(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ベンゾイル-クマリン重合性光開始剤
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20220621BHJP
C07D 311/16 20060101ALI20220621BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220621BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220621BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20220621BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220621BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220621BHJP
【FI】
C08F2/50
C07D311/16 101
C07D311/16 CSP
B33Y10/00
B33Y70/00
C09D11/38
C09D201/00
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2020550941
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 IB2018059702
(87)【国際公開番号】W WO2019116176
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-06-10
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516358093
【氏名又は名称】アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】マリカ モローネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツォ ラッツァーノ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ポストル
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ノルチーニ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-501238(JP,A)
【文献】国際公開第2010/133381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-2/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物。
式(I)
【化1】
(ここで、
Gは、任意にアルコキシル化されたポリヒドロキシ化合物の残基であり;
m、n及びpは数であり、m+n+pは2~10の範囲であり;
m及びnは、独立して、1~8の数であり;
pは0~8であり;
xは0~10の整数であり、及びxが0である場合、Aはカルボニル基に直接結合し;
Aは、各々独立して、CHR
3、O、S、NR
4(ここで、R
4はC
1-C
6アルキル基である)を表し;
Yは、各々独立して、直接結合又は炭素数1~14の置換又は未置換の2価の結合基であり;
Zは、各々独立して、アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリルアミド、マレエート、フマレート、イタコネート、ビニルエーテル、アリルエーテル、アリルエステル、マレイミド、ビニルニトリル、及びビニルエステルからなる群から選ばれるラジカル重合性官能基を表し;
R
3は、各々独立して、水素、C
1-C
12アルキル、置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール、C
5-C
6シクロアルキル、C
1-C
12アルキル(SH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHで置換される)、又はC
1-C
12アルコキシを表し;
R
1、R
2は、各々独立して、水素、C
1-C
12アルキル、置換又は未置換のフェニル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、C
5-C
6シクロアルキル、C
1-C
12アルキル(SH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHで置換される)、又はC
1-C
12 アルコキシを表す。)
【請求項2】
m+n+pが2~8の値である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
mが1~6の値である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
nが1~6の数である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
xが0~10の数である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
xが0~6の数である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
AがCHR
3である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
Gが、エトキシル化及び/又はプロポキシル化部分及びその混合物からなるモノマー性及びオリゴマー性ポリオールの中から選ばれるものである請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
R
1及びR
2が、ともに、メチル基である請求項1~8のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
R
3が水素である請求項1~9のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の式(I)の化合物の、紫外光又は青色光誘発光重合プロセスにおける光開始剤としての使用。
【請求項12】
インク、コーティング、又は三次元物体の硬化用の重合プロセスにおける請求項11に記載の使用。
【請求項13】
インクジェット印刷用インクについての重合プロセスにおける請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
少なくとも1の共-開始剤との組み合わせである請求項11、12、又は13に記載の使用。
【請求項15】
共-開始剤がアミンである請求項14に記載の使用。
【請求項16】
共-開始剤が、エチレン系不飽和部分を含んでなるアミンである請求項14に記載の使用。
【請求項17】
請求項1~10のいずれかに記載の式(I)の化合物の増感剤としての使用。
【請求項18】
任意に、少なくとも1の共-開始剤と組み合わされた、請求項1~10のいずれかに記載の少なくとも1の式(I)の化合物を含んでなる紫外光又は青色光光重合性組成物、又は紫外光又は青色光光重合性インク又はコーティング。
【請求項19】
組成物及び光重合性インク又はコーティングを光重合する方法であって、
(I)a.少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量;b. 請求項1~10のいずれかに記載の少なくとも1の式(I)の化合物を含んでなる光重合性組成物を調製する工程、及び
(II)工程(I)の組成物を光源にて光重合する工程
を含んでなる方法。
【請求項20】
365~420 nmの波長で発光するLED光源により光重合を行う請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに、光重合性組成物を光重合する前に、光重合性組成物を基板に塗布する工程を含んでなる請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
光重合性組成物中に、少なくとも1の共-開始剤も存在することを特徴とする請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
請求項19~22のいずれかに記載の方法に従って調製された製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光開始剤及び増感剤として有用な3-ケトクマリン系の一連の新規の重合性化合物、前記化合物を含んでなる組成物、及びそれらを含んでなる光重合法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化性コーティングに使用される光開始剤は、良好な硬化速度、特に、良好は表面硬化性、低い悪臭性、良好な溶解性、及び低い黄変性を有することが必要である。
【0003】
この分野で使用される光照射源の中でも、半導体光源である発光ダイオード(LED)は、従来の中圧水銀ランプと比較すると、作動温度が低く及び平均寿命が非常に長いとの利点のため、過去数年間にわたって、意義深い開発の対象であった。LEDランプは、また、LED装置のサイズが本質的に小さい、それらの寿命が長い、及び例えば、市販のプリントシステムに容易に工作されるとの理由から有利である。
【0004】
インク及びコーティングを光硬化させるためにLEDランプを使用する場合、この光源からの波長に適合するように選ばれた光開始剤系を使用する必要がある。代表的には、水銀ランプは、UV-可視スペクトル200~450 nmの全ての領域において光を放射する多色発光スペクトルを有するが、通常のLEDランプは、領域365~420 nmにおけるシングル発光バンドのみを有する。
【0005】
このように、365~420 nmの領域において吸収性の光開始剤は、増大された能力を有するLEDについての最近の発展を十分に利用することが求められる。さらに、LEDの適用には、通常、高濃度の光活性物質が要求されるため、光開始剤は、光重合性系との高い適合性を有するべきである。チオキサントン、例えば、イソプロピルチオキサントン(ITX)及びその誘導体、及びアシルホスフィンオキシドは、この分野において一般的に使用される光開始剤である。
【0006】
残念なことには、光開始剤及び増感剤の両方として一般的に使用されるチオキサントン誘導体は、露光時、黄変を生じ易く、これによって、限定された安定性を有する分解生成物を形成する。その結果、初期の黄変は、貯蔵時に、予想外にシフトする。特に、イメージング、例えば、インクジェット印刷では、この不安定な黄変挙動は、最終像における画調の制御を全く困難なものとする。
【0007】
他方、アシルホスフィンオキシド開始剤は、中程度の揮発性のアルデヒドタイプの分解生成物を生じ、硬化されたコーティング又は印刷物のバックグラウンドの臭気を発生する。
【0008】
さらに、放射線硬化性組成物が、食品包装、おもちゃ、又は歯科用に使用される場合には、硬化したコーティングから周囲の媒体へ拡散(移行)する光開始剤の残渣又は分解生成物の量は重大問題である。通常、低分子量化合物は、完全には、重合体ネットワークを形成できず、硬化した組成物から抽出又は拡散され易い。従って、硬化した組成物から移行又は抽出される傾向が低減された光開始剤をデザインする必要があり、継続して努力されている。
【0009】
これらの課題を克服する1つのアプローチは、エチレン系不飽和部分を含有する光開始剤を使用することである。例えば、国際公開第2005/014677号(Ciba)及びKR20090108154(LG Chemical Ltd.)は、(メタ)アクリル化官能基を有する3-ケトクマリンの誘導体を開示している。エチレン系不飽和基は、硬化プロセスの間に、光開始剤が高分子構造に組み込まれることを可能にする。残念なことには、特許請求の範囲に記載の化合物は、LEDの波長において必要な反応性を示さない。
【0010】
他のアプローチは、増大された分子サイズの光開始剤を使用することであり、該光開始剤は、硬化した生成物に封鎖される確率が増大され、移行可能な及び/又は抽出可能な分解生成物のレベルの低減が生ずる。
【0011】
この解決策は、国際公開第2014/018826号に開示されている。しかし、これらの光開始剤は、反応性を失う傾向が強い。従って、所望の硬化速度を達成するためには、しばしば、かなりの量のこれら光開始剤が要求され、これにより、粘度を、放射線硬化性組成物の多数の用途、例えば、インクジェット印刷について望ましくないレベルに増大させる。さらに、濃度10~12%以上では、非-アクリレート官能性物質は、可塑化剤として挙動し始めるか、又は硬化されたフィルムの架橋密度を、その機械的特性が害されるポイントまで低減させる。
【0012】
これは、放射線硬化性コーティング系との相互作用が改善された他の光開始剤についての要求がなお存在することを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明者らは、新たに、良好な溶解性、高い反応性、低い黄変性を有し、臭気が極めて少なく、移行又は抽出される傾向が非常に低い硬化生成物を提供する3-ケトクマリン系の一連の新規な重合性化合物を見出した。
【0014】
当業者にとっては、光開始剤がアクリレート及び/又はメタクリレートモノマー及びオリゴマーの架橋を開始するに適していることは公知であり、光開始剤及び/又は紫外光下での光分解によって生成するラジカルは、前記アクリレート及びメタクリレートモノマー及びオリゴマーの重合を開始できるように、いくらかの可動性を有していなければならず、及び拡散できなければならない。このように、より大きい分子量及びサイズの光開始剤は、関連する小分子のものよりも、反応がゆっくりであることが知られている。これは不利益ではあるが、より高分子量の光開始剤に関する特徴、例えば、光開始剤及び/又はその光分解生成物を含んでなる被覆アセンブリーから拡散させるための光開始剤の移行性の欠乏を補うことができる。驚くべきことには、発明者らは、新規の重合性ケトクマリンが、以前に記載された、より小さいケトクマリン光開始剤分子に匹敵する反応性を示すとの知見を得た。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、特に、食品対応放射線硬化性組成物に適する新規の種類の光重合性光開始剤、及び前記光開始剤の製法に関する。
【0016】
本発明の化合物は、ポリヒドロキシ/ポリアルコキシ高分子化合物に基づく高分子コアからなり、前記コアは、3-ケトクマリンに由来し、少なくとも1のエチレン系不飽和結合を含有する1以上の基に化学的に結合している。
【0017】
1態様によれば、本発明の目的は、式(I)の光重合性光開始剤にある。
式(I)
【0018】
【化1】
(ここで、
Gは、任意にアルコキシル化されたポリヒドロキシ化合物の残基であり;
m、n及びpは数であり、m+n+pは2~10の範囲であり;
m及びnは、独立して、1~8の数であり;
pは0~8であり;
xは0~10の整数であり、及びxが0である場合、Aはカルボニル基に直接結合し;
Aは、各々独立して、CHR
3、O、S、NR
4(ここで、R
4はC
1-C
6アルキル基である)を表し;
Yは、各々独立して、直接結合又は炭素数1~14の置換又は未置換の2価の結合基であり;
Zは、各々独立して、アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリルアミド、マレエート、フマレート、イタコネート、ビニルエーテル、アリルエーテル、アリルエステル、マレイミド、ビニルニトリル、及びビニルエステルからなる群から選ばれるラジカル重合性官能基を表し;
R
3は、各々独立して、水素、C
1-C
12アルキル、置換又は未置換のフェニル、アリール、又はヘテロアリール、C
5-C
6シクロアルキル、C
1-C
12アルキル(SH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHで置換される)、又はC
1-C
12アルコキシを表し;
R
1、R
2は、各々独立して、水素、C
1-C
12アルキル、置換又は未置換のフェニル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、C
5-C
6シクロアルキル、C
1-C
12アルキル(SH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHで置換される)、又はC
1-C
12 アルコキシを表す。)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によれば:
様々な具体例において、式(I)におけるm+n+pは、2~8の範囲の値であり、いくつかの具体例では、3~6の範囲の値である。
【0020】
様々な具体例において、式(I)におけるmは、1~6の範囲の値であり、いくつかの具体例では、1~4の範囲の値である。
【0021】
様々な具体例において、式(I)におけるnは、1~6の範囲の値であり、いくつかの具体例では、1~4の範囲の値である。
【0022】
pが0ではない場合、式(I)の化合物は遊離のアルコール基を有する。
【0023】
様々な具体例において、式(I)におけるAはCHR3、Oであるか、又はAはCHR3である。
【0024】
様々な具体例において、式(I)におけるxは0~6の範囲の値であり、好ましくは、xは1~4である。
【0025】
有利な具体例では、式(I)におけるYは、直接結合、2価の結合基(この場合、Yは、任意に置換されたアルキレン基、脂肪族エーテル含有基である)であり、さらに好ましくは、Yが2価の結合基である場合、-(-CH2-CH2-O-)k-CH2-CH2-、-(-CH2-)k-(kは、1、2、3、4、5、又は6の整数である)である。
【0026】
式(I)において、Yは、有利には、直接結合である。
【0027】
様々な具体例において、式(I)におけるZは、アクリレート基、メタクリレート基であり、又は有利には、アクリレート基である。
【0028】
本明細書の式(I)において:
Gは、任意にアルコキシル化されたポリヒドロキシ化合物の残基であり、モノマー性、オリゴマー性、及びポリマー性のポリオール、及びその混合物から選ばれる。
【0029】
好適なモノマー性及びオリゴマー性のポリオールの例は、グリセロール、ジ-グリセロール、トリ-グリセロール、トリエタノールアミン、トリメチロールプロパン、ジ-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ-ペンタエリスリトール、糖アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、及びキシリトール)、その混合物である。
【0030】
ポリマー性のポリオールの例は、アルコキシル化化合物、ポリヒドロキシポリエーテル(脂肪族又は芳香族のいずれか)、ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリアミド、ポリヒドロキシポリイミド、ポリヒドロキシポリカーボネート;スチレン-アリルアルコール共重合体である。
【0031】
本発明の実現には、アルコキシル化化合物が特に好ましい。このようなアルコキシル化化合物の例は、アルコキシル化された、例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化及び/又はブトキシル化された、上述のモノマー性及びオリゴマー性のポリオールである。他の好適な例は、アルコキシル化された直鎖状又は分枝状のポリアミン、及びポリアルコキシル化されたジアミン、例えば、エトキシル化エチレンジアミン及びエトキシル化1,3-プロピレンジアミンである。本発明のアルコキシル化化合物では、アルキレンオキシドに対して反応性の各基は、0~15のアルコキシユニット、好ましくは、1~6のアルコキシユニットを有することができる。
【0032】
様々な具体例において、Gは、モノマー性又はオリゴマー性のポリオールの中から選ばれる。
【0033】
様々な他の具体例において、Gは、エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたモノマー性又はオリゴマー性のポリオールの中から選ばれる。
【0034】
様々な具体例において、Gは、1500以下、より好ましくは、800以下、最も好ましくは、500以下の数平均分子量を有する。
【0035】
様々な具体例において、Gは、グリセロール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化グリセロール、ジ-グリセロール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジ-グリセロール、トリメチロールプロパン、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパン、ジ-トリメチロールプロパン、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジ-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ペンタエリスリトール、ジ-ペンタエリスリトール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ジ-ペンタエリスリトール、ソルビトール、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ソルビトール、トリエタノールアミン、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリエタノールアミンの中から選ばれる。
【0036】
様々な具体例において、R1、R2は、各々独立して、C1-C12アルキル基であり、有利には、C1-C4アルキル基である。
【0037】
本明細書において、用語「アルキル」又は「アルキル基」は、別に表示されないところでは、1~12の炭素原子を含有する直鎖又は分枝状のアルキル鎖を意味し、アルキル基における炭素原子の各個数について、全ての可能な変形を含み、すなわち、炭素原子3個については、n-プロピル及びイソプロピル;炭素原子4個については、n-ブチル、イソブチル、及び3級-ブチル;炭素原子5個については、n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピル、及び2-メチル-ブチル、等を含む。
【0038】
用語「シクロアルキル」又は「シクロアルキル基」は、別に表示されないところでは、5~6の炭素原子を含有する脂肪族環を意味し、シクロペンチル、シクロヘキシルである。
【0039】
用語「アリール」又は「アリール基」は、例えば、置換又は未置換のフェニル基、置換又は未置換のナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、フルオレニル基、等を意味する。
【0040】
用語「ヘテロアリール」又は「ヘテロアリール基」は、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラン、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、インドール、キノリン、イソキノリン、キサンテン、カルバゾール、アクリジン、インドリン、ジュロリジン、等を意味する。
【0041】
用語「置換された」は、基が1以上の置換基を有することを意味し、前記置換基は、ハロゲン原子、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ又はアリールチオ基、複素環基であり、さらに詳しくは、メチル、エチル、イソプロピル、3級-ブチル、フェニル、トリフルオロメチル、シアノ、アセチル、エトキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、シクロヘキシルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、アセチルアミノ、ピペリジノ、ピロリジル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、フェノキシ、ヒドロキシル、アセトキシ、-PO3H、メチルチオ、エチルチオ、i-プロピルチオ、n-プロピルチオ、フェニルチオ、メルカプト、アセチルチオ、チオシアノ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、ジメチルスルホニル、スルホネート基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメチルスタニル、フリル、チエニル、ピリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル基、等である。
【0042】
様々な具体例によれば、R1及びR2は、同一のC1-C4アルキル、有利には、メチルである。
【0043】
様々な具体例によれば、OR2は5位にある。
【0044】
様々な具体例によれば、Aは4位(カルボニル基に対してパラ位)にある。
【0045】
様々な具体例によれば、R3は水素である。
【0046】
式(I)によって表される化合物は、当業者に公知の一般的方法、例えば、下記の多工程反応に従って調製される。
【0047】
【0048】
【化3】
(IV) (V) (I)
(ここで、ALKは、アルキル基、例えば、メチル又はエチルであり、Gは上記のとおりであり、及びREAは、Cl又はCH
2=CH-のような反応基である。)
【0049】
式(II)及び(III)の化合物は、公知の方法に従って調製される。
【0050】
本発明の代表的な化合物の合成に関する詳細は、本明細書の実験の項に報告する。
【0051】
上記式(I)の化合物の製法は、本発明の更なる主題である。しかし、他の合成ルートも使用できる。
【0052】
式(I)の化合物は光開始剤として有用である。式(I)の化合物の、光重合プロセスにおける光開始剤としての使用は、式(I)の化合物を光開始剤として使用することを含んでなる光硬化法とともに、本発明の更なる主題である。
【0053】
「光開始剤」について、ここでは、好適な波長を有する光への露光によって重合を開始できるラジカル(単独で、又は共-開始剤との組み合わせとして)を生成できる官能基を有する分子を意味する。
【0054】
式(I)の化合物は、特に、放射線源への露光によって光重合されるインク、コーティング、及び三次元物体(いわゆる、「三次元印刷」)に適した光重合性組成物において有用である。
【0055】
それらの使用について、式(I)の化合物は、少なくとも1のエチレン系不飽和化合物及び少なくとも1の式(I)の化合物を含んでなる光重合性組成物中に含まれる。
【0056】
用語「エチレン系不飽和化合物」は、ラジカル重合を受けることができる、少なくとも1のエチレン系不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー、又はその混合物を意味する。また、異なった不飽和度を有するモノマー、オリゴマー、及びプレポリマーの組み合わせも使用可能である。
【0057】
本発明の具現化に適するモノマーは、当分野で一般的に使用されるものであり、例えば、ビニルエーテル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、モノ-及びポリ-官能性アリルエーテル、例えば、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、スチレン及びα-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコール、グリコール、ポリヒドロキシル化合物(例えば、ペンタエリスリトール又はトリメチロールプロパン)とのエステル、ビニルアルコールとアクリル酸又は脂肪族酸とのエステル、フマル酸及びマレイン酸の誘導体の中から選ばれる。
【0058】
本発明について好適なオリゴマー又はプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル官能性、マレイン官能性、又はフマル官能性を有するポリエーテルが含まれる。
【0059】
光重合性インクにおいて一般的に使用されるモノマー、オリゴマー、及びプレポリマーが好ましい。これらの化合物は、当業者には公知であり、例えば、国際公開第2014/063997号に記載されている。
【0060】
本発明の光硬化性組成物は、好ましくは、少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%及び式(I)の化合物0.1~35質量%を含んでなる。
【0061】
さらに好ましくは、本発明の光硬化性組成物は、少なくとも1のエチレン系不飽和化合物70~98.9質量%及び式(I)の化合物0.1~20質量%、より好ましくは、0.2~15質量%を含んでなる。
【0062】
用語「質量%」を使用する際、値が、組成物の総質量に対する質量パーセントであることを意味する。
【0063】
上述の化合物以外に、当分野で通常使用され、当業者に知られている他の成分を、本発明の光重合性組成物に添加することができる。例えば、熱安定剤、光酸化安定剤、抗酸化剤、フィラー、分散剤、着色料及び/又は不透明化剤、及び一般的に使用される他の添加剤である。本発明の光重合性組成物の他の成分は、化学的に不活性な成分として存在する非-光重合性ポリマー(例えば、ニトロセルロース、ポリアクリル酸エステル、ポリオレフィン、等)である。
【0064】
本発明の光重合性組成物は、重合速度を増大させる水素ドナーとして作用する分子である共-開始剤を便利に含むことができる。共-開始剤は当分野において知られており、代表的には、アルコール、チオール、アミン、又はヘテロ原子に近接する炭素に結合する利用可能な水素を有するエーテルである。このような共-開始剤は、一般に、0.2~15質量%、好ましくは、0.2~8質量%の量で存在する。好適な共-開始剤としては、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール-脂肪族、複素環、オリゴマー性又はポリマー性アミンが含まれるが、これらに限定されない。これらは、1級、2級、又は3級-アミン、例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジ-シクロヘキシルアミン、N-フェニルグリシン、トリエチルアミン、フェニル-ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノ安息香酸のエステル、ミヒラーケトン(4,4'-ビス-ジメチルアミノベンゾフェノン)及び対応する誘導体である。
【0065】
アミン共-開始剤としては、アミン-変性アクリレート化合物を使用でき、このようなアミン-変性アクリレートの例としては、米国特許第3,844,916号、欧州特許第280222号、米国特許第5,482,649号、米国特許第5,734,002号、又は米国特許出願公開第20130012611号に記載された、1級又は2級-アミンとの反応によって変性されたアクリレートが含まれる。
【0066】
好ましい共-開始剤は、Esacure A198(ビス-N,N-[4-ジメチルアミノベンゾイル)オキシエチレン-1-イル]-メチルアミン)、Esacure EDB(エチル-4-ジメチルアミノベンゾアート)、及びPhotomer 4250(いずれもIGM Resins B.V.によって市販されている)、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾアート、及びN-フェニルグリシンである。
【0067】
本発明の光重合性組成物は、当分野において一般的に使用される他の光開始剤を便利に含むことができる。
【0068】
本発明の光重合性組成物に含まれる他の光開始剤、共-開始剤、及び更なる成分は、例えば、上述の国際公開第2014/063997号に記載されている。
【0069】
本発明の有利な態様によれば、式(I)の化合物は、光重合性組成物における増感性光開始剤の増感剤として使用される。
【0070】
「増感剤」又は「増感作用剤」について、ここでは、エネルギー移動プロセスによって、光開始剤単独では活性ではない波長において、光開始剤を活性化させる分子を意味する。
【0071】
この場合、光重合性組成物は、少なくとも1の光重合性化合物70~98.9質量%、増感剤としての少なくとも1の式(I)の化合物0.1~10質量%、及び少なくとも1の増感性光開始剤、例えば、ケトスルホン又はα-アミノケトン1~15質量%、及び任意に、共-開始剤0.2~8質量%を含んでなることができる。
【0072】
好ましい増感性光開始剤は、1-[4-[(4-ベンゾイル-フェニル)-チオ]-フェニル]-2-メチル,2-[(4-メチル-フェニル)-スルホニル]-プロパン-1-オン(Esacure 1001、IGM Resins B.V.製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び(2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン)である。
【0073】
式(I)の化合物は、透明の光重合性組成物、及び不透明の又は着色された組成物の両方において機能し、特に、光重合性インクの調製に有用である。本発明の光開始剤及び組成物は、特に、インクジェット印刷用の光重合性インクの調製に適する。
【0074】
この理由により、本発明の光重合性組成物は、さらに、着色料0.01~30質量%を含有できる。
【0075】
本発明の光重合性インクにおいて使用される着色料は、染料、顔料、又はその組み合わせである。有機及び/又は無機の顔料が使用される。着色料は、好ましくは、顔料又はポリマー性染料、最も好ましくは、顔料である。顔料は、当業者に公知の他の一般的な顔料とともに、ブラック、ホワイト、シアン、マジェンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、その混合、等である。
【0076】
有機顔料の例としては、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、及びキレートアゾ顔料;多環式顔料、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、及びキノフタロン顔料;キレート染料、例えば、塩基性キレート染料、及び酸性キレート染料;レーキ染料、例えば、塩基性レーキ染料、及び酸性レーキ染料;及びニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、及び蛍光顔料が含まれる。
【0077】
光重合性ホワイトインクについて、ホワイト着色料は、好ましくは、インク組成物の3~30質量%、より好ましくは、5~25質量%の量で存在する。通常、他の着色料は、本発明の光重合性インク中に、0.01~10質量%の範囲、好ましくは0.1~5質量%の範囲で存在する。
【0078】
インクジェット印刷用の着色料が特に好ましい。
【0079】
主成分に加えて、光重合性インクは、他の特別な成分、例えば、共-開始剤及び他の光開始剤、例えば、先の段落に記載されたもの及び同量の、当業者に公知の分散剤、界面活性剤、及び他の添加剤も含有できる。前記成分は、例えば、国際公開第2014/063997号に記載されている。
【0080】
上記の組成物及びインクは、本発明の主題でもある。
【0081】
他の態様によれば、光重合性組成物及びインクを光硬化させる方法は、本発明の更なる主題であり、該方法は、
I)a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは、70~98.9質量%;
b)上記のように定義された少なくとも1の上記式(I)の化合物0.1~35質量%、好ましくは、0.1~20質量%、さらに好ましくは、0.2~15質量%
を含んでなる光重合性組成物を調製する工程;
II)工程I)の組成物を光源にて光重合する工程
を含んでなる。
【0082】
従って、多数の多種の光源を使用することが可能であり、光源は、約200~約600 nmの波長で発光する。点光源及び平板状ラジエーター(ランプカーペット)は、いずれも、好適である。例としては、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯、好適な位置で金属ハロゲン化物にてドープされた中圧、高圧、及び低圧の水銀アークラジエーター(メタルハライドランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、スーパーアクチニック蛍光管、蛍光ランプ、アルゴン白熱ランプ、フラッシュランプ、写真用フラッドライトランプ、発光ダイオード(LED)、電子ビーム、X線、及びレーザーがある。ランプと、露光される本発明による基板との間の距離は、使用目的及びランプの種類及び強さによって変動でき、例えば、1~150 cmである。
【0083】
様々な具体例において、光は紫外光及び青色光である。
【0084】
365~420 nm、好ましくは365 nm、385 nm、及び395 nmの波長で発光するLED光源が特に好ましい。
【0085】
任意に、前記光重合性組成物は、前記光源による光重合工程を行う前に、基板に塗布される。基板の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルテレフタレート、ナイロン、紙、ボード、木材、金属及びガラス、当業者に公知の他の基板が含まれるが、これらに限定されない。塗布方法の例としては、フレキソグラフィー、グラビア、スクリーン、インクジェット、リソグラフィー、又は凹版による印刷、スプレー、エアレススプレー、ロールコート、フレキソグラフィー、グラビア、カーテン、カスケード、スロット、ブラシ、及び巻線ローラーによるコーティングが含まれるが、これらに限定されない。前記光重合性組成物を塗布する他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0086】
前記光重合性組成物は、既にコーティングされた又はプリントされた層を含んでなる基板上にも塗布される。前記光重合性組成物は、前記光源による光重合後に、印刷又はコーティングに適する1以上の組成物にて重ね刷り又は上塗りされてもよい。
【0087】
前記コーティング又は印刷法によって、前記光重合性組成物を基前記板に塗布し、前記光源によって光重合し、得られる物品を、さらにコーティング又は印刷によって加工し、又は加工することなく得られる物品は、本発明の更なる主題である。
【0088】
好ましい具体例によれば、光重合プロセスにおいて、式(I)の化合物は、上述の好ましい具体例において定義されたとおりである。
【0089】
実験の項において説明されるように、驚くべきことには、発明者らは、式(I)の化合物が、水銀ランプ及びLEDランプとともに、透明な系及び着色された系の両方において、同量で使用される際、国際公開第2005/014677号の実施例A2に記載の化合物よりも優れた反応性を示したとの知見を得た。さらに、式(I)の化合物は、それらの親単一分子(すなわち、重合されていない)とほぼ同等の反応性であり、一方、文献に記載された全ての重合性化合物は、実施例において見られるように、常に、30~50%の範囲の反応性の低下を示す。
【0090】
また、式(I)の化合物は、365~420 nmの吸収領域を示し(従って、LEDランプによって光開始剤として使用される)、黄変を引き起こさず、良好な光化学反応性及び溶解性を有し、悪臭の分解生成物を生成せず、健康及び環境に対して安全であるため、従来技術の欠点を克服することが観察された。
【0091】
実験の項
[実施例]
【実施例1】
【0092】
【化4】
窒素雰囲気下、0℃において撹拌しながら、ジクロロメタン250 ml中に、3-フェニルプロピオン酸エチル30.0 g(168.3 mモル)及び3-クロロ-3-オキソプロピオン酸メチル24.0 g(175.8 mモル)を含有する溶液に、塩化アルミニウム67.0 g(502.5 mモル)を少量ずつ添加した。室温において、4時間撹拌した後、反応系を氷水に注ぎ、得られた混合物を、30分間、撹拌下に維持した。ついで、有機相を分離し、水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄色の油状物37.7 gを得た(収率80%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.22 (t, 3H), 2.65 (t, 2H), 3.05 (t, 2H), 3.75 (s, 3H), 3.98 (s, 2H), 4.10 (q, 2H), 7.30 (d, 2H), 7.85 (d, 2H)
【実施例2】
【0093】
【化5】
エタノール100 ml中に4,6-ジメトキシ-2-ヒドロキシ-ベンズアルデヒド22.3 g(122.4 mモル)を含有する溶液に、実施例1の油状物34.1 g(122.5 mモル)及びピペリジン0.86 g(10.1 mモル)を添加した。還流下、混合物を、2時間撹拌し、ついで、室温に冷却した。濾過によって反応生成物を回収して、白色-黄色の固体25.0 gを得た(収率50%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.23 (t, 3H), 2.65 (t, 2H), 3.10 (t, 2H), 3.89 (m, 6H), 4.12 (q, 2H), 6.30 (d, 1H), 6.45 (d, 1H), 7.30 (d, 2H), 7.79 (d, 2H), 8.40 (s, 1H)
【実施例3】
【0094】
【化6】
(m=1.2、p=0.6、n=1.2、G=
【0095】
【化7】
(a+b+c=約8.5))
150℃において撹拌しながら、実施例2の固体6.00 g(14.62 mモル)及びRolfor GL/609(エトキシル化グリセロール、Lamberti S.p.A.)5.55 g(ヒドロキシル数=370/g)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物3.05 g(14.61 mモル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、8時間撹拌し、蒸留によってエタノールを除去した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄-褐色の油状物10.74 gを得た(収率99%)。生成物を、次の工程において、直接使用した。
窒素雰囲気下、0℃において撹拌しながら、ジクロロメタン30ml中に、先の工程で調製した化合物1.20 g及びトリエチルアミン0.50 g(4.95 mモル)を含有する溶液に、塩化アクリロイル0.43 g(4.75 mモル)を1滴ずつ添加した。室温において、2時間撹拌した後、反応が完了し、1M炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。有機相を分離し、水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって、溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)によって精製して、黄-褐色の油状物1.00 gを得た(収率75%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.65 (m, 10H), 3.00 (m, 10H), 3.50-3.75 (m, 128H), 3.90 (s, 30H), 4.20 (m, 10H), 4.30 (m, 10H), 5.82 (d, 5H), 6.15 (m, 5H), 6.30 (s, 5H), 6.40 (d, 5H), 6.45 (s, 5H), 7.30 (d, 10H), 7.75 (d, 10H), 8.4 (m, 5H).
【実施例4】
【0096】
【化8】
150℃において撹拌しながら、実施例2の固体5.00 g(12.18 mモル)及びグリセロール30.00 g(325.73 mモル)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物2.54 g(12.16 mモル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、28時間撹拌し、蒸留によってエタノールを除去した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタン/水(1/1)200 mlに懸濁し、撹拌下に、1時間維持した。ついで、有機層を分離し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(酢酸エチル)によって精製して、オフホワイトの固体3.35 gを得た(収率60%)。生成物を、次の工程において、直接使用した。
窒素雰囲気下、0℃において撹拌しながら、ジクロロメタン30ml中に、先の工程で調製した固体2.00 g(4.38 mモル)及びトリエチルアミン0.95 g(9.39 mモル)を含有する溶液に、塩化アクリロイル0.83 g(9.17 mモル)を1滴ずつ添加した。室温において、1時間撹拌した後、反応が完了し、水を添加した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって、溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(酢酸エチル)によって精製して、黄色の油状物0.95 gを得た(収率38%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.69 (t, 2H), 3.00 (t, 2H), 3.90 (m, 6H), 4.22-4.29 (m, 2H), 4.33-4.38 (m, 2H), 5.35 (m, 1H), 5.85 (m, 2H), 6.09 (dd, 1H), 6.12 (dd, 1H), 6.30 (d, 1H), 6.39 (dd, 1H), 6.43 (dd, 1H), 6.45 (d, 1H), 7.30 (d, 2H), 7.78 (d, 2H), 8.40 (s, 1H).
【実施例5】
【0097】
【化9】
(m=2.0、p=0.7、n=1.3、G=
【0098】
【化10】
(a+b+c+d=約5))
150℃において撹拌しながら、実施例2の固体2.00 g(4.87 mモル)及びPolyol 4640(エトキシル化ペンタエリスリトール、Perstorp Specialty Chemicals A.B.)0.85 g(ヒドロキシル数=370/g)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物0.51 g(2.44モル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、8時間撹拌し、蒸留によってエタノールを除去した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄-褐色の油状物2.40 gを得た(収率91%)。生成物を、次の工程において、直接使用した。
窒素雰囲気下、0℃において撹拌しながら、ジクロロメタン80ml中に、先の工程で調製した油状物2.40 g及びトリエチルアミン1.46 g(14.46 mモル)を含有する溶液に、塩化アクリロイル1.24 g(13.70 mモル)を1滴ずつ添加した。室温において、2時間撹拌した後、反応が完了し、1M炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。有機相を分離し、水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって、溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)によって精製して、黄-褐色の油状物2.50 gを得た(収率95%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.65 (m, 12H), 3.00 (m, 12H), 3.35-3.75 (m, 50H), 3.90 (m, 36H), 4.10-4.30 (m, 20H), 5.80 (m, 4H), 6.10 (m, 4H), 6.30 (s, 6H), 6.35 (m, 4H), 6.45 (m, 6H), 7.30 (m, 12H), 7.75 (m, 12H), 8.40 (m, 6H).
【実施例6】
【0099】
【化11】
(m=4.0、p=0.3、n=1.7、G=
【0100】
【化12】
(a+b+c+d+e+f=約21))
150℃において撹拌しながら、実施例2の固体2.00 g(4.87 mモル)及びSorbilene RE/20(エトキシル化ソルビトール、Lamberti S.p.A.)1.36 g(ヒドロキシル数=300/g)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物0.51 g(2.44モル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、8時間撹拌し、蒸留によってエタノールを除去した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄-褐色の油状物3.10 gを得た(収率99%)。生成物を、次の工程において、直接使用した。
窒素雰囲気下、0℃において撹拌しながら、ジクロロメタン60ml中に、先の工程で調製した油状物3.10 g及びトリエチルアミン0.59 g(5.84 mモル)を含有する溶液に、塩化アクリロイル0.51 g(5.63 mモル)を1滴ずつ添加した。室温において、2時間撹拌した後、反応が完了し、1M炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。有機相を分離し、水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって、溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)によって精製して、黄-褐色の油状物1.26 gを得た(収率39%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.65 (m, 14H), 3.00 (m, 14H), 3.50-3.80 (m, 170H), 3.90 (m, 42H), 4.20 (m, 14H), 4.30 (m, 6H), 5.80 (d, 3H), 6.10 (m, 3H), 6.30 (s, 7H), 6.35-6.45 (m, 10H), 7.30 (d, 14H), 7.75 (m, 14H), 8.40 (m, 7H).
【実施例7】
【0101】
【化13】
(m=1.0、p=1.5、n=1.5、G=
【0102】
【化14】
(a+b+c+d=約5))
150℃において撹拌しながら、実施例2の固体2.00 g(4.87 mモル)及びPolyol 4640(エトキシル化ペンタエリスリトール、Perstorp Specialty Chemicals A.B.)1.70 g(ヒドロキシル数=642/g)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物0.51 g(2.44モル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、8時間撹拌し、蒸留によってエタノールを除去した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄-褐色の油状物3.00 gを得た(収率86%)。生成物を、次の工程において、直接使用した。
窒素雰囲気下、0℃において撹拌しながら、ジクロロメタン80ml中に、先の工程で調製した化合物2.70 g及びトリエチルアミン2.46 g(24.36 mモル)を含有する溶液に、塩化アクリロイル2.10 g(23.20 mモル)を1滴ずつ添加した。室温において、2時間撹拌した後、反応が完了し、1M炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。有機相を分離し、水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって、溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)によって精製して、黄-褐色の油状物2.20 gを得た(収率66%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.65 (m, 8H), 3.00 (m, 8H), 3.35-3.75 (m, 46H), 3.90 (m, 24H), 4.10-4.30 (m, 20H), 5.80 (d, 6H), 6.10 (m, 6H), 6.30 (m, 4H), 6.35-6.45 (m, 10H), 7.30 (m, 8H), 7.75 (m, 8H), 8.40 (m, 4H)
【実施例8】
【0103】
【化15】
(m=1.5、p=0.7、n=0.8、G=
【0104】
【化16】
(a+b+c=約1))
100℃において撹拌しながら、p-キシレン5ml中に、実施例2の固体2.00 g(4.87 mモル)及びトリエタノールアミンエトキシレート1 EO/OH(Sigma Aldrichから購入)0.91 g(3.25 mモル)を含む混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物1.36 g(6.51 mモル)を、少量ずつ添加した。混合物を、還流下、8時間撹拌し、蒸留によってエタノールを除去した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタンに希釈し、濾過した。濾液を1M炭酸水素ナトリウム水溶液にて、ついで、水にて洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄-褐色の油状物2.50 gを得た(収率93%)。生成物を、次の工程において、直接使用した。
窒素雰囲気下、0℃において撹拌しながら、ジクロロメタン80ml中に、先の工程で調製した化合物2.5 g及びトリエチルアミン1.29 g(12.77 mモル)を含有する溶液に、塩化アクリロイル1.10 g(12.15 mモル)を1滴ずつ添加した。室温において、2時間撹拌した後、反応が完了し、1M炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。有機相を分離し、水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって、溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)によって精製して、黄-褐色の油状物2.50 gを得た(収率91%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.60-3.05 (m, 14H), 3.43-3.71 (m, 12H), 3.90 (s, 12H), 4.09-4.32 (m, 6H), 5.8 (m, 1H), 6.02-6.19 (m, 1H), 6.30 (m, 2H), 6.31-6.40 (m, 1H), 6.45 (m, 2H), 7.30 (m, 4H), 7.78 (m, 4H), 8.40 (m, 2H)
【実施例9】
【0105】
【化17】
(m=1.5、p=0、n=1.5、G=
【0106】
【化18】
)
150℃において、撹拌しながら、実施例2の固体6.00 g(14.62 mモル)及びRolfor GL/609(エトキシル化グリセロール、Lamberti S.p.A.)5.55 g(ヒドロキシル数370/g)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物3.05 g(14.61 mモル)を、少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、8時間撹拌し、蒸留によってエタノールを除去した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄-褐色の油状物10.74 gを得た(収率99%)。生成物を、次の工程において、直接使用した。
2-(ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート3.42 g(18.37 mモル)及び酢酸エチル3.5mlの混合物に、先の工程で調製した化合物3.50 gを添加した。BHT 0.030 g(0.136 mモル)及びトリフルオロ酢酸0.016 g(0.140 mモル)を添加し、混合物を70℃に加熱した。70℃において、8時間、反応を続けた。イオン交換体の活性化:Lewatit(商標名)M600 MB25gを1N水酸化ナトリウム水溶液75mlにて処理し、2時間撹拌した。イオン交換体を濾過によって単離し、水にて数回洗浄し、恒量となるまで乾燥した。反応混合物を室温まで冷却させ、活性化したイオン交換体0.40 gを添加した。混合物を、室温において、1時間撹拌した。濾過によってイオン交換体を除去し、酢酸エチルを、減圧下で除去して、黄-褐色の油状物6.90 gを得た(収率100%)。
【実施例10】
【0107】
比較例
本発明の3-ケトクマリンを、Omnipol 3TX(50%の2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートに希釈したアクリル酸2-[2-(1-{2-{1-[2-(2-アクリロイルオキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシメチル}-3-(1-{2-[2-(1-メチレンアリルオキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エトキシ)-2-[2-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-アセチルアミノ]-プロポキシ}-エトキシ)-エトキシ]-エチルエステル、IGM Resins B.V.)(COMP-1)、及び国際公開第2005/014677号、実施例2に記載のようにして調製した従来技術の3-ケトクマリン(COMP-2)と比較した。
【0108】
[実施例10.1]
反応性テスト
【0109】
[実施例10.1.1]
透明の製剤
Ebecryl 605及びEbecryl 350(Allnex)の混合物(質量比99.5:0.5)に、光開始剤及び共-開始剤Esacure EDB(IGM Resins B.V.)を、それぞれ、濃度3質量%で溶解して、テスト用の光重合性組成物を調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、2つの異なる線源:
1)サンプルから25mmの距離及び角度30°で配置したLED光源(400 nm)(表1);2)サンプルから65mmの距離及び角度30°で配置した水銀ランプ(160 W)(表2)
に露出した。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを取得し、アクリル系二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピークの面積の経時的減少を、IRソフトウエアを使用して測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
400 nmにおける結果(経時の重合度(%)として表示)を表1に示し、水銀ランプでの結果を表2に示す。
【0110】
【0111】
【0112】
[実施例10.1.2]
シアンインクジェットインク
インクジェット印刷用のシアンインクに、光開始剤及び共-開始剤(Esacure EDB)を、それぞれ、濃度5.0質量%で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、2つの異なる光源:
1)サンプルから25mmの距離及び30°の角度で配置したLED光源(400 nm)(表3)
2)サンプルから65mmの距離及び30°の角度で配置した水銀ランプ(160 W)(表4)
に露出した。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを取得し、アクリル系二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピークの面積の経時的減少を、IRソフトウエアを使用して測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
400 nmにおける結果(経時の重合度(%)として表示)を表3に示し、水銀ランプでの結果を表4に示す。
【0113】
【0114】
【表4】
これらのテストは、式(I)の化合物が対照(COMP-1及びCOMP-2)よりも反応性であることを裏付ける。
【0115】
[実施例10.1.3]
重合性化合物対単一分子の反応性テスト
実施例10.1.1及び10.1.2に報告したように、光重合性組成物を調製した。
ついで、これらを、FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置き、サンプルから25mmの距離及び30°の角度で配置したLED光源(400 nm)に露出した(表5)。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを取得し、アクリル系二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピークの面積の経時的減少を、IRソフトウエアを使用して測定した。これは重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
400 nmにおける結果(経時の重合度(%)として表示)を表5に示す。
対照化合物として、Omnipol 3TX(IGM Resins B.V.)(COMP-1)、Omnirad ITX(2-イソプロピルチオキサントン、IGM Resins B.V.)(COMP-3)、及ヨーロッパ特許第2909243号の実施例10に記載のように調製した従来技術の3-ケトクマリン(COMP-4)を使用した。
【0116】
【0117】
上記の結果から、実施例6の新規の光重合性ケトクマリンは、対照化合物(COMP-4)とほぼ同様の反応性であり、実際には、反応性は、透明系において12%及び着色系において5%とわずかに減少した。これは、文献には、光開始剤の構造にアクリル化部分が存在する場合、反応性が非常に減少すること(例として、Omnirad ITX(COMP-3)を、Omnipol 3TX(COMP-1)(Omnirad ITXのアクリル化バージョン)と比較した)が常に記載されているため、全く予期しないことであり、表5から、反応性の減少が、透明系では35%であり、着色系では48%であること、すなわち、実施例6の重合性化合物について観察された現象の3~ほぼ10倍であることが評価された。
【0118】
[実施例10.1.4]
抽出性テスト
表6に従って、放射線硬化性組成物(INV-1、INV-2、及びINV-3)を調製した。質量%は、放射線硬化性組成物の総質量に基づく。
【0119】
【表6】
VEEA=2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート(Nippon Shokubai Co, Ltd);Photomers:IGM Resins BVから入手
【0120】
バーコーター及び10μmワイヤーバーを使用して、放射線硬化性組成物INV-1、INV-2、及びINV-3を、PE基板に被覆した。Hgランプ(240 W)を備えたFusion DRSE-120 Q/QNL、及びLEDランプ395 nm(16 W/cm2)を備えたPhoseonを使用して、各被覆サンプルを硬化した。表7に、硬化速度を示す。
【0121】
【0122】
INV-1、INV-2、及びINV-3のサンプル7.068 cm2を50mlのビーカーに入れ、超音波を30分間使用して、アセトニトリル4.5mlにて抽出した。抽出液を5mlメスフラスコに移した。サンプルを少量のアセトニトリルにて2回すすぎ、すすぎ溶媒を、容積が5mlとなるように、5mlメスフラスコに移した。溶液を徹底して混合し、0.45μmフィルターで濾過し、各サンプル10μlをHPLCに注入した。
既知濃度の開始剤の対照サンプルと比較して測定し、抽出サンプルと同じ条件で溶離した。
各サンプルについて、総コーティング質量10g/m2を想定した。
HPLCトレースでは、実施例3及び実施例9の残留物は検出されなかった。これは、本発明の好適な具体例による光重合性光開始剤が、完全に、ネットワークに組み込まれることを例証している。
【0123】
上記の実験は、重合性光開始剤は、対応する非-重合性ケトクマリンと比べて、顕著な活性度の減少を提供するとのこれまで文献に記載されていたもの[例えば、Omnirad ITX(IGM Resins BV)(MW 254.3 g/モル)と比較したチオキサントンOmnipol 3TX(IGM Resins BV)(MW 946.07 g/モル)についての活性度の減少(LEDランプ(400 nm)下での着色系において48%である)を参照する]に対して、上記実施例6の重合性ケトクマリン(MW>1000ドルトン)は、同じ条件下において、わずか5%の減少を示す(実施例10.1.3参照)ことを実証した。
本発明の光開始剤の多官能性は、グラム(g)当たりの官能度を比較的高く維持し、比較的小さいコア分子量は、物質に、光硬化性組成物、特に、光硬化性コーティング組成物における高い溶解性を付与する。
さらに、少なくとも1のエチレン系不飽和基の存在は、新規の化合物が光硬化性組成物の他のモノマーと共重合されることを保証し、これにより、新規の化合物が移動し及び/又は抽出されることを防止する。