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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】二色成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/42 20060101AFI20220622BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20220622BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B29C33/42
B29C33/12
B29C45/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018184173
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049894
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】深井 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 諭司
(72)【発明者】
【氏名】松永 崇
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-125744(JP,A)
【文献】特開2010-105253(JP,A)
【文献】特開2003-267040(JP,A)
【文献】特開2018-065288(JP,A)
【文献】特開2005-161683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/42
B29C 33/12
B29C 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通金型及び一次金型を備える一次成形金型と、前記共通金型及び二次金型を備える二次成形金型とを用いて、一次樹脂材料からなる一次樹脂部と、二次樹脂材料からなる二次樹脂部とを一体的に成形してなる二色成形品を製造する方法であって、
前記一次成形金型の型閉じに際し、前記一次金型及び前記共通金型の間に形成される一次キャビティに前記一次樹脂材料を充填して前記一次樹脂部を成形する一次成形工程と、
前記一次成形金型及び前記二次成形金型をともに型開きし、前記一次樹脂部が保持された状態の前記共通金型を、前記一次金型に対向する位置から前記二次金型に対向する位置へ移動させた後、前記一次成形金型及び前記二次成形金型を型閉じすることで、前記共通金型、前記一次樹脂部及び前記二次金型の間に二次キャビティを形成し、前記二次樹脂材料を二次ゲートから前記二次キャビティに充填して、前記一次樹脂部に接触した状態の前記二次樹脂部を成形する二次成形工程とを備え、前記二次成形工程では、前記二次金型として、型閉じ方向に延びる突条部を有するものを用い、前記二次成形金型の型閉じの際には、前記突条部を前記一次樹脂部のうち、前記二次キャビティの周囲となる箇所に食い込ませながら、前記共通金型を前記二次金型に接近させ、
前記二次成形工程では、前記二次金型として、前記突条部が、前記二次ゲートを挟んで相対向する箇所に設けられたものが用いられる二色成形品の製造方法。
【請求項2】
前記一次成形工程では、前記二次樹脂材料よりも硬質の前記一次樹脂材料が用いられて前記一次樹脂部が成形される請求項1に記載の二色成形品の製造方法。
【請求項3】
前記二次成形工程では、前記突条部を前記一次樹脂部に対し、0.03mm~0.4mmの深さ食い込ませる請求項1又は2に記載の二色成形品の製造方法。
【請求項4】
前記二色成形品は自動車のダクトクォータベントである請求項1~のいずれか1項に記載の二色成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次樹脂材料からなる一次樹脂部と、二次樹脂材料からなる二次樹脂部とを一体的に成形してなる二色成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに異なる種類の樹脂材料からなる一次樹脂部及び二次樹脂部を一体的に成形してなる二色成形品は、一般的には、例えば特許文献1に記載されているように、固定型、可動型及び移動コアを有する1種類の二色成形金型が用いられて成形される。
【0003】
すなわち、二色成形金型が型閉じされることで、固定型、可動型及び移動コアの間に一次キャビティが形成される。この一次キャビティに一次樹脂材料が充填されることで一次樹脂部が成形される。
【0004】
次に、移動コアが移動(後退)されることで、固定型、可動型、移動コア及び一次樹脂部の間に二次キャビティが形成される。表現を変えると、移動コアの移動(後退)に伴い空いたスペースが二次キャビティとなる。二次樹脂材料が二次キャビティに充填されることで、一次樹脂部に接触した状態の二次樹脂部が成形される。このようにして、一次樹脂部及び二次樹脂部からなる二色成形品が得られる。
【0005】
上記製造方法は、一次樹脂部が、移動コアの移動方向にアンダーカット形状を有している二色成形品には適用できない。アンダーカット形状をなす部分が移動コアの移動を妨げるからである。
【0006】
そのため、例えば、特許文献2に記載されているように、移動コアを用いないで上記二色成形品を成形する製造方法が採られる。
この製造方法では、共通金型及び一次金型を備える一次成形金型と、上記共通金型及び二次金型を備える二次成形金型とが用いられる。そして、一次成形工程及び二次成形工程が順に行われることで二色成形品が成形される。
【0007】
一次成形工程では、一次成形金型が型閉じされることで、共通金型及び一次金型の間に一次キャビティが形成される。一次樹脂材料が一次キャビティに充填されることにより、一次樹脂部が成形される。
【0008】
二次成形工程では、一次成形金型及び二次成形金型がともに型開きされ、一次樹脂部の保持された共通金型が、一次金型に対向する位置から二次金型に対向する位置へ移動される。二次成形金型が型閉じされることで、共通金型、一次樹脂部及び二次金型の間に二次キャビティが形成される。二次樹脂材料が二次キャビティに充填されることにより、一次樹脂部に接触した状態の二次樹脂部が成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第3033410号明細書
【文献】特開2015-205495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記後者の二色成形品の製造方法では、二次成形工程において、一次成形金型及び二次成形金型が型開きされて、一次樹脂部の保持された共通金型が一次金型から離間されることで、一次樹脂部が一次金型から取り外される。一次樹脂部の保持された共通金型が、一次金型に対向する位置から二次金型に対向する位置へ移動された後に、二次成形金型の型閉じに際し、一次樹脂部の保持された共通金型が二次金型に接近されることで、一次樹脂部が二次金型に配置(セット)されて二次キャビティが形成される。
【0011】
一次樹脂部が一次金型から取り外されてから二次金型に配置されるまでの期間に、その一次樹脂部が収縮したり、変形したりするおそれがある。また、一次樹脂部が二次金型に配置される際に位置ずれが生ずるおそれもある。そして、このように収縮、変形等した一次樹脂部が二次金型に配置されたり、位置ずれが発生したりすると、二次金型と一次樹脂部との間であって、二次キャビティの外側に隣接する箇所に隙間が発生しやすくなる。隙間が発生した状態で、二次樹脂材料が二次キャビティに充填されると、その二次樹脂材料の一部が上記隙間に入り込む。この隙間に入り込んだ二次樹脂材料が硬化することで、バリが発生するおそれがある。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、二次樹脂部の成形時におけるバリの発生を抑制することのできる二色成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する二色成形品の製造方法は、共通金型及び一次金型を備える一次成形金型と、前記共通金型及び二次金型を備える二次成形金型とを用いて、一次樹脂材料からなる一次樹脂部と、二次樹脂材料からなる二次樹脂部とを一体的に成形してなる二色成形品を製造する方法であって、前記一次成形金型の型閉じに際し、前記一次金型及び前記共通金型の間に形成される一次キャビティに前記一次樹脂材料を充填して前記一次樹脂部を成形する一次成形工程と、前記一次成形金型及び前記二次成形金型をともに型開きし、前記一次樹脂部が保持された状態の前記共通金型を、前記一次金型に対向する位置から前記二次金型に対向する位置へ移動させた後、前記一次成形金型及び前記二次成形金型を型閉じすることで、前記共通金型、前記一次樹脂部及び前記二次金型の間に二次キャビティを形成し、前記二次樹脂材料を二次ゲートから前記二次キャビティに充填して、前記一次樹脂部に接触した状態の前記二次樹脂部を成形する二次成形工程とを備え、前記二次成形工程では、前記二次金型として、型閉じ方向に延びる突条部を有するものを用い、前記二次成形金型の型閉じの際には、前記突条部を前記一次樹脂部のうち、前記二次キャビティの周囲となる箇所に食い込ませながら、前記共通金型を前記二次金型に接近させる。
【0014】
上記の製造方法によれば、一次成形工程では、一次成形金型の型閉じに際し、一次金型及び共通金型の間に形成される一次キャビティに一次樹脂材料が充填されて一次樹脂部が成形される。
【0015】
二次成形工程では、一次成形金型及び二次成形金型がともに型開きされることで、一次樹脂部の保持された共通金型が一次金型から離間されて、一次樹脂部が一次金型から取り外される。
【0016】
一次樹脂部が保持された状態の共通金型が、一次金型に対向する位置から二次金型に対向する位置へ移動させられる。その後に、一次成形金型及び二次成形金型が型閉じされることで、一次樹脂部が二次金型に配置(セット)される。また、共通金型、一次樹脂部及び二次金型の間に二次キャビティが形成される。二次樹脂材料が二次ゲートから二次キャビティに充填されて、一次樹脂部に接触した状態の二次樹脂部が成形される。
【0017】
ここで、一次樹脂部が一次金型から取り外されてから二次金型に配置されるまでの期間に、一次樹脂部が収縮したり、変形したりするおそれがある。一次樹脂部が二次金型に配置される際に位置ずれが生ずるおそれもある。そして、このように収縮、変形等した一次樹脂部が二次金型に配置されたり、位置ずれが発生したりすると、二次金型と一次樹脂部との間であって二次キャビティの外側に隣接する箇所に隙間が発生しやすくなる。この状態で、二次樹脂材料が二次ゲートから二次キャビティに充填されると、その二次樹脂材料の一部が上記隙間に入り込もうとする。
【0018】
しかし、上記二次成形工程では、二次金型として、型閉じ方向に延びる突条部を有するものが用いられる。そして、二次成形金型の型閉じに際し、突条部を一次樹脂部のうち、二次キャビティの周囲となる箇所に食い込ませながら(一次樹脂部を変形させながら)、共通金型が二次金型に接近させられる。突条部が一次樹脂部に食い込んだ箇所は、隙間のない状態となり、二次樹脂材料が二次キャビティの外部へ流出(漏出)するのを妨げる。従って、二次樹脂材料が上記隙間に入り込んで硬化してバリが発生する現象が起こりにくくなる。
【0019】
上記二色成形品の製造方法において、前記一次成形工程では、前記二次樹脂材料よりも硬質の前記一次樹脂材料が用いられて前記一次樹脂部が成形されることが好ましい。
上記の製造方法によれば、一次成形工程では、一次金型及び共通金型の間の一次キャビティに対し、二次樹脂材料よりも硬質の一次樹脂材料が充填されて、二次樹脂部よりも硬質の一次樹脂部が成形される。
【0020】
二次成形工程では、共通金型、一次樹脂部及び二次金型の間に形成される二次キャビティに対し、一次樹脂材料よりも軟質の二次樹脂材料が充填されて、一次樹脂部に接触し、かつ一次樹脂部よりも軟質の二次樹脂部が成形される。
【0021】
上記二次成形工程で、二次成形金型が型閉じされる際には、二次金型における硬質の突条部が、二次樹脂部よりも硬質の一次樹脂部に食い込みながら(一次樹脂部を変形させながら)、共通金型が二次金型に接近させられる。突条部が一次樹脂部に食い込んだ箇所は、隙間のない状態となり、二次樹脂材料が二次キャビティの外部へ流出(漏出)するのを妨げる。硬質の一次樹脂部は、二次樹脂材料の高い圧力が作用しても変形しにくい。一次樹脂部と突条部との間は隙間のない状態に保持され、二次樹脂材料が流出(漏出)しにくくなる。
【0022】
上記二色成形品の製造方法において、前記二次成形工程では、前記二次金型として、前記突条部が、前記二次ゲートを挟んで相対向する箇所に設けられたものが用いられることが好ましい。
【0023】
ここで、二次成形工程において、溶融状態の二次樹脂材料が二次キャビティに充填される際、同二次キャビティでの二次樹脂材料の圧力は、二次樹脂材料が二次キャビティへ流れ込む入口である二次ゲートにおいて最も高くなる。
【0024】
この点、上記の製造方法によれば、二次成形工程において二次成形金型が型閉じされる際には、二次ゲートを挟んで相対向する箇所に設けられた突条部を、一次樹脂部に食い込ませながら、共通金型が二次金型に接近させられる。両突条部が一次樹脂部に食い込んだ箇所は、隙間のない状態となる。
【0025】
そのため、圧力の高い溶融状態の二次樹脂材料が二次キャビティに充填される際、同二次樹脂材料が二次キャビティの外部へ流出(漏出)する現象が、両突条部によって妨げられる。従って、二次樹脂材料が上記隙間に入り込んで硬化してバリが発生する現象が、より効果的に抑制される。
【0026】
上記二色成形品の製造方法において、前記二次成形工程では、前記突条部を前記一次樹脂部に対し、0.03mm~0.4mmの深さ食い込ませることが好ましい。
上記の製造方法によれば、二次成形工程において、二次成形金型が型閉じされる際には、突条部が一次樹脂部に対し、0.03mm~0.4mmの深さ食い込ませられながら、共通金型が二次金型に接近させられる。
【0027】
突条部の一次樹脂部に対する食い込み深さが0.03mm以上に設定されることで、一次樹脂部が一次金型から取り外されてから二次金型に配置されるまでの期間に、一次樹脂部が収縮及び変形したり、一次樹脂部が二次金型に配置される際に位置ずれが生じたりしても、突条部が一次樹脂部に食い込んだ箇所は、隙間のない状態となる。二次樹脂材料が二次キャビティの外部へ流出(漏出)するのを妨げる効果が得られる。
【0028】
また、上記食い込み深さが0.4mm以下に設定されることで、上記の効果が得られるほか、二次成形金型の型閉じをスムーズに行わせる効果や、一次樹脂部の形状に影響を及ぼしにくくする効果が得られる。
【0029】
上記二色成形品の製造方法は、二色成形品として、自動車のダクトクォータベントを製造する際に適用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
上記二色成形品の製造方法によれば、二次樹脂部の成形時におけるバリの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施形態における二色成形品の断面図。
図2図1の2-2線断面図。
図3】一実施形態における二色成形品の製造装置及び製造方法を示す図であり、一次成形金型及び二次成形金型がともに型開きされた状態を示す概略断面図。
図4図3の4-4線断面図。
図5図3の5-5線断面図。
図6】一実施形態における一次成形金型及び二次成形金型がともに型閉じされた状態を示す概略断面図。
図7図6における一次キャビティに一次樹脂材料が充填されて一次樹脂部が成形された状態を示す概略断面図。
図8】一実施形態における共通金型により一次樹脂部を保持した状態の一次成形金型と、二次成形金型とが型開きされた状態を示す概略断面図。
図9】一実施形態における一次樹脂部を保持した共通金型が、二次成形金型の二次金型に対向する位置まで回転移動させられた状態を示す概略断面図。
図10】一実施形態における一次成形金型と、共通金型により一次樹脂部を保持した状態の二次成形金型とがともに型閉じされた状態を示す概略断面図。
図11図10の11-11線断面図。
図12】(a)は図13の12a-12a線断面図、(b)は図12(a)の一部を拡大して示す部分断面図。
図13】一実施形態における一次キャビティに一次樹脂材料が充填されて一次樹脂部が成形されるとともに、二次キャビティに二次樹脂材料が充填されて二次樹脂部が成形された状態を示す概略断面図。
図14】一実施形態における一次成形金型及び二次成形金型がともに型開きされた状態を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、二色成形品の製造方法を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
<二色成形品10について>
最初に、本実施形態の製造方法によって製造される二色成形品について説明する。
【0033】
二色成形品としては、例えば、自動車の車室内を、外部からの埃等の侵入を抑制しつつ換気するためのダクトクォータベントが適しており、本実施形態では、このダクトクォータベントを二色成形品としている。
【0034】
図1は、上記二色成形品(ダクトクォータベント)10の概略構成を示している。また、図2は、図1における2-2線に沿った断面構造を示している。図1及び図2に示すように、二色成形品10は、一次樹脂部11及び二次樹脂部21を一体的に成形することにより構成されている。
【0035】
一次樹脂部11は、全体が一次樹脂材料17によって形成されており、二色成形品10の骨格部分を構成している。一次樹脂材料17としては、ポリプロピレン(PP)等の硬質の樹脂材料が用いられている。なお、一次樹脂部11の剛性を高めるために、フィラー入りポリプロピレン(PPF)が一次樹脂材料17として用いられてもよい。
【0036】
一次樹脂部11は、筒状部12と、その筒状部12に一体に形成された複数のリブ15及びフランジ部16とを備えている。
筒状部12は、後述する製造装置30の駆動軸31に沿って延び、かつ両端が開放された四角筒状等の筒状をなしている。筒状部12の周方向における複数箇所には、同筒状部12の外周面において開口する凹部13が形成されている。
【0037】
複数のリブ15は、筒状部12の一方(図1では上方)の開放部分において、互いに平行に離間した状態で、紙面に直交する方向に配列されている。図1では、1つのリブ15のみが図示されている。各リブ15は、図1における左右方向へ延びて、両端部において筒状部12に繋がっている。
【0038】
フランジ部16は、筒状部12の外周面から外方へ突出した状態で、同筒状部12の全周にわたって形成されており、四角環状等の環状をなしている。
これに対し、二次樹脂部21は、全体が一次樹脂材料17とは異なる種類、本実施形態では一次樹脂材料17よりも軟質の二次樹脂材料25によって形成されている。二次樹脂材料25としては、例えば、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)が用いられる。
【0039】
二次樹脂部21は、フランジ部22と、そのフランジ部22に一体に形成された弾性突出部23及び縦壁部24とを備えている。フランジ部22は、上記一次樹脂部11のフランジ部16と同様、筒状部12の外周面から外方へ突出した状態で、同筒状部12の全周にわたって形成されている。フランジ部22は、四角環状等の環状をなしており、一次樹脂部11のフランジ部16に対し、駆動軸31に沿う方向に重ねられている。
【0040】
弾性突出部23は、フランジ部22の外周面から斜め外方へ突出した状態で、同フランジ部22の全周にわたって形成されており、四角環状等の環状をなしている。弾性突出部23は、フランジ部22から遠ざかるに従い厚みが小さくなるように形成されている。
【0041】
縦壁部24は、筒状部12の周方向における複数箇所に設けられており、対応する上記凹部13に入り込んでいる。各縦壁部24の一方(図1の上方)の端部は、フランジ部22に繋がっている。
【0042】
筒状部12であって、各縦壁部24を筒状部12の周方向における両側から挟み込む2箇所には、駆動軸31に沿う方向に延びる押し込み跡14が残っている。これらの押し込み跡14は、二次樹脂部21の成形に際し、二次成形金型41が型締めされるときに突条部45が一次樹脂部11に食い込むことにより生じるものである。詳細については後述する。
【0043】
<製造装置30について>
次に、図3を参照し、上記二色成形品10の製造に用いられる製造装置30について説明する。
【0044】
製造装置30は、同一形状をなす2つの二色成形品10を、タイミングをずらして成形するためのものである。この製造装置30では、先行の二色成形品10の成形サイクルが開始され、遅れて後続の二色成形品10の成形サイクルが開始される。
【0045】
製造装置30は、回転可能かつ軸方向(図3の上下方向)に往復動可能に設けられた駆動軸31と、駆動軸31の一方(図3の下方)の端部に固定された取り付け板32と、一次樹脂部11を成形するための一次成形金型33と、二次樹脂部21を成形するための二次成形金型41とを備えている。
【0046】
一次成形金型33は、固定型を構成する一次金型34(図4参照)と、可動型を構成する2つの共通金型35,36とを備えている。また、二次成形金型41は、固定型を構成する二次金型42(図5参照)と、上記2つの共通金型35,36とを備えている。
【0047】
一次金型34及び二次金型42は、互いに異なる形状に形成されており、上記駆動軸31の径方向に並べられた状態で移動不能に配置されている。
両共通金型35,36は、互いに同一の形状に形成されている。両共通金型35,36は、一次成形金型33の一部を構成し、また二次成形金型41の一部を構成している。
【0048】
両共通金型35,36は、駆動軸31の径方向に並べられた状態で取り付け板32に固定されている。そして、図3に示すように、一方の共通金型35を一次金型34に対向させるとともに、他方の共通金型36を二次金型42に対向させることが可能である。また、図9に示すように、駆動軸31を取り付け板32とともに回転させることで、上記他方の共通金型36を一次金型34に対向させるとともに、上記一方の共通金型35を二次金型42に対向させることが可能である。
【0049】
さらに、上記駆動軸31を取り付け板32及び両共通金型35,36とともに、同駆動軸31に沿う方向のうち、一次金型34及び二次金型42に近づく側へ移動させることで、一次成形金型33及び二次成形金型41をともに同期させた状態で型閉じすることが可能である(図6図10参照)。
【0050】
また、上記駆動軸31を取り付け板32及び両共通金型35,36とともに、同駆動軸31に沿う方向のうち、一次金型34及び二次金型42から遠ざかる側へ移動させることで、一次成形金型33及び二次成形金型41をともに同期させた状態で型開きすることが可能である(図3図8図14参照)。
【0051】
なお、一次成形金型33の型閉じ及び型開きには、一次樹脂部11の保持されていない共通金型35,36が一次金型34に対し、接近及び離間させられることによりなされる場合が含まれる(図3図6図9図10参照)。また、一次成形金型33の型閉じ及び型開きには、一次樹脂部11の保持された共通金型35,36が一次金型34に対し、接近及び離間させられることによりなされる場合も含まれる(図7図8図13図14参照)。
【0052】
また、二次成形金型41の型閉じ及び型開きには、一次樹脂部11及び二次樹脂部21のいずれも保持されていない共通金型35,36が二次金型42に対し、接近及び離間させられることによりなされる場合が含まれる(図3図6図7図8参照)。また、二次成形金型41の型閉じ及び型開きには、一次樹脂部11及び二次樹脂部21のうち少なくとも一次樹脂部11の保持された共通金型35,36が二次金型42に対し、接近及び離間させられることによりなされる場合も含まれる(図9図10図13図14参照)。
【0053】
図6及び図10に示すように、一次樹脂部11の保持されていない共通金型35,36が一次金型34に対し接近されることにより、一次成形金型33が型閉じされたときには、共通金型35,36と一次金型34との間に、一次樹脂部11を成形するための空間である一次キャビティ37が形成される。図6に示すように、共通金型35,36において一次キャビティ37に面する複数箇所には、一次キャビティ37への一次樹脂材料17の入口である一次ゲート38が設けられている。各一次ゲート38は、共通金型35,36において、一次樹脂部11の上記リブ15(図1図7参照)を成形する箇所に設定されている。
【0054】
また、図9及び図10に示すように、一次樹脂部11の保持された共通金型35(36)が二次金型42に対し接近されることにより、二次成形金型41が型閉じされたときには、一次樹脂部11と共通金型35(36)と二次金型42との間に、二次樹脂部21を成形するための空間である二次キャビティ43が形成される。図10図11及び図12(a)に示すように、二次金型42において二次キャビティ43に面する複数箇所には、同二次キャビティ43への二次樹脂材料25の入口である二次ゲート44が設けられている。各二次ゲート44は、二次金型42において、二次樹脂部21の各縦壁部24を成形する箇所、より詳しくは、筒状部12の周方向における中央部分に設定されている。
【0055】
さらに、図5及び図11に示すように、二次金型42は、上記駆動軸31に沿って延びる複数の突条部45を備えている。ここでの複数とは、上記一次樹脂部11における凹部13の数の2倍の数である。表現を変えると、突条部45は、凹部13毎に2つずつ設けられている。凹部13毎の2つの突条部45は、一次樹脂部11における筒状部12であって、各凹部13を同筒状部12の周方向における両側から挟み込む箇所に設けられている。表現を変えると、凹部13毎の2つの突条部45は、各二次ゲート44を挟んで相対向する箇所に設けられている。
【0056】
図12(a),(b)に示すように、各突条部45は、半円形の断面形状を有している。各突条部45は、凹部13に接近した箇所に設けられることが望ましく、本実施形態では、各突条部45と凹部13との間隔D1が0.2mmに設定されている。
【0057】
筒状部12の周方向における各突条部45の寸法を幅W1とすると、本実施形態では幅W1が、0.6mmに設定されている。さらに、各突条部45の二次金型42からの突出長さL1は、0.03mm~0.4mmであることが望ましく、本実施形態では、0.4mmに設定されている。
【0058】
<二色成形品10の製造方法について>
次に、本実施形態の作用として、上記製造装置30を用いて、複数の二色成形品10を、互いにタイミングをずらして製造する方法について、効果とともに説明する。
【0059】
各二色成形品10の成形サイクルは、一次成形工程及び二次成形工程によって構成されている。後続の二色成形品10の成形サイクルは、先行の二色成形品10の成形サイクルの途中から開始される。そのため、本実施形態では、先行の二色成形品10の成形サイクルを中心に説明する。
【0060】
<一次成形工程>
一次成形工程は、一次成形金型33を用いて一次樹脂材料17によって一次樹脂部11を成形する工程である。
【0061】
一次成形工程は、図3に示すように、一次成形金型33及び二次金型42がともに型開きされた状態で開始される。この状態では、共通金型35が一次金型34から図3の上側へ離間し、共通金型36が二次金型42から図3の上側へ離間している。
【0062】
図3において二点鎖線の矢印Aで示すように、駆動軸31が取り付け板32及び両共通金型35,36を伴い、一次金型34及び二次金型42に接近する側(図3の下側)へ移動されることにより、図6に示すように、一次成形金型33及び二次成形金型41がともに型閉じされる。一次成形金型33では、一次金型34及び共通金型35の間に一次キャビティ37が形成される。
【0063】
共通金型35において一次キャビティ37に面する複数箇所に設けられた一次ゲート38から溶融状態の一次樹脂材料17が一次キャビティ37内に充填される。図7に示すように、一次キャビティ37内で一次樹脂材料17が硬化されることにより、二次樹脂部21よりも硬質の一次樹脂部11が成形される。
【0064】
<二次成形工程>
図7において、二点鎖線の矢印Bで示すように、駆動軸31が取り付け板32及び両共通金型35,36を伴い、一次金型34及び二次金型42から離間する側(図7の上側)へ移動されることにより、図8に示すように、一次成形金型33及び二次成形金型41がともに型開きされる。一次成形金型33の型開きは、一次樹脂部11の保持された共通金型35が一次金型34から離間する側(図8の上側)へ移動することによりなされる。この型開きにより、一次樹脂部11が一次金型34から取り外される。
【0065】
次に、共通金型35,36の取り付けられた取り付け板32が駆動軸31を中心として二点鎖線の矢印Cで示すように回転される。この回転により、共通金型35が一次金型34に対向する位置(図8)から、二次金型42に対向する位置(図9)に移動させられる。また、共通金型36が二次金型42に対向する位置(図8)から、一次金型34に対向する位置(図9)に移動させられ、上記図3と同様の状態となる。一次成形金型33では、後続の二色成形品10を製造するためのサイクルが開始される。
【0066】
続いて、図9において二点鎖線の矢印Dで示すように、駆動軸31が取り付け板32及び両共通金型36,35を伴い、一次金型34及び二次金型42に接近する側(図9の下側)へ移動されることにより、一次成形金型33及び二次成形金型41が型閉じされる。この型閉じにより、図10に示すように、一次樹脂部11が二次金型42に配置(セット)される。一次成形金型33では、一次金型34及び共通金型36の間に、後続の二色成形品10における一次樹脂部11を成形するための一次キャビティ37が形成される。また、二次成形金型41では、一次樹脂部11と共通金型35と二次金型42との間に二次キャビティ43が形成される。
【0067】
二次金型42において二次キャビティ43に面する複数箇所に設けられた二次ゲート44を通じて溶融状態の二次樹脂材料25が、同二次キャビティ43に充填される。図13に示すように、二次キャビティ43内で二次樹脂材料25が硬化されることにより、フランジ部22及び縦壁部24において一次樹脂部11に接触し、かつ一次樹脂部11よりも軟質の二次樹脂部21が、一次樹脂部11に対し一体となった状態で成形される。
【0068】
また、図10に示すように、共通金型36において一次キャビティ37に面する複数箇所に設けられた一次ゲート38を通じて溶融状態の一次樹脂材料17が一次キャビティ37内に充填される。図13に示すように、一次キャビティ37内で一次樹脂材料17が硬化されることにより、後続の二色成形品10における一次樹脂部11が成形される。
【0069】
ここで、一次樹脂部11が図8に示すように、一次金型34から取り外されてから、図10に示すように、二次金型42に配置(セット)されるまでの期間に、一次樹脂部11が収縮したり、変形したりするおそれがある。また、一次樹脂部11が二次金型42に配置される際に位置ずれが生ずるおそれもある。そして、このように収縮、変形等した一次樹脂部11が二次金型42に配置されたり、位置ずれが発生したりすると、二次金型42と一次樹脂部11との間であって二次キャビティ43の外側に隣接する箇所に隙間が発生しやすくなる。この状態で、二次樹脂材料25が二次ゲート44を通じて二次キャビティ43に充填されると、その二次樹脂材料25の一部が上記隙間に入り込もうとする。
【0070】
しかし、上記二次成形工程では、図9に示すように二次金型42として、型閉じ方向、すなわち、駆動軸31に沿う方向のうち、共通金型35(36)が二次金型42に近づく方向に延びる突条部45を有するものが用いられる。
【0071】
そして、二次成形金型41が型閉じされる際に、硬質の突条部45を、二次樹脂部21よりも硬質の一次樹脂部11のうち、二次キャビティ43の周囲となる箇所に食い込ませながら(一次樹脂部11を変形させながら)、図9において二点鎖線の矢印Eで示すように、共通金型35が二次金型42に接近させられる。
【0072】
図12(a),(b)に示すように、各突条部45が一次樹脂部11に食い込んだ箇所は、同突条部45と同一次樹脂部11との間に隙間のない状態となり、二次樹脂材料25が二次キャビティ43の外部へ流出(漏出)するのを妨げる。硬質の一次樹脂部11は、二次樹脂材料25の高い圧力が作用しても変形しにくい。一次樹脂部11と突条部45との間は隙間の少ない状態に保持され、二次樹脂材料25が流出(漏出)しにくい。従って、二次樹脂材料25が上記隙間に入り込んで硬化してバリが発生するのを抑制することができる。
【0073】
特に、図11及び図12(a)に示すように、二次成形工程において、溶融状態の二次樹脂材料25が二次キャビティ43に充填される際、同二次キャビティ43での二次樹脂材料25の圧力は、二次樹脂材料25が二次キャビティ43へ流れ込む入口である二次ゲート44において最も高くなる。
【0074】
この点、本実施形態の製造方法によれば、二次成形工程での二次成形金型41が型閉じされる際には、二次ゲート44を挟んで相対向する箇所に設けられた突条部45が、一次樹脂部11に食い込みながら、共通金型35が二次金型42に接近させられる(図9参照)。両突条部45が一次樹脂部11に食い込んだ箇所は、隙間のない状態となる。
【0075】
そのため、圧力の高い溶融状態の二次樹脂材料25が二次キャビティ43に充填される際に、同二次キャビティ43の外部へ流出(漏出)する現象が、両突条部45によって妨げられる。従って、二次樹脂材料25が上記隙間に入り込んで硬化してバリが発生する上記現象を、より効果的に抑制することができる。
【0076】
また、二次成形工程において、二次成形金型41が型閉じされる際には、図12(b)に示すように、各突条部45が一次樹脂部11に対し、各突条部45の二次金型42からの突出長さL1と同じ量、すなわち、0.03mm~0.4mmの深さ、食い込ませられながら、共通金型35が二次金型42に接近させられる(図9図10参照)。
【0077】
各突条部45の一次樹脂部11に対する食い込み深さは、0.03mm以上である。このことから、一次樹脂部11が一次金型34から取り外されてから二次金型42に配置されるまでの期間に、一次樹脂部11が収縮及び変形したり、一次樹脂部11が二次金型42に配置される際に位置ずれが生じたりしても、各突条部45が一次樹脂部11に食い込んだ箇所は、隙間のない状態となる。従って、二次樹脂材料25が二次キャビティ43の外部へ流出(漏出)するのを妨げる効果が得られる。
【0078】
また、上記食い込み深さが0.4mm以下であることから、上記の効果が得られるほか、二次成形金型41の型閉じをスムーズに行わせることができる。また、一次樹脂部11の形状に影響を及ぼしにくくすることができる。
【0079】
そして、図13において二点鎖線の矢印Fで示すように、駆動軸31が取り付け板32及び両共通金型36,35を伴い、一次金型34及び二次金型42から離間する側(図13の上側)へ移動されることにより、図14に示すように、一次成形金型33及び二次成形金型41が型開きされる。
【0080】
一次成形金型33の型開きは、後続の二色成形品10における一次樹脂部11の保持された共通金型36が、一次金型34から離間する側(図14の上側)へ移動することによりなされる。この型開きにより、一次樹脂部11が一次金型34から取り外される。一次成形金型33は、上述した図8と同様の状態になる。
【0081】
図14に示すように、二次成形金型41の型開きは、先行の二色成形品10の保持された共通金型35が二次金型42から離間する側(図14の上側)へ移動することによりなされる。その後、二色成形品10が共通金型35から取り出されることで、先行の二色成形品10を製造するサイクルが終了する。
【0082】
その後は、製造装置30は、上述した図9図10図13及び図14を用いて説明した先行の二色成形品10を成形するための作動と同様に作動することで、後続の二色成形品10を成形する。
【0083】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・一次樹脂部11が上記実施形態とは異なる種類の一次樹脂材料17によって形成されてもよい。同様に、二次樹脂部21が上記実施形態とは異なる種類の二次樹脂材料25によって形成されてもよい。
【0084】
・二次樹脂部21が、一次樹脂材料17とは異なる種類であることを条件に、同一次樹脂材料17と同様に硬質の二次樹脂材料25によって形成されてもよい。
・各突条部45の断面形状が半円形とは異なる形状に変更されてもよい。
【0085】
・共通金型35,36を、一次金型34に対向する位置から、二次金型42に対向する位置へ移動させる場合、又は後者の位置から前者の位置へ移動させる場合、それらの移動が回転とは異なる動作によって行われてもよい。
【0086】
・上記二色成形品の製造方法は、二次成形工程において、一次樹脂部11が一次金型34から取り外されて二次金型42に配置(セット)される動作が含まれる製造方法であれば、ダクトクォータベントとは異なる二色成形品を製造する際にも広く適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
10…二色成形品、11…一次樹脂部、17…一次樹脂材料、21…二次樹脂部、25…二次樹脂材料、33…一次成形金型、34…一次金型、35,36…共通金型、37…一次キャビティ、41…二次成形金型、42…二次金型、43…二次キャビティ、44…二次ゲート、45…突条部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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