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特許7092796全固体電池用固体電解質膜の製造方法及び該方法によって製造された固体電解質膜
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  • 特許-全固体電池用固体電解質膜の製造方法及び該方法によって製造された固体電解質膜 図1
  • 特許-全固体電池用固体電解質膜の製造方法及び該方法によって製造された固体電解質膜 図2
  • 特許-全固体電池用固体電解質膜の製造方法及び該方法によって製造された固体電解質膜 図3
  • 特許-全固体電池用固体電解質膜の製造方法及び該方法によって製造された固体電解質膜 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】全固体電池用固体電解質膜の製造方法及び該方法によって製造された固体電解質膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20220621BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/431 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220621BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220621BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220621BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M50/403 D
H01M50/44
H01M50/446
H01M50/431
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/426
H01M50/414
H01M50/429
H01M50/443 M
H01B1/06 A
H01B13/00 Z
D01D5/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019559254
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 KR2018005570
(87)【国際公開番号】W WO2018212568
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2019-07-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0060063
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ジュ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ホ-ソク・シン
(72)【発明者】
【氏名】スン-ヒ・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ジュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ-ウン・ハン
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-091005(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0050518(KR,A)
【文献】特開2016-139482(JP,A)
【文献】特開平04-082166(JP,A)
【文献】特表2015-528991(JP,A)
【文献】特表2012-504322(JP,A)
【文献】国際公開第2002/078114(WO,A1)
【文献】特開2005-129272(JP,A)
【文献】特開2000-215915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0165466(US,A1)
【文献】特開2015-153460(JP,A)
【文献】特開2015-213007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 50/40-50/497
H01B 1/06
H01B 13/00
D01D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィラメントが集積された不織布前駆体を製造する段階;
固体電解質膜形成用スラリーを用意する段階;
前記不織布前駆体と前記スラリーとを混合して混合物を収得する段階;
前記混合物を乾燥して予備固体電解質膜を収得する段階;及び
前記予備固体電解質膜を加圧して固体電解質膜を収得する段階を含み、
前記不織布前駆体は、前記高分子フィラメントの相互結着のための圧着段階を経ておらず
前記固体電解質膜が、複数の無機固体電解質及び複数の前記高分子フィラメントを含む、
全固体電池用固体電解質膜の製造方法。
【請求項2】
前記高分子フィラメントが電界紡糸の方法で紡糸されて収得される、請求項1に記載の全固体電池用固体電解質膜の製造方法。
【請求項3】
記高分子フィラメントは互いに絡み付けられて相互間交差及び結着して形成された3次元網状構造体を形成し、前記網状構造体の厚さ方向全体にわたって前記無機固体電解質粒子で均一に充填されている固体電解質膜であって、
気孔度が15%以下であり、
通気度が3,000sec/100cc以上の範囲を有し、
前記無機固体電解質と前記高分子フィラメントとが99:1~30:70の重量比で含まれる、請求項1または2に記載の全固体電池用固体電解質膜の製造方法。
【請求項4】
前記高分子フィラメントが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロース及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる群より選択される1種または2種以上の高分子材料を含む、請求項1から3の何れか一項に記載の全固体電池用固体電解質膜の製造方法。
【請求項5】
前記無機固体電解質が、1次粒子、及び1次粒子が凝集して形成された2次粒子の少なくとも1つの形態を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の全固体電池用固体電解質膜の製造方法。
【請求項6】
前記高分子フィラメントの直径が100nm~2μmである、請求項1から5の何れか一項に記載の全固体電池用固体電解質膜の製造方法。
【請求項7】
前記無機固体電解質が酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうち1つ以上を含む、請求項1から6の何れか一項に記載の全固体電池用固体電解質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質粒子の脱離が少なく、耐久性に優れた全固体電池用固体電解質膜及びそれを製造する方法に関する。
【0002】
本出願は、2017年5月15日出願の韓国特許出願第10-2017-0060063号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
携帯型電子機器用電源装置として、リチウムイオン二次電池が広く使用されている。さらに近年は、リチウムイオン二次電池を電気自動車または産業用電池として活用しようとする動きがある。リチウムイオン二次電池の構造は比較的単純であって、負極活物質、正極活物質及び電解液の3大要素からなっている。リチウムイオンが正極から負極に、負極から正極に移動することで、電池作用が行われる。電解質部分は専らリチウムイオン伝導体として機能する。広く使用されているリチウムイオン二次電池では、非プロトン性有機溶媒にリチウム塩を溶解させた電解質溶液が使用されている。しかし、このような電解質溶液は電解液の漏れやガス発生による使用上の問題を有しており、このような問題を解決するため、全固体電池の開発が必要とされている。
【0004】
固体電解質を用いる全固体電池は、液相電解質を用いる電池と比べて、(1)安全性の向上、(2)最適化した構造を有する電池、(3)高いエネルギー密度及び(4)高い出力密度などの長所がある。通常、全固体電池は、正極と負極との間にシート状の固体電解質を配置する。このようなシート状の固体電解質は、通常、無機固体電解質粒子とバインダー樹脂とを混合してシート状に製造したものを使用する。しかし、粒子をバインダー樹脂で結着した状態の固体電解質シートは固体電解質粒子が脱離するという問題がある。一方、固体電解質粒子を含むスラリーを不織布の内部に混入させる方法が提案されたが、不織布内部の中心まで固体電解質粒子を混入できず不織布の表層部分のみに粒子が位置するようになって、不織布内部を十分充填できないという問題があった。したがって、固体電解質粒子同士が接触できず、不織布の上部側及び下部側に離れて位置することで、イオン伝導度が高くない。また、混入できずに不織布の表層部に残った固体電解質粒子が電解質膜から脱離する問題があった。図4は、従来提案された固体電解質膜aを概略的に示した図である。これを参照すれば、固体電解質スラリーa2を不織布a1の表面に塗布して押し込んでも、不織布の厚さ方向の全体に固体電解質スラリーが混入できず、不織布の表面に残存する量が多い。そこで、物理的強度が高く、柔軟でありながらも、粒子が脱離しない固体電解質膜の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、イオン伝導度が高く、無機固体電解質粒子の脱離が少なく、柔軟性及び耐久性が改善された新規な全固体電池用固体電解質膜を製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段または方法、及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するための全固体電池用固体電解質膜及びそれを製造する方法に関する。
【0007】
本発明の第1態様は、固体電解質膜に関し、該固体電解質膜は、多数の無機固体電解質粒子及び多数の高分子フィラメントを含み、前記高分子フィラメントは互いに絡み付けられて相互間交差及び結着して形成された3次元網状構造体を形成し、前記網状構造体の厚さ方向全体にわたって前記無機固体電解質粒子で充填されている。
【0008】
本発明の第2態様によれば、第1態様において、前記高分子フィラメントがポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロース及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる群より選択される1種または2種以上の高分子材料を含む。
【0009】
本発明の第3態様によれば、第1態様または第2態様において、前記無機固体電解質が1次粒子、及び1次粒子が凝集して形成された2次粒子の少なくとも1つの粒子の形態を含む。
【0010】
本発明の第4態様によれば、第1態様~第3態様のうちいずれか1つにおいて、前記高分子フィラメントの直径が100nm~2μmである。
【0011】
本発明の第5態様によれば、第1態様~第4態様のうちいずれか1つにおいて、前記無機固体電解質が酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうち1つ以上を含む。
【0012】
本発明の第6態様によれば、第1態様~第5態様のうちいずれか1つにおいて、前記固体電解質膜のうち無機固体電解質と高分子フィラメントとが99:1~30:70の重量比で含まれる。
【0013】
本発明の第7態様は、全固体電池用固体電解質膜を製造する方法に関し、該方法は、高分子フィラメントが集積された不織布前駆体を製造する段階;固体電解質膜形成用スラリーを用意する段階;前記不織布前駆体と前記スラリーとを混合して混合物を収得する段階;前記混合物を乾燥して予備固体電解質膜を収得する段階;及び前記予備固体電解質膜を加圧して固体電解質膜を収得する段階;を含む。
【0014】
本発明の第8態様によれば、第7態様において、前記高分子フィラメントが電界紡糸の方法で紡糸されて収得される。
【発明の効果】
【0015】
本発明による全固体電池用固体電解質膜の製造方法は、不織布を圧着する前の状態である不織布前駆体に固体電解質膜形成用スラリーを混入させるため、高分子フィラメントの3次元網状構造体の内部に前記固体電解質が均一に充填され、充填率が高い。したがって、一般に圧着された不織布に無機固体電解質粒子を押し込むなどで充填させる方法に比べて、固体電解質膜の内部に多量の無機固体電解質成分が均一に分布でき、それによって固体電解質粒子同士の接触によるイオン伝導の経路が十分形成されてイオン伝導度が優れる。さらに、固体電解質膜からの固体電解質粒子の脱離が少なく、3次元網状構造体によって耐久性及び柔軟性が増加して変形が防止される。
【0016】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明が図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。なお、図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するために誇張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による電界紡糸工程を示した概略図である。
図2】高分子フィラメントと固体電解質形成用スラリーとの混合物が離型板上に塗布された状態を例示的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態による加圧工程を示した概略図である。
図4】従来の固体電解質膜の断面を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0019】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0020】
本明細書の全体で使われる用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0021】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」との記載は「A、Bまたはこれら全て」を意味する。
【0022】
後述する説明における特定の用語は、便宜上使われただけで、制限的なものではない。「右」、「左」、「上面」及び「下面」との単語は参照する図面における方向を表す。「内側に」及び「外側に」との単語は、それぞれ指定された装置、システム及びその部材の幾何学的中心に向かうか、それとも、そこから遠くなる方向を表す。「前方」、「後方」、「上方」、「下方」及びその関連単語と語句は、参照する図面における位置及び方位を表し、制限的なものではない。このような用語は上述した単語、その派生語及び類似した意味の単語を含む。
【0023】
本発明は、全固体電池用固体電解質膜及びそれを含む電気化学素子に関する。また、前記固体電解質膜を製造する方法に関する。前記電気化学素子は、例えば、リチウムイオン二次電池であり、特に、電解質材料として高分子電解質及び/または無機固体電解質を使用する全固体電池であり得る。
【0024】
本発明による前記固体電解質膜は、微細繊維状の高分子材料である高分子フィラメントと固体電解質との混合相を含む。本発明の一実施形態において、前記固体電解質は高分子系固体電解質及び無機固体電解質のうち1種以上を含むことができる。一方、前記固体電解質膜はバインダー樹脂をさらに含むことができる。
【0025】
前記固体電解質膜において、前記高分子フィラメントは互いに絡み付けられて相互間交差及び結着して3次元網状構造体を形成する。本発明の具体的な一実施形態において、前記3次元網状構造体は多数の高分子フィラメントが互いに絡み付けられて形成された不織布類似構造を有し得る。すなわち、前記3次元網状構造体は、繊維状の高分子材料同士が相互交差して構成された3次元構造体であって、3次元の網形態であり得る。また、本発明の具体的な一実施形態において、固体電解質は前記網状構造体を支持体にして、前記構造の内部に混入されて前記網状構造体を充填している。本発明の一実施形態において、前記固体電解質は、前記固体電解質膜の内部に固体電解質粒子が密集してパッキングされた状態で高密度で充填されており、そのため、固体電解質膜の気孔度は15%以下、望ましくは10%以下と低い。本発明の一実施形態において、前記固体電解質は、前記固体電解質膜において前記網状構造体外部面の全部または少なくとも一部を被覆する形態で含まれ得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記高分子フィラメントは高分子材料を電界紡糸の方法で紡糸して収得されたものであり得、例えば、高分子材料が溶解された高分子溶液を電界紡糸の方法で、水、または、メタノールやエタノールなどの低級アルコール中にフィラメントを吐出する湿式紡糸の方法で収得されたものであり得る。しかし、高分子フィラメントが上記の方法で形成されたものに限定されることはない。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記高分子フィラメント同士が絡み付けられている3次元網状構造体は不織布類似構造を有し得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記固体電解質膜は、不織布類似構造の3次元網状構造体の内部に多数の無機固体電解質粒子が充填されて形成された混合相を含む複合物である。前記固体電解質膜は、多量の固体電解質粒子が3次元網状構造体内の気孔に均一な分布で充填され、粒子同士の接触が円滑であるため、イオン伝導の経路を十分提供できる。また、支持体として機能する3次元網状構造体によって固体電解質膜の耐久性が向上し、柔軟性及び剛性が増加するため、固体電解質膜からの無機固体電解質粒子の脱離を防止することができる。特に、固体電解質膜が反られるか又は折り曲げられるなどの変形が生じても、固体電解質膜が破れ、それによって電解質膜から固体電解質粒子が脱離することが減少する。また、後述するように、本発明による固体電解質膜は、高分子フィラメントを紡糸して収得したフィラメント集積体を固体電解質で充填させた後、圧着する方式で得られる。したがって、前記3次元網状構造体は、通常の不織布に比べて、内部に多量の固体電解質を充填でき、高いイオン伝導度を確保することができる。
【0027】
本発明の具体的な一実施形態において、前記固体電解質膜のうち前記多数の無機固体電解質粒子と前記高分子フィラメントとは相互間結着及び/または付着して1つの膜単位体を形成する。前記固体電解質膜がバインダー樹脂を含む場合は、バインダー樹脂がこれらの結着を補助することができる。
【0028】
本発明の具体的な一実施形態において、前記高分子フィラメントの直径は100nm~2μmであり、該範囲内で300nm以上、500nm以上、700nm以上、1μm以上、1.3μm以上、1.5μm以上または1.7μm以上であり得、1.8μm以下、1.5μm以下、1.2μm以下、1μm以下、800nm以下または500nm以下であり得る。
【0029】
また、本発明の具体的な一実施形態において、前記高分子フィラメントは縦横比が1を超過でき、例えばその長さは5μm~500μmであり得る。本発明の一実施形態において、前記フィラメントの長さは上記の範囲内で10μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上または400μm以上であり得、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下または30μm以下であり得る。本発明の一実施形態において、前記フィラメントの直径と長さはSEMイメージ分析による形状観察を通じて確認することができる。
【0030】
前記高分子材料は、通常の不織布製造工程で使用可能なものであって、電界紡糸によって上述した範囲の直径と長さを有するフィラメントとして紡糸可能な性質のものであれば、制限なく使用でき、固体電解質膜の使用目的に合わせて適切な高分子材料を含むことができる。
【0031】
本発明の具体的な一実施形態において、前記高分子材料は熱可塑性樹脂及び/または熱硬化性樹脂であり得る。その非制限的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールなどのポリエステル、アラミドのようなポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロース、ナイロン、ポリアリレート及びガラスからなる群より選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物を含むことができる。
【0032】
本発明の具体的な一実施形態において、前記無機固体電解質は、通常全固体電池に使用されるものであれば特定の成分に限定されず、電池特性に応じて適切に選択して使用可能である。
【0033】
本発明の具体的な一実施形態において、前記無機固体電解質は、特に具体的な成分に限定されることはなく、結晶性固体電解質、非結晶性固体電解質、ガラスセラミックス固体電解質のような無機固体電解質のうち1つ以上を含むことができる。本発明において、前記固体電解質は、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうち1つ以上を含むことができる。一実施形態において、前記硫化物系固体電解質としては、硫化リチウム、硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム及び硫化ホウ素などが挙げられる。このような無機固体電解質の具体的な例としては、LLTO系化合物((La,Li)TiO)、LiLaCaTa12、LiLaANb12(AはCa、Sr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、LAGP系化合物(Li1+xAlGe2-x(PO、0≦x≦1、0≦y≦1)、LiO-Al-TiO-PのようなLATP系化合物(Li1+xAlTi2-x(PO、0≦x≦1、0≦y≦1)、Li1+xTi2-xAlSi(PO3-y(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiAlZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiTiZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiS-PのようなLPS系化合物、Li3.833Sn0.833As0.166、LiSnS、Li3.25Ge0.250.75、B-LiS、xLiS-(100-x)P(xは70~80)、LiS-SiS-LiN、LiS-P-LiI、LiS-SiS-LiI、LiS-B-LiI、LiN、LISICON、LIPON系化合物(Li3+yPO4-x、0≦x≦1、0≦y≦1)、Li3.25Ge0.250.75のようなThio-LISICON系化合物、ペロブスカイト系化合物((La,Li)TiO)、LiTi(POのようなNASICON系化合物、構成成分としてリチウム、ランタン、ジルコニウム及び酸素を含むLLZO系化合物などが挙げられ、このうち1種以上を含むことができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記無機固体電解質は粒子の形態であり得、前記粒子は1次粒子、及び1次粒子が凝集して形成された2次粒子の少なくとも1つの形態を含み得る。また、前記無機固体電解質粒子は、粒径が200nm~5μmの範囲であり得る。
【0035】
本発明の具体的な一実施形態において、前記固体電解質膜のうち無機固体電解質と高分子フィラメント(不織布前駆体)とは、約99:1~30:70の重量比(重量%)で含まれ得る。前記固体電解質膜のうち前記無機固体電解質は、90重量%以下、85重量%以下、75重量%以下、65重量%以下、60重量%以下であり得、上記の範囲内で40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上であり得る。前記固体電解質膜のうち無機固体電解質の含量が30重量%以下であれば、固体電解質膜内で電解質粒子同士が離隔する恐れがあり、イオン伝導経路を十分提供することができない。
【0036】
前記バインダー樹脂は、固体電解質膜内で膜構成成分間の結着力を提供するものであって、電気化学素子分野でバインダーとして使われるPVdF系バインダー樹脂やアクリル系バインダー樹脂などを制限なく使用できる。一方、本発明の具体的な一実施形態において、固体電解質として硫化物系固体電解質を使用する場合、スラリーの分散媒としては極性度(polarity index)3以下の非極性溶媒を使用することが望ましく、このとき、バインダー樹脂としては、溶解度を考慮してゴム系バインダー樹脂を使用することが望ましい。前記ゴム系バインダー樹脂は、天然ゴム、ブチル系ゴム、ブロモ-ブチル系ゴム、塩素化ブチル系ゴム、スチレンイソプレン系ゴム、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン系ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系ゴム、ポリブタジエン系ゴム、ニトリルブタジエン系ゴム、スチレンブタジエン系ゴム、スチレンブタジエンスチレン(SBS)系ゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)系ゴムからなる群より選択された1種以上を含むことができる。本発明の具体的な一実施形態において、前記バインダー樹脂は前記固体電解質膜中に1~10重量%の範囲で含まれ、その含量は7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下の範囲で適切に調節され得る。
【0037】
本発明の具体的な一実施形態において、前記固体電解質膜の厚さは10μm~700μmであり得る。しかし、上記の範囲に特に限定されず、最終的な目的(電池の特性など)を考慮して適切に調節され得る。
【0038】
また、本発明の具体的な一実施形態において、前記固体電解質膜の気孔度は、10vol%以下、8vol%以下、3vol%以下、または0vol%に近い程度と非常に低いか、これと共にまたは独立的に、通気度が無限大に測定されて測定不可能な程度であることが望ましい。例えば、前記固体電解質膜の通気度は3,000sec/100cc以上の範囲を有する。
【0039】
本発明の具体的な一実施形態において、「通気度」とは、電解質膜に対して100ccの空気が透過する時間を意味する。これはJIS P8117に準拠して測定可能である。これによれば、厚さT1の電解質膜で測定された空気透過度P1は、数式:P2=(P1×20)/T1によって、電解質膜の厚さを20μmにする場合の透過度P2に換算され得る。その単位はsec/100ccであって、透過度と相互交換して使用可能であり、通常ガリー値(Gurely value)などで表され得る。一方、前記気孔度は、窒素などの吸着気体を用いてBEL JAPAN社製のBELSORP(BET装備)を用いて測定するか、又は、水銀圧入法(Mercury intrusion porosimetry)のような方法で測定可能である。または、本発明の一実施形態において、収得された電極(電極活物質層)の密度(見掛け密度)、電極(電極活物質層)に含まれた材料の組成比及び各成分の密度から電極活物質層の真密度を計算し、見掛け密度(apparent density)と真密度(net density)との差から電極活物質層の気孔度を計算可能である。
【0040】
また、本発明は、上述した特徴を有する固体電解質膜の製造方法を提供する。図1図3は本発明による電解質膜の製造方法を工程順に並べた工程フロー図である。これを参照して本発明による電解質膜の製造方法を詳細に説明する。
【0041】
本発明による電解質膜の製造方法は、下記(S10)~(S50)を含む。
(S10)高分子フィラメントが集積された不織布前駆体を製造する段階;
(S20)固体電解質膜形成用スラリーを用意する段階;
(S30)前記(S10)で収得した不織布前駆体と前記スラリーとを混合して混合物を収得する段階;
(S40)前記混合物を乾燥して予備固体電解質膜を収得する段階;及び
(S50)前記予備固体電解質膜を加圧して固体電解質膜を収得する段階。
【0042】
これら段階のうち(S10)及び(S20)は順次行われなくても良く、同時に、又は、(S20)工程後に(S10)工程を行っても良い。
【0043】
まず、高分子フィラメントが集積された不織布前駆体を製造する(S10)。本発明において、「不織布前駆体」とは、不織布製造のために紡糸された微細高分子フィラメントが単に堆積または集積されている状態であって、フィラメントの相互結着のための圧着段階を経ていない状態を意味する。本発明の具体的な一実施形態において、前記フィラメントの紡糸は電界紡糸の方法で行うことができる。電界紡糸(electrospinning)は、電場を用いて小さくは数nmの直径を有する連続相の繊維を得る方法である。電界紡糸装置は、普通、高電圧電源、紡績突起(spinneret)及び繊維を収集するコレクタを含んで構成される。電界紡糸の際、高分子溶液とコレクタとは相互逆極性に荷電される。ノズル終端から吐出された高分子溶液は印加された電圧による静電気的反発力及びクーロン力によって円錐状(taylor)を描きながら延伸されてフィラメント形態に紡糸され、コレクタに繊維が集められる。電界紡糸を用いる場合、紡糸ノズルの口径、電圧及び/または電流範囲などの紡糸工程を制御することで、フィラメントを数十~数ミクロンレベルに微細に形成することができ、気孔度の高い不織布形成に有利である。
【0044】
一方、本発明の具体的な一実施形態において、前記電界紡糸は紡糸されたフィラメントが溶液中で集積及び/または堆積される方式である湿式紡糸であることが望ましい。湿式紡糸方法でフィラメントを集積させる場合、集積されたフィラメントを圧着して不織布を形成するまでフィラメントが絡まず溶液中に均一に分布でき、均一な気孔形成に有利である。例えば、湿式紡糸の方法で不織布前駆体を製造する場合、上述したような高分子材料(例えば、ポリアクリロニトリル)をDMFなどの適切な分散媒に溶解して高分子溶液を製造し、それを微細フィラメントの形態で、水、メタノールまたはエタノールのような凝固液中に紡糸した後、紡糸の結果集積された状態のフィラメントを収集する方式で不織布前駆体を収得することができる。また、前記不織布前駆体は、前記分散媒や凝固液のような溶剤を乾燥するために凍結乾燥をさらに行うことができる。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態による電界紡糸工程に関し、紡糸装置10から高分子フィラメント20が凝固液30中に吐出されることを概略的に示した図である。
【0046】
次いで、固体電解質膜形成用スラリーを用意する(S20)。前記スラリーは、無機固体電解質粒子を含む固体電解質膜材料を、キシレン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ヘキサン、無水ヘキサン、トルエン、エーテル、3級アルコール、2級アミン、3級アミンなどから選択された単独または2種以上を含む適切な溶媒に分散させて用意できる。前記電解質膜材料は、上述したように、バインダー樹脂をさらに含むことができる。本発明の具体的な一実施形態において、前記スラリーは、LAGPなど酸化物系固体電解質粒子及びバインダー樹脂を含む固形分を無水キシレンに重量比10:90~50:50の比率で混合した後、乳鉢混合して用意することができる。前記混合方法は、乳鉢混合など通常の混合方法を使用でき、ある1つの方法に特に限定されない。
【0047】
その後、前記(S10)段階で収得した不織布前駆体と前記固体電解質膜形成用スラリーとを混合して混合物を収得する(S30)。前記混合物は、前記不織布前駆体に前記スラリーが混入されて不織布前駆体の内部にスラリーが充填された状態で用意できる。本段階を通じて、不織布前駆体に形成された気孔の間に無機固体電解質などが充填される。本発明の一実施形態において、前記混合物は前記不織布前駆体と前記スラリーとが混合されて構成成分が均一に分散した分散物の形態で用意できる。本発明の一実施形態において、前記不織布前駆体と前記スラリーとの混合は機械的(物理的)な混合方法で行うことができる。このような機械的な混合方法は、ある1つの方法に特に限定されず、手動混合及び自動混合から1つ以上を適切に選択できる。例えば、前記混合は、所定体積を有する乳鉢に前記混合物を投入して乳棒を用いて混合(乳鉢混合)でき、外にも通常のスクリュー式、インペラ式、パドル式及びハンマーミキサーなどを適切に選択して適用できる。前記不織布前駆体は、フィラメントが綿のように粗い状態で不規則に集積されている状態であり、このような混合工程によって、前記スラリーが不織布前駆体のフィラメントの空隙に浸透するか、または、低い機械的強度を有する不織布前駆体が一部解体されて前記スラリーとともに混合されてスラリー化する。
【0048】
本発明の具体的な一実施形態において、前記混合物はPETフィルムのような離型板上に所定厚さで塗布されて乾燥工程などの後続工程に投入されるように用意できる。前記離型板は、後述する加圧段階の後、除去される。図2は、離型板50の表面に高分子フィラメント20と固体電解質膜形成用スラリー40との混合物が塗布された状態を例示的に示した図である。
【0049】
前記不織布前駆体は、紡糸されたフィラメントが圧着される前の状態であるため、圧着後に得られる不織布に比べて気孔が大きい。したがって、このような不織布前駆体をスラリーで充填する場合、完成された不織布に比べて充填率が向上する効果があり、最終的に製造された電解質膜で無機固体電解質粒子及びバインダーなどの構成成分が非常に均一な分散相を形成するのに非常に有利である。
【0050】
次いで、前記混合物を乾燥して予備固体電解質膜を収得する(S40)。前記乾燥段階において、スラリーから溶媒が除去され、スラリー中の無機固体電解質粒子とフィラメントなどの固形分とが相互間物理的に弱く結着した状態である乾燥固形物(予備固体電解質膜)が収得される。前記スラリーがバインダー樹脂を含む場合は、バインダー樹脂がこれらの結着を補助する。該段階で乾燥方式は特に限定されない。前記乾燥は構成成分の成分変化または劣化を誘発しない温度及び時間条件下で行われることが望ましく、必要に応じて常温または加熱条件で乾燥可能である。また、必要に応じて冷風や熱風を吹き加えても良い。
【0051】
その後、前記予備固体電解質膜を加圧する(S50)。本発明の具体的な一実施形態において、本加圧段階では最終的に収得される固体電解質膜の気孔度を考慮して適切な圧力を印加できる。本発明の具体的な一実施形態において、前記加圧は100MPa~1,000MPaの範囲で行うことができる。加圧によって電解質膜の構成成分の結着が堅固に維持でき、固体電解質膜の構造が安定し、且つ、所望の気孔度を有することができる。本発明の一実施形態において、ホットプレス及び油圧プレスのような公知の加圧装置から適切に1つ以上を選択して使用でき、前記ホットプレスは50℃~150℃範囲に調節可能であるが、特に限定されることはない。図3は、本発明の一実施形態による加圧工程を概略的に示した図であって、これを参照すれば、乾燥結果物である予備固体電解質膜が加圧装置の支持台60bに支持された状態で上部加圧装置60aによって加圧される。
【0052】
本発明による全固体電池用固体電解質膜は、不織布を圧着する前の状態である不織布前駆体に電解質膜形成用スラリーを充填させるため、不織布前駆体の内部に均一に前記スラリーを充填でき、スラリーの充填率が非常に高い。したがって、本発明による固体電解質膜は、多数のフィラメントの集積体を圧着して用意した通常の不織布材料にスラリーを充填して製造した電解質膜に比べて、多量の無機固体電解質粒子を混入できて、高い水準のイオン伝導度を呈することができる。したがって、本発明の製造方法によって製造された固体電解質膜は、電解質膜の全面に亘って均一且つ高いイオン移動度を発揮することができる。
【0053】
また、上述した方法で製造された電解質膜は、柔軟性と剛性を同時に有するため変形が少なく、電池に加えられた外力に対する耐久性が向上する効果がある。さらに、無機固体電解質粒子の脱離が防止される。
【0054】
一方、本発明は、前記固体電解質膜を含む全固体電池を提供する。前記全固体電池は、負極、正極及び前記負極と正極との間に介在された固体電解質膜を含み、前記固体電解質膜は上述した特徴を有するものである。
【0055】
本発明の具体的な一実施形態において、前記正極及び負極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層を備える。前記電極活物質層は、電極活物質、固体電解質、結着剤(バインダー樹脂)及び導電材を含む。
【0056】
本発明において、前記電極が正極である場合は、正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn、LiMnOなど)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物、若しくは、1またはそれ以上の遷移金属に置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(xは0~0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(MはCo、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、xは0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn1-x(MはCo、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、xは0.01~0.1)またはLiMnMO(MはFe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式におけるLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOのうち1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0057】
本発明において、前記電極が負極である場合は、負極活物質として、リチウム金属酸化物、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi及びBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物のうち選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0058】
前記結着剤(バインダー樹脂)は、ゴム系バインダー樹脂を含むことができる。電極バインダーとして使用されるPVdF系バインダー樹脂やアクリル系バインダー樹脂は、非極性溶媒に対する溶解度が低いため、電極スラリーを製造し難い。したがって、本発明では結着剤として非極性溶媒に対する溶解度が高いゴム系樹脂を使用する。本発明の一実施形態において、前記ゴム系バインダー樹脂は、天然ゴム、ブチル系ゴム、ブロモ-ブチル系ゴム、塩素化ブチル系ゴム、スチレンイソプレン系ゴム、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン系ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系ゴム、ポリブタジエン系ゴム、ニトリルブタジエン系ゴム、スチレンブタジエン系ゴム、スチレンブタジエンスチレン(SBS)系ゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)系ゴムからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0059】
本発明の具体的な一実施形態において、前記固体電解質は、全固体電池の固体電解質材料として通常使用されるものであれば制限なく使用可能であり、特別な成分に限定されない。このような固体電解質としては、イオン伝導性を有する高分子系固体電解質材料及び無機固体電解質材料のうち1種以上を含むことができる。前記無機固体電解質としては、結晶性固体電解質、非結晶性固体電解質、ガラスセラミックス固体電解質のようなものが挙げられる。本発明の一実施形態において、前記固体電解質は硫化物系固体電解質を含むことができ、このような硫化物系固体電解質としては、硫化リチウム、硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム及び硫化ホウ素などが挙げられる。このような無機固体電解質の具体的な例としては、LLTO系化合物((La,Li)TiO)、LiLaCaTa12、LiLaANb12(AはCa、Sr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、LAGP系化合物(Li1+xAlGe2-x(PO、0≦x≦1、0≦y≦1)、LiO-Al-TiO-PのようなLATP系化合物(Li1+xAlTi2-x(PO、0≦x≦1、0≦y≦1)、Li1+xTi2-xAlSi(PO3-y(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiAlZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiTiZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiS-PのようなLPS系化合物、Li3.833Sn0.833As0.166、LiSnS、Li3.25Ge0.250.75、B-LiS、xLiS-(100-x)P(xは70~80)、LiS-SiS-LiN、LiS-P-LiI、LiS-SiS-LiI、LiS-B-LiI、LiN、LISICON、LIPON系化合物(Li3+yPO4-x、0≦x≦1、0≦y≦1)、Li3.25Ge0.250.75のようなThio-LISICON系化合物、ペロブスカイト系化合物((La,Li)TiO)、LiTi(POのようなNASICON系化合物、構成成分としてリチウム、ランタン、ジルコニウム及び酸素を含むLLZO系化合物などが挙げられ、このうち1種以上を含むことができる。
【0060】
本発明の具体的な一実施形態において、前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維または金属繊維、金属粉末、導電性ウィスカー、導電性金属酸化物、活性カーボン及びポリフェニレン誘導体からなる群より選択されたいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の導電性材料の混合物であり得る。より具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、スーパーP、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、デンカブラック、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム及び酸化チタンからなる群より選択された1種またはこれらのうち2種以上の導電性材料の混合物であり得る。
【0061】
前記集電体は、電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、若しくは、アルミニウム又はステンレススチールの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用できる。
【0062】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0063】
実施例1
<不織布前駆体の製造>
ポリアクリロニトリル(Mn=100,000g/mol)をDMFに溶かして12%の溶液を製造した。製造された高分子溶液を500mlのメタノール凝固浴に1.0ml/minの速度でフィラメントを電界紡糸(15kV、コレクタまでの距離10cm)した後、沈澱された不織布前駆体を回収して12時間凍結乾燥して不織布前駆体を収得した。収得された不織布前駆体において、フィラメントの直径は500nm~2μmの範囲であった。前記電界紡糸はKD Scientific Inc.(model 100)を用いて行った。
【0064】
<固体電解質膜形成用スラリーの製造>
無機固体電解質としてLPS(LiS-P)粒子をキシレンに投入し、固形分濃度30wt%で乳鉢混合して均一なスラリーを収得した。
【0065】
<スラリーが混入された不織布前駆体の用意>
製造されたスラリーに製造された不織布前駆体を投入し、乳鉢混合を通じて混合する段階を経て、最終的に不織布前駆体のフィラメントの間にスラリーが混合された混合物を収得した。前記混合物のうち、無機固体電解質粒子と高分子フィラメント(不織布前駆体を構成する高分子フィラメント)との含量は重量比で80:20であった。前記混合物をPETフィルム上にドクターブレードを用いて塗布した後、溶媒を乾燥させ(60℃、12hr)、ホットプレスを用いて100℃、300Mpaの力で圧延した。圧延の後、PETフィルムを除去し、最終的に不織布類似構造、すなわち高分子フィラメントが互いに絡み付けられて相互間交差及び結着して形成された3次元網状構造体を形成し、前記網状構造体の内部が前記無機固体電解質粒子で充填されている固体電解質膜を収得した。前記固体電解質膜の厚さは100μmであった。
【0066】
実施例2
固体電解質膜形成用スラリーのうちの固体電解質と高分子フィラメントとの含量を重量比で75:25にしたことを除き、実施例1と同じ方法で固体電解質膜を製造した。
【0067】
比較例1
無機固体電解質としてLPS粒子(LiS-P)をキシレンに分散させて最終固形分濃度38%のスラリーを製造し、それをPET素材の離型フィルムに200μmの厚さでコーティングした。その後、60℃のホットプレート上に静置して残存溶媒を除去し、ホットプレスを用いて100℃、300Mpaの力で圧延して固体電解質膜を収得した。厚さは100μmであった。
【0068】
比較例2
PET素材不織布(気孔度40%、厚さ40μm)に比較例1で製造されたスラリーを塗布した後、油圧プレス(Carver、4350L)を用いて300Mpaの圧延工程を行ってスラリーをPET不織布の内部に混入させ、最終厚さ200μmの固体電解質膜を収得した(固体電解質:不織布=80:20wt%)。得られた固体電解質膜は、不織布の厚さ方向全体に固体電解質スラリーが混入できず、不織布の表面のみに無機固体電解質粒子が位置する形態で得られた。
【0069】
<イオン伝導度の測定>
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の固体電解質膜に対し、分析装置(VMP3、Bio logic science instrument)を用いて25℃、振幅=10mV及び走査範囲0.1hz~1Mhzの条件で電気化学的インピーダンス分光分析し、その結果を下記表1に示した。イオン伝導度の測定のため、一対のSUS薄膜の間にそれぞれの実施例及び比較例で収得した固体電解質膜を介在させた。
【0070】
【表1】
【0071】
<耐久性の評価>
各実施例及び比較例の電解質膜を180度から90度角度まで曲げてから広げる変形を繰り返しながら電解質の脱離を確認した。比較例1の場合は、1回目の変形で電解質粒子の脱離が発生した。比較例2は、4回以上変形を加えた場合、粒子の脱離が発生した。一方、実施例1及び2の固体電解質膜の場合は、30回以上の反復的な変形にも粒子の脱離が発生しなかった。
【0072】
【表2】
【0073】
以上のように、本発明の実施例による固体電解質膜は、イオン伝導度が優れ、さらに、粒子の脱離問題が著しく改善されたことを確認できた。実施例による固体電解質膜は、固体電解質粒子と高分子フィラメントとが十分混合されて非常に均一な混合相を有するものであって、固体電解質膜内に固体電解質が高密度で充電されていることが確認された。比較例2の場合は、加圧によっても固体電解質が不織布の内部まで十分混入されず、加圧時に不織布がさらに圧着されて気孔度が低くなるため、固体電解質の混入が不十分であった。
【符号の説明】
【0074】
10 紡糸装置
20 高分子フィラメント
30 凝固液
100 予備固体電解質膜
40 固体電解質膜形成用スラリー
50 離型板
60a 上部加圧装置
60b 支持台
200 固体電解質膜
図1
図2
図3
図4