(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】中空導波路レーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 3/08 20060101AFI20220621BHJP
H01S 3/11 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01S3/08
H01S3/11
(21)【出願番号】P 2020524362
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2018080067
(87)【国際公開番号】W WO2019086639
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-06-12
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】306032578
【氏名又は名称】レオナルド・ユーケー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Leonardo UK Ltd
【住所又は居所原語表記】1 Eagle Place,St.James’s,London,SW1Y 6AF,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ラム、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エルダー、イアン
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-274788(JP,A)
【文献】特開昭63-027079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利得媒体と、複数の共振器ミラーと、前記利得媒体を励起するためのポンプ機構と、中空導波路とを備えるレーザであって、前記中空導波路は、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間で光を導くために、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間に配置され、前記中空導波路の断面寸法は、最低次モードを有するビームを優先的に選択する、レーザ。
【請求項2】
前記中空導波路は、少なくとも部分的に、単一の一体型ピース本体によって画定された1つ以上の導管によって少なくとも部分的に提供される、請求項1に記載のレーザ。
【請求項3】
前記単一の一体型ピース本体は、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間で光を導くための複数の中空導波路を提供する1つ以上の導管を画定する、請求項2に記載のレーザ。
【請求項4】
前記本体は、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーとの間にある複数の導波路を提供するための複数の導管を画定し、前記レーザは、前記導管の間に光を方向付けるための反射体を備える、請求項3に記載のレーザ。
【請求項5】
前記本体は、前記レーザの共振器内で前記光を操作する光学部品を保持するキャビティを画定する、請求項2、3又は4のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項6】
前記キャビティは、前記光学部品を光学的に整列して保持するように成形及びサイズ決定される、請求項5に記載のレーザ。
【請求項7】
前記本体は、前記利得媒体、複数の共振器ミラー、及び反射体のうちの1つ以上を保持するための1つ以上のキャビティを備える、請求項
4に記載のレーザ。
【請求項8】
Qスイッチを備え、前記Qスイッチは、前記本体に設けられた前記中空導波路を通って進む光がそれに入射するように、前記本体によって設けられたさらなるキャビティ内に保持される、請求項2~7のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項9】
前記導管又は前記本体によって画定されたさらなる導管は、前記レーザから出力されたレーザ光を導くための役割を果たす、請求項2~8のいずれか一項に記載のレーザ。
【請求項10】
光回路であって前記光回路の周りを進む光を導くための導波路を提供する中空導管を有する本体を備え、前記本体内の前記中空導管及び/又はさらなる導管のうちの1つ以上は、請求項2~9のいずれか一項に記載の前記レーザのための前記中空導波路を提供する、光回路。
【請求項11】
前記本体は、前記導管を提供するチャネルが形成されるモノ
ブロックを備える、請求項10に記載の光回路。
【請求項12】
利得媒体と、複数の共振器ミラーと、前記利得媒体を励起するためのポンプ機構と、導波路とを備えるレーザであって、前記導波路は、前記利得媒体間で前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つの方へと光を導くために、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間に配置され、前記レーザは、前記導波路を画定する導管を画定する本体と、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーとのうちの1つ以上が設置されるキャビティとを備える、レーザ。
【請求項13】
前記本体は、前記導管の少なくとも一部を提供するチャネルを画定する第1のピース
を有する、請求項12に記載のレーザ。
【請求項14】
前記本体は、前記導管を提供するために前記第1のピースと協働する第2のピース
を有する、請求項13に記載のレーザ。
【請求項15】
前記第1及び第2のピースは、単一の一体型ピースである、請求項13又は14に記載のレーザ。
【請求項16】
レーザを製造する方法であって、前記レーザは、
第1の単一の一体型ピース本体であって、
2つのキャビティと、
前記キャビティ間に延在する導管であって、前記導管は、前記レーザが使用中であるとき、前記キャビティ間の光のための導波路としての役割を果たす、導管と
の各々のうちの少なくとも一部分を画定する、第1の単一の一体型ピース本体
を提供することを備え、
前記方法は、前記2つのキャビティのうちの1つに前記レーザの第1の光学部品を位置付け、および前記2つのキャビティのうちの第2のものに前記レーザのさらなる光学部品を位置付けることを備える、
方法。
【請求項17】
前記第1の単一の一体型ピース本体は、機械加工プロセス及び/又は付加製造プロセスを使用して製造される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の単一の一体型ピースを第2の単一の一体型ピースと接合することを備え、前記第1及び第2の一体型ピースは、前記レーザが使用されるときに、光軸の各側の2つの直交平面の周りにレーザ光を閉じ込める導波路としての役割を果たす導管を画定するように協働する、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の一体型ピースは、前記キャビティの少なくとも1つの側面を画定する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記キャビティは、前記光学部品を光学的に整列して支持及び保持するように位置決め及び成形される、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記光学部品は、前記キャビティの壁に対して直接保持される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記2つのキャビティのうちの1つに前記レーザの共振器の第1の端部を提供する第1のミラーを位置付けることと、前記2つのキャビティのうちの第2のものに前記レーザの前記共振器の第2の端部を提供する第2のミラーを位置付けることとを備える、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項10、または11に記載の光回路を製造する方法であって、請求項16~22のいずれか一項に記載の前記方法に加えて、前記回路が動作しているときに、前記レーザから出力された光を操作するさらなる光学部品を前記単一の一体型ピースのさらなるキャビティ内に位置付けることを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザの新規な設計に関する。
【0002】
米国特許第5412681(A)号は、2つの平行な長方形のフラットな離間した電極を含むスラブ導波路CO2レーザに関し、その表面は、レーザガスを励起し、スラブ電極の表面に垂直な平面内でレーザ光を導く。
【背景技術】
【0003】
以下の刊行物は、モノブロックで形成された中空導波路を使用して光が導かれる光回路を開示する:Jenkins, R. M. , Perrett, B. J. , McNie, M. E. , Finlayson, E. D. , Davies, R. R. , Banerji, J. and Davies, A. R. , “Hollow optical waveguide devices and systems,” Proc. SPIE 7113, 71130E (2008); 及びIan F Elder, Daniel H. Thorne, Robert A Lamb and R Mike Jenkins, Mid-IR laser source using hollow waveguide beam combining, Proc SPIE 972601, 2016
【0004】
米国特許出願公開第2007/0041418号は、BeOの2つの層の間に形成された導波路を有するスラブCO2レーザを記載している。この導波路は2つの目的を有している。第1に、その「Z」形状が、レーザの物理的長さをより短くすることを可能にする。第2に、従来のスラブレーザと比較して導波路の断面積が比較的小さいことが、壁への熱伝達を改善し、より低温で放電を実施することを可能にする [段落26]。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様によれば、利得媒体と、複数の共振器ミラーと、利得媒体を活性化させるためのポンプ機構と、中空導波路とを備えるレーザが提供され、中空導波路は、媒体から複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つにレーザ光を導くために、利得媒体と複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間に配置される。
【0006】
導波路は、好ましくは、光軸の各側の2つの直交平面(例えば、垂直平面及び水平平面)の周りにレーザ光を閉じ込める。したがって、導波路は、実質的に封止されていてもよく、すなわち、光軸を横断する平面を通るように実質的に閉じられた断面形状を有する。
【0007】
導波路は、空き領域又はライトパイプを通して共振器内で光を伝搬することと比較して、より高い品質の出力ビームを提供するように、高次モードを抑制することによって最低次モード(TEM00)を優先的に選択するようレーザの動作波長に従って選択され得る(例えば、断面寸法を有する)。
【0008】
光軸に沿って見たときの導波路の断面形状は、任意の好適な形状であってよく、非限定的な例としては、円形、正方形、及び長方形が挙げられる。
【0009】
レーザは、レーザの共振器内の光学部品(例えば、ミラー、プリズム、偏光子、位相板)間を導く複数の中空導波路を備え得る。複数の中空導波路は、複数の共振器ミラー間の光の蛇行経路を提供するために、共振器キャビティ内の反射体(例えば、プリズム及び/又はミラー)間に延在してもよい。
【0010】
蛇行経路は、レーザの全体的な物理的長さ(フットプリント)を最小化しながら、比較的長い共振器長を可能にする。
【0011】
長い共振器長は、低いフレネル数及びその後の良好な出力ビーム品質を保証する長い光路を提供し、すなわち、ビームのエネルギー(パワー)は、少なくとも主に最低次モードにある。
【0012】
加えて、長い共振器長は、例えばQスイッチングなどのパルス化手段と共に使用されるとき、例えば15ns~22ns程度の比較的長いパルス持続時間を提供するために使用され得る。
【0013】
中空導波路は、共振器ミラーによって一端で閉じられ得る。それは、第2の共振器ミラーによって他端で部分的に又は完全に閉じられ得る。
【0014】
中空導波路は、本体内に形成された導管によって少なくとも部分的に画定され得る。本体は実質的に中実(solid)であってもよい。本体は、ブロック形態、例えばモノブロックであってもよい。
【0015】
本体は、共振器内で光を導く複数の中空導波路を提供する1つ以上の導管(例えば、中実体内に形成される)を画定し得る。加えて又は代替として、本体は、複数の導波路を提供する複数の導管を画定し得る。本体は、共振器内で光を操作する(例えば、増幅、反射、分割、集束、分散、位相シフトのうちの1つ以上)光学部品を保持するキャビティを画定し得る。導波路を画定し、個々のキャビティ内に光学部品を支持する中実体の使用は、中空容器内に光学部品を支持するために複数のマウントを使用する従来のレーザ設計の使用と比較して、より大きい機械的剛性を提供する。
【0016】
キャビティは、所望の光学的アライメントを提供する位置に光学部品を支持及び保持するように位置決め及び成形され得る。これは、光学的機械的マウント及び手動調整又はアライメントの必要性を回避する。好ましくは、光学部品は、精密にミリングされた嵌合によってキャビティ壁に対して保持される。
【0017】
本体は、複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つを保持するためのキャビティを画定することができる。
【0018】
好ましくは、本体は、レーザの複数の光学部品を保持するための多数のキャビティを備え、例えば、本体は、共振器ミラーを保持するように各々配置された2つのキャビティを備え得る。最も好ましくは、本体は、レーザの光学部品の全てを支持及び保持するためのキャビティを備える。
【0019】
例示的な光学部品は、ミラー、プリズム、Qスイッチ、位相シフタ、リターダ、偏光子、波長板及びレンズのうちの1つ以上を含む。
【0020】
導管は、それらのキャビティ内に保持された光学部品間で光を導くために、キャビティ間に延在し得る。
【0021】
本体は、導管及び少なくとも1つのキャビティを少なくとも部分的に画定する単一の一体型ピースを備え得る。
【0022】
本体は、1つ以上の導管及び/又は凹部を画定するように協働する第1及び第2のピースを備え得る。第1のピースは、チャネルを備える、例えば画定することができる。第2のピースは、導波路を画定するように、導管の1つ以上の側面を提供し得、例えば、フラットな側面で例えば第1のピースのチャネルの開放側を閉じるか、又は第1のピースのチャネルと協働する第2のチャネルを備えてもよい。
【0023】
第1のピースは、単一の一体型ピースであり得る。第2のピースは、単一の一体型ピースであり得る。あるいは、本体は、1つ以上の導管が形成される単一の一体型ピースとして形成され得る。
【0024】
導管及び/又はキャビティは、適切な製造プロセスを使用して形成され得る。非限定的な例としては、ブロックのコンピュータ数値制御(CNC)ミリング、及び/又は付加製造が挙げられる。
【0025】
導管が単一の一体型ピース本体内に画定される配置では、付加製造がより好適な製造プロセスであり得る。その後、光学部品は、本体の残りの部分がそれらを保持するように光学部品の周囲に形成される前に、製造中に部分的に形成された本体に挿入され得る。
【0026】
本体は、ガラス、ガラスセラミック、及び/又は他のセラミック材料から作製されてもよく、非限定的な例としては、Macor(登録商標)、AlSi、及びSiN、又は金属、例えば銅及び/又は金が挙げられる。本体は、銅及び/又は金でコーティングされた金属コーティング、例えばMacor(登録商標)を有する基材(例えば非金属)を備え得る。選択される材料の選択は、レーザの意図される用途のための本体の必要とされる機械的剛性及び脆性破壊、及び/又はレーザの動作波長に基づき得る。金属又は金属被覆基板からなる本体は、(非金属本体と比較して)導波路に沿った伝搬のための光の損失を低減させることができる。選択される金属は、レーザの意図される動作波長に依存する。
【0027】
中空導波路は、最も好ましくは、光が共振器内の空き領域中で伝搬しないように、実質的に、利得媒体と共振器ミラーとの間の光路全体を提供することができる。
【0028】
導波路の断面幅(光軸を横断する平面)は、当技術分野で周知の設計原理を使用して、レーザの動作波長に基づいて選択される。
【0029】
利得媒体は、任意の既知の形態であってもよいが、固体又は静的形態は、それらが自己完結型であり、したがって、本体のキャビティ内に保持されるのに役立つため、好ましい場合がある。利得媒体の例は、約1064nmの波長で動作するレーザに使用されるNd:YAGである。
【0030】
利得媒体は、本体に取り付けられ得る。例えば、利得媒体は、複数の導波路のうちの1つ以上を提供する、本体の導管内に取り付けられてもよい。
【0031】
本体は、利得媒体と共振器ミラーとの間にある複数の中空導波路を提供するための複数の導管を有し、好ましくは画定し、レーザは、導管の間に光を方向付けるための1つ以上の反射体を備える。これにより、複数の共振器ミラー間の光路が蛇行形態をとるが可能となる。この配置は、蛇行する光路を提供するためにコイル状ファイバを使用することに関連する損失を回避する。
【0032】
反射体は、導管の間に光を方向付けるためのプリズム及び/又は反射鏡を備え得る。反射体は、本体内のキャビティ内に保持され得る。
【0033】
本体は、レーザの共振器から出力されるレーザ光のための導波路又は他の経路を提供する導管を画定し得る。
【0034】
本体は、レーザの共振器から出力されるレーザ光を操作する、光回路の1つ以上の追加の光学部品を保持するための1つ以上のキャビティを画定し得る。本体の1つ以上の導管(又は本体によって画定されたさらなる導管)は、レーザの共振器から出力された光を光回路の追加の光学部品に/それらの間に導くための1つ以上の導波路を提供し得る。したがって、レーザは、集積光回路の一部を形成し得る。
【0035】
1つの非限定的な例では、光回路は、様々な前述の設計の複数の中空導波路レーザの出力を組み合わせる結合器を提供し得る。
【0036】
本発明は、IR動作レーザのために考案されたが、本発明の概念は、可視、MWIR及びLWIRを含むがこれらに限定されない他の波長で動作するレーザに適用されてもよい。
【0037】
別の態様では、光回路の周りを進む光を導くための導波路を提供する中空導管を画定する本体を備える光回路が提供され、本体内の中空導管及び/又はさらなる中空導管のうちの1つ以上は、上記で様々に説明したレーザの導波路を提供する。
【0038】
本発明の別の態様によれば、利得媒体と、複数の共振器ミラーと、利得媒体を励起するためのポンプ機構と、導波路とを備えるレーザが提供され、導波路は、利得媒体間で複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つの方へと光を導くために、利得媒体と複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間に配置され、レーザは、導波路を画定する導管を画定する本体と、利得媒体と複数の共振器ミラーとのうちの1つ以上が設置される凹部とを備える。
【0039】
本発明は、方法に関しても説明され得、したがって、本発明の別の態様によれば、2つのキャビティと、キャビティ間に延在する導管であって、導管は、レーザが使用中であるとき、キャビティ間の光のための導波路としての役割を果たす、導管と、の各々のうちの少なくとも一部分を画定する第1の単一の一体型ピース本体を提供することを備えるレーザを製造する方法が提供され、方法は、2つのキャビティのうちの1つにレーザの第1の光学部品を位置付けし、2つのキャビティのうちの第2のものにレーザのさらなる光学部品を位置付けることによってレーザを構成する光学部品を配置することを備える。
【0040】
第1の単一の一体型ピース本体は、機械加工プロセス及び/又は付加製造プロセスを使用して製造され得る。
【0041】
本方法は、第1の単一の一体型ピースを第2の単一の一体型ピースと接合することを含み得、第1及び第2の一体型ピースは、レーザが使用されているときに、光軸の各側の2つの直交平面の周りにレーザ光を閉じ込める導波路としての役割を果たす導管を画定するために協働する。第2の一体型ピースは、キャビティの側面を画定し得る。
【0042】
キャビティは、好ましくは、光学部品を光学的に整列して支持及び保持するように位置決め及び成形される。光学部品は、キャビティの壁に対して直接保持されてもよい。
【0043】
方法は、2つのキャビティのうちの1つにレーザの共振器の第1の端部を提供する第1のミラーを位置付けることと、2つのキャビティのうちの第2のキャビティにレーザの共振器の第2の端部を提供する第2のミラーを位置付けることとを備え得る。
【0044】
別の態様では、上で様々に説明したレーザを製造する方法に加えて、回路が動作しているときに、レーザの共振器から出力されたレーザ光を操作するさらなる光学部品を単一の一体型ピースのさらなるキャビティ内に位置付けることを備える、光回路を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
ここで、図面を参照して本発明を説明する。
【
図1】
図1は、蓋なしの状態で示された中空導波路を備える、レーザの平面概略図である。
【
図2】
図2は、蓋付きの状態で示された
図1のレーザの側面概略断面図である。
【
図3】
図3は、光軸に沿って見た、蓋付きの状態で示された
図1のレーザの端部概略断面図である。
【
図4】
図4は、光学レイアウトを示すための、蓋がない状態のレーザの第2の実施形態の斜視図である。
【
図5】
図5は、蓋付きの状態で示された
図4のレーザの斜視図である。
【
図6】
図6は、複数の中空導波路レーザ及びビーム結合器を備える光回路の概略図であり、レーザ及び結合器回路は、単一の本体に統合される。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1~
図3は、第1の端部共振器ミラー3と第2の端部共振器ミラー4との間に配置されたレーザ利得媒体2を有するレーザ1を図示しており、後者は、それら共振器ミラー3、4の間に形成されるレーザ1の共振器からの出力を提供するように、部分的に反射性である。レーザ1は、利得媒体2と第1の端部共振器ミラー3との間で光を導く第1の中空導波路5と、利得媒体2から第2の端部共振器ミラー4に光を導く第2の中空導波路6と、レーザ1の出力ポートを提供するために出力ミラー4を透過した光を導く第3の中空導波路7とをさらに備える。レーザ利得媒体2は、ポンプ機構8によって励起される。
【0047】
レーザ1は、例えば、Macor又は他の適切な材料の単一の一体型固体ピース(モノブロック)から形成されたシャーシ9を備える。モノブロックは、第1、第2、及び第3の導波路5、6、7の3つの側面を提供する中空チャネルと、ミラー3及び4並びにポンプ機構8を保持するための凹部とを画定するために、例えばCNCプロセスを使用してミリングされる。チャネルの一部はまた、レーザ利得媒体2を保持するための役割を果たす(に設置される)。レーザ1は、矩形断面の導波路5、6、及び7(
図3参照)を提供するチャネルを閉じるために、共振器内の光の光軸X-Xの周りを囲むように、シャーシ9に対向して位置するように配置されるモノブロックとしても形成された蓋10を備える。
【0048】
蓋10は、チャネルの一部を提供するために、シャーシ9のチャネル及び凹部に対応するチャネル及び/又は凹部を提供するような外形を有し得る。
【0049】
チャネルは、他の断面形状を有してもよい。
【0050】
チャネルの幅及び長さの寸法は、フレネル数が、主にTEM00である出力ビーム、すなわち、多くの用途にとって好ましいビーム特性である最低モードと釣り合うように選択される。
【0051】
凹部は、好ましくは、光学部品が所望の光学的に整列して堅固に(すなわち、遊びなく)保持されるように成形され、サイズ決定され、位置決めされる。それにもかかわらず、あまり好ましくはないが、凹部は、部品を手動で整列することを可能にするために光学部品を凹部内で移動させることを可能にするアライメント手段をさらに保持するように適合され得る。
【0052】
ポンプ機構は、選択された利得媒体と共に使用するのに適した任意の既知の形態であってもよい。
【0053】
図4は、光学レイアウトが見えるように蓋なしの状態で示された中空導波路レーザ10の変形実施形態である。レーザ10は、第1の端部共振器ミラー13と第2の端部共振器ミラー14との間に光学的に配置されたレーザ利得結晶12、レーザ利得結晶12を励起するためのポンプ機構15、第1の反射プリズム16、第2のプリズム17、第1の対の整合楔形プリズム(リズレープリズムとしても知られる)18、第2の対の整合楔形プリズム19、偏光ビームスプリッタ20、Qスイッチ21、1/2波長板又は1/4波長板22、及び1/4波長板23を備える。
【0054】
中空導波路は、共振器ミラー13と14との間に延在する蛇行光路を提供するために、(ポンプ15を除く)上記の光学部品の各々の間に延在する。
【0055】
レーザ10は、シャーシ24及び蓋25(
図5参照)を備え、各々が、例えばMacor(登録商標)などのガラスセラミックのモノブロックとして形成される(ただし、ガラスセラミック以外の材料が使用されてもよい)。シャーシ24は、共振器ミラー13、14、プリズム16、17、ビームスプリッタ20、Qスイッチ21、及びプレート23、23が光路と光学的に整列して設置され保持される凹部及び中空導波路の部分を画定するチャネルを提供するようにミリングされる。この実施形態では、レーザ利得結晶12は、シャーシ24に設けられた切り欠き内に位置決めされるが、代わりにシャーシ24を通るチャネル内に保持されてもよい。シャーシ24は、ビームスプリッタ20からのレーザ10の出力ポートを提供するブロードチャネル26も備える。
【0056】
第1のプリズム16又は第2のプリズム17のいずれかに入る光は、3往復その間を反射され(より多くても少なくてもよいが)、毎回別個の中空導波路を通って進む。蛇行する光路は、物理的に短いフットプリントを有するレーザ内に長い共振器長を収容することを可能にする。
【0057】
楔形プリズム18、19、プレート22、23、Qスイッチ21、ビームスプリッタ20の機能は周知であるため、これ以上詳細には説明しない。これらの構成要素の各々は任意であることが理解されよう。
【0058】
好ましくはないが、複数の共振器ミラー間の光路の一部は、例えば、利得媒体と中空導波路との間のギャップの結果として、空き領域を通って延在し得る。
【0059】
図5に示すように、蓋25は、光学部品が延在することができる貫通孔を備え得る。これは任意である。代替の構成では、蓋は、構成要素を完全に収容することができる。
【0060】
図6は、ビーム結合器として機能する光回路30の概略図である。回路30は、2つの中空導波路レーザ31、32を備え、その両方が、単一の一体型ピース(例えば、モノブロック)によって提供されるシャーシ33上に形成される。導波路を提供し、かつ中空導波路レーザ31、32の光学部品を保持するために使用されるチャネル及び凹部に加えて、シャーシ33は、蓋(図示せず)とともに、レーザ出力(TEM
00より高いモードの伝搬を抑制するように形成されなくてもよい)をそれぞれのレーザ31、32からビーム結合器構成要素36へと導く、封止された中空導波路34、35を提供する、さらなるチャネルを画定する。ビーム結合器36からの結合された出力は、単一のビーム軸上の中空導波路37(これもシャーシ33内に形成されたチャネルによって提供される)内に含まれる。ビーム結合器36の形態は、レーザ31、32からの出力の波長が同じであるか異なるかに依存する。いずれにしても、ビーム結合器の形態は、当業者にとって従来通りである。変形実施形態では、2個以上のレーザがシャーシ22上に形成され得ることが理解されよう。
【0061】
代替の光回路は、追加の又は代替の機能を提供するように配置され得ることが理解されよう。例えば、LIDARシステムの光回路を提供するために、集積レーザを含む集積光回路が使用され得る。
【0062】
上記の実施形態は、線形共振器を図示しているが、本体の導管は、リング共振器を提供するために同様に配置されてもよい。
【0063】
あまり好ましくはないが、ブロック形態ではなく、シャーシはプレート状であってもよく、プレート材料は、幅及び長さにわたってほぼ等しい厚さを有し、形状が真空成形ピースに似ているような導管及び凹部を画定するような外形を有する。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
利得媒体と、複数の共振器ミラーと、前記利得媒体を励起するためのポンプ機構と、中空導波路とを備えるレーザであって、前記中空導波路は、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間で光を導くために、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間に配置され、前記中空導波路の断面寸法は、最低次モードを有するビームを優先的に選択する、レーザ。
[C2]
前記中空導波路は、少なくとも部分的に、単一の一体型ピース本体によって画定された1つ以上の導管によって少なくとも部分的に提供される、C1に記載のレーザ。
[C3]
前記単一の一体型ピース本体は、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間で光を導くための複数の中空導波路を提供する1つ以上の導管を画定する、C2に記載のレーザ。
[C4]
前記本体は、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーとの間にある複数の導波路を提供するための複数の導管を画定し、前記レーザは、前記導管の間に光を方向付けるための反射体を備える、C3に記載のレーザ。
[C5]
前記本体は、前記レーザの共振器内で前記光を操作する光学部品を保持するキャビティを画定する、C2、3又は4のいずれか一項に記載のレーザ。
[C6]
前記キャビティは、前記光学部品を光学的に整列して保持するように成形及びサイズ決定される、C5に記載のレーザ。
[C7]
前記本体は、前記利得媒体、複数の共振器ミラー、及び反射体のうちの1つ以上を保持するための1つ以上のキャビティを備える、C2~6のいずれか一項に記載のレーザ。
[C8]
Qスイッチを備え、前記Qスイッチは、前記本体に設けられた前記中空導波路を通って進む光がそれに入射するように、前記本体によって設けられたさらなるキャビティ内に保持される、C2~7のいずれか一項に記載のレーザ。
[C9]
前記導管又は前記本体によって画定されたさらなる導管は、前記レーザから出力されたレーザ光を導くための役割を果たす、C2~8のいずれか一項に記載のレーザ。
[C10]
光回路であって前記光回路の周りを進む光を導くための導波路を提供する中空導管を有する本体を備え、前記本体内の前記中空導管及び/又はさらなる導管のうちの1つ以上は、C2~9のいずれか一項に記載の前記レーザのための前記中空導波路を提供する、光回路。
[C11]
前記本体は、前記導管を提供するチャネルが形成されるモノリスを備える、C10に記載の光回路。
[C12]
利得媒体と、複数の共振器ミラーと、前記利得媒体を励起するためのポンプ機構と、導波路とを備えるレーザであって、前記導波路は、前記利得媒体間で前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つの方へと光を導くために、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーのうちの少なくとも1つとの間に配置され、前記レーザは、前記導波路を画定する導管を画定する本体と、前記利得媒体と前記複数の共振器ミラーとのうちの1つ以上が設置されるキャビティとを備える、レーザ。
[C13]
前記本体は、前記導管の少なくとも一部を提供するチャネルを画定する第1のピースから構成される、C12に記載のレーザ。
[C14]
前記本体は、前記導管を提供するために前記第1のピースと協働する第2のピースから構成される、C13に記載のレーザ。
[C15]
前記第1及び第2のピースは、単一の一体型ピースである、C13又は14に記載のレーザ。
[C16]
レーザを製造する方法であって、前記レーザは、
第1の単一の一体型ピース本体であって、
2つのキャビティと、
前記キャビティ間に延在する導管であって、前記導管は、前記レーザが使用中であるとき、前記キャビティ間の光のための導波路としての役割を果たす、導管と
の各々のうちの少なくとも一部分を画定する、第1の単一の一体型ピース本体
を提供することを備え、
前記方法は、前記2つのキャビティのうちの1つに前記レーザの第1の光学部品を位置付け、および前記2つのキャビティのうちの第2のものに前記レーザのさらなる光学部品を位置付けることを備える、
方法。
[C17]
前記第1の単一の一体型ピース本体は、機械加工プロセス及び/又は付加製造プロセスを使用して製造される、C16に記載の方法。
[C18]
前記第1の単一の一体型ピースを第2の単一の一体型ピースと接合することを備え、前記第1及び第2の一体型ピースは、前記レーザが使用されるときに、光軸の各側の2つの直交平面の周りにレーザ光を閉じ込める導波路としての役割を果たす導管を画定するように協働する、C16又は17に記載の方法。
[C19]
前記第2の一体型ピースは、前記キャビティの少なくとも1つの側面を画定する、C18に記載の方法。
[C20]
前記キャビティは、前記光学部品を光学的に整列して支持及び保持するように位置決め及び成形される、C16~19のいずれか一項に記載の方法。
[C21]
前記光学部品は、前記キャビティの壁に対して直接保持される、C20に記載の方法。
[C22]
前記2つのキャビティのうちの1つに前記レーザの共振器の第1の端部を提供する第1のミラーを位置付けることと、前記2つのキャビティのうちの第2のものに前記レーザの前記共振器の第2の端部を提供する第2のミラーを位置付けることとを備える、C17~21のいずれか一項に記載の方法。
[C23]
光回路を製造する方法であって、C16~22のいずれか一項に記載の前記方法に加えて、前記回路が動作しているときに、前記レーザから出力された光を操作するさらなる光学部品を前記単一の一体型ピースのさらなるキャビティ内に位置付けることを備える、方法。