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特許7092828光学積層体ならびにその製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】光学積層体ならびにその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20220621BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20220621BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220621BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B1/111
B32B7/023
G02F1/1335
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020118722
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015702
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2020-07-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】尾道 浩
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/054249(WO,A1)
【文献】特開2009-288732(JP,A)
【文献】特開2019-144475(JP,A)
【文献】特開2017-159649(JP,A)
【文献】特開2007-264613(JP,A)
【文献】特開2020-076993(JP,A)
【文献】特開2017-223960(JP,A)
【文献】特開2010-139591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 1/111
B32B 7/023
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、この基材層の少なくとも一方の面に積層された防眩層と、この防眩層の上に積層され、かつ表面に凹凸形状を有する反射防止層とを含み、
前記防眩層が、光硬化性樹脂および(メタ)アクリル系レベリング剤を含む硬化性組成物の硬化物であり、
前記(メタ)アクリル系レベリング剤が、(メタ)アクリル系骨格として(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体を有するレベリング剤であり、
前記反射防止層表面のスキューネスRskが0未満であり、
380~780nmの波長範囲の分光反射率の標準偏差σが0.08~0.2であり、かつ
視感反射率が2.5以下である光学積層体。
【請求項2】
前記反射防止層表面において、算術平均粗さRaが0.01~0.5μmであり、粗さ曲線の最大断面高さRtが0.1~1μmであり、粗さ曲線要素の平均長さRSmが1~50μmである請求項1記載の光学積層体。
【請求項3】
ヘイズが30%以下であり、全光線透過率が90%以上である請求項1または2記載の光学積層体。
【請求項4】
光沢度60°が50%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項5】
転写用フィルムの転写面を成形型とし、防眩層前駆体の被転写面に、前記転写面が反転した形状である凹凸形状を形成する防眩層形成工程、防眩層の上に反射防止層を積層する反射防止層形成工程を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学積層体を備えた表示装置。
【請求項7】
液晶表示装置または有機ELディスプレイである請求項6記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示装置の表示面での外部光源の反射を防止するのに適している光学積層体ならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置における表示面での反射を防止するために、各種の低反射フィルムが提案されており、例えば、表面に低屈折率層を設けるタイプ、屈折率の異なる層を積層するタイプなどが知られている。
【0003】
表面に低屈折率層を設けるタイプとして、特開2008-3122号公報(特許文献1)には、反射防止フィルムであって、低屈折率層表面での表面抵抗値が1×1010(Ω/cm)以下であり、さらに、L色度系における反射色相が0≦a≦3かつ-3≦b≦3である反射防止フィルムが開示されている。
【0004】
特開2010-2820号公報(特許文献2)には、透明基材上にハードコート層、反射防止層を順に備える反射防止フィルムであって、該ハードコート層が導電性ポリマーを含み、且つ、低屈折率層表面での平均視感反射率が0.5%以上1.5%以下であり、低屈折率層表面での表面抵抗値が1×1010(Ω/cm)以下である反射防止フィルムが開示されている。
【0005】
特許第5846243号公報(特許文献3)には、光透過性基材と、該光透過性基材上に防眩層を備えてなる光学積層体であって、前記防眩層の最表面が凹凸形状を有してなり、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸の平均粗さをRzとし、凹凸の平均間隔Smとし、RzとSmの比率ψを比率ψ≡Rz/Smと定義し、基準長さを0.25mmとしてθa、Rzを測定し、基準長さを0.80mmとしてSmを測定した場合に、下記式(I)および(II):1.2度≦θa≦2.5度(I)0.016≦ψ≦0.121(II)を同時に満たし、前記光学積層体の内部ヘイズ値が0%以上50%以下であり、前記光学積層体の表面ヘイズ値が0.5%以上4.5%以下である光学積層体が開示されている。
【0006】
特開2014-145914号公報(特許文献4)には、基材と、該基材側から順に、中屈折率層と、高屈折率層と、低屈折率層とを有し、該基材の屈折率が1.45~1.65の範囲であり、該中屈折率層が、バインダー樹脂と無機微粒子とを含む中屈折率層形成用組成物を該基材上に塗布および硬化することにより形成され、屈折率が1.67~1.78の範囲であり、厚みが70nm~120nmであり、該高屈折率層の屈折率が2.00~2.60の範囲であり、厚みが10nm~25nmであり、該低屈折率層の屈折率が1.35~1.55の範囲であり、厚みが70nm~120nmである反射防止フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-3122号公報
【文献】特開2010-2820号公報
【文献】特許第5846243号公報
【文献】特開2014-145914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、表面に低屈折率層を設けるタイプでは、可視光の波長範囲で反射率を測定した場合、反射スペクトルは波長550nm付近で極小値を有し、その低波長側は3%程度まで反射率が上昇する特性を有していた。このため、低屈折率層の状態により色づきが目立つものがあった。
【0009】
従って、本開示の目的は、表示装置において、低波長領域の反射率が抑制され、視感反射率が低減し、画像の黒味感を向上できる反射防止フィルムならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、基材層の少なくとも一方の面に防眩層、低屈折率層を順次積層し、前記低屈折率層表面のスキューネスRskを0未満、380~780nmの波長範囲の分光反射率の標準偏差σを0.5以下、視感反射率を2.5以下に調整することにより、低波長領域の反射率が抑制され、視感反射率が低減し、画像の黒味感を向上できる反射防止フィルムを提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本開示の光学積層体は、基材層と、この基材層の少なくとも一方の面に積層された防眩層と、この防眩層の上に積層され、かつ表面に凹凸形状を有する低屈折率層とを含み、
前記低屈折率層表面のスキューネスRskが0未満であり、
380~780nmの波長範囲の分光反射率の標準偏差σが0.5以下であり、かつ
視感反射率が2.5以下である。
【0012】
前記低屈折率層表面において、算術平均粗さRaが0.01~0.5μmであり、粗さ曲線の最大断面高さRtが0.1~1μmであり、粗さ曲線要素の平均長さRSmが1~50μmであってもよい。前記光学積層体において、ヘイズが30%以下であり、全光線透過率が90%以上であってもよい。前記光学積層体において、光沢度60°は50%以下であってもよい。前記防眩層は、光硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物であってもよい。
【0013】
本開示には、転写用フィルムの転写面を成形型とし、防眩層前駆体の被転写面に、前記転写面が反転した形状である凹凸形状を形成する防眩層形成工程(転写工程)、防眩層の上に低屈折率層を積層する低屈折率層形成工程を含む前記光学積層体の製造方法も含まれる。
【0014】
本開示には、前記光学積層体を備えた表示装置も含まれる。前記表示装置は、液晶表示装置または有機ELディスプレイであってもよい。
【0015】
なお、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示では、基材層の少なくとも一方の面に防眩層、低屈折率層が順次積層され、前記低屈折率層表面のスキューネスRskが0未満、380nm~780nmの波長範囲の分光反射率の標準偏差σが0.5以下、視感反射率が2.5以下に調整されているため、低波長領域の反射率が抑制され、視感反射率が低減し、画像の黒味感を向上できる。さらに、このような特性と防眩性とを両立できる上に、低屈折率層の状態による色づきも抑制でき、かつ表面硬度も向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[低屈折率層]
本開示の光学積層体は、防眩層の上に積層された低屈折率層(反射防止層)を有している。この低屈折率層は、スキューネスRskが0未満である表面凹凸形状を有している。すなわち、低屈折率層の表面形状は、負のRskを有しており、谷が多く、かつ細長く急峻な谷を有する表面形状(細長く急峻な山が少ない形状)である。本開示の光学積層体では、山が多く、かつ細長く急峻な山を有する表面形状を有する従来の反射防止フィルムとは異なり、谷が多い表面凹凸形状において、凹凸形状全体に亘って均一な低屈折率層が形成されている。そのため、本開示の光学積層体では、低波長領域の反射率を抑制でき、視感反射率も低減できる。
【0018】
低屈折率層表面のスキューネスRsk(偏り度)は、高さ分布の対称性を評価する指標であるが、0未満であればよく、-10~-0.1程度の範囲から選択でき、例えば-5~-0.2である。Rskが0以上になると、低波長領域の反射率を抑制できない。
【0019】
低屈折率層表面の算術平均粗さRaは、例えば0.01~0.5μm、好ましくは0.015~0.3μm、さらに好ましくは0.02~0.2μm、より好ましくは0.025~0.1μm、最も好ましくは0.03~0.05μmである。Raが小さすぎると、防眩性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、低波長領域の反射率および視感反射率が大きくなる虞がある。
【0020】
低屈折率層表面の粗さ曲線の最大断面高さRtは、例えば0.1~1μm、好ましくは0.15~0.9μm、さらに好ましくは0.2~0.8μm、より好ましくは0.25~0.6μm、最も好ましくは0.3~0.4μmである。Rtが小さすぎると、防眩性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、低波長領域の反射率および視感反射率が大きくなる虞がある。
【0021】
低屈折率層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmは、例えば1~50μm、好ましくは3~30μm、さらに好ましくは5~25μm、より好ましくは10~20μm、最も好ましくは12~18μmである。RSmが小さすぎると、凹凸サイズを制御することが困難となる虞があり、逆に大きすぎると、防眩性が低下する虞がある。
【0022】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、スキューネスRsk、算術平均粗さRa、粗さ曲線の最大断面高さRtおよび粗さ曲線要素の平均長さRSmは、非接触表面・層断面形状計測システム[(株)菱化システム製「VertScan2.0」]を用いて、低屈折率層表面の凹凸形状を計測して得られた曲線に基づいて求めることができ、詳細には、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0023】
低屈折率層の屈折率は1.37以上であってもよく、防眩層の屈折率よりも小さければ特に限定されないが、例えば1.37~1.45、好ましくは1.37~1.4、さらに好ましくは1.37~1.39、より好ましくは1.37~1.38である。屈折率が高すぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0024】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、屈折率は、JIS K7142に準拠して測定できる。
【0025】
低屈折率層の厚み(平均厚み)は、例えば50~300nm、好ましくは60~150nm、さらに好ましくは80~120nm、より好ましくは90~110nmである。
【0026】
低屈折率層は、低屈折率樹脂[例えば、メチルペンテン樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などのフッ素樹脂など]で形成された層であってもよいが、機械的特性などの点から、硬化性樹脂とフッ素含有化合物および/または低屈折率の無機フィラーとを含む硬化性組成物の硬化物で形成された層が好ましい。
【0027】
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれであってもよいが、生産性などの点から、光硬化性樹脂が好ましい。光硬化性樹脂(光硬化樹脂前駆体成分)は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線により硬化または架橋して樹脂を形成可能な化合物であり、フッ素非含有光硬化性樹脂であってもよい。
【0028】
フッ素非含有光硬化性樹脂には、単量体、オリゴマー(または樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれる。
【0029】
単量体としては、例えば、単官能性単量体[(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなど]、2官能性単量体[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート]、3官能以上の多官能性単量体[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3~6官能性単量体など]などが例示できる。これらのうち、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが汎用される。
【0030】
オリゴマーまたは樹脂としては、例えば、ビスフェノールA-アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性エポキシ(メタ)アクリレート]、ポリエステル(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート]、ウレタン(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性ウレタン(メタ)アクリレート]、シリコーン(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性シリコーン(メタ)アクリレート]、重合性基を有する(メタ)アクリル系重合体などが例示できる。
【0031】
これらのフッ素非含有光硬化性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、防眩層の機械的特性の点から、2官能以上の多官能性単量体であってもよく、3官能以上の多官能性単量体が好ましく、3~6官能性単量体[特に、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの3~6の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート]がさらに好ましい。
【0032】
フッ素非含有光硬化性樹脂は、2官能以上の多官能性単量体(特に3~6官能性単量体)を50質量%以上含むのが好ましく、80質量%以上含むのがさらに好ましく、90質量%以上含むのがより好ましい。フッ素非含有硬化性樹脂は、2官能以上の多官能性単量体のみであってもよい。
【0033】
(フッ素含有化合物および/または低屈折率の無機フィラー)
フッ素含有化合物には、フッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、フッ素含有光硬化性樹脂などが含まれる。これらのうち、フッ素含有光硬化性樹脂が汎用される。
【0034】
フッ素含有光硬化性樹脂は、前記フッ素非含有光硬化性樹脂である単量体およびオリゴマーのフッ化物であってもよい。フッ素含有光硬化性樹脂としては、例えば、フッ化アルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートやトリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど]、フッ化(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、フルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、フッ素含有エポキシ(メタ)アクリレート、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0035】
これらのフッ素含有光硬化性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、(メタ)アクリロイル基を有するフルオロポリエーテル化合物、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、フッ素およびエステル含有ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0036】
低屈折率の無機フィラーとしては、例えば、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、金属硫化物粒子、金属ハロゲン化物粒子などの金属化合物粒子などが例示できる。金属化合物の金属としては、例えば、Mg、Ca、B、Siなどが例示できる。
【0037】
これらの無機フィラーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのフィラーのうち、シリカが好ましく、ヘイズの上昇を抑制でき、透明性を向上できる点から、中空シリカが特に好ましい。中空シリカは、特開2001-233611号公報、特開2003-192994号公報などに記載されている中空シリカであってもよい。
【0038】
前記無機フィラー(特に、中空シリカ)の個数平均粒径は100nm以下、好ましくは80nm以下(例えば10~80nm)、さらに好ましくは20~70nm程度である。
【0039】
前記無機フィラーは、カップリング剤(チタンカップリング剤、シランカップリング剤)により表面改質されていてもよい。
【0040】
前記硬化性組成物は、フッ素含有化合物、低屈折率の無機フィラーの少なくとも一方を含むことによって低屈折率に調整されていればよいが、反射防止性に優れる点などから、フッ素含有化合物と低屈折率の無機フィラーとの組み合わせを含むのが好ましい。
【0041】
フッ素化合物と前記無機フィラーとを組み合わせる場合、フッ素化合物の割合は、前記無機フィラー(特に、中空シリカ)100質量部に対して0.1質量部以上であってもよく、例えば0.1~1000質量部、好ましくは1~300質量部、さらに好ましくは3~100質量部、より好ましくは5~50質量部である。フッ素化合物の割合が少なすぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0042】
低屈折率層を形成する組成物中におけるフッ素含有化合物および前記無機フィラーの合計割合は、例えば、前記組成物全体に対して1質量%以上であってもよく、例えば5~90質量%であってもよい。
【0043】
(硬化剤)
前記硬化性組成物は、硬化性樹脂の種類に応じて、さらに硬化剤を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂では、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤を含んでいてもよく、光硬化性樹脂では光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類またはプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。
【0044】
光重合開始剤などの硬化剤の割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.1~20質量部、好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。
【0045】
硬化性組成物は、さらに硬化促進剤を含んでいてもよい。特に、光硬化性樹脂は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などを含んでいてもよい。
【0046】
(他の成分)
前記硬化性組成物は、硬化性樹脂、フッ素含有化合物および/または低屈折率の無機フィラーに加えて、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、慣用の添加剤、例えば、シランカップリング剤(例えば、チオール基を有するシランカップリング剤など)、レベリング剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、前記無機フィラー以外の充填剤、架橋剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、消泡剤などが例示できる。
【0047】
他の成分の割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~100質量部、好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部である。
【0048】
[防眩層]
本開示の光学積層体は、前記低屈折率層の下層に配設された防眩層をさらに含んでいる。この防眩層は、基材層の少なくとも一方の面に積層されていればよく、両面に積層されていてもよいが、取り扱い性、機械的特性、生産性などの点から、通常、片面のみに積層されている。
【0049】
本開示の光学積層体では、前記低屈折率層が略均一な厚みで形成されているのが好ましい。そのため、防眩層も、前記低屈折率層と略同一の表面形状を有しているのが好ましい。本開示では、防眩層も、低屈折率層と同様に、谷が多く、かつ細長く急峻な谷を有する表面凹凸形状を有することにより、以下の理由で、低波長領域の反射率および視感反射率を低減できると推定できる。すなわち、低屈折率層を形成するための前駆体が前記硬化性組成物などの液状前駆体である場合、防眩層の表面形状が細長く急峻な山が多い形状であると、前記液状前駆体が谷に流れるため、山部(特に、頂上付近)では、低屈折率層が薄くなる。これに対して、本開示では、防眩層の表面凹凸形状が谷が多く、かつ細長く急峻な谷を有する形状であるため、前記液状前駆体が谷に流れるのを抑制できるため、均一な低屈折率膜を形成でき、低波長領域の反射率および視感反射率を低減できる。
【0050】
防眩層表面のスキューネスRskは、0未満であればよく、例えば-10~-0.05、好ましくは-8~-0.1、さらに好ましくは-5~-0.3、より好ましくは-3~-0.5、最も好ましくは-2~-0.8である。Rskが0以上になると、均一な低屈折率層を形成するのが困難となる虞がある。
【0051】
防眩層表面の算術平均粗さRaは、例えば0.01~0.5μm、好ましくは0.015~0.3μm、さらに好ましくは0.02~0.2μm、より好ましくは0.025~0.1μm、最も好ましくは0.03~0.05μmである。
【0052】
防眩層表面の粗さ曲線の最大断面高さRtは、例えば0.1~1μm、好ましくは0.15~0.9μm、さらに好ましくは0.2~0.8μm、より好ましくは0.25~0.6μm、最も好ましくは0.3~0.4μmである。
【0053】
防眩層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmは、例えば1~50μm、好ましくは3~30μm、さらに好ましくは5~25μm、より好ましくは10~20μm、最も好ましくは12~18μmである。
【0054】
防眩層の屈折率は1.53以下であってもよく、例えば1.4~1.53、好ましくは1.45~1.53、さらに好ましくは1.48~1.53、より好ましくは1.5~1.53である。
【0055】
防眩層の厚み(平均厚み)は、例えば1~20μm、好ましくは1.5~10μm、さらに好ましくは2~8μm、より好ましくは4~7μmである。
【0056】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、防眩層の平均厚みは、光学式膜厚計を用いて、任意の10箇所を測定し、平均値を算出して求めることができる。
【0057】
防眩層は、後述する光学積層体の特性を有していればよく、材質は特に限定されない。防眩層を構成する材質としては、透明な各種の有機材料(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂など)や無機材料(ガラス、セラミックス、金属など)から選択できるが、前記防眩層との濡れ性を向上でき、前記表面形状との組み合わせによって、均一な低屈折率層を形成し易い点から、表面調整剤を含む材料が好ましく、機械的特性や取り扱い性なども向上できる点から、表面調整剤を含む硬化性組成物が特に好ましい。
【0058】
(硬化性樹脂)
硬化性組成物は、硬化性樹脂を含んでおり、硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれであってもよいが、生産性などの点から、光硬化性樹脂が好ましい。光硬化性樹脂としては、低屈折率層の項で例示された光硬化性樹脂などが例示できる。前記光硬化性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0059】
前記光硬化性樹脂のうち、2官能以上の多官能性単量体が好ましく、2~4官能性単量体(例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなど)と、5官能以上の多官能性単量体(例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの5~6官能性単量体など)との組み合わせが特に好ましい。
【0060】
光硬化性樹脂が2~4官能性単量体と5官能以上の多官能性単量体との組み合わせである場合、両者の質量比は、前者/後者=1/99~90/10程度の範囲から選択でき、例えば3/97~50/50、さらに好ましくは5/95~30/70、より好ましくは7/93~20/80である。
【0061】
(表面調整剤)
表面調整剤は、表面張力低下能を有していればよく、慣用のレベリング剤であってもよい。慣用のレベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤、アクリル系レベリング剤などが例示できる。これらのレベリング剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、低屈折率層の濡れ性(リコート性)を向上できる点から、フッ素含有レベリング剤および/または(メタ)アクリル系レベリング剤が好ましい。
【0062】
フッ素系レベリング剤としては、フルオロ脂肪族炭化水素骨格を有するレベリング剤であればよい。フルオロ脂肪族炭化水素骨格としては、例えば、フルオロメタン、フルオロエタン、フルオロプロパン、フルオロイソプロパン、フルオロブタン、フルオロイソブタン、フルオロt-ブタン、フルオロペンタン、フルオロヘキサンなどのフルオロC1-10アルカンなどが挙げられる。これらのフルオロ脂肪族炭化水素骨格は、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていればよいが、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロ脂肪族炭化水素骨格が好ましい。
【0063】
さらに、フルオロ脂肪族炭化水素骨格は、エーテル結合を介した繰り返し単位であるポリフルオロアルキレンエーテル骨格を形成していてもよい。繰り返し単位としてのフルオロ脂肪族炭化水素基は、フルオロメチレン、フルオロエチレン、フルオロプロピレン、フルオロイソプロピレンなどのフルオロC1-4アルキレン基からなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。これらのフルオロ脂肪族炭化水素基は、同一であってもよく、複数種の組み合わせであってもよい。フルオロアルキレンエーテル単位の繰り返し数(重合度)は、例えば、10~3000、好ましくは30~1000、さらに好ましくは50~500程度であってもよい。
【0064】
フッ素系レベリング剤としては、市販のフッ素系レベリング剤を使用できる。市販のフッ素系レベリング剤としては、例えば、ダイキン工業(株)製オプツールシリーズのレベリング剤(「DSX」、「DAC-HP」)、AGCセイミケミカル(株)製サーフロンシリーズのレベリング剤(「S-242」、「S-243」、「S-420」、「S-611」、「S-651」、「S-386」など)、ビックケミー・ジャパン(株)製BYKシリーズのレベリング剤(「BYK-340」など)、Algin Chemie社製ACシリーズのレベリング剤(「AC 110a」、「AC 100a」など)、DIC(株)製メガファックシリーズのレベリング剤(「メガファックF-114」、「メガファックF-410」、「メガファックF-444」、「メガファックEXP TP-2066」、「メガファックF-430」、「メガファックF-472SF」、「メガファックF-477」、「メガファックF-552」、「メガファックF-553」、「メガファックF-554」、「メガファックF-555」、「メガファックR-94」、「メガファックRS-72-K」、「メガファックRS-75」、「メガファックF-556」、「メガファックEXP TF-1367」、「メガファックEXP TF-1437」、「メガファックF-558」、「メガファックEXP TF-1537」など)、住友スリーエム(株)製FCシリーズのレベリング剤(「FC-4430」、「FC-4432」など)、(株)ネオス製フタージェントシリーズのレベリング剤(「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェントA-K」、「フタージェント501」、「フタージェント250」、「フタージェント251」、「フタージェント222F」、「フタージェント208G」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント400SW」など)、北村化学産業(株)製PFシリーズのレベリング剤(「PF-136A」、「PF-156A」、「PF-151N」、「PF-636」、「PF-6320」、「PF-656」、「PF-6520」、「PF-651」、「PF-652」、「PF-3320」など)などが例示できる。
【0065】
(メタ)アクリル系レベリング剤としては、(メタ)アクリル系骨格を有するレベリング剤であればよい。(メタ)アクリル系骨格としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルなどの(メタ)アクリル酸アルキルと、(ポリ)オキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートとの組み合わせが好ましい。
【0066】
(メタ)アクリル系レベリング剤としては、市販の(メタ)アクリル系レベリング剤を使用できる。市販の(メタ)アクリル系レベリング剤としては、ビックケミー・ジャパン(株)製BYKシリーズのレベリング剤(「BYK-350」、「BYK-354」、「BYK-355」、「BYK-356」、「BYK-358N」、「BYK-361N」、「BYK-381」、「BYK-392」、「BYK-394」、「BYK-399」、「BYK-3440」、「BYK-3441」など)、楠本化成(株)製ディスパロンシリーズのレベリング剤(「ディスパロン1970」、「ディスパロン230」、「ディスパロン230HF」、「ディスパロンLF-1980」、「ディスパロンLF-1980」、「ディスパロンLF-1982」、「ディスパロンLF-1983」、「ディスパロンLF-1984」、「ディスパロンLF-1985」、「ディスパロンUVX-35」、「ディスパロンUVX-36」など)などが例示できる。
【0067】
これらのうち、低屈折率層との濡れ性に優れる点から、(メタ)アクリル系レベリング剤が特に好ましい。
【0068】
表面調整剤の割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.3~1質量部である。表面調整剤の割合が少なすぎると、低屈折率層との濡れ性が低下する虞があり、多すぎると、防眩層の機械的特性が低下する虞がある。
【0069】
(熱可塑性樹脂)
前記硬化性組成物は、硬化性樹脂および表面調整剤に加えて、防眩層の機械的特性を向上できる点から、熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0070】
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系重合体、有機酸ビニルエステル系重合体、ビニルエーテル系重合体、ハロゲン含有樹脂、ポリオレフィン(脂環式ポリオレフィンを含む)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6-キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル、セルロースカーバメート、セルロースエーテルなど)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性樹脂のうち、セルロースエステルが好ましい。
【0071】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC2-6アシレートなどが挙げられる。これらのセルロースエステルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2―4アシレートが好ましく、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテートC3-4アシレートが特に好ましい。
【0072】
熱可塑性樹脂の割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部、さらに好ましくは1~10質量部、より好ましくは1.5~5質量部である。
【0073】
(硬化剤)
防眩層を形成するための硬化性組成物も、低屈折率層の項で例示された硬化剤をさらに含んでいてもよい。好ましい態様および割合も低屈折率層と同様である。
【0074】
(他の添加剤)
前記硬化性組成物は、硬化性樹脂、フッ素含有化合物および/または低屈折率の無機フィラーに加えて、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、慣用の添加剤、例えば、シランカップリング剤(例えば、チオール基を有するシランカップリング剤など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、消泡剤などが例示できる。
【0075】
他の成分の割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~100質量部、好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部である。
【0076】
[基材層]
基材層(光透過性基材層または透明基材層)は、透明材料で形成されていればよく、用途に応じて選択でき、ガラスなどの無機材料であってもよいが、強度や成形性などの点から、有機材料が汎用される。有機材料としては、例えば、セルロースエステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、(メタ)アクリル系重合体などが例示できる。これらのうち、セルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネートなどが汎用され、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましい。
【0077】
セルロースエステルとしては、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC3-4アシレートなどが挙げられる。
【0078】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリアルキレンアリレートなどが挙げられる。
【0079】
ポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなどのビスフェノール型ポリカーボネートなどが例示できる。
【0080】
これらのうち、機械的特性や透明性、光学的等方性などのバランスに優れる点から、TACなどのセルロースアセテート、PETなどのポリエステルが好ましく、セルロースアセテートが特に好ましい。
【0081】
基材層も、防眩層の項で例示された慣用の添加剤を含んでいてもよい。好ましい態様および割合も防眩層と同様である。
【0082】
基材層は、1軸または2軸延伸フィルムであってもよいが、低複屈折であり、光学的に等方性に優れる点から、未延伸フィルムであってもよい。
【0083】
基材層は、表面処理(例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理など)されていてもよく、易接着層を有していてもよい。
【0084】
基材層の厚み(平均厚み)は、例えば5~2000μm、好ましくは15~1000μm、さらに好ましくは20~500μm、より好ましくは30~100μmである。
【0085】
[光学積層体の特性]
本開示の光学積層体は、反射防止性に優れている。光学積層体の視感反射率は、低屈折率層側から測定したとき、2.5以下であればよいが、反射防止性の点から、2.3以下が好ましい。好ましい前記視感反射率の範囲は0.01~2.5程度の範囲から選択でき、例えば0.05~2.3、好ましくは0.1~2.2、さらに好ましくは0.3~2、より好ましくは0.5~1.8である。視感反射率が高すぎると、反射光によって視認性が低下する。
【0086】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、視感反射率は、JIS Z8722に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0087】
本開示の光学積層体において、380~780nmの波長範囲の分光反射率の標準偏差σが0.5以下であればよく、0.01~0.5程度の範囲から選択でき、例えば0.03~0.4、好ましくは0.05~0.3、さらに好ましくは0.08~0.2、より好ましくは0.1~0.15である。標準偏差σが大きすぎると、低波長領域の反射率が大きくなり、低屈折率層の状態によっては色つきが目立つ虞がある。
【0088】
本開示の光学積層体において、分光反射率の極小値を示す波長は、例えば380~780nm、好ましくは400~700nm、さらに好ましくは450~650nm、より好ましくは500~600nmである。
【0089】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、分光反射率は、JIS Z8722に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0090】
本開示の光学積層体は、所定の光散乱性を有しており、防眩性に優れている。前記光学積層体のヘイズは、例えば0.1~50%、好ましくは1~30%、さらに好ましくは3~20%、より好ましくは5~10%である。ヘイズが小さすぎると、防眩性が低下する虞があり、大きすぎると、視認性が低下する虞がある。
【0091】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ヘイズは、JIS K7136に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0092】
本開示の光学積層体は、透明性に優れている。前記光学積層体の全光線透過率は、例えば70%以上(例えば70~100%)、好ましくは90~99%、さらに好ましくは92~98%、より好ましくは93~97%である。全光線透過率が低すぎると、透明性が低下する虞がある。
【0093】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、全光線透過率は、JIS K7361に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0094】
本開示の光学積層体は、防眩性にも優れている。前記光学積層体の光沢度(グロス)60°(低屈折率層表面の光沢度)は50%以下であってもよく、防眩性と反射率とを両立できる点から、例えば5~50%、好ましくは10~45%、さらに好ましくは15~40%、より好ましくは20~35%である。光沢度が大きすぎると、防眩性が低下する虞がある。
【0095】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、光沢度60°は、JIS Z8741に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0096】
本開示の光学積層体は、硬度も大きく、鉛筆硬度がHB以上であってもよく、例えばF以上、好ましくはH以上、さらに好ましくは2H以上である。鉛筆硬度が低すぎると、タッチパネル付き表示装置のカバーシートなどに利用した場合、耐摩耗性などの保護機能が低下する虞がある。
【0097】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4に準拠した方法で測定できる。
【0098】
前記光学積層体は、前記防眩層、前記低屈折率層に加えて、慣用の機能層として、偏光層、屈折率調整層、粘着層などと組み合わせてもよい。
【0099】
前記光学積層体の厚み(平均厚み)は、例えば3~2000μm、好ましくは5~1000μm、さらに好ましくは10~500μmである。
【0100】
[光学積層体の製造方法]
本開示の光学積層体の製造方法としては、低屈折率層に前記表面形状を付与できればよく、特に限定されないが、防眩層に凹凸形状を形成する防眩層形成工程、防眩層の上に低屈折率層を積層する低屈折率層形成工程を含む方法が好ましい。
【0101】
防眩層形成工程において、防眩層に凹凸形状を形成する方法としては、慣用の方法を利用できる。慣用の方法としては、例えば、粒子を用いて凹凸形状を形成する方法(例えば、粒子の形状に追従させて凸部を形成する方法など)、相分離可能な樹脂成分を含む硬化性組成物の前記樹脂成分を相分離させた後に硬化する方法、表面に凹凸形状を有する型を用いて転写する方法(例えば、ロールでの型押しによる方法など)、切削加工によって凹凸形状を形成する方法(例えば、レーザーなどを利用した切削加工など)、研磨によって凹凸形状を形成する方法(例えば、サンドブラスト法やビーズショット法など)、エッチングによって凹凸形状を形成する方法などが挙げられる。
【0102】
これらのうち、生産性などの点から、転写用フィルムの転写面を成形型とし、防眩フィルム前駆体の被転写面に、前記転写面が反転した形状である凹凸形状を形成する方法が好ましい。
【0103】
本開示の防眩層表面の凹凸形状は、細かい山が多い従来の防眩フィルムの表面凹凸形状が反転した形状であるため、従来の防眩フィルムを成形型(転写用フィルム)として利用してもよい。
【0104】
転写用フィルムは、防眩層との剥離性を向上させるために、フッ素含有化合物を含んでいてもよい。フッ素含有化合物としては、低屈折率層の項で例示されたフッ素含有化合物や、防眩層の項で例示されたフッ素系レベリング剤などが挙げられる。これらのうち、フッ素系レベリング剤が好ましい。フッ素含有化合物の割合は、転写用フィルムを構成する樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。
【0105】
転写用フィルムは、防眩層との剥離性を向上させるために、さらに表面に低屈折率層を積層してもよい。低屈折率層は、好ましい態様も含めて前記光学積層体の低屈折率と同一である。転写用フィルムがフッ素系レベリング剤を含まない場合、特に効果的である。
【0106】
転写用フィルムにおいて、被転写面である防眩層の表面に目的の凹凸形状を形成するために、転写面のスキューネスRskは、例えば0~5、好ましくは0~3、さらに好ましくは0~1である。
【0107】
転写面の算術平均粗さRaは、例えば0.01~0.5μm、好ましくは0.03~0.4μm、さらに好ましくは0.05~0.3μmである。
【0108】
転写面の粗さ曲線の最大断面高さRtは、例えば0.1~3μm、好ましくは0.2~2μm、さらに好ましくは0.3~1μmである。
【0109】
転写面の粗さ曲線要素の平均長さRSmは、例えば1~50μm、好ましくは3~40μm、さらに好ましくは5~30μmである。
【0110】
前記防眩層形成工程(転写工程)において、防眩層前駆体の被転写面に目的の凹凸形状を転写する方法としては、転写用フィルムの転写面の凹凸形状に、追随できる状態の防眩層前駆体を転写面と接触し、前記前駆体を固化または硬化させた後、固化または硬化した防眩層を転写用フィルムから剥離する方法であれば特に限定されず、防眩層の種類に応じて、慣用の方法を適宜選択できる。具体的な方法としては、転写用フィルムを金型内にインサートした状態で、液状の防眩層前駆体を金型内で射出成形した後、固化した防眩層を転写用フィルムから剥離する方法(インモールド成形方法)、液状の防眩層前駆体を転写用フィルムの転写面にコーティング(塗布)し、固化させた後、固化した防眩フィルムを転写用フィルムから剥離する方法(コーティング法)、未硬化で変形可能な防眩層前駆体(フィルム状前駆体)と転写用フィルムとをラミネートした後、前記前駆体を硬化させた後、硬化した防眩フィルムを転写用フィルムから剥離する方法(ラミネート法)などであってもよい。防眩フィルム前駆体としては、溶融状態の熱可塑性樹脂や、未硬化の硬化性樹脂(または硬化性樹脂を含む硬化性組成物)などが例示できる。これらの方法のうち、生産性などの点から、ラミネート法が好ましい。
【0111】
ラミネート法では、防眩層は、基材層と、この基材層の少なくとも一方の面に積層され、光硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物で形成された防眩層との積層フィルムが好ましい。このような積層フィルムを製造するためのラミネート法では、まず、基材層の少なくとも一方の面に、光硬化性樹脂を含む硬化性組成物を塗布して乾燥することにより、防眩層前駆体を調製してもよい。
【0112】
前記硬化性組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、光硬化性樹脂の種類および溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(例えば、光硬化性樹脂、ポリマー成分、光重合開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類[メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)など]、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。また、溶媒は混合溶媒であってもよい。これらの溶媒のうち、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類が好ましい。
【0113】
組成物中の溶質(光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、硬化剤、その他添加剤)の濃度は、流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば1~80質量%、好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは15~50質量%、最も好ましくは20~30質量%である。
【0114】
塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
【0115】
前記組成物を流延または塗布した後、乾燥させて溶媒を蒸発させてもよい。乾燥は、自然乾燥であってもよいが、溶媒の沸点に応じて、例えば30~200℃、好ましくは50~150℃、さらに好ましくは80~120℃の温度で乾燥させてもよい。
【0116】
このようにして得られた防眩層前駆体は、ロールラミネーターなどの慣用のラミネート機を用いて、転写用フィルムとラミネートする。詳しくは、防眩層前駆体と転写用フィルムとを、硬化性組成物で形成された前駆体の塗布層と転写用フィルムの転写面とが接触するようにラミネートすることにより、防眩層前駆体と転写用フィルムとが一体化した積層体を得る。
【0117】
得られた積層体は、光照射して硬化させた後に、積層体から転写用フィルムを剥離することにより、防眩層が得られる。光照射は、光硬化性樹脂の種類などに応じて選択でき、通常、紫外線、電子線などが利用できる。汎用的な光源は、通常、紫外線照射装置である。
【0118】
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム-カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを利用できる。照射光量(積算光量としての照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なり、例えば10~10000mJ/cm、好ましくは20~5000mJ/cm、さらに好ましくは30~3000mJ/cmである。光照射は、必要であれば、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0119】
低屈折率層形成工程において、低屈折率層を積層する方法としては、慣用の方法を利用でき、低屈折率層を形成する組成物を溶媒に溶解または分散した塗工液を塗布して乾燥する方法を利用でき、前記組成物が光硬化性樹脂を含む場合は、防眩層と同様の方法で乾燥後に硬化することができる。塗布方法は、好ましい態様も含め、防眩層形成工程と同様である。
【0120】
溶媒としては、前記防眩層形成工程で用いられる溶媒を利用できる。前記溶媒のうち、イソプロパノール(2-プロパノール)などのアルコール類が好ましい。乾燥温度は、例えば30~200℃、好ましくは50~120℃、さらに好ましくは60~100℃である。
【0121】
組成物中の溶質(樹脂成分、フッ素含有化合物、無機フィラーなど)の濃度は、流延性やコーティング性などを損なわない範囲で0.1~50質量%程度の範囲から選択でき、防眩層の表面に目的の凹凸形状を形成し易い点から、例えば1~3質量%、好ましくは1.5~3質量%、さらに好ましくは1.8~3質量%、より好ましくは2~3質量%である。
【0122】
[表示装置]
本開示の光学積層体は、防眩性および反射防止性に優れるため、種々の表示装置、例えば、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイなどに反射防止フィルムとして利用でき、特に、高精細のLCDや有機ELディスプレイとして有用である。
【0123】
詳しくは、LCDは、外部光を利用して、液晶セルを備えた表示ユニットを照明する反射型LCDであってもよく、表示ユニットを照明するためのバックライトユニットを備えた透過型LCDであってもよい。反射型LCDでは、外部からの入射光を、表示ユニットを介して取り込み、表示ユニットを透過した透過光を反射部材により反射して表示ユニットを照明できる。反射型LCDでは、前記反射部材から前方の光路内に前記光学積層体を配設できる。例えば、前記光学積層体は、表示ユニットの前面(視認側前面)などに配設または積層でき、特に、コリメートバックライトユニットを有し、かつプリズムシートを有さないLCDの前面に配設してもよい。
【0124】
透過型LCDにおいて、バックライトユニットは、光源(冷陰極管などの管状光源、発光ダイオードなどの点状光源など)からの光を一方の側部から入射させて前面の出射面から出射させるための導光板(例えば、断面楔形状の導光板)を備えていてもよい。また、必要であれば、導光板の前面側にはプリズムシートを配設してもよい。なお、通常、導光板の裏面には、光源からの光を出射面側へ反射させるための反射部材が配設されている。このような透過型LCDでは、通常、光源から前方の光路内に、前記光学積層体を配設でき、例えば、表示ユニットの前面などに前記光学積層体を配設または積層できる。
【0125】
有機ELディスプレイにおいて、有機ELは、各画素ごとに発光素子が構成されており、この発光素子は、通常、金属などの陰電極/電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層/ITOなどの陽電極/ガラス板や透明のプラスチック板などの基板で形成されている。有機ELディスプレイにおいても、前記光学積層体を光路内に配設してもよい。
【実施例
【0126】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例および比較例で用いた原料およびフィルムの詳細ならびにコート液の調製方法は以下の通りであり、実施例および比較例で得られた光学積層体は以下の方法で評価した。
【0127】
[原料]
アンチグレアコーティング剤:日本化工塗料(株)製「TOMAX FA-3317M」、固形分50質量%
ヘイズ調整用クリアコーティング剤:日本化工塗料(株)製「TOMAX FA-3317C」、固形分50質量%
フッ素基含有紫外線反応型表面改質剤:DIC(株)製「メガファックRS-75」
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:ダイセルオルネクス(株)製「DPHA」
ペンタエリスリトールトリおよびテトラアクリレート:東亞合成(株)製「アロニックスM-305」
セルロースアセテートプロピオネート:イーストマン社製「CAP-482-20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000
アクリル系レベリング剤:BYK社製「BYK3440」
光重合開始剤:IGM Resins社製「Omnirad184」
反射防止コート液A:日揮触媒化成(株)製「ELCOM P-5062」、固形分3質量%、
フッ素含有硬化性化合物溶液:信越化学工業(株)製「KY-1203」、固形分20質量%
反射防止コート液B:荒川化学工業(株)製「オプスターSB023」、固形分10質量%
【0128】
[フィルム]
転写用フィルムA:(株)ダイセル製「PF11-007F」
転写用フィルムB:(株)ダイセル製「PK27-100」
PETフィルム:三菱樹脂(株)製「O321」、厚み75μmまたは100μm
TACフィルム:富士フィルム(株)製「フジタックTG60UL」、厚み60μm
【0129】
[転写用フィルムCを形成するための転写コート液の調製]
アンチグレアコーティング剤80質量部、このアンチグレアコーティング剤のヘイズを調整するためのヘイズ調整用クリアコーティング剤20質量部、フッ素基含有紫外線反応型表面改質剤1質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルとメチルエチルケトンとの混合溶媒[前者/後者=70/30(質量比)]混合溶媒4.5質量部を混合し、転写コート液を調製した。
【0130】
[防眩層を形成するための防眩コート液の調製]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート90質量部、ペンタエリスリトールトリおよびテトラアクリレート10質量部、セルロースアセテートプロピオネート2質量部、アクリル系レベリング剤0.5質量部、光重合開始剤2質量部を、メチルエチルケトン170質量部とメチルイソブチルケトン170質量部との混合溶剤に溶解し防眩コート液を調製した。
【0131】
[反射防止コート液1の調製]
反射防止コート液A100質量部、フッ素含有硬化性化合物溶液1.5質量部、イソプロピルアルコール36重量部を混合し、反射防止コート液1を調製した。
【0132】
[反射防止コート液2の調製]
反射防止コート液B100質量部、メチルイソブチルケトン317質量部を混合し、反射防止コート液2を調製した。
【0133】
[防眩層の厚み]
光学式膜厚計を用いて、実施例および比較例で得られた積層体における任意の10箇所を測定し、平均値を算出した。
【0134】
[表面形状]
JIS B0601に準拠し、非接触表面・層断面形状計測システム[(株)菱化システム製「VertScan2.0」]を用いて、50倍の対物レンズ、視野253μm×189μmで反射防止層表面の凹凸形状を計測して得られた粗さ曲線に基づいて、スキューネスRsk、算術平均粗さRa、粗さ曲線の最大断面高さRt、粗さ曲線要素の平均長さRSmを、それぞれ求めた。
【0135】
[ヘイズ]
JIS K7136に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製「NDH5000W」)を用いて、反射防止層表面が受光器側となるように配置して、実施例および比較例で得られた防眩反射防止フィルムのヘイズを測定した。
【0136】
[全光線透過率]
JIS K7361に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製「NDH5000W」)を用いて、実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの全光線透過率を測定した。
【0137】
[分光反射率の標準偏差σおよび視感反射率Y]
裏面からの反射ができるだけ影響しないように、反射防止層とは反対側の表面にOCA(光学透明粘着剤)を貼り合わせて粘着面を形成し、この粘着面に黒色アクリル板を貼り合わせて測定サンプルを作製した。続いて、得られた測定用サンプルの反射防止層側表面について、反射分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製「U-3900H」)を用い、JIS Z8722に準拠し、分光反射率を測定した。得られた反射率のスペクトルから、分光反射率の標準偏差σ、視感反射率Yを算出した。
【0138】
[光沢度]
JIS Z8741に準拠し、光沢計(TQC社製「ポリグロスKT-GL0030」)を用いて、実施例および比較例で得られた防眩フィルムの60°の光沢度を測定した。
【0139】
[鉛筆硬度]
JIS K5600-5-4に準拠し、鉛筆法による引っかき硬度を測定した。
【0140】
実施例1(反射防止フィルムの作製)
ワイヤーバーを用いて、PETフィルム(厚み75μm)に防眩コート液をコートし、100℃のオーブン内で1分間乾燥し、塗膜厚み6μmとなるようにコート層(被転写層)を形成した。続いて、転写用フィルムA(防眩層A1)を使用し、被転写面と転写用フィルムAのコート面(転写面)とが接触するように配置し、ロールラミネーター(東芝機械(株)製)を通過させ、積層体を作製した。さらに、転写用フィルムA側から、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス(株)製)により積算光量150mJ/cmの紫外線を照射後、使用した転写用フィルムAを剥離して防眩フィルム1(防眩層A2)を作製した。次に、防眩層A2上にバーコーターを使用して反射防止コート液1をコートし80℃のオーブン内で1分乾燥した。その後、未硬化のコート層側から、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス(株)製)により積算光量400mJ/cmの紫外線を照射して反射防止層(低屈折率層)D1を形成し(厚さは約100nm)、反射防止フィルム1を作製した。
【0141】
実施例2(反射防止フィルムの作製)
転写用フィルムAの代わりに転写用フィルムB(防眩層B1)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして反射防止フィルム2を作製した(防眩層B2、反射防止層D1)。
【0142】
実施例3
(転写用フィルムCの作製)
ワイヤーバーを用いて、PETフィルム(厚み100μm)に転写コート液をコートし、60℃のオーブン内で1分間乾燥し、塗膜厚み6μmとなるようコート層(転写層)を形成した。続いて、転写層に高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)により積算光量100mJ/cmの紫外線を窒素雰囲気下で照射し、転写用フィルムCを作製した。
【0143】
(反射防止フィルムの作製)
PETフィルムの代わりにTACフィルム(厚み60μm)を使用し、転写用フィルムAの代わりに前記転写用フィルムC(防眩層C1)を使用し、実施例1と同様にして反射防止フィルム3を作製した(防眩層C2、反射防止層D1)。
【0144】
実施例4
反射防止コート液2を使用したこと以外は実施例3と同様にして、反射防止フィルム4を作製した(防眩層C2、反射防止層D2)。
【0145】
比較例1~3
実施例1~3で使用した転写用フィルムA~Cの表面にコロナ処理を施し、コロナ処理した表面上に各実施例と同様に反射防止層を作製し、比較として使用した。
【0146】
実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの評価結果を表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
表1の結果から明らかなように、実施例の光学積層体は、比較例の光学積層体に比べて反射率が低下した。さらに、実施例の光学積層体は、光沢度60°が低く、防眩性が高い上に、分光反射率のσも低く、低屈折率層の状態による色づきも目立たなかった。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本開示の光学積層体は、種々の表示装置、例えば、液晶表示装置(LCD)、陰極管表示装置、有機または無機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、リアプロジェクションテレビディスプレイなどの表示装置の表面に利用される反射防止フィルムとして利用でき、特に、高精細な画像が要求される用途、例えば、ゲーム機器、スマートフォン、パーソナルコンピュータ(PC)(タブレットPC、ノート型またはラップトップ型PC、デスクトップ型PCなど)、ペンタブレットなどのコンピュータ用ポインティングデバイス、テレビなどの表示装置に好適である。