(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】無試薬式全有効塩素測定装置とその校正方法および無試薬式全有効塩素測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220622BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
G01N27/416 316Z
G01N27/26 381D
G01N27/26 381A
(21)【出願番号】P 2018124176
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】浦田 美由貴
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-349866(JP,A)
【文献】特開2016-191605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0299096(US,A1)
【文献】特開2000-074877(JP,A)
【文献】特開2003-294701(JP,A)
【文献】実開平05-043064(JP,U)
【文献】実開昭62-162662(JP,U)
【文献】特開2018-124130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二電極式ポーラログラフ法によ
り、試薬を用いずに全有効塩素を測定する無試薬式全有効塩素測定装置であって、
試料液に浸漬される金製の検知極、及び白金製の対極と、
前記検知極と対極との間に、
前記検知極側をマイナス、前記対極側をプラスとして、750±250mVの範囲から選択される印加電圧を与える加電圧機構と、
前記加電圧機構が前記印加電圧を与えた際に前記検知極と
前記対極との間に流れる酸化還元電流を測定する電流計と
、
演算制御部とを具備
し、
該演算制御部は、前記電流計で測定した酸化還元電流から、酸化還元電流と全有効塩素濃度との相関関係を示す検量線に基づき、全有効塩素濃度を求めることを特徴とする
無試薬式全有効塩素測定装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の
無試薬式全有効塩素測定装置を校正する校正方法であって、塩素以外のハロゲンを含まず、電気伝導率が4mS/m以上である校正液を用い
て前記検量線を求めることを特徴とする校正方法。
【請求項3】
試薬を用いずに、試料液に浸漬した金製の検知極と白金製の対極との間に
、前記検知極側をマイナス、前記対極側をプラスとして、750±250mVの範囲から選択される印加電圧を与え、
前記検知極と
前記対極との間に流れる酸化還元電流を測定し、得られた酸化還元電流から
、酸化還元電流と全有効塩素濃度との相関関係を示す検量線に基づき、前記試料液の全有効塩素濃度を求めることを特徴とする
無試薬式全有効塩素測定方法。
【請求項4】
塩素以外のハロゲンを含まず、電気伝導率が4mS/m以上である校正液に浸漬した前記検知極と前記対極との間に、前記選択された印加電圧を与え、
前記検知極と
前記対極との間に流れる酸化還元電流を測定し、得られた酸化還元電流と前記校正液の全有効塩素濃度との対応に基づき
、酸化還元電流と全有効塩素濃度との相関関係を示す検量線を求め、
前記試料液を測定した際の酸化還元電流から、前記検量線を用いて前記試料液の全有効塩素濃度を求める、請求項
3に記載の
無試薬式全有効塩素測定方法。
【請求項5】
前記試料液が臭素を含む、請求項
3または
4に記載の
無試薬式全有効塩素測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全有効塩素測定装置とその校正方法および全有効塩素測定方法に関する。さらに詳しくは、無試薬式で海水等の臭素を含む試料液の全有効塩素濃度も評価可能な全有効塩素測定装置とその校正方法および全有効塩素測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全有効塩素濃度とは、殺菌効力のあるハロゲン系薬剤全体の濃度である。具体的には、ヨウ化カリウムを反応させた際に遊離するヨウ素の量に対応するハロゲン量(通常は塩素量)で表される。
全有効塩素には、遊離塩素(次亜塩素酸または次亜塩素酸イオン)、クロラミンなどの結合塩素が含まれる。
海水等の臭素を含む水に次亜塩素酸ナトリウムを加えると、臭素との反応で、次亜臭素酸が生成し、さらには、海水中のアンモニア性窒素と反応し、ブロモアミン類(結合臭素)が生成していると考えられる。この次亜臭素酸、ブロモアミン類なども、ヨウ化カリウムを反応させるとヨウ素を遊離させるので、全有効塩素に含まれる。
【0003】
塩素濃度の連続測定には、従来酸化還元電流を測定するポーラログラフ法が用いられている。ポーラログラフ法による塩素濃度の測定装置としては、試薬の添加を必要とする有試薬式と、試薬を用いない無試薬式の装置が存在する。
無試薬式の装置は、保守作業や保守費用の負担が小さいというメリットがあるが、無試薬式で精度良く安定して塩素濃度を測定できる測定対象は、上水等特定の試料液に限られているのが現状である(特許文献1)。
特に海水またはボイラー冷却水等の臭素を含む水の場合、無試薬式ポーラログラフ法で、精度良く安定して塩素濃度測定することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、試薬を用いることなく、二電極式ポーラログラフ法により全有効塩素濃度を求めることができ、かつ海水やボイラー冷却水のように臭素を含む試料液における、次亜臭素酸なども含む全有効塩素濃度を、精度良く安定して測定できる全有効塩素測定装置とその校正方法および全有効塩素測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]二電極式ポーラログラフ法による全有効塩素測定装置であって、
試料液に浸漬される金製の検知極、及び白金製の対極と、
前記検知極と対極との間に、750±250mVの範囲から選択される印加電圧を与える加電圧機構と、
前記加電圧機構が前記印加電圧を与えた際に前記検知極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定する電流計とを具備することを特徴とする全有効塩素測定装置。
[2]さらに、演算制御部を備え、該演算制御部は、前記電流計が測定した酸化還元電流に基づき、前記試料液の全有効塩素濃度を求める[1]に記載の全有効塩素測定装置。
[3][2]に記載の全有効塩素測定装置を校正する校正方法であって、塩素以外のハロゲンを含まず、電気伝導率が4mS/m以上である校正液を用いることを特徴とする校正方法。
[4]試料液に浸漬した金製の検知極と白金製の対極との間に750±250mVの範囲から選択される印加電圧を与え、該検知極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定し、得られた酸化還元電流から前記試料液の全有効塩素濃度を求めることを特徴とする全有効塩素測定方法。
[5]塩素以外のハロゲンを含まず、電気伝導率が4mS/m以上である校正液に浸漬した前記検知極と前記対極との間に、前記選択された印加電圧を与え、該検知極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定し、得られた酸化還元電流と前記校正液の全有効塩素濃度との対応に基づく検量線を求め、
前記試料液を測定した際の酸化還元電流から、前記検量線を用いて前記試料液の全有効塩素濃度を求める、[4]に記載の全有効塩素測定方法。
[6]前記試料液が臭素を含む、[4]または[5]に記載の全有効塩素測定方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の全有効塩素測定装置とその校正方法および全有効塩素測定方法によれば、試薬を用いることなく、二電極式ポーラログラフ法により全有効塩素濃度を求めることができ、かつ海水やボイラー冷却水等の臭素を含む試料液であっても、次亜臭素酸なども含む全有効塩素濃度を、精度良く安定して測定できる。しかも、低濃度の全有効塩素の測定にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る全有効塩素測定装置の全体構成図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る全有効塩素測定装置におけるセンサ部の断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る全有効塩素測定装置の全体構成図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る全有効塩素測定装置におけるセンサ部の断面図である。
【
図6】本発明の実験例2で得られた海水に塩素を添加した場合のポーラログラムである。
【
図7】本発明の実験例2で得られた脱塩素水に塩素を添加した場合のポーラログラムである。
【
図8】本発明の実験例3で得られた試料液A~Cのポーラログラムである。
【
図10】本発明の実験例4の全有効塩素濃度の測定結果である。
【
図11】本発明の実験例5の塩素を添加した海水を連続測定した結果である。
【
図12】本発明の実験例6の低濃度の塩素を添加した海水を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
[装置構成]
本発明の第1実施形態に係る二電極式ポーラログラフ法による全有効塩素測定装置について
図1を用いて説明する。本実施形態の全有効塩素測定装置は、センサ部1と本体部20とから概略構成されている。
【0010】
センサ部1は、試料液Sが導入される測定セル11、下部が試料液Sに浸漬される検知極支持体12、検知極支持体12の先端面に取り付けられた検知極13、下部が試料液Sに浸漬された対極支持体14、対極支持体14の下端側外周面に取り付けられた対極15、検知極13を円運動状に振動させるためのモーター16、検知極支持体12を保持する軸受け17、試料液S中に投入された検知極13洗浄用の多数のビーズ18を有している。なお、測定セル11には、検知極13と対極15との間を仕切るメッシュ状の仕切り板11aが設けられており、ビーズ18が、対極15側に流出しないようになっている。
【0011】
本体部20は、演算制御部21、加電圧機構22、電流計23、表示装置24を有している。検知極13と演算制御部21との間は配線L1で、対極15と演算制御部21との間は配線L2で、モーター16と演算制御部21との間は配線L3で各々接続されている。電流計23は配線L1の途中に、加電圧機構22は配線L2の途中に、各々設けられている。
【0012】
検知極13は金製である。また、対極15は白金製である。
検知極支持体12は傾斜状態に配置されており、その長さ方向中間部所定箇所が軸受け17によって保持され、軸受け17による保持箇所を支点として歳差運動できるようになっている。また、検知極支持体12の基端部12aとモーター16の回転軸16aは偏心して係合している。そのため、モーター16の回転軸16aを回転させることにより基端部12aが円運動すると共に、検知極支持体12の先端部に取り付けられた検知極13も振動(円運動)するようになっている。また、配線L1は、検知極支持体12内を通って軸受け17による保持箇所近傍から、検知極13を円運動させても、ねじれたりせずに引き出せるようになっている。
【0013】
ビーズ18は、検知極13の近傍に非固定状態で多数配置されている。ビーズ18は、振動(円運動)する検知極13に接触して、検知極13を研磨するようになっている。ビーズ18の材質としては、セラミックまたはガラスが好ましい。
【0014】
検知極13および対極15は、汚れ成分の組成に応じた薬液を用いて洗浄することかできる。例えば、シュウ酸、塩酸、過酸化水素水などを使用した薬液洗浄を行うことができる。また、オゾン洗浄を行ってもよい。また、薬液洗浄等に代えて、若しくは薬液洗浄等と共に、ブラシ洗浄等の物理洗浄を施してもよい。
また、検知極13の清浄を保つため、ビーズ18による機械的研磨に加えて、電解研磨を行うことが好ましい。電解研磨は、検知極と対極との間に測定時とは逆向きに電流が流れるようになっていればよく、適宜周知の方法を採用することができる。
本実施形態の全有効塩素測定装置は、対極15や検知極13の洗浄を行うための自動洗浄機構を備えていてもよい。その場合、定期的な洗浄を自動的に行うことができる。
【0015】
[全有効塩素の測定]
本実施形態の全有効塩素測定装置は、加電圧機構22が、検知極13と対極15との間に印加電圧を与えるようになっている。印加電圧は、750±250mVの範囲から選択され、600~900mVの範囲から選択されることが好ましく、700~800mVの範囲から選択されることがより好ましい。
印加電圧が750mV付近であれば、試料液が海水を含むか否かにかかわらず、また、通常の海水の全有効塩素濃度の測定範囲においてプラトー領域が得られるので、塩素以外のハロゲンを含まず、電気伝導率が4mS/m以上である水道水等の校正液を用いて、海水または海水を含む試料液の全有効塩素濃度を測定するための検量線を作成できる。
また、全有効塩素が塩素であるか臭素であるかの違いによらず、また、pHの相違によらず、同一の検量線を使用することができる。
【0016】
印加電圧は、全有効塩素濃度の測定範囲に応じて、750±250mVの範囲から適切に選択することが好ましい。
具体的には、測定範囲が2mg/L以下の場合は、700±200mVの範囲から選択することが好ましく、700±100mVの範囲から選択することがより好ましく、700±50mVの範囲から選択することがさらに好ましい。
測定範囲が2mg/L以上の場合は、800±200mVの範囲から選択することが好ましく、800±100mVの範囲から選択することがより好ましく、800±50mVの範囲から選択することがさらに好ましい。
【0017】
また、電流計23は、加電圧機構22が検知極13と対極15との間に上記印加電圧を与えた際に検知極と対極との間に流れる酸化還元電流を、測定するようになっている。
測定対象となる試料液Sに特に限定はないが、本発明は、試料液Sが臭素(臭素イオンまたは臭素酸)を含む海水である場合や、ボイラー冷却水等の海水を含む場合に特に好適に適用できる。
【0018】
本発明の全有効塩素測定方法では、本発明の全有効塩素測定装置で得られた酸化還元電流から演算制御部21が全有効塩素濃度を求める。求められた全有効塩素濃度は、信号D1として表示装置24に与えられ、表示装置24に全有効塩素濃度が表示される。また、全有効塩素濃度の値は、信号D2として、外部の記録計、データロガー、メモリ、プリンター、コンピュータ等に伝達される。なお、信号D2は、デジタル信号でもアナログ信号でもよい。また、有線で伝達されてもよいし、無線で伝達されてもよい。
演算制御部21によって酸化還元電流から全有効塩素濃度を求めるためには、予め校正液を用いて求めた酸化還元電流と全有効塩素濃度との相関関係を示す検量線を用いて演算する。校正液と当該校正液を用いた校正方法については後述する。
【0019】
また、演算制御部21は、電流計23からの電流値を、外部コンピュータに信号D2として出力してもよい。その場合、当該外部コンピュータにおいて、酸化還元電流から全有効塩素濃度を求める演算を行えば、本発明の全有効塩素測定方法を実施することができる。
また、演算制御部21は、電流計23からの電流値を、信号D1として表示装置24に出力してもよい。その場合、操作者が表示装置24らか読み取った電流値と予め求めた検量線に基づき、酸化還元電流から全有効塩素濃度を求めれば、本発明の全有効塩素測定方法を実施することができる。
【0020】
演算に用いる酸化還元電流については、温度補正することが好ましい。そのため、本発明の全有効塩素測定装置は、温度センサを備えることが好ましい。試料液温度が充分に一定に保たれている場合や、要求される測定精度が低い場合は、温度補正は省略してもよい。
温度補正とは、酸化還元電流測定の温度依存性を考慮して、基準温度(例えば25℃)における酸化還元電流に換算することを意味する。基準温度が25℃の場合、具体的には以下の式(1)により温度補正を行う。
I(V)25=I(V)t /(1+(α×(t-25)/100)) ・・・(1)
t:測定時の試料液温度(℃)
I(V)t :試料液温度t℃において得られた電圧Vにおける酸化還元電流値
I(V)25:基準温度25℃で温度補正された電圧Vにおける酸化還元電流値
α:1℃当りの電極出力変化量(%)
【0021】
[校正]
本発明の全有効塩素測定装置を校正する校正方法では、塩素以外のハロゲンを含まず、電気伝導率が4mS/m以上である校正液を用いる。
試料液が臭素を含む海水等である場合、校正液も海水等に既知濃度の塩素を添加したものを使用すべきとの考え方も存在する。
しかし、本発明者は、海水は種々の成分を含み、かつその組成も絶えず変化するため、校正値に与える影響が予測できず、海水をベースとする校正液を用いることは好ましくないと考えた。そして、本発明の全有効塩素測定装置で、脱塩素水、およびこの脱塩素水に既知濃度の塩素を添加した液、または水道水を校正液として用いることを試みたところ、精度良く安定して測定できる校正が可能であることを見いだした。
【0022】
本発明の校正に用いる校正液は、ポーラログラフ法に必要な適度な電気伝導率を有する。具体的には、4mS/m以上であり、4~5000mS/mであることが好ましい。脱塩素水も純水ではなく、ハロゲンは含まないものの、適度な電気伝導率を与えるイオン成分を含む液である。
水道水は、通常塩素を含み、また、適度な電気伝導率(通常4~40mS/m)を有するので、そのまま本発明における校正液として使用することができる。また、水道水から塩素を除去すれば脱塩素水とすることができる。水道水は入手が容易であって、これをそのまま校正液として用いることは簡便であり好ましい。
本発明に用いる校正液は、既知濃度の塩素を含む原液を脱塩素水で希釈することによっても調製できる。
【0023】
上記校正液を用いた校正は、具体的には、校正液に浸漬した前記検知極と前記対極との間に、750±250mVの範囲で選択された印加電圧(試料液を測定する際と同じ印加電圧)を与え、該検知極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定する。演算制御部21または演算制御部21からの情報を受けた外部コンピュータは、得られた酸化還元電流と前記校正液の全有効塩素濃度との対応に基づき検量線を求める。
求めた検量線は、演算制御部21または演算制御部21からの情報を受けた外部コンピュータに記憶され、試料液を測定した際の酸化還元電流から試料液の全有効塩素濃度を求める際に使用される。
【0024】
検量線は、塩素濃度の異なる2種以上の校正液を用いることによって求めることができる。例えば脱塩素水とスパン液(既知濃度の塩素を含む原液を、測定装置の測定範囲を考慮した希釈率で脱塩素水により希釈した液、または水道水)を校正液として検量線を求めることができる。
一旦検量線を作成した後は、定期的に実試料液を用いてスパン校正をすれば、精度の高い検量線が維持できる。
【0025】
<第2実施形態>
[装置構成]
本発明の第2実施形態に係る二電極式ポーラログラフ法による全有効塩素測定装置は、
図1のセンサ部1が、
図2に示すセンサ部2に変更された他は、第1実施形態と同じである。
【0026】
図2はセンサ部2の断面図である。
図2に示すセンサ部2は、略円筒状のケース31が設けられ、このケース31の一方の開口部には、中心部に軸方向に沿った貫通孔32aが穿設されている支持基体32が固着されている。この支持基体32の軸方向略中央部には、上下一対の円形の窓32b、32bが、一方の周面から対向する周面に貫通するように、軸方向と直交して穿設されている。また、その先端近くには凹部32cが周方向に形成され、かつ、その凹部32cの全面にわたって対極33が巻き付けられている。
【0027】
また、この対極33の下方には、支持基体32の先端を覆うようにしてメッシュからなるキャップ34が螺合している。また、キャップ34内には後述する検知極35を研磨・洗浄するためのビーズ36が多数収納されている。そして、窓32bを内側から覆う位置に内網37が設けられ、ビーズ36の流出を防ぐようになっている。
【0028】
ケース31の内部にはモーター38が取付けられており、モーター38の回転軸38aには、偏心カップリング41の上方側に固定されている。偏心カップリング41は、カップリングケース42に保持されており、カップリングケース42は、複数本の支柱43で支持基体32の上方に保持されている。
偏心カップリング41の下方側には、略棒状の連結軸44が連結されている。回転軸38aと連結軸44とが作る角度は約3度に設定され、モーター38の駆動により、連結軸44のカップリングケース42に連結している部位が円運動を行うようになっている。
【0029】
連結軸44の軸方向中央よりやや下側は、軸受け45に挿入されている。軸受け45は、連結軸44方向に円筒状の筒部45aと、この筒部45aの下端側周囲において半径方向に広がったフランジ部45bとからなり、ゴム材で形成されている。筒部45aは連結軸44に高い圧力をもって水密な状態で密着している。また、軸受け45は、その外周面が支持基体32の内周面に水密に接している。
【0030】
連結軸44の軸受け45よりも下端側は、略円筒状の検知極支持体46の上端側に挿入されている。これにより、検知極支持体46が連結軸44の下端側に連結固定され、支持基体32の貫通孔32a内に垂下されている。検知極支持体46の下端には、検知極35が設けられている。
モーター38の駆動により、連結軸44のカップリングケース42に連結している部位が円運動すると、連結軸44は、フランジ部45bの位置する部位を支点とする歳差運動をする。その結果、連結軸44に固定された検知極支持体46の下端に設けられた検知極35も円運動するようになっている。
【0031】
検知極35のリード線47は、最終的にはコネクター48を経由して本体部20の演算制御部21に連結されている。また、対極33は、コネクター48を経由して本体部20の演算制御部21に連結されている。モーター38も、コネクター48を経由して本体部20の演算制御部21に連結されている。
なお、
図2において、リード線47のコネクター48近傍の配線については図示を省略する。また、対極33からコネクター48迄の配線と、モーター38からコネクター48迄の配線についても図示を省略する。
第1実施形態と同様、検知極35は金製であり、対極33は白金製である。
【0032】
本実施形態のセンサ部2の下端を試料液Sに浸すと、試料液Sがキャップ34と窓32bから流入流出する。これにより、試料液Sは検知極35と接触すると共に、支持基体32に巻き付けられている対極33にも接触する。すなわち、検知極35と対極33が試料液Sに浸漬された状態となる。
なお、試料液Sは軸受け45により、軸受け45より上方のケース31内への侵入が阻止されるようになっている。
第2実施形態に係る全有効塩素測定装置は、第1実施形態に係る全有効塩素測定装置と同様に全有効塩素等の測定をすることができる。また、第1実施形態に係る全有効塩素測定装置と同様に校正を行うことができる。
【0033】
<第3実施形態>
[装置構成]
本発明の第3実施形態に係る二電極式ポーラログラフ法による全有効塩素測定装置について
図3を用いて説明する。なお、
図3において、
図1と同様の構成部材には、
図1と同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の全有効塩素測定装置は、センサ部3と本体部20と送液部50から概略構成されている。
【0034】
センサ部3は、第1実施形態の測定セル11が、フローセル19に変更された他は、第1実施形態のセンサ部1と同様である。フローセル19には、検知極13と対極15との間を仕切るメッシュ状の仕切り板19aが設けられており、ビーズ18が、対極15側に流出しないようになっている。
送液部50は、フローセル19に試料液Sを送る流入路51と、フローセル19から試料液Sを排出する排出路52と、流入路51に設けられたポンプ53を有している。
ポンプ53と演算制御部21との間は配線L4で各々接続されている。ポンプ53は、演算制御部21からの指示により動作するようになっている。
第3実施形態に係る全有効塩素測定装置は、フローセル19内に試料液Sを流動させる他は、第1実施形態に係る全有効塩素測定装置と同様に全有効塩素等の測定をすることができる。また、第1実施形態に係る全有効塩素測定装置と同様に校正を行うことができる。
【0035】
<第4実施形態>
[装置構成]
本発明の第4実施形態に係る二電極式ポーラログラフ法による全有効塩素測定装置は、
図3のセンサ部3が、
図4に示すセンサ部4に変更された他は、第3実施形態と同じである。
【0036】
図4はセンサ部4の断面図である。センサ部4は、第2実施形態のセンサ部2に、フローセル60が追加された構成となっている。
図4において、
図2と同一の構成部材については、
図2と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
フローセル60には、支持基体32が挿入されている。フローセル60の上端側内壁と支持基体32外周の間は、Oリング61を介して液密に固着されている。
フローセル60の先端部の中央には試料液流入用の試料液流入口60aが設けられるとともに、Oリング61近傍の側壁には試料液流出用の試料液流出口60bが設けられている。試料液流入口60aには流入路51が、試料液流出口60bには排出路52が接続される。
【0037】
本実施形態のセンサ部4のフローセル60の試料液流入口60aから試料液Sを流すと、試料液Sの一部がキャップ34内に侵入して窓32bを介して試料液流出口60bから流出する。これにより、試料液Sは検知極35と接触する。また、試料液Sの一部は試料液流入口60aから流入した後、支持基体32の外側を通過して試料液流出口60bから流出する。これにより、試料液Sは支持基体32に巻き付けられている対極33に接触する。すなわち、フローセル60の試料液流入口60aから試料液Sを流すことにより、検知極35と対極33が試料液Sに浸漬した状態となる。
【0038】
第4実施形態に係る全有効塩素測定装置は、第3実施形態に係る全有効塩素測定装置と同様に全有効塩素等の測定をすることができる。また、第3実施形態に係る全有効塩素測定装置と同様に校正を行うことができる。
【0039】
<その他の実施形態>
上記各実施形態では、検知極に接する試料液を検知極表面に対して積極的に流動させる方法によりポーラログラフ法に必要な拡散層の厚みの再現性を得る方法を採用したが、検知極に接する狭い範囲の試料液の流動を抑制する方法により、拡散層の厚みの再現性を得る方法を採用してもよい。当該方法を採用した装置としては、例えば、特開2015-34740号に記載された酸化還元電流測定装置が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の効果を明らかにするための実験例を示す。
[実験例1]
海水に既知濃度の塩素を添加した際の全有効塩素濃度を、全塩素DPD試薬を用いて、測定した。
(a)試料液
以下の試料液について、全有効塩素濃度を測定した。
・海水、
・海水に、濃度既知の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、試料液1Lに対する塩素の添加量が、0.15mgとなるように添加した試料液、
・海水に、濃度既知の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、試料液1Lに対する塩素の添加量が、0.25mgとなるように添加した試料液、
・海水に、濃度既知の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、試料液1Lに対する塩素の添加量が、0.65mgとなるように添加した試料液。
【0041】
(b)全塩素試薬
全塩素を測定するDPD試薬として、下記成分を含む、HACH社製の全塩素試薬(品目コード:HACH0582)を用いた。
ヨウ化カリウム:20.0~30.0質量%、
N,N-ジエチル-フェニレンジアミン塩:1.0~5.0質量%、
カルボン酸塩:40.0~50.0質量%、
リン酸水素二ナトリウム:20.0~30.0質量%、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:1.0質量%未満。
【0042】
(c)全有効塩素濃度の測定
セル長50mmの吸収セルに全塩素試薬と試料液10mL~20mLの一定量を採り、光電分光光度計(HACH社製DR2700)を用いて、混和してから10秒後における波長510nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線から、全有効塩素濃度を求めた。結果を
図5に示す。
【0043】
なお、
図5の縦軸の全有効塩素濃度(測定値)を求めるための検量線は、以下の脱塩素水および標準試料を、試料液と同様にして測定することにより作成した。
脱塩素水:水道水を活性炭で処理して、塩素を除去した水(以下の実験例についても同じ)。
標準試料:有効塩素濃度約12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を脱塩素水で希釈して調製した。調製した標準試料の全有効塩素濃度は、上記「(c)全有効塩素濃度の測定」に従って求めた(以下の実験例についても同じ)。
【0044】
図5に示すように、添加濃度に対する測定値の傾きは0.5409と小さかった。この原因は不明であるが、海水中の成分の影響により添加した塩素が消費されたため、海水を含まない場合よりも吸光度が低く出たことによると思われる。
しかしながら、添加濃度と測定値との間には良好な相関関係が得られた(R
2=0.9953)。
このため、上記全塩素試薬を用いて測定した吸光度から上記検量線によって求めた全有効塩素濃度は、海水中の全有効塩素濃度の指標として有効であることが確認できた。
【0045】
[実験例2]
第4実施形態の全有効塩素測定装置を用いて、印加電圧と酸化還元電流との関係を示すポーラログラムを調べた。ただし、加電圧機構22としては、電圧を連続的に変化させられるものを用い、検知極13としては直径2mmの金電極を用い、線速度で約100cm/sが得られる程度の回転を与えた。対極15は白金電極とした。試料液としては、海水に塩素(次亜塩素酸ナトリウム溶液)を添加した試料液と、脱塩素水に塩素(次亜塩素酸ナトリウム溶液)を添加した試料液を用いた。
海水に塩素を添加した場合のポーラログラムを
図6に、脱塩素水に塩素を添加した場合のポーラログラムを
図7に示す。
【0046】
図6において、Tの後に記載した数値は、実験例1と同様に全塩素試薬を用いて測定した全有効塩素濃度である。例えば「T0.493mg/L」として示したポーラログラムは、実験例1と同様にして測定した全有効塩素濃度が0.493mg/Lである試料液(海水に塩素を添加した試料液)のポーラログラムを示す。
【0047】
図7において、Fの後に記載した数値は、遊離塩素を測定するDPD試薬を用いた他は実験例1と同様にして測定した遊離塩素濃度である。例えば「F0.48mg/L」として示したポーラログラムは、遊離塩素を測定するDPD試薬を用いた他は実験例1と同様にして測定した遊離塩素濃度が0.48mg/Lである試料液(脱塩素水に塩素を添加した試料液)のポーラログラムを示す。
脱塩素水に塩素(次亜塩素酸ナトリウム溶液)を添加した試料液は、遊離塩素以外の有効塩素を含まないので、
図7において、Fの後に記載した数値は、遊離塩素濃度であるとともに、全有効塩素濃度でもある。
【0048】
なお、遊離塩素を測定するDPD試薬としては、下記成分を含む、HACH社製の遊離塩素試薬(品目コード:HACH0578)を用いた。
N,N-ジエチル-フェニレンジアミン塩:5.0質量%未満、
カルボン酸塩:60.0~70.0質量%、
リン酸水素二ナトリウム:30.0~40.0質量%、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:5.0質量%未満。
【0049】
図6、
図7のいずれにおいても、全有効塩素濃度が高くなるほどプラトー領域(印加電圧が若干変化しても、電流がほとんど変化しない領域)が高電圧側にシフトする傾向がみられたが、
図6と
図7の全有効塩素濃度がほぼ等しいポーラログラムを比較すると、両者のプラトー領域は、ほぼ等しかった。
すなわち、
図6の全有効塩素濃度が0.493mg/Lである試料液と
図7の遊離塩素濃度(全有効塩素濃度)が0.48mg/Lである試料液のプラトーは約600mV付近にあり、
図6の全有効塩素濃度が1.202mg/Lである試料液と
図7の遊離塩素濃度(全有効塩素濃度)が1.00mg/Lである試料液のプラトーは約700mV付近にあった。
【0050】
このことから、試料液がどの程度海水を含むかは、良好なプラトー領域となる印加電圧の範囲に影響を与えないことがわかった。
したがって、塩素以外のハロゲンを含まず、電気伝導率が4mS/m以上である校正液を用いて、海水または海水を含む試料液の全有効塩素濃度を測定するための検量線を作成できることがわかった。
【0051】
また、
図6、
図7におけるいずれの試料液でも、印加電圧750mV付近で、良好なプラトー領域が得られた。また、
図7より、全有効塩素濃度が3mg/L程度の試料液の場合、約900mV前後でプラトー領域が得られると考えられる。
この結果と、通常、海水の全有効塩素濃度の測定範囲は、低濃度側では2mg/L以下、高濃度側では2mg/L以上であることを考慮すると、印加電圧は750±250mVの範囲とすべきことがわかった。
また、特に正確な測定を行うためには、測定範囲に応じて、750±250mVの範囲で印加電圧を適切に選択すべきこと(全有効塩素濃度の測定範囲が高くなる程、750±250mVの範囲で高電圧側の印加電圧を選択すべきこと)がわかった。
【0052】
[実験例3]
実験例2と同じ装置を用いて同じ測定条件で、下記試料液A~Cについて、印加電圧と酸化還元電流との関係を示すポーラログラムを調べた。結果を
図8に示す。
試料液A:脱塩素水に濃度既知の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、添加後の試料液1Lに対する遊離塩素濃度が、2mg/Lとなるように添加した試料液、
試料液B:試料液Aの1Lに、臭化カリウムを0.6g添加した試料、
試料液C:試料液Aの1Lに、臭化カリウムを0.6g、無水酢酸ナトリウムを0.2g、酢酸を0.2mL添加した試料。
【0053】
試料液Aは遊離塩素(次亜塩素酸)を含む。これに対して、試料液B、Cは添加された臭化カリウムによって次亜臭素酸を含む。
また、試料液BのpHは約7.5であるが、バッファー成分を含む試料液CのpHは約4.0である。
図8に示すように、印加電圧を750mV付近における電流値は、試料液A~Cの間で大きな差がなかった。
このことから、印加電圧を750mV付近とすれば、遊離塩素であるか次亜臭素酸であるかの違いによらず、また、pHの相違によらず、同一の検量線を使用できることがわかった。
【0054】
[実験例4]
印加電圧を800mVとした第4実施形態の全有効塩素測定装置の校正を、脱塩素水と水道水からなるスパン液(遊離塩素を含むが、他のハロゲンを含まない。)を用いて行った。全有効塩素測定装置の検知極13としては直径2mmの金電極を用い、線速度で約100cm/sが得られる程度の回転を与えた。対極15は白金電極とした。スパン液について、実験例1と同様に全塩素試薬を用いて測定したところ、全有効塩素濃度は0.68mg/Lであった。得られた検量線を
図9に示す。
得られた
図9の検量線は、全有効塩素測定装置に記憶させた。
【0055】
以下の試料液の全有効塩素濃度を、
図9の検量線を記憶させた前記の全有効塩素測定装置を用いて測定した。結果を表1及び
図10に示す。
なお、表1と
図10における「添加濃度」は、海水に対する塩素の添加濃度、または水道水の全塩素試薬を用いて測定した全有効塩素濃度である。また、表1の酸化還元電流は全有効塩素測定装置を用いて得られた値であり、表1および
図10の測定値は、酸化還元電流から、
図9の検量線を用いて求めた全有効塩素濃度である。
【0056】
(試料液)
・海水に、濃度既知の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、試料液1Lに対する塩素の添加量が0.45mgとなるように添加した試料液、
・海水に、濃度既知の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、試料液1Lに対する塩素の添加量が1.04mgとなるように添加した試料液、
・海水に、濃度既知の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、試料液1Lに対する塩素の添加量が2.75mgとなるように添加した試料液、
・水道水:実験例1と同様にして測定した全有効塩素濃度が0.75mg/Lの水道水。
【0057】
【0058】
表1および
図10に示すように、測定値は添加濃度と良く一致しており、添加濃度と測定値との間には良好な相関関係が見られた。
また、
図10では、水道水のデータと海水に塩素を添加した試料液のデータとが同じ直線上に乗っていることが確認できた。
このことから、水道水等の塩素以外のハロゲンを含まず、電気伝導率が4mS/m以上である校正液を用いて得られた検量線は、海水に塩素を添加した試料液の測定にも有効であることがわかった。
【0059】
[実験例5]
海水に、濃度既知の次亜塩素酸ナトリウム溶液を、海水1Lに対する塩素の添加量が0.5mgとなるように添加した試料液を、実験例4により校正した第4実施形態の全有効塩素測定装置により測定し、測定結果の経時変化を調べた。結果を
図11に示す。
図11に示すように、測定値は時間経過と共に低下したが、その低下の状況は、なだらかな曲線上に添うものであった。
これは、添加した次亜塩素酸ナトリウムと海水中の臭素やアンモニア性窒素との反応により生じた次亜臭素酸やブロモアミン類が、海水中の成分により消費されたり、分解したりして減少していく状況を正しくとらえているものと考えられる。
【0060】
[実験例6]
実験例4により校正した全有効塩素測定装置によって海水を連続測定しながら、濃度既知の次亜塩素酸ナトリウム溶液の一定量を順次添加し、測定値の変化を調べた。結果を表2および
図12に示す。
表2および
図12におけるNo.1~4は、各々下記の時点での測定であることを示す。
また、表2および
図12におけるDPD値は、実験例1と同様に全塩素試薬を用いて測定した全有効塩素濃度であり、測定値は全有効塩素測定装置によって得られた値である。
【0061】
NO.1:次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加する前。
NO.2:海水1Lに対する塩素の添加量が0.02mgとなる量の次亜塩素酸ナトリウム溶液を1回目に添加した時点。
NO.3:海水1Lに対する塩素の添加量が0.02mgとなる量の次亜塩素酸ナトリウム溶液を2回目に添加した時点。
NO.4:海水1Lに対する塩素の添加量が0.02mgとなる量の次亜塩素酸ナトリウム溶液を3回目に添加した時点。
【0062】
【0063】
表2および
図12に示すように、全有効塩素濃度が極めて低濃度であるにもかかわらず、DPD値と測定値との間には、良好な相関関係が得られた。また、例えばNO.1の時点の測定結果を基に、実験例4の校正により得た検量線のゼロ点を補正すれば、DPD値と測定値を一層高い精度で一致させることが可能であることもわかった。
【0064】
[実験例7]
実験例4により校正した第4実施形態の全有効塩素測定装置によって、脱塩素水と脱塩素水に塩素の添加量が0.03mgとなる量の次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加した低濃度試料液とを交互に測定し、1回目から4回目までの低濃度試料液の測定結果の再現性を調べた。結果を表3に示す。
表3に示すように、全有効塩素濃度が極めて低濃度であるにもかかわらず、全有効塩素測定装置により高い再現性が得られた。
【0065】
【符号の説明】
【0066】
1~4…センサ部、11…測定セル、12…検知極支持体、13、35…検知極、
14…対極支持体、15、33…対極、16、38…モーター、17、45…軸受け、
18、36…ビーズ、19、60…フローセル、20…本体部、
21…演算制御部、22…加電圧機構、23…電流計、24…表示装置、
50…送液部、53…ポンプ、S…試料液