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特許7092946マルチチャンネル中空糸膜を含む燃料電池用膜加湿器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】マルチチャンネル中空糸膜を含む燃料電池用膜加湿器
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20220621BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20220621BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20220621BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220621BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220621BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D53/22
B01D69/08
H01M8/04 N
H01M8/10 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021529747
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 KR2019018168
(87)【国際公開番号】W WO2020138852
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0171120
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】オ ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム キョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】アン ウンジョン
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0099753(KR,A)
【文献】特開2017-196556(JP,A)
【文献】特開2010-112568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0054804(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
D01F 1/00- 6/96
H01M 8/04
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空糸膜が収容されるミドルケース;
前記ミドルケースと結合するキャップケース;及び
前記複数の中空糸膜の端部がポッティングされている固定部を含み、
前記中空糸膜のそれぞれの内部に複数のチャンネルが形成されており、前記複数のチャンネルの内径のうち、最大内径と最小内径との差が30~600μmであることを特徴とする、燃料電池用膜加湿器。
【請求項2】
前記中空糸膜は、それぞれ1000~5000μmの外径を有することを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用膜加湿器。
【請求項3】
前記複数のチャンネルは、それぞれ300~1300μmの内径を有することを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池用膜加湿器。
【請求項4】
各中空糸膜の外周面とそのチャンネルとの間の最短距離は、60~500μmであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用膜加湿器。
【請求項5】
各中空糸膜の前記複数のチャンネルの断面積の和は、中空糸膜の断面積の40~90%であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用膜加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチャンネル中空糸膜を含む燃料電池用膜加湿器に関し、より詳細には、様々なサイズの複数チャンネルを有することによって、高流量時に加湿性能を維持しながらも低流量時に加湿性能が低くてフラッディングを防止できる、マルチチャンネル中空糸膜を含む燃料電池用膜加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、水素と酸素を結合させて電気を生産する発電型電池である。燃料電池は、乾電池や蓄電池などの一般化学電池とは違い、水素と酸素が供給される限り電気を生産し続けることができ、熱損失がなくて内燃機関に比べて効率が約2倍程度高いという利点がある。
【0003】
また、水素と酸素との結合により発生する化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換するので、公害物質の排出が少ない。このため、燃料電池は、環境に優しいだけでなく、エネルギー消費の増加による資源枯渇に対するおそれを減らすことができるという利点がある。
【0004】
このような燃料電池は、用いられる電解質の種類によって、大きく、高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)、リン酸型燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell:PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell:MCFC)、固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)、及びアルカリ型燃料電池(Alkaline Fuel Cell:AFC)などに分類できる。
【0005】
これらの燃料電池のそれぞれは、根本的に同じ原理によって作動するが、使われる燃料の種類、運転温度、触媒、電解質などが互いに異なる。このうち、高分子電解質型燃料電池(PEMFC)は、他の燃料電池に比べて低温で動作するという点、及び出力密度が大きくて小型化が可能であるので、小規模の据え置き型発電装備だけでなく、輸送システムでも最も有望なものとして知られている。
【0006】
高分子電解質型燃料電池(PEMFC)の性能を向上させるのに最も重要な要素の一つは、膜-電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)の高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane又はProton Exchange Membrane:PEM)に一定量以上の水分を供給して含水率を維持させることである。高分子電解質膜が乾燥すれば、発電効率が急に低下するからである。
【0007】
高分子電解質膜を加湿する方法としては、1)耐圧容器に水を満たした後、対象気体を拡散器(diffuser)に通過させて水分を供給するバブラー(bubbler)加湿方式、2)燃料電池反応に必要な供給水分量を計算し、ソレノイドバルブを介してガス流動管に直接水分を供給する直接噴射(direct injection)方式、及び3)高分子分離膜を用いてガスの流動層に水分を供給する加湿膜方式などがある。
【0008】
これらの中でも、排気ガス中に含まれる水蒸気のみを選択的に透過させる膜を用いて水蒸気を、高分子電解質膜に供給されるガスに提供することによって、高分子電解質膜を加湿する加湿膜方式が、加湿器を軽量化及び小型化できるという点で有利である。
【0009】
加湿膜方式に用いられる選択的透過膜としては、モジュールを形成する場合、単位体積当たり透過面積の大きい中空糸膜が好ましい。すなわち、中空糸膜を用いて膜加湿器を製造する場合、接触表面積の広い中空糸膜の高集積化が可能であり、小容量でも燃料電池の加湿を十分に行うことができ、低価素材の使用が可能であり、燃料電池から高温で排出される未反応ガスに含まれた水分と熱を回収し、加湿器を通じて再利用できるという利点を有する。
【0010】
膜加湿器は、燃料電池のスタックに水分を供給し、スタックが円滑に電気を生産するようにサポートする。しかしながら、低流量で過度な水分が供給されると、水分が凝縮してスタック内の流路が塞がり、スタックの一部が劣化する問題につながることがある。
【0011】
したがって、多量の水分を要する高流量区間では多量の水分を供給し、少量の水分を要する低流量区間では少量の水分を供給する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】大韓民国登録特許第10-0750289号
【文献】大韓民国登録特許第10-1848817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一観点は、様々なサイズの複数のチャンネルを有することによって、高流量時に加湿性能を維持しながらも低流量時に加湿性能が低くてフラッディングを防止できる、マルチチャンネル中空糸膜を含む燃料電池用膜加湿器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一観点によって、複数の中空糸膜が収容されるミドルケース;前記ミドルケースに結合するキャップケース;及び、前記複数の中空糸膜の端部がポッティングされている固定部を含み、前記中空糸膜のそれぞれの内部に複数のチャンネルが形成されており、前記複数のチャンネルの内径のうち、最大内径と最小内径との差が30~600μmであることを特徴とする、燃料電池用膜加湿器が提供される。
【0015】
前記中空糸膜は、それぞれ1000~5000μmの外径を有することができる。
【0016】
前記複数のチャンネルは、それぞれ300~1300μmの内径を有することができる。
【0017】
各中空糸膜の外周面とそれのチャンネルとの間の最短距離は、60~500μmであってよい。
【0018】
各中空糸膜の前記複数のチャンネルの断面積の和は、前記中空糸膜の断面積の40~90%であってよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、様々なサイズの複数チャンネルを持つ中空糸膜を燃料電池用膜加湿器に適用することによって、低流量区間では、差圧によりサイズの大きいチャンネルのみに流体が流れ、水分伝達効率を下げることによってフラッディングを防止し、高流量区間では、サイズの大きいチャンネルと小さいチャンネルの両方が水分伝達に用いられて十分な水分伝達が可能である効果がある。
【0020】
また、中空糸膜にマルチチャンネルを形成することによって、単一チャンネルが形成された中空糸膜に比べて膜厚が増加し、中空糸膜の強度及び耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例による燃料電池用膜加湿器の分解斜視図である。
【0022】
図2】本発明の他の実施例による燃料電池用膜加湿器の分解斜視図である。
【0023】
図3】本発明の一実施例による中空糸膜の断面図である。
【0024】
図4】比較例による中空糸膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1及び図2に示すように、本発明の燃料電池用膜加湿器100は、ミドルケース110、キャップケース120、固定部130及び中空糸膜束200を含む。
【0026】
ミドルケース110は、キャップケース120と結合して膜加湿器100の外形をなす。ミドルケース110とキャップケース120は、ポリカーボネートなどの硬質プラスチック又は金属からなり得る。ミドルケース110とキャップケース120は、図1に示すように、幅方向の断面形状が円形であってもよく、図2に示すように、幅方向の断面形状が多角形であってもよい。前記多角形は、方形、正方形、台形、平行四辺形、五角形、六角形などでよく、前記多角形は、角部が丸まった形態であってもよい。また、前記円形は楕円形であってもよい。
【0027】
ミドルケース110には、第2流体が供給される第2流体流入口112と、第2流体が排出される第2流体流出口113がそれぞれ形成されている。
【0028】
図1及び図2では、複数の中空糸膜210が一つの中空糸膜束200となってミドルケース110内に配置されているが、前記中空糸膜210は、2つ以上のカートリッジ(cartridges)に分割して収容された状態で前記ミドルケース110内に配置されてもよい。
【0029】
キャップケース120には、流体出入口121が形成されている。ミドルケース110の両端にそれぞれ結合しているキャップケース120のいずれか一方に形成された流体出入口121は、第1流体流入口となり、他方に形成された流体出入口121は、第1流体流出口となる。第1流体流入口として働く流体出入口121から流入した第1流体は、ミドルケース110の内部に収容された中空糸膜210の内部管路[すなわち、中空(lumens)]を通過した後、第1流体流出口として働く流体出入口121から排出される。
【0030】
中空糸膜210は、ナフィオン(Nafion)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリイミド(PI)、ポリフェニルスルホン(polyphenylsulfone)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、又はこれらのうち2つ以上の混合物で形成されてよい。
【0031】
中空糸膜210の端部は固定部130にポッティングされている。前記固定部130は、中空糸膜210を結束するとともに中空糸膜210間の空隙及び中空糸膜210とミドルケース110との間の空隙を埋める。これによって、ミドルケース110の両端部はそれぞれ固定部130によって塞がり、その内部には第2流体が通過する流路が形成される。固定部130の材料は公知のものであり、本明細書で詳細な説明は省略する。
【0032】
図3は、本発明の一実施例による中空糸膜210の断面図であり、図4は、比較例による中空糸膜220の断面図である。
【0033】
本発明によると、中空糸膜210の内部に複数のチャンネル211,212,213,214が形成されており、複数の前記チャンネル211,212,213,214の内径D1,D2,D3,D4のうち最大内径D1と最小内径D4との差が30~600μmである。
【0034】
すなわち、本発明によると、前記複数のチャンネル211,212,213,214のうち少なくとも一つは、他のチャンネルと異なるサイズの内径を有し、このような内径差は30~600μmである。
【0035】
図3に示すように、本発明の実施例による中空糸膜210は、異なるサイズを有する4個のチャンネル211,212,213,214を有することができる。一つの中空糸膜210に形成されるチャンネルの個数は4個に限定されず、2~12個のチャンネルが形成されてよい。チャンネルが異なる個数に形成される如何なる場合でも、前述したように、複数のチャンネルのうち少なくとも一つは、他のチャンネルと異なるサイズの内径を有し、このような内径差は30~600μmである。例えば、中空糸膜の複数のチャンネルは、相対的に大きい第1内径を有する2個のチャンネルと、相対的に小さい第2内径を有する2個のチャンネルから構成されてもよく、前記第1内径と前記第2内径との差は30~600μmであってよい。
【0036】
図3に示すように、中空糸膜210の複数のチャンネルは、最も大きい第1チャンネル211、第1チャンネル211よりも小さい第2チャンネル212、第2チャンネル212よりも小さい第3チャンネル213、及び第3チャンネル213よりも小さい第4チャンネル214から構成されてよい。このように、全てのチャンネル211,212,213,214がそれぞれ異なる内径を有するように形成されてよい。
【0037】
各チャンネル211,212,213,214の中心C1,C2,C3,C4が中空糸膜210の中心から同一距離に配列されることによって、前記中心C1,C2,C3,C4は中空糸膜210の 中心と一致する中心を有する単一の仮想円215上に配列され得る。或いは、複数のチャンネル211,212,213,214は、その中心C1,C2,C3,C4が、中空糸膜210と同心円である単一の仮想円215上に配列されないように、前記中空糸膜210内にランダムに配列されてもよい。
【0038】
複数のチャンネル211,212,213,214は、中空糸膜210の外周面と各チャンネル211,212,213,214との間の最短距離である厚さT1,T2,T3,T4が互いに同一に又は異なるように前記中空糸膜210内に配列され得る。
【0039】
チャンネル211,212,213,214の中心C1,C2,C3,C4が中空糸膜210の中心から同一距離に配列される場合、前記チャンネル211,212,213,214の内径は少なくとも30μmの差が出るので、前記厚さT1,T2,T3,T4のうち少なくとも一つが大きくなりすぎてしまい、中空糸膜の加湿性能が低下することがある。
【0040】
すなわち、中空糸膜210の加湿性能を考慮して、チャンネル211,212,213,214にそれぞれ対応する厚さT1,T2,T3,T4が過度に大きくないように前記チャンネル211,212,213,214が中空糸膜210内に形成されることが好ましい。例えば、前記中空糸膜210の外周面とチャンネル211,212,213,214との間の最短距離(すなわち、厚さ)T1,T2,T3,T4は60~500μmであってよい。
【0041】
また、チャンネル211,212,213,214の中心C1,C2,C3,C4と中空糸膜210の中心をそれぞれつなぐ仮想の線分は互いに90°をなすように、前記チャンネル211,212,213,214が中空糸膜210内に配列されてよいが、本発明がこれに限定されるものではなく、前記チャンネル211,212,213,214が互いに所定間隔で離隔して配列されさえすれば、前記仮想の線分が互いに90°にならなくてもよい。
【0042】
前記中空糸膜210は、1000~5000μmの外径を有することができる。複数個のチャンネル211,212,213,214を有する本発明に係る中空糸膜210は、単一のチャンネルのみを有する中空糸膜に比べて、2倍以上の外径サイズを有するように形成され得る。
【0043】
前記複数のチャンネル211,212,213,214は、それぞれ300~1300μmの内径D1,D2,D3,D4を有することができる。中空糸膜210の外径が大きいほど、前記チャンネル211,212,213,214の内径D1,D2,D3,D4も大きくなるはずである。例えば、中空糸膜210の外径が2300μmであるとき、チャンネル211,212,213,214は900μm、800μm、700μm、及び600μmの内径D1,D2,D3,D4をそれぞれ有することができる。
【0044】
前記中空糸膜210の外周面とチャンネル211,212,213,214との間の最短距離(すなわち、厚さ)T1,T2,T3,T4は、60~500μmであってよい。
【0045】
前記厚さT1,T2,T3,T4の一つでも60μm未満であれば、圧力による破損のおそれがあり、前記厚さT1,T2,T3,T4のうち一つでも500μmを超えると、前記中空糸膜210の加湿性能が低下することがある。
【0046】
チャンネルの内径が比較的小さく、チャンネルの個数が多い場合、中空糸膜210の中心部位にも前記チャンネルの一部が形成されてもよい。
【0047】
前記複数のチャンネル211,212,213,214の断面積の和は、中空糸膜210の断面積の40~90%であってよい。中空糸膜210の外径が2300μmであり、前記チャンネル211,212,213,214が900μm、800μm、700μm、及び600μmの内径D1,D2,D3,D4を有する場合、前記複数のチャンネル211,212,213,214の断面積の和は、中空糸膜210の断面積の約43.5%である。
【0048】
前記断面積の割合は、相対的に小さい内径のチャンネルの数が多くなるほど、大きくなり得る。
【0049】
以下、中空糸膜210を製造する方法に関して説明する。
【0050】
中空糸膜210は、紡糸原液をノズルから放射することによって形成され得る。ノズルは、図3に示した中空糸膜210に対応する放射穴が形成されているものが用いられる。
【0051】
紡糸原液は、ポリマー、添加剤及び溶媒から構成される。
【0052】
前記ポリマーは、PVDF(polyvinylidene fluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitril)、ポリアクリロニトリル共重合体、ポリスルホン(polysulfone)、スルホン化ポリスルホン(sulfonated polysulfone)、ポリエステルスルホン(polyethersulfone)、セルロースアセテート(sellulose acetate)、セルローストリアセテート(cellulose triacetate)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)及びこれらのうち2つ以上の混合物よりなる群から選択されたいずれかであり得る。
【0053】
前記添加剤は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone,PVP)類及びこれらのうち2つ以上の混合物よりなる群から選択されるいずれかであり得る。
【0054】
前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-methyl-2-pyrrolidone)、ジメチルホルムアミド(DMF:dimethyl formamide)、ジメチルアセトアミド(DMAc:dimethyl acetamide)、クロロホルム(chloroform)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)及びこれらのうち2つ以上の混合物よりなる群から選択されるいずれかであり得る。
【0055】
前記紡糸原液を複数のノズルから同時に放射することによって、中空糸膜210の束(bundle)を得ることができる。紡糸された中空糸膜束は、凝固すると洗浄してロールに巻き取ることができる。
【0056】
図4に示した比較例による中空糸膜220は、図3の中空糸膜210の外径Dと同じ外径を有するが、図3の第2チャンネル212の内径D2と同じ内径を有する4個のチャンネル222が中空糸膜220の中心を基準に互いに対称に配列されている。
【0057】
比較例における中空糸膜220を用いて膜加湿器を製造する場合、外部から流入する第1流体の流量に関係なく一定の加湿性能が維持される。この場合、少量の加湿を必要とする低流量区間でも必要以上に多量の加湿が行われるため、燃料電池のスタックにフラッディング(flooding)現象が発生してしまう問題がある。
【0058】
これに対し、本発明のマルチチャンネル中空糸膜210を用いて膜加湿器を製造する場合、マルチチャンネル中空糸膜210は、多量の加湿を必要とする高流量区間では高い加湿性能を維持するが、少量の加湿を必要とする低流量区間ではその加湿性能が自動的に下がるので、フラッディング現象を防止することができる。低流量の場合、差圧により複数のチャンネルのうち相対的に大きいチャンネルのみを通って第1流体が流れて水分交換をするからである。
【0059】
以下、本発明の好ましい実施例による中空糸膜を適用した膜加湿器を従来例及び比較例と対比して説明する。
【実施例
【0060】
2300μmの外径を有し、異なるサイズの4個のチャンネル(内径:900μm、800μm、700μm、600μm)が形成されたマルチチャンネル中空糸膜2500本の束を用いて膜加湿器を製造した。
【0061】
従来例
【0062】
単一のチャンネル(内径:900μm、外径:1100μm)だけが形成された中空糸膜4000本の束を用いた以外は、前記実施例と同じ方法で膜加湿器を製造した。
【0063】
比較例
2300μmの外径を有し、同じサイズの4個のチャンネル(内径:800μm)が形成されたマルチチャンネル中空糸膜2500本の束を用いた以外は、前記実施例と同じ方法で膜加湿器を製造した。
【0064】
実施例、従来例及び比較例における膜加湿器の加湿性能を次のようにそれぞれ評価し、その結果を下記の表1に示した。
【0065】
加湿性能評価
乾燥空気(流量:1000~4000sLPM、温度:80℃、相対湿度:0~5%RH、絶対圧力:1.8bar)と湿潤空気(流量:900~3600sLPM、温度:80℃、相対湿度:90%RH、絶対圧力:1.6bar)を膜加湿器の第1流体流入口及び第2流体流入口からそれぞれ供給して加湿を行った。前記乾燥空気が高流量(4000sLPM)のときに膜加湿器から排出される加湿した空気の露点(高流量出口の露点)、及び前記乾燥空気が低流量(1000sLPM)のときに膜加湿器から排出される加湿した空気の露点(低流量出口の露点)をそれぞれ測定した。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、従来例の場合、高流量時の出口露点は50℃であり、低流量時の出口露点は60℃であった。
【0068】
露点が低いほど、湿度が相対的に低いということ(すなわち、相対的に加湿されていないこと)を意味する。
【0069】
実施例の場合、高流量時の出口露点は51℃であり、低流量時の出口露点は39℃であった。このことから、高流量区間で加湿性能を従来と類似に維持しなから、低流量区間では加湿性能が非常に下がり、フラッディングの防止に効果があることが分かった。
【0070】
一方、比較例の場合、高流量時の出口露点は50.5℃であり、低流量時の出口露点は59℃であった。比較例では、マルチチャンネルが形成されたことにもかかわらず、全てのチャンネルが同じサイズを有するため、低流量区間において出口露点は従来例と類似であった。このことから、比較例の場合、低流量区間においてフラッディングの防止効果がほとんどないことがわかった。
図1
図2
図3
図4