(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】色安定処理布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 15/263 20060101AFI20220621BHJP
D06M 15/356 20060101ALI20220621BHJP
D06M 101/06 20060101ALN20220621BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20220621BHJP
D06M 101/34 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
D06M15/263
D06M15/356
D06M101:06
D06M101:32
D06M101:34
(21)【出願番号】P 2019534928
(86)(22)【出願日】2016-12-30
(86)【国際出願番号】 CN2016113525
(87)【国際公開番号】W WO2018120028
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エル・フラッタレリ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ビー・ヴァーゴ
(72)【発明者】
【氏名】ユンフェイ・ヤン
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-127571(JP,A)
【文献】特開2012-112087(JP,A)
【文献】特開2011-012380(JP,A)
【文献】特開平10-316514(JP,A)
【文献】特開平11-189505(JP,A)
【文献】特開2001-106961(JP,A)
【文献】特開2010-209507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M10/00-16/00
19/00-23/18
A01N1/00-65/48
A01P1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属-ポリマー錯体処理物品であって、
a)ビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルピリジン、ビニルピロール、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーX
と、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびそれらのナトリウム塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーYとの重合単位を含むポリマーと、
b)遷移金属と、
を含む遷移金属-ポリマー錯体を含み、
さらにモノマーX対遷移金属のモル比が24:1~117:1であり、
前記処理物品が繊維または布であり、並びに、
前記繊維または布がコットンである、遷移金属-ポリマー錯体処理物品。
【請求項2】
遷移金属-ポリマー錯体処理物品であって、
a)ビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルピリジン、ビニルピロール、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーX
と、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびそれらのナトリウム塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーYとの重合単位を含むポリマーと、
b)遷移金属と、
を含む遷移金属-ポリマー錯体を含み、
さらにモノマーX対遷移金属のモル比が48:1~117:1であり、
前記遷移金属が銀であり、
前記処理物品が繊維または布であり、並びに、
前記繊維または布がコットン、ナイロン、ポリエステル、またはそれらの組合せである、遷移金属-ポリマー錯体処理物品。
【請求項3】
モノマーX対遷移金属のモル比が31:1~117:1である、請求項1に記載の処理物品。
【請求項4】
モノマーXがビニルイミダゾールである、請求項1または2に記載の処理物品。
【請求項5】
前記遷移金属が、銅、亜鉛、金、銀、スズ、およびそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の処理物品。
【請求項6】
前記遷移金属が銀である、請求項1に記載の処理物品。
【請求項7】
前記遷移金属が銀イオンである、請求項2または5に記載の処理物品。
【請求項8】
繊維または布の処理方法であって、
a)コットンである繊維またはコットンである布を提供することと、
b)以下:
i)ビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルピリジン、ビニルピロール、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーX
と、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびそれらのナトリウム塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーYとの重合単位を含むポリマーと、
ii)遷移金属と、
を含み、モノマーX対遷移金属のモル比が24:1~117:1である、少なくとも1種の遷移金属ポリマー錯体を提供することと、
c)前記繊維または布を前記少なくとも1種のポリマー錯体と接触させることと、
を含む、方法。
【請求項9】
繊維または布の処理方法であって、
a)繊維または布がコットン、ナイロン、ポリエステル、またはそれらの組合せである当該繊維または布を提供することと、
b)以下:
i)ビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルピリジン、ビニルピロール、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーX
と、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびそれらのナトリウム塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーYとの重合単位を含むポリマーと、
ii)遷移金属と、
を含み、モノマーX対遷移金属のモル比が48:1~117:1であり、前記遷移金属が銀である少なくとも1種の遷移金属ポリマー錯体を提供することと、
c)前記繊維または布を前記少なくとも1種のポリマー錯体と接触させることと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記遷移金属が銀イオンである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記遷移金属が銀イオンであり、及びモノマーX対前記銀イオンのモル比が31:1~117:1である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色安定処理布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング組成物、樹脂成形物、紙バインダー、および他の高分子材料に組み込んで抗微生物性能を付与するための多くの殺生物剤が存在する。活性剤の2つの主要クラスは、有機物(たとえば、第4級アンモニウムシラン)および無機物(たとえば、銅、銀、など)である。無機活性剤のうち最も一般的に使用されるのは、銀、最も具体的には銀イオンである。典型的担体は、銀ナノ粒子、銀塩、イオン交換樹脂、およびガラスである。
【0003】
無機抗微生物剤、具体的には銀イオンを含有する組成物は、熱、湿分、および/または太陽光への暴露により変色を引き起こす不安定性を呈することが知られている。変色については、以前、米国特許第7,993,415B2号明細書および米国特許第7,754,625B2号明細書で考察されている。こうした無機殺生物剤は、薄色または白色の布を着色してあまり望ましくないものにすることが多い。したがって、こうした組成物の使用は、事実上、かかる目立った着色変化を許容できる系に限定される。
【0004】
銀関連変色を阻止するための一方法は、米国特許第5,698,229号明細書に大隅らにより提供される。大隅らは、銀イオンが担持された無機化合物とベンゾトリアゾールとの組合せを開示する。
【0005】
変色を阻止するための他の一方法は、米国特許第7,390,774号明細書にGhoshらにより記載されている。Ghoshらは、銀イオンと錯体を形成するといわれるヘテロ環含有モノマーで構成されるコポリマーを開示する。組成物は、湿潤配合物状態で光安定である。しかしながら、布とりわけナイロン布およびポリエステル布の色安定性能は、対処されていない。驚くべきことに、米国特許第7,390,774号明細書に開示されたVIモノマー対銀イオンのモル比の上限下でさえも、処理布の許容できない色変化が見いだされた。開示された上限モル比は、VI対銀イオンの上限重量比95:5に基づいて21.77:1である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それにもかかわらず、とりわけ、コットン、ポリエステル、ナイロン、およびそれらの組合せの布組成全体にわたり、金属(たとえば銀)に起因するおよび/または有機添加剤(たとえばポリマー)の色に起因する望ましくない光安定性問題から生じうる布の手触り/風合いや色外観への影響を伴うことなく金属イオンの良好な抗細菌活性を呈する新しい組成物の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルピリジン、ビニルピロール、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーXと遷移金属とを含み、さらにモノマーX対遷移金属のモル比が24:1~117:1である、少なくとも1種の銀イオン-ポリマー錯体を含む繊維または布を含む処理物品を提供することにより、当技術分野の問題を解決する。本発明はまた、その製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「布」とは、コットン、ポリエステル、ナイロン、ライクラ、ポリオレフィン、それらのブレンドなどの織テキスタイルまたは不織テキスタイルを意味する。
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「繊維」とは、紡糸してヤーンにしうる、または織成、編成、編組、フェルト化、撚糸、ウェブ化などをはじめとするさまざまな方法で結合または交絡させることにより布にしうる、物質単位を意味する。
【0010】
本明細書で用いられる「ヤーン」という用語は、織成、編成、編組、フェルト化、撚糸、ウェブ化、または他の方法で布にするのに好適な形態のテキスタイル繊維のストランドを意味する。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「銀」という用語は、本発明の抗微生物組成物に組み込まれる銀金属を意味する。抗微生物組成物に組み込まれる銀の酸化状態(Ag0、Ag1+、またはAg2+)に関して制限されることを望むものではないが、銀は、脱イオン水(「DI」)中の硝酸銀などの銀溶液中でポリマーを洗浄することより抗微生物組成物に添加しうる。DI以外に、水、水性緩衝溶液、ならびに水混和性有機物、たとえば、アルコールなどの溶媒、界面活性剤、および軟化剤を用いて作製された水性/有機性溶液などの他の液体媒体も使用可能である。他の銀源としては、限定されるものではないが、酢酸銀、クエン酸銀、塩化銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ピクリン酸銀、酸化銀、および硫酸銀が挙げられる。これらの溶液の銀濃度は、抗微生物組成物に既知量の銀を添加するのに必要とされる濃度から飽和銀溶液に至るまでさまざまでありうる。
【0012】
アクリル系、アクリレート、アクリルアミドなどの他の用語が続く「(メタ)」という用語の使用は、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、たとえば、アクリル系および(メタ)アクリル系、アクリレートおよびメタクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミドなどの両方を意味する。そのほか、本明細書の参照文献に記載の酸はいずれも塩形も含み、その逆も成り立つ。
【0013】
本明細書に示されるパーセントはすべて、wt.%またはppm w/wである。範囲端点はすべて、包含的かつ組合せ可能である。
【0014】
本発明によれば、少なくとも1種のポリマーと遷移金属とを含む少なくとも1種の遷移金属ポリマー錯体を含む布が提供される。
【0015】
本発明のポリマーは、好適には、a)60~90wt%のモノマーXの重合単位とb)エチレン性不飽和化合物である10~40wt%のモノマーYの重合単位とを含むポリマーでありうる。
【0016】
本発明のモノマーXは、イミダゾール、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾールおよびその各異性体(たとえば、チアゾール-4-イル、チアゾール-3-イル、およびチアゾール-2-イル)、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、アゾール、インダゾール、トリアゾールおよびその各異性体(たとえば、1,2,3-トリアゾールおよび1,2,4-トリアゾール)、ならびにそれらの組合せ、たとえば、イミダゾール1,2,3-トリアゾール-1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、メチル-ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、メチルベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ならびにメチルベンゾイミダゾールでありうる。この実施形態の一態様では、本発明の抗微生物組成物は、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、およびベンゾイミダゾールから選択されるヘテロ環基を含むポリマーを含む。好ましくは、モノマーXはN-ビニルイミダゾールである。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、モノマーYは、カルボン酸、有機硫酸、スルホン酸、ホスホン酸、およびエチレンオキシドの重合単位のエステル、ならびにそれらの組合せから選択される。本発明のいくつかの実施形態では、エチレンオキシドの重合単位を含むエステルは、少なくとも2単位、代替的に少なくとも3単位、代替的に少なくとも4単位、代替的に少なくとも5単位、代替的に少なくとも6単位のエチレンオキシドを含む。重合エチレンオキシド単位の数は、重合エチレンオキシド鎖のMnから計算される。本発明のいくつかの実施形態では、エチレンオキシドの重合単位のエステルは(メタ)アクリロイルエステルである。本発明のいくつかの実施形態では、エチレンオキシドの重合単位は、一方の末端をC1-C6アルキル基でキャップしうる。本発明のいくつかの実施形態では、エチレンオキシドの重合単位は、100~3000のMnを有する。本発明のいくつかの実施形態では、エチレンオキシドの重合単位は、200~1000、代替的に250~600、代替的に300~500のMnを有する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、モノマーYは、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、ならびにそれらの組合せから選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、コポリマーは、他のエチレン性不飽和モノマー、たとえば、(メタ)アクリレートエステル、ビニルエステル、(メタ)アクリルアミドをさらに含む。水への溶解性を損なわない限り、少量の疎水性モノマー、たとえば、高級アルキル(メタ)アクリレート(たとえばC-4以上)が存在しうる。(メタ)アクリレートエステルは、混合エチレン/プロピレンオキシドのエステルを含みうるが、ただし、エチレンオキシド残基は、エチレン/プロピレンオキシド残基の少なくとも50wt%(代替的に少なくとも75%、代替的に少なくとも90%)であるか、または混合エチレン/プロピレンオキシド残基のエステルは、コポリマーの20wt%以下、代替的に15%以下、代替的に10%以下である。本発明のいくつかの実施形態では、混合エチレン/プロピレンオキシド残基は、少なくとも150、代替的に少なくとも300のMnを有する。
【0019】
代替的に、本発明のポリマー錯体では2種以上のポリマーを組み合わせうる。好適には、第2のポリマーは、(a)モノマーXの重合単位と、(b)モノマーZの重合単位(ただし、モノマーzは、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、エチルアクリレート、およびブチルアクリレート、ならびにそれらの組合せから選択される非ヘテロ環式飽和化合物である)と、を含むポリマーでありうる。ポリマーは、95:5~5:95、代替的に80:20~20:80、代替的に60:40~40:60の比でXおよびZを含む。ブチルアクリレートは、5%~50%、代替的に5%~40%、さらに代替的に5%~25%の量でコポリマー中に存在する。アクリル酸は、5%~30%、代替的に5%~20%、代替的に5%~10%の量でコポリマー中に存在する。
【0020】
本発明によれば、第1および第2のポリマーは、独立して存在してもよいし、一緒に存在してもよく、かつ追加のポリマーを併用してまたは併用せずに存在してもよい。
【0021】
遷移金属ポリマー錯体を形成するために、少なくとも1種の遷移金属と少なくとも1種のポリマーとを組み合わせる。好適な遷移金属としては、限定されるものではないが、銅、亜鉛、金、銀、スズ、およびそれらの組合せが挙げられる。好適には、遷移金属は銀である。遷移金属ポリマー錯体中の遷移金属が銀である場合、銀は、10~100ppm、代替的に15~80ppm、さらに代替的に20~50ppmの銀濃度で繊維上または布上に存在しうる。
【0022】
本発明のきわめて重要な態様は、モノマーX対銀のモル比である。好適には、モノマーX対銀の比は、22:1~117:1、代替的に31:1~117:1、さらに代替的に48:1~117:1、さらに代替的に61:1~117:1、さらに代替的に22:1~61:1、さらに代替的に24:1~61:1、さらに代替的に31:1~61:1、さらに代替的に48:1~61:1である。複数のポリマー中にモノマーXが存在する場合、モノマーX対銀のモル比の比計算では、すべての供給源からのモノマーXの全量が考慮される。
【0023】
このポリマー錯体は、当技術分野の従来の手段により配合され、そして繊維または布に適用されて処理物品を形成する。好適な布としては、コットン、ポリエステル、およびナイロン、代替的にポリエステルおよびナイロン、ならびにそれらの組合せが挙げられる。吸尽プロセスおよび従来のパディングプロセスは、本発明でポリマー錯体を布に適用するために使用しうる好適な方法の例である。本発明の好ましい方法はパディングである。ポリマー錯体の適用後、次いで、布を乾燥させうる。従来の乾燥方法を使用しうる。布の重量が乾燥処理前のその初期重量に等しい場合、布は「乾燥状態」であるといわれる。本発明の一実施形態では、処理布は乾燥状態である。
【0024】
次に、本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例で詳細に説明する。以下の実施例に示される分率およびパーセントはすべて、とくに明記されていない限り重量基準である。
また、本発明の態様には以下の態様1~11が含まれる。
[態様1]
遷移金属-ポリマー錯体処理物品であって、
a)ビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルピリジン、ビニルピロール、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーXと、
b)遷移金属と、
を含み、
さらにモノマーX対遷移金属のモル比が24:1~117:1である、遷移金属-ポリマー錯体処理物品。
[態様2]
繊維または布である、態様1に記載の処理物品。
[態様3]
モノマーX対遷移金属のモル比が31:1~117:1である、態様1に記載の処理物品。
[態様4]
モノマーXがビニルイミダゾールである、態様1に記載の処理物品。
[態様5]
前記遷移金属が、銅、亜鉛、金、銀、スズ、およびそれらの組合せから選択される、態様1に記載の処理物品。
[態様6]
前記遷移金属が銀である、態様1に記載の処理物品。
[態様7]
前記遷移金属が銀イオンである、態様5に記載の処理物品。
[態様8]
前記布が、コットン、ナイロン、ポリエステル、およびそれらの組合せである、態様1に記載の処理物品。
[態様9]
繊維または布の処理方法であって、
a)繊維または布を提供することと、
b)以下:
i)ビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルピリジン、ビニルピロール、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーXと、
ii)遷移金属と、
を含み、モノマーX対遷移金属のモル比が24:1~117:1である、少なくとも1種の遷移金属ポリマー錯体を提供することと、
c)前記布を前記少なくとも1種のポリマー錯体と接触させることと、
を含む、方法。
[態様10]
前記遷移金属が銀イオンである、態様9に記載の方法。
[態様11]
モノマーX対銀イオンのモル比が31:1~117:1である、態様10に記載の方法。
【実施例】
【0025】
処理布の作製に使用した材料および方法
【0026】
【0027】
【0028】
方法:
布処理
Werner Mathis AG製の実験室スケールのパディング機(モデル:CH-8155 VFM28888)を用いて、抗微生物組成物を布サンプルに適用した。
【0029】
第1に、乾燥テキスタイル上の目標銀イオン充填率を達成するのに必要とされる銀イオン-ポリマー錯体溶液の濃度を計算するために、当分野の標準として布の湿潤ピックアップ率(WPUR)を決定した。ローラー圧力を初期状態で3bargに設定する。次いで、布の12”×16”スウォッチを秤取する。ほとんどの布スウォッチは10~15グラムの重量であろう。ポリエステルは典型的には12グラムであり、重いコットンは典型的には15グラムである。十分に水を吸収するまで、脱イオン水浴にスウォッチを3~8秒間浸漬する。その直後、3bargの圧力設定で湿潤布をスピニングローラーに通す。次いで、布を再秤量して吸水による重量増加を決定する。ローラーに通した後の湿潤布の重量と乾燥布の重量との差を乾燥布の重量で除算することによりWPURを計算する。ここで使用したポリエステル布は、典型的には後が約24グラムおよび前が12グラムであったので、(24-12)/12または約100%の湿潤ピックアップ率を与えた。コットンは、典型的には乾燥状態で15グラムおよびローラー後が30グラムの重量であるので、計算湿潤ピックアップ率は(30-15)/15または約100%である。ナイロンは、典型的には乾燥状態で12グラムおよびローラー後が27グラムの重量であったので、計算湿潤ピックアップ率は(27-12)/12または約125%であった。湿潤ピックアップ率が所望の値にマッチしない場合、パディングローラーの圧力を上方または下方に調整して所望の値を達成することが可能である。布の供給源および組成は、WPURに直接影響を及ぼすであろうから、目標銀イオン布濃度を達成するように決定すべきである。
【0030】
第2に、各テキスタイルスウォッチまたは布を処理するために適用浴溶液を調製する。浴中の銀イオン濃度は、初期銀イオン濃厚溶液および湿潤ピックアップ率に基づいて計算される。抗微生物配合物の浴濃度の計算は、目標銀イオンレベルを抗微生物配合物中の活性剤充填率で除算してから湿潤ピックアップ率で除算することにより計算される。たとえば、1000ppmの銀を含む抗微生物配合物を用いて100%の湿潤ピックアップ率のポリエステル布上で理論値30ppmの銀を目標とするには、30ppmのAgの目標値/配合物中の1000ppmのAg/(1.0WPUR×100)の除算が行われるであろう。これは97gの水中の3gの抗微生物濃厚配合物と等価である。本発明の目的では、さまざまなVI:Ag+モル比により識別されるすべての抗微生物濃厚配合物(表3、1~13)全体にわたり、コットンおよびポリエステルの処理を同様に類似のWPURに基づいて利用した。例外は、約125%の湿潤ピックアップ率を達成したナイロン布サンプルの場合であり、その計算は、30ppmのAgの目標値/1000ppmのAgの抗微生物配合物/1.25WPUR×100、または97.6gの水中の2.4gの抗微生物濃厚配合物であった。
【0031】
30ppmの銀目標布充填率は、コットンおよびポリエステルに対しては3グラムの抗微生物濃厚配合物を秤取してそれを97グラムの脱イオン水中に混合することにより、ナイロンに対しては2.4グラムの抗微生物濃厚配合物を秤取して97.6グラムの脱イオン水中に混合することにより、単純に配合されよう。銀イオン-ポリマー錯体はコットンおよびポリエステルに対するよりもナイロンに対する親和性がより強いため、約30ppmの銀イオンの所望の布濃度にマッチするように、24ppmの代わりに約15ppmの銀(または1.5グラムの抗微生物濃厚配合物)で浴を調製した。対照として(抗微生物処理を行わずに)使用したすべての布に対して、水のみを用いて布を処理し、後続の表にそのように記した。
【0032】
最後に、各布スウォッチに対して所望の湿潤ピックアップ率を達成するように、以上で決定された圧力設定を用いてパディング機で各布の処理を行った。処理前にパディング機のトラフに各銀溶液を注加した。次いで、浸漬されるまで、布サンプルを銀溶液に3~8秒間浸漬した。次いで、所望の湿潤ピックアップ重量を達成するように、ただちに湿潤布をローラーに通した。次いで、教示された布を広げるデバイス上に布を配置し、150℃の対流式オーブン中で2分間乾燥させた。
【0033】
抗微生物濃厚配合物:
4~117のVI:Ag+モル比を担持する抗微生物濃厚配合物1~10を表3に示す。抗微生物配合物例のそれぞれは、50%硝酸銀水溶液として添加される約1000ppmまたは約200ppmの銀イオンを含有する。水とポリマーとを一体的に組み合わせて最初に完全に混合することにより、配合物のそれぞれを調製した。次いで、アンモニア(水中28%の濃度のアンモニアである)を添加する。最後に、透明単相溶液が得られるように硝酸銀溶液をポリマー溶液に徐々に混合する。
【0034】
【0035】
【0036】
布耐候性
色変化を加速するために、気候チャンバー(モデル:KBWF720気候チャンバー、Binder Company)ですべての布をエージングした。布の12”×16”処理スウォッチを長さ方向に半分にカットして6”×16”の2つのストリップを作製した。最初に両側で遮光紙カードを用いてサンプルの半分または約6”×8”をカバーし、かつ残りの半分はカバーせずに露出したままにすることにより、一方のストリップを気候チャンバー内で使用した。それらのストリップをチャンバー内に垂直に吊り下げた。次いで、チャンバーを30℃に設定し、次のような湿度でサイクル処理した。すなわち、30%の相対湿度で4時間、30%から90%への移行で2時間、90%での保持で4時間、90%から30%への移行で2時間、および繰返しの処理を行った。この耐候性サイクルを3週間繰り返した。光源は、耐候性プロセス時に点灯し続けたLUMILUX Cool Daylight(OSRAM L36w/865照明バルブ)であった。
【0037】
測色
13mm(0.5”)の測定領域でパルスキセノンアーク源からの照明、0度の照明角、および45度の視角を用いてHunterlab Spectrophotometer(モデル:Labscan XE)により、耐候試験後の布の色を測定した。バッキングとして標準白色タイルを用いて2層の実験布で測定を実施した。全色変化(ΔE*ab)を評価したりISOグレースケールで解釈したりするためにすべての実験布サンプルと比較される対照布として、未処理標準のコットン、ポリエステル、またはナイロンを使用した。より大きなΔE*abは、より大きな布色変化に対応する。ISOの分析では、スケールは1~5であり、5は色変化が最小のものからないものまでを表す。ISOグレースケールの読み値は分光測光器の出力である。ΔE*abの計算は、明色/暗色、赤色/緑色、および青色/黄色の座標空間を記述するL、a、およびbの測定に基づく。ΔE*ab値は、測定サンプル値と対照サンプルとの差の平方和の平方根として計算される。
【0038】
【0039】
式中、下付き文字0は対照サンプル値を表し、かつiは個別のサンプル測定値を表す。各布スウォッチを3つの位置で測定し、L、a、およびbの値の平均をΔE*abの計算に使用した。
【0040】
約1.3未満のΔE*abまたは4.5以上のISOグレースケールの読み値が好ましい。
【0041】
抗微生物性能試験
布を0.4gのサンプルにカットし、無菌の50mLコニカルチューブに配置した。200μlのエシェリキア・コリ(Escherichia coli)ATCC8739接種物をサンプルに接種した。トリプリケートでサンプルを試験し、1セットの非保存サンプルを接種直後に計数した。細菌サンプルの残りの部分を37℃でインキュベートし、接種24時間後に計数した。20mLのデイ・エングレイ中和ブロスをサンプルに添加して25秒間ボルテックスすることにより、細菌を計数した。細胞懸濁物のアリコートを採取し、最確数(MPN)法を用いて計数した。(修正ISO20743抗微生物有効性試験)。
【0042】
定性的手触り/風合い試験
ポリマーおよび銀イオンを用いて各種VI対Ag+比で処理された布をランダムに選択された7名のパネリストに与えた。ポリマーも銀イオンも含まない蛇口からのプロセス水を用いて対照布を作製した。プロセス水で処理されたポリエステルおよびナイロンのスウォッチまたは布と対比して手触り風合いの変化を比較するようにパネリストに依頼した。フィードバックは次の2つのカテゴリー、すなわち、1)参照よりもハードな手触り/風合い、2)参照と同一の手触り/風合いであった。
【0043】
実験および結果
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】