(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】プライマー層組成物、これを用いた二次電池パウチフィルム、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/121 20210101AFI20220621BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20220621BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20220621BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20220621BHJP
H01M 50/145 20210101ALI20220621BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20220621BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20220621BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20220621BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01M50/121
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/131
H01M50/145
B32B15/085 A
B32B15/088
B32B15/09 A
B32B15/092
(21)【出願番号】P 2020181990
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113048
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517220885
【氏名又は名称】ユルチョン ケミカル カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ノク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ハン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヒ シク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジ ミン
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-067476(JP,A)
【文献】特開2012-216364(JP,A)
【文献】特開2002-298801(JP,A)
【文献】特開2013-222555(JP,A)
【文献】特開2019-029220(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188283(WO,A1)
【文献】特開2001-246306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの製造方法であって、
金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥及び少なくとも一部を硬化させる乾燥工程を含み、
前記プライマー層組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、
前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、硬化開始温度が150℃以下であり、且つ乾燥工程温度が150℃以下であり、
当該製造方法は、シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さないことを特徴とする、二次電池パウチフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記硬化開始温度が135℃~150℃であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程温度が135℃~150℃であることを特徴とする、請求項2に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、2液硬化型タイプであることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物の硬化剤は、エポキシ系硬化剤であることを特徴とする、請求項4に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物は、主剤パートとして酸変性ポリプロピレンを含み、硬化剤パートとしてエポキシ硬化剤及びエーテル重合体を含むことを特徴とする、請求項5に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、硬化開始温度を調節するための触媒を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記乾燥工程の際に乾燥工程の区域を複数の区域に分け、最初の区域の設定温度及び最後の区域の設定温度よりも最初の区域と最後の区域との間の区域の設定温度を高く設定することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。
【請求項9】
当該製造方法は、シーラント層の貼り合わせの際に常温におけるエージング工程を経ることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。
【請求項10】
少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの成形性向上方法であって、
金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥及び少なくとも一部を硬化させる乾燥工程を含み、
前記プライマー層組成物として2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、
前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であり、
当該方法は、前記シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さず、
当該方法は、シーラント層の貼り合わせの際に常温におけるエージング工程を経ることを特徴とする、二次電池パウチフィルムの成形性向上方法。
【請求項11】
金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含み、
成形性が6.5mm以上であり、
初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、
耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、
耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上であることを特徴とする、二次電池パウチフィルム。
【請求項12】
前記二次電池パウチフィルムは、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、
耐電解液強度が14.0N/15mm以上であり、
耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、
突刺し強度が21.0N以上であることを特徴とする、請求項11に記載の二次電池パウチフィルム。
【請求項13】
前記二次電池パウチフィルムは、成形性が6.5~6.8mmであり、
初期剥離強度が14.0~15.0N/15mmであり、
耐電解液強度が14.0~14.5N/15mmであり、
耐フッ酸強度が6.0~6.4N/15mmであり、
突刺し強度が21.0~23.0Nであることを特徴とする、請求項12に記載の二次電池パウチフィルム。
【請求項14】
前記二次電池パウチフィルムは、基材層、金属層、前記金属層の少なくとも一方側に形成される腐食防止層、前記金属層の内側に形成されるプライマー層、溶融押出樹脂層であるポリプロピレン押出層、シーラント層である無延伸ポリプロピレン(CPP)層から構成され、
前記基材層は、ポリエステルフィルム及びポリイミドフィルムの1種以上からなり、
前記金属層は、アルミニウムからなることを特徴とする、請求項11に記載の二次電池パウチフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー層組成物、これを用いた二次電池パウチフィルム、及びその製造方法に関する。より詳しくは、初期剥離強度、耐フッ酸性、耐電解液性などとともに、成形性が特に向上したプライマー層組成物、これを用いた二次電池パウチフィルム、及びその製造方法に関する。
【0002】
[本発明を支援する国家研究開発事業]
[課題番号]20007148
[部処名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国産業技術評価管理院
[研究事業名]素材部品技術開発―素材部品パッケージ型
[研究課題名]中大型用二次電池パウチの性能評価及び需要業体への適用実証研究
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]ユルチョン化学株式会社
[研究期間]2019.09.01~2021.02.28
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池(LiB)は、高いエネルギー密度や優れた出力を有するなどの多様な長所を基に多くのアプリケーションに適用されている。
【0004】
二次電池パウチは、当該二次電池の電極群と電解液を覆う外装材であって、金属薄膜と高分子からなる層間の接着力、熱融着強度、耐電解液性、気密性、水分浸透性、成形性などの要求特性を満たす必要がある。
【0005】
二次電池パウチは、大別して、外層、バリアー層、内層のシーラント層から構成されている。通常、外層又は最外層はナイロンやナイロンとPET(ポリエチレンテレフタレート)との混合素材、OPP(延伸ポリプロピレン)、ポリエチレンなどから構成されている。このような外層又は最外層の要求特性としては、耐熱性、耐ピンホール性、耐化学性、成形性、及び絶縁性などが要求される。
【0006】
バリアー層は、水蒸気やその他気体に対するバリアー性とともに成形性が要求される。このような側面から、バリアー層には、成形可能な金属、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などが用いられ、現在アルミニウムが最も多用されている。
【0007】
内層のシーラント層は、熱接着性、成形性とともに電解液と接触する層である点から耐電解液性、絶縁抵抗性などが要求される。
【0008】
特に、リチウムイオン電池の適用分野が、小型分野から自動車などの中大型に拡大しつつあるなか、耐フッ酸性、耐電解液性、成形性などのような中大型に適合した特性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の例示的な具現例では、一側面において、初期剥離強度、耐フッ酸性、耐電解液性などとともに、特に成形性に優れるプライマー層組成物、これを用いた二次電池パウチフィルム、及びその製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の例示的な具現例では、少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの製造方法であって、金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥及び少なくとも一部を硬化させる乾燥工程を含み、前記プライマー層組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、硬化開始温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であり、当該製造方法は、シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さないことを特徴とする、二次電池パウチフィルムの製造方法を提供する。
【0012】
本発明の例示的な具現例では、少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの成形性向上方法であって、金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥及び少なくとも一部を硬化させる乾燥工程を含み、前記プライマー層組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、硬化開始温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であり、前記方法は、シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さないことを特徴とする、二次電池パウチフィルムの成形性向上方法を提供する。
【0013】
本発明の例示的な具現例では、また、前記製造方法に用いられ二次電池パウチフィルムの金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層用組成物であって、前記プライマー層は有機溶剤型エマルジョン組成物から形成され、前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、硬化開始温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であることを特徴とする、二次電池パウチフィルム用プライマー層組成物を提供する。
【0014】
本発明の例示的な具現例では、さらに、二次電池パウチフィルムであって、金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含み、前記プライマー層は有機溶剤型エマルジョン組成物から形成され、前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、硬化開始温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であることを特徴とする、二次電池パウチフィルムを提供する。
【0015】
また、本発明の例示的な具現例では、さらに、二次電池パウチフィルムであって、金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含み、成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が前記初期剥離強度の90%以上である二次電池パウチフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の例示的な具現例では、二次電池パウチフィルムの製造の際に金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層用組成物として酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含む2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、硬化開始温度と乾燥工程温度を調節し、熱ラミネーションを施さないことにより、初期剥離強度、耐フッ酸性、耐電解液性などとともに、特に成形性に優れるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な具現例に係る二次電池パウチフィルムの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<用語の定義>
本明細書において二次電池パウチフィルムの各層が順に含まれる場合、必ずしも当該層だけで構成されることではなく、他の層が更に含まれてよい。
【0019】
本明細書において金属層「上」に形成されるとは、金属層に直接形成されることだけでなく、腐食防止層のような他の層を介して形成されることも含む。
【0020】
本明細書において硬化開始温度とは、硬化反応が開始する温度を意味する。
【0021】
本明細書において乾燥工程とは、プライマー層のエマルジョン組成物の溶媒として用いられる液剤を蒸発させプライマー層のエマルジョン組成物の硬化反応を促進するための工程を意味する。当該乾燥工程はシーラント層のラミネーションの前に施される工程であるので熱ラミネート工程とは異なるものである。
【0022】
本明細書において乾燥工程温度とは、プライマー層のエマルジョン組成物の溶媒として用いられる液剤を蒸発させプライマー層のエマルジョン組成物の硬化反応を促進するための工程での温度であって、最高設定温度を意味する。
【0023】
本明細書において熱ラミネート工程とは、金属層上にプライマー層を形成しシーラント層と貼り合わせる際、又は金属層上にプライマー層及び溶融押出樹脂層を形成した後にシーラント層と貼り合わせる際に更にプライマー層のエマルジョン組成物の硬化反応を促進するために加熱してラミネートを施す工程を意味する。
【0024】
本明細書においてシーラント層の貼り合わせ(ラミネート)の際に熱ラミネート工程を施さないとは、熱を加えることなく圧力のみを加えてラミネートを施すことを意味する。
【0025】
本明細書において成形性とは、二次電池パウチフィルムにて製造された試料を金型にて成形する際に10つ以上の試料が破れない成形深さのことを意味する。成形性が6.5mm以上であるときに成形性に優れるとする。
【0026】
本明細書において二次電池パウチフィルムの成形性向上方法とは、初期剥離強度、耐フッ酸性、耐電解液性などの特性が要求水準以上であり且つ成形性を6.5mm以上に向上する方法を意味する。
【0027】
耐電解液強度は、初期剥離強度に比べて90%以上の強度を有するときに好適であるとし、耐フッ酸強度は、5N/15mm以上でなければならない。耐電解液強度及び耐フッ酸強度は初期剥離強度に多く影響されるので、初期剥離強度は14N/15mm以上であることが好適である。
【0028】
<例示的な具現例の説明>
以下、本発明の例示的な具現例について詳述する。
【0029】
図1は、本発明の例示的な具現例に係る二次電池パウチフィルムの構造を示す概略図である。
【0030】
図1に示すように、本発明の例示的な具現例に係る二次電池パウチフィルムは、少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層をこれらの順に含むとか、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムである。
【0031】
前記プライマー層に用いられる有機溶剤型エマルジョンは液状であって別途のコーティング工程を通じて金属層上に形成することができる。この過程で金属層とシーラント層(又は、溶融押出樹脂層が挟まれる場合、溶融押出樹脂層及びシーラント層)の接着性や密着性を高めるために、一般的に2つの工程段階を経るようになる。
【0032】
まず、第1工程段階として、エマルジョンの溶媒として用いられる液剤を蒸発させて硬化反応を促進するための乾燥工程を施し、第2工程段階として、シーラント層の貼り合わせの際、又は溶融押出樹脂層を形成した後にシーラント層と貼り合わせる際に更にプライマー層の組成物の硬化反応を促進するために加熱してラミネートを行う熱ラミネート工程を施す。
【0033】
前記熱ラミネート工程は、二次電池パウチに高温を直接提供することから多くの熱が伝達でき、このため、エマルジョンの硬化反応を促進するうえで非常に有用な工程である。しかし、本発明者らは、熱ラミネート工程において二次電池パウチが高温に直接露出されることによってシーラント層のスリップ性を低下させて成形性を劣化させるおそれがあることを確認した。
【0034】
そこで、本発明の例示的な具現例では、少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層をこれらの順に含むか、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの製造方法、又は二次電池パウチフィルムの成形性向上方法として、前述した熱ラミネート工程を施すことなく乾燥工程のみを施す。また、二次電池パウチフィルムの金属層と溶融押出樹脂層又は金属層とシーラント層との間に挟まれるプライマー層用組成物を、例えば、酸変性ポリプロピレン、硬化剤を含む2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物から構成する。また、硬化開始温度と乾燥工程温度を調節する。これにより、初期剥離強度、耐フッ酸性、耐電解液性などとともに、特に成形性に優れるという効果を奏することができる。
【0035】
まず、有機溶剤型エマルジョン組成物について説明する。エマルジョンは、大別して水系型と有機溶剤型とに分けられ、例えば、酸変性ポリプロピレン及び各種の重合体などを含むエマルジョンの溶媒として水を用いる場合を水系型といい、エマルジョン溶媒として有機溶剤(シクロヘキサン(CH)、酢酸エチル(EA)、トルエン(TOL)など)を用いる場合を有機溶剤型という。
【0036】
本発明の例示的な具現例では、プライマー層組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物、好ましくは、2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物を用いる。2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物は、例えば、酸変性ポリプロピレンを有機溶剤に溶解させた第1溶液(主剤パート)及び硬化剤を有機溶剤に溶解させた第2溶液(硬化剤パート)から構成される。
【0037】
このような2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョンを配合して金属層とシーラント層、又は、好ましくは、溶融押出ポリプロピレン層と金属層とを貼り合わせる。
【0038】
金属層とシーラント層との間、又は、好ましくは、溶融押出ポリプロピレン層と金属層との間に前記有機溶剤型エマルジョン層、好ましくは、2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン層を形成させて乾燥及び硬化を調節すると、二次電池パウチフィルムの内側シーラント層と金属層との間に接着力を与え、且つ耐フッ酸性や耐電解液性を向上できるだけではなく、前述した成形性も高めることができる。
【0039】
因みに、水系型エマルジョンを用いてプライマー層を形成すると、工程温度を比較的に低く(100℃付近)設定することができるが、耐フッ酸性において乏しいという短所がある。一方、有機溶剤型エマルジョンを用いると、耐フッ酸性には非常に優れるが、エマルジョン中での反応を促進するために工程温度を高温(150℃以上)に設定したり、別途の熱ラミネート工程を必要としたりする。しかし、工程温度が高くなるほどシーラント層と外層との間のスリップ性が低下して成形性が劣化するという短所がある。
【0040】
例示的な具現例において、2液硬化型タイプは硬化剤の種類に応じて分けられ、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系などといった種々のものを用いてよい。
【0041】
例示的な一具現例において、前記酸変性ポリプロピレンは、酢酸無水物、グルタル酸無水物、安息香酸無水物、フタル酸無水物、マレイン酸無水物などの種々の酸無水物に変性されたものであってよい。
【0042】
例示的な一具現例において、前記硬化剤としては、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系硬化剤であってよく、好ましくは、エポキシ硬化剤を用いた2液硬化型タイプを適用して耐電解液性や耐フッ酸性を向上させることができる。
【0043】
エポキシ系の2液硬化型タイプは、例えば、カルボン酸及び酸無水物と硬化反応を生じさせることができ、硬化反応が生じて金属層とシーラント層との貼り合わせがなされてよい。因みに、酸無水物とエポキシ系硬化剤は、一般的に200℃以上の高温で硬化反応を開始するとされており(すなわち、硬化開始温度が200℃である)、高い開始温度のため触媒によって開始温度を下げなければならない。
【0044】
例示的な一具現例において、例えば、2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョンは、酸変性ポリプロピレン、アンモニウム塩、2,5-フラジオンなどが含まれた添加剤を含む主剤物質を有機溶剤に溶解させてなる第1溶液(主剤パート)と、エポキシ系硬化剤、エーテル重合体(その他添加剤を更に含み得る)を含む硬化剤物質を有機溶剤に溶解させてなる第2溶液(硬化剤パート)を用いてよいが、これらに制限されない。
【0045】
因みに、前記第1溶液において酸変性ポリプロピレンは、金属表面に密着して貼り合わされるシーラント層又は溶融押出樹脂層のポリプロピレンとの接着力を向上させる役割を果たし、その他添加剤は、エマルジョンの化学的安定性を向上させる役割を果たし得る。
【0046】
一方、第2溶液において前記エーテル重合剤は、金属表面に密着されたエマルジョンと応じて金属表面/エマルジョン/ポリプロピレン層(シーラント層のポリプロピレン層又は溶融押出樹脂層のポリプロピレン層)との間の化学的結合を形成させて接着性を具現することができる。また、第2溶液の安定性及び硬化反応後の高温安定性や耐フッ酸性を向上させる役割を果たし得る。エーテル重合体としては、ビスフェノールA-ビスフェノールAジグリジジルエーテル重合体を用いてよく、エポキシ結合を誘導する誘導体として用いられてよい。
【0047】
一方、例示的な具現例において、前記硬化開始温度は、150℃以下、好ましくは、135~150℃になるようにする。
【0048】
このような硬化開始温度を有することで結果的に乾燥工程温度が低くなり、且つ耐フッ酸性、耐電解液性、成形性などの特性に優れるものとなる。
【0049】
すなわち、金属層とシーラント層との接着がなされるためには、プライマー層を構成する接着剤の硬化反応が十分になされる必要がある。また、プライマー層は、耐フッ酸性、耐電解液性を決める極めて重要な役割をするため、熱特性に優れ且つ化学的に安定的である必要がある。一般的に熱硬化性樹脂がかかる特性を満たすため主に用いられる。
【0050】
しかし、硬化反応が開始され得る硬化開始温度が高く、且つ十分な硬化反応がなされなければ接着性が劣化するため、耐フッ酸性や耐電解液性にも影響を及ぼすようになる。このような理由から、前述した高温の熱ラミネート工程を施す場合、高温の熱ラミネート工程によって決定的に二次電池パウチフィルムの成形性が劣化するという短所がある。
【0051】
すなわち、高温の熱ラミネート工程を経ることで二次電池パウチフィルムの外層とシーラント層との間でのスリップ性が低下して成形性が劣化することがある。また、高温の熱ラミネート工程によって外層に存在する接着層とプライマー層の硬度が増加することがあるが、硬度が増加するほど二次電池パウチフィルムの弾性力が低下するようになり、その結果、成形性が劣化することがある。
【0052】
そのため、低い工程温度で硬化反応が十分になされるように開始温度を下げることが有利であり、このような側面から、硬化開始温度は、150℃以下、又は135~150℃になるようにする。
【0053】
ここで、開始温度を下げることは触媒を添加することで調節が可能であるが、大幅で下げることは難しい。化学反応が起こり易くするために活性化エネルギーを下げる触媒は反応に参加しない物質であり、添加量が増加しても活性化エネルギーの減少量に比例しない。また、触媒は反応に関与せずに残留するため多量用いる場合、物性に悪影響を与えることがある。そのため、開始温度を下げることには限界がある。よって、135℃以下に開始温度を下げることは難しい。
【0054】
例示的な一具現例において、開始温度を下げて硬化反応を促進するための触媒としては、一般的に、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミンなど)やイミダゾールを主に用いてよい。特に、三級アミンは金属との接着性を向上させる酸無水物とエポキシとの反応を促進する役割を果たす。三級アミンは二級アミンとエポキシとが反応して生成され、該生成された三級アミンが触媒として働いてよい。
【0055】
一方、乾燥工程温度は、100~150℃、好ましくは、135℃~150℃とする。乾燥工程温度が150℃を超えると、後述する実験例でも見られるように成形性が低下するようになる。
【0056】
すなわち、乾燥工程温度が高い場合、2液型硬化型接着剤の硬化反応を促進して接着強度を高めることができるが、外層とシーラント層とのスリップ性を低下させて成形性が低下することがある。一方、乾燥工程温度が低い場合、2液型硬化型接着剤の硬化反応が十分になされないことがある。これを解決するために、前述したように別途の高温熱ラミネート工程をさらに施すと、この過程でスリップ性や成形性が低下することがある。
【0057】
例示的な一具現例において、エマルジョンの乾燥工程の際は、乾燥工程区域を分けて段階的に温度を上昇、下降するように設定するのが成形性の側面から好ましい。
【0058】
例えば、前記乾燥工程の際に乾燥工程の区域を複数の区域に分け、最初の区域の設定温度及び最後の区域の設定温度よりも最初の区域と最後の区域との間の区域の設定温度を高く設定するのが成形性の側面から好ましい。
【0059】
非制限的な例示において、最小3区域から最大15区域までに乾燥工程の区域を分けて各区域の温度を設定してよく、真ん中の区域の温度を最も高く設定する。ここで、乾燥工程温度は、各区域の設定温度のうち最高温度になる。
【0060】
例示的な一具現例において、初期剥離強度、耐電解液強度、耐フッ酸強度、突刺し強度とともに成形性を考慮するとき、前述した硬化反応開始温度は135~150℃であることが最も好ましく、乾燥工程温度は135~150℃であることが最も好ましい。
【0061】
例示的な一具現例において、前記製造方法は、乾燥工程の後であってシーラント層の貼り合わせの際に、プライマー層エマルジョン組成物の完全な硬化に資することができるように常温におけるエージング工程を経てよい。
【0062】
一方、本発明の例示的な具現例では、前記製造方法に用いられ、二次電池パウチフィルムの金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層用組成物であって、前記プライマー層組成物は、有機溶剤型エマルジョン組成物から形成され、前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン、硬化剤を含む2液硬化型タイプであり、硬化開始温度150℃以下であり、150℃以下で乾燥されることを特徴とする二次電池パウチフィルム用プライマー層組成物を提供する。
【0063】
また、本発明の例示的な具現例では、更に、前記製造方法により製造される二次電池パウチフィルムであって、金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含み、成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上である二次電池パウチフィルムを提供する。
【0064】
例示的な一具現例において、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、突刺し強度が21.0N以上であってよい。
【0065】
例示的な一具現例において、成形性が6.5~6.8mmであり、初期剥離強度が14.0~15.0N/15mmであり、耐電解液強度が14.0~14.5N/15mmであり、耐フッ酸強度が6.0~6.4N/15mmであり、突刺し強度が21.0~23.0Nであってよい。
【0066】
図1を再び参照すると、例示的な一具現例において、前記二次電池パウチフィルムは、特に、基材層、金属層、前記金属層の少なくとも一方側に形成される腐食防止層(耐酸性被膜層)、前記金属層の内側に形成されるプライマー層、溶融押出樹脂層であるポリプロピレン押出層、シーラント層である無延伸ポリプロピレン(CPP)層から構成されてよい。
【0067】
前記基材層は、ポリエステルフィルム及びポリイミドフィルムの1種以上からなるものであってよく、例えば、最外側をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとし、内側をナイロンフィルムとして構成されてよい。前記PETフィルムとナイロンフィルムとは、第1接着層を介してドライラミネーション(Solvent Dry Lamination;SDL)を施して貼り合わせてよい。また、ナイロンフィルムと金属層とも第2接着層を介してドライラミネーション(Solvent Dry Lamination;SDL)を施して貼り合わせてよい。
【0068】
前記金属層は、代表的に用いられるアルミニウムからなるものであってよく、これにより、腐食防止層としてクロメート系又はノンクロメート系のアルミニウム腐食防止層を形成することができる。
【0069】
前記シーラント層の無延伸ポリプロピレン層は、多層、例えば、3層で形成してよい。
【実施例】
【0070】
以下の実施例を通じて本発明の例示的な具現例を更に詳細に説明する。本明細書に開示された実施例は、単に説明のための目的として例示されたものであって、多様な形態で実施されてよく、本発明が本明細書で説明された実施例に限定されると解釈されてはならない。
【0071】
[実験1:異なる硬化反応開始温度及び乾燥工程温度による比較実験]
図1に示されたように、二次電池パウチの製造の際に基材層(PET/ナイロン)とAl腐食防止層を形成したAl金属層とを先に貼り合わせ、最後の工程で前記基材層と金属層(Al腐食防止層が形成されたAl金属層)とが貼り合わされてなる原反にシーラント層(CPPフィルム)を貼り合わせた。シーラント層を貼り合わせる際に金属層にプライマー層を形成させるためにエマルジョンコーティング及び乾燥工程を施してからシーラント層を貼り合わせて二次電池パウチフィルムを製作した。一方、シーラント層を貼り合わせる際に溶融押出樹脂層としてポリプロピレンを押し出して更に形成してもよい。
【0072】
前述したように、エマルジョンの乾燥工程の際は、区域を分けて段階的に温度を上昇、下降するように設定し、最小3区域から最大15区域までに区分して各区域の温度を設定してよい。本実験1では、例示的に10区域に分けた。真ん中の区域の温度を最も高く設定し、工程温度は、設定温度のうち最高温度を示す。
【0073】
二次電池パウチフィルムのプライマー層に適用された2液型タイプの有機溶剤型エマルジョンは、ビスフェノールA型エポキシタイプを基に作製された。エポキシタイプのうち最も代表的なものであり、接着性、耐化学性、高温特性に優れるのが特徴である。
【0074】
前述したような酸変性ポリプロピレンを含む主剤物質を有機溶剤に溶解させてなる第1溶液(主剤パート)と、エポキシ系硬化剤、エーテル重合体を含む硬化剤物質を有機溶剤に溶解させてなる第2溶液(硬化剤パート)を用いてよいが、これに制限されるものではない。
【0075】
前述したように、硬化反応開始温度(以下、開始温度)を下げて硬化反応を促進するための触媒としては、一般的に三級アミンやイミダゾールを主に用いてよく、本実験1では、例示的に三級アミンを用いた。
【0076】
以下、各比較例及び実施例をまとめると、次のとおりである。
【0077】
(比較例1)開始温度が175~190℃である2液型溶剤系エマルジョンを乾燥工程温度100℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(比較例2)開始温度が175~190℃である2液型溶剤系エマルジョンを乾燥工程温度120℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(比較例3)開始温度が175~190℃である2液型溶剤系エマルジョンを乾燥工程温度135℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(比較例4)開始温度が175~190℃である2液型溶剤系エマルジョンを乾燥工程温度150℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(比較例5)開始温度が175~190℃である2液型溶剤系エマルジョンを乾燥工程温度165℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(比較例6)開始温度が175~190℃である2液型溶剤系エマルジョンを乾燥工程温度180℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(比較例7)開始温度が175~190℃である2液型溶剤系エマルジョンを乾燥工程温度200℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(実施例1)開始温度を135~150℃に下げた2液型溶剤系エマルジョンを工程温度100℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(実施例2)開始温度を135~150℃に下げた2液型溶剤系エマルジョンを工程温度120℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(実施例3)開始温度を135~150℃に下げた2液型溶剤系エマルジョンを工程温度135℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(実施例4)開始温度を135~150℃に下げた2液型溶剤系エマルジョンを工程温度150℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(比較例8)開始温度を135~150℃に下げた2液型溶剤系エマルジョンを工程温度165℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(比較例9)開始温度を135~150℃に下げた2液型溶剤系エマルジョンを工程温度180℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
(比較例10)開始温度を135~150℃に下げた2液型溶剤系エマルジョンを工程温度200℃に設定して二次電池パウチフィルムを製作した。
【0078】
【0079】
特性評価
<初期剥離強度評価>
(1)二次電池パウチフィルムを横1.5cm、縦15cmに切って試片を用意した。
(2)金属層とシーラント層とを剥離して剥離強度を測定した。
【0080】
<耐フッ酸性評価>
(1)二次電池パウチフィルムを横10cm、縦20cmに切ってから両側2面を熱接着した。
(2)2面が接着された二次電池パウチの内部に製造溶液(電解液+水(溶液中の水の濃度が10,000ppm(約1%)))を入れて熱接着してパックを製造した。
(3)高温条件(85℃)で24時間保管した。
(4)パック内部の電解液を廃棄し、前述した初期剥離強度評価と同様にして試料を用意した(横1.5cm、縦15cm)。
(5)金属層とシーラント層との間の剥離強度を測定した。
【0081】
<耐電解液性評価>
(1)二次電池パウチフィルムを横1.5cm、縦15cmに切って試片を用意した。
(2)用意した試片を標準電解液(1.0M LiPF6(EC/DEC/EMC:1/1/1)に含浸し、高温条件(85℃)で24時間保管した。
(3)電解液を洗浄後に金属層とシーラント層とを剥離して剥離強度を測定した。
【0082】
<成形性評価>
(1)製作された二次電池パウチフィルムをそれぞれ15cm×15cmの大きさに切って試料を用意した。
(2)用意した各試料を栗村化学社製の試験用金型(3cm×4cmの大きさ)を用いて成形した。
(3)成形深さの設定を変更しながら成形評価を繰り返し行い、試料が10つ以上破れないまで進めた。
(4)10つ以上破れなかった成形深さを測定した。
【0083】
<突刺し強度評価>
(1)二次電池パウチフィルム幅35mm、長さ600mmの試料を製作する。
(2)外層から内層方向に約40mmの間隔で突刺し強度を測定する。
(3)10回の強度を測定後に平均値を記入する。
【0084】
参考までに、以上において、成形性の場合は、高いほど電池製作の際の成形工程範囲がより拡大し得る。耐電解液強度は、初期剥離強度に比べて90%以上の強度を有するのが適切であり、耐フッ酸強度は、5N/15mm以上でなければならない。耐電解液強度及び耐フッ酸強度は初期剥離強度に多く影響されることから、初期剥離強度は、14N/15mm以上であるのが適切である。
【0085】
下表2は、硬化開始温度及び乾燥工程温度による物性評価を表す。
【0086】
【0087】
以上から分かるように、開始温度が175~190℃(比較例1、2、3、4)と高いエマルジョンを適用した場合、乾燥工程温度が150℃以下であるとき、初期剥離強度が10N以下と非常に低いほうである。初期剥離強度が低いため、耐電解液強度及び耐フッ酸強度の評価の際にシーラント層と金属層とが完全に分離する現象が発生するようになった。
【0088】
乾燥工程温度が165~200℃(比較例5、6、7)の場合、初期剥離強度、耐電解液強度、耐フッ酸強度ともに優れているが、突刺し強度が24N以上に上昇した。また、成形性が6.5mmに及ばない結果が得られた。
【0089】
開始温度を135~150℃に下げたエマルジョンを適用した場合、乾燥工程温度が100℃(実施例1)であるときのみ、初期剥離強度が10N/15mm以下であり、120℃以上(実施例び比較例8~10)の乾燥工程条件では12N/15mm以上の初期剥離強度を示した。開始温度を下げることによって低い乾燥工程温度でも接着性が向上したことを確認した。
【0090】
しかし、120℃の条件(実施例2)では耐フッ酸強度が5N/15mmに及ばず、135℃以上(実施例3~4、比較例8~10)の条件では初期剥離強度、耐電解液強度、耐フッ酸強度ともに優れていた。
【0091】
比較例1~7と同様、165~200℃の条件(比較例8~10)では突刺し強度が上昇し、成形性が6.5mmに及ばない結果が得られた。
【0092】
135~150℃の条件(実施例3、4)では突刺し強度が20N以上に上昇したが、成形性は6.5mm以上と最も優れた結果を示した。
【0093】
したがって、開始温度に相応する乾燥工程温度の条件でのみ、初期剥離強度、耐電解液強度、耐フッ酸強度ともに適切な物性を示した。150℃を超える温度、特に実験例から分かるように、165℃以上の乾燥工程温度を有すると、二次電池パウチフィルムの突刺し強度が大きく上昇するようになり、これに伴い、成形性が劣化するようになる。
【0094】
したがって、すべての物性を適宜具現するためには、乾燥工程温度を150℃以下に下げるのが好ましく、このために、溶剤型エマルジョンの開始温度を150℃以下に下げるのが好ましい。
【0095】
以上で本発明の非制限的で且つ例示的な具現例を説明したが、本発明の技術思想は、添付の図面や前記説明内容に限定されない。本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の形態の変形が可能であることがこの分野の通常の知識を有する者には自明であり、また、このような形態の変形は本発明の特許請求の範囲に属するといえる。