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▶ プファイファー・ヴァキューム・テクノロジー・アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】偏心装置を備えた固定レール
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20220621BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
F04B37/16 E
F04D19/04 G
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021035562
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2021162017
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】20167263
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20183561
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520415627
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・テクノロジー・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ローゼ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シュヴァイクヘーファー
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019046(WO,A1)
【文献】特開2010-261465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空システム(10)の第1の部品のフランジ部分(14)を真空システム(10)の第2の部品の表面部分(18)に固定するための固定レール(22)であって、
フランジ部分(14)の表面部分(18)とは反対の側と協働するために形成されたガイド部分(26)と、
フランジ部分(14)が、ガイド部分(26)と表面部分(18)の間に導入可能又は挿入可能であるように、固定レール(22)を第2の真空部品に固定するために形成された固定部分(24)と、
ガイド部分(26)内に配置され、クランプ状態と解放状態の間で回転可能で、少なくとも1つの作用面(48)を介して、そのクランプ状態でフランジ部分(14)に表面部分(18)の方向に向いた保持力を作用させる又はフランジ部分のリフティングを発生させ、その解放状態でフランジ部分(14)を解放するために設置された、回転可能に支承された偏心装置(28)を備えるものにおいて、
偏心装置(28)が、少なくとも1つの偏心部分(44)を有し、この偏心部分の横断面(46)が、偏心装置(28)の縦軸(E)に対して垂直な平面内で偏心して形成及び/又は配置され、偏心部分(44)の曲率が、偏心部分(44)の周方向に変化すること、を特徴とする固定レール(22)。
【請求項2】
偏心装置(28)及び/又はガイド部分(26)が、ガイド部分(26)と表面部分(18)の間のフランジ部分(14)の挿入運動をクランプ状態への偏心装置(28)の回転に変換可能にする手段を備えること、を特徴とする請求項に記載の固定レール(22)
【請求項3】
偏心装置(28)及び/又は偏心部分(44)の縦軸(E)が、少なくとも実質的に固定レール(22)及び/又はガイド部分(26)の縦軸(B)に対して平行に配置されていること、又は、偏心装置(28)及び/又は偏心部分(44)の縦軸(E)が、少なくとも実質的に固定レール(22)及び/又はガイド部分(26)の縦軸(B)に対して垂直に配置されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の固定レール(22)。
【請求項4】
偏心部分(44)が、偏心装置(28)の縦軸(E)の方向に少なくとも実質的に固定レール(22)及び/又はガイド部分(26)の全長にわたって延在する及び/又は一貫して形成されていること、を特徴とする請求項1~いずれか1項に記載の固定レール(22)。
【請求項5】
偏心装置(28)が、離間して配置された少なくとも2つの偏心部分(44)を備えること、を特徴とする請求項1~いずれか1項に記載の固定レール(22)。
【請求項6】
偏心装置(28)が、少なくとも1つの係止要素を備え、この係止要素が、クランプ状態での偏心部分(44)の終端位置及び/又は解放状態での偏心部分(44)の終端位置を規定すること、及び/又は、偏心部分(44)の位置又は終端位置が、センサ装置によって検出可能であること、を特徴とする請求項1~いずれか1項に記載の固定レール(22)。
【請求項7】
少なくとも1つの偏心部分(44)の形状が、偏心装置(28)の縦方向に変化すること、を特徴とする請求項いずれか1項に記載の固定レール(22)。
【請求項8】
偏心装置(28)が、複数部材から形成されていること、を特徴とする請求項1~いずれか1項に記載の固定レール(22)。
【請求項9】
少なくとも1つの偏心部分(44)の形状は、クランプ状態で得られるクランプ作用がセルフロック式であるように選択されていること、を特徴とする請求項いずれか1項に記載の固定レール(22)。
【請求項10】
固定レール(22)が、少なくとも2つの偏心装置(28)を備えこれら偏心装置の縦軸(E)が、互いに平行に配置されていること、を特徴とする請求項1~いずれか1項に記載の固定レール(22)。
【請求項11】
ガイド部分(26)のフランジ部分(14)と協働するガイド面(32)が、少なくとも部分的に斜面(56)及び/又は曲率を備えること、を特徴とする請求項1~10いずれか1項に記載の固定レール(22)。
【請求項12】
真空システム(10)の第1の部品を第2の部品に固定するための固定システム(20)であって部品の一方が真空ポンプ(12)であり、
第1の部品に配置されたフランジ部分(14)と、
第2の部品に配置されかつフランジ部分(14)の接触面と当接可能な表面部分(18)と、
第2の部品に固定された請求項1~11いずれか1項に記載された少なくとも1つの固定レール(22)を有する、固定システム(20)。
【請求項13】
請求項12に記載の固定システム(20)によって互いに連結された第1の真空部品と第2の真空部品を備えた真空装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空システムの第1の部品のフランジ部分を真空システムの第2の部品の表面部分に固定するための固定レールに関する。
【背景技術】
【0002】
このような固定レールは、基本的に周知であり、例えば真空ポンプ、特にターボ分子ポンプを真空チャンバに固定するために使用される。周知の固定レールは、しばしば、真空ポンプの組立て及び分解をするために種々の組立てステップを正しい順序で実行すべきであり、加えて場合によっては、真空ポンプへの十分なアクセスを得るために、真空システムのべつの部品を取り外す必要があるとの欠点を備える。加えて、周知の固定レールは、しばしば、1個の真空ポンプを収容するために設計されているに過ぎず、固定レールに対して付加的に更に別の保持部品、例えば保持クランプ又はネジが、真空ポンプの固定のために必要である。これは、サービス又は検査の際及び修理作業の際に、周知のレールシステムの操作し易さに影響を及ぼし、レール固定の可変性を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、高い操作性及び柔軟な使用の可能性によって際立っている真空システム用の固定レールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決するため、本発明により、請求項1の特徴を備えた固定レールが、著しく具体的には、真空システムの第1の部品のフランジ部分を真空システムの第2の部品の表面部分に固定するための固定レールが設けられている。固定レールは、フランジ部分の表面部分とは反対の側と協働するために形成されたガイド部分と、加えて、フランジ部分が、ガイド部分と表面部分の間に導入可能、特に挿入可能であるように、固定レールを第2の真空部品に固定するために形成された固定部分を備える。更に、本発明による固定レールは、クランプ状態と解放状態の間で回転可能で、少なくとも1つの作用面を介して、そのクランプ状態でフランジ部分に表面部分の方向に向いた保持力の作用を加え、その解放状態でフランジ部分を解放するために設置された、回転可能に支承された偏心装置を有する。特に、クランプによって、フランジ部分のリフティングが発生される。
【0005】
即ち、基本的に、本発明の根底にあるアイデアは、真空システムの第1の部品のフランジ部分を真空システムの第2の部品の表面部分に押し付けるために、固定レールに回転可能に一体化された偏心装置しか必要とされないことである。別の保持クランプ、ネジ又は同様の部品は、絶対に必要とならない。従って、固定レールの操作は、非常に快適であり、特に、真空システムの第1の部品を組み立てるためには、解放状態にある固定レールのガイド部分上へ第1の部品のフランジ部分を挿入し、次いで偏心装置をクランプ状態に回転することしか必要ない。これにより、真空システムの取付けスペースは、有利にはよりコンパクトに形成することができ、これにより、直接的なコストの利点が得られる。加えて、フランジ部分は、確実に固定レール内に保持され、これにより、エラーの場合、例えばロータクラッシュ時でも、真空システムの高い操作信頼性が得られる。
【0006】
フランジ部分として形成することもできる表面部分は、基本的に真空チャンバ又は真空ポンプへの開口を備えることができる。加えて、フランジ部分及び/又は表面部分には、特に開口の領域にシール手段を設けることができ、これらシール手段は、クランプ状態で、フランジ部分及び表面部分のシール式当接を保証する。フランジ部分は、有利には少なくともほぼ長方形に形成することができる-この実施形態は、特にスプリットフローの場合に有利である-か、又は、直線的に延在する少なくとも1つの部分を備えることができ、この部分は、固定レール内にガイドすることができる。これは、特に単純かつ確実な固定のため、並びに真空システムの実現可能な吸引能力に関して有利である。
【0007】
クランプ状態で、フランジ部分に作用する保持力は、特に、偏心装置により生じるリフティング運動によって発生され、このリフティング運動の際には、フランジ部分を表面部分の方向に押すために、偏心装置の作用面が、フランジ部分と直接的に又は間接的に協働する。間接的な力の導入時には、偏心装置の回転により生じるリフティング運動は、例えば、特に偏心装置と結合された中間要素に伝達し、この中間要素からフランジ部分に伝達することができる。これにより、例えば、リフティングは、拡大することができる。
【0008】
真空システムの第1と第2の部品は、例えば、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプと、真空チャンバ又はレシピエントであり得る。この場合、選択的に、真空ポンプ又は真空チャンバがフランジ部分を備え、それぞれ他方の部品が表面部分を備えることができ、その部分に、更に、固定レールを取り付けることができる。フランジ部分を備える第1の部品が、ターボ分子ポンプである場合、固定レールへの挿入方向は、ロータ軸に対して平行又は垂直に配置されていることができる。
【0009】
例えば、固定レールの配置は、表面部分に、互いに平行に延在する2つの固定レールが付設され、これら固定レールが、その間に挿入されたフランジ部分を、対向する2つの側から保持し、固定レールがクランプ状態にある時に、固定レールを2つの側で表面部分に押し付け、そうして、フランジ部分の傾動を片側に押し付けることにより排除し、表面部分への緊密な当接を可能にするように、選択することができる。基本的に、複数の固定レールを1つのレールシステムに接合することができる。
【0010】
固定レールは、その固定部分により第2の部品に、特に表面部分に固定すること、例えば、解離可能に表面部分とネジ止めすること又は表面部分に溶接すること、ができる。固定部分又は固定レール全体が、表面部分と一体的に結合され、固定レールが、ある程度、真空システムの第2の部品の一部として表面部分に成形され得ることも、考えられる。
【0011】
フランジ部分の位置決めは、固定レールに沿って挿入方向に柔軟に行なうことができるので、異なった寸法の真空部品を同じ固定レールに挿入することができる。更に、表面部分とフランジ部分に存在する開口を場合によっては互いに適合させるため、表面部分と固定レールの間に、アダプタ部材を導入することができる。このようなアダプタ部材は、振動減衰及び/又は断熱及び/又は電気絶縁をするように形成することができる。固定レールも、このような特性を備える要素を備えることができる。
【0012】
特に、真空システムの複数の、特にさまざまな部品を、同じ固定レールに挿入し、この固定レールと固定することができ、挿入は、例えば、固定レールの異なる終端領域から行なうことができる。従って、真空システムの形成時の多大な柔軟性を達成することができる。
【0013】
例えば、複数の真空部品が1つ又は複数の固定レールにより相並んで固定されている、特に複数の真空ポンプが固定レールにより装置内に固定されている大きい真空装置の場合、快適な操作コンセプトが、個々の真空部品の単純かつ簡単な整備又は交換を可能にする。これは、特に整備に手間のかかる真空装置の場合には特に有利である。
【0014】
偏心装置を解放状態からクランプ状態に回転させるため及びその逆のため、偏心装置は、操作装置を備えることができ、この操作装置は、例えば偏心装置の終端領域に、特に偏心装置の縦軸に関する終端領域に、配置することができる。特に単純に、これは、次に偏心装置のその縦軸を中心とした回転運動を導入するために使用される工具用の収容装置として、例えば六角レンチもしくは四角レンチ用のカップリングとして、形成することができる。操作装置が、偏心装置に不動に設置することができるレバー装置として形成されている場合、操作は、更に快適である。この場合、例えば偏心装置のクランプ状態又は解放状態に対応するレバー終端位置は、係止点を備えることができる。
【0015】
固定レールのオペレータに偏心装置の終端位置又は偏心装置の重要な位置、例えば係止点又は終点を知らせるため、又は、一般に偏心装置の回転角を示すため、操作装置及び/又はガイド装置は、相応のマーキングを、例えば矢印又は目盛を備えることができる。
【0016】
偏心装置の異なる側からの偏心装置の操作を可能にするため、偏心装置の各終端部分は、操作装置を備えることができる。
【0017】
しかしながら、基本的に、偏心装置にとっては、唯一の操作装置で十分であるので、組立て又は解体をするためには片側から操作装置へのアクセスが必要であるに過ぎず、これにより、サービス又は修理の場合のアクセスは、快適に可能であるが、真空システムの必要な取付けスペースは、有利にはコンパクトに形成することができる。
【0018】
偏心装置の回転は、固定レール内の偏心装置の回転可能な支承によって可能にされる。この目的のため、偏心装置は、固定レール内で全面的に滑動するように配置すること、又は、転がり軸受、例えば玉軸受、ころ軸受又は針状ころ軸受によって支承すること、ができる。固定レールからの偏心装置の軸方向の移動又は除去に対する保証は、ブロック要素、例えばネジのネジヘッド、ワッシャ等によって行なうことができるが、このブロック要素は、特に、更に偏心装置の回転を可能にするために、偏心装置の終端部分の領域に十分な遊びを備えて配置することができる。
【0019】
本発明の有利な形成は、従属請求項、明細書及び図面からわかる。
【0020】
1つの実施形態によれば、偏心装置が、固定レールのガイド部分内に配置されている。ガイド面は、表面部分に対して平行に配置することができ、例えば固定部分によって表面部分に固定すること及び表面部分から離間させることができる。ガイド部分は、ガイド面を備え、このガイド面上で、フランジ部分は、固定レールへの挿入時にその縦軸に沿って滑動する。従って、ガイド部分内に配置された偏心装置は、クランプ状態でフランジ部分に表面部分の方向の力を作用させることができる。
【0021】
偏心装置は、少なくとも1つの偏心部分を有することができ、この偏心部分の断面は、偏心装置の縦軸に対して垂直な平面内で偏心して形成及び/又は配置され、特に、偏心部分の曲率は、偏心部分の周方向に変化する。特に、少なくとも1つの作用面が、少なくとも部分的に偏心部分に配置されている。
【0022】
例えば、偏心形状は、横断面内で、互いに接線方向に延在する2つ以上の異なる半径から生成すること、又は、少なくとも部分的に、少なくとも実質的に連続的に変化する半径を備えること、もできる。横断面面は、自由な形状を備えた適当な面であり得る。
【0023】
偏心装置は、特に、作用面が解放状態でガイド部分のガイド面のところで終わるか、少なくとも作用面がフランジ部分の側でガイド面又はガイド部分から突出しないようになっているように形成することができる。
【0024】
表面部分の方向の保持力を発生させるため、偏心装置は、作用面がクランプ状態でフランジ部分の側でガイド面から上昇し、従ってフランジ部分のリフティング運動を発生させるようにすることができる。従って、偏心部分の形状は、固定機能の運動学、即ちフランジ部分の解放及び保持のために決定的である。
【0025】
有利な実施形態によれば、偏心装置及び/又はガイド部分は、ガイド部分と表面部分の間のフランジ部分の挿入運動をクランプ状態への偏心装置の回転に変換可能にする手段を備えることができる。このような手段は、この手段がフランジ部分の挿入時にフランジ部分に対するリフティング力及び/又は保持力を自動的に発生させることによって、固定レールのセルフロックをするために使用される。従って、フランジ部分を備える真空部品が確実に固定レール内に固定され、付加的な行為を行なう必要はないことを保証することができる。フランジ部分の持上げ又はクランプは、例えば、偏心装置のセルフロックまで、又は、表面部分にフランジ部分を確実に固定するために必要な偏心装置の回転角が得られるまで、行なうことができる。選択的に、このような手段により、クランプ状態までの偏心装置の完全なセルフロックを行なうのではなく、操作装置によってクランプ状態を達成するまで発生させる必要がある偏心装置の回転角を減少させることができるようの予備ロックを行なうことができる。
【0026】
偏心装置の回転への挿入運動の変換は、全く異なる構造的な方法で、噛合い係合及び/又は摩擦係合を介して達成することができる。例えば、手段は、プッシャ、特にガイド部分のガイド面から突出するプッシャ等を有することができ、このプッシャは、偏心装置上に配置され、フランジ部分の挿入時にフランジ部分によって把持及び連行されるので、これにより、偏心装置が回転される。この場合、フランジ部分自体は、例えばプッシャ用のガイド、特に、プッシャが係合し、フランジの挿入の継続時に場合によっては滑動するようにプッシャをガイドすることができる凹部、を備えることもできる。
【0027】
選択的又は付加的に、偏心装置は、作用面が解放状態でガイド部分のガイド面のところで終わるのではなく、むしろ少なくとも部分的にガイド面から突出するように形成することができる。従って、フランジ部分の挿入時、作用面自体を、同時にプッシャとして使用することができるので、フランジ部分の挿入が、偏心装置の回転を生じさせる。これは、偏心装置の縦軸が挿入方向に対して垂直に配置されている場合に、構造的に特に単純に実現可能である。選択的又は付加的に、偏心装置の回転は、フランジ部分との摩擦係合によって発生させることもできる。関与する表面は、その間に作用する摩擦を高めるために相応に処理及び/又は構造化することができる。
【0028】
偏心装置及び/又は偏心部分の縦軸は、少なくとも実質的に固定レール及び/又はガイド部分の縦軸に対して平行に配置することができる。この場合、有利には、固定レールの縦軸の方向は、フランジ部分の挿入方向にも一致する。従って、偏心装置の具体的な形成に応じて、固定レールの縦方向長さに沿った1つ、全て又は複数の位置で、フランジ部分に対する保持力を発生させることができ、固定レールに対して平行に配置された偏心装置の操作は、固定レールの端面、即ちフランジ部分用の挿入側、に配置された唯一の操作装置によって可能である。
【0029】
別の実施形態によれば、偏心装置及び/又は偏心部分の縦軸は、少なくとも実質的に固定レール及び/又はガイド部分の縦軸に対して垂直に配置されている。従って、偏心装置及び/又は偏心部分は、固定レールの縦方向長さに沿った適当な箇所に配置することが、例えばフランジ部分用の挿入領域に直接的に配置することも、固定レールの反対側の終端に配置することも、できる。
【0030】
基本的に、偏心装置及び/又は偏心部分の縦軸と、固定レール及び/又はガイド部分は、互いに任意の角度で配置することができ、これにより、空間的な条件への最適な適合が可能である。
【0031】
偏心部分は、偏心装置の縦軸の方向に少なくとも実質的に固定レール及び/又はガイド部分の全長にわたって延在する及び/又は一貫して形成することができる。偏心装置が固定レールに沿って延在する場合、レール全長にわたって1つ又は複数のフランジ部分用の保持力を提供するために、1つの偏心装置で十分である。偏心装置が固定レールに対して横に延在する場合、導入されるフランジの少なくともほぼ全幅にわたる、即ち挿入方向に対して横のフランジの長さにわたる、適合が可能である。
【0032】
加えて、偏心装置は、離間して配置された少なくとも2つの偏心部分を備えることができる。例えば、偏心装置は、これら偏心部分とその間に位置する結合部分を部分的にだけ備える一部材の偏心軸を有することができる。このように中断された又は段を付けた偏心軸により、有利には、偏心装置の回転時の摩擦を低減することができるが、それにもかかわらず偏心装置の長さにわたって分配されるようにフランジ部分に対する保持力を発生させることができる。
【0033】
基本的に、一方又は両方の偏心部分又は場合によっては偏心軸全体は、例えば真鍮、青銅、鋼、特殊鋼、ニッケルメッキ鋼、硬化鋼またはアルミニウムから成る。更なる最適化のため、一方又は両方の偏心部分又は場合によっては偏心軸全体は、摩擦低減及び/又は耐摩耗性の材料から製造すること又はそのような材料でコーティングすることができる。
【0034】
別の実施形態によれば、偏心装置が、少なくとも1つの係止要素を備え、この係止要素が、クランプ状態での偏心部分の終端位置及び/又は解放状態での偏心部分の終端位置を規定する。係止要素は、特に偏心部分の偏心形状によって、及び、例えば接線方向に横断面面に成形された係止面として形成することができる。1つのストッパ又は複数のストッパを設けることができ、この又はこれらストッパにより、固定レールの部品に対して相対的なフランジ部分の所定の位置又は偏心装置の所定の位置が規定される。
【0035】
選択的又は付加的に、偏心部分の位置、特に終端位置又はストッパへの到達は、センサ装置によって検出可能であり得る。特に、偏心装置の基本的な固定状態は、適当なセンサによって電子的に照会することができる。例えば、この目的で、光バリア、接触検出センサ、回転角センサ又は別の周知のセンサ装置を使用することができる。これは、特に、固定レールによって互いに結合された多数の真空部品を備える大きい真空装置との関連で、設備全体の集中監視が可能になるとの利点をもたらす。従って、例えば特に半導体プロセス又はコーティングプロセスにおける過酷なプロセス条件に基づいて整備に手間のかかる真空装置の場合、高い設備安全性及び信頼性を達成することができる。
【0036】
偏心装置の回転角は、制限することができるので、例えば偏心装置の「過回転」が防止される。またこれは、偏心形状の形成によって規定することができる。特に、解離状態とクランプ状態の間の偏心装置の最大回転角は、360°未満、特に270°未満又は225°未満であり得る。加えて、緩和された条件用のクランプ状態及び/又は解放状態の終端位置は、特に操作装置の領域内に取り付けられたマーキングによって指示することができる。
【0037】
偏心装置の過回転は、選択的又は付加的に、偏心装置、ガイド部分及び/又は固定部分に配置されかつ偏心部分の終端位置を規定することができる幾何学的なストッパによって防止することもできる。ストッパへの到達は、適当なセンサ装置によって検出可能であり得る。
【0038】
更に、少なくとも1つの偏心部分の形状は、偏心装置の縦方向に変化することができる。例えば、偏心部分は、偏心装置の終端部分からの回転運動の導入時に場合によっては生じる偏心部分の縦方向長さに沿った捩じれが相殺されるように、縦軸に沿って角度付けすることができる。従って、加えるべきトルクは、軽減すること又は角度に依存して制御することができる。換言すれば、偏心部分の形成は、部分の回転時に生じる捩じれが補償され、そうして、偏心部分に沿ってどこでも同じ押付け力が発生されるように、軸方向に変化することができる。これは、意味的に2つ以上の偏心部分を備えた偏心装置に対しても当て嵌まる。
【0039】
偏心装置は、複数部材から形成することができる。偏心装置は、複数部材から形成された偏心軸を備えることができ、この偏心軸は、特に偏心器標準部品から構成することができる。加えて、偏心装置が特に螺旋状の軸を有し、この軸に、1つ以上の偏心部分が噛合い係合式又は摩擦係合式に取り付けられていることも考えられる。従って、特に安価な製造が可能である。
【0040】
加えて、偏心装置は、周知の偏心ネジによって特に安価に形成することができる。この場合、偏心ネジ自体を偏心装置として使用することができ、特に、偏心ネジのネジヘッドは、偏心装置の作用面を備えることができる。選択的又は付加的に、偏心ネジは、作用面又は少なくとも作用面の一部を形成する付加的な偏心部分でもってネジ止めすることができる。この場合、例えば最も単純な場合は、偏心ネジに偏心して位置する雌ネジを備えた丸棒であり得る。付加的にネジ固定された偏心部分の別の形成も可能である。
【0041】
フランジ部分を特に確実に固定レール内に固定するため、少なくとも1つの偏心部分の形状は、クランプ状態で得られるクランプ作用がセルフロック式であるように選択することができる。セルフロックは、例えば、特に偏心装置とフランジ部分又は偏心装置とガイド部分の間の摩擦係合によって得ることができる。摩擦係合は、有利には、ローレット加工された又は他の方法で表面を構造化した接触面の使用によって向上させることができる。このように噛合い係合又は摩擦係合を発生させる構造は、フランジ部分を優先方向に所定の終端位置に移送するために寄与することができる。即ち、構造は、フランジ部分が偏心装置の回転によって(支持をして)引っ張られるように形成することができる。
【0042】
別の実施形態によれば、固定レールは、少なくとも2つの偏心装置を備えることができ、これら偏心装置の縦軸は、特に互いに平行に配置されている。これは、一般的に可能であるが、複数の偏心装置の使用は、偏心装置が挿入方向に対して横及び/又は固定レールの縦軸に対して横に配置されている場合は特に重要性を有する。従って、この場合は、複数の偏心装置によって、フランジ部分が固定レール内に配置されたその全長にわたって十分均等に表面部分まで持ち上げられることを保証することができる。複数の偏心装置は、挿入領域内に並びに固定レールの対向する終端に又はアクセス性に応じて中央のレール領域に配置することができる。
【0043】
ガイド部分のフランジ部分と協働するガイド面は、少なくとも部分的に斜面及び/又は曲率を備えることができる。例えば、ガイド面に配置された斜面は、固定レール内への挿入時、フランジ部分を、斜面の終端に配置された平坦部上に押し上げるために使用されるが、この平坦部は、フランジ部分を、平坦部の領域内で既に表面部分又は表面部分に配置されたシールに押し付けている。この場合、挿入領域に配置された偏心装置は、フランジ部分を完全かつ封止的に表面部分まで持ち上げるために十分であり得る。固定レールの挿入領域に配置された斜面は、固定レールへのフランジ部分の導入を容易化するためのガイドとして使用することができる。適当な曲率は、それぞれ同じ効果を生じさせることができる。
【0044】
基本的に、確実なシール作用を達成するために、少なくとも部分的にフランジ部分と表面部分の間に配置された1つ又は複数のシールを設け得ることに注意すべきである。
【0045】
加えて、固定レール、例えばガイド面は、固定レールの縦方向、即ち挿入方向のフランジ部分の位置決めを容易化し、特に、フランジ部分が、極端に、例えば固定レールの終端を越えて押し込まれることを防止するストッパを備えることができる。
【0046】
本発明の別の態様は、真空システムの第1の部品を真空システムの第2の部品に固定するための固定システムであって、特に、部品の一方が真空ポンプである、固定システムに関する。固定曽ステムは、第1の部品に配置されたフランジ部分と、第2の部品に配置されかつフランジ部分の接触面と当接可能な表面部分と、第2の部品に固定された少なくとも1つの固定レールを有する。
【0047】
特に、固定システムは、2つ以上の第1の真空部品と2つ以上の真空部品が少なくとも1つの固定レールによって相並んで固定され得るために形成されている。例えば、それぞれ1つのフランジ部分を備える複数の真空ポンプを、1つの固定レールに又は1つ又は複数の第2の真空部品に固定された複数の固定レールから成る1つの装置に「挿入」することができる。
【0048】
本発明のもう1つの別の態様は、前記のような固定システムによって互いに連結された第1の真空部品と第2の真空部品を備えた真空装置に関する。
【0049】
以下で、添付図に関連づけた可能な実施例により全く模範的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】固定レールによって互いに連結された真空ポンプと真空チャンバを備えた真空装置の正面図
図2A】第1の実施形態による一貫した偏心部分を備えた固定レールの斜視図
図2B図2Aの偏心部分の操作装置の詳細図
図2C図2Aの固定レールの側面図
図2D図2Aの固定レールの正面図と平面図
図2E】偏心装置が解放状態にある図2Aの固定レールの斜視正面図
図2F】偏心装置がクランプ状態にある図2Aの固定レールの斜視正面図
図3A】第2の実施形態による離間して配置された3つの偏心部分を備えた固定レールの斜視図
図3B図3Aの偏心部分の操作装置の詳細図
図3C図3Aの固定レールの側面図
図3D図3Aの固定レールの正面図と平面図
図3E】偏心装置が解放状態にある図3Aの固定レールの斜視正面図
図3F】偏心装置のクランプ状態にある図3Aの固定レールの斜視正面図
図4A】その縦軸が固定レールの縦軸に対して垂直に延在する偏心部分を備えた第3の実施形態による固定レールに斜視図
図4B図4Aの固定レールの偏心装置の詳細図
図4C図4Aの固定レールの側面図
図4D図4Aの固定レールの正面図と平面図
図4E】偏心装置の操作装置を備えた図4Aの固定レールの斜視図
図5A】その縦軸がそれぞれ固定レールの縦軸に対して垂直に延在する第1と第2の偏心部分を備えた第4の実施形多による固定レールの斜視図
図5B図5Aの第1と第2の偏心部分の操作装置の詳細図
図6A】第5の実施形態による固定レール用の偏心部分の横断面図
図6B】第6の実施形態による固定レール用の偏心部分の横断面図
図7A】第7の実施形態による固定レール用の偏心ネジの斜視図
図7B図7Aの偏心ネジを備えた固定レールの平面図
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、固定システム20によって互いに結合された第1の真空部品、ここでは真空ポンプ、具体的にはターボ分子ポンプ12と第2の真空部品、ここでは真空チャンバ16を有する真空装置10を示す。
【0052】
ターボ分子ポンプ12は、そのロータ軸Rが図面平面の対して垂直に延在するロータ装置を有する。ポンプ上面に、ロータを収容するスペースへの複数の開口を備える(示さず)長方形のポンプフランジ14が設けられている。これら開口のそれぞれは、シール手段を備え、ターボ分子ポンプ12のロータ室をレシピエント、ここでは真空チャンバ16と接続するために設けられている。
【0053】
ターボ分子ポンプ12を真空チャンバ16に固定するための固定システム20は、一方でターボ分子ポンプ12のフランジ部分14を有し、他方で真空チャンバ16の表面部分18を有し、この表面部分も、ターボ分子ポンプ12のロータ室と連絡するための1つ又は複数の開口を備え(示さず)、フランジ部分14の接触面と当接可能である。加えて、固定システム20は、第1の固定レール22と第2の固定レール22’を有する。
【0054】
第1と第2の固定レール22及び22’は、それぞれ1つのガイド部分26,26’を備え、このガイド部分は、フランジ部分14の表面部分18とは反対の側と協働し、組立て時にフランジ部分14を固定レール22,22’内にガイドする。固定部分24,24’により、固定レール22,22’は、真空チャンバ16に固定されている。この場合、固定レール22,22’は、ほぼL字状に形成され、ガイド部分26,26’と固定部分24,24’は、実質的に互いに垂直に整向されている。従って、ターボ分子ポンプ12のフランジ部分14は、固定レール22,22’のガイド部分26,26’と真空チャンバ16の表面部分18との間に挿入及び収容することができる。
【0055】
加えて、固定レール22,22’のそれぞれは、回転可能に支承された偏心装置28,28’を備え、この偏心装置は、それぞれ固定レール22,22’のガイド部分26,26’内に配置されている。図1には、偏心装置28,28’が、そのクランプ状体で示され、このクランプ状態で、偏心装置は、フランジ部分14に、表面部分18の方に向いた力を作用させ、フランジ部分14と表面部分18を封止的に締め付ける。クランプ状態で、偏心装置28,28’のそれぞれ1つの作用面48(例えば図2E,2F参照)は、フランジ部分14の方向にガイド部分26,26’から突出し、フランジ部分14を持ち上げる。
【0056】
回転により、偏心装置28,28’は、解放状態に移行可能であり、この解放状態では、上に向かって作用するフランジ部分14への保持力がなくなり、フランジ部分が開放される。これは、図2~6の詳細な図面によって明らかにされる。
【0057】
図2Aは、表面部分18(示さず)に固定するための固定部分24を備えた固定レール22の第1の実施形態を示す。固定部分は、ここでは孔30を備え、これら孔によって固定レール22は、表面部分18と不動にネジ止めすることができる。ガイド部分26は、ガイド面32を備え、このガイド面は、固定レール22の取付け状態で表面部分18に対して平行に離間して配置されている。固定レール22の端面34から、例えばターボ分子ポンプ12のフランジ部分14は、固定レール22内へ導入することができ、この場合、フランジ部分は、ガイド面32によってガイドされる。
【0058】
固定レール22の端面34に対向する終端部分(レール22の縦軸Bに沿って見て)に、固定レールは、フランジ部分14が固定レール22の終端を越えて押し込まれることを防止する軸方向のストッパ36を備える。端面34の領域内で、即ちフランジ部分14の挿入側から、固定部分14は、固定レール22内へのフランジ部分14の導入を容易化する面取り38を備える。
【0059】
偏心装置28は、ガイド部分26に埋設され、このガイド部分内に回転可能に支承されている。偏心装置22の縦軸E(図2D参照)は、第1の実施形態では、固定レール22とガイド部分26の縦軸Bに対して平行に配置されている。端面34の領域に、偏心装置は、操作装置40を備え、この操作装置は、ここでは六角開口として形成されている(図2B)。これに対応する工具により、偏心装置28は、操作装置40によってクランプ状態と解放状態の間を回転することができ、その逆も可能であり、偏心装置22の関連する終端位置は、操作し易さの向上のために0と1でマーキングされている。示した実施形態で、操作装置40及び固定レール22全体の操作は、フランジ部分14の挿入側から可能である。
【0060】
固定レール22からの偏心装置28の軸方向の引出しに対する保証として、図2Cは、偏心装置28の規定通りの回転が可能である程に遊びを許す固定ネジ42を示す。
【0061】
図2A~2Fの第1の実施形態によれば、偏心装置22は、作用面48を備えた唯一の偏心部分44を備える。偏心部分44は、偏心装置22の縦軸Eの方向(図2D)に固定レール22及びガイド部分26の全長にわたって延在し、一貫して又は中断なく形成されている。これにより、クランプ状態で、フランジ部分14は、その全長にわたって均等に保持力を作用させられ、従って最適に(示してない)表面部分18に押し付けることができる。同時に、固定レール22内でのフランジ部分14の任意位置決めが可能であり、固定及び/又は結合部のシールに関する欠点はない。
【0062】
図2E及び2Fで、それぞれ、偏心部分44の横断面形状又は横断面面46が認められる(縦軸Eに対して垂直な面内)。横断面面46は、明らかに偏心して形成及び配置され、横断面46の偏心形状は、その曲率が周方向に変化することを特徴とする。部分的に、偏心形状は、互いに(連続的に)移行する異なった半径を備える(模範的に図6Bも参照)。他の部分では更にまた、偏心形状は係止要素を備え、この係止要素は、それぞれ偏心装置22の終端位置を規定する。第1の終端面50が解放状態(図2E)を規定し、それほど顕著でない第2の終端面52がクランプ状態(図2F参照)を規定する。
【0063】
図2Eに示した解放状態で、係止面50は、ガイド面32と共に、フランジ部分14が力の作用なしで滑動できる平坦な面を構成する。図2Fに示したクランプ状態で、偏心装置28の作用面48は、ガイド面32から突出するので、フランジ部分14は、上に向かって、即ち示してない表面部分18の方向に保持力を作用され、表面部分18に押し付けられる。クランプ状態で得られるクランプ作用は、適当な偏心形状によってセルフロック式であり得る。
【0064】
図3A~3Fは、第2の実施形態による固定レール22を示す。この固定レールは、多くの部分で、第1の実施形態(図2A~2F)と一致するが、特に、偏心装置28は、異なる形成を備える。第2の実施形態による偏心装置28は、互いに離間して配置された複数の偏心部分44を備える(図3E,3F)。従って、ガイド部分26内に支承された偏心装置28の回転時、摩擦は、明らかに僅かであるが、偏心装置28の別の特性は、少なくとも機能的には実質的に普遍に維持されたままである。クランプ過程中、保持力の導入も一貫して行なわれるが、それは、作用面48がセグメント化されているからである。その終端で、部分44は、面48に移行する。
【0065】
示した実施形態で、偏心装置28は、離間した偏心部分44であるにも関わらず、一部材で形成されている。しかしながら、基本的に、このような偏心装置28は、種々の偏心器標準部品が例えばネジ山によって接合されることによって、複数部材で形成することもでき、偏心部分44として使用される要素と、その間に位置する結合要素が交互に接合される。
【0066】
図4A~4Eは、その縦軸Eが固定レール22の縦軸Bに対して垂直に配置された偏心装置28を備えた第3の実施形態による固定レール22を示す。偏心装置28は、1つの偏心部分44を備え、この偏心部分は、偏心装置28の全長にわたってかつ実質的に偏心装置28に沿った固定レールの全幅にわたって延在する。
【0067】
操作装置40は、第1及び第2の実施形態に一致する。操作装置は、端面34にではなく、固定レール22の縦方向側面54からアクセス可能な(図4E)偏心装置28の終端部分に配置されている。
【0068】
第3の実施形態による偏心装置28は、そのクランプ状態で、端面24の領域、即ち固定レール22の挿入領域だけで、挿入されたフランジ部分14に作用する上に向いた保持力を発生させる。加えて、表面部分18にフランジ部分14を効果的に押し付けるために、固定レール22は、軸方向のストッパ36の領域に、斜面56と平坦部58を備える。解放状態にある固定レール22内へのフランジ部分14の挿入時、フランジ部分14は、斜面56によって持ち上げられ、最後に平坦部58に担がれる。斜面56と平坦部58は、フランジ部分14が平坦部58の領域で既に効果的に表面部分18に押し付けられるように寸法設定されている。
【0069】
クランプ状態への偏心装置28の回転は、固定レール22の挿入領域で、偏心装置28のガイド面32から突出する作用面48によるフランジ部分14に対するリフティング運動を生じさせる。そうして、フランジ部分が表面部分18に確実に固定される。
【0070】
図5A及び図5Bは、第4の実施形態による固定レール22を示す。固定レール22は、2つの偏心装置28及び28”を備え、これら偏心装置の縦軸Eは、互いに平行であるが、固定レール22の縦軸Bに対して垂直に配置されている。偏心装置28,28”は、それぞれ1つの操作装置40,40”を固定レールの縦方向側面54に有する。偏心装置28,28”を一緒に操作可能な1つの操作装置も考えられる。
【0071】
具体的に示した実施例で、偏心装置28及び28”は、両者が、固定レール22の端面34の領域に配置され、固定レール22の縦軸Bに関して僅かな軸方向の位置ズレxによって互いに離間しているに過ぎない。しかしながら、基本的に、偏心装置28及び28”の軸方向の間隔xは、任意に適合させることができる。例えば、偏心装置28”は、縦方向長さに関して固定レール22の中心領域に配置することができる。
【0072】
図6A及び6Bには、偏心部分44用の可能な横断面形状46が示されている。図6Aは、偏心形状を示すが、この偏心形状は、中心点距離eを備える異なった半径Rx及びRyを備えた2つの(連続的に)互いに移行する円形面から成る。
【0073】
別の可能な偏心形状は図6Bに示され、横断面形状46は、周方向に部分的に曲率半径Rxを備え、この曲率半径は、別の部分で半径Rx4から半径Rx1まで連続的に減少し、半径は、それぞれ互いに移行する。第3の部分で、横断面面46は、この実施例では解放状態を規定する終端面50を備える。
【0074】
偏心部分44の横断面面46は、偏心装置28の縦軸Eの方向に基本的に変化することができる。例えば、偏心部分44は、図6Bに示した偏心形状を備えることができ、縦軸Eに沿って、横断面面46は、連続的に小さい角度の分だけ捩じれて配置されている。このように角度的に捩じれた偏心部分44は、偏心装置28の終端部分に配置された操作装置40を介する回転の導入時に偏心装置28の捩じれを補償するために有利であり得る。これは、基本的に、各横断面形状で考えられる。
【0075】
図7Aには、ネジヘッド62と、このネジヘッド62に関して偏心して配置されたネジ部分64を備える偏心ネジ60が図示されている。ネジヘッド62に同様に偏心して配置された六角開口が、操作装置40として使用される。六角開口とねじ部分64は、同軸に配置されている。
【0076】
図7Bは、偏心ネジ60として形成された偏心装置28を備えた平面図の固定レール22を示す。ネジヘッド62は、ガイド部分26の凹部内に位置し、作用面48を形成する。同時に、ネジヘッド62は、操作装置40も備える。ネジ部分64は、ガイド部分26とネジ止めされ、偏心ネジ60をガイドするために使用される。偏心ネジ60の回転時、回転角に応じてネジヘッド62の作用面48は、ガイド部分26のガイド面32を超えて異なる程度まで上昇するので、挿入されたフランジ部分を持ち上げ、保持力を作用させ、表面部分に押し付けることができる。
【符号の説明】
【0077】
10 真空装置
12 ターボ分子ポンプ
14 ポンプフランジ/フランジ部分
16 真空チャンバ
18 表面部分
20 固定システム
22,22’ 固定レール
24,24’ 固定部分
26,26’ ガイド部分
28,28’,28” 偏心装置
30 孔
32 ガイド面
34 端面
36 軸方向のストッパ
38 面取り
40,40’ 操作装置
42 固定ネジ
44 偏心部分
46 横断面もしくは横断面形状/横断面面
48 作用面
50,52 終端面
54 縦方向側面
56 斜面
58 平坦部
60 偏心ネジ
62 ネジヘッド
64 ネジ部分
R ロータ軸
B,E 縦軸
x 位置ズレ
Rx,Ry 半径
Rx1~Rx4 半径
e 中心点距離
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B