法では、階段の進行方向が変わる箇所で、手摺部材の高さ位置が変わってしまうため、階段の美観を損なうだけでなく、階段を昇る人が手摺を掴み損ねて体勢が不安定になるおそれがあった。
【0040】
また、実際は、施工現場で傾斜面の状態を確認しながら階段の進行方向を調整するようなこともあるため、1本の支柱に2つの貫通孔を形成する方法では、支柱に貫通孔を形成する作業や、形成した貫通孔にメッキや塗装等の後処理を施す作業を施工現場で行うことになり、その分、施工作業が煩雑化して、施工期間の長期化を招くおそれがあった。
【0041】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、手摺部材の左右の角度を容易に調整可能にすることにより、材料費の増加や施工作業の煩雑化、施工期間の長期化を防止し、それにより施工コストの低減を図ることができるプレハブ式階段を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記課題を解決するために、本発明によるプレハブ式階段は、
傾斜面の上にその傾斜方向に沿って配置された棒状部材の上に、複数のステップ部材が階段状に並べて配置されたプレハブ式階段において、
前記ステップ部材の長さ方向の端部からその長さ方向の外側の位置に、階段の進行方向に沿って所定の間隔をおいて並ぶように立設され、外周面の水平断面形状が円形に形成された複数の支柱と、
前記複数の支柱のそれぞれの上端部に設けられた手摺取付具と、
前記複数の支柱の隣り合う前記支柱の上端部に設けられた前記手摺取付具に、長さ方向の両端部がそれぞれ連結された手摺部材と、を備え、
前記手摺取付具は、前記手摺部材の端部が連結される手摺支持部と、前記支柱の外周面に固定される支柱固定部を備え、
前記手摺支持部は、その水平断面形状が前記支柱の外周面の水平断面形状の円形に沿うように形成された円弧状の背板部を有し、
前記支柱固定部は、その水平断面形状が前記支柱の外周面の水平断面形状の円形に沿うように円弧状の板状に形成されると共に、その円形に沿う円弧方向の長さ部分の一方の端部が、前記手摺支持部の前記円弧状の背板部に固定され、前記円弧方向の長さ部分の他方の端部が前記手摺支持部の前記円弧状の背板部から遠ざかるように前記円弧方向に突出することにより、前記手摺支持部の前記円弧状の背板部より長く円弧状に延びるような延板部が前記支柱固定部に形成され、
前記延板部が前記支柱の外周面に固定される
ことを特徴とするものである。
【0043】
また、本発明によるプレハブ式階段は、
前記手摺支持部は、前記円弧状の背板部の円弧方向の両端部から前記支柱固定部と反対側に折れ曲がって互いに略平行に延びるように形成された2つの側板部を備えるように形成されている
ことを特徴とするものである。
【0044】
また、本発明によるプレハブ式階段は、
前記延板部に、前記延板部を厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記支柱に形成された貫通孔と前記延板部に形成された貫通孔に連続して挿通されるボルトのオネジ部にナットがネジ締結することにより、前記手摺取付具が前記支柱の外周面に固定される
ことを特徴とするものである。
【0045】
また、本発明によるプレハブ式階段は、
前記延板部に形成された貫通孔は、その開口形状が前記延板部の円弧方向に細長く伸びる長孔状に形成され、
前記延板部に形成された貫通孔における前記ボルトのオネジ部が挿通される位置を、前記延板部の円方向に移動させることにより、前記支柱に対する前記手摺取付具の支柱固定部の円弧方向の取付角度を変更することができる
ことを特徴とするものである。
【0046】
また、本発明によるプレハブ式階段は、
前記支柱は、その下端部が前記傾斜面に固定される
ことを特徴とするものである。
【0047】
また、本発明によるプレハブ式階段は、
前記支柱は、その下端部が前記棒状部材に固定される
ことを特徴とするものである。
【0048】
また、本発明によるプレハブ式階段は、
前記支柱の下端部に、前記棒状部材の前記支柱に対向する側の側面に対向する支持部を備えた支柱支持部が設けられ、
前記棒状部材に形成された貫通孔と前記支持部に形成された取付け孔に連続して挿通されるボルトのオネジ部にナットがネジ締結することにより、前記支柱の下端部が前記棒状部材に固定される
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0049】
このような本発明のプレハブ式階段によれば、
傾斜面の上にその傾斜方向に沿って配置された棒状部材の上に、複数のステップ部材が階段状に並べて配置されたプレハブ式階段において、
前記ステップ部材の長さ方向の端部からその長さ方向の外側の位置に、階段の進行方向に沿って所定の間隔をおいて並ぶように立設され、外周面の水平断面形状が円形に形成された複数の支柱と、
前記複数の支柱のそれぞれの上端部に設けられた手摺取付具と、
前記複数の支柱の隣り合う前記支柱の上端部に設けられた前記手摺取付具に、長さ方向の両端部がそれぞれ連結された手摺部材と、を備え、
前記手摺取付具は、前記手摺部材の端部が連結される手摺支持部と、前記支柱の外周面に固定される支柱固定部を備え、
前記手摺支持部は、その水平断面形状が前記支柱の外周面の水平断面形状の円形に沿うように形成された円弧状の背板部を有し、
前記支柱固定部は、その水平断面形状が前記支柱の外周面の水平断面形状の円形に沿うように円弧状の板状に形成されると共に、その円形に沿う円弧方向の長さ部分の一方の端部が、前記手摺支持部の前記円弧状の背板部に固定され、前記円弧方向の長さ部分の他方の端部が前記手摺支持部の前記円弧状の背板部から遠ざかるように前記円弧方向に突出することにより、前記手摺支持部の前記円弧状の背板部より長く円弧状に延びるような延板部が前記支柱固定部に形成され、
前記延板部が前記支柱の外周面に固定されることにより、
手摺部材の左右の角度を容易に調整可能にすることにより、材料費の増加や施工作業の煩雑化、施工期間の長期化を防止し、それにより施工コストの低減を図ることができる。

【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の一実施の形態に係るプレハブ式階段32の手摺取付具40を示す図であって、図1(a)はその斜視図であり、図1(b)は手摺取付具40が取り付けられたプレハブ式階段32の支柱8の上端部周辺の拡大斜視図である。
図2図1に示す手摺取付具40を示す図であって、図2(a)はその側面図であり、図2(b)はその平面図である。
図3】支柱8に取り付けられた手摺取付具40の角度を変更する仕組みを説明するために、支柱8の上端部周辺を拡大して示す概略平面図である。
図4】支柱8に取り付けられた手摺取付具40の角度を変更する仕組みを説明するために、プレハブ式階段32の支柱8部分のみを示す概略平面図である。
図5】従来のプレハブ式階段2を示す側面図である。
図6図5に示すプレハブ式階段2の平面図である。
図7】別の従来のプレハブ式階段22を示す側面図である。
図8図7に示すプレハブ式階段22の支柱24の下端部周辺を拡大して示す図であって、図8(a)はその側面図であり、図8(b)はその正面図である。
図9図5及び図7に示す従来のプレハブ式階段2,22の支柱8,24の上端部周辺を拡大して示す図であって、図9(a)はその側面図であり、図9(b)はその平面図である。
図10】階段の進行方向が曲げられて設置された従来のプレハブ式階段2,22の概略平面図である。
図11図10に示す従来のプレハブ式階段2,22の図中右側の支柱8,24の上端部周辺を拡大して示す図であって、図11(a)はその側面図であり、図11(b)はその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明に係るプレハブ式階段を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0052】
図1から図4は、本発明の一実施の形態に係るプレハブ式階段32について説明するために参照する図である。なお、図5及び図6に示す従来のプレハブ式階段2と同様の部分には、一部を除き同じ符号を付し、重複する説明は一部を除き省略するものとする。
【0053】
本実施の形態に係るプレハブ式階段32は、従来のプレハブ式階段2(図5参照)と同様に、傾斜面3の上に設けられた2本の棒状部材4と、その棒状部材4の上に階段状に並べて配置された複数のステップ部材6と、ステップ部材6の両側に設けられた複数の支柱8と、複数の支柱8の上端部を繋ぐように設けられた複数の手摺部材10を備えている。
【0054】
そして、本実施の形態に係るプレハブ式階段32は、従来のプレハブ式階段2の支柱8の上端部に設けられた2つの手摺取付具30(図9参照)のいずれか一方、又は両方に代わって、図1(a)に示すような手摺取付具40が設けられている点において、従来のプレハブ式階段2とはその構成が異なるものである。
【0055】
手摺取付具40は、図2(b)に示すように、水平断面形状が略コの字型の板状に形成された手摺支持部42と、水平断面形状が円弧状に湾曲する板状に形成された支柱固定部44を備えている。
【0056】
手摺取付具40の手摺支持部42は、水平断面形状が支柱8の外周面に沿うような円弧状に湾曲する板状に形成された背板部42aと、背板部42aの水平方向(図2(b)中上下方向)の両端部から同一方向に折れ曲って略平行に形成された2つの側板部42bを備え、2つの側板部42bの略中央には、側板部42bを厚さ方向に貫通する貫通孔42cが形成されている。
【0057】
手摺取付具40の支柱固定部44は、水平断面形状が支柱8の外周面に沿うような円弧状に湾曲する板状に形成され、その円周方向の長さは、同じように水平断面形状が円弧状に形成された手摺支持部42の背板部42aの円周方向の長さより長くなるように形成されている。
【0058】
そして、図2(b)に示すように、支柱固定部44の半径方向の外側の板面が、手摺支持部42の背板部42aの半径方向の内側(側板部42bと反対側)の板面に沿って接触すると共に、支柱固定部42の円周方向の長さ部分が、手摺支持部42の背板部42aの円周方向の一方の端部から外側(図中下側)に突出するように配置され、手摺支持部42と支柱固定部44の接触部が溶接等により結合されている。
【0059】
すなわち、手摺取付具40は、支柱固定部44が手摺支持部42の背板部42aに固定されることによって、手摺支持部42の背板部42aの円周方向の長さ部分が、2つの側板部42bのいずれか一方の側板部42bより外側に延長されたように形成されている。
【0060】
そして、そのようにして手摺支持部42の側板部42bより外側に延長された支柱固定部44の延板部44aの中央部には、図2(a)に示すように、延板部44aを厚さ方向に貫通し、その開口形状が延板部44aの円周方向に細長く伸びる長孔状の貫通孔44bが形成されている。
【0061】
このような手摺取付具40が、図3(a)に示すように、プレハブ式階段32の進行方向が変わる箇所に設置された支柱8の上端部の、支柱8の直径方向の両側に設けられる2つの手摺取付具30(図9参照)の一方の手摺取付具30に代えて、支柱固定部44の板面が支柱8の外周面に沿って接触するように配置されている。
【0062】
そして、手摺取付具30の背板部30aに形成された貫通孔と、手摺取付具40の支柱固定部44の延板部44aに形成された貫通孔44bと、支柱8の上端部に形成された、支柱8をその直径方向に貫通する貫通孔に、ボルトB4のオネジ部が連続して挿通され、そのオネジ部の先端部にナットN4がネジ締結されることにより、支柱8の上端部に固定されている。
【0063】
このような手摺取付具40を備えたプレハブ式階段32を用いることにより、手摺部材10の左右の角度を容易に変更することができる。
【0064】
すなわち、図3(a)に示すように、手摺取付具40を、その手摺支持部42が手摺取付具30に対して角度を付けた状態で支柱8に取り付けることができ、1本の支柱8の2つの手摺部材10を左右の角度を変えて取り付けることができるようになっている。
【0065】
また、手摺取付具40の支柱固定部44の延板部44aの貫通孔44bが長孔状に形成されているため、図3(b)に示すように、ボルトB4のオネジ部が挿通される貫通孔44bの位置を、延板部44aの円周方向に移動させることにより、支柱8に対する手摺取付具40の周方向の取付角度を変更することができ、プレハブ式階段32の進行方向に合わせて、手摺部材10の角度を調整することができるようになっている。
【0066】
更に、手摺取付具40は図2(a)に示す状態から上下逆さまにして使用することができるため、図4に示すように、プレハブ式階段32の進行方向が左右どちらに曲がった場合であっても、一種類の手摺取付具40で対応することができるようになっている。
【0067】
そして、このような手摺取付具40を備えたプレハブ式階段32を用いることにより、プレハブ式階段32の進行方向が変わる箇所に2本の支柱8を設置したり、1本の支柱に2つの貫通孔を形成する必要がなくなるので、材料費の増加や施工作業の煩雑化、施工期間の長期化を防止し、その分、施工コストの低減を図ることができる。
【0068】
このように、本実施の形態に係る手摺取付具40を備えたプレハブ式階段32によれば、手摺部材の左右の角度を容易に調整可能にすることにより、材料費の増加や施工作業の煩雑化、施工期間の長期化を防止し、それにより施工コストの低減を図ることができる。
【0069】
なお、本発明は、本実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を達成することができる範囲内であれば、種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、本実施の形態に係るプレハブ式階段32においては、図5及び図6に示す従来のプレハブ式階段2の、下端部が傾斜面3に固定される支柱8の上端部に手摺取付具40が取り付けられているが、このような構成に限定されることはなく、図7及び図8に示す別の従来のプレハブ式階段22の、下端部が棒状部材4の側面に固定される支柱24の上端部に手摺取付具40が取り付けられるようになっていてもよい。
【0071】
また、本実施の形態に係るプレハブ式階段32においては、手摺部材10の先端部は、手摺取付具40の手摺支持部42の2つの側板部42aの間に配置され、ボルトB3及びナットN3によって連結されていたが、手摺部材10の先端部を手摺取付具40の手摺支持部42に取り付けることができればこのような方法でなくてもよい。
【0072】
また、本実施の形態に係るプレハブ式階段32においては、手摺取付具40の支柱固定部44の延板部44aには、延板部44aの円周方向に細長い長孔状の貫通孔44aが1つ形成されていたが、このような形状に限定されることはなく、例えば、手摺取付具40をより強固に固定するために、2つ以上の貫通孔44aが、延板部44aの幅方向(図2(a)中上下方向)に並んで形成されていてもよい。
【0073】
また、本実施の形態に係るプレハブ式階段32においては、支柱8は中空の円筒状に形成されていたが、このような形状に限定される必要はなく、例えば、支柱8が中実の丸棒状に形成されていてもよい。
【0074】
また、本実施の形態に係るプレハブ式階段32においては、手摺部材10は中実の角棒状に形成されていたが、このような形状に限定される必要はなく、例えば、手摺部材10が中空の角筒状に形成されていてもよいし、断面形状が円形に形成された円筒状や丸棒状に形成されていてもよい。
【0075】
また、本実施の形態に係るプレハブ式階段32においては、支柱8や手摺部材10は、ステップ部材6の両側にそれぞれ設けられていたが、このような構成に限定される必要はなく、ステップ部材6の片側のみに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
2 プレハブ式階段
3 傾斜面
4 棒状部材
5 アンカーボルト
6 ステップ部材
6a 踏み板
6b 蹴上げ板
6c 取付け板部
8 支柱
10 手摺部材
12,14 釘部材
16 杭
18 鋼管
20 モルタル
22 プレハブ式階段
24 支柱
26 支柱支持部
26a 接続部
26b 支持部
26c 取付け孔
30 手摺取付具
30a 背板部
30b 側板部
32 プレハブ式階段
40 手摺取付具
42 手摺支持部
42a 背板部
42b 側板部
42c 貫通孔
44 支柱固定部
44a 延板部
44b 貫通孔
B1,B2,B3,B4 ボルト
N,N1,N2,N3,N4 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11