(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/17 20060101AFI20220621BHJP
G01T 1/167 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
G01T1/17 E
G01T1/17 A
G01T1/167 C
(21)【出願番号】P 2021078639
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2017127910の分割
【原出願日】2017-06-29
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】710002462
【氏名又は名称】セイコー・イージーアンドジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】服部 友紀
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213807(JP,A)
【文献】特開2014-085163(JP,A)
【文献】特開2014-066557(JP,A)
【文献】米国特許第06225634(US,B1)
【文献】国際公開第2009/138360(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が入れられた第1容器
内の複数の相似領域に基づいて、前記第1容器に含まれる前記試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を全体検出効率として算出する制御装置であって
、
前記第1容器は、ガンマ線を検出する
前記ガンマ線検出部の少なくとも一部を囲む形状の
容器であり、
前記制御装置は、
前記複数の相似領域のうちの第1差分領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率である第1差分検出効率を算出する制御部を備え、
前記第1差分領域は、
前記複数の相似領域のうちの第0相似領域と、前記複数の相似領域のうち前記第0相似領域よりも大きい第1相似領域との差分の領域であり、
前記制御部は、
前記第0相似領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率である第0検出効率と、前記第1相似領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率を第1検出効率と、前記第0検出効率に乗算する第0重みと、前記第1検出効率に乗算する第1重みとに基づいて、前記第1差分検出効率を算出する、
制御装置。
【請求項2】
前記第0重みは、
前記第0相似領域の体積である第0体積に基づく値であり、
前記第1重みは、
前記第1相似領域の体積である第1体積に基づく値である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第0重みは、
前記第1相似領域の体積である第1体積から、前記第0相似領域の体積である第0体積を差し引いた値によって、前記第0体積を除した値であり、
前記第1重みは、
前記第1相似領域の体積である第1体積から、前記第0相似領域の体積である第0体積を差し引いた値によって、前記第1体積を除した値である、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
第2差分領域は、
前記第1相似領域と、前記複数の相似領域のうち前記第1相似領域よりも大きい第2相似領域との差分の領域であり、
第3差分領域は、
前記第2相似領域と、前記複数の相似領域のうち前記第2相似領域よりも大きい第3相似領域との差分の領域であり、
前記制御部は、
前記第1相似領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率である第1検出効率と、前記第2相似領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率である第2検出効率と、前記第1重みと、前記第2検出効率に乗算する第2重みとに基づいて、前記第2差分領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率である第2差分検出効率を算出し、
前記第2検出効率と、前記第3相似領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率を第3検出効率と、前記第2重みと、前記第3検出効率に乗算する第3重みとに基づいて、前記第3差分領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率である第3差分検出効率を算出する、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
算出した前記第1差分検出効率と、算出した前記第2差分検出効率と、算出した前記第3差分検出効率と、前記第1差分検出効率に乗算する第11重みと、前記第2差分検出効率に乗算する第12重みと、前記第3差分検出効率に乗算する第13重みとに基づいて、前記全体検出効率を算出する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第11重みは、
前記第1差分領域の体積に基づく値であり、
前記第12重みは、
前記第2差分領域の体積に基づく値であり、
前記第13重みは、
前記第3差分領域の体積に基づく値である、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第11重みは、
前記第1差分領域、前記第2差分領域、前記第3差分領域それぞれの体積の和によって、前記第1差分領域の体積を除した値であり、
前記第12重みは、
前記第1差分領域、前記第2差分領域、前記第3差分領域それぞれの体積の和によって、前記第2差分領域の体積を除した値であり、
前記第13重みは、
前記第1差分領域、前記第2差分領域、前記第3差分領域それぞれの体積の和によって、前記第3差分領域の体積を除した値である、
請求項6に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンマ線を検出するガンマ線検出部によって試料から放射されるガンマ線が検出される計数を算出する技術の研究や開発が行われている。
【0003】
ここで、試料から放射されるガンマ線は、ガンマ線検出部においてサム効果を生じさせる場合がある。サム効果は、ガンマ線検出部が弁別不可能な時間間隔(例えば、数百ナノ秒よりも短い時間間隔)において試料から放射される2つ以上のガンマ線がガンマ線検出部の検出素子に入射した場合に起こる効果である。当該場合、ガンマ線検出部は、当該2つ以上のガンマ線を、当該2つ以上のガンマ線それぞれのエネルギーの合計と一致するエネルギーを有する1つのガンマ線として検出してしまうことがある。当該1つのガンマ線は、すなわち、実際には存在していない仮想的なガンマ線である。サム効果は、ガンマ線検出部に対してガンマ線が生じさせる効果のうち、このような実際には存在していないガンマ線を検出させてしまう効果のことである。サム効果は、測定対象のガンマ線を放射する放射性核種がピコ秒程度の時間間隔において2つ以上のガンマ線を放射することが可能な放射性核種である場合に起こり得る。サム効果が生じた場合、当該2つ以上のガンマ線それぞれの計数は、本来(すなわち、当該2つ以上のガンマ線のそれぞれを全て弁別可能に検出できた場合)の計数よりも少なくなってしまう。その結果、当該2つ以上のガンマ線のそれぞれを放射する放射性核種から放射される2つ以上のガンマ線それぞれのガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができなくなってしまう。そして、その結果、当該放射性核種の放射能を精度よく算出することができない場合がある。
【0004】
この問題を解決するため、サム効果によって本来の計数よりも少なく検出された計数を補正するサム効果補正についての研究や開発が行われている。例えば、ガンマ線を放射する点光源として微小な放射能標準を用いることによって当該計数の補正を行う方法が知られている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「放射能測定法シリーズ7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」、財団法人日本分析センター、平成16年7月30日発行、p.77-87
【文献】「Fast procedures for coincidence-summing correction in γ-ray spectrometry」、Applied Radiation and Isotopes、2000年発行、p.745-752
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、測定対象である試料が体積状の試料である場合、微小な放射能標準を用いて当該試料内における全ての点位置の検出効率を予め求めることは、困難である。このため、上記の非特許文献に記載された方法を体積状の試料に適用することは、難しい。そこで、体積状の試料の形状と同じ形状の放射能標準を測定し、当該試料の形状に対応するエネルギー対検出効率の単一関数を導出し、導出した単一関数を用いたサム効果補正が提案されている。
【0007】
ところが、上記の単一関数を用いるサム効果補正では、サム効果補正を行った後の検出効率が、本来の検出効率よりも高くなってしまうことが知られている。これは、過去に行われた技能試験(海野ら, Radioisotopes, Vol.65, No.4, p.181-190, 柚木ら, 不確かさ評価を取り入れた放射性セシウムを含む玄米試料の放射能測定技能試験, NMIJ2015成果発表会)によっても確かめられている事実である。この事実は、ガンマ線発生位置を考慮するサム効果補正が重要であることを示唆している。
【0008】
ここで、ガンマ線発生位置を考慮するサム効果補正として、円柱状試料を微小円板(微小な厚さの円柱)試料の集合と見做し、微小円板試料部分におけるサム効果補正済みの検出効率から円柱状試料についてのサム効果補正済みの検出効率を算出する方法が特願2016-038232号公報において紹介されている。しかし、この方法は、円柱状以外の形状の試料(例えば、マリネリ形状の試料等)に適用することが困難である。なお、モンテカルロ・シミュレーションに基づくサム効果補正であってガンマ線発生位置を考慮するサム効果補正は、実現可能であるものの、測定条件が変化する毎にモンテカルロ・シミュレーションを行う必要があり、当該サム効果補正を行うのに要する時間が長くなるため現実的ではない。
【0009】
以上のことから、従来の方法では、円柱状以外の形状の試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができない場合があった。なお、このような問題点は、前述の技能試験において見つかったものである。
【0010】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、算出した相似領域検出効率に基づいて、第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る制御装置は、試料が入れられた第1容器内の複数の相似領域に基づいて、前記第1容器に含まれる前記試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を全体検出効率として算出する制御装置であって、前記第1容器は、ガンマ線を検出する前記ガンマ線検出部の少なくとも一部を囲む形状の容器であり、前記制御装置は、前記複数の相似領域のうちの第1差分領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率である第1差分検出効率を算出する制御部を備え、前記第1差分領域は、前記複数の相似領域のうちの第0相似領域と、前記複数の相似領域のうち前記第0相似領域よりも大きい第1相似領域との差分の領域であり、前記制御部は、前記第0相似領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率である第0検出効率と、前記第1相似領域から放射されるガンマ線の前記ガンマ線検出部による検出効率を第1検出効率と、前記第0検出効率に乗算する第0重みと、前記第1検出効率に乗算する第1重みとに基づいて、前記第1差分検出効率を算出する。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)に記載の一態様に係る制御装置は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、算出した第1差分検出効率に基づいて、第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る測定システム1の構成の一例を示す図である。
【
図2】ガンマ線検出部10に取り付けられた第1容器MB1の一例を示す図である。
【
図3】制御装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】制御装置30の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】サム効果を生じさせる2つ以上のガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を制御装置30が算出する処理の流れの一例を示す図である。
【
図6】第21容器、第22容器、第23容器のそれぞれの一例を示す図である。
【
図7】第1相似領域~第3相似領域のそれぞれの一例を示す図である。
【
図8】サム効果を生じさせる2つ以上のガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を制御装置30が算出する処理の流れの他の例を示す図である。
【
図10】ステップS320の処理を説明するための図である。
【
図11】制御装置30が第2基準情報を生成する場合に制御装置30が行う処理の流れの一例を示す図である。
【
図12】3つの容器のそれぞれについて、第1容器MB1と相似形状の容器の体積と当該容器の試料RAから放射されたガンマ線の検出効率との関係をプロットしたグラフである。
【
図13】
図12示したプロットをフィッティング関数によりフィッティングした結果の一例を示す図である。
【
図14】サム効果を生じさせる2つ以上のガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を制御装置30が算出する処理の流れの更に他の例を示す図である。
【
図15】複数の部分領域に分割された対象相似領域の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る測定システム1について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る測定システム1の構成の一例を示す図である。測定システム1は、ガンマ線検出部10と、波高分析装置20と、制御装置30と、遮蔽体BKを備える。なお、測定システム1は、これらに加えて、他の装置を備える構成であってもよい。また、測定システム1では、ガンマ線検出部10と、波高分析装置20と、制御装置30との一部又は全部が一体に構成されてもよい。また、本実施形態では、アナログ信号をデジタル信号へ変換する処理は、ガンマ線検出部10、波高分析装置20、制御装置30のうちの一部又は全部が行ってもよく、既知の方法で行ってもよく、これから開発される方法で行ってもよいため、説明を省略する。
【0016】
<測定システムの概要>
以下、測定システム1の概要について説明する。
【0017】
測定システム1は、1以上の放射性核種を含む試料である試料RAから放射されるガンマ線の測定を行う。より具体的には、測定システム1は、試料RAから放射されたガンマ線をガンマ線検出部10によって検出する。測定システム1は、ガンマ線検出部10が検出したガンマ線のスペクトルを波高分析装置20によって生成する。当該スペクトルは、当該ガンマ線のエネルギースペクトルのことである。測定システム1は、波高分析装置20が生成した当該スペクトルに基づく処理を制御装置30によって行う。当該スペクトルに基づく処理は、例えば、測定対象ガンマ線の検出効率を算出する処理のことである。測定対象ガンマ線は、測定対象核種から放射されるガンマ線のことである。測定対象核種は、測定システム1がユーザーから予め受け付けた放射性核種であって測定システム1が処理を行う対象の放射性核種のことである。また、測定対象ガンマ線(又は、単にガンマ線)の検出効率は、測定対象ガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率のことである。ここで、ある放射性核種は、当該放射性核種の壊変において複数のガンマ線を放射する場合がある。当該場合、当該放射性核種から放射されるガンマ線は、複数存在する。また、当該場合、複数の当該ガンマ線それぞれのエネルギーは、互いに異なる。すなわち、測定対象核種が壊変によって複数の測定対象ガンマ線を放射する場合、制御装置30は、当該スペクトルに基づく処理の1つとして、1つ以上の測定対象ガンマ線それぞれの検出効率を算出する処理を行う。なお、当該スペクトルに基づく処理は、1つ以上の測定対象ガンマ線それぞれの計数を算出する処理、1つ以上の測定対象ガンマ線それぞれの計数率を算出する処理、測定対象核種の放射能を算出する処理等の他の処理であってもよい。なお、測定対象ガンマ線(又は単にガンマ線)の検出効率は、試料RAから放射される測定対象ガンマ線の数に対するガンマ線検出部10により測定対象ガンマ線が検出された計数の割合のことである。また、測定対象ガンマ線(又は、単にガンマ線)の計数は、測定対象ガンマ線がガンマ線検出部10によって検出された回数のことである。また、測定対象ガンマ線(又は、単にガンマ線)の計数率は、測定対象ガンマ線がガンマ線検出部10によって単位時間あたりに検出された回数のことである。なお、試料RAは、放射能標準であってもよく、測定対象核種を含む他の試料であってもよい。以下では、一例として、試料RAが放射能標準ではない試料であって、1以上の測定対象核種を含む試料である場合について説明する。
【0018】
ここで、測定対象核種の壊変によって複数の測定対象ガンマ線が放射される場合、当該複数の測定対象ガンマ線は、ガンマ線検出部10においてサム効果を生じさせる場合がある。サム効果は、ガンマ線検出部10及び波高分析装置20が弁別不可能な時間間隔(例えば、数百ナノ秒よりも短い時間間隔)において2つ以上の測定対象ガンマ線がガンマ線検出部10の検出素子GC(
図1において不図示)に入射した場合に起こる効果である。当該場合、ガンマ線検出部10は、当該2つ以上の測定対象ガンマ線を、当該2つ以上の測定対象ガンマ線それぞれのエネルギーの合計とおよそ一致するエネルギーを有する1つのガンマ線として検出してしまうことがある。当該1つのガンマ線は、すなわち、実際には存在していない仮想的なガンマ線である。サム効果は、このような実際には存在していないガンマ線をガンマ線検出部10及び波高分析装置20に検出させてしまう効果のことである。サム効果は、当該2つ以上の測定対象ガンマ線を放射する測定対象核種がピコ秒程度の時間間隔において当該2つ以上の測定対象ガンマ線を放射することが可能な放射性核種(例えば、コバルト60等)である場合に起こり得る。サム効果が生じた場合、当該2つ以上の測定対象ガンマ線それぞれの計数は、本来(すなわち、当該2つ以上の測定対象ガンマ線のそれぞれが全て弁別可能に検出された場合)の計数よりも少なくなってしまう。その結果、当該2つ以上の測定対象ガンマ線それぞれの検出効率、計数、計数率等の算出における誤差を増大させてしまう。
【0019】
このように誤差を増大させてしまう問題を解決するため、サム効果によって本来の計数よりも少なく検出された計数であってサム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線それぞれの計数を補正するサム効果補正についての研究や開発が行われている。当該可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線は、測定対象核種の壊変において放射される測定対象ガンマ線のうちピコ秒程度の時間間隔において放射される2つ以上の測定対象ガンマ線のことである。例えば、測定対象核種がコバルト60である場合、当該2つ以上の測定対象ガンマ線は、コバルト60から放射されるガンマ線のうちエネルギーが1173keVのガンマ線とエネルギーが1332keVのガンマ線とのそれぞれのことである。サム効果補正を行う方法としては、例えば、放射能標準と、「γ線スペクトロメトリー―実験と演習、野口正安著、日刊工業新聞社、1980年発行」、「放射能測定法シリーズNo.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー、財団法人日本分析センター、平成16年7月30日発行」、「Practical Gamma-ray Spectroscopy、Gordon Gilmore著、Wiley、2011年発行」等に記載された方法とを用いて当該計数を補正するサム効果補正係数を算出する方法が知られている。放射能標準は、複数の放射性核種が均一に分布するように配合された試料であり、当該複数の放射性核種それぞれの放射能について予め決められた値となるように調整された(予め校正されている)試料である。当該方法は、算出したサム効果補正係数を、当該計数に乗じることによって当該計数に対するサム効果補正を行う方法である。ここで、このような方法では、ガンマ線検出部10に取り付けられた容器であって放射能標準が入れられた容器内の各点とガンマ線検出部10の実効中心との間の距離のばらつき(例えば、分散によって表される)が小さいほど、すなわち当該容器が小さいほど、算出したサム効果補正係数によって精度よく当該計数の補正を行うことができる。逆に、当該ばらつきが大きいほど、当該サム効果補正係数によって精度よく当該計数の補正を行うことができない。これは、サム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線が放射される位置が当該実効中心から離れるほど、当該2つ以上の測定対象ガンマ線の両方がガンマ線検出部10により検出される可能性が低くなり、結果として当該2つ以上の測定対象ガンマ線によるサム効果が生じにくくなるためである。換言すると、当該方法では、測定対象ガンマ線を放射する光源が点光源として扱える場合、当該計数を精度よく補正することができるが、当該光源が体積状の光源である場合、当該計数を精度よく補正することが困難である。このため、当該方法を体積状の試料に適用することは、難しい。
【0020】
そこで、体積状の試料の形状と同じ形状の放射能標準を測定し、試料RAの形状に対応するエネルギー対検出効率の単一関数を導出し、導出した単一関数を用いたサム効果補正を行う方法が提案されている。ところが、当該単一関数を用いるサム効果補正では、サム効果補正を行った後の検出効率が、本来の検出効率よりも高くなってしまうことが知られている。これは、過去に行われた技能試験(海野ら, Radioisotopes, Vol.65, No.4, p.181-190, 柚木ら, 不確かさ評価を取り入れた放射性セシウムを含む玄米試料の放射能測定技能試験, NMIJ2015成果発表会)によっても確かめられている事実である。この事実は、ガンマ線発生位置を考慮するサム効果補正が重要であることを示唆している。なお、当該エネルギーは、測定対象ガンマ線それぞれのエネルギーのことである。当該検出効率は、測定対象ガンマ線それぞれの検出効率のことである。
【0021】
ここで、サム効果を生じさせる可能性のある2つ以上のガンマ線の発生位置を考慮するサム効果補正の方法として、円柱状試料を微小円板(微小な厚さの円柱)試料の集合と見做し、微小円板試料部分におけるサム効果補正済みの検出効率から円柱状試料についてのサム効果補正済みの検出効率を算出する方法が特願2016-038232号公報において紹介されている。しかし、この方法は、円柱状以外の形状の試料(例えば、マリネリ形状の試料等)に適用することが困難である。なお、モンテカルロ・シミュレーションに基づくサム効果補正であって当該発生位置を考慮するサム効果補正の方法は、実現可能であるものの、測定対象ガンマ線を検出する検出条件が変化する毎にモンテカルロ・シミュレーションを行う必要があり、当該サム効果補正を行うのに要する時間が長くなるため現実的ではない。このような問題点は、前述の技能試験において見つかったものである。
【0022】
そこで、測定システム1は、試料RAが入れられた第1容器MB1であってガンマ線を検出するガンマ線検出部10の少なくとも一部を囲む形状の第1容器MB1内の領域が分割された複数の相似形状の領域である相似領域のそれぞれについて、相似領域に含まれる試料RAから放射されるガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率をガンマ線検出部10の検出結果に基づいて相似領域検出効率として算出する。また、測定システム1は、算出した相似領域検出効率のそれぞれを補正するためのサム効果補正係数を算出する。以下では、説明の便宜上、ある相似領域検出効率を補正するためのサム効果補正係数を、当該相似領域検出効率のサム効果補正係数と称して説明する。測定システム1は、算出した相似領域検出効率のそれぞれについて、相似領域検出効率に対して当該相似領域検出効率のサム効果補正係数を乗じることにより、複数の相似領域のそれぞれについての補正後相似領域検出効率を算出する。補正後相似領域検出効率は、サム効果補正された後の相似領域検出効率のことである。すなわち、この一例では、ある相似領域検出効率に対してサム効果補正を行うことは、当該相似領域検出効率に対して当該相似領域検出効率のサム効果補正係数を乗じることによって算出される補正後相似領域検出効率を算出することを意味する。このようにして算出された補正後相似領域検出効率により、測定システム1は、第1容器MB1に入れられた試料RAから放射される測定対象ガンマ線の検出効率を精度よく算出することができる。その結果、測定システム1は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、算出した相似領域検出効率に基づいて、第1容器MB1に入れられた試料RAから放射されるガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を精度よく算出することができる。以下では、測定システム1の構成について詳しく説明する。また、以下では、制御装置30が行う処理のうちサム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線の検出効率を算出する処理について詳しく説明する。
【0023】
なお、本実施形態において、ある領域X1が他の領域X2と相似形状であるとは、領域X1の形状と同じ形状を領域X2が有することを意味している。例えば、体積が0.7リットルのマリネリ容器に入れられた試料RAの形状が領域X1の形状であり、体積が1リットルのマリネリ容器に入れられた試料RAの形状が領域X2の形状である場合、本実施形態において、領域X1と領域X2とは、相似形状である。このため、領域X1が領域X2と相似形状であることは、領域X1の形状と領域X2の形状とが幾何学的に相似関係であることを意味するものではない。
【0024】
<測定システムの構成>
以下、測定システム1の構成について説明する。前述した通り、測定システム1は、ガンマ線検出部10と、波高分析装置20と、制御装置30と、遮蔽体BKを備える。
【0025】
ガンマ線検出部10は、ガンマ線を検出可能な半導体検出器であり、例えば、高純度ゲルマニウム半導体検出器(HPGe検出器)である。なお、ガンマ線検出部10は、少なくともガンマ線を検出可能な検出器であれば、シンチレーション検出器、ガイガーカウンター等の他の検出器であってもよい。また、ガンマ線検出部10は、入射したガンマ線を検出する検出素子GC(例えば、
図2参照)が内部に収容されているエンドキャップECを備える。この一例において、検出素子GCは、ガンマ線検出部10の種類に応じた素子であり、この一例において、ゲルマニウム結晶を有する素子である。エンドキャップECの内部に収容されている検出素子GCとあるガンマ線とが相互作用を起こした場合、ガンマ線検出部10は、当該ガンマ線を検出する。ガンマ線検出部10は、検出した当該ガンマ線を示す信号を波高分析装置20に出力する。ここで、当該信号の波高値は、ガンマ線検出部10により検出された当該ガンマ線のエネルギーを示す。なお、ガンマ線検出部10により検出された当該ガンマ線のエネルギーは、ガンマ線検出部10に吸収された当該ガンマ線のエネルギーであるため、試料RAから放射された直後の当該ガンマ線が有していたエネルギーとは必ずしも一致しない。
【0026】
ガンマ線検出部10のエンドキャップECには、試料RAを入れられた第1容器MB1の取り付けが可能である。エンドキャップECに第1容器MB1が取り付けられた場合、第1容器MB1は、エンドキャップECの少なくとも一部を囲む。すなわち、第1容器MB1の形状は、当該場合においてガンマ線検出部10の少なくとも一部を囲む形状である。より具体的には、当該場合において、第1容器MB1は、例えば、エンドキャップECが有する部位のうち検出素子GCを含む部位を囲む。以下では、一例として、第1容器MB1がマリネリ容器である場合について説明する。なお、第1容器MB1は、マリネリ容器に代えて、エンドキャップECの少なくとも一部を囲む形状の容器であれば如何なる容器であってもよい。また、当該一部には、検出素子GCの一部が含まれる構成であってもよい。
【0027】
ここで、第1容器MB1について説明する。第1容器MB1は、この一例において、体積(容積)が2リットルの容器である。第1容器MB1の体積は、第1容器MB1内の領域の体積のことである。また、第1容器MB1には、2リットルの試料RAが入れられている。なお、第1容器MB1の体積は、これに代えて、2リットルより小さい構成であってもよく、2リットルより大きい構成であってもよい。
図2は、ガンマ線検出部10に取り付けられた第1容器MB1の一例を示す図である。また、
図2は、ガンマ線検出部10のエンドキャップECの中心軸と平行な平面によって第1容器MB1及びガンマ線検出部10を切断した場合の断面図である。
図2に示したように、第1容器MB1には、試料RAが入れられている。
図2に示したように、この一例における第1容器MB1は、マリネリ容器であるため、エンドキャップECの少なくとも一部(すなわち、ガンマ線検出部10の一部分のうち検出素子GCを含む部分)が第1容器MB1によって囲まれている。
【0028】
図1に戻る。
図1に示した例では、ガンマ線検出部10は、試料RAとともに、遮蔽体BKによって囲まれている。遮蔽体BKは、試料RAから放射されるガンマ線以外のガンマ線(すなわち、外部からのガンマ線)のガンマ線検出部10への入射を遮蔽する。また、遮蔽体BKは、試料RAから外部に向かって放射されたガンマ線を遮蔽する。遮蔽体BKは、例えば、鉛によって形成される。なお、遮蔽体BKは、鉛に代えて、水等の他の物質によって形成される構成であってもよい。また、ガンマ線検出部10の少なくとも一部は、遮蔽体BKによって囲まれていない構成であってもよい。また、測定システム1は、遮蔽体BKを備えない構成であってもよい。
【0029】
ガンマ線検出部10は、ケーブルによって波高分析装置20、制御装置30のそれぞれと通信可能に接続されている。ケーブルを介した有線通信は、例えば、イーサネット(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)等の規格によって行われる。なお、ガンマ線検出部10は、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格により行われる無線通信によって波高分析装置20と制御装置30とのうちいずれか一方又は両方と接続される構成であってもよい。
【0030】
波高分析装置20は、例えば、マルチチャンネルアナライザーである。波高分析装置20は、ガンマ線検出部10が検出したガンマ線を示す信号をガンマ線検出部10から取得する。波高分析装置20は、取得した当該信号の波高分布、すなわち、波高値に応じて設定された複数のチャンネル毎の計数値を算出する。例えば、試料RAから放出されたガンマ線のエネルギーに応じた波高値を有する信号をガンマ線検出部10から取得すると、波高分析装置20は、取得した信号の波高分布として、前述のスペクトルを生成する。なお、波高分析装置20は、シングルチャンネルアナライザー等のガンマ線検出部10が検出したガンマ線を示す信号に基づく計数を算出する他の分析装置であってもよい。
【0031】
波高分析装置20は、ケーブルによって制御装置30と通信可能に接続されている。ケーブルを介した有線通信は、例えば、イーサネット(登録商標)やUSB等の規格によって行われる。なお、波高分析装置20は、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格により行われる無線通信によって制御装置30と接続される構成であってもよい。
【0032】
制御装置30は、例えば、ワークステーション、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、タブレットPC、多機能携帯電話(スマートフォン)、PDA(Personal Digital Assistant)等である。
【0033】
制御装置30は、波高分析装置20が生成したスペクトルを示すスペクトル情報を波高分析装置20から取得する。制御装置30は、取得したスペクトル情報が示すスペクトルに基づいて、試料RAに含まれる放射性核種のうちの測定対象核種の分析を行う。具体的には、制御装置30は、例えば、当該測定対象核種から放射された測定対象ガンマ線の検出効率を算出する。制御装置30は、算出した当該検出効率に対してサム効果補正を行う。制御装置30は、サム効果補正を行った後の当該検出効率に基づいて、測定対象ガンマ線の計数を算出する。制御装置30は、算出した当該計数に基づいて、測定対象核種の放射能を算出する。なお、制御装置30は、当該分析として他の処理を行う構成であってもよい。
【0034】
<制御装置のハードウェア構成>
以下、
図3を参照し、制御装置30のハードウェア構成について説明する。
図3は、制御装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0035】
制御装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)31と、記憶部32と、入力受付部33と、通信部34と、表示部35を備える。これらの構成要素は、バスBを介して相互に通信可能に接続されている。また、制御装置30は、通信部34を介してガンマ線検出部10、波高分析装置20のそれぞれと通信を行う。
【0036】
CPU31は、記憶部32に格納された各種プログラムを実行する。
【0037】
記憶部32は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部32は、制御装置30に内蔵されるものに代えて、USB等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部32は、制御装置30が処理する各種情報や画像、プログラムを格納する。
【0038】
入力受付部33は、例えば、キーボードやマウス、タッチパッド、その他の入力装置である。なお、入力受付部33は、表示部35と一体に構成されたタッチパネルであってもよい。
【0039】
通信部34は、例えば、USB等のデジタル入出力ポートやイーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。
【0040】
表示部35は、例えば、液晶ディスプレイパネル、あるいは、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネルである。
【0041】
<制御装置の機能構成>
以下、
図4を参照し、制御装置30の機能構成について説明する。
図4は、制御装置30の機能構成の一例を示す図である。
【0042】
制御装置30は、記憶部32と、入力受付部33と、通信部34と、表示部35と、制御部36を備える。
【0043】
制御部36は、制御装置30の全体を制御する。制御部36は、表示制御部361と、設定受付部363と、スペクトル取得部365と、算出部367と、測定制御部369を備える。制御部36が備えるこれらの機能部は、例えば、前述のCPUが、記憶部32に記憶された各種プログラムを実行することにより実現される。また、当該機能部のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0044】
表示制御部361は、ユーザーから受け付けた操作に基づいて、制御装置30がユーザーからの操作を受け付ける操作画面を含む各種の画面を生成する。表示制御部361は、生成した各種の画面を表示部35に表示させる。
【0045】
設定受付部363は、表示制御部361が表示部35に表示させた各種の画面の少なくとも一部の画面を介して、制御部36が備える各機能部に設定される各種の設定をユーザーから受け付ける。
【0046】
スペクトル取得部365は、波高分析装置20が算出したスペクトルを示すスペクトル情報を波高分析装置20から取得する。スペクトル取得部365は、ユーザーにより予め記憶された情報であって波高分析装置20が有する複数のチャンネルそれぞれとエネルギーとの対応関係を示す対応関係情報に基づいて、取得した情報が示すスペクトルが有する複数のビンであって当該複数のチャンネルのそれぞれを示すビンを、エネルギーを示すビンに変換する。なお、以下では、説明の便宜上、このようなスペクトル取得部365によるビンの変換処理についての説明を省略する。
【0047】
算出部367は、スペクトル取得部365が取得したスペクトル情報が示すスペクトルを用いて、測定対象核種から放射された測定対象ガンマ線の検出効率を算出する。また、算出部367は、記憶部32に予め記憶された情報であって各種の検出効率を示す情報を記憶部32から読み出す。また、算出部367は、算出した検出効率に対するサム効果補正、又は記憶部32から読み出した検出効率に対するサム効果補正を行う。また、算出部367は、サム効果補正を行った後の当該検出効率に基づく各種の処理を行う。
【0048】
測定制御部369は、波高分析装置20を制御し、波高分析装置20によるスペクトルの算出を開始又は終了させる。
【0049】
<サム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線の検出効率を算出する処理の具体例1>
以下、
図5を参照し、サム効果を生じさせる2つ以上の測定対象ガンマ線の検出効率を制御装置30が算出する処理の具体例1について説明する。当該具体例1では、制御装置30は、第1容器MB1内の試料RAから放射される測定対象ガンマ線の検出効率であってサム効果補正が行われた後の検出効率を算出する際、第1基準情報に基づいて、第1容器MB1内の領域が分割された複数の相似領域それぞれについての相似領域検出効率を算出する。第1基準情報は、試料RAを入れられた容器であって第1容器MB1と相似形状の複数の容器である第2容器のそれぞれについて、第2容器を示す第2容器情報と、当該第2容器内の試料RAから放射されたガンマ線の検出効率であって互いにエネルギーが異なるガンマ線それぞれの検出効率である第1基準検出効率を示す第1基準検出効率情報とが対応付けられた情報である。ここで、ある第2容器を示す第2容器情報は、この一例において、当該第2容器の体積を示す情報である。また、複数の第2容器のそれぞれは、この一例において、第1容器MB1の体積以下の体積を有する容器である。また、以下では、一例として、複数の第2容器には、体積が0.7リットルの第2容器である第21容器と、体積が1リットルの第2容器である第22容器と、体積が2リットルの第2容器である第23容器との3つの第2容器のみが含まれる場合について説明する。なお、当該第2容器を示す第2容器情報は、当該体積に代えて、当該第2容器を示す他の情報であってもよい。また、複数の第2容器には、第21容器、第22容器、第23容器の一部又は全部に代えて、他の第2容器が含まれる構成であってもよく、第21容器、第22容器、第23容器の一部又は全部に加えて、他の第2容器が含まれる構成であってもよい。
【0050】
図5は、サム効果を生じさせる2つ以上のガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を制御装置30が算出する処理の流れの一例を示す図である。なお、
図5に示したフローチャートでは、ステップS110の処理が開始される前のタイミングにおいて、当該処理を開始する操作を制御装置30がユーザーから既に受け付けている場合について説明する。また、当該フローチャートでは、当該タイミングにおいて、第1容器MB1に応じたスペクトル情報が既に記憶部32に記憶されている場合について説明する。第1容器MB1に応じたスペクトル情報は、試料RAが入れられた第1容器MB1がガンマ線検出部10に取り付けられている場合においてガンマ線検出部10により検出されたガンマ線のスペクトルであって第1容器MB1内の試料RAから放射されるガンマ線のスペクトルを示す情報である。すなわち、当該フローチャートでは、当該タイミングにおいて、第1容器MB1内の試料RAから放射されるガンマ線について、測定システム1が、ガンマ線のガンマ線検出部10による検出と、ガンマ線検出部10により検出されたガンマ線を示す信号に基づくスペクトルの波高分析装置20による生成と、当該スペクトルを示すスペクトル情報の記憶部32への記憶とを既に終えている場合について説明する。
【0051】
算出部367は、記憶部32に予め記憶された第1基準情報を記憶部32から読み出す(ステップS110)。ここで、制御装置30は、他の装置によって生成された第1基準情報がユーザーにより記憶部32に予め記憶される構成であってもよい。また、制御装置30は、第1基準情報を生成し、生成した第1基準情報を記憶部32に記憶させる構成であってもよい。この場合、制御装置30は、試料RAを入れられた3つの第2容器(すなわち、第21容器、第22容器、第23容器)のそれぞれについて、第2容器が取り付けられたガンマ線検出部10によるガンマ線の検出結果に基づいて、当該第2容器内の試料RAから放射されるガンマ線であって互いにエネルギーの異なるガンマ線それぞれの検出効率を算出する。そして、制御装置30は、当該3つの第2容器のそれぞれについて算出した当該検出効率に基づく第1基準情報を生成する。なお、当該場合、制御装置30は、他の方法によって第1基準情報を生成する構成であってもよい。また、当該場合、第2容器には、試料RAに代えて、放射能標準が入れられる構成であってもよい。また、当該3つの第2容器のうち容器の体積が最も大きい第2容器(この一例において、第23容器)には、第1容器MB1が用いられる構成であってもよく、第1容器MB1と異なる容器が用いられる構成であってもよい。
【0052】
次に、算出部367は、記憶部32に予め記憶された情報であって第1容器MB1の形状と、この一例における複数の第2容器である3つの第2容器(すなわち、第21容器、第22容器、第23容器)それぞれの形状とを示す容器形状情報を記憶部32から読み出す。算出部367は、読み出した容器形状情報と、この一例における複数の第2容器である3つの第2容器(すなわち、第21容器、第22容器、第23容器)それぞれの容器内の領域とに基づいて、第1容器MB1内の領域を複数の相似形状の領域である相似領域に分割する(ステップS120)。ここで、ステップS120の処理について説明する。
【0053】
ガンマ線検出部10の位置を予め決められた位置に動かないように固定した状態である検出部固定状態においてある第2容器がガンマ線検出部10に取り付けられている場合、当該第2容器が第1容器MB1と相似形状であるため、当該第2容器内の領域は、第1容器MB1内の領域と相似形状の領域であり、検出部固定状態においてガンマ線検出部10に取り付けられた第1容器MB1内の領域のうちの少なくとも一部と重なる領域である。これを利用し、算出部367は、読み出した第1基準情報に含まれる第2容器情報の中から互いに重複せずに抽出可能な第2容器情報(この一例において、3つの第2容器それぞれを示す第2容器情報)を全て抽出し、抽出した第2容器情報のそれぞれが示す第2容器内の領域を用いて、第1容器MB1内の領域を複数の相似領域に分割する。なお、ガンマ線検出部10の位置は、例えば、ガンマ線検出部10の重心の位置によって表されるが、これに代えて、ガンマ線検出部10に基づく他の位置によって表される構成であってもよい。
【0054】
より具体的には、算出部367は、抽出した第2容器情報のそれぞれが示す第2容器である第21容器、第22容器、第23容器それぞれの容器内の領域を用いて、第1容器MB1内の領域を、以下において説明する第1相似領域、第2相似領域、第3相似領域の3つの相似領域に分割する。
【0055】
第1相似領域は、第1容器領域のうち第21容器領域と重なる領域のことである。第1容器領域は、検出部固定状態において第1容器MB1をガンマ線検出部10に取り付けた場合における第1容器MB1内の領域のことである。第21容器領域は、検出部固定状態において第21容器をガンマ線検出部10に取り付けた場合における第21容器内の領域のことである。また、第21容器領域は、体積が0.7リットルの領域である。なお、第1相似領域は、体積が0リットルの仮想的な容器であって第1容器MB1と相似形状の容器を第20容器と称した場合において、第1容器領域のうち第21容器領域と重なる領域であって第20容器領域と重ならない領域のことであると換言することができる。第20容器領域は、検出部固定状態において第20容器をガンマ線検出部10に取り付けた場合における第20容器内の領域のことであり、体積が0リットルの領域である。ここで、第20容器、第20容器領域のそれぞれは、後述するステップS170の処理についての説明を明確にするために便宜上登場させたものである。
【0056】
第2相似領域は、第1容器領域のうち第22容器領域と重なる領域であって第21容器領域と重ならない領域のことである。第22容器領域は、検出部固定状態において第22容器をガンマ線検出部10に取り付けた場合における第22容器内の領域のことである。
【0057】
第3相似領域は、第1容器領域のうち第23容器領域と重なる領域であって第21容器領域及び第22容器領域と重ならない領域のことである。第23容器領域は、検出部固定状態において第23容器をガンマ線検出部10に取り付けた場合における第23容器内の領域のことである。
【0058】
すなわち、算出部367は、第1容器領域のうち第21容器領域と重なる領域であって第20容器領域と重ならない領域を第1相似領域として特定し、第1容器領域のうち第22容器領域と重なる領域であって第21容器領域と重ならない領域を第2相似領域として特定し、第1容器領域のうち第23容器領域と重なる領域であって第22容器領域と重ならない領域を第3相似領域として特定する。そして、算出部367は、特定した第1相似領域、第2相似領域、第3相似領域の3つの相似領域に第1容器領域を分割する。
【0059】
ここで、
図6及び
図7を参照し、第1相似領域~第3相似領域のそれぞれについて説明する。
図6は、第21容器、第22容器、第23容器のそれぞれの一例を示す図である。
図6に示した容器MB21は、第21容器の一例であり、体積が0.7リットルのマリネリ容器である。また、
図6に示した容器MB22は、第22容器の一例であり、体積が1リットルのマリネリ容器である。また、
図6に示した容器MB23は、第23容器の一例であり、体積が2リットルのマリネリ容器である。このように、容器MB21~容器MB23のそれぞれは、第1容器MB1と相似形状である。なお、容器MB23は、第1容器MB1であってもよい。
【0060】
図7は、第1相似領域~第3相似領域のそれぞれの一例を示す図である。
図7に示した点ECPは、ガンマ線検出部10の実効中心を示す。また、
図7に示した領域HR1は、第1容器領域のうち第21容器領域と重なる領域であって第20容器領域(容器内の体積が0リットルであるため、
図7において不図示)と重ならない領域、すなわち第1相似領域の一例である。また、
図7に示した領域HR1と領域HR2とを足し合わせた領域は、第1容器領域のうち第22容器領域と重なる領域の一例である。つまり、領域HR2は、第1容器領域のうち第22容器領域と重なる領域であって第21容器領域と重ならない領域、すなわち第2相似領域の一例である。また、
図7に示した領域HR1と領域HR2と領域HR3とを足し合わせた領域である領域HR0は、第1容器領域のうち第23容器領域と重なる領域の一例であり、この一例において、第1容器領域そのものである。つまり、領域HR3は、第1容器領域のうち第23容器領域と重なる領域であって第21容器領域及び第22容器領域と重ならない領域、すなわち第3相似領域の一例である。また、
図7に示したように、第1相似領域~第3相似領域のそれぞれは、第1容器領域と相似形状である。
【0061】
ここで、
図7に示したように、点ECPが示す実効中心と領域HR1内における各位置との間の距離のばらつきと、点ECPが示す実効中心と領域HR2内における各位置との間の距離のばらつきと、点ECPが示す実効中心と領域HR3内における各位置との間の距離のばらつきとのそれぞれは、点ECPが示す実効中心と第1容器領域(すなわち、領域HR0)内における各位置との間の距離のばらつきよりも小さい。このことから、制御装置30は、3つの相似領域である領域HR1、領域HR2、領域HR3のそれぞれについて、相似領域検出効率を算出する。そして、制御装置30は、算出した相似領域検出効率それぞれのサム効果補正係数を算出する。制御装置30は、算出した相似領域検出効率のそれぞれについて、相似領域検出効率に対して当該相似領域検出効率のサム効果補正係数を乗じることにより、領域HR1、領域HR2、領域HR3のそれぞれについての補正後相似領域検出効率を算出する。これにより、制御装置30は、第1容器領域に含まれる試料RAから放射されるガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を精度よく算出することができる。その結果、制御装置30は、例えば、当該試料RAに含まれる測定対象核種の放射能を精度よく算出することができる。
【0062】
図5に戻る。算出部367は、第20容器領域~第23容器領域のそれぞれに基づいて、第1容器領域を、第1相似領域、第2相似領域、第3相似領域の3つの相似領域に分割する。ここで、第1相似領域の体積は、第1容器領域のうち第21容器領域と重なる領域であって第20容器領域と重ならない領域の体積であるため、第21容器の体積と同じ体積であり、0.7リットルである。また、第2相似領域の体積は、第1容器領域のうち第22容器領域と重なる領域であって第21領域と重ならない領域の体積であるため、第22容器領域の体積から第21容器領域の体積を差し引いた体積と同じ体積であり、0.3リットルである。また、第3相似領域の体積は、第1容器領域のうち第23容器領域と重なる領域であって第21容器領域及び第22容器領域と重ならない領域の体積であるため、第23容器領域の体積から第21容器領域の体積及び第22容器領域の体積を差し引いた体積と同じ体積であり、1リットルである。このようにして、算出部367は、この一例における複数の第2容器である3つの第2容器(すなわち、第21容器、第22容器、第23容器)それぞれの容器内の領域に基づいて第1容器領域を第1相似領域、第2相似領域、第3相似領域の3つの相似領域に分割することができる。
【0063】
なお、算出部367は、この一例における複数の第2容器である3つの第2容器(すなわち、第21容器、第22容器、第23容器)それぞれの容器内の領域に基づく他の方法によって第1容器領域を複数の相似領域に分割する構成であってもよく、当該領域に基づいて第1容器領域を4つ以上の相似領域に分割する構成であってもよく、当該領域に基づいて第1容器領域を2つの相似領域に分割する構成であってもよい。
【0064】
ステップS120の処理が行われた後、算出部367は、測定対象核種を示す測定対象核種情報をユーザーから受け付ける(ステップS130)。例えば、算出部367は、表示制御部361が表示部35に表示させた操作画面を介してユーザーから前述の測定対象核種を示す測定対象核種情報を受け付ける。操作画面は、制御装置30がユーザーから各種の操作を受け付ける画面である。
【0065】
次に、算出部367は、記憶部32に予め記憶されたガンマ線エネルギー情報を読み出す(ステップS140)。ガンマ線エネルギー情報は、複数の放射性核種のそれぞれを示す放射性核種情報毎に、放射性核種情報と、当該放射性核種情報が示す放射性核種の壊変において放射されるガンマ線のうちサム効果を生じさせる可能性のある2つ以上のガンマ線それぞれのエネルギーを示す情報とが対応付けられた情報である。算出部367は、読み出したガンマ線エネルギー情報を参照し、ステップS130の処理においてユーザーから受け付けた測定対象核種情報が示す測定対象核種を示す放射性核種情報に対応付けられた情報であって当該2つ以上のガンマ線それぞれのエネルギーを示す情報を、測定対象ガンマ線のそれぞれを示す情報として抽出する。例えば、測定対象核種がコバルト60であった場合、算出部367がステップS140において抽出する測定対象ガンマ線を示す情報は、1173keVを示す情報と、1332keVを示す情報のそれぞれである。
【0066】
次に、算出部367は、ステップS140において抽出した2つ以上の測定対象ガンマ線を示す情報を1つずつ選択し、選択した測定対象ガンマ線を示す情報毎にステップS160~ステップS200の処理を繰り返し行う(ステップS150)。すなわち、算出部367は、ステップS130においてユーザーから受け付けた測定対象核種情報が示す測定対象核種から放射される測定対象ガンマ線のうちサム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線のそれぞれ毎に当該処理を繰り返し行う。
【0067】
ステップS150において測定対象ガンマ線を示す情報が選択された後、算出部367は、ステップS120において第1容器領域を分割した領域である3つの相似領域(すなわち、第1相似領域、第2相似領域、第3相似領域)のそれぞれ毎に、ステップS170~ステップS190の処理を繰り返し行う(ステップS160)。例えば、算出部367は、第1容器領域内における内側から外側に向かって順(この一例において、第1相似領域、第2相似領域、第3相似領域の順)に当該3つの相似領域を1つずつ対象相似領域として選択し、選択した対象相似領域毎に当該処理を繰り返し行う。なお、算出部367は、当該3つの相似領域の中からランダムに対象相似領域を1つずつ選択する構成であってもよく、当該3つの相似領域を領域内の体積が大きい方から小さい方に向かって1つずつ順に対象相似領域として選択する構成であってもよく、他の方法によって当該3つの相似領域を1つずつ順に対象相似領域として選択する構成であってもよい。
【0068】
ステップS160において対象相似領域が選択された後、算出部367は、ステップS110において記憶部32から読み出した第1基準情報に基づいて、ステップS160において選択した対象相似領域についての相似領域検出効率を算出する(ステップS170)。ここで、ステップS170の処理について説明する。対象相似領域についての相似領域検出効率は、第1容器領域のうちの対象相似領域に含まれる試料RAから放射されるガンマ線のうちステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率のことである。
【0069】
算出部367は、前述の第21容器領域、第22容器領域、第23容器領域の3つの領域のうち第1容器領域内において対象相似領域よりも内側に存在する領域の中から体積が最も大きな領域を第1基準領域として特定する。なお、対象相似領域が3つの相似領域(すなわち、第1相似領域、第2相似領域、第3相似領域)のうち第1容器領域内において最も内側の相似領域である場合、算出部367は、前述の第20容器領域を第1基準領域として特定する。また、算出部367は、第21容器領域、第22容器領域、第23容器領域の3つの領域のうち体積が第1基準領域の次に大きな領域を第2基準領域として特定する。例えば、第1基準領域が第20容器領域の場合、算出部367は、第21容器領域を第2基準領域として特定する。また、例えば、第1基準領域が第21容器領域である場合、算出部367は、第22容器領域を第2基準領域として特定する。
【0070】
算出部367は、ステップS110において読み出した第1基準情報を参照し、検出部固定状態において第1基準領域に対応する領域を有する第2容器を示す第2容器情報に対応付けられた第1基準検出効率情報を抽出する。そして、算出部367は、ステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線(この一例において、エネルギー)に基づいて、抽出した第1基準検出効率情報が示す第1基準検出効率のうちステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線の第1基準検出効率を第11基準検出効率として特定する。なお、算出部367は、第1基準領域が第20容器領域である場合、0を第11基準検出効率として特定する。
【0071】
また、算出部367は、ステップS110において読み出した第1基準情報を参照し、検出部固定状態において第2基準領域に対応する領域を有する第2容器を示す第2容器情報に対応付けられた第1基準検出効率情報を抽出する。そして、算出部367は、ステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線(この一例において、エネルギー)に基づいて、抽出した第1基準検出効率情報が示す第1基準検出効率のうちステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線の第1基準検出効率を第12基準検出効率として特定する。
【0072】
そして、算出部367は、以下に示した式(1)に基づいて、ステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線についての相似領域検出効率であって対象相似領域についての相似領域検出効率を算出する。
【0073】
【0074】
ここで、Eは、ステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線のエネルギーである。また、εx(E)は、当該測定対象ガンマ線についての相似領域検出効率であって対象相似領域についての相似領域検出効率を示す。また、εS(E)は、特定した第11基準検出効率を示す。また、εL(E)は、特定した第12基準検出効率を示す。また、VSは、第1基準容器内の領域の体積を示す。VLは、第2基準容器内の領域の体積を示す。
【0075】
このように、算出部367は、ステップS110において記憶部32から読み出した第1基準情報と、上記の式(1)とを用いて、ステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線についての相似領域検出効率であって対象相似領域についての相似領域検出効率を算出することができる。
【0076】
ステップS170の処理が行われた後、算出部367は、ステップS170において算出した対象相似領域についての相似領域検出効率に基づいて、当該相似領域検出効率のサム効果補正係数を算出する(ステップS180)。より具体的には、算出部367は、ステップS170において特定した第12基準検出効率と、ステップS170において特定した第11基準検出効率を当該第12基準検出効率に乗じたものとを用いて、例えば、「γ線スペクトロメトリー―実験と演習、野口正安著、日刊工業新聞社、1980年発行」、「放射能測定法シリーズNo.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー、財団法人日本分析センター、平成16年7月30日発行」、「Practical Gamma-ray Spectroscopy、Gordon Gilmore著、Wiley、2011年発行」等に記載された方法に基づいて当該サム効果補正係数を算出する。なお、算出部367は、ステップS170において算出した対象相似領域の相似領域検出効率に基づく他の方法によって当該サム効果補正係数を算出する構成であってもよく、これから開発される方法によって当該サム効果補正係数を算出する構成であってもよい。このため、以下では、ステップS180の処理についてこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0077】
ステップS180の処理が行われた後(すなわち、対象相似領域についての相似領域検出効率のサム効果補正係数が算出された後)、算出部367は、ステップS170において算出した対象相似領域についての相似領域検出効率に対して、ステップS180において算出したサム効果補正係数を乗じることにより、対象相似領域についての補正後相似領域検出効率を算出する(ステップS190)。そして、算出部367は、ステップS160に遷移し、次の対象相似領域を選択する。なお、算出部367は、ステップS160において対象相似領域として未選択の相似領域が存在しない場合、ステップS200に遷移する。
【0078】
ステップS160~ステップS190の繰り返し処理が行われた後、算出部367は、当該繰り返し処理におけるステップS190において繰り返し算出された複数の補正後相似領域検出効率に基づいて、ステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線の検出効率であって第1容器領域内に含まれる試料RAから放射される当該測定対象ガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を全体領域検出効率として算出する(ステップS200)。具体的には、算出部367は、以下に示した式(2)に基づいて、当該全体領域検出効率を算出する。
【0079】
【0080】
ここで、εAは、全体領域検出効率を示す。また、ε1は、第1相似領域の補正後相似領域検出効率を示す。また、ε2は、第2相似領域の補正後相似領域検出効率を示す。また、ε3は、第3相似領域の補正後相似領域検出効率を示す。また、V1は、第1相似領域の体積を示す。また、V2は、第2相似領域の体積を示す。また、V3は、第3相似領域の体積を示す。なお、V1は、第1相似領域の質量を示す変数であってもよい。この場合、V2は、第2相似領域の質量を示す変数であり、V3は、第3相似領域の質量を示す変数である。
【0081】
このように、算出部367は、上記の式(2)を用いて、ステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線の全体領域検出効率を算出することができる。すなわち、算出部367は、ステップS150~ステップS200の繰り返し処理により、ステップS130において選択された測定対象核種から放射されるガンマ線のうちサム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線のそれぞれについて、測定対象ガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率であってサム効果補正が行われた後の当該検出効率を全体領域検出効率として算出することができる。
【0082】
ステップS200の処理が行われた後、算出部367は、ステップS150に遷移し、次の測定対象ガンマ線を示す情報を選択する。なお、算出部367は、ステップS150において未選択の測定対象ガンマ線を示す情報が存在しない場合、ステップS210に遷移する。
【0083】
ステップS210において、算出部367は、記憶部32に予め記憶されたスペクトル情報を記憶部32から読み出す。当該スペクトル情報は、第1容器MB1に応じたスペクトル情報である。そして、算出部367は、繰り返し実行されたステップS200の処理によって算出された複数の全体領域検出効率であってステップS130においてユーザーから受け付けた情報が示す測定対象核種からの放射される測定対象ガンマ線のうちサム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線それぞれのガンマ線検出部10による全体領域検出効率と、読み出したスペクトル情報とに基づく所定の処理を行う(ステップS210)。当該処理は、当該2つ以上の測定対象ガンマ線それぞれの計数を算出する処理であってもよく、測定対象核種の放射能を算出する処理であってもよく、他の処理であってもよい。
【0084】
以上のように、制御装置30は、試料(この一例において、試料RA)が入れられた第1容器(この一例において、第1容器MB1)であってガンマ線を検出するガンマ線検出部(この一例において、ガンマ線検出部10)の少なくとも一部を囲む形状の第1容器内の領域が分割された複数の相似形状の領域である相似領域のそれぞれについて、相似領域に含まれる試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率をガンマ線検出部の検出結果に基づいて相似領域検出効率として算出する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、算出した相似領域検出効率に基づいて、第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる。
【0085】
また、制御装置30は、試料が入れられたマリネリ容器である第1容器であってガンマ線を検出するガンマ線検出部の少なくとも一部を囲む形状の第1容器内の領域が分割された複数の相似形状の領域である相似領域のそれぞれについて、相似領域に含まれる試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率をガンマ線検出部の検出結果に基づいて相似領域検出効率として算出する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、算出した相似領域検出効率に基づいて、マリネリ容器である第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる。
【0086】
また、制御装置30は、試料が入れられた第1容器であってガンマ線検出部の少なくとも検出素子を囲む形状の第1容器内の領域が分割された複数の相似形状の領域である相似領域のそれぞれに含まれる当該試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を算出し、算出した当該検出効率に基づいて放射能を算出する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、算出した相似領域検出効率に基づいて、ガンマ線検出部の少なくとも検出素子を囲む形状の容器である第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる。
【0087】
また、制御装置30は、試料を入れられた容器であって第1容器と相似形状の複数の容器である第2容器(この一例において、第21容器、第22容器、第23容器)のそれぞれについて、第2容器を示す第2容器情報と、第2容器内の試料から放射されたガンマ線の検出効率であって互いにエネルギーが異なるガンマ線それぞれの検出効率である第1基準検出効率を示す第1基準検出効率情報とが対応付けられた第1基準情報に基づいて、相似領域検出効率を算出する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、第1基準情報に基づいて算出された相似領域検出効率に基づいて、第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる。
【0088】
また、制御装置30は、第2容器それぞれの容器内の領域に基づいて、第1容器内の領域を複数の相似領域に分割する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、複数の第2容器それぞれの容器内の領域に基づいて第1容器内の領域が分割された複数の相似領域に基づいて、第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率(この一例において、全体領域検出効率)を精度よく算出することができる。
【0089】
<サム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線の検出効率を算出する処理の具体例2>
以下、
図8を参照し、サム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を制御装置30が算出する処理の具体例2について説明する。当該具体例2では、制御装置30は、第1容器MB1内の試料RAから放射される測定対象ガンマ線の検出効率であってサム効果補正が行われた後の検出効率を算出する際、第2基準情報に基づいて、第1容器MB1内の領域が分割された複数の相似領域それぞれについての相似領域検出効率を算出する。第2基準情報は、試料RAを入れられた容器であって第1容器MB1と相似形状の容器の体積の変化に対する当該容器内の試料RAから放射されたガンマ線であって互いにエネルギーを有する異なるガンマ線それぞれの検出効率の変化を示す情報である。これにより、制御装置30は、
図5に示したフローチャートの処理の場合と比べて、第1容器領域を細かく分割することができ、その結果、測定対象ガンマ線それぞれの全体領域検出効率をより精度よく算出することができる。第2基準情報の詳細については、後述する。
【0090】
図8は、サム効果を生じさせる2つ以上のガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を制御装置30が算出する処理の流れの他の例を示す図である。なお、
図8に示したフローチャートにおけるステップS130~ステップS150の処理と、当該フローチャートにおけるステップS180~ステップS210の処理とはそれぞれ、
図5に示したフローチャートおけるステップS130~ステップS150の処理と、当該フローチャートにおけるステップS180~ステップS210の処理とのそれぞれと同様の処理であるため、説明を省略する。また、当該フローチャートでは、ステップS310の処理が開始される前のタイミングにおいて、当該処理を開始する操作を制御装置30がユーザーから既に受け付けている場合について説明する。また、当該フローチャートでは、当該タイミングにおいて、第1容器MB1に応じたスペクトル情報が既に記憶部32に記憶されている場合について説明する。すなわち、当該フローチャートでは、当該タイミングにおいて、第1容器MB1内に含まれる試料RAから放射されるガンマ線について、測定システム1が、ガンマ線検出部10によるガンマ線の検出と、ガンマ線検出部10により検出されたガンマ線を示す信号に基づいた波高分析装置20によるスペクトルの生成とを既に終えている場合について説明する。
【0091】
算出部367は、記憶部32に予め記憶された第2基準情報を記憶部32から読み出す(ステップS310)。ここで、第2基準情報について説明する。第2基準情報は、前述した通り、試料RAを入れられた容器であって第1容器MB1と相似形状の容器である第3容器の体積の変化に対する当該容器内の試料RAから放射されたガンマ線であって互いにエネルギーを有する異なるガンマ線それぞれの検出効率の変化を示す情報である。以下では、一例として、第2基準情報が、当該第3容器の体積の変化に対する当該検出効率それぞれの変化を示す関数である場合について説明する。また、以下では、一例として、当該第3容器が、前述の第2容器である場合について説明する。なお、第2基準情報は、当該体積の変化と当該検出効率それぞれの変化とを対応付けたテーブルであってもよい。また、当該第3容器は、第2容器と異なる容器であってもよい。
【0092】
図9は、第2基準情報の一例を示す図である。
図9に示したグラフの横軸は、第2容器の体積の三乗根を示す。また、当該グラフの縦軸は、ガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を示す。なお、当該グラフでは、図が煩雑になるのを避けるため、第2容器の体積の変化に対する第2容器内の試料RAから放射されたガンマ線であって互いにエネルギーを有する異なるガンマ線それぞれの検出効率の変化を示す関数のうちの3つの関数である関数F1~関数F3のそれぞれのみが示されている。関数F1は、当該体積の変化に対する検出効率の変化であってエネルギーが800keVのガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率の変化を表している。また、関数F2は、当該体積の変化に対する検出効率の変化であってエネルギーが400keVのガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率の変化を表している。また、関数F3は、当該体積の変化に対する検出効率の変化であってエネルギーが200keVのガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率の変化を表している。
【0093】
図9に示したような関数、すなわち第2基準情報は、例えば、前述の第1基準情報に基づいて生成される。このため、制御装置30は、他の装置によって生成された第2基準情報がユーザーにより記憶部32に予め記憶される構成であってもよい。また、制御装置30は、第1基準情報に基づいて第2基準情報を生成する構成であってもよい。制御装置30が第2基準情報を生成する処理については、後述する。
【0094】
なお、第2基準情報は、試料RAを入れられた容器であって第1容器MB1と相似形状の容器である第3容器の質量(例えば、第3容器の体積×試料RAの密度)の変化に対する当該容器内の試料RAから放射されたガンマ線であって互いにエネルギーを有する異なるガンマ線それぞれの検出効率の変化を示す情報であってもよい。
【0095】
ステップS310の処理が行われた後、算出部367は、記憶部32に予め記憶された情報であって第1容器MB1の形状と、複数の体積それぞれを有する第2容器(この一例における第3容器)の形状とを示す第2容器形状情報を記憶部32から読み出す。算出部367は、
図5に示したフローチャートにおけるステップS120の処理と異なる処理によって、読み出した第2容器形状情報を用いて、第1容器領域を複数の相似領域に分割する(ステップS320)。ここで、
図10を参照し、ステップS320の処理について説明する。
図10は、ステップS320の処理を説明するための図である。また、
図10に示した断面図は、
図7に示した第1容器領域の断面図である。領域HR4は、第1容器領域を示す領域HR0と相似形状の領域を示す。領域HR4の体積は、体積が第1容器領域の体積よりも小さい。また、領域HR5は、領域HR0と相似形状の領域である。領域HR5の体積は、第1容器領域の体積以下であるが、領域HR4の体積よりも大きい。算出部367は、
図10に示した領域HR4と領域HR5とに基づいて、領域HR4と領域HR5とのそれぞれの体積に応じた体積を有し、第1容器領域と相似形状の領域HR6(
図10において、ハッチングされた領域)を抽出することができる。第1容器領域からの領域HR6の抽出方法を利用し、算出部367は、記憶部32から読み出した第2容器形状情報と、複数の第2容器それぞれの容器内の領域とに基づいて、第1容器領域を複数の相似領域に分割することができるとともに、第1容器領域を分割した複数の相似領域それぞれの体積を第2基準情報に基づいて決めることができる。
【0096】
ここで、以下では、一例として、ステップS320において算出部367が第1容器領域を互いに体積が同じ複数の相似領域に分割する場合について説明する。なお、算出部367は、ステップS320において、第1容器領域を、一部又は全部が互いに体積が異なる複数の相似領域に分割する構成であってもよい。
【0097】
算出部367は、ユーザーから予め受け付けた所定数によって第1容器領域の体積を割ることにより、当該複数の相似領域それぞれの体積を単位体積として算出する。この一例において、所定数は、当該体積を割り切れる数であるが、これに代えて、割り切れない数であってもよい。算出部367は、例えば、所定数を前述の操作画面を介してユーザーから受け付ける。
【0098】
算出部367は、第1容器領域のうち、体積が0の第2容器内の領域であって検出部固定状態における領域と重なる領域を第3基準領域として特定する。また、算出部367は、第1容器領域のうち、算出した単位体積を有する第2容器内の領域であって検出部固定状態における領域と重なる領域を第4基準領域として特定する。そして、算出部367は、第1容器領域のうち第4容器領域と重なる領域であって第3容器領域と重ならない領域を1つ目の相似領域として特定する。算出部367は、特定した1つ目の相似領域に対して、第3基準領域の体積を示す第3基準体積情報と、第4基準領域の体積を示す第4基準体積情報とを対応づける。
【0099】
次に、算出部367は、第1容器領域のうち、第3基準領域の体積に単位体積を足した体積(すなわち、単位体積)の第2容器内の領域であって検出部固定状態における領域を新たな第3基準領域として特定する。また、算出部367は、第1容器領域のうち、第4基準領域の体積に単位体積を足した体積(単位体積の2倍の体積)の第2容器内の領域であって検出部固定状態における領域を新たな第4基準領域として特定する。そして、算出部367は、第1容器領域のうち当該第4容器領域と重なる領域であって当該第3容器領域と重ならない領域を2つ目の相似領域として特定する。算出部367は、特定した2つ目の相似領域に対して、第3基準領域の体積を示す第3基準体積情報と、第4基準領域の体積を示す第4基準体積情報とを対応づける。
【0100】
次に、算出部367は、第1容器領域のうち、第3基準領域の体積に単位体積を足した体積(単位体積の2倍の体積)の第2容器内の領域であって検出部固定状態における領域を新たな第3基準領域として特定する。また、算出部367は、第1容器領域のうち、第4基準領域の体積に単位体積を足した体積(単位体積の3倍の体積)の第2容器内の領域であって検出部固定状態における領域を新たな第4基準領域として特定する。そして、算出部367は、第1容器領域のうち当該第4容器領域と重なる領域であって当該第3容器領域と重ならない領域を3つ目の相似領域として特定する。算出部367は、特定した3つ目の相似領域に対して、第3基準領域の体積を示す第3基準体積情報と、第4基準領域の体積を示す第4基準体積情報とを対応づける。
【0101】
算出部367は、このような相似領域の特定を、特定された相似領域の数が前述の所定数に達するまで行う。すなわち、所定数個目の相似領域は、第1容器領域のうち、単位体積の(所定数-1)倍の体積の第4基準領域と重なる領域であって、単位体積の所定数倍の体積の第3基準領域と重ならない領域である。また、当該相似領域には、当該第3基準領域の体積を示す第3基準体積情報と、当該第4基準領域の体積を示す第4基準体積情報とが対応付けられている。
このように、算出部367は、第3基準領域と第4基準領域とを用いて、第1容器領域を複数の(この一例において、所定数個の)相似領域に分割することができる。
【0102】
ここで、
図10に示したステップS160において、算出部367は、ステップS320において第1容器領域が分割された所定数個の相似領域のそれぞれ毎に、ステップS170~ステップS190の処理を繰り返し行う。例えば、算出部367は、第1容器領域内における内側から外側に向かって順に当該所定数個の相似領域を1つずつ対象相似領域として選択し、選択した対象相似領域毎に当該処理を繰り返し行う。なお、算出部367は、当該所定数個の相似領域の中からランダムに対象相似領域を1つずつ選択する構成であってもよく、当該所定数個の相似領域を領域内の体積が大きい方から小さい方に向かって1つずつ順に対象相似領域として選択する構成であってもよく、他の方法によって当該所定数個の相似領域を1つずつ順に対象相似領域として選択する構成であってもよい。
【0103】
図10に示したステップS160において対象相似領域が選択された後、算出部367は、ステップS310において記憶部32から読み出した第2基準情報に基づいて、当該ステップS160において選択した対象相似領域についての相似領域検出効率を算出する(ステップS330)。ここで、ステップS330の処理について説明する。
【0104】
算出部367は、ステップS310において読み出した第2基準情報に基づいて、ステップS160において選択された対象相似領域に対応付けられた第3基準体積情報が示す体積に応じた検出効率であってステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線の検出効率を第21基準検出効率として算出する。なお、算出部367は、第3基準体積情報が示す体積が0の場合、0を第21基準検出効率として算出(特定)する。
【0105】
また、算出部367は、ステップS310において読み出した第2基準情報に基づいて、ステップS160において選択された対象相似領域に対応付けられた第4基準体積情報が示す体積に応じた検出効率であってステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線の検出効率を第22基準検出効率として算出する。
【0106】
そして、算出部367は、上記の式(1)に基づいて、ステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線についての相似領域検出効率であって対象相似領域についての相似領域検出効率を算出する。この場合、式(1)におけるVSは、対象相似領域に対応付けられた第3基準体積情報が示す体積であり、式(1)におけるVLは、対象相似領域に対応付けられた第4基準体積情報が示す体積である。また、当該場合、式(1)におけるεS(E)は、特定した第21基準検出効率を示す。また、式(1)におけるεL(E)は、特定した第12基準検出効率を示す。
【0107】
このように、算出部367は、ステップS310において記憶部32から読み出した第2基準情報と、上記の式(1)とを用いて、ステップS150において選択された情報が示す測定対象ガンマ線についての相似領域検出効率であって対象相似領域についての相似領域検出効率を算出することができる。
【0108】
ここで、制御装置30が第2基準情報を生成する場合に制御装置30が行う処理について説明する。
図11は、制御装置30が第2基準情報を生成する場合に制御装置30が行う処理の流れの一例を示す図である。なお、
図11に示したフローチャートでは、ステップS340の処理が開始される前のタイミングにおいて、当該処理を開始する操作を制御装置30がユーザーから既に受け付けている場合について説明する。
【0109】
算出部367は、記憶部32に予め記憶された参照検出効率情報を記憶部32から読み出す(ステップS340)。参照検出効率情報は、互いに異なる2以上の体積のそれぞれについて、体積を示す参照体積情報と、当該体積の容器であって第1容器MB1と相似形状の容器に入れられた試料RAから放射されたガンマ線であって互いにエネルギーが異なるガンマ線それぞれの検出効率とが対応付けられた情報である。以下では、一例として、当該3以上の体積には、V11リットル、V12リットル、V13リットルの3つの体積のみが含まれる場合について説明する。なお、当該3以上の体積には、当該3つの体積の一部又は全部に代えて、他の体積が含まれる構成であってもよく、当該3つの体積の一部又は全部に加えて、他の体積が含まれる構成であってもよい。また、制御装置30は、他の装置によって生成された参照検出効率情報を記憶部32に記憶させる構成であってもよく、参照検出効率情報を生成し、生成した参照検出効率情報を記憶部32に記憶させる構成であってもよい。制御装置30が参照検出効率情報を生成する場合、制御装置30は、例えば、
図5に示したフローチャートの処理によって、互いに異なる当該3以上の体積のそれぞれの容器に入れられた試料RAから放射されたガンマ線であって互いにエネルギーが異なるガンマ線それぞれの検出効率を算出し、算出した検出効率と、当該3以上の体積とに基づいて、参照検出効率情報を生成する構成であってもよい。
【0110】
次に、算出部367は、ステップS340において記憶部32から読み出した参照検出効率情報に基づいて、第2基準情報を生成する(ステップS350)。ここで、
図12及び
図13を参照し、ステップS350の処理について説明する。
【0111】
図12は、3つの容器のそれぞれについて、第1容器MB1と相似形状の容器の体積と当該容器の試料RAから放射されたガンマ線の検出効率との関係をプロットしたグラフである。当該3つの容器は、ステップS340において算出部367が記憶部32から読み出した参照検出効率情報に含まれる参照体積情報が示す3つの体積それぞれの容器のことである。当該ガンマ線は、一例であり、エネルギーが700keVのガンマ線のことである。
【0112】
図12に示したグラフの横軸は、第1容器MB1と相似形状の容器の体積の三乗根を示す。当該グラフの縦軸は、当該容器の試料RAから放射されたガンマ線の検出効率の逆数を示す。
図12に示したグラフの点P1は、第1容器MB1と相似形状の容器であってV11リットルの容器の試料RAから放射されたガンマ線の検出効率を示す。また、当該グラフの点P2は、第1容器MB1と相似形状の容器であってV12リットルの容器の試料RAから放射されたガンマ線の検出効率を示す。また、当該グラフの点P3は、第1容器MB1と相似形状の容器であってV13リットルの容器の試料RAから放射されたガンマ線の検出効率を示す。
【0113】
算出部367は、
図12に示したグラフの点P1~点P3のそれぞれに対して、予め決められたフィッティング関数によるフィッティングを行うことにより、700keVのガンマ線についての第2基準情報を生成することができる。フィッティング関数は、例えば、
図12に示したような3次多項式の関数である。当該関数のε
MRは、当該ガンマ線の検出効率を示す。当該関数のa
0、a
1、a
2、a
3のそれぞれは、フィッティングパラメーターを示す。当該関数のVは、第1容器MB1と相似形状の容器の体積を示す。なお、フィッティング関数は、3次以上の多項式の関数、指数関数等の他の関数であってもよい。ただし、我々の経験上、ステップS350の処理において用いるフィッティング関数は、3次多項式の関数以外の関数である場合と比べて、フィッティングの精度が高いため、3次多項式の関数であることが望ましい。
【0114】
図13は、
図12示したプロットをフィッティング関数によりフィッティングした結果の一例を示す図である。
図13に示した関数F4は、
図12示したプロットを
図12に示したフィッティング関数によってフィッティングした結果であり、700keVのガンマ線についての第2基準情報を表す。
このような処理により、算出部367は、ステップS340において記憶部32から読み出した参照検出効率情報に基づいて、第2基準情報を生成することができる。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、生成した第2基準情報に基づいて、第1容器MB1に入れられた試料RAから放射されるガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を精度よく算出することができる。
【0115】
以上により、制御装置30は、第1容器(この一例において、第1容器MB1)と相似形状の容器であって試料(この一例において、試料RA)を入れられた容器である第3容器(この一例において、第2容器)の体積の変化に対する第3容器内の試料から放射されたガンマ線であって互いにエネルギーが異なるガンマ線それぞれのガンマ線検出部(この一例において、ガンマ線検出部10)による検出効率の変化を示す第2基準情報に基づいて、相似領域検出効率を算出する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、第2基準情報に基づいて算出された相似領域検出効率に基づいて、第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる。
【0116】
また、制御装置30は、第2基準情報が示す体積の第3容器であって互いに体積が異なる2つの第3容器それぞれの容器内の領域に基づいて、第1容器内の領域を複数の相似領域に分割する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、第2基準情報が示す体積の第3容器であって互いに体積が異なる2つの第3容器それぞれの容器内の領域に基づいて第1容器内の領域が分割された複数の相似領域に基づいて、第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる。
【0117】
また、制御装置30は、複数の基準となる検出効率である基準検出効率(この一例において、参照検出効率情報が示す検出効率)と、基準検出効率のそれぞれに対応付けられた体積(この一例において、参照体積情報が示す体積)とが対応付けられた情報に基づいて、第2基準情報を生成する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、生成した第2基準情報に基づいて、第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる。
【0118】
また、制御装置30は、第1容器と相似形状の容器であって試料を入れられた容器である第3容器の質量の変化に対する第3容器内の試料から放射されたガンマ線であって互いにエネルギーが異なるガンマ線それぞれのガンマ線検出部による検出効率の変化を示す第2基準情報に基づいて、相似領域検出効率を算出する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、第2基準情報に基づいて算出された相似領域検出効率に基づいて、第1容器に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を精度よく算出することができる。
【0119】
<サム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線の検出効率を算出する処理の具体例3>
以下、
図14を参照し、サム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を制御装置30が算出する処理の具体例3について説明する。当該具体例3では、制御装置30は、第1容器MB1内の試料RAから放射される測定対象ガンマ線の検出効率であってサム効果補正が行われた後の検出効率を算出する際、第1容器MB1内の領域が分割された複数の相似領域それぞれについて、相似領域を複数の部分領域に分割し、分割した部分領域に基づいて、各相似領域の相似領域検出効率を算出する。これにより、制御装置30は、
図5及び
図8に示したフローチャートの処理の場合と比べて、第1容器領域を更に細かく分割することができ、その結果、前述の補正後相似領域検出効率をより精度よく算出することができる。
【0120】
図14は、サム効果を生じさせる2つ以上のガンマ線のガンマ線検出部10による検出効率を制御装置30が算出する処理の流れの更に他の例を示す図である。なお、
図14に示したフローチャートにおけるステップS310~ステップS330の処理と、当該フローチャートにおけるステップS200~ステップS210の処理とはそれぞれ、
図8に示したフローチャートおけるステップS310~ステップS330の処理と、当該フローチャートにおけるステップS200~ステップS210の処理とのそれぞれと同様の処理であるため、説明を省略する。また、当該フローチャートでは、ステップS310の処理が開始される前のタイミングにおいて、当該処理を開始する操作を制御装置30がユーザーから既に受け付けている場合について説明する。また、当該フローチャートでは、当該タイミングにおいて、第1容器MB1に応じたスペクトル情報が既に記憶部32に記憶されている場合について説明する。すなわち、当該フローチャートでは、当該タイミングにおいて、第1容器MB1内に含まれる試料RAから放射されるガンマ線について、測定システム1が、ガンマ線検出部10によるガンマ線の検出と、ガンマ線検出部10により検出されたガンマ線を示す信号に基づいた波高分析装置20によるスペクトルの生成とを既に終えている場合について説明する。
【0121】
算出部367は、
図14に示したステップS140において抽出した2つ以上の測定対象ガンマ線を示す情報を1つずつ選択し、選択した測定対象ガンマ線を示す情報毎にステップS420~ステップS200の処理を繰り返し行う(ステップS410)。すなわち、算出部367は、
図14に示したステップS130においてユーザーから受け付けた測定対象核種情報が示す測定対象核種から放射される測定対象ガンマ線のうちサム効果を生じさせる可能性のある2つ以上の測定対象ガンマ線のそれぞれ毎に当該処理を繰り返し行う。
【0122】
ステップS410において測定対象ガンマ線を示す情報が選択された後、算出部367は、
図14に示したステップS320において第1容器領域が分割された所定数個の相似領域のそれぞれ毎に、ステップS430~ステップS530の処理を繰り返し行う(ステップS420)。例えば、算出部367は、第1容器領域内における内側から外側に向かって順に当該所定数個の相似領域を1つずつ対象相似領域として選択し、選択した対象相似領域毎に当該処理を繰り返し行う。なお、算出部367は、当該所定数個の相似領域の中からランダムに対象相似領域を1つずつ選択する構成であってもよく、当該所定数個の相似領域を領域内の体積が大きい方から小さい方に向かって1つずつ順に対象相似領域として選択する構成であってもよく、他の方法によって当該所定数個の相似領域を1つずつ順に対象相似領域として選択する構成であってもよい。
【0123】
算出部367は、前述の第2容器形状情報を記憶部32から読み出す。算出部367は、読み出した第2容器形状情報に基づいて、ステップS420において選択された対象相似領域を複数の部分領域に分割する(ステップS430)。ここで、ステップS430の処理について説明する。算出部367は、対象相似領域を複数の部分領域に分割する際、如何なる形状の分割領域に分割してもよい。以下では、一例として、各対象相似領域の体積が互いにほぼ等しくなるように対象相似領域を分割するとともに、ガンマ線検出部10の実効中心からガンマ線検出部10の外側に向かう方向において部分領域が1つのみ存在するように対象相似領域を分割する場合について説明する。
図15は、複数の部分領域に分割された対象相似領域の一例を示す図である。また、
図15に示した断面図は、
図10に示した第1容器領域の断面図である。
図15では、ガンマ線検出部10の実効中心と部分領域との相対的な位置関係を明確にするため、ガンマ線検出部10のエンドキャップECを示している。ステップS430において、算出部367は、
図8に示したフローチャートにおいて第1容器領域を分割した複数の相似領域のそれぞれを複数の部分領域に分割する。
図15に示した領域HR7は、
図14に示したフローチャートにおけるステップS320において第1容器領域が分割された複数の相似領域のうちの1つの相似領域を示す。また、
図15に示した領域HR7の内側においてハッチングされた複数の領域は、当該1つの相似領域が分割された複数の部分領域を示す。
【0124】
図14に戻る。ステップS430の処理が行われた後、算出部367は、ステップS430において対象相似領域が分割された複数の部分領域を1つずつ対象部分領域として選択し、選択した対象部分領域毎に、ステップS450~ステップS470の処理を繰り返し行う(ステップS440)。
【0125】
ステップS440において対象部分領域が選択された後、算出部367は、ガンマ線検出部10の実効中心の位置から対象部分領域の位置までの距離である第1距離を算出する(ステップS450)。ここで、再び
図15を参照し、ステップS450の処理について説明する。
【0126】
図15に示した領域HR71は、対象部分領域の一例である。また、
図15に示した点GPは、領域HR71の位置を示す。この一例において、対象部分領域の位置は、対象部分領域の重心の位置によって表される。なお、対象部分領域の位置は、これに代えて、対象部分領域の図心の位置、対象部分領域における効率上の平均的中心、対象部分領域において乱数により決定された位置等の対象部分領域に応じた他の位置によって表されてもよい。また、
図15に示した点ECPは、前述した通り、ガンマ線検出部10の実効中心を示す。算出部367は、点ECPから点GPまでのベクトルを生成する。そして、算出部367は、当該ベクトルのノルムをガンマ線検出部10の実効中心の位置から対象部分領域の位置までの距離である第1距離として算出する。
【0127】
ステップS450の処理が行われた後、算出部367は、ステップS450において算出されたベクトルに基づいて、当該ベクトル上の線分のうち対象部分領域の位置よりも点ECP側に存在する試料RAと重なる線分の長さを第2距離として算出する(ステップS460)。すなわち、第2距離は、対象部分領域の位置から放射されたガンマ線が当該実効中心まで移動するまでの間に試料RAの中を通る距離のことである。
【0128】
次に、算出部367は、ステップS450において算出された第1距離と、ステップS460において算出された第2距離とに基づいて、仮係数を算出する(ステップS470)。ここで、当該仮係数と、ステップS470の処理とのそれぞれについて説明する。
【0129】
対象部分領域内の試料RAから放射されるガンマ線の検出効率であって対象部分領域の位置から当該第1距離だけ離れた位置における検出効率は、試料RA内の当該ガンマ線の移動に伴う減弱を示す線減弱係数μに-Ljを乗じた値を指数として有する指数関数(具体的には、ネイピア数eを底とする指数関数)に比例し、当該第1距離の2乗に反比例する。このような比例関係は、以下に示した式(3)によって表される。
【0130】
【0131】
ここで、jは、部分領域のそれぞれを示す整数であり、部分領域の数をMとした場合、1~Mの正の整数のいずれかである。εjは、jが示す部分領域の検出効率を示す。当該検出効率は、当該部分領域内の試料RAから放射されるガンマ線の検出効率のことである。rjは、jが示す部分領域における第1距離を示す。Ljは、jが示す部分領域における第2距離を示す。μは、前述した通り、当該ガンマ線が試料RA内を移動する場合における線減弱係数である。なお、μは、線減弱係数に代えて、特定の質量減弱係数と変数である密度の積とで決定される線減弱係数相当の値であってもよい。Kは、上記の式(3)が表す比例関係において比例係数であって対象相似領域に応じた比例係数である。
【0132】
上記の式(3)における線減弱係数μが予め算出されている場合、対象相似領域に応じた比例係数Kを知ることができれば、当該式(3)を用いて、jが対象部分領域を示す場合におけるεjを算出することができる。ここで、上記の式(3)の両辺のそれぞれにおいてjについての和を取った場合、左辺は、対象相似領域についての相似領域検出効率となる。すなわち、当該場合、上記の式(3)は、以下に示した式(4)のように変形される。
【0133】
【0134】
ここで、iは、相似領域のそれぞれを示す整数であり、相似領域の数をVとした場合、1~Vの正の整数のいずれかである。また、εiは、iが示す相似領域の相似領域検出効率を示す。
【0135】
ε
iは、
図14に示したステップS330において算出されている。このため、ステップS470において算出部367は、ステップS450において算出した第1距離と、ステップS460において算出した第2距離と、予め算出した線減弱係数μと、以下に示した式(5)とによって算出される値を前述の仮係数として算出する。つまり、算出部367は、ステップS440~ステップS470の繰り返し処理によって、対象相似領域が分割された複数の部分領域のそれぞれについての仮係数を算出する。そして、算出部367は、当該ステップS330において算出された対象相似領域についての相似領域検出効率と、上記の式(4)とを用いて、比例係数Kを算出することができる。
【0136】
【0137】
以上のように比例係数Kを算出するため、算出部367は、ステップS470において、対象部分領域についての仮係数を算出する。なお、線減弱係数μは、ステップS470において算出される構成であってもよく、ステップS470の処理が実行される前のタイミングにおいて算出される構成であってもよい。
【0138】
ステップS440~ステップS470の繰り返し処理が行われた後、算出部367は、対象相似領域が分割された複数の部分領域のそれぞれについての仮係数と、上記の式(4)とに基づいて、比例係数Kを算出する(ステップS480)。
【0139】
次に、算出部367は、ステップS430において対象相似領域が分割された複数の部分領域を1つずつ対象部分領域として再び選択し、選択した対象部分領域毎に、ステップS500~ステップS520の処理を繰り返し行う(ステップS490)。ステップS490の処理は、ステップS440の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0140】
ステップS490において対象部分領域が選択された後、算出部367は、選択された対象部分領域についての部分領域検出効率を算出する(ステップS500)。ある部分領域についての部分領域検出効率は、当該部分領域内の試料RAから放射されるガンマ線の検出効率のことである。ステップS500において、算出部367は、ステップS480において算出された比例係数Kと、ステップS450において算出された対象部分領域についての第1距離と、ステップS460において算出された対象部分領域についての第2距離と、予め算出した線減弱係数μと、上記の式(3)とに基づいて、対象部分領域についての部分領域検出効率を算出する。
【0141】
次に、算出部367は、ステップS500において算出した対象部分領域についての部分領域検出効率を補正するためのサム効果補正係数を算出する(ステップS510)。ステップS510において算出部367がサム効果補正係数を算出する方法は、
図5に示したステップS180において算出部367がサム効果補係数を算出する方法と同様の方法であるため、説明を省略する。
【0142】
次に、算出部367は、ステップS500において算出した対象部分領域についての部分領域検出効率に対して、ステップS510において算出したサム効果補正係数を乗じることにより、対象部分領域についての補正後部分領域検出効率を算出する(ステップS520)。そして、算出部367は、ステップS490に遷移し、次の対象部分領域を選択する。なお、算出部367は、ステップS490において対象部分領域として未選択の部分領域が存在しない場合、ステップS530に遷移する。
【0143】
ステップS490~ステップS520の繰り返し処理が行われた後、算出部367は、当該繰り返し処理におけるステップS520において繰り返し算出された補正後部分領域検出効率のそれぞれに基づいて、ステップS420において選択された対象相似領域の補正後相似領域検出効率を算出する(ステップS530)。具体的には、算出部367は、対象相似領域を分割した複数の部分領域のそれぞれについて、部分領域の体積を対象相似領域の体積によって除した値を、当該部分領域についての補正後部分領域検出効率に乗じた値を算出する。算出部367は、算出した複数の当該値の合計を、補正後相似領域検出効率として算出する。そして、算出部367は、ステップS420に遷移し、次の対象相似領域を選択する。なお、算出部367は、ステップS420において対象相似領域として未選択の相似領域が存在しない場合、ステップS200に遷移し、ステップS420~ステップS530の繰り返し処理によって算出した補正後相似領域検出効率のそれぞれに基づいて、全体領域検出効率を算出する。具体的には、算出部367は、第1容器領域を分割した複数の相似領域のそれぞれについて、相似領域の体積を第1容器領域の体積によって除した値を、当該相似領域についての補正後相似領域検出効率に乗じた値を算出する。算出部367は、算出した複数の当該値の合計を、全体領域検出効率として算出する。
【0144】
このように、ステップS410~ステップS200の繰り返し処理により、算出部367は、測定対象ガンマ線のそれぞれについての全体領域検出効率を算出する。これにより、制御装置30は、具体例1、具体例2のそれぞれにおいて説明した方法であって全体領域検出効率を算出する方法と比べて、より精度の高い全体領域検出効率を算出することができる。その結果、制御装置30は、全体領域検出効率に基づく所定の処理をより高い精度で行うことができる。
【0145】
以上説明したように、本実施形態における制御装置30は、複数の相似領域のそれぞれについて、相似領域を複数の部分領域に分割し、分割した部分領域毎の検出効率であって部分領域に含まれる試料(この一例において、試料RA)から放射されるガンマ線のガンマ線検出部(この一例において、ガンマ線検出部10)による検出効率である部分領域検出効率を算出し、算出した部分領域検出効率に基づいて、相似領域検出効率を算出する。これにより、制御装置30は、モンテカルロ・シミュレーションを行うことなく、算出した部分領域検出効率に基づいて、第1容器(この一例において、第1容器MB1)に入れられた試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率(この一例において、全体領域検出効率)を精度よく算出することができる。
【0146】
また、制御装置30は、複数の相似領域のそれぞれについて、相似領域について算出した相似領域検出効率に対するサム効果補正を行い、当該サム効果補正の結果に基づいて、第1容器内の試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率を算出する。これにより、制御装置30は、算出した検出効率であって第1容器内の試料から放射されるガンマ線のガンマ線検出部による検出効率に基づく処理を精度よく行うことができる。
【0147】
なお、測定システム1は、ガンマ線検出部10と、波高分析装置20と、遮蔽体BKとの一部又は全部を備えない構成であってもよい。
また、遮蔽体BKの内部には、ガンマ線検出部10に取り付けられた容器(例えば、第1容器MB1)を他の容器(例えば、第1容器MB1と体積の異なる容器であって試料RAが入れられた容器)に自動的に交換する機構が備えられる構成であってもよい。
また、遮蔽体BKの内部には、ガンマ線検出部10に取り付けられた容器(例えば、第1容器MB1)に自動的に試料(例えば、試料RA)を供給する機構が備えられる構成であってもよい。
また、上記において説明した制御装置30は、上記において説明した各種の処理のそれぞれ毎に必要に応じて自己吸収補正を行う構成であってもよく、自己吸収補正を行わない構成であってもよい。
【0148】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0149】
また、以上に説明した装置(例えば、制御装置30)における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリー(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0150】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0151】
1…測定システム、10…ガンマ線検出部、20…波高分析装置、30…制御装置、32…記憶部、33…入力受付部、34…通信部、35…表示部、36…制御部、361…表示制御部、363…設定受付部、365…スペクトル取得部、367…算出部、369…測定制御部、BK…遮蔽体、EC…エンドキャップ、GC…検出素子、MB1…第1容器、MB21…容器、MB22…容器、MB23…容器、RA…試料、μ…線減弱係数