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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20220622BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20220622BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301E
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301D
H01L29/06 301M
H01L29/86 301P
H01L29/78 653A
H01L29/78 652C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652R
H01L29/78 658A
H01L29/78 655A
H01L29/91 D
H01L29/78 652T
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018178166
(22)【出願日】2018-09-22
(65)【公開番号】P2020053442
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】田中 成明
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸久
(72)【発明者】
【氏名】安西 孝太
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183333(JP,A)
【文献】特開2017-054944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0077830(US,A1)
【文献】特開2014-116510(JP,A)
【文献】特開2017-174989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0278952(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107393833(CN,A)
【文献】特開2013-033913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0001585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 29/06
H01L 21/329
H01L 29/78
H01L 21/76
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 29/861
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、前記n層上および前記p型領域上に設けられ、前記n層に対してショットキー接触するショットキー電極と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.30eV以上0.45eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE3、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4、とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE3の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、かつ、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が1以下、となるように設定され
前記B領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が0.01以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、前記n層上および前記p型領域上に設けられ、前記n層に対してショットキー接触するショットキー電極と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.20eV以上0.30eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE2、
GaNの伝導帯下端から0.30eV以上0.45eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE3、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4、とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE3の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、かつ、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が1以下、となるように設定され
前記B領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が0.01以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、前記n層上および前記p型領域上に設けられ、前記n層に対してショットキー接触するショットキー電極と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.30eV以上0.45eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE3、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4、とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE3の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、かつ、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が1以下、となるように設定され
前記B領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度の比が0.4~2.5、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、前記n層上および前記p型領域上に設けられ、前記n層に対してショットキー接触するショットキー電極と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.30eV以上0.45eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE3、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4
GaNの伝導帯下端から0.90eV以上1.00eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE7、とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE3の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、かつ、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が1以下、となるように設定され
前記B領域におけるTE7の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE7の電子トラップ準位の平均密度の比が0.2以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、前記n層上および前記p型領域上に設けられ、前記n層に対してショットキー接触するショットキー電極と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.30eV以上0.45eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE3、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4
GaNの伝導帯下端から1.10eV以上1.40eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE9とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE3の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、かつ、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が1以下、となるように設定され
前記B領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が0.04以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、前記n層上および前記p型領域上に設けられ、前記n層に対してショットキー接触するショットキー電極と、を有し、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.20eV以上0.30eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE2、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4、
GaNの伝導帯下端から1.10eV以上1.40eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE9、とし、
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きくなるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が0.01以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項8】
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が0.01以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項9】
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度の比が0.4~2.5、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
GaNの伝導帯下端から0.90eV以上1.00eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE7とし、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域におけるTE7の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE7の電子トラップ準位の平均密度の比が0.2以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項11】
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記ショットキー電極との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が0.04以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項12】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層上に設けられたp型のGaNからなるp層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における前記n層中のTE4の電子トラップ準位の平均密度が、前記n層のドナー濃度の1/500以下となるように設定され
前記B領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が0.03以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層上に設けられたp型のGaNからなるp層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.20eV以上0.30eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE2、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における前記n層中のTE4の電子トラップ準位の平均密度が、前記n層のドナー濃度の1/500以下となるように設定され
前記B領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が0.02以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層上に設けられたp型のGaNからなるp層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における前記n層中のTE4の電子トラップ準位の平均密度が、前記n層のドナー濃度の1/500以下となるように設定され
前記B領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度の比が0.3~2.0、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層上に設けられたp型のGaNからなるp層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4
GaNの伝導帯下端から1.10eV以上1.40eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE9、とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における前記n層中のTE4の電子トラップ準位の平均密度が、前記n層のドナー濃度の1/500以下となるように設定され
前記B領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が0.02以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層上に設けられたp型のGaNからなるp層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、を有し、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4
GaNの価電子帯上端から0.80eV以上0.90eV未満のエネルギーの正孔トラップ準位をTH3とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度とし
前記B領域における正孔トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記p型領域側に0.02~0.05μmの深さの領域における前記p型領域中の正孔トラップ準位の平均密度として、
前記A領域における前記n層中のTE4の電子トラップ準位の平均密度が、前記n層のドナー濃度の1/500以下となるように設定され
前記B領域における前記p型領域中のTH3の正孔トラップ準位の平均密度に対する、前記A領域における前記p層中のTH3の正孔トラップ準位の平均密度の比が、0.7~1.4、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
ドナー濃度1×1015~2×1016/cmのn型のGaNからなるn層と、前記n層上に設けられたp型のGaNからなるp層と、前記n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、を有し、
平面視で前記p型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.20eV以上0.30eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE2、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4、
GaNの伝導帯下端から1.10eV以上1.40eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE9、とし、
前記B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度が、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きくなるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項18】
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が0.03以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が0.02以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項17に記載の半導体装置。
【請求項20】
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度の比が0.3~2.0、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項17に記載の半導体装置。
【請求項21】
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記n層側に0.8~1.6μmの深さの領域における前記n層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
前記B領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度に対する前記A領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が0.02以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項17に記載の半導体装置。
【請求項22】
GaNの価電子帯上端から0.80eV以上0.90eV未満の正孔トラップ準位をTH3とし、
平面視で前記p型領域のない領域をA領域とし、
前記A領域における正孔トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p層との界面から前記p層側に0.02~0.05μmの深さの領域における前記p層中の正孔トラップ準位の平均密度とし、
前記B領域における正孔トラップ準位の平均密度は、前記n層と前記p型領域との界面から前記p型領域側に0.02~0.05μmの深さの領域における前記p型領域中の正孔トラップ準位の平均密度として、
前記B領域における前記p型領域中のTH3の正孔トラップ準位の平均密度に対する、前記A領域における前記p層中のTH3の正孔トラップ準位の平均密度の比が、0.7~1.4、となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項17に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III 族窒化物半導体からなる半導体装置に関する。特に、イオン注入と熱処理により形成されたp型のp型領域を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNなどのIII 族窒化物半導体は、高い絶縁破壊電界を有しており、高耐圧と低オン抵抗の両立が可能であることから、パワーデバイスの材料として注目され、さかんに研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、III 族窒化物半導体からなるpnダイオードが記載されており、n層、p層のキャリアトラップ準位の平均密度を所定値以下にすることで、低損失な素子を実現できることが記載されている。このような効果が得られる理由として、キャリアトラップ準位の平均密度を低減したことにより相対的に非発光再結合が抑制されて発光再結合が増加し、発光再結合による光がp層に吸収されてホール濃度が増加するためであると考察されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-33913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
p層形成のためにイオン注入と熱処理を行った場合、リーク電流が増大してしまう問題があった。これは、キャリアトラップ準位が関係すると考えられる。しかし、特許文献1では複数存在するキャリアトラップ準位のうちどのキャリアトラップ準位がリーク電流に寄与しているのかが明らかでない。また、特許文献1にはキャリアトラップ準位の平均密度をどのようにして制御するのか記載がない。
【0006】
そこで本発明の目的は、リーク電流が抑制されたIII 族窒化物半導体からなる半導体装置およびその製造方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、ドナー濃度1×1015~2×1016/cm3 のn型のGaNからなるn層と、n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、n層上およびp型領域上に設けられ、n層に対してショットキー接触するショットキー電極と、を有し、
平面視でp型領域のない領域をA領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.30eV以上0.45eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE3、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4、とし、
A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、n層とショットキー電極との界面からn層側に0.8~1.6μmの深さの領域におけるn層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE3の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、かつ、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が1以下、となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置である。
【0008】
本発明の第2態様は、ドナー濃度1×1015~2×1016/cm3 のn型のGaNからなるn層と、n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、n層上およびp型領域上に設けられ、n層に対してショットキー接触するショットキー電極と、を有し、
平面視でp型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.20eV以上0.30eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE2、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4、
GaNの伝導帯下端から1.10eV以上1.40eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE9、とし、
B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、n層とp型領域との界面からn層側に0.8~1.6μmの深さの領域におけるn層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きくなるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置である。
【0009】
本発明の第1、第2態様において、さらなるリーク電流の抑制のために、以下のように設定されていることが好ましい。
【0010】
B領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度に対するA領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が0.01以下、となるように設定されていることが好ましい。
【0011】
B領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度に対するA領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が0.01以下、となるように設定されていることが好ましい。
【0012】
B領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度に対するA領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度の比が0.4~2.5、となるように設定されていることが好ましい。
【0013】
GaNの伝導帯下端から0.90eV以上1.00eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE7として、B領域におけるTE7の電子トラップ準位の平均密度に対するA領域におけるTE7の電子トラップ準位の平均密度の比が0.2以下、となるように設定されていることが好ましい。
【0014】
B領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度に対するA領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が0.04以下、となるように設定されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の第3態様は、ドナー濃度1×1015~2×1016/cm3 のn型のGaNからなるn層と、n層上に設けられたp型のGaNからなるp層と、n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、を有し、
平面視でp型領域のない領域をA領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4とし、
A領域における各電子トラップ準位の平均密度は、n層とp層との界面からn層側に0.8~1.6μmの深さの領域におけるn層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
A領域におけるn層中のTE4の電子トラップ準位の平均密度が、n層のドナー濃度の1/500以下となるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置である。
【0016】
また、本発明の第4態様は、ドナー濃度1×1015~2×1016/cm3 のn型のGaNからなるn層と、n層上に設けられたp型のGaNからなるp層と、n層の一部領域に、イオン注入および熱処理により設けられたp型のGaNからなる領域であるp型領域と、を有し、
平面視でp型領域のある領域をB領域とし、
GaNの伝導帯下端から0.10eV以上0.20eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE1、
GaNの伝導帯下端から0.20eV以上0.30eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE2、
GaNの伝導帯下端から0.45eV以上0.60eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE4、
GaNの伝導帯下端から1.10eV以上1.40eV未満のエネルギーの電子トラップ準位をTE9、とし、
B領域における各電子トラップ準位の平均密度は、n層とp型領域との界面からn層側に0.8~1.6μmの深さの領域におけるn層中の各電子トラップ準位の平均密度として、
B領域におけるn層中の各電子トラップ準位の平均密度が、
TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きくなるように設定されている、
ことを特徴とする半導体装置である。
【0017】
本発明の第3、第4態様において、さらなるリーク電流の抑制のために、以下のように設定されていることが好ましい。
【0018】
B領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度に対するA領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が0.03以下、となるように設定されていることが好ましい。
【0019】
B領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度に対するA領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が0.02以下、となるように設定されていることが好ましい。
【0020】
B領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度に対するA領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度の比が0.3~2.0、となるように設定されていることが好ましい。
【0021】
GaNの価電子帯上端から0.80eV以上0.90eV未満の正孔トラップ準位をTH3とし、
A領域における正孔トラップ準位の平均密度は、n層とp層との界面からp層側に0.02~0.05μmの深さの領域におけるp層中の正孔トラップ準位の平均密度とし、
B領域における正孔トラップ準位の平均密度は、n層とp型領域との界面からp型領域側に0.02~0.05μmの深さの領域におけるp型領域中の正孔トラップ準位の平均密度として、
B領域におけるp型領域中のTH3の正孔トラップ準位の平均密度に対する、A領域におけるp層中のTH3の正孔トラップ準位の平均密度の比が、0.7~1.4、となるように設定されている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、リーク電流が抑制されたIII 族窒化物半導体からなる半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1の半導体装置の構成を示した図。
図2】実施例1の半導体装置の製造工程を示した図。
図3】実施例1の半導体装置の製造方法の変形例を示した図。
図4】実施例2の半導体装置の構成を示した図。
図5】実施例2の半導体装置の製造工程を示した図。
図6】実施例2の半導体装置の変形例1の構成を示した図。
図7】実施例2の半導体装置の変形例1の製造工程を示した図。
図8】実施例2の半導体装置の変形例2の構成を示した図。
図9】実施例1の半導体装置のA領域評価用素子の構成を示した図。
図10】実施例2の半導体装置のA領域評価用素子の構成を示した図。
図11】実施例1および実施例2の半導体装置のB領域評価用素子の構成を示した図。
図12】実施例1の半導体装置のA領域評価用素子のI-V特性を示したグラフ。
図13】実施例1の半導体装置のA領域評価用素子のDLTS測定結果を示したグラフ。
図14】実施例1の半導体装置のA領域評価用素子について、各電子トラップ準位の種類ごとに各特性をまとめた図。
図15】TE4の電子トラップ準位の平均密度に対する各電子トラップ準位の平均密度の比をまとめた図。
図16】実施例2の半導体装置のA領域評価用素子のI-V特性を示したグラフ。
図17】実施例2の半導体装置のA領域評価用素子のDLTS測定結果を示したグラフ。
図18】実施例2の半導体装置のA領域評価用素子について、各キャリアトラップ準位の種類ごとに各特性をまとめた図。
図19】B領域評価用素子のI-V特性を示したグラフ。
図20】B領域評価用素子のDLTS測定結果を示したグラフ。
図21】B領域評価用素子について、各キャリアトラップ準位の種類ごとにエネルギー、捕獲断面積、キャリアトラップ準位の平均密度をまとめた図。
図22】TE4のキャリアトラップ準位の平均密度に対する各キャリアトラップ準位の平均密度の比をまとめた図。
図23】各キャリアトラップ準位について、B領域評価用素子におけるキャリアトラップ準位の平均密度に対する、実施例1の半導体装置のA領域評価用素子におけるキャリアトラップ準位の平均密度の比をまとめた図。
図24】各キャリアトラップ準位について、B領域評価用素子におけるキャリアトラップ準位の平均密度に対する、実施例2の半導体装置のA領域評価用素子におけるキャリアトラップ準位の平均密度の比をまとめた図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
図1は、実施例1の半導体装置の構成を示した図である。図1のように、実施例1の半導体装置は、ショットキーバリアダイオードであり、基板10と、n層11と、拡散p領域12と、カソード電極13と、アノード電極14と、によって構成されている。
【0026】
基板10は、Si濃度が1.0×1018/cm3 のn-GaNからなる。基板10の厚さは、320μmである。
【0027】
n層11は、基板10上に位置し、ドナー濃度が1×1015~2×1016/cm3 、Si濃度が1×1015~2.5×1016/cm3 のn-GaNからなる。n層11の厚さは5~20μmである。
【0028】
拡散p領域12は、後述のようにイオン注入および熱処理によってMgを拡散させて形成した領域であり、p-GaNからなる。Mg濃度は、2×1018/cm3 である。拡散p領域12は、平面視で環状であり、その幅は10μmである。また、拡散p領域12は、n層11表面から深さ1μmまでの領域に形成されている。この拡散p領域12は、後述のように、実施例1の半導体装置の耐圧性を向上させるために設けるものである。なお、耐圧向上のためには、Mg濃度0.5×1017~2×1019/cm3 、平面視での拡散p領領域12の環の幅は1~20μm、拡散p領領域12の深さは0.1~5μmであればよい。
【0029】
カソード電極13は、基板10裏面の全面に接して設けられている。カソード電極13は、Ti/Alからなり、基板10裏面に対してオーミック接触する。ここで、「/」は積層を意味し、A/BはA、Bの順に積層した構造を意味する。以下、材料の説明において同様である。
【0030】
アノード電極14は、n層11上および拡散p領域12上に設けられている。アノード電極14は、Niからなり、n層11に対してショットキー接触する。アノード電極14は、平面視で円であり、その外周は拡散p領域12に接している。このように、逆バイアス印加時に電界の集中するアノード電極14の端部に、拡散p領域12を接触させることで、実施例1の半導体装置の耐圧向上を図っている。
【0031】
(キャリアトラップ準位の平均密度について)
次に、n層11、および拡散p領域12のキャリアトラップ準位(電子トラップ準位および正孔トラップ準位)の平均密度について説明する。各キャリアトラップ準位の平均密度は、後述のように拡散p領域12を形成するための熱処理における温度、時間によって制御することができる。
【0032】
まず、EcをGaNの伝導帯下端の準位、Evを価電子帯上端の準位、Etを電子トラップ準位として、各電子トラップ準位、正孔トラップ準位を次のように呼ぶこととする。
TE1:Ec-Etが0.10eV以上0.20eV未満の電子トラップ準位
TE2:Ec-Etが0.20eV以上0.30eV未満の電子トラップ準位
TE3:Ec-Etが0.30eV以上0.45eV未満の電子トラップ準位
TE4:Ec-Etが0.45eV以上0.60eV未満の電子トラップ準位
TE5:Ec-Etが0.60eV以上0.75eV未満の電子トラップ準位
TE6:Ec-Etが0.75eV以上0.85eV未満の電子トラップ準位
TE7:Ec-Etが0.90eV以上1.00eV未満の電子トラップ準位
TE8:Ec-Etが1.00eV以上1.10eV未満の電子トラップ準位
TE9:Ec-Etが1.10eV以上1.40eV未満の電子トラップ準位

TH3:Et-Evが0.80eV以上0.90eV未満の正孔トラップ準位
【0033】
これらのキャリアトラップ準位のうち、TE2、TE4、TE9、TH3については、熱処理によらず発生する準位であり、MOCVD法によってn層11を結晶成長させた際に発生するものである。そのため、これらのキャリアトラップ準位の平均密度は、結晶成長させた段階ではn層11の深さ方向に対して一様に分布していると考えられる。一方、それ以外のキャリアトラップ準位(TE1、TE3、TE5~TE8)については、熱処理により発生する準位である。そのため、これらのキャリアトラップ準位の平均密度はn層11表面側の方が高く、深くなるにつれて密度は低下していると考えられる。
【0034】
実施例1の半導体装置では、n層11および拡散p領域12の各キャリアトラップ準位の平均密度が次のように設定されている。なお、キャリアトラップ準位の平均密度のうち電子トラップについては、n層11とアノード電極14との界面、あるいはn層11と拡散p領域12との界面からn層11側に0.8~1.6μmの深さの領域の平均密度、正孔トラップについては、pn界面(n層11と拡散p領域12との界面)から拡散p領域12側に0.02~0.05μmの深さの領域の平均密度とする。以下、実施例1のキャリアトラップ準位の平均密度において同様とする。
【0035】
実施例1の半導体装置を基板10主面に対して垂直上方から見て(つまり平面視において)、拡散p領域12が存在しない領域をA領域、存在する領域をB領域とする。
【0036】
A領域については、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aに対するTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Aの比(n1A/n4A)が、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aに対するTE3の電子トラップ準位の平均密度n3Aの比(n3A/n4A)よりも大きく、かつTE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aに対するTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Aの比(n1A/n4A)が1以下となるように設定されている。つまり、(n3A/n4A)<(n1A/n4A)1を満たすように設定されている。
【0037】
また、B領域については、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE2の電子トラップ準位の平均密度n2Bの比(n2B/n4B)が、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bの比(n9B/n4B)よりも大きく、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bの比(n9B/n4B)が、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Bの比(n1B/n4B)よりも大きくなるように設定されている。つまり、(n1B/n4B)<(n9B/n4B)<(n2B/n4B)を満たすように設定されている。
【0038】
A領域、B領域のうち少なくとも一方の領域において、上記のように電子トラップ準位の平均密度が設定されていることにより、実施例1の半導体装置のリーク電流を抑制することができる。もちろん、A領域、B領域の双方において、上記のように電子トラップ準位の平均密度が設定されていることがより好ましい。
【0039】
また、リーク電流の低減のためには、各電子トラップ準位の平均密度は低ければ低いほど望ましく、特に熱処理によって発生する電子トラップ準位の平均密度を十分に低減することが望ましい。たとえば以下のような範囲とすることが望ましい。
【0040】
A領域の各電子トラップ準位の平均密度のうち、熱処理によって発生するものについては、以下の範囲とすることが望ましい。TE1の電子トラップ準位の平均密度n1Aは、4×1011/cm3 以下とすることが望ましい。TE3の電子トラップ準位の平均密度n3Aは、6×1010/cm3 以下とすることが望ましい。TE6の電子トラップ準位の平均密度n6Aは、2×1013/cm3 以下とすることが望ましい。TE7の電子トラップ準位の平均密度n7Aは、4×1012/cm3 以下とすることが望ましい。
【0041】
A領域の各電子トラップ準位の平均密度のうち、熱処理によらず発生するものについては、以下の範囲とすることが望ましい。TE2の電子トラップ準位の平均密度n2Aは、n層11のドナー濃度の1/1000以下とすることが望ましい。TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aは、n層11のドナー濃度の1/100以下とすることが望ましい。TE9の電子トラップ準位の平均密度n9Aは、n層11のドナー濃度の1/500以下とすることが望ましい。
【0042】
また、A領域において、電子トラップ準位の平均密度の比は、以下の範囲とすることが望ましい。TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aに対するTE1、TE2、およびTE3の電子トラップ準位の平均密度n1A、n2A、n3Aの比(n1A/n4A、n2A/n4A、n3A/n4A)は、0.01~0.5とすることが望ましい。TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aに対するTE6およびTE7の電子トラップ準位の平均密度n6A、n7Aの比(n6A/n4A、n7A/n4A)は、1.1~10とすることが望ましい。
【0043】
また、B領域の各電子トラップ準位および正孔トラップ準位の平均密度については、以下の範囲とすることが望ましい。TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bは、n層11のドナー濃度の1/100以下とすることが望ましい。TE1の電子トラップ準位の平均密度n1Bは、3×1014/cm3 以下とすることが望ましい。TE2の電子トラップ準位の平均密度n2Bは、3×1015/cm3 以下とすることが望ましい。TE5の電子トラップ準位の平均密度n5Bは、1×1013/cm3 以下とすることが望ましい。TE7の電子トラップ準位の平均密度n7Bは、4×1013/cm3 以下とすることが望ましい。TE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bは、8×1014/cm3 以下とすることが望ましい。TH3の正孔トラップ準位の平均密度nH3Bは、1×1013/cm3 以下とすることが望ましい。
【0044】
また、リーク電流の低減のために、B領域における各キャリアトラップ準位の平均密度に対するA領域における各キャリアトラップ準位の平均密度の比は、以下の範囲とすることが望ましい。B領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Bに対するA領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Aの比(n1A/n1B)は、0.01以下であることが望ましい。B領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度n2Bに対するA領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度n2Aの比(n2A/n2B)は、0.01以下であることが望ましい。B領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するA領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aの比(n4A/n4B)は、0.4~2.5であることが望ましい。B領域におけるTE7の電子トラップ準位の平均密度n7Bに対するA領域におけるTE7の電子トラップ準位の平均密度n7Aの比(n7A/n7B)は、0.2以下であることが望ましい。B領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bに対するA領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Aの比(n9A/n9B)は、0.04以下であることが望ましい。
【0045】
次に、実施例1の半導体装置の製造方法について、図2を参照に説明する。
【0046】
まず、n-GaNからなる基板10上に、MOCVD法によってn-GaNからなるn層11、p-GaNからなるp層15を順に積層する(図2(a)参照)。n層11の厚さは、厚さ5~20μm、ドナー濃度は1×1015~2×1016/cm3 である。p層15の厚さは0.5~2μm、Mg濃度は5×1017~2×1019/cm3 である。
【0047】
次に、p層15表面の所定領域に、Mgをイオン注入してイオン注入領域16を形成する(図2(b)参照)。イオン注入しない領域に形成するマスクとして、フォトレジストなどを用いることができる。なお、注入するイオンの元素は任意でよく、Mg以外のp型ドーパントであってもよいし、Siなどのn型ドーパントであってもよい。
【0048】
次に、p層15およびイオン注入領域16の表面にSiNからなる保護膜を形成し、熱処理を行う。熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気であればよく、たとえば窒素雰囲気である。熱処理によって、n層11表面であって、イオン注入領域16の直下の領域に、p層15に含まれるMgを拡散させる。これにより、n層11表面から所定深さまでの領域に拡散p領域12を形成する。その後、保護膜をフッ酸により除去する(図2(c)参照)。この拡散p領域12形成のための熱処理の温度、時間によって、n層11および拡散p領域12のキャリアトラップ準位の平均密度を制御することができる。具体的には、熱処理温度が低いほどキャリアトラップ準位の平均密度を低減することができ、また熱処理時間を長くすることでもキャリアトラップ準位の平均密度を低減することができる。熱処理温度が低すぎたり、熱処理時間が短すぎると、所定の領域に拡散p領域12を形成することが難しくなるため、熱処理温度は1000~1100℃、熱処理時間は5~40分の範囲で制御することが望ましい。より好ましくは、熱処理温度1020~1040℃、熱処理時間12~20分である。
【0049】
次に、p層15およびイオン注入領域16をドライエッチングしてn層11表面および拡散p領域12を露出させる。さらにn層11の外周を所定の深さまでドライエッチングして素子分離領域を形成する(図2(d)参照)。
【0050】
次に、基板10の裏面にカソード電極13、n層11上および拡散p領域12上にアノード電極14を蒸着によってそれぞれ形成する。アノード電極14は、その端部が拡散p領域12上となるようなパターンとする。以上により図1に示す実施例1の半導体装置を作製する。
【0051】
なお、実施例1では、イオン注入領域直下の別の領域にMgを拡散させて拡散p領域12を形成しているが、n層11に直接Mgイオンを注入して熱処理を行って、Mgを拡散させずにそのイオン注入領域をそのままp型領域17としてもよい(図3参照)。この場合、熱処理温度と時間を所定の範囲とすることで、Mgを拡散させないでp型領域を作製することができる。ただし、実施例1のようにして拡散p領域12を形成する方が、n層11表面の荒れが少なく、また所定領域に精度よく拡散p領域12を形成することができる。
【0052】
以上、実施例1の半導体装置では、n層11、および拡散p領域12の各キャリアトラップ準位の平均密度について、平面視で拡散p領域12が存在しない領域をA領域、存在する領域をB領域として、A領域、B領域についてそれぞれ下記のように設定されているため、リーク電流を低減することができる。
A領域については、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aに対するTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Aの比(n1A/n4A)が、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aに対するTE3の電子トラップ準位の平均密度n3Aの比(n3A/n4A)よりも大きく、かつTE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aに対するTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Aの比(n1A/n4A)が1以下となるように設定されている。
B領域については、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE2の電子トラップ準位の平均密度n2Bの比(n2B/n4B)が、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bの比(n9B/n4B)よりも大きく、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bの比(n9B/n4B)が、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Bの比(n1B/n4B)よりも大きくなるように設定されている。
【実施例2】
【0053】
図4は、実施例2の半導体装置の構成を示した図である。図4のように、実施例2の半導体装置は、トレンチ型のFETであり、基板20と、n層21と、p層22と、拡散p領域23と、イオン注入領域24と、再成長n層25と、ゲート絶縁膜26と、ドレイン電極27と、ソース電極28と、ゲート電極29と、によって構成されている。
【0054】
基板20は、Si濃度が1.0×1018/cm3 のn-GaNからなる。基板10の厚さは、320μmである。
【0055】
n層21は、基板20上に位置し、ドナー濃度が1×1015~2×1016/cm3 、Si濃度が1×1015~2.5×1016/cm3 のn-GaNからなる。n層11の厚さは10μmである。
【0056】
p層22は、Mg濃度が5×1017~2×1019/cm3 のp-GaNからなる。p層22の厚さは1μmである。
【0057】
再成長n層25は、p層22上およびイオン注入領域24上に位置し、Si濃度が1×1018~1×1019/cm3 のn-GaNからなる。再成長n層25の厚さは0.2μmである。
【0058】
再成長n層25表面の所定領域には、その表面からn層21に達する深さのトレンチ30が設けられている。トレンチ30の底面にはn層21が露出し、側面にはn層21、p層22、再成長n層25が露出する。
【0059】
拡散p領域23は、n層21表面近傍であってトレンチ30の近傍に設けられた領域である。拡散p領域23は、後述のようにイオン注入および熱処理によってMgを拡散させて形成した領域であり、p-GaNからなる。Mg濃度は、5×1017~2×1019/cm3 である。拡散p領域23は、平面視でトレンチ30を囲うような環状のパターンであり、その幅は2μmである。また、拡散p領域23は、n層21表面から深さ1μmまでの領域に形成されていて、n層21表面からトレンチ30の底面までよりも深く形成されている。トレンチ30角部の近傍にこのような拡散p領域23を設けることで、トレンチ30角部に集中する電界を緩和し、耐圧性の向上を図っている。
【0060】
イオン注入領域24は、p層22表面近傍であってトレンチ30近傍に設けられた領域であり、p型の領域である。イオン注入領域24は、後述のように、拡散p領域23を形成するためのMgイオンがp層22表面に注入された領域であり、拡散p領域23の上方に位置する。イオン注入領域24は、平面視で拡散p領域23とほぼ同一のパターンであり、トレンチ30を囲うようなパターンである。なお、Mg以外のp型ドーパントがイオン注入された領域であってもよい。
【0061】
ゲート絶縁膜26は、トレンチ30の底面、側面、および上面(再成長n層25表面のうちトレンチ30近傍の領域)に沿って膜状に形成されている。ゲート絶縁膜26は、SiO2 からなる。
【0062】
ドレイン電極27は、基板20裏面の全面に接して設けられている。ドレイン電極27は、Ti/Alからなる。
【0063】
ソース電極28は、再成長n層25上に設けられている。また、再成長n層25の一部領域には、その再成長n層25を貫通してp層22を露出させる溝31が形成されている。この溝31はソース電極28により埋められ、溝31を介してソース電極28とp層22とが接続されている。ソース電極28は、Ti/Alからなる。
【0064】
ゲート電極29は、ゲート絶縁膜26を介してトレンチ30の底面、側面、および上面(再成長n層25表面のうちトレンチ30近傍の領域)に沿って膜状に設けられている。ゲート電極29は、Alからなる。
【0065】
実施例2の半導体装置は、p層22のうちトレンチ30近傍の領域がチャネルとして動作するトレンチ型のMISFETである。
【0066】
(キャリアトラップ準位の平均密度について)
次に、n層21、p層22、および拡散p領域23のキャリアトラップ準位の平均密度について説明する。各キャリアトラップ準位TE1~9、TH3は実施例1と同様の定義である。つまり、キャリアトラップ準位の平均密度のうち電子トラップについては、pn界面(n層21とp層22の界面、あるいはn層21と拡散p領域23の界面)からn層21側に0.8~1.6μmの深さの領域の平均密度、正孔トラップについては、pn界面(n層21とp層22の界面、あるいはn層21と拡散p領域23の界面)からp側に0.02~0.05μmの深さの領域の平均密度とする。
【0067】
実施例2の半導体装置では、n層21、p層22、および拡散p領域23の各キャリアトラップ準位の平均密度が次のように設定されている。実施例2の半導体装置を上方から見て(つまり平面視において)、拡散p領域23が存在しない領域をA領域、存在する領域をB領域とする。A領域については、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aがn層21のドナー濃度の1/500以下となるように設定されている。
【0068】
また、B領域については、実施例1と同様に設定されている。すなわち、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE2の電子トラップ準位の平均密度n2Bの比(n2B/n4B)が、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bの比(n9B/n4B)よりも大きく、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bの比(n9B/n4B)が、TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Bの比(n1B/n4B)よりも大きくなるように設定されている。つまり、(n1B/n4B)<(n9B/n4B)<(n2B/n4B)を満たすように設定されている。
【0069】
A領域、B領域のうち少なくとも一方の領域において、上記のようにキャリアトラップ準位の平均密度が設定されていることにより、実施例2の半導体装置のリーク電流を抑制することができる。もちろん、A領域、B領域の双方において、上記のように電子トラップ準位の平均密度が設定されていることがより好ましい。
【0070】
実施例2においても、実施例1と同様に、リーク電流の低減のためには、各キャリアトラップ準位の平均密度は低ければ低いほど望ましい。たとえば以下のような範囲とすることが望ましい。
【0071】
A領域の各キャリアトラップ準位の平均密度については、以下の範囲とすることが望ましい。TE1の電子トラップ準位の平均密度n1Aは、5×1012/cm3 以下とすることが望ましい。TE2の電子トラップ準位の平均密度n2Aは、8×1012/cm3 以下とすることが望ましい。TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aは、4×1012/cm3 以下とすることが望ましい。TE9の電子トラップ準位の平均密度n9Aは、2×1012/cm3 以下とすることが望ましい。TH3の正孔トラップ準位の平均密度nH3Aは、7×1012/cm3 以下とすることが望ましい。
【0072】
また、A領域において、電子トラップ準位の平均密度の比は、以下の範囲とすることが望ましい。TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aに対するTE1およびTE2の電子トラップ準位の平均密度n1A、n2Aの比(n1A/n4A、n2A/n4A)は、2.5以下とすることが望ましい。
【0073】
また、B領域の各キャリアトラップ準位の平均密度については、以下の範囲とすることが望ましい。TE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bは、n層11のドナー濃度の1/100以下とすることが望ましい。TE1の電子トラップ準位の平均密度n1Bは、3×1014/cm3 以下とすることが望ましい。TE2の電子トラップ準位の平均密度n2Bは、3×1015/cm3 以下とすることが望ましい。TE5の電子トラップ準位の平均密度n5Bは、1×1013/cm3 以下とすることが望ましい。TE7の電子トラップ準位の平均密度n7Bは、4×1013/cm3 以下とすることが望ましい。TE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bは、8×1014/cm3 以下とすることが望ましい。TH3の正孔トラップ準位の平均密度nH3Bは、1×1013/cm3 以下とすることが望ましい。
【0074】
また、リーク電流の低減のために、B領域における各キャリアトラップ準位の平均密度に対するA領域における各キャリアトラップ準位の平均密度の比は、以下の範囲とすることが望ましい。B領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Bに対するA領域におけるTE1の電子トラップ準位の平均密度n1Aの比(n1A/n1B)は、0.03以下であることが望ましい。B領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度n2Bに対するA領域におけるTE2の電子トラップ準位の平均密度n2Aの比(n2A/n2B)は、0.02以下であることが望ましい。B領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度n4Bに対するA領域におけるTE4の電子トラップ準位の平均密度n4Aの比(n4A/n4B)は、0.3~2.0であることが望ましい。B領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Bに対するA領域におけるTE9の電子トラップ準位の平均密度n9Aの比(n9A/n9B)は、0.02以下であることが望ましい。B領域におけるTH3の正孔トラップ準位の平均密度nH3Bに対するA領域におけるTH3の正孔トラップ準位の平均密度nH3Aの比(nH3A/nH3B)は、0.7~1.4であることが望ましい。
【0075】
次に、実施例2の半導体装置の製造方法について、図5を参照に説明する。
【0076】
まず、n-GaNからなる基板20上に、MOCVD法によってn-GaNからなるn層21、p-GaNからなるp層22を順に積層する(図5(a)参照)。そして、p層22中のMgを活性化させp型化するための熱処理を行う。
【0077】
次に、p層22表面の所定領域に、Mgをイオン注入してイオン注入領域24を形成する(図5(b)参照)。イオン注入しない領域に形成するマスクとして、フォトレジストなどを用いることができる。
【0078】
次に、p層22およびイオン注入領域24の表面にSiNからなる保護膜を形成し、熱処理を行う。熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気であればよく、たとえば窒素雰囲気である。熱処理によって、n層21表面側であって、イオン注入領域24の直下の領域に、p層22に含まれるMgを拡散させる。これにより、イオン注入領域24の直下であってn層21表面から所定深さまでの領域に拡散p領域23を形成する。その後、保護膜をフッ酸により除去する(図5(c)参照)。この拡散p領域23形成のための熱処理の温度、時間によって、n層21および拡散p領域23のキャリアトラップ準位の平均密度を制御することができる。具体的には、熱処理温度が低いほどキャリアトラップ準位の平均密度を低減することができ、また熱処理時間を長くすることでもキャリアトラップ準位の平均密度を低減することができる。熱処理温度が低すぎたり、熱処理時間が短すぎると、所定の領域に拡散p領域23を形成することが難しくなるため、熱処理温度は1000~1100℃、熱処理時間は5~40分の範囲で制御することが望ましい。より好ましくは、熱処理温度1020~1040℃、熱処理時間12~20分である。
【0079】
次に、p層22上に、MOCVD法によってn-GaNからなる再成長n層25を形成する(図5(d)参照)。
【0080】
次に、再成長n層25の一部領域をn層21が露出するまでドライエッチングして、トレンチ30を形成する。また、再成長n層25の一部領域をp層22が露出するまでドライエッチングして、ソース電極28をp層22に接触させるための溝31を形成する。また、再成長n層25の外周領域を所定の深さまでドライエッチングして、素子分離領域を形成する(図5(e)参照)。
【0081】
次に、ALD法によって、トレンチ30の底面、側面、および上面にゲート絶縁膜26を形成する。次に、蒸着によって、再成長n層25上にソース電極28を形成し、溝31を介してp層22と接触させる。次に、蒸着によって、トレンチ30の底面、側面、および上面にゲート絶縁膜26を介してゲート電極29を形成する。次に、蒸着によって基板20の裏面にドレイン電極27を形成する。以上によって図4に示す実施例1の半導体装置を作製する。
【0082】
(実施例2の変形例1)
実施例2では、イオンを注入したイオン注入領域24とは別の領域にMgを拡散させて拡散p領域23を形成しているが、n層21に直接イオン注入と熱処理を行って、Mgを拡散させずに活性化して、そのイオン注入領域をそのままp型領域33としてもよい。その場合、実施例2の半導体装置におけるイオン注入領域24はなく、p層22に替えて再成長p層32となる(図6参照)。この場合の製造方法について、以下に説明する。
【0083】
まず、n-GaNからなる基板20上に、MOCVD法によってn-GaNからなるn層21を積層する(図7(a)参照)。
【0084】
次に、n層21表面の所定領域に、Mgをイオン注入してイオン注入領域を形成する。そして、n層21およびイオン注入領域の表面にSiNからなる保護膜を形成し、熱処理を行う。熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気であればよく、たとえば窒素雰囲気である。熱処理によって、イオン注入領域のMgを拡散させずに活性化させ、これによりイオン注入領域をp型領域33とする(図7(b)参照)。
【0085】
次に、n層21上およびp型領域33上に、MOCVD法によって、p-GaNからなる再成長p層32、n-GaNからなる再成長n層25を形成する(図7(c)参照)。以下、実施例2と同様の工程により、図6に示す半導体装置を作製することができる。
【0086】
(実施例2の変形例2)
実施例2では、Mgをイオン注入してイオン注入領域24を形成しているが、Siなどのn型ドーパントをイオン注入してイオン注入領域34を形成してもよい。Mgをイオン注入する場合と同様の領域に、拡散p領域23を形成することができる。イオン注入領域34はn型であるため、実施例2における再成長n層25は省くことができる(図8参照)。
【0087】
(実験例)
次に、実施例1、2に関する各種実験例を説明する。
【0088】
実施例1の半導体装置のA領域を評価する素子(図9参照)と、実施例2の半導体装置のA領域を評価する素子(図10参照)と、実施例1、2の半導体装置のB領域を評価する素子(図11参照)を次のようにして作製し、キャリアトラップ準位の種別およびキャリアトラップ準位の平均密度の評価を行った。
【0089】
(実施例1の半導体装置のA領域の評価)
実施例1のA領域評価用素子は、次のようにして作製した。まず、Si濃度1.0×1018/cm3 のn-GaNからなる基板100上に、MOCVD法によって厚さ10μm、ドナー濃度2.5×1015/cm3 のn層101を作製した。そして、n層101上にSiNからなる保護膜を作製し、熱処理を行った素子と、熱処理を行わなかった素子を作製した。熱処理は、1050℃、4分間の素子と、1150℃、4分間の素子を作製した。その後、保護膜をフッ酸より除去し、素子外周をドライエッチングして素子分離領域を形成し、n層101表面にNiからなるショットキー接触のアノード電極104、基板100裏面にAl/Tiからなるカソード電極103を形成した。
【0090】
以上のようにして作製したA領域評価用素子に、温度25℃において逆方向電圧を0~200Vの範囲で印加し、I-V測定を行った。図12はそのグラフを示す。また、温度77~500K、バイアス電圧-5V、パルス電圧0Vにおいて、DLTS測定を行った。図13は、その結果を示したグラフである。
【0091】
図12のように、熱処理によってリーク電流が発生することがわかり、熱処理温度が高いほどリーク電流が増加することがわかった。リーク電流の低減のためには、1050℃以下の熱処理であればよいことがわかった。
【0092】
また、DLTS測定により、n層101とアノード電極104との界面からn層101側に0.8~1.6μmの深さの領域の電子トラップ準位TE1~TE9が特定できた。図14は、各電子トラップ準位の種類ごとのエネルギー、捕獲断面積、電子トラップ準位の平均密度、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対する比をまとめた表である。図14のように、各電子トラップ準位のうち、TE2、TE4、TE9については、熱処理によらず発生するキャリアトラップ準位であることがわかった。また、いずれの電子トラップ準位の平均密度についても、熱処理によって増加することがわかった。したがって、熱処理による電流リークの増加は、電子トラップ準位の平均密度の増加が原因であると考えられる。なお、TE5、TE8については検出できなかったが、これは検出限界以下の密度であったためと考えられる。
【0093】
熱処理温度1150℃では、熱処理温度1050℃に比べて大きくリーク電流が増加していることから、1050℃における各電子トラップ準位の平均密度の状態が、1150℃における各電子トラップ準位の平均密度の状態よりも、リーク電流を低減できる状態であると考えられる。また、トラップ準位が小さいほどリーク電流への寄与が大きいと考えられ、また拡散p領域12の形成のためには熱処理しないことは考えられない。そのため、熱処理によって発生し、かつトラップ準位が小さいTE1、TE3の電子トラップ準位の平均密度によって、リーク電流を低減できる状態を規定するのがよいと考えられる。また、TE1、TE3の電子トラップ準位の平均密度の評価は、熱処理によらず発生する電子トラップ準位の平均密度を基準とするのがよいと考えられる。
【0094】
そこでTE4の電子トラップ準位の平均密度に対する各電子トラップ準位の平均密度の比をまとめたのが図15である。図15を見ると、熱処理によって発生する電子トラップ準位のうち、TE4に対して大きく変動しているのはTE1、TE3である。また、TE1の電子トラップ準位の平均密度は、熱処理温度が1050℃、1150℃のいずれの場合もTE3の電子トラップ準位の平均密度よりも大きくなっている。また、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比は、1150℃では1よりも大きくなっているが、1050℃では1以下となっている。
【0095】
このような理由から、実施例1の半導体装置のA領域では、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE3の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、かつTE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比が1以下、とすることで、リーク電流を低減できる電子トラップ準位の平均密度(熱処理温度1050℃における各電子トラップ準位の平均密度の状態)を規定した。
【0096】
(実施例2の半導体装置のA領域の評価)
実施例2のA領域評価用素子は、次のようにして作製した。まず、Si濃度1.0×1018/cm3 のn-GaNからなる基板100上に、MOCVD法によって、厚さ10μmでドナー濃度5×1015/cm3 のn層101、厚さ1μmでMg濃度2×1018/cm3 のp-GaNからなるp層102を順に積層した。そして、p層102上にSiNからなる保護膜を作製し、熱処理を行った素子と、熱処理を行わなかった素子を作製した。熱処理条件は、1050℃で4分間、1150℃で4分間、1250℃で30秒間として、それぞれ素子を作製した。その後、保護膜をフッ酸より除去し、素子外周をドライエッチングして素子分離領域を形成した。次に、p層102表面にPdからなるオーミック接触のアノード電極105、基板100裏面にAl/Tiからなるカソード電極103を形成した。
【0097】
以上のようにして作製したA領域評価用素子に、温度25℃において逆方向電圧を0~300Vの範囲で印加し、I-V測定を行った。図16はそのグラフを示す。また、温度77~600K、バイアス電圧-10V、パルス電圧0Vにおいて、DLTS測定を行った。ただし、熱処理温度1250℃で30秒間の場合のみ、温度77~700Kとした。図17は、その結果を示したグラフである。
【0098】
図16のように、1250℃以上の熱処理によってリーク電流が発生することがわかり、熱処理温度が高いほどリーク電流が増加することがわかった。リーク電流の低減のためには、1150℃以下の熱処理であればよいことがわかった。
【0099】
また、DLTS測定により、n層101とp層102との界面からn層101側に0.8~1.6μmの深さの領域のキャリアトラップ準位(電子トラップ準位)と、n層101とp層102との界面からp層102側に0.02~0.05μmの深さの領域のキャリアトラップ準位(正孔トラップ準位)が特定できた。TE9よりもエネルギーの高いTE10、TE11の電子トラップ準位や、TH3よりもエネルギーの低いTH2の正孔トラップ準位も特定できた。図18は、各キャリアトラップ準位の種類ごとに各特性をまとめた表である。また、熱処理によってキャリアトラップ準位の種類が変化し、キャリアトラップ準位の平均密度も増加することがわかった。したがって、熱処理による電流リークの増加は、キャリアトラップ準位の種類とキャリアトラップ準位の平均密度の増加が原因であると考えられる。
【0100】
熱処理温度1250℃では、熱処理温度1150℃に比べて大きくリーク電流が増加していることから、1050℃および1150℃における各キャリアトラップ準位の平均密度の状態が、1250℃における各キャリアトラップ準位の平均密度の状態よりも、リーク電流を低減できる状態であることが考えられる。図17を見ると、TE4は、どの熱処理温度でも現れており、1150℃での熱処理と1250℃での熱処理の双方に現れている。一方、他のキャリアトラップ準位は、熱処理の有無や熱処理温度によって現れたり消えたりしている。そのため、TE4のキャリアトラップ準位の平均密度によって、リーク電流を低減できる状態を規定するのがよいと考えられる。
【0101】
TE4の電子トラップ準位は、熱処理によらず発生するものであるから、TE4の電子トラップ準位の平均密度は、n層102のドナー濃度にも依存するものと考えられる。このような理由から、実施例2の半導体装置のA領域では、TE4の電子トラップ準位の平均密度がn層101のドナー濃度の1/500以下、とすることで、リーク電流を低減できる電子トラップ準位の平均密度(熱処理温度1150℃における各キャリアトラップ準位の平均密度の状態)を規定した。
【0102】
(実施例1、2の半導体装置のB領域の評価)
B領域評価用素子は、次のようにして作製した。まず、Si濃度1.0×1018/cm3 のn-GaNからなる基板100上に、MOCVD法によって、厚さ10μmでドナー濃度5×1015/cm3 のn層101、厚さ1μmでMg濃度2×1018/cm3 のp-GaNからなるp層102を順に積層した。次に、p層102の全面にMgをイオン注入してイオン注入領域106を形成した。次に、イオン注入領域106上にSiNからなる保護膜を作製し、熱処理を行った。熱処理条件は、1050℃で4分間、1050℃で20分間、1050℃で40分間として、それぞれ素子を作製した。この熱処理によってn層101にMgが拡散し、n層101表面から所定の深さまでの領域に拡散p領域107が形成された。次に、保護膜をフッ酸により除去し、素子外周をドライエッチングして素子分離領域を形成した。次に、イオン注入領域106表面にPdからなるオーミック接触のアノード電極105、基板100裏面にAl/Tiからなるカソード電極103を形成した。
【0103】
なお、このB領域評価用素子は、実施例1の半導体装置のB領域とは構造が異なるが、n層と拡散p領域とのpn界面の空乏層領域におけるキャリアトラップ準位を検出している点で同様である。そのため、B領域評価用素子によって実施例2の半導体装置のB領域だけでなく、実施例1の半導体装置のB領域も評価することができる。
【0104】
以上のようにして作製したB領域評価用素子に、温度25℃において逆方向電圧を0~300Vの範囲で印加し、I-V測定を行った。図19はそのグラフを示す。また、温度77~600K、バイアス電圧-10V、パルス電圧0Vにおいて、DLTS測定を行った。図20は、その結果を示したグラフである。
【0105】
図19のように、熱処理時間が長くなるほど電流リークを低減できることがわかり、20分以上の熱処理によってリーク電流を十分に低減できることがわかった。これは、熱処理時間が長いほどイオン注入による結晶へのダメージが回復するためと考えられる。
【0106】
また、DLTS測定により、n層21と拡散p領域23との界面からn層21側に0.8~1.6μmの深さの領域のキャリアトラップ準位(電子トラップ準位)と、n層21と拡散p領域23との界面から拡散p領域23側に0.02~0.05μmの深さの領域のキャリアトラップ準位(正孔トラップ準位)が特定できた。TH2よりもエネルギーの低い正孔トラップ準位も特定できた。図21は、各キャリアトラップ準位の種類ごとに各特性をまとめた表である。また、熱処理時間によってキャリアトラップ準位の種類が変化し、熱処理時間が長いほどキャリアトラップ準位の平均密度が減少することがわかった。したがって、熱処理時間が長くなることによる電流リークの減少は、キャリアトラップ準位の種類とキャリアトラップ準位の平均密度の減少が原因であると考えられる。
【0107】
熱処理4分間では、熱処理20分間、40分間に比べて大きくリーク電流が増加していることから、熱処理20分間、40分間での各キャリアトラップ準位の平均密度の状態が、熱処理4分間での各キャリアトラップ準位の平均密度の状態よりも、リーク電流を低減できる状態であると考えられる。図20を見ると、いずれの熱処理時間においてもTE1、TE2、TE9のピークが現れている。特に、トラップ準位が小さいほどリーク電流への寄与が大きいと考えられ、TE1、TE2の電子トラップ準位の平均密度は、リーク電流への寄与が大きいと考えられる。そのため、TE1、TE2、TE9の電子トラップ準位の平均密度によって、リーク電流を低減できる状態を規定するのがよいと考えられる。また、これら電子トラップ準位の平均密度の評価は、熱処理によらず発生する電子トラップ準位の平均密度を基準とするのがよいと考えられる。
【0108】
そこで、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対する各電子トラップ準位の平均密度の比をまとめたのが図22である。図22のように、熱処理4分間の場合には、TE1の電子トラップ準位の平均密度比が最も大きく、次いでTE9、TE2の順であった。一方、熱処理20分間の場合には、TE2の電子トラップ準位の平均密度比が最も大きく、次いでTE9、TE1であった。
【0109】
このような理由から、実施例1、2の半導体装置のB領域では、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE2の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きく、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE9の電子トラップ準位の平均密度の比が、TE4の電子トラップ準位の平均密度に対するTE1の電子トラップ準位の平均密度の比よりも大きい、とすることで、リーク電流を低減できる電子トラップ準位の平均密度(熱処理温度20分間における各キャリアトラップ準位の平均密度の状態)を規定した。
【0110】
図23は、各電子トラップ準位について、B領域評価用素子における電子トラップ準位の平均密度に対する、実施例1の半導体装置のA領域評価用素子における電子トラップ準位の平均密度の比をまとめた表である。図23から、各密度比を以下のように規定すれば、リーク電流を低減できるものと考えられる。TE1の電子トラップ準位についての密度比は、0.01以下。TE2の電子トラップ準位についての密度比は、0.01以下。TE4の電子トラップ準位についての密度比は、0.4~2.5。TE7の電子トラップ準位についての密度比は、0.2以下。TE9の電子トラップ準位についての密度比は、0.04以下。
【0111】
図24は、各電子トラップ準位について、B領域評価用素子における電子トラップ準位の平均密度に対する、実施例2の半導体装置のA領域評価用素子における電子トラップ準位の平均密度の比をまとめた表である。図24から、各密度比を以下のように規定すれば、リーク電流を低減できるものと考えられる。TE1の電子トラップ準位についての密度比は、0.01~0.03。TE2の電子トラップ準位についての密度比は、0.0001~0.005。TE4の電子トラップ準位についての密度比は、0.3~2.0。TE9の電子トラップ準位についての密度比は、0.002~0.02。また、同様の比較から、TH3の正孔トラップ準位についての密度比は、0.7~1.4であれば、リーク電流を低減できるものと考えられる。
【0112】
また、以上の実験結果から、Mgを拡散させて拡散p領域を形成するための熱処理として、熱処理温度は1000~1100℃、熱処理時間は5~40分の範囲で制御すればよいことがわかった。
【0113】
(その他の各種変形例)
なお、実施例1はショットキーバリアダイオードであったが、n層11の一部領域に拡散p領域12が設けられ、n層11上にショットキー電極が設けられた構造であれば、任意の構造の半導体装置に適用することができる。また、実施例2はトレンチ型のMISFETであったが、n層21、p層22が順に積層され、n層21の一部領域に拡散p領域23が設けられた構造であれば、任意の構造の半導体装置に適用することができる。たとえば、pnダイオード、pinダイオード、IGBT、HFET、などにも本発明は適用可能である。また、実施例1、2はいずれも縦方向(基板主面に垂直な方向)に導通を取る縦型構造であるが、本発明は基板主面に水平な方向に導通を取る横型構造の半導体装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の半導体装置は、パワーデバイスなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0115】
10、20:基板
11、21:n層
12、23:拡散p領域
13:カソード電極
14:アノード電極
22:p層
24:イオン注入領域
25:再成長n層
26:ゲート絶縁膜
27:ドレイン電極
28:ソース電極
29:ゲート電極
30:トレンチ
図1
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