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特許7092963飛行体用エンジン発電機ユニット及びそれを備えた飛行体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】飛行体用エンジン発電機ユニット及びそれを備えた飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20060101AFI20220621BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220621BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C27/08
B64C39/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022530872
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047685
【審査請求日】2022-05-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】野口 純
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義登
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501057(JP,A)
【文献】特表2020-511350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 27/24
B64C 27/08
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体の駆動源であるモータと、前記モータの駆動を制御するモータ制御部と、前記モータ制御部に飛行体制御信号を入力する飛行体制御部とを有する飛行体に電力を供給する飛行体用エンジン発電機ユニットであって、
エンジンと、
前記エンジンで生じる駆動力によって発電を行う発電機と、
前記エンジンの回転数またはトルクを制御するエンジン制御部と、
前記発電機の発電量を制御する発電機制御部と、
前記飛行体用エンジン発電機ユニットの目標回転数及び目標トルクを算出する統合制御部と、
を有し、
前記統合制御部は、
前記飛行体の負荷によって定まる目標発電電力量に基づいて目標回転数及び目標トルクを算出した場合、前記エンジン制御部及び前記発電機制御部のうちいずれか一方に対して前記目標回転数及び前記目標トルクを出力し、他方に対して前記目標トルクを出力し、
前記目標発電電力量と前記飛行体制御部から出力される前記モータの駆動に必要な要求発電電力量とに基づいて目標回転数及び目標トルクを算出した場合、前記エンジン制御部及び前記発電機制御部のうちいずれか一方に対して、前記目標回転数及び前記目標トルクのうち少なくとも前記目標回転数を出力し、他方に対して前記目標トルクを出力する、
飛行体用エンジン発電機ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行体用エンジン発電機ユニットにおいて、
前記統合制御部は、
前記飛行体用エンジン発電機ユニットと前記飛行体の負荷との接続部の電圧に応じて目標発電電力量を算出する、
飛行体用エンジン発電機ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の飛行体用エンジン発電機ユニットにおいて、
前記飛行体の負荷は、
前記モータ制御部と前記飛行体に供給される電力の一部を蓄える電力貯留部とを含み、
前記統合制御部は、
前記発電機制御部と前記モータ制御部とを結ぶ電力線の電圧または前記電力貯留部で得られる貯留状態に関する情報の少なくとも一つに応じて目標発電電力量を算出する、
飛行体用エンジン発電機ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の飛行体用エンジン発電機ユニットにおいて、
前記統合制御部、前記発電機制御部及び前記エンジン制御部は、前記飛行体制御部と別の部材として構成されている、
飛行体用エンジン発電機ユニット。
【請求項5】
複数のプロペラと、
前記複数のプロペラを駆動する複数のモータと、
前記モータの駆動を制御するモータ制御部と、
前記モータ制御部に飛行体制御信号を入力する飛行体制御部と、
前記モータに電力を供給する、請求項1から4のいずれか一つに記載の飛行体用エンジン発電機ユニットと、
を有する、飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体用エンジン発電機ユニット及びそれを備えた飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行体の駆動源であるモータに電力を供給するエンジン発電機ユニットが知られている。このようなエンジン発電機ユニットを備えた飛行体として、例えば特許文献1には、複数のプロペラと、電動モータと、エンジン発電機ユニットであるマイクロハイブリッド発電機システムとを備えるマイクロハイブリッド発電機システムドローンが開示されている。
【0003】
前記マイクロハイブリッド発電機システムは、小型エンジンと、前記小型エンジンに結合され、前記小型エンジンによって生成される機械的動力によってAC電力を生成する発電機と、前記発電機によって生成されるAC電力をDC電力に変換して充電可能なバッテリと、少なくとも1つの電動モータにDC電力を供給するブリッジ整流器と、少なくとも1つの負荷の電力要求に基づいて小型エンジンのスロットルを制御する制御ユニットと、を有する。
【0004】
前記特許文献1に開示されているドローンは、前記マイクロハイブリッド発電機システムのバッテリから電力が前記電動モータに供給される。前記マイクロハイブリッド発電機システムは、少なくとも一つのロータモータの駆動により前記バッテリの電圧が低下してから発電を行うフィードバック制御を行っている。前記発電機は、前記メインバッテリの残量が閾値より少なくなると、前記エンジンからの動力を変換した電力で前記メインバッテリを充電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2019-501057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記マイクロハイブリッド発電機システムは、負荷の増大による電圧の低下を検出してから、前記小型エンジンのスロットル開度を制御する。更に、前記発電機を駆動する小型エンジンの指令に対する追従性は、エンジンの構造上、モータの指令に対する追従性に比べて低い。したがって、前記マイクロハイブリッド発電機システムは、前記ドローンに負荷が発生してから電力を供給すると、前記ドローンに生じた負荷に対して電力を供給するタイミング、供給する電力量に差が生じ、前記ドローンの制御に影響を与える場合があった。
【0007】
一方、汎用性の観点から、ドローンのモータに電力を供給するエンジン発電機ユニットを、様々な種類のドローンに取り付け可能なエンジン発電機ユニットとして提供することが望まれている。
【0008】
本発明は、飛行体の負荷変動に対する発電応答性を高めつつ、様々な種類の飛行体に取り付け可能な飛行体用エンジン発電機ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、飛行体のモータに電力を供給する際の負荷変動に対する発電応答性を高め、且つ、様々な種類の飛行体に取り付け可能な飛行体用エンジン発電機ユニットの構成について検討した。鋭意検討の結果、本発明者らは、以下のような構成に想到した。
【0010】
本発明の一実施形態に係る飛行体用エンジン発電機ユニットは、飛行体の駆動源であるモータと、前記モータの駆動を制御するモータ制御部、前記モータ制御部に飛行体制御信号を入力する飛行体制御部とを有する飛行体に電力を供給する飛行体用エンジン発電機ユニットである。この飛行体用エンジン発電機ユニットは、エンジンと、前記エンジンで生じる駆動力によって発電を行う発電機と、前記エンジンの回転数または出力トルクを制御するエンジン制御部と、前記発電機の発電量を制御する発電機制御部と、前記エンジン発電機ユニットの目標回転数及び目標トルクを演算する統合制御部と、を有する。
【0011】
前記統合制御部は、前記飛行体の負荷によって定まる目標発電電力量に基づいて目標回転数及び目標トルクを算出した場合、前記エンジン制御部及び前記発電機制御部のうちいずれか一方に対して前記目標回転数及び前記目標トルクを出力し、他方に対して前記目標トルクを出力する。また、前記統合制御部は、前記目標発電電力量と前記飛行体制御部から出力される前記モータの駆動に必要な要求発電電力量とに基づいて目標回転数及び目標トルクを算出した場合、前記エンジン制御部及び前記発電機制御部のうちいずれか一方に対して、前記目標回転数及び前記目標トルクのうち少なくとも前記目標回転数を出力し、他方に対して前記目標トルクを出力する。
【0012】
上述のように、目標回転数及び目標トルクが飛行体の負荷によって定まる目標発電電力量に基づいて算出されている場合、統合制御部は、エンジン制御部及び発電機制御部のうちいずれか一方に対して前記目標回転数及び飛行体用エンジン発電機ユニットの内部のフィードフォワード制御用の信号である前記目標トルクを出力する。また、前記目標回転数及び前記目標トルクが目標発電電力量と飛行体用エンジン発電機ユニットの外部のフィードフォワード制御用の信号である目標要求電力量とに基づいて算出されている場合、前記統合制御部は、前記エンジン制御部及び発電機制御部のうちいずれか一方に対して、前記目標回転数または前記目標回転数と飛行体用エンジン発電機ユニットの内部のフィードフォワード制御用の信号である前記目標トルクとを入力する。
【0013】
よって、前記飛行体用エンジン発電機ユニットは、飛行体用エンジン発電機ユニットの外部からのフィードフォワード制御用の信号と前記飛行体用エンジン発電機ユニットの内部のフィードフォワード制御用の信号とのうち少なくとも一方を用いて、エンジン及び発電機を制御する。また、前記飛行体用エンジン発電機ユニットは、内部のフィードフォワード制御用の信号を使用する場合、前記飛行体のモータ制御部に電力線を接続するだけで前記飛行体にフィードフォワード制御による素早い電力供給が可能である。これにより、飛行体の負荷変動に対する発電応答性を高めつつ、様々な種類の飛行体に容易に取り付けることができる。
【0014】
他の観点によれば、本発明の飛行体用エンジン発電機ユニットは、以下の構成を含むことが好ましい。前記統合制御部は、前記飛行体用エンジン発電機ユニットと前記飛行体の負荷との接続部の電圧に応じて目標発電電力量を算出する。
【0015】
上述のように、統合制御部は、前記飛行体用エンジン発電機ユニットに接続されている飛行体の負荷に応じて使用された電力量に基づいて目標発電電力量を算出する。つまり、前記統合制御部は、飛行体用エンジン発電機ユニットの内において検出可能な情報に基づいて目標回転数及び目標トルクを算出することができる。これにより、前記飛行体のモータ制御部に電力線を接続するだけで前記発電機の発電量を制御可能な構成を、容易に実現することができる。すなわち、飛行体用エンジン発電機ユニットの汎用性を向上することができる。
【0016】
他の観点によれば、本発明の飛行体用エンジン発電機ユニットは、以下の構成を含むことが好ましい。前記飛行体の負荷は、前記モータ制御部と前記飛行体に供給される電力の一部を蓄える電力貯留部とを含む。前記統合制御部は、前記発電機制御部と前記モータ制御部とを結ぶ電力線の電圧または前記電力貯留部で得られる貯留状態に関する情報の少なくとも一つに応じて目標発電電力量を算出する。
【0017】
上述のように、統合制御部は、飛行体と電気的に接続されている母線電圧または前記電力貯留部で得られる貯留状態に関する情報の少なくとも一つに基づいて、目標発電電力量を算出する。これにより、前記飛行体のモータ制御部に電力線または前記電力貯留部の信号線の少なくとも一方を接続するだけで発電機の発電量を制御可能な構成を、容易に実現することができる。すなわち、飛行体用エンジン発電機ユニットの汎用性を向上することができる。
【0018】
他の観点によれば、本発明の飛行体用エンジン発電機ユニットは、以下の構成を含むことが好ましい。前記統合制御部、前記発電機制御部及び前記エンジン制御部は、前記飛行体制御部と別の部材として構成されている。
【0019】
上述のように、飛行体用エンジン発電機ユニットは、統合制御部、発電機制御部及びエンジン制御部が飛行体の飛行体制御部と分離した状態で飛行体に搭載される。つまり、前記飛行体用エンジン発電機結ニットは、前記飛行体制御部が前記飛行体の機体に固定された状態で、前記飛行体から分離することができる。これにより、飛行体用エンジン発電機ユニットの汎用性を向上することができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る飛行体は、複数のプロペラと、前記複数のプロペラを駆動する複数のモータと、前記モータの駆動を制御するモータ制御部と、前記モータ制御部に飛行体制御信号を入力する飛行体制御部と、前記モータに電力を供給する、既述の飛行体用エンジン発電機ユニットと、を有する。
【0021】
これにより、既述の構成を有する飛行体用エンジン発電機ユニットを備えた飛行体が得られる。
【0022】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0023】
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
【0024】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0025】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な電気的な接続または結合を含むことができる。
【0026】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0027】
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0028】
本発明の説明においては、いくつもの技術および工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
【0029】
したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0030】
本明細書では、本発明に係る飛行体用エンジン発電機ユニット及び飛行体の実施形態について説明する。
【0031】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0032】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0033】
[飛行体]
本明細書において、飛行体とは、モータなどの駆動源によって得られる駆動力により空中を移動可能な移動体である。飛行体は、例えば、モータなどの駆動源によって回転する複数のプロペラを有する。飛行体は、無人飛行体及び有人飛行体の両方を含む。
【0034】
[飛行体の負荷]
本明細書において、飛行体の負荷とは、飛行体において、電力を消費する部品を意味する。すなわち、飛行体用エンジン発電機ユニットから飛行体に供給された電力を消費する部品が、飛行体の負荷である。飛行体における負荷は、例えば、モータ制御部、モータ、電力貯留部、飛行体制御部などを含む。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一実施形態によれば、飛行体の負荷変動に対する発電応答性を高めつつ、様々な種類の飛行体に取り付け可能な飛行体用エンジン発電機ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施形態に係る飛行体用エンジン発電機ユニットを含む飛行体の概略構成においてエンジン制御部に対して目標回転数及び目標トルクが入力される構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、飛行体の概略構成を示すとともに、飛行体用エンジン発電機ユニットが飛行体に対して電力を供給する様子を模式的に示す図である。
図3図3は、その他の実施形態に係る飛行体用エンジン発電機ユニットを含む飛行体の概略構成において発電機制御部に対して目標回転数及び目標トルクが入力される構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、その他の実施形態に係る飛行体用エンジン発電機ユニットを含む飛行体の概略構成において統合制御部に対して目標発電電力量及び要求発電電力量のうち目標発電電力量だけが入力される構成を示す機能ブロック図である。
図5図5は、その他の実施形態に係る飛行体用エンジン発電機ユニットを含む飛行体の概略構成においてエンジン制御部に目標回転数及び目標トルクのうち目標回転数だけが入力される構成を示す機能ブロック図である。
図6図6は、飛行体用エンジン発電機ユニットから飛行体以外の負荷に直流電力を供給する様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下で、実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0038】
(飛行体)
図1は、実施形態に係る飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1の概略構成を説明するための機能ブロック図である。図2は、飛行体1の概略構成を示すとともに、飛行体用エンジン発電機ユニット10が飛行体1に対して電力を供給する様子を模式的に示す図である。飛行体1は、例えば、複数のプロペラを有するマルチコプタ―である。
【0039】
なお、飛行体1は、1つのプロペラを有する無人飛行体であってもよいし、1つまたは複数のプロペラを有する有人飛行体であってもよい。また、飛行体1は、飛行体用エンジン発電機ユニット10で生じる電力によって駆動される、プロペラ以外の推進装置を備えていてもよい。
【0040】
飛行体1において、飛行体用エンジン発電機ユニット10以外の構成は、従来の飛行体における構成と同様である。よって、以下では、飛行体1における飛行体用エンジン発電機ユニット10以外の構成を簡単に説明する。
【0041】
飛行体1は、複数のモータ2と、複数のプロペラ3と、複数のモータ制御部4と、電力貯留部5と、飛行体制御部6と、複数種類のセンサ7と、本体フレーム8と、複数のアーム9とを有する。
【0042】
本体フレーム8には、複数のアーム9の基端部が接続されている。複数のアーム9には、それぞれ、モータ2及びプロペラ3が設けられている。
【0043】
複数のモータ2には、飛行体用エンジン発電機ユニット10から電力が供給される。複数のモータ2は、飛行体1の駆動源である。複数のモータ2は、複数のプロペラ3を駆動する。複数のモータ2は、モータ制御部4から出力される電力によって駆動される。すなわち、モータ制御部4は、複数のモータ2の駆動を制御する。
【0044】
複数のプロペラ3は、電力によって駆動するモータ2によって回転し、揚力を発生する。
【0045】
なお、複数のモータ2は、例えば、6つのモータを含む。複数のプロペラ3は、例えば、6つのプロペラを含む。モータは、5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。プロペラは、5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。
【0046】
モータ制御部4には、後述の飛行体用エンジン発電機ユニット10及び電力貯留部5から、電力が供給される。モータ制御部4は、飛行体制御部6から出力される飛行指令に基づいて、複数のモータ2に電力を供給する。
【0047】
電力貯留部5は、飛行体1内の余剰電力を貯留するとともにモータ制御部4において電力が不足する場合には、モータ制御部4に電力を供給する。電力貯留部5は、例えば、コンデンサである。電力貯留部5は、バッテリのように、電力を貯留可能な構成を有する部材であってもよい。
【0048】
モータ制御部4は、後述の飛行体用エンジン発電機ユニット10の発電機制御部14に電力線によって電気的に接続されている。すなわち、モータ制御部4、電力貯留部5及び発電機制御部14は、電力線によって、電気的に接続されている。電力貯留部5は、飛行体1に供給される電力の少なくとも一部を蓄える。
【0049】
飛行体制御部6は、複数種類のセンサ7から出力される検出値に基づいて、モータ制御部4を駆動制御する飛行指令を生成して、出力する。複数種類のセンサ7は、加速度センサ7aと、方位センサ7bと、高度センサ7cとを含む。すなわち、複数種類のセンサ7は、飛行体1の姿勢、飛行状態、位置及び高度などに関連する情報を取得する。
【0050】
飛行体制御部6は、複数種類のセンサ7によって取得された飛行体1の姿勢、飛行状態、位置及び高度などに関連する情報から、前記飛行指令を生成する。飛行体制御部6で生成された飛行指令は、モータ制御部4に入力される。
【0051】
また、飛行体制御部6は、飛行指令にしたがってモータ2を駆動させるために必要な電力量を示す電力指令である要求発電電力量Wrを算出する。飛行体制御部6で算出された要求発電電力量Wrは、飛行体用エンジン発電機ユニット10の統合制御部15に入力される。
【0052】
飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1のモータ制御部4に電力を供給する。飛行体用エンジン発電機ユニット10は、エンジン11と、エンジン制御部12と、発電機13と、発電機制御部14と、統合制御部15と、を有する。飛行体用エンジン発電機ユニット10では、エンジン11の駆動力によって発電機13が電力を生じる。発電機13で生じた電力は、飛行体1のモータ制御部4に電力線を介して供給される。
【0053】
エンジン11は、例えば、ガソリンや軽油などの燃料をシリンダ内で燃焼させることによって、クランク軸に回転駆動力を生じる内燃機関である。エンジン11は、図示しないシリンダと、該シリンダ内を往復移動可能なピストンと、前記ピストンの往復移動を回転運動に変えるクランク軸とを有する。また、エンジン11は、前記シリンダ内に気体を吸入するための吸気管と、前記シリンダ内の燃焼後の気体を排気するための排気管とを有する。
【0054】
なお、エンジン11は、シリンダ及びピストンをそれぞれ一つずつ有する単気筒エンジンであってもよいし、シリンダ及びピストンをそれぞれ複数有する多気筒エンジンであってもよい。
【0055】
エンジン11は、エンジン制御部12から出力される点火制御信号、燃料噴射制御信号及びスロットル開度信号などに応じて動作する。すなわち、エンジン11は、燃料噴射制御信号によって駆動する図示しない燃料噴射装置と、点火制御信号によってシリンダ内の燃料混合気体に点火する点火プラグと、前記吸気管に設けられ、スロットル開度信号によって前記シリンダ内に流入する気体の量を調整するスロットルとを有する。
【0056】
よって、エンジン11では、エンジン制御部12から出力される点火制御信号、燃料噴射制御信号及びスロットル開度信号などに基づいて、前記クランク軸で得られる出力としての回転駆動力が制御される。
【0057】
前記クランク軸の回転角度は、クランク角度として、クランク角度検出部11aによって検出される。クランク角度検出部11aで検出されたクランク角度は、クランク角度検出信号として、エンジン制御部12に入力される。前記クランク角度検出信号は、エンジン制御部12で点火制御信号及び燃料噴射制御信号などを生成する際に用いられる。また、クランク角度検出部11aは、エンジン11の実回転数Rrを検出することができる。
【0058】
エンジン11の出力としてのクランク軸の回転駆動力は、発電機13に伝達される。すなわち、発電機13のロータは、エンジン11のクランク軸の回転によって、回転する。これにより、発電機13では、交流電力を生じる。
【0059】
なお、発電機13のロータの回転角度は、回転角センサ13aによって検出される。回転角センサ13aによって検出された回転角度は、発電機制御部14に入力される。
【0060】
発電機13で生じた交流電力は、発電機制御部14に入力される。発電機制御部14は、入力された交流電力を直流電力に変換して、出力する。この際、発電機制御部14は、回転角センサ13aによって検出されたロータの回転角度を用いる。なお、発電機制御部14は、複数のスイッチング素子を有する電力変換装置を含む。
【0061】
発電機制御部14は、飛行体1のモータ制御部4及び電力貯留部5に対して電力を出力する。モータ制御部4は、発電機制御部14から出力された電力を用いて、飛行体1のモータ2を駆動する。これにより、飛行体1のプロペラ3が回転するため、飛行体1は飛行することができる。また、飛行体1の電力貯留部5は、発電機制御部14から出力された電力のうちモータ制御部4によって使用されない電力を貯留する。
【0062】
このように、発電機制御部14は、飛行体1のモータ2に対して電力を出力する。よって、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1に対して電力を供給する電力供給源として機能する。なお、特に図示しないが、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1に対して、着脱可能に配置されている。飛行体用エンジン発電機ユニット10の統合制御部15、発電機制御部14及びエンジン制御部12は、飛行体1の飛行体制御部6と別の部材として構成されている。よって、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1の本体フレーム8に飛行体制御部6が固定された状態で本体フレーム8から分離することができる。
【0063】
発電機制御部14は、飛行体用エンジン発電機ユニット10の出力電圧に基づいて発電機13の発電量を制御する。すなわち、発電機制御部14は、発電機制御部14と飛行体1の負荷との間の負荷電圧Vlに基づいて、発電機13の発電量を制御する。負荷電圧Vlは、例えば、モータ制御部4及び電力貯留部5と、発電機制御部14とを結ぶ電力線の電圧である、飛行体1のモータ制御部4の入力に接続される母線電圧である。前記負荷は、モータ制御部4及び電力貯留部5を含む。
【0064】
発電機制御部14と飛行体1の負荷との間の電圧である負荷電圧Vlは、前記負荷で必要とする電力に応じて変化する。よって、発電機制御部14は、前記電圧に基づいて発電機13の発電量を制御することにより、飛行体1の負荷の変動に応じて、飛行体1に電力を供給することができる。すなわち、発電機制御部14は、飛行体1の負荷に応じて、発電機13の発電量を制御する。
【0065】
発電機制御部14は、モータ制御部4及び電力貯留部5のそれぞれの負荷変動ではなく、飛行体1の負荷全体の負荷変動に応じて、発電機13の発電量を制御する。これにより、飛行体1の各負荷の変動によって、発電量が大きく変動することなく、飛行体1全体で必要な電力を供給することができる。
【0066】
統合制御部15は、エンジン制御部12及び発電機制御部14に対して上位の制御部である。統合制御部15は、飛行体用エンジン発電機ユニット10が出力しなければならない電力量に基づいて、エンジン11と発電機13とを制御する。統合制御部15は、負荷電圧Vlに基づいて目標発電電力量Wtを算出する。目標発電電力量Wtは、飛行体1の負荷により使用した電力を補うために必要な電力量である。更に、統合制御部15は、算出した目標発電電力量Wtと飛行体1の飛行体制御部6から入力された要求発電電力量Wrとに基づいて目標回転数Rt及び目標トルクTtを算出する。統合制御部15は、算出した目標回転数Rt及び目標トルクTtによってエンジン11と発電機13とを制御する。
【0067】
次に、エンジン11のスロットル開度を目標回転数Rtに応じて制御し、発電機13の発電量を目標トルクTtに応じて制御する飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1の制御構成を説明する。
【0068】
図1に示すように、統合制御部15は、エンジン制御部12と発電機制御部14とに電気的に接続されている。統合制御部15は、飛行体1のモータ制御部4に電力を供給する電力線と飛行体制御部6とに電気的に接続されている。
【0069】
エンジン制御部12は、エンジン11と統合制御部15とに電気的に接続されている。エンジン制御部12は、クランク角度検出部11aと電気的に接続されている。
【0070】
発電機制御部14は、発電機13と統合制御部15とに電気的に接続されている。
【0071】
飛行体制御部6は、モータ制御部4と統合制御部15とに電気的に接続されている。モータ制御部4は、飛行体制御部6とモータ2とに電気的に接続されている。
【0072】
このように構成される飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1において、飛行体制御部6は、外部から飛行指令を取得すると、モータ制御部4に対して飛行指令を出力するとともに、統合制御部15に対して飛行指令から算出した要求発電電力量Wrを出力する。
【0073】
統合制御部15は、飛行体制御部6から要求発電電力量Wrが入力される。また、統合制御部15は、モータ制御部4に電力を供給する電力線から負荷電圧Vlが入力される。統合制御部15は、負荷電圧Vlと予め定められている目標電圧Vtとに基づいて、負荷電圧Vlを目標電圧Vtに近づけるために必要な目標発電電力量Wtを算出する。つまり、統合制御部15は、負荷電圧Vlを目標電圧Vtに維持するためのフィードバック制御を行う。
【0074】
さらに、統合制御部15は、目標発電電力量Wtと要求発電電力量Wrとを足し合わせた電力量を発電するためにエンジン11及び発電機13の効率的な動作点を示すマップMから目標回転数Rt及び目標トルクTtを算出する。つまり、統合制御部15は、目標発電電力量Wtと飛行体用エンジン発電機ユニット10の外部から入力された信号である要求発電電力量Wrに基づいて、飛行体1がこれから必要とする要求発電電力量Wrを発電するためのフィードフォワード制御を行う。したがって、目標回転数Rtが入力されるエンジン制御部12及び目標トルクTtが入力される発電機制御部14は、フィードフォワード制御が行われる。
【0075】
統合制御部15は、エンジン制御部12及び発電機制御部14のうち一方に対して、目標回転数Rt及び目標トルクTtのうち少なくとも目標回転数Rtを出力し、他方に対して目標トルクTtを出力する。本実施形態において、統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標回転数Rtを出力する。また、統合制御部15は、発電機制御部14に対して目標トルクTtを出力する。更に、統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標トルクTtを出力する。
【0076】
エンジン制御部12は、クランク角度検出部11aからエンジン11の実回転数Rrが入力される。また、エンジン制御部12は、統合制御部15から目標回転数Rtが入力される。エンジン制御部12は、実回転数Rrと目標回転数Rtとに基づいて、実回転数Rrを目標回転数Rtに近づけるためにエンジン11のスロットル開度を調整する。つまり、エンジン制御部12は、目標回転数Rtによるフィードフォワード制御と実回転数Rrを目標回転数Rtに維持するためのフィードバック制御とを行う。
【0077】
これに加えて、エンジン制御部12は、目標トルクTtに基づいて、エンジン11が目標トルクTtを出力するようにエンジン11のスロットル開度を調整する。つまり、エンジン制御部12は、飛行体用エンジン発電機ユニット10の内部の信号である目標トルクTtと目標回転数Rtとに基づいて、エンジン11を目標回転数Rtで回転させ、目標トルクTtを出力させるためのフィードフォワード制御を行う。
【0078】
発電機制御部14は、統合制御部15から目標トルクTtが入力される。発電機制御部14は、目標トルクTtで発電機13が稼働するように発電機13の出力電圧を調整する。つまり、発電機制御部14は、目標トルクTtによるフィードフォワード制御と負荷電圧Vlを目標電圧Vtに維持するためのフィードバック制御とを行う。
【0079】
このように構成される飛行体用エンジン発電機ユニット10は、エンジン11と、エンジン11で生じる駆動力によって発電を行う発電機13と、エンジン11の回転数またはトルクを制御するエンジン制御部12と、発電機13の発電量を制御する発電機制御部14と、飛行体用エンジン発電機ユニット10の目標回転数Rtと目標トルクTtとを算出する統合制御部15と、を有している。統合制御部15は、目標発電電力量Wtと飛行体制御部6から出力されるモータ2の駆動に必要な要求発電電力量Wrとに基づいて目標回転数Rtと目標トルクTtとを算出した場合、エンジン制御部12及び発電機制御部14のうちいずれか一方に対して目標回転数Rtまたは目標回転数Rtと目標トルクTtとを入力する。
【0080】
統合制御部15は、発電機制御部14と飛行体1の負荷との間の電圧である負荷電圧Vlに応じて目標発電電力量Wtを算出する。飛行体1の負荷は、モータ制御部4を含む。よって、統合制御部15は、発電機制御部14とモータ制御部4とを結ぶ電力線の電圧に応じて目標発電電力量Wtを算出する。
【0081】
統合制御部15は、負荷電圧Vlに応じて算出したフィードバック用の信号である目標発電電力量Wtと飛行体用エンジン発電機ユニット10の外部からのフィードフォワード制御用の信号である要求発電電力量Wrとから目標回転数Rt及び目標トルクTtを算出する。また、統合制御部15は、目標回転数Rtが入力されるエンジン制御部12に対して、飛行体用エンジン発電機ユニット10の内部におけるフィードフォワード制御用の信号として目標トルクTtを出力する。
【0082】
飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体用エンジン発電機ユニット10の外部からのフィードフォワード制御用の信号である目標回転数Rt及び目標トルクTtと飛行体用エンジン発電機ユニット10の内部のフィードフォワード制御用の信号である目標トルクTtとに応じてエンジン11のスロットル開度と発電機13の発電量とを制御している。また、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、要求発電電力量Wrを取得しない場合、飛行体1のモータ制御部4に電力線を接続するだけで飛行体1にフィードフォワード制御によって素早い電力供給が可能である。これにより、飛行体1の負荷変動に対する発電応答性を高めつつ、様々な種類の飛行体に容易に取り付けることができる。
【0083】
フィードフォワード制御を行う飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1は、フィードフォワード制御を行わない飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1に比べて瞬間出力が増大する。よって、フィードフォワード制御を導入した飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1は、同じ動作であればフィードフォワード制御を導入していない飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1よりも電力貯留部5の容量を小さくすることができる。
【0084】
また、飛行体1は、複数のプロペラ3と、複数のプロペラ3を駆動する複数のモータ2と、モータ2の駆動を制御するモータ制御部4と、モータ制御部4に飛行体制御信号を入力する飛行体制御部6と、モータ2に電力を供給する、上述の飛行体用エンジン発電機ユニット10と、を有する。これにより、既述の構成を有する飛行体用エンジン発電機ユニット10を有する飛行体1が得られる。
【0085】
また、統合制御部15、発電機制御部14及びエンジン制御部12は、飛行体制御部6と別の部材として構成されている。つまり、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、統合制御部15、発電機制御部14及びエンジン制御部12が飛行体1の飛行体制御部6と分離した状態で、飛行体1に搭載されている。つまり、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体制御部6が飛行体1の本体フレーム8に固定された状態で、飛行体1から分離することができる。これにより、飛行体用エンジン発電機ユニット10の汎用性を向上することができる。
【0086】
なお、大型の飛行体の場合、長時間、高ペイロードを実現するために、高出力大容量バッテリまたは高出力エンジン発電機を載せると、飛行体の重量が増大する。よって、この場合であっても、飛行体を効率良く飛行させることが望まれる。
【0087】
そのため、飛行体1が大型の場合には、電力貯留部5の出力は、飛行体用エンジン発電機ユニット10のエンジン11の連続定格出力以下であるのが好ましい。つまり、飛行体1が大型の場合には、前記飛行体の動力を、エンジン11の出力によって得るとともに、電力貯留部5は、エンジン11の出力の不足分を補うために用いられるのが好ましい。これにより、飛行体1を軽量化することができる。したがって、軽量且つ長時間飛行可能な大型ドローンを実現することができる。
【0088】
一方で、小型の飛行体の場合においても、長時間、高ペイロードを実現するために、飛行体に大容量バッテリまたはエンジン発電機を載せると、飛行体の重量が増大する。よって、この場合であっても、飛行体を効率良く飛行させることが望まれる。
【0089】
そのため、飛行体1が小型の場合には、飛行体用エンジン発電機ユニット10のエンジン11の出力は、電力貯留部5の連続定格出力以下であるのが好ましい。つまり、飛行体1が小型の場合には、前記飛行体の動力を、電力貯留部5の出力で得るとともに、エンジン11は電力貯留部5の充電を行うために用いるのが好ましい。これにより、飛行体用エンジン発電機ユニット10を軽量化することができる。したがって、軽量且つ長時間飛行可能な小型ドローンを実現することができる。
【0090】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0091】
前記実施形態では、飛行体用エンジン発電機ユニット10の統合制御部15は、飛行体制御部6から出力されるモータ2の駆動に必要な要求発電電力量Wrと目標発電電力量Wtとに基づいて目標回転数Rtと目標トルクTtとを算出する。統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標回転数Rtを出力し、発電機制御部14に対して目標トルクTtを出力する。しかしながら、統合制御部は、発電機制御部に対して目標回転数を出力し、エンジン制御部に対して目標トルクを出力してもよい。
【0092】
このように、統合制御部15がエンジン制御部12に対して目標トルクTtを出力し、発電機制御部14に対して目標回転数Rtを出力する例を、図3に示す。図3は、飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1の概略構成において発電機制御部14に対して目標回転数Rt及び目標トルクTtが出力される構成を示す機能ブロック図である。
【0093】
図3に示すように、発電機制御部14は、クランク角度検出部11aと電気的に接続されている。
【0094】
統合制御部15は、飛行体制御部6から要求発電電力量Wrが入力される。また、統合制御部15は、飛行体用エンジン発電機ユニット10と飛行体1の負荷との接続部である電力線の電圧である負荷電圧Vlが入力される。つまり、統合制御部15は、発電機制御部14から飛行体1の負荷であるモータ制御部4に電力を供給する電力線から負荷電圧Vlが入力される。統合制御部15は、負荷電圧Vlと予め定められている目標電圧Vtとに基づいて、負荷電圧Vlを目標電圧Vtに近づけるために必要な目標発電電力量Wtを算出する。さらに、統合制御部15は、目標発電電力量Wtと要求発電電力量Wrとを足し合わせた電力量を発電するために必要な目標回転数Rt及び目標トルクTtをマップMから算出する。
【0095】
統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標トルクTtを出力する。また、統合制御部15は、発電機制御部14に対して目標回転数Rtを出力する。更に、統合制御部15は、発電機制御部14に対して目標トルクTtを出力する。
【0096】
エンジン制御部12は、統合制御部15から目標トルクTtが入力される。エンジン制御部12は、目標トルクTtでエンジン11のクランク軸が回転するようにスロットル開度を調整する。つまり、エンジン制御部12は、目標トルクTtによるフィードフォワード制御を行う。
【0097】
発電機制御部14は、クランク角度検出部11aからエンジン11の実回転数Rrが入力され、統合制御部15から目標回転数Rtが入力される。発電機制御部14は、実回転数Rrと目標回転数Rtとに基づいて、実回転数Rrを目標回転数Rtに近づけるために発電機13から出力される電圧を制御する。つまり、発電機制御部14は、目標回転数Rtによるフィードフォワード制御と実回転数Rrを目標回転数Rtに維持するためのフィードバック制御とを行う。
【0098】
これに加えて、発電機制御部14は、目標トルクTtに基づいて、エンジン11が目標トルクTtを出力するように発電機13から出力される電圧を制御する。つまり、発電機制御部14は、飛行体用エンジン発電機ユニット10の内部の信号である目標トルクTtと目標回転数Rtとに基づいて、エンジン11のクランク軸が目標回転数Rtで回転し、目標トルクTtを出力するために発電機13のフィードフォワード制御を行う。
【0099】
このように構成される飛行体用エンジン発電機ユニット10の統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標トルクTtを出力し、発電機制御部14に対して目標回転数Rtを出力する。また、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、目標回転数Rtが入力される発電機制御部14に、飛行体用エンジン発電機ユニット10の内部におけるフィードフォワード制御用の信号として目標トルクTtを入力する。これにより、飛行体用エンジン発電機ユニット10の飛行体1の負荷変動に対する発電応答性を高め、飛行体用エンジン発電機ユニット10から飛行体1に対して素早い電力供給が可能である。
【0100】
上述のように、飛行体1の飛行体制御部6から、飛行体用エンジン発電機ユニット10の統合制御部15に対して負荷電圧Vl及び要求発電電力量Wrが入力されずに、負荷電圧Vlのみが入力されてもよい。図4に、飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1の概略構成において、統合制御部15に対して、目標発電電力量Wt及び要求発電電力量Wrのうち目標発電電力量Wtだけが入力される構成を示す機能ブロック図を示す。
【0101】
統合制御部15は、モータ制御部4に電力を供給する電力線から負荷電圧Vlが入力される。統合制御部15は、負荷電圧Vlと予め定められている目標電圧Vtとに基づいて、負荷電圧Vlを目標電圧Vtに近づけるために必要な目標発電電力量Wtを算出する。さらに、統合制御部15は、目標発電電力量Wtを発電するために必要な目標回転数Rt及び目標トルクTtをマップMから算出する。
【0102】
統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標回転数Rtを出力する。また、統合制御部15は、発電機制御部14に対して目標トルクTtを出力する。更に、統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標トルクTtを出力する。
【0103】
エンジン制御部12は、クランク角度検出部11aからエンジン11の実回転数Rrが入力され、統合制御部15から目標回転数Rtが入力される。エンジン制御部12は、実回転数Rrと目標回転数Rtとに基づいて、実回転数Rrを目標回転数Rtに近づけるためにエンジン11のスロットル開度を調整する。つまり、エンジン制御部12は、実回転数Rrを目標回転数Rtに維持するためのフィードバック制御を行う。
【0104】
これに加えて、エンジン制御部12は、目標トルクTtに基づいて、エンジン11が目標トルクTtを出力するようにエンジン11のスロットル開度を調整する。つまり、エンジン制御部12は、飛行体用エンジン発電機ユニット10の内部の信号である目標トルクTtに基づいて、エンジン11が目標トルクTtを出力するためのフィードフォワード制御を行う。
【0105】
発電機制御部14は、統合制御部15から目標トルクTtが入力される。発電機制御部14は、目標トルクTtで発電機13が稼働するように発電機13からの出力電圧を制御する。つまり、発電機制御部14は、目標トルクTtに基づいて負荷電圧Vlを目標電圧Vtに維持するためのフィードバック制御を行う。
【0106】
上述のように、統合制御部15は、飛行体1の負荷によって定まる目標発電電力量Wtに基づいて目標回転数Rtと目標トルクTtとを算出した場合、エンジン制御部12及び発電機制御部14のうちいずれか一方に対して目標回転数Rtと目標トルクTtを入力する。これにより、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体用エンジン発電機ユニット10の内部のフィードフォワード制御用の信号によってエンジン11と発電機13とを制御している。また、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1のモータ制御部4に電力線を接続するだけで飛行体1にフィードフォワード制御によって素早い電力供給が可能である。よって、飛行体用エンジン発電機ユニット10の発電応答性を向上することができる。
【0107】
また、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1との間で電圧以外の要求発電電力量Wrを授受することなく、動作することができる。よって、飛行体用エンジン発電機ユニット10を、様々な種類の飛行体に取り付けることが可能になる。これにより、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1のモータ制御部4に電力線を接続するだけで発電機13の発電量を制御可能な構成を、容易に実現することができる。よって、飛行体用エンジン発電機ユニット10の汎用性を向上することができる。
【0108】
なお、統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標トルクTtを出力し、発電機制御部14に対して目標回転数Rtを出力してもよい。この場合、統合制御部15は、発電機制御部14に対して目標トルクTtを飛行体用エンジン発電機ユニット10の内部のフィードフォワード用の信号として出力する。
【0109】
上述のように目標回転数Rtが入力されるエンジン制御部12に対して目標トルクTtを入力するのではなく、目標回転数Rtが入力されるエンジン制御部12に対して目標トルクTtが入力されなくてもよい。図5は、飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体1の概略構成において、エンジン制御部12に、目標回転数Rt及び目標トルクTtのうち目標回転数Rtだけが入力される構成を示す機能ブロック図である。この際、統合制御部15には、飛行体1の飛行体制御部6から要求発電電力量Wrが入力される。
【0110】
統合制御部15は、飛行体制御部6から要求発電電力量Wrが入力され、モータ制御部4に電力を供給する電力線から負荷電圧Vlが入力される。統合制御部15は、負荷電圧Vlと予め定められている目標電圧Vtとに基づいて、負荷電圧Vlを目標電圧Vtに近づけるために必要な目標発電電力量Wtを算出する。さらに、統合制御部15は、目標発電電力量Wtと要求発電電力量Wrとを足し合わせた電力量を発電するために必要な目標回転数Rt及び目標トルクTtをマップMから算出する。
【0111】
統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標回転数Rtを出力する。また、統合制御部15は、発電機制御部14に対して目標トルクTtを出力する。
【0112】
エンジン制御部12は、クランク角度検出部11aからエンジン11の実回転数Rrが入力され、統合制御部15から目標回転数Rtが入力される。エンジン制御部12は、実回転数Rrと目標回転数Rtとに基づいて、実回転数Rrを目標回転数Rtに近づけるためにエンジン11のスロットル開度を調整する。つまり、エンジン制御部12は、目標回転数Rtによるフィードフォワード制御と実回転数Rrを目標回転数Rtに維持するためのフィードバック制御とを行う。
【0113】
発電機制御部14は、統合制御部15から目標トルクTtが入力される。発電機制御部14は、目標トルクTtで発電機13が稼働するように発電機13の出力電圧を制御する。つまり、発電機制御部14は、目標トルクTtによるフィードフォワード制御と負荷電圧Vlを目標電圧Vtに維持するためのフィードバック制御とを行う。
【0114】
飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体用エンジン発電機ユニット10の外部からのフィードフォワード制御用の信号によってエンジン11と発電機13とを制御している。また、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1のモータ制御部4に電力線を接続するだけで飛行体1にフィードフォワード制御によって素早い電力供給が可能である。これにより、飛行体1の負荷変動に対する発電応答性を高めつつ、様々な種類の飛行体に容易に取り付けることができる。
【0115】
なお、統合制御部15は、エンジン制御部12に対して目標トルクTtを出力し、発電機制御部14に対して目標回転数Rtを出力してもよい。
【0116】
上述のように、飛行体1の飛行体制御部6から、飛行体用エンジン発電機ユニット10の統合制御部15にそれぞれ要求発電電力量Wrを入力するのではなく、飛行体制御部6において飛行指令を発電指令に変換してもよい。
【0117】
飛行体制御部6は、飛行指令を発電指令に変換して、飛行体用エンジン発電機ユニット10の統合制御部15に出力する。飛行体制御部6は、予め記憶されている飛行指令に対する消費電力のデータと、飛行指令とを用いて、発電指令を生成する。
【0118】
これにより、飛行体1の飛行体制御部6から飛行体用エンジン発電機ユニット10に対して、発電指令を入力できるため、飛行体用エンジン発電機ユニット10では、エンジン11及び発電機13の効率的な動作点で発電することができる。また、飛行体用エンジン発電機ユニット10では、前記電力指令に応じて迅速に発電を行うことができるため、飛行体用エンジン発電機ユニット10から飛行体1に対して素早い電力供給が可能である。
【0119】
前記実施形態では、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、統合制御部15が負荷電圧Vl及び要求発電電力量Wrを取得し、エンジン制御部12と発電機制御部14とを制御している。しかしながら、飛行体用エンジン発電機ユニットは、エンジン制御部と発電機制御部とがそれぞれ飛行体の飛行体制御部からの要求発電電圧量を取得してもよい。エンジン制御部と発電機制御部とは、要求発電電圧量から目標回転数と目標トルクとをそれぞれ算出する。
【0120】
前記実施形態では、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1のモータ制御部4及び電力貯留部5に電力を供給している。しかしながら、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、電力貯留部のみに電力を供給してもよい。また、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、モータ制御部のみに電力を供給してもよい。すなわち、飛行体用エンジン発電機ユニット10及び飛行体用エンジン発電機ユニット10を含む飛行体は、電力貯留部を含まない構成でもよい。また、飛行体用エンジン発電機ユニットが電力貯留部を含む構成でもよい。
【0121】
前記実施形態では、統合制御部15は、発電機制御部14と飛行体1の負荷との間の負荷電圧Vlに基づいて、目標回転数Rtと目標トルクTtを算出する。しかしながら、統合制御部は、負荷電圧及び電力貯留部で得られる貯留状態に関する情報(例えばSOC:State of Chargeなど)のうち少なくとも一方を用いて、目標回転数と目標トルクを算出してもよい。
【0122】
前記各実施形態では、飛行体用エンジン発電機ユニット10は、飛行体1のモータ2に対して直流電力を供給している。しかしながら、DC出力エンジン発電機ユニットは、移動体以外の負荷に対して電力を供給してもよい。
【0123】
図6は、飛行体用エンジン発電機ユニット10から飛行体1以外の負荷100に直流電力を供給する様子を模式的に示す図である。
【0124】
図6に示すように、飛行体用エンジン発電機ユニット10から、負荷100に直流電力が供給される。これにより、飛行体用エンジン発電機ユニット10から出力される直流電力によって、負荷100を駆動させることができる。なお、負荷100は、照明装置や表示装置、モータ装置など、直流電力によって駆動する構成であれば、どのような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 飛行体
2 モータ
3 プロペラ
4 モータ制御部
5 電力貯留部
6 飛行体制御部
7 センサ
10 飛行体用エンジン発電機ユニット
11 エンジン
11a クランク角度検出部
12 エンジン制御部
13 発電機
14 発電機制御部
15 統合制御部
Wt 目標発電電力量
Wr 要求発電電力量
Vl 負荷電圧
Rt 目標回転数
Tt 目標トルク
100 負荷
【要約】
飛行体の負荷変動に対する発電応答性を高めつつ、様々な種類の飛行体に取り付け可能な飛行体用エンジン発電機ユニットを提供する。飛行体用エンジン発電機ユニット10の統合制御部15は、飛行体1の負荷によって定まる目標発電電力量Wtに基づいて目標回転数Rt及び目標トルクTtを算出した場合、エンジン制御部12及び発電機制御部14のうちいずれか一方に対して目標回転数Rt及び目標トルクTtを出力し、他方に対して目標トルクTtを出力する。目標発電電力量Wtと飛行体制御部6から出力されるモータ2の駆動に必要な要求発電電力量Wrとに基づいて目標回転数Rt及び目標トルクTtを算出した場合、エンジン制御部12及び発電機制御部14のうちいずれか一方に対して、目標回転数Rt及び目標トルクTtのうち少なくとも目標回転数Rtを出力し、他方に対して目標トルクTtを出力する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6