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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220621BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021073297
(22)【出願日】2021-04-23
(62)【分割の表示】P 2019559959の分割
【原出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2021106500
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-056118(JP,A)
【文献】特開2000-152604(JP,A)
【文献】特開2005-228529(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108048(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0273252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力が通過するパワーラインを有する電力変換装置であって、
前記パワーラインは、
第1方向に延在し、前記第1方向と直交する第2方向において互いに対向する第1ライン部および第2ライン部と、
前記第1ライン部と前記第2ライン部との間に配置された第1絶縁体とを含み、
前記第1ライン部は、
前記第1方向に延在する第1線路導体と、
前記第1方向に延在し、前記第1線路導体の両縁にそれぞれ沿って固定された第1補強部および第2補強部とを有し、
前記電力変換装置は、
前記直流電力が入力される第1端子および第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間において、直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子に対して、並列に接続された第1コンデンサとをさらに備え、
前記パワーラインは、前記第1コンデンサと前記第1端子との第2接続点から前記第1スイッチング素子までの第1経路と、前記第1コンデンサと前記第2端子との第3接続点から前記第2スイッチング素子までの第2経路とを含み、
前記第1ライン部および前記第2ライン部の各々は、前記第1経路または前記第2経路に含まれ
前記第1線路導体、前記第1補強部、および前記第2補強部は、一体的に形成され、
前記第1ライン部は、前記第1線路導体および前記第1補強部の接続部分において屈曲しているとともに、前記第1線路導体および前記第2補強部の接続部分において屈曲し、
前記第2方向から前記パワーラインを平面視した場合、前記第1補強部および前記第2補強部の各々は、前記第1絶縁体に重なっていない、電力変換装置。
【請求項2】
直流電力が通過するパワーラインを有する電力変換装置であって、
前記パワーラインは、
第1方向に延在する第1ライン部および第2ライン部と、
前記第1ライン部と前記第2ライン部との間に配置された第1絶縁体とを含み、
前記第1ライン部は、
前記第1方向に延在する第1線路導体と、
前記第1方向に延在し、前記第1線路導体の両縁にそれぞれ沿って固定された第1補強部および第2補強部とを有し、
前記電力変換装置は、
前記直流電力が入力される第1端子および第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間において、直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子に対して、並列に接続された第1コンデンサとをさらに備え、
前記パワーラインは、前記第1コンデンサと前記第1端子との第2接続点から前記第1スイッチング素子までの第1経路と、前記第1コンデンサと前記第2端子との第3接続点から前記第2スイッチング素子までの第2経路とを含み、
前記第1ライン部および前記第2ライン部の各々は、前記第1経路または前記第2経路に含まれ、
前記第1補強部および前記第2補強部は、前記第1絶縁体とは別個の第2絶縁体から形成されている、電力変換装置。
【請求項3】
前記第2ライン部は、
前記第1方向に延在する第2線路導体と、
前記第1方向に延在し、前記第2線路導体の両縁にそれぞれ沿って固定された第3補強部および第4補強部とを有する、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1経路に含まれる第1ヒューズと、
前記第2経路に含まれる第2ヒューズとをさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との第1接続点に接続された第3端子と、
前記第1端子と前記第3端子との間において、前記第1スイッチング素子と直列に接続された第3スイッチング素子と、
前記第2端子と前記第3端子との間において、前記第2スイッチング素子と直列に接続された第4スイッチング素子と、
前記第1端子と前記第2端子との間において、前記第1コンデンサと直列に接続された第2コンデンサとをさらに備える、請求項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力が通過するパワーラインを有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電力が通過するパワーラインを有する電力変換装置が知られている。たとえば、特開2015-115975号公報(特許文献1)には、直列に接続された複数のスイッチング素子に対して並列に接続された直流コンデンサを、過電圧状態から保護するアクティブクランプ回路を備える電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-115975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチング素子が短絡する短絡事故が発生した場合、スイッチング素子と並列に接続されたコンデンサからパワーラインに直流電力が開放され、パワーラインに通常よりも大きな電流が流れ、パワーラインに含まれる直流導体が破損あるいは変形し得る。直流導体が破損あるいは変形すると、電力変換装置が短絡事故から復旧するのに要する時間が長くなる。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、短絡事故が発生した場合の、直流導体の破損および変形を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電力変換装置は、直流電力が通過するパワーラインを有する。パワーラインは、第1および第2ライン部と、第1絶縁体とを含む。第1および第2ライン部は、第1方向に延在する。第1絶縁体は、第1ライン部と第2ライン部との間に配置されている。第1ライン部は、第1線路導体と、第1および第2補強部とを有する。第1線路導体は、第1方向に延在する。第1および第2補強部は、第1方向に延在し、第1線路導体の両縁にそれぞれ沿って固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電力変換装置によれば、第1線路導体の両縁にそれぞれ沿って固定された第1および第2補強部により第1線路導体の強度が向上する。そのため、短絡事故が発生した場合の第1線路導体の破損および変形を抑制することができる。その結果、電力変換装置が短絡事故から復旧するのに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の一例であるインバータの回路図である。
図2図1のインバータのパワーラインに含まれる直流導体の外観斜視図である。
図3図2の直流導体をX軸方向から平面視した図である。
図4】実施の形態1の変形例に係る直流導体の外観斜視図である。
図5】実施の形態2に係る直流導体の外観斜視図である。
図6図5の直流導体をX軸方向から平面視した図である。
図7】実施の形態2の変形例に係る直流導体の外観斜視図である。
図8】実施の形態3に係る電力変換装置の一例であるインバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0010】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置の一例であるインバータ1の回路図である。図1に示されるように、インバータ1は、端子P1~P3と、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2と、コンデンサC11と、ヒューズFs1,Fs2とを備える。インバータ1は、2レベルインバータである。
【0011】
端子P1,P2には、直流電源B1から直流電力が入力される。直流電源B1は、直流電力を出力するものであればどのようなものでもよく、たとえば発電機、コンバータ、および蓄電池を含む。コンデンサC11は、端子P1とP2との間に接続されている。
【0012】
スイッチング素子Q1,Q2は、端子P1とP2との間において直列に接続されている。スイッチング素子Q1,Q2の各々は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を含む。スイッチング素子Q1のエミッタと、スイッチング素子Q2のコレクタが接続点N1において接続されている。ダイオードD1,D2は、それぞれスイッチング素子Q1,Q2に逆並列に接続されている。端子P3は、接続点N1に接続されている。
【0013】
ヒューズFs1は、端子P1とスイッチング素子Q1のコレクタとの間に接続されている。ヒューズFs2は、端子P2とスイッチング素子Q2のエミッタとの間に接続されている。
【0014】
インバータ1は、直流電源B1からの直流電力が通過するパワーラインを有する。パワーラインは、たとえば端子P1からスイッチング素子Q1のコレクタまでの経路、および端子P2からスイッチング素子Q2のエミッタまでの経路を含む。
【0015】
図2は、図1のインバータ1のパワーラインに含まれる直流導体100の外観斜視図である。図2に示されるように、直流導体100は、ライン部M11,M12と、碍子In1~In6とを含む。ライン部M11,M12は、X軸方向に延在している。直流電力は、ライン部M11,M12を通過する。碍子In1~In6の各々は、ライン部M11とM12との間に配置されている。
【0016】
図3は、図2の直流導体100をX軸方向から平面視した図である。図3に示されるように、ライン部M11は、線路導体111と、補強部112,113とを含む。線路導体111、および補強部112,113は、一体的に形成されている。ライン部M11は、線路導体111および補強部112の接続部分において屈曲している。ライン部M11は、線路導体111および補強部113の接続部分において屈曲している。
【0017】
ライン部M12は、線路導体121と、補強部122,123とを含む。線路導体121、および補強部122,123は、一体的に形成されている。ライン部M12は、線路導体121および補強部122の接続部分において屈曲している。ライン部M12は、線路導体121および補強部123の接続部分において屈曲している。
【0018】
再び図1を参照して、スイッチング素子Q1,Q2が短絡する短絡事故が発生した場合、コンデンサC11からパワーラインに直流電力が開放され、パワーラインに通常よりも大きな電流が流れる。当該電流によって、ヒューズFs1,Fs2が溶断され、コンデンサC11からスイッチング素子Q1,Q2への電流が遮断される。
【0019】
短絡事故が発生してからヒューズFs1,Fs2が溶断されるまでの間にパワーラインに通常よりも大きな電流が流れ、パワーラインに含まれる直流導体が破損あるいは変形し得る。直流導体が破損あるいは変形すると、インバータ1が短絡事故から復旧するのに要する時間が長くなる。
【0020】
再び図3を参照して、直流導体100によれば、線路導体111の両縁にそれぞれ沿って固定された補強部112,113により線路導体111の強度が向上する。また、線路導体121の両縁にそれぞれ沿って固定された補強部122,123により線路導体121の強度が向上する。そのため、短絡事故が発生した場合の直流導体100の破損および変形を抑制することができる。その結果、インバータ1が短絡事故から復旧するのに要する時間を短縮することができる。
【0021】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1においては、直流導体に含まれる全てのライン部において、その両縁に2つの補強部がそれぞれ固定される場合について説明した。直流導体に含まれる全てのライン部の両縁に2つの補強部がそれぞれ固定されていなくてもよい。図4に示されるように、実施の形態1の変形例に係る直流導体100Aは、補強部が両縁に固定されていないライン部M92を含んでいてもよい。また、直流導体に含まれるライン部は、3つ以上であってもよい。
【0022】
以上、実施の形態1および変形例に係る電力変換装置によれば、短絡事故が発生した場合の直流導体の破損および変形を抑制することができる。その結果、電力変換装置が短絡事故から復旧するのに要する時間を短縮することができる。
【0023】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、直流導体に含まれるライン部と、ライン部の両縁にそれぞれ固定される2つの補強部が、一体的に構成される場合について説明した。実施の形態2においては、ライン部と、補強部とが、異なる部材によって形成される場合について説明する。
【0024】
図5は、実施の形態2に係る直流導体200の外観斜視図である。図5に示されるよう直流導体200の構成は、図2に示される直流導体100のライン部M11,M12が、M21,M22にそれぞれ置き換えられた構成である。それ以外の構成は同様であるため、説明を繰り返さない。
【0025】
図6は、図5の直流導体200をX軸方向から平面視した図である。図6に示されるように、ライン部M21は、線路導体211と、補強部212,213とを含む。補強部212,213は、線路導体211の両縁にそれぞれ固定されている。補強部212,213は、絶縁体から形成されている。
【0026】
ライン部M22は、線路導体221と、補強部222,223とを含む。補強部222,223は、線路導体221の両縁にそれぞれ固定されている。補強部222,223は、絶縁体から形成されている。
【0027】
直流導体に含まれる複数のライン部の全てが、絶縁体によって形成された補強部によって補強されている必要はない。図7に示される実施の形態2の変形例に係る直流導体200Aのように、或るライン部においては図5のライン部M21と同様の構成とする一方で、他のライン部においては図2のライン部M11と同様の構成としてもよい。
【0028】
以上、実施の形態2および変形例に係る電力変換装置によれば、短絡事故が発生した場合の直流導体の破損および変形を抑制することができる。その結果、電力変換装置が短絡事故から復旧するのに要する時間を短縮することができる。
【0029】
[実施の形態3]
実施の形態1,2においては、2レベルインバータについて説明した。実施の形態3においては、3レベルインバータについて説明する。
【0030】
図8は、実施の形態3に係る電力変換装置の一例であるインバータ3の回路図である。図8に示されるように、インバータ3は、端子P31~P34と、スイッチング素子Q31~Q34と、ダイオードD31~D36と、コンデンサC31,C32と、ヒューズFs31~Fs33とを備える。インバータ3は、3レベルインバータである。
【0031】
端子P31,P34には、直流電源B31から直流電力が入力される。端子P34,P32には、直流電源B32から直流電力が入力される。直流電源B31,B32は、直流電力を出力するものであればどのようなものでもよく、たとえば発電機、コンバータ、および蓄電池を含む。
【0032】
コンデンサC31は、端子P31とP34との間に接続されている。コンデンサC32は、端子P34とP32との間に接続されている。
【0033】
スイッチング素子Q31~Q34は、端子P31とP32との間において直列に接続されている。スイッチング素子Q31~Q34の各々は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を含む。スイッチング素子Q31のエミッタと、スイッチング素子Q32のコレクタが接続点N31において接続されている。端子P33は、接続点N31に接続されている。スイッチング素子Q33のエミッタは、スイッチング素子Q31のコレクタに接続されている。スイッチング素子Q34のコレクタは、スイッチング素子Q32のエミッタに接続されている。
【0034】
ダイオードD31~D34は、それぞれスイッチング素子Q31~Q34に逆並列に接続されている。ダイオードD35のカソードは、スイッチング素子Q31のコレクタに接続されている。ダイオードD35のアノードとダイオードD36のカソードは、接続点N32において接続されている。ダイオードD36のアノードは、スイッチング素子Q32のエミッタに接続されている。
【0035】
ヒューズFs31は、端子P31とスイッチング素子Q33のコレクタとの間に接続されている。ヒューズFs32は、端子P32とスイッチング素子Q34のエミッタとの間に接続されている。ヒューズFs33は、端子P34と接続点N32との間に接続されている。
【0036】
インバータ3は、直流電源B31,B32からの直流電力が通過するパワーラインを有する。パワーラインは、たとえば端子P31からスイッチング素子Q33のコレクタまでの経路、端子P32からスイッチング素子Q34のエミッタまでの経路、および端子P34から接続点N32までの経路を含む。当該パワーラインは、実施の形態1、実施の形態1の変形例、および実施の形態2において説明した直流導体を含む。
【0037】
以上、実施の形態3に係る電力変換装置によれば、短絡事故が発生した場合の直流導体の破損および変形を抑制することができる。その結果、電力変換装置が短絡事故から復旧するのに要する時間を短縮することができる。
【0038】
実施の形態1~3においては、直流電力が通過するパワーラインを有する電力変換装置が、インバータである場合を説明した。実施の形態に係る電力変換装置は、直流電力が通過するパワーラインを有していればよく、たとえば、DC(Direct Current)-DCコンバータ、あるいはAC(Alternating Current)-DCコンバータであってもよい。
【0039】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わされて実施されることも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1,3 インバータ、100,100A,200 直流導体、111,121,211,221 線路導体、112,113,122,123,212,213,222,223 補強部、B1,B31,B32 直流電源、C11,C31,C32 コンデンサ、D1,D2,D31~D36 ダイオード、Fs1,Fs2,Fs31~Fs33 ヒューズ、In1~In6 碍子、M11,M12,M21,M22,M92 ライン部、P1~P3,P31~P34 端子、Q1,Q2,Q31~Q34 スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8