(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】消音器
(51)【国際特許分類】
F01N 1/02 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
F01N1/02 J
F01N1/02 E
F01N1/02 N
(21)【出願番号】P 2020021640
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 聖司
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-160716(JP,U)
【文献】特開昭60-240816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を排気が通過すると共に、複数の連通孔を有する排気管と、
前記複数の連通孔を覆うように前記複数の連通孔の外側に配置されるシェルと、
前記排気管、及び前記シェルの間にて、前記排気管から予め設定された間隔で配置され、前記複数の連通孔のうちの少なくとも一部を覆うように構成された筒状のカバーと、
前記シェル及び前記カバーの間の空間を充填する第1吸音材と、
前記排気管及び前記カバーとの間の空間を充填する第2吸音材と、
を備え、
前記複数の連通孔の全ては、前記第1吸音材又は前記第2吸音材の何れかによって覆われており、
前記複数の連通孔のうちの一部の連通孔は、前記第1吸音材で覆われ、前記複数の連通孔のうちの他の一部の連通孔は前記第2吸音材で覆われている
消音器。
【請求項2】
請求項1に記載の消音器であって、
前記排気管、及び前記カバーは、共通の中心軸を有する円筒状に構成され、
前記排気管の直径は、前記排気管と前記カバーとの間隔の1.8倍以上の大きさに設定される消音器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の消音器であって、
前記カバーは、前記排気管の軸方向における両端部が前記排気管に固定される消音器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の消音器であって、
前記カバーの前記排気管の軸方向における少なくとも一方の端部は、前記排気管との間に隙間を有する開口端として構成される消音器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の消音器であって、
前記カバーは、前記排気管の外周面と対向する部位に設けられた複数の補助孔を有する消音器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の消音器であって、
前記第2吸音材は、前記第1吸音材よりも通気抵抗が大きい
消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、内燃機関の排気システムにおいて、騒音の低減を目的として、複数の孔を設けた排気管を備える消音器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の消音器では、排気管における孔の数を増やすか、孔の面積を大きくすることで、特定の周波数での消音効果が高められる。しかしながら、排気管における孔の数又は面積が増加すると、排気管内の孔の部分で音波の反射が発生し、排気管内に定在波の節が形成されやすくなる。その結果、消音を図りたい特定の周波数帯での消音効果が得られないおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、定在波の節の発生を抑制しつつ、特定の周波数での消音効果が得られる消音器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、消音器であって、排気管と、シェルと、カバーと、を備える。排気管は、内部を排気が通過すると共に、複数の連通孔を有する。シェルは、複数の連通孔を覆うように複数の連通孔の外側に配置される。カバーは、筒状であり、複数の連通孔の少なくとも一部を覆うように構成され、排気管及びシェルの間にて、排気管から予め設定された間隔で配置される。
【0007】
このような構成によれば、複数の連通孔をシェルで覆った場合に定在波の節が発生する位置にカバーを配置することで、シェルのみで連通孔を覆った場合に比べ排気管内の連通孔と重なる部分で音波の反射が抑制され、定在波の節の発生が抑制される。その結果、新たな周波数の定在波の発生を抑制しつつ、特定の周波数での消音効果を得ることができる。
【0008】
本開示の一態様では、排気管、及びカバーは、共通の中心軸を有する円筒状に構成されてもよい。また、排気管の直径は、排気管とカバーとの間隔の1.8倍以上の大きさに設定されてもよい。
【0009】
このような構成によれば、後述する実験結果より、従来構成と比較して消音効果を得ることができる。
本開示の一態様では、カバーは、排気管の軸方向における両端部が排気管に固定されてもよい。
【0010】
このような構成によれば、カバーの位置ずれ及びカバーの振動を抑制することができる。そのため、定在波の節の発生抑止効果と消音効果とをさらに促進することができる。
本開示の一態様では、カバーの排気管の軸方向における少なくとも一方の端部は、排気管との間に隙間を有する開口端として構成されてもよい。
【0011】
このような構成によれば、排気管におけるカバーの開口端部分ではカバーと排気管との間に隙間を有するため、排気管におけるカバーの開口端部分にも後述する補助孔が形成された状態となる。これにより、カバーにおいて補助孔が形成可能な領域が増加する。その結果、消音器における消音効果を促進することができる。
【0012】
本開示の一態様では、カバーは、排気管の外周面と対向する部位に設けられた複数の補助孔を有してもよい。
このような構成によれば、カバーとシェルとの間で排気の流通を確保することができる。その結果、カバーとシェルとの間で排気を拡張することによる消音効果を促進することができる。
【0013】
本開示の一態様は、排気管とカバーとの間に配置されると共に、複数の連通孔を覆うように配置された吸音材、をさらに備えてもよい。
このような構成によれば、吸音材が排気の振動を抑制するので、消音効果を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の排気システムを示す模式図である。
【
図3】排気管の直径と、排気管及びカバーの間隔との比と、騒音レベルとの関係を示すグラフである。
【
図4】内燃機関の回転数と騒音レベルとの関係を示すグラフである。
【
図5】内燃機関の回転数と特定の周波数での騒音レベルとの関係を示すグラフである。
【
図6】他の実施形態における消音器の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す排気システム10は、内燃機関11の排気流路を構成する。排気システム10は、触媒コンバータ12と、メインマフラ13と、サブマフラとしての消音器1と、を備える。
【0016】
排気システム10が適用される内燃機関11としては、特に限定されないが、自動車、鉄道、船舶、建機等の輸送機器、発電施設などで駆動用又は発電用として用いられるものが挙げられる。
【0017】
消音器1は、メインマフラ13の下流側に配置されている。ただし、消音器1は、メインマフラ13の上流側(例えば、触媒コンバータ12とメインマフラ13との間)に配置されてもよい。
【0018】
消音器1は、
図2に示すように、排気管2と、シェル3と、第1吸音材4と、第2吸音材5と、カバー6と、を備える。
<排気管>
排気管2は、内部を排気Gが通過する金属製のパイプである。本実施形態では、排気管2は、
図1に示すように、メインマフラ13の内部まで延伸している。
【0019】
排気管2は、
図2に示すように、排気管2の内部と排気管2の外部とを連通する複数の連通孔21と、直径が一定のストレート部22と、排気Gの流れ方向に沿って拡径した拡径部23とを有する。
【0020】
連通孔21は、排気管2のストレート部22のうち、シェル3内に位置する部分に周方向全体にわたって配置されている。ただし、連通孔21は、必ずしも排気管2の周方向全体に配置される必要はない。
【0021】
連通孔21の大きさ及び間隔は、適宜設計可能である。ただし、連通孔21の開口面積の合計は、カバー6が設けられていない構成におけるシェル3の内部において、排気管2内に定在波の節が少なくとも1以上形成されうる大きさである。なお、シェル3の内部において、排気管2内で形成される定在波の節は、連通孔21によって音波が反射し、或いは排気管2内の排気Gの圧力が低減し、排気管2が開口しているとみなされる状態になることにより形成される。
【0022】
連通孔21の形状は、真円に限定されず、楕円、多角形等としてもよい。また、連通孔21は、排気管2の管壁の一部を外側に切り起こしたルーバーを有する形状であってもよい。
【0023】
<シェル>
シェル3は、排気管2の外周面を囲うように排気管2の外側に配置された金属製のパイプである。シェル3は、円筒状に形成される。シェル3は、排気管2の全ての連通孔21を覆うように複数の連通孔21の外側に配置される。シェル3の内径は、排気管2の外径よりも大きい。
【0024】
シェル3の第1開口部31及び第2開口部32は、それぞれ、排気管2の軸方向の外側に向かって縮径している。第1開口部31及び第2開口部32は、排気管2の外周面に例えば溶接によって固定されている。シェル3は、排気管2の外周面を囲むことで、排気管2との間に後述する第1吸音材4及び第2吸音材5が配置可能な空間を形成している。
【0025】
<カバー>
カバー6は、排気管2の径方向において第2吸音材5に外側から当接する円筒状の部材である。カバー6は、排気管2とシェル3との間に配置されている。
【0026】
カバー6は、筒状であり、複数の連通孔21の少なくとも一部を覆うように構成され、排気管2及びシェル3の間にて、排気管2から予め設定された間隔Eで配置される。排気管2、及びカバー6は、共通の中心軸を有する円筒状に構成されている。また、排気管2の直径、特に、シェル3内に位置しカバー6に覆われている部分における排気管2の外周の直径Dは、排気管2の外周面とカバー6の内周面との間隔Eの1.8倍以上の大きさに設定されている。
【0027】
ここで、
図3に示すグラフでは、横軸に、内燃機関11の回転数が2000rpmでの音圧レベル、縦軸に、排気管2の外周の直径Dと排気管2とカバー6との間隔Eとの比を示している。なお、直径Dと間隔Eとの比の値は、間隔Eが小さくなるにつれて、また、直径Dが大きくなるにつれて大きくなる。
【0028】
図3に示すように、直径Dと間隔Eとの比の値が大きくなるにつれて、音圧レベルは低下する。なお、本実施形態のカバー6を備えない構成での音圧レベルが約79dBである。
図3によると、直径Dと間隔Eとの比の値が1.8のときに79dBと概ね一致する。したがって、直径Dと間隔Eとの比の値が1.8以上であれば、カバー6を備えない構成よりも音圧レベルを低減することができる。
【0029】
図3の例では、直径Dと間隔Eとの比の値の上限を36としてデータを得ている。したがって、直径Dと間隔Eとの比の値が1.8以上かつ36以下であれば、カバー6を備えない構成よりも音圧レベルを低減することができる。なお、直径Dと間隔Eとの比の値の上限は、組み立ての構造上、決まるものであるが、36に限らず、例えば、排気管2とカバー6との間に第2吸音材5を配置できる程度の隙間があれば、より大きな値でもよいと考えられる。
【0030】
また、カバー6は、排気管2の軸方向における両端部が排気管2に固定されている。具体的には、第2端部63は、排気Gの下流側に向かうに連れて縮径しており、先端が例えば溶接等による固定部64によって排気管2の外周面に固定されている。なお、第2端部63は、カバー6の排気管2の軸方向における排気Gの下流側に位置する端部である。
【0031】
また、第1端部62は、縮径されることなく、例えば、第1端部62と排気管2とを接続する接続部材65によって排気管2の外周面に固定されている。なお、第1端部62は、カバー6の排気管2の軸方向における排気Gの上流側に位置する端部である。
【0032】
接続部材65は、例えば金属製の丸棒等にて構成され、一方側の端部が排気管2に固定され、他方側の端部がカバー6に固定されることで、カバー6を排気管2に固定する。接続部材65は、第1端部62における排気管2との間の隙間を完全に閉塞するものではなく、この隙間の一部を閉塞するに留まる。したがって、第1端部62は、排気管2との間に隙間を有する開口端として構成される。換言すれば、接続部材65は、カバー6の第1端部62を開口させた状態で固定するように構成される。
【0033】
また、カバー6は、排気管2の外周面と対向する部位に設けられた複数の補助孔61を有する。複数の補助孔61は、それぞれカバー6を貫通し、排気管2側の空間と、シェル3側の空間とを連通する。
【0034】
なお、排気管2の外周面のうち第2端部63が固定される部分には、連通孔21が形成されていない。また、連通孔21は、第2端部63の最も上流側の部位よりも上流側、すなわち
図2における破線の部位よりも上流側にのみ形成される。
【0035】
<吸音材>
第1吸音材4は、排気管2とシェル3との間に配置されると共に、複数の連通孔21の一部を覆うように配置されている。
【0036】
具体的には、第1吸音材4は、排気管2のストレート部22のうち、シェル3の第1開口部31に近い部分(つまり上流部分)を周方向に取り囲むように配置されている。第1吸音材4は、排気管2の連通孔21のうち、上流側の複数の連通孔21と当接している。
【0037】
第1吸音材4は、排気管2とシェル3との間の空間を後述する第2吸音材5と共に充填している。そのため、排気管2とシェル3との間には空隙は存在しない。また、第1吸音材4は、排気管2の径方向において排気管2の外周面からシェル3の内周面まで到達するように配置されている。
【0038】
第1吸音材4の材質としては、例えば、グラスファイバー等の無機繊維が使用できる。第1吸音材4としては、無機繊維の集合体(例えば、グラスウール)のほか、無機繊維の織物、編み物又は不織布、無機繊維を部分的にバインダーで固めた構造体などが使用できる。
【0039】
第2吸音材5は、カバー6と排気管2との間の空間に充填されている。第2吸音材5は、第1吸音材4よりも通気抵抗が大きいものである。例えば、第2吸音材5は、第1吸音材4よりも密度が高く調整された構成や、通気抵抗の大きい材料からなっている。第1吸音材4は、カバー6とシェル3との間の空隙にも充填されている。したがって、本実施形態では、排気管2の径方向において第2吸音材5の外側に第1吸音材4が配置されている。
【0040】
ただし、第1吸音材4と第2吸音材5を入れ替えた配置にしてもよく、第1吸音材4と第2吸音材5とを同じものにしてもよく、或いは、カバー6内に吸音材を設けない構成としてもよい。
【0041】
消音器1の上流領域では、排気管2の径方向において第1吸音材4のみが配置されている。消音器1のカバー6が配置された領域では、排気管2の径方向において第2吸音材5と第1吸音材4との2層構造が構成されている。
【0042】
排気管2の連通孔21は、全て、第1吸音材4又は第2吸音材5のいずれかによって覆われている。
[1-2.作用]
消音器1の排気管2が連通孔21を有しない場合、
図1に示すように、排気システム10には、排気管2内に排気Gの定在波W1が発生する。
【0043】
定在波W1は、排気管2の両端部が節となる1次モードの波形である。定在波の節は、圧力が大きく低下している部分に形成される。例えば、排気管2の径方向の端部が拡径している部分、排気管2が開口している部分等に節が形成される。また、排気管2の連通孔21の合計面積が、例えば排気管2の流路断面積に対しある程度大きくなっている所では、排気管2内の音圧が低下し、或いは音波の反射が発生し、定在波の節が形成される。
【0044】
一方、定在波W1が形成される排気管2の複数の連通孔21を、カバー6を設けずに第1吸音材4のみで覆う場合、複数の連通孔21から排気が排出される。このため、排気管2内の音圧が低下し、或いは複数の連通孔21にて音波の反射が発生し、排気管2内に定在波W1の代わりに2つの定在波W2,W3が形成される。
図1中の節Sは、この定在波W2の節と定在波W3の節との一致点である。排気管2の側面のうち、節Sの外周側に位置する連通孔21を第2吸音材5で覆うと、定在波W2,W3の代わりに定在波W4が形成される。これは、次の理由による。すなわち、連通孔21をカバー6で覆うことにより、連通孔21の開口の合計面積が実質的に減少する。その結果、排気Gの排気管2の外への排出量が低下して音圧が下がりにくくなることにより、節Sが形成されにくくなる。また、カバー6が音波の反射を抑制するため、節Sが形成されにくくなる。なお、排気管2内の音圧が下がるため、定在波W4の音圧は定在波W1,W2,W3の音圧よりも低減する。
【0045】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本開示の一態様は、消音器1であって、排気管2と、シェル3と、カバー6と、を備える。排気管2は、内部を排気が通過すると共に、複数の連通孔21を有する。シェル3は、複数の連通孔21を覆うように複数の連通孔21の外側に配置される。カバー6は、筒状であり、複数の連通孔21の少なくとも一部を覆うように構成され、排気管2及びシェル3の間にて、排気管2から予め設定された間隔で配置される。
【0046】
このような構成によれば、定在波の節が発生する位置にカバー6を配置することで、シェル3のみで連通孔21を覆った場合に比べ排気管2内の連通孔21と重なる部分で音波の反射が抑制され、定在波の節の発生が抑制される。その結果、新たな周波数の定在波の発生を抑制しつつ、特定の周波数での消音効果を得ることができる。
【0047】
ここで、
図4のグラフは内燃機関11の回転数と騒音レベルとの関係を示している。ここでの騒音レベルは、全周波数帯における総合的な騒音レベルである。具体的には、マイクで騒音を拾ったときの音量である。
【0048】
また、
図5のグラフは、内燃機関11の回転数毎に特定の周波数の成分での音圧レベルを示している。このグラフでは、内燃機関11が仮に4気筒の場合の爆発2次成分を示し、内燃機関11の回転数が1000回転増加する毎に、66Hzが加算された周波数の成分での音圧レベルが表記されている。特定の周波数の成分は、例えば、内燃機関11の回転数が1000回転のときには66Hz、内燃機関11の回転数が2000回転のときには133Hzである。
【0049】
図4及び
図5のグラフにおいて、実線は本実施形態の構成での測定結果を示し、2種類の破線は、それぞれカバー6を備えない従来構成を示す。特に細かな破線は、第1の従来構成であって、本実施形態の構成と同様の数の連通孔21を有する構成での測定結果を示す。また、粗い破線は、第2の従来構成であって、本実施形態の構成よりも連通孔21の数が少ない構成での測定結果を示す。
【0050】
細かな破線で示す第1の従来構成では、
図4に示すように、総合的な騒音レベルは本実施形態の構成よりも抑制されるが、
図5に示すように、特定の周波数成分での音圧レベルは他の2つの構成よりも抑制できない。また、粗い破線で示す第2の従来構成では、
図5に示すように、特定の周波数成分での音圧レベルは本実施形態の構成と同程度に抑制できるが、
図4に示すように、総合的な騒音レベルは本実施形態の構成よりも抑制できない。
【0051】
つまりこれらの測定結果によれば、本実施形態の構成であれば、総合的な騒音レベルが適度に抑制され、新たな周波数の定在波の発生を抑制しつつ、特定の周波数での消音効果を得ることができることが立証された。
【0052】
(1b)本開示の一態様では、排気管2、及びカバー6は、共通の中心軸を有する円筒状に構成される。また、排気管2の直径は、排気管2とカバー6との間隔の1.8倍以上の大きさに設定される。
【0053】
このような構成によれば、従来構成と比較して消音効果を得ることができる。
(1c)本開示の一態様では、カバー6は、排気管2の軸方向における両端部が排気管2に固定されてもよい。
【0054】
このような構成によれば、カバー6の位置ずれ及びカバー6の振動を抑制することができる。そのため、定在波の節の発生抑止効果と消音効果とをさらに促進することができる。
(1d)本開示の一態様では、カバー6の排気管2の軸方向における少なくとも一方の端部は、排気管2との間に隙間を有する開口端として構成される。
【0055】
このような構成によれば、排気管2におけるカバー6の開口端部分ではカバー6と排気管2との間に隙間を有するため、排気管2におけるカバー6の開口端部分にも補助孔61が形成された状態となる。これにより、カバー6において補助孔61が形成可能な領域が増加する。その結果、消音器1における消音効果を促進することができる。
【0056】
(1e)本開示の一態様では、カバー6は、排気管2の外周面と対向する部位に設けられた複数の補助孔61を有している。
このような構成によれば、カバー6とシェル3との間で排気の流通を確保することができる。その結果、カバー6とシェル3との間で排気を拡張することによる消音効果を促進することができる。
【0057】
(1f)本開示の一態様は、排気管2とカバー6との間に配置されると共に、複数の連通孔21を覆うように配置された第2吸音材5、をさらに備える。
このような構成によれば、第2吸音材5が排気の振動を抑制するので、消音効果を促進することができる。さらに、第2吸音材5の通気抵抗が第1吸音材4の通気抵抗よりも大きい場合には、第2吸音材5によってより確実に、定在波W2,W3の代わりに定在波W4が形成されやすくなる。
【0058】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
【0059】
(2a)上記実施形態の消音器1は、カバー6における一方の端部である第1端部62を開口端としたが、この構成に限られない。例えば、
図6に示すように、第1端部62Aは、排気Gの上流側に向かうに連れて縮径しており、先端が例えば溶接等による固定部64によって排気管2の外周面に固定されてもよい。この場合、第1端部62Aには、補助孔62Bが形成されていてもよい。補助孔62Bは、上述の補助孔61と同様に、カバー6
Aとシェル3との間で排気の流通を確保する機能を有する。
【0060】
(2b)上記実施形態の消音器1は、カバー6の一端が開口端として構成されたが、カバー6の両端が開口端として構成されてもよい。
(2c)上記実施形態の消音器1では、第1吸音材4、第2吸音材5、補助孔61、及び接続部材65を備えたが、これらの構成は備えられていなくてもよい。接続部材65を備えない場合、カバー6は、一方側の第2端部63側のみで固定されていてもよいし、第2吸音材5を介して一部又は全体が排気管2に固定されていてもよい。
【0061】
(2d)上記実施形態の消音器1において、上流側と下流側とを入れ替えてもよい。つまり、消音器1の上流端と下流端とを反転させてもよい。
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…消音器、2…排気管、3…シェル、4…第1吸音材、5…第2吸音材、6…カバー、10…排気システム、11…内燃機関、12…触媒コンバータ、13…メインマフラ、21…連通孔、22…ストレート部、23…拡径部、31…第1開口部、32…第2開口部、61,62B…補助孔、62,62A…第1端部、63…第2端部、64…固定部、65…接続部材。