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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】3Dオブジェクトを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20220621BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220621BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20220621BHJP
   B29C 64/141 20170101ALI20220621BHJP
   C23C 24/04 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y50/00
B29C64/141
C23C24/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019518914
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 AU2017051083
(87)【国際公開番号】W WO2018068082
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】2016904106
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521173867
【氏名又は名称】エフュージョンテック アイピー ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カミッレーリ,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ,バイロン
(72)【発明者】
【氏名】ジャレット,トビー
(72)【発明者】
【氏名】エンブリー,ライエル
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルサンヌ,シルヴァン
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104985813(CN,A)
【文献】特開2013-142176(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039399(WO,A1)
【文献】特開平5-318605(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189600(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/386
B33Y 10/00
B33Y 50/00
B29C 64/141
C23C 24/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dオブジェクトを形成するための方法であって、オブジェクトの3D形状パラメータを定義するデータを参照して制御手段を動作させることを含み、
前記制御手段が、前記データを用いてアプリケータ及び/又は基板ホルダを制御することで、スプレー材料を基板にスプレーし、次いで、部分形成されたオブジェクトにスプレーすることにより、順次にスプレーされた層からオブジェクトを構築し、ここで、層は内向きにテーパした外を最初に有し、
このような層に関して、前記制御手段が、前記データを用いて、前記テーパを埋めるように前記アプリケータに前記スプレー材料をスプレーさせ、
前記スプレーが金属粉末を含むコールドスプレーであり、
前記テーパを埋めることが、前記制御手段が、
前記スプレーの特徴に基づいて前記テーパのパラメータを計算することと、
前記テーパを埋めるのに適した前記アプリケータと前記テーパとの角度を計算することと、
前記アプリケータと前記テーパとが前記角度をなすようにし、前記アプリケータに前記テーパに前記スプレー材料をスプレーさせることと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記データが、一連の層で3Dオブジェクトを定義し、前記制御手段が、前記テーパをスプレーにより埋めるための前記アプリケータと前記テーパとの角度を制御するために次の層に関する事前に定義されたパラメータを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面スキャナが、構築されている際の前記オブジェクトを繰返し測定し、前記制御手段が、測定値を用いて、形状パラメータと完成時のオブジェクトとのマッチの精度を高めるべく、前記オブジェクト(部分形成されたとき)とノズルの相対位置及び/又は前記ノズルに関するスプレーパラメータを調節する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
3Dオブジェクトを形成するための方法であって、概念的スライスでオブジェクトの3D形状パラメータを定義するデータを参照してコンピュータ化されたコントローラを動作させることを含み、
前記コントローラが、前記データを用いてアプリケータを制御することで、金属粉末を含む材料を基板にスプレーし、次いで、部分形成されたオブジェクトに、隣接するライン状にスプレーすることにより、スライスに対応する順次にスプレーされた層からオブジェクトを構築し、ここで、層は内向きにテーパした外を最初に有し、
このような層に関して、前記コントローラが、前記データを用いて、前記テーパを埋めるように前記アプリケータに前記テーパに垂直にスプレーさせ、前記テーパを埋めることが、前記コントローラが、前記スプレーの特徴に基づいて前記テーパのパラメータを計算することを含む、
方法。
【請求項5】
各ラインのためにスプレーされる材料が、1つ以上の隣接するラインのためにスプレーされる材料と交互配置される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
表面スキャナが、構築されている際の前記オブジェクトを繰返し測定し、前記コントローラが、測定値を用いて、形状パラメータと完成時の前記オブジェクトとのマッチの精度を高めるべく、前記アプリケータ及び/又は基板及び/又はスプレーパラメータを調節する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー材料から3Dオブジェクトを形成するための方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
金属粉末をノズルから基板上に3Dプリントの様態でコールドスプレーすることにより3Dオブジェクトを製造することが公知である。これは、例えば、J Pattison et al, International Journal of Machine Tools and Manufacture, Volume 47, Issues 3-4, March 2007, Pages 627-63で概説されている。中国特許出願公開第104985813号明細書および特開2013-142176号公報は、コールドスプレー製造装置を操作するためのさらなる方法を示している。多くの公知の技術では、スプレー材料を概して円錐形のパターンに堆積する。結果として、最終的な3Dオブジェクトの側部が望ましくないテーパを有することになる。テーパ効果は各後続の層に前の層よりも小さい面積を残すので、これは例えばオブジェクトを層状にスプレーするのにあまり実行可能ではない。言い換えれば、テーパは層から層へ伝達される。本発明の好ましい実施形態の目的は、これに対処することに向けて少なくともいくらか前進することである。これは好ましい実施形態にあてはまるが、本発明の目的自体は、単に有用な選択肢を提供することであることを理解されたい。したがって、好ましい実施形態にあてはめることができるどの利点又は制限も、より広く表現されるどの請求項の範囲の制限としても読まれるべきではない。
【0003】
特徴又はステップの組み合わせに関連して本明細書で用いられるときの「備える、含む(comprising)」という用語は、さらなる特徴又はステップが存在するという選択肢を除外するように受け取られるべきではない。該用語は、限定的な様態で解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様によれば、本発明は、3Dオブジェクトを形成するための方法であって、オブジェクトの3D形状パラメータを定義するデータを参照して制御手段を動作させることを含み、
制御手段が、このデータを用いてアプリケータ及び/又は基板ホルダを制御することで、スプレー材料を基板にスプレーし、次いで、部分形成されたオブジェクトにスプレーすることにより、順次にスプレーされた層からオブジェクトを構築し、ここで、層は内向きにテーパした外を最初に有し、
このような層に関して、制御手段が、このデータを用いて、テーパを埋めるようにアプリケータにスプレー材料をスプレーさせる、
方法に関する。
【0005】
プレーは、コールドスプレーであり、金属粉末を含
【0006】
ーパを埋めることは、制御手段が、
スプレーの特徴に基づいてテーパのパラメータを計算することと、
テーパを埋めるのに適したアプリケータとテーパとの角度を計算することと、
アプリケータとテーパが前記角度をなすようにし、アプリケータにテーパにスプレー材料をスプレーさせることと、
を含む。
【0007】
随意的に、データは、一連の層(例えば、概念的スライス)で3Dオブジェクトを定義し、制御手段は、テーパをスプレーにより埋めるためのアプリケータとテーパとの角度を制御するために次の層に関する事前定義されたパラメータを用いる。
【0008】
随意的に、表面スキャナが、構築されている際のオブジェクトを繰返し測定し、制御手段は、この測定値を用いて、形状パラメータと完成時のオブジェクトとのマッチの精度を高めるべく、オブジェクト(部分形成されたとき)とアプリケータの相対位置及び/又はノズルに関するスプレーパラメータを調節する。
【0009】
3Dオブジェクトを形成するための方法であって、概念的スライスでオブジェクトの3D形状パラメータを定義するデータを参照してコンピュータ化されたコントローラを動作させることを含み、
コントローラが、このデータを用いて、金属粉末を含む材料を基板に隣接するライン状にスプレーすることによりスライスに対応する順次にスプレーされた層からオブジェクトを構築するようにアプリケータを制御し、この場合、層は内向きにテーパした外最初に有し、
このような層に関して、コントローラが、このデータを用いて、テーパを埋めるようにアプリケータにテーパに垂直にスプレーさせ、前記テーパを埋めることが、前記コントローラが、前記スプレーの特徴に基づいて前記テーパのパラメータを計算することを含む、
方法。
【0010】
随意的に、各ラインのためにスプレーされる材料は、1つ以上の隣接するラインのためにスプレーされる材料と交互配置される。
【0011】
随意的に、表面スキャナは、構築されている際のオブジェクトを繰返し測定し、コントローラは、この測定値を用いて、形状パラメータと完成時のオブジェクトとのマッチの精度を高めるべく、アプリケータ及び/又は基板及び/又はスプレーパラメータを調節する。
【0012】
ここで本発明のいくつかの好ましい実施形態を単なる例として添付図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】3Dコールドスプレープリンタの等角図である。
図2】プリンタにより部分的に形成された3つの3Dオブジェクトのそれぞれの第1の層の等角図である。
図3】より進行した段階での部分的に形成されたオブジェクトの等角図である。
図4】2つの層がほぼ完成した状態の、部分的に形成された3つのオブジェクトの等角図である。
図5】プリンタにより層状に形成されたさらなる3Dオブジェクトの等角図である。
図6】テーパした縁が埋められ得る様態を例示する、部分的に形成されたオブジェクトの概略的な側面図である。
図7】互いに隣接するラインをスプレーすることによりコールドスプレーされた層がビルドアップされ得る方法を示す概略的な断面図である。
図8】隣接してスプレーするのではなく、良好な表面迎角のためにスプレーラインを交互配置することによりコールドスプレーされた層がビルドアップされ得る方法を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、コールドスプレー3Dプリンタ1は、適切な金属粉末のスプレーを高速で分配するためのノズル2を備えるアプリケータを有する。コールドスプレーのための公知の多くの粉末が存在し、当業者はこれらをよく知っているであろう。3Dオブジェクトを作製するべく、ロボットアーム3を備える基板ホルダにより保持される基板(図示せず)に金属粉末がスプレーされる。より詳細には、オブジェクトは、次々にスプレーされた一連の平行な層から形成される。
【0015】
ロボットアーム3は、好ましくは、基板を、したがって、部分形成された3Dオブジェクトを、任意の方向に及び任意の角度に動かすことができるようなものである。ノズル2は、図1の実施形態では据置型であるが、他の実施形態では、任意の方向に又は任意の角度でスプレーするべく移動可能であってよい。
【0016】
図2は、プレート状の基板上の3つの部分的に形成された3Dオブジェクトの第1の層4、5、及び6を示す。スプレー粒子はノズル2から円錐形に移動するので、それらは周辺部よりも中心でより集中され、より速く動く。結果として粉末の堆積は一様ではない。これにより、層4、5、及び6が内向きにテーパした縁7、8、9を有することになる。テーパは、例えば、シリンダ又は特定の他の外形などの直線形の縁を有するオブジェクトを作製しようとする場合にあまり望ましくない。テーパは、基板とその上に部分形成された3Dオブジェクトがノズルに対して正しい角度及び距離にあるようにノズル2及び/又はアーム3を適切に制御することにより埋められる。図3は、それらのテーパがスプレー材料で部分的に埋められた状態の3つの層4、5、及び6を示す。
【0017】
図4は、それらのテーパが完全に埋められた状態の第1の層4、5、及び6と、同じくノズル2によりスプレー形成されている、その上に積み重ねられた第2の層10、11、及び12を示す。各場合に、第2の層は、第1の層と平行であり、まだ埋められていないテーパした縁を有する。テーパは、次いで、第1の層と同じ方法で埋められる。このプロセスは、各場合に3Dシリンダが形成されるまで後続の平行な層に関して繰り返される。
【0018】
図5は、六角形の横断面を有する完成した3Dオブジェクト13を例示する。これに関して、ノズル2及び/又はロボットアーム3/基板は、直線形の側部14と突起15を有するアイテムを作製するべく適切に制御することができる。
【0019】
図1を再び参照すると、プリンタは、コンピュータ化されたコントローラ16を組み込む又はこれと接続される。これは、3Dオブジェクトがプリントされることを可能にするべくノズル2及び/又はロボットアーム3/基板間の距離及び角度を順次に調節するための指示を与える。これは、ノズルが加工している表面と確実に直交するようにすることを含んでよい。これに関して、コントローラ16は、3Dオブジェクトの形状を定義するデータファイル(例えば.STL形式)と対話するソフトウェアを動作させる。言い換えれば、データは、ソフトウェアに命令の組を提供する。
【0020】
データは、それぞれ前述の層のうちの1つに対応する一連のスライスで3Dオブジェクトの形状を定義する。横断する堆積ストロークでテーパを埋めるべくノズル2及び/又はロボットアーム3/基板を制御するときに、コントローラ16は、概念的スタックにおける次のスライス又は断面のパラメータに基づいてテーパに対する最良のノズル迎え角及び距離を計算して求める。下のテーパを埋めるための概念的境界を定めるのに次のスライスのベースが用いられてよい。コントローラ16はまた、スプレーの持続時間、粉末供給速度、スプレー速度、粉末/スプレーの温度、及び用いられるスプレー材料のタイプに関して必要なスプレーパラメータを計算する。
【0021】
ノズル2及び/又はロボットアーム3/基板の移動は、例えば、コントローラ及び/又はノズル2及び/又はロボットアーム3が基板及び/又はノズルを三次元のいずれかに動かすことができる機械部品を組み込む場合に、コントローラにより直接行うことができる。しかしながら、他の実施形態では、コントローラ16は、例えば、同じ三次元移動をもたらすべく多軸位置決め装置を操作することにより、ノズル及びロボットアーム3/基板を間接的に移動させてよい。
【0022】
好ましくは、各層の充填は、基板に平行な平坦な上面を達成するためになされる。しかしながら、これは必須ではなく、或る場合には代替的な手法が採用されてよい。
【0023】
本発明の一部の実施形態では、精度は、例えば、レーザーラインスキャナ、立体画像装置、又は構造化光カメラと共に、形成される際に各層の周辺部を測定するための手段を含むことにより高められ得る。測定値は、コントローラ16にリアルタイムで通信され、ノズルの動作、基板の動作、又はスプレーパラメータを計算する及びその調節をするのに用いられる。
【0024】
図6は、テーパした縁を埋める好ましい方法を例示する。これに関して、コントローラ16は、必要な充填を提供するべく、ノズル2に、「ツール経路」内で各テーパした部分の周辺にスプレーさせる。ロボットアーム3/基板が動く際に、コントローラは、部分形成された3Dオブジェクトのテーパした縁が、ノズル2のスプレー主軸に対して実質的に垂直なままとなるようにする。角度の垂直性が17で示される。移動は、ノズルの概念的縦軸18が、テーパが埋められるときにオブジェクトの角となるポイント19を通過するようにされる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、スプレーのノズル2を通過するロボットアーム3/基板のスイープは、スプレー材料の交互配置されたラインを堆積するべくコントローラ16により調整される。いくつかの用途では、これは堆積率を向上させることができる。
【0026】
図7は、各ラインが隣接してスプレーされる、コールドスプレーされた材料の一連のラインを通じて層がどのように随意的に構築され得るかの略断面図である。「x」軸は、基板にわたる線形距離をミリメートルで表し、「y」軸は、ノズルと基板との間の線形高さ間隔をミリメートルで表す。「x」軸に沿った三角形は、個々のラインがどこに配置されるかを示し、堆積される材料の断面又は広がりの表示を与える。より高い滑らかな曲線は、ラインがスプレーされる際に実際に形成される材料の積算量を表す。ラインがそれらの間の一定の間隔をおいて隣接してスプレーされる際に、スプレーが表面に当たる角度は、堆積率を最小にするべく傾斜される。
【0027】
図8は、隣接してスプレーされるときにコールドスプレーされた材料のラインがどのようにビルドアップされ得るかの断面図である。「x」軸は、基板にわたる線形距離をミリメートルで表し、「y」軸は、基板からの線形高さをミリメートルで表す。「x」軸に沿った三角形は、個々のラインがどこに配置されるかを示し、堆積される材料の断面の表示を与える。より高い曲線は、ラインがスプレーされる際に形成される材料の積算量を例示する。ラインが隣接してではなく交互配置される様態でスプレーされるので、積算体積はより平坦な様態で構築する。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態が単なる例として説明されているが、本発明の範囲から逸脱することなく修正及び改良を行うことができることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8