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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】水平複合給電エレメント群
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20220621BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220621BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20220621BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220621BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220621BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220621BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220621BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20220621BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220621BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20220621BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20220621BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20220621BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/0566
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/653
H01M10/6556
H01M10/6567
H01M50/105
H01M50/204 401H
H01M50/211
H01M50/289
H01M50/296
H01M50/545
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021077474
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2019146323の分割
【原出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021122013
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】107127704
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】107135859
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6-1, Ziqiang 7th Rd., Zhongli Dist., Taoyuan City, Taiwan
(73)【特許権者】
【識別番号】512316932
【氏名又は名称】プロロジウム ホールディング インク
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シュ-ナン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-158343(JP,A)
【文献】特開2011-9402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 10/0565
H01M 10/0566
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/653
H01M 10/6556
H01M 10/6567
H01M 50/105
H01M 50/204
H01M 50/211
H01M 50/289
H01M 50/296
H01M 50/545
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層に対向して配置された第2絶縁層と、
前記第1絶縁層の第1表面上に配置された第1導電パターン層と、
前記第2絶縁層の第2表面上に配置され、前記第1導電パターン層に対向している第2導電パターン層と、
複数の給電エレメント群とを備える水平複合給電エレメント群であって、
前記水平複合給電エレメント群は、1つの第1絶縁層および1つの前記第2絶縁層のみを有し、
前記複数の給電エレメント群は、並んで、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間に挟まれて配置され、前記第1導電パターン層と前記第2導電パターン層とを介して電気的に接続され、直列接続および/または並列接続を内部で形成し、
前記給電エレメント群は、縦に積み重ねた複数の給電エレメントで形成され、
それぞれの前記給電エレメントは独立した完全なモジュールであり、
前記給電エレメントの電解質システムは互いに循環せず、
隣接する給電エレメント間では、電荷移動を除く化学反応は発生せず、
それぞれの前記給電エレメントが、
第1集電層と、
第2集電層と、
密閉空間を形成するために、前記第1集電層と前記第2集電層との間に配置されたパッケージ層と、
前記密閉空間に配置され、前記第1集電層に電気的に接続されている第1活物質層と、
前記密閉空間に配置され、前記第2集電層に電気的に接続されている第2活物質層と、
前記第1集電層と前記第2集電層の直接接触により、前記縦に積み重ねた給電エレメントが、隣接する給電エレメントに電気接続している、
水平複合給電エレメント群。
【請求項2】
それぞれの前記給電エレメントが、
前記密閉空間に配置され、前記第1活物質層と前記第2活物質層との間に挟まれた分離層と、
前記第1活物質層と前記第2活物質層内に配置された前記電解質システムとをさらに備える、請求項1に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項3】
前記複数の給電エレメントのうち前記給電エレメント群の最外部側にある2つの給電エレメントの前記第1集電層または前記第2集電層は、前記第1導電パターン層または前記第2導電パターン層に直接接触して電気接続を形成する、請求項2に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項4】
第1導電性リードと第2導電性リードとをさらに備え、
前記第1導電性リードと前記第2導電性リードとが前記第1導電パターン層または前記第2導電パターン層に電気的に接続されている、または前記第1導電パターン層と前記第2導電パターン層とにそれぞれ電気的に接続されている、請求項1に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項5】
前記第1導電性リードと前記第2導電性リードは、それらと電気的に接続された前記第1導電パターン層または前記第2導電パターン層と一体的に形成されている、または、前記第1導電パターン層と前記第2導電パターン層とにそれぞれ電気的に接続されている、請求項4に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項6】
前記水平複合給電エレメント群が複数形成される場合、前記複数の水平複合給電エレメント群は、前記第1導電性リードおよび前記第2導電性リードを用いて、外部で直列および/または並列に接続される、請求項4に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項7】
隣接する給電エレメント群の間に配置された複数の放熱チャネルをさらに備える、請求項1に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項8】
前記給電エレメントに対向する前記第1絶縁層および/または前記第2絶縁層の表面に、複数の位置決め部材が形成され、
前記給電エレメント群の位置を制限するために、前記複数の位置決め部材が前記第1導電パターン層および前記第2導電パターン層の外側に露出している、請求項1に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項9】
前記電解質システムが、ゲル状態、液体状態、擬似固体状態、および固体状態からなる群より選択される、請求項1に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項10】
前記複数の給電エレメントは、異なる極性を有する前記第1集電層と前記第2集電層と接触して直列接続を形成している、請求項1に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項11】
前記給電エレメントの前記パッケージ層が、シリコーン層と、前記シリコーン層の両側にある2つの変成シリコーン層とを含む、請求項2に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項12】
前記放熱チャネル内を流体が流れる、請求項7に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項13】
前記流体が気体または液体である、請求項12に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項14】
前記第1導電性リードおよび前記第2導電性リードは、物理的接続または化学的接続によって前記第1導電パターン層または前記第2導電パターン層に接続されている、または前記物理的または化学的接続によって前記第1導電パターン層および前記第2導電パターン層にそれぞれ接続されている、請求項4に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項15】
前記第1導電性リードおよび前記第2導電性リードは、はんだ付け、溶融、導電性接着剤、または導電性布によって前記第1導電パターン層または前記第2導電パターン層に接続されている、または、はんだ付け、溶融、導電性接着剤、または導電性布によって前記第1導電パターン層および前記第2導電パターン層にそれぞれ接続されている、請求項4に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項16】
前記給電エレメントのうち前記給電エレメント群の最外部側にある2つの給電エレメントの前記第1集電層または前記第2集電層は、はんだ付け、溶融、導電性接着剤、または導電性クロスによって、前記第1導電パターン層または前記第2導電パターン層に接続されている、または、はんだ付け、溶融、導電性接着剤、または導電性布によって前記第1導電パターン層および前記第2導電パターン層にそれぞれ接続されている、請求項3に記載の水平複合給電エレメント群。
【請求項17】
前記給電エレメント群が複数の給電エレメントによって形成されている場合、任意の前記給電エレメント群における前記複数の給電エレメントは、並列および/または直列に電気的に接続される、請求項2に記載の水平複合給電エレメント群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、給電エレメント群に関する。本開示は特に、高電圧、高容量、そして3次元化された水平複合給電エレメント群に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油化学燃料の枯渇や環境保全への意識の広がりにより、石油化学燃料を動力源として利用して大量の温室効果ガスを排出するものについて、人々は生活の利便性と環境保全とのバランスを考え直さざるを得なくなっている。重要な輸送車両としての自動車は、主な点検すべき対象の1つになっている。そのため、世界的な省エネルギー化および炭素削減への動向の下、世界中の多くの国が、二酸化炭素削減の重要な目標として自動車の電化を設定した。残念ながら、電気自動車は、実用化において多くの問題に直面している。例えば、バッテリのような給電エレメントの容量が、耐久性を制限する。その結果、容量を増やして走行距離を延ばすために、より多くのバッテリを直列または並列に接続しなければならなくなる。
【0003】
走行距離を延ばすために車の重量を減らす目的において、リチウムイオン二次電池のような高エネルギー密度を有する軽量の二次電池は、電気自動車の電池として最良の選択肢となる。それでもなお、安全かつ安定した電源を形成するために複数のリチウムイオン二次電池をどのように組み立てるかは、人々にとって緊急課題となっている。
【0004】
まず、一般的な方法を示す図1Aおよび図1Bを参照されたい。複数の電池エレメント71から成る組を複数並列に接続した後、電池セル73を封止して形成するためにハウジング72が使用される。そして、十分な電圧に達するように、複数の電池セル73のハウジング72から突き出た導電性リード74を外部で直列に接続する。これにより、車両用電池モジュール75が作られる。別の方法では、図2Aおよび図2Bに示すように、複数の電池エレメント71を覆うために、単一のハウジング72が採用される。すなわち、電池セル76の電圧を増加させるために、内部直列接続が採用されている。次いで、自動車用の電池モジュール77を形成するのに十分な容量に達するように、複数の電池セル76が並列に外部で接続される。残念ながら、現在の電解質は、約5ボルトにしか耐えられない。さらに、内部構造の問題に起因して、電解質の閉鎖系を形成することは困難である。電解質の耐えうる範囲を電圧がいったん超えてしまうと、電解質は分解し、電池モジュール77を故障させる。さらに悪いことに、電池が爆発することもある。したがって、このような製品は市場には存在しない。
【0005】
米国特許出願第2004/0091771号によれば、隣接する電池モジュールは、共通の集電層を共用する。この方法を用いることにより、上述の電解質が分解する問題を解決することができる。残念ながら、上記共通の集電層への直列接続に起因して、設計の柔軟性は低くなる。内部直列接続のみが採用可能となる。電池モジュールを形成するために、複数の電池セルの外部並列接続を採用する必要が依然として存在する。
【0006】
さらに、台湾特許出願第106136071号の複合給電エレメント群において、高電圧かつ高単位容量の電池セルを提供するために、給電エレメント群を直接に電池セル内で直列接続および並列接続することができ、これにより、従来技術における外部接続に起因する低性能および容量密度低下の欠点を解決できる。この技術では、直列接続および/または並列接続のために多大な数の給電エレメントを縦に積み重ねることによって、給電エレメントが高容量および高電圧を達成する。
【0007】
しかしながら、金属物体が刺さると、穴が開くことで引き起こされる高電圧の降下は、避けられず、完全固体、擬似固体(固体/液体)、または液体の電解質システムにとって極めて危険である。これは、特に、多大な数の給電エレメントを内部で縦に積み重ねて直列接続することによって形成された給電エレメント群にとって危険である。
【0008】
上記欠点に対して、本開示は、金属物体が電池エレメントに刺さることで引き起こされる安全上の懸念を回避するための新規な水平複合給電エレメント群を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本開示の目的は、縦に積み重ねられる給電エレメントの数を減らし、金属物体が電池エレメントに刺さることによって引き起こされる安全上の問題を回避する目的で、複数の給電エレメント群を電気的に接続するために水平方向の直列接続および/または並列接続を採用する水平複合給電エレメント群を提供することである。
【0010】
本開示の他の目的は、水平複合給電エレメント群を提供することにある。第1絶縁層と第2絶縁層とは、それぞれ上部と下部とに配置される。前記第1絶縁層と第2絶縁層との間には、水平方向に延び、直列および/または並列に接続された複数の給電エレメント群が配置されている。前記第1絶縁層と第2絶縁層とを用いることにより、外部の金属物体が給電エレメントに刺さることによって引き起こされる潜在的な損傷を防止することができる。
【0011】
本開示の他の目的は、水平複合給電エレメント群を提供することにある。隣接する給電エレメント間に電荷移動を除く電気化学反応は発生しない。その結果、給電エレメントは、電解質が許容する最大電圧の制限なく、直列および/または並列に接続し得る。これにより、容量密度および電圧を向上することができる。
【0012】
本開示のさらに他の目的は、水平複合給電エレメント群を提供することにある。隣接する給電エレメント群の間には、放熱用経路として機能する複数のチャネルが形成されている。
【0013】
本開示のさらなる目的は、水平複合給電エレメント群を提供することである。隣接する給電エレメント間の集電層は直接接触する。接触領域は、従来技術に係るニッケル板はんだ付けによる接触領域よりもはるかに広い。これにより、給電エレメント群の内部抵抗を大幅に低減することができる。また、給電エレメント群によって形成されるパワーモジュールの性能はほとんど低下しない。さらに、抵抗の低減により、充放電速度が大幅に早くなり、加熱の問題が大幅に低減される。その結果、パワーモジュールの冷却系を簡略化することができ、管理および制御が容易になる。これにより、複合給電エレメント群全体の信頼性および安全性を高めることができる。
【0014】
上記の目的を達成するために、本開示は、第1絶縁層と、第2絶縁層と、第1導電パターン層と、第2導電パターン層と、複数の給電エレメント群とを備える水平複合給電エレメント群を提供する。前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層に対向して配置される。前記第1導電パターン層は、前記第1絶縁層の第1表面上に配置される。前記第2導電パターン層は、前記第2絶縁層の第2表面上に配置される。前記第1導電パターン層は、前記第2導電パターン層に対向している。前記複数の給電エレメント群は、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間に配置され、前記第1導電パターン層と前記第2導電パターン層とを介して直列および/または並列に接続される。各給電エレメントは、分離層と、2つの活物質層と、2つの集電層と、電解質システムと、パッケージ層とを備える。前記2つの活物質層は、分離層の両側にそれぞれ配置される。前記2つの集電層は、前記2つの活物質層の外側にそれぞれ配置されている。前記電解質システムは、前記2つの活物質層内に配置される。前記パッケージ層は、前記2つの集電層を接着し、前記2つの集電層の間に電解質システムを封入する目的で、前記2つの集電層の周囲に配置される。換言すれば、各給電エレメントは、独立したモジュールである。前記電解質システムは互いに循環しない。隣接する給電エレメント間に電荷移動を除く電気化学反応は発生しない。その結果、給電エレメントは、電解質が許容する最大電圧値に制限されないだけでなく、直列および/または並列に同時に接続することができる。
【0015】
本開示が提供する目的、技術、特徴および効果の理解のために、具体的な実施形態を以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】従来技術の第1の実施形態に係る電池セルおよび電池モジュールの概略図である。
図1B】従来技術の第1の実施形態に係る電池セルおよび電池モジュールの概略図である。
図2A】従来技術の第2の実施形態に係る電池セルおよび電池モジュールの概略図である。
図2B】従来技術の第2の実施形態に係る電池セルおよび電池モジュールの概略図である。
図3】本開示の第1の実施形態に係る水平複合給電エレメント群の概略図である。
図4A】本開示に係る給電エレメントの構造概略図である。
図4B】本開示に係る給電エレメントの別の構造概略図である。
図5A】水平複合給電エレメント群の給電エレメント群が複数の給電エレメントを直列に接続することによって形成される、図3の実施形態の概略図である。
図5B図5Aの領域Aの部分拡大図である。
図6】本開示の一実施形態に係る水平複合給電エレメント群の複数の給電エレメントの内部並列接続を示す概略図である。
図7】本開示の別の実施形態に係る水平複合給電エレメント群の概略図である。
図8A】本開示の一実施形態に係る複数の水平複合給電エレメント群の外部直列接続を示す概略図である。
図8B】本開示の一実施形態に係る、複数の水平複合給電エレメント群の外部並列接続を示す概略図である。
図9】本開示の別の実施形態に係る水平複合給電エレメント群の概略図である。
図10】本開示の他の実施形態に係る水平複合給電エレメント群の概略図である。
図11】本開示の他の実施形態に係る水平複合給電エレメント群の概略図である。
図12】本開示に係る給電エレメント群における複数の給電エレメントの直列および/または並列電気接続図である。
図13】本開示に係る給電エレメント群における複数の給電エレメントの直列および/または並列電気接続図である。
図14】本開示に係る給電エレメント群における複数の給電エレメントの直列および/または並列電気接続図である。
図15】本開示に係る電気化学系エレメントの集電層上に形成されたタブの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
高電圧および高容量の需要に対応して、複数の給電エレメントが、縦に積み重ねられ、直列/並列に接続される。これら複数の給電エレメントに金属の鋭利な物体が刺さることで引き起こされる安全上の問題を考慮して、本開示は、穴が開くことによる問題を解決するための新規な水平複合給電エレメント群を提供する。上記の複合給電ユニットはエネルギーを貯蔵することができる供給エレメント、および電池またはコンデンサなどの外部供給デバイスであり得る。
【0018】
本開示は主に、複数の給電エレメント群を備える水平複合給電エレメント群を開示する。上記給電エレメント群は、縦方向に直列および/または並列に接続された1つ以上の給電エレメントを備える。そして、第1導電パターン層および第2導電パターン層を介して給電エレメント群を水平方向に直列または並列に接続した後、第1端子および第2端子を給電エレメント群に接続して、複合給電エレメント群を形成する。すなわち、複合給電エレメント群の内部では、直列接続と並列接続とを同時に実施することができる。本開示に係る給電エレメント群を形成する給電エレメントは、独立した完全な給電モジュールである。それらの給電エレメントは電解質システムを共有しない。さらなる説明のために図面を用いる。なお、説明のための以下の実施形態では、説明の便宜上、リチウム電池を採用している。以下の実施形態が本開示の範囲を限定するために用いられるものではないことは当業者に周知である。
【0019】
まず、図3を参照されたい。図3は、本開示の第1の実施形態に係る水平複合給電エレメント群の概略図を示す。図3に示すように、本開示に係る水平複合給電エレメント群10は主に、第1絶縁層12と、第2絶縁層14と、第1パターン導電層16(16a、16b、16c)と、第2パターン導電層18(18a、18b)と、複数の給電エレメント群20とを備えている。第2絶縁層14は、第1絶縁層12と水平方向に対向している。第1導電パターン層16は、第1絶縁層12の内側で水平方向に延在する第1表面12s上に配置される。第2導電パターン層18は、第2絶縁層14の内側で水平方向に延在する第2表面14s上に配置される。第1導電パターン層16は、第2導電パターン層18に対向している。第1導電パターン層16および第2導電パターン層18の材料は、金属および任意の導電性材料からなる群より選択され得る。複数の給電エレメント群20は、並んで、第1絶縁層12と第2絶縁層14とに挟まれて配置され、直列接続を形成するために第1導電パターン層16および第2導電パターン層18を介して異なる極性に電気的に接続される。なお、「並んで」とは、複数の給電エレメント群20が単一のZ軸に沿って縦方向に積まれていないことを意味する。複数の給電エレメント群20は、代わりに、水平方向に配置されている。
【0020】
このような給電エレメント群20は、1つ以上の給電エレメント22によって形成されている。例えば、図3において、水平複合給電エレメント群10は、4つの給電エレメント群20を直列に接続して形成されている。これらの給電エレメント群20は、いずれも給電エレメント22によって形成されている。上記給電エレメント22の構造を図4Aに示す。いずれの電池セル22も、第1集電層222と、第2集電層223と、パッケージ層224と、第1活物質層225と、分離層226と、第2活物質層227とを備える。パッケージ層224は、第1集電層222と第2集電層223との間に挟まれている。第1集電層222、第2集電層223、およびパッケージ層224は、外部の水分および酸素から隔離された密閉空間を形成する。第1活物質層225、分離層226、および第2活物質層227は、上記密閉空間内に順に堆積される。上記電解質システムは、第1活物質層225および第2活物質層227に配置される。第1活物質層225は第1集電層222に接続され、第2活物質層227は第2集電層223に接続される。
【0021】
イオンが通過できる微小孔を有する分離層226の材料は、ポリマー材料、セラミック材料、およびガラス繊維材料からなる群より選択され得る。上記微小孔は、貫通孔または非線形孔であってもよい。あるいは、上記微小孔は、多孔質材料で作られていてもよい。さらに、基板の微小孔の内側に多孔質セラミック絶縁材料を配置することができる。このセラミック絶縁材料は、マイクロメートルグレードまたはナノメートルグレードの二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、またはアルキル化セラミック粒子などの材料によって形成され得る。上記セラミック絶縁材料は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニリデンフロリド‐co‐ヘキサフルオロプロピレン(PVDF‐HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリル酸接着剤、エポキシ、ポリエチレン・オキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、またはポリイミド(PI)などの高分子接着剤を更に含んでいてもよい。
【0022】
上記電解質システムは、第1活物質層225および第2活物質層227内に配置される。電解質システムの形態は、液体状態、擬似固体状態、ゲル状態、固体状態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。活物質層225、227の活物質は、利用(給電)のために化学エネルギーを電気エネルギーに変換したり、貯蔵(充電)のために電気エネルギーを化学エネルギーに変換したりすることができる。また、活物質層225、227の活物質は、イオン伝導と輸送とを同時に行うこともできる。第1集電層222および第2集電層223を介して、発生した電子を外部に導くことができる。第1集電層222および第2集電層223用の共通の材料は、銅およびアルミニウムを含む。あるいは、それら共通の材料は、ニッケル、スズ、銀および金などの他の金属、金属合金またはステンレス鋼を含むことができる。
【0023】
パッケージ層224の材料は、エポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、熱可塑性ポリイミド、シリコーン、アクリル樹脂、または紫外線硬化接着剤を含むことができる。上記パッケージ層224の材料は、2つの集電層222、223の周囲に配置される。これは、2つの集電層222、223を接着し、他の給電エレメント22の電解質システムとの循環および電解質の漏れを回避する目的で2つの集電層222、223の間に電解質システムを密封するためである。これにより、給電エレメント22は、独立した完全な給電モジュールとなる。
【0024】
パッケージ層224の封止効果を向上するために、パッケージ層224が3つの層を有するように設計することができる。図4Bを参照されたい。最上層224aおよび最下層224bは変成シリコーンであり、中間層はシリコーン層224cである。両側の変成シリコーン層224a、224bは、不均一材料を接着するための付加型および縮合型シリコーンの比率を調節することによって改質されている。この設計を使用することによって、界面における結合性(コヒージョン)が増大する。同時に、全体的な外観がより完全になり、生産歩留まりが向上する。さらに、この設計は、水分の浸透を阻止できる。内部では、主構造として機能するシリコーン層224cが極性溶媒およびプラスチック剤によって引き起こされる損傷を阻止できる。その結果、封止構造全体をより完全なものとすることができる。
【0025】
また、説明および識別を容易にするために、水平複合給電エレメント群を説明するための図中の給電エレメント22には、図4Aおよび図4Bに示した給電エレメント22の詳細な構成要素を示す代わりに、正負の電気極性を明確にする単純な正負の符号を用いる。当業者は、正負の極性の意味を分かっている。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
【0026】
図5Aおよび図5Bに示すように、給電エレメント群20は、複数の給電エレメント22を直列に接続することによって形成される。給電エレメント22の最外部側は、第1集電層222および第2集電層223である。したがって、隣接する給電エレメント22の第1集電層222および第2集電層223は、直接接触することによって相互に接続されて、直列電気接続を形成することができる。例えば、図示するように、第1集電層222は正であり、第2集電層223は負である。上部の給電エレメント22の第2集電層223は、隣接する(下部の)給電エレメント22の第1集電層222と接触できる。後者の給電エレメント22の負端子の第2集電層223は、隣接する給電エレメント22の正端子の第1集電層222と接触できる。このように順に積み重ねることにより、直列接続された給電エレメント群20を形成することができる。各給電エレメント22は、独立した給電モジュールであるので、それらの電解質システムは循環しない。その結果、隣接する給電エレメント22の第1集電層222と第2集電層223との間に電荷移動を除く電気化学反応は発生しない(すなわち、イオンは移動も伝導もしない)。したがって、複数の給電エレメント22が高電圧を生じるように直列に接続されている場合でも、個々の給電エレメント22の電解質システムは影響を受けない。内部電圧は、単一の給電エレメント22の電圧のままで維持される。その結果、電解質システムの最大電圧(一般に約5ボルト)に限定されず、複数の給電エレメント22を直列に積み重ねることにより、高電圧を有する給電エレメント群20を形成することができる。
【0027】
給電エレメント群20の最上部の給電エレメント22の上面電極(第1集電層222)は、第1導電パターン層16に直接接触して電気接続を形成する。給電エレメント群20の最下部の給電エレメント22の底面電極(第2集電層223)は、第2導電パターン層18に接触して電気接続を形成する。上述の直接接触の方法は、物理的接触または化学的接触であり得る。より具体的には、はんだ材料の使用有無にかかわらずはんだ付けによって直接接触を生じることができる、または溶融法によって直接接触を生じることができる。あるいは、導電性銀製接着剤または導電性布を採用することができる。
【0028】
本開示に係る水平複合給電エレメント群10はさらに、第1導電性リード24と、第2導電性リード26とを備えている。図3において、第1導電性リード24および第2導電性リード26は第1導電パターン層16に同時に電気的に接続される、あるいは、第2導電パターン層18に同時に電気的に接続される。無論、第1導電性リード24と第2導電性リード26とをそれぞれ異なる金属層に接続することもできる。例えば、図6に示すように、第1導電性リード24が第1導電パターン層16に電気的に接続され、第2導電性リード26は第2導電パターン層18に電気的に接続される。
【0029】
さらに、第1導電性リード24および第2導電性リード26は、それらと電気的に接続された第1導電パターン層16または第2導電パターン層26と一体的に形成することができる。すなわち、パターニングプロセスの間に、第1導電性リード24のパターンおよび第2導電性リード26のパターンが確保される。上記の一体的に形成する方法を採用せずに、第1導電性リード24および第2導電性リード26が形成される場合、第1導電性リード24および第2導電性リード26の材料は、第1導電パターン層16および/または第2導電パターン層18の材料とは異なり得る。さらに、直接接触は、はんだ材料の使用有無にかかわらずはんだ付けによって、または溶融法によって形成され得る。あるいは、導電性銀製接着剤または導電性布を採用することができる。
【0030】
図7を参照されたい。図7において、第1導電パターン層16aの一部は第1絶縁層12の外側に延在し、第1導電性リード24として機能する。また、第1導電パターン層16cの一部は第1絶縁層12の外側に延在し、第2導電性リード26として機能する。そして、図7中、複数の給電エレメント群22(図7中、1つの給電エレメント群は1つの給電エレメント22で形成されている)は、第1導電パターン層16および第2導電パターン層18を介して全て逆極性に接続されている。これにより、複数の給電エレメント群22を直列に接続させる。
【0031】
本開示に係る水平複合給電エレメント群のアーキテクチャの下で、電池モジュールの総容量または総電圧を増加させるために唯一すべきことは、第1導電性リード24および第2導電性リード26を使用することによって、複数の水平複合給電エレメント群10の外部直列/並列接続を実施することである。これにより、電池モジュールの総容量または総電圧を増加させることができる。例えば、図8Aに示すように、複数の水平複合給電エレメント群10を外部で直列に接続することにより、総電圧を増加させることができる。図8Bに示すように、複数の水平複合給電エレメント群10を外部で並列に接続することにより、総容量を増加させることができる。
【0032】
単一の水平複合給電エレメント群の電圧を高くするには、単に給電エレメント群を追加すればよい。例えば、図9に示すように、図3に対して2つの給電エレメント群20を追加し、第1導電パターン層16および第2導電パターン層18を介して直列に接続する。
【0033】
図6を参照されたい。この水平複合給電エレメント群10は、2つの給電エレメント群20を使用して、第1導電パターン層16および第2導電パターン層18を介して同じ極性を並列に接続することによって、新しいエレメント群セット28を形成する。そして、新しいエレメント群セット28をエレメントとして用いる。第1導電パターン層16および第2導電パターン層18を介して上記エレメントの逆極性を接続することにより、直列接続が形成する。さらに、図6に示す給電エレメント群20は、より大きな電圧を供給するために、複数の給電エレメントを直列に接続して形成することができる。さらに、新しいエレメント群セット28は給電エレメントに統合することができるが、新しいエレメント群セット28が分離されていれば隙間30の数を増加させることができる。
【0034】
図10を参照されたい。接続された給電エレメント群20間の隙間は、水平複合給電エレメント群10用の放熱チャネルとして機能できる。給電エレメント群20と対向する第1絶縁層12および/または第2絶縁層14の表面には、複数の位置決め部材32が形成されている。位置決め部材32は、給電エレメント群20の位置を制限するために、第1導電パターン層16または第2導電パターン層18の外側に露出される。例えば、給電エレメント22が集電層を備えるので、位置決め部材32の存在は、1つ以上の給電エレメント22によって形成される給電エレメント群20を正しい位置に固定するのに役立つ。さらに、放熱効果を増大させるために、気体または液体などの流体を上記隙間に加えることができる。
【0035】
本開示の利点をさらに説明する。例えば、台湾特許出願第106136071号の複合給電エレメント群によれば、24個の給電エレメントが縦方向に直列に接続され、24×4.2ボルトの電圧値を生じる。本開示に係る水平複合給電エレメント群を採用することによって、同じ電圧値および同数の給電エレメントであれば、第1導電パターン層16および第2導電パターン層18を介して、図9に示す水平方向に延長した状態として24個の個々の給電エレメントを水平方向に逆極性に接続することができる。あるいは、図11に示すように、第1導電パターン層16および第2導電パターン層18を介して、12組の直列に積み重ねられた給電エレメントを水平方向に逆極性に接続することができる。あるいは、別の数の積み重ねられた給電エレメントを採用することもできる。このアーキテクチャの下で、縦に積み重ねられた24個の給電エレメントの代わりに、上記水平複合給電エレメント群に鋭利な金属物体34が外側から刺さった場合、刺されるものは、ほんの数個の積み重ねられたものである。これにより、直列に積み重ねられた多大な数の給電エレメントに穴が開くリスクを効果的に回避することができる。
【0036】
さらに、穴が開くことを効果的に阻止することに加えて、複数の電池セル10が外部で直列および/または並列に接続された場合に、本開示に係る第1絶縁層12および第2絶縁層14は、第1導電パターン層と第2導電パターン層との間の電気的接触に対する阻止層として機能することができる。
【0037】
次に、給電エレメント群20が2つ以上の給電エレメント22で形成される場合の複数の給電エレメント22の直列および/または並列の構成について説明する。
【0038】
図5Aを参照されたい。図5Aにおいて、給電エレメント群20の複数の給電エレメント22は、電気的に直列かつ逆極性に接続されている。図12を参照すると、給電エレメント群20の複数の給電エレメント22は、電気的に並列かつ同極性に接続されている。図13を参照すると、給電エレメント群20の複数の給電エレメント22は、まず並列に接続され、次に直列に接続されることにより混合法で接続されている。図14を参照すると、給電エレメント群20の複数の給電エレメント22は、まず直列に接続され、次に並列に接続されることにより混合法で接続されている。このような混合接続法では、給電エレメント22の正負電極(集電層)は、適切な配線を介して、対応する導電パターン層に接続される。また、配線と給電エレメント22の集電層とを簡便に接続するために、図15に示すように、集電層にタブ79を配置することができる。
【0039】
要約すると、本開示は、並んで配置された複数の給電エレメント群を備える水平複合給電エレメント群を提供する。前記給電エレメント群は、所定の電圧および容量に到達するように、第1導電パターン層および第2導電パターン層を介して、水平拡張法で直列および/または並列に内部で接続される。さらに、複数の水平複合給電エレメント群の外部での直列接続および/または並列接続は、水平複合給電エレメント群の第1導電性リードおよび第2導電性リードを介して実施できる。さらに、本開示に係る水平複合給電エレメント群は、上部および下部に第1絶縁層および第2絶縁層を備える。前記第1絶縁層および第2絶縁層は、電池セル間の第1導電パターン層と第2導電パターン層との電気的接触に対する阻止層として機能するとともに、金属物体が刺さることで引き起こされうる潜在的な損傷を効果的に防止する。
【0040】
したがって、本開示はその新規性、非自明性、および有用性により、法的要件に適合する。しかし、前述の説明は、本開示の実施形態に過ぎず、本開示の範囲および幅を限定するために用いられるものではない。本開示の特許請求の範囲に記載された形状、構造、特徴、または精神に従ってなされた同等の変更または修正は、本開示に添付の特許請求の範囲に含まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15