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特許7093007筐体への樹脂充填方法及びそれに用いられる治具
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  • 特許-筐体への樹脂充填方法及びそれに用いられる治具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】筐体への樹脂充填方法及びそれに用いられる治具
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/10 20060101AFI20220622BHJP
   B29C 39/22 20060101ALI20220622BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220622BHJP
【FI】
B29C39/10
B29C39/22
H01M50/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018145275
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020019236
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】船橋 雅之
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-157813(JP,A)
【文献】特開2011-113721(JP,A)
【文献】特開昭61-292308(JP,A)
【文献】特開平08-162078(JP,A)
【文献】特開2003-338275(JP,A)
【文献】特開2014-127399(JP,A)
【文献】特開2012-205371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00 - 39/44
H01M 50/20 - 50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部へ樹脂を充填する方法であって、
貫通孔を有した治具を用い、
筐体の底部に設けられた樹脂注入口の周りに前記治具を押し当て、
樹脂注入ノズルの先端を前記治具の貫通孔に挿入し、
前記治具の貫通孔及び前記筐体の樹脂注入口を通して前記筐体の底部側から樹脂を注入し、前記筐体の上部に設けられた排気口より筐体内部の空気を排気することを特徴とし
前記治具は、前記貫通孔が開口する先端面が前記筐体の樹脂注入口の周りに押し当てられる弾性材料から成る筒状治具と、前記筒状治具の外周に嵌め込まれ抜け止めされる補助治具と、を備え、
前記筐体の樹脂注入口の周辺に係合用突部が設けられ、前記補助治具には前記係合用突部に係合される凹溝が設けられ、
前記係合用突部と前記補助治具の凹溝とを係合させることにより、前記筒状治具の先端面を前記樹脂注入口の周りに押し当てることを特徴とした筐体への樹脂充填方法。
【請求項2】
前記筐体は、防爆対応の筐体であり、
前記係合用突部が、前記筐体に装着される付加部材を固定するための固定枠であり、
前記補助治具が、前記付加部材を筐体に取り付けるためのアダプターであることを特徴とした請求項1に記載の筐体への樹脂充填方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の筐体への樹脂充填方法に用いられる治具。
【請求項4】
前記治具の貫通孔は、前記先端面の開口径が後端面側の開口径より小さく、
前記先端面の開口径は、前記樹脂注入ノズルの先端側外径より小さく、
前記後端面側の開口径は、前記樹脂注入ノズルの先端側外径より大きく形成されていることを特徴とする請求項3記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、防爆対応筐体等の筐体の内空間に良好に樹脂を充填する方法及びそれに用いられる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、小型電子機器用の、リチウムイオン電池セルを収納した筐体等の筐体内部空間に、絶縁及び放熱性向上や防爆仕様のために、流動性の樹脂を充填し、硬化させることが行われている。具体的には、この種の樹脂充填方法において、樹脂充填口及び排気口が筐体(外装ケース)の天面に設けられ、充填口及び排気口に漏斗型の治具を挿入し、治具を通して充填口から樹脂を充填することによって、樹脂が外部に漏れないようにすることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-113721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような樹脂充填方法においては、筐体の上方から樹脂を注入するため、樹脂の筐体内での流れと、排気の流れとは逆方向となり、スムーズな樹脂の流れが確保できないことが考えられる。その場合、内部で気泡が発生し易く、量産安定性を持った樹脂充填に難がある。他の方法として、重力に逆らわずに底面側から樹脂充填を可能とするために、筐体の天面側を開放してそこから底面まで、樹脂供給ノズルを通して充填することも考えられる。ところが、この方法では、そのノズルを底面側まで通すスペースを確保する必要がある。当該ノズルが金属製であると、電池パックの場合、筐体内部に電池セルがあるため、当該ノズルと電池セルが接触しない工夫も必要となる。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解消するものであり、筐体内部での気泡発生を抑制することができ、量産安定性を持った樹脂充填を可能な筐体への樹脂充填方法及びそれに用いられる治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筐体内部へ樹脂を充填する方法であって、貫通孔を有した治具を用い、筐体の底部に設けられた樹脂注入口の周りに前記治具を押し当て、樹脂注入ノズルの先端を前記治具の貫通孔に挿入し、前記治具の貫通孔及び前記筐体の樹脂注入口を通して前記筐体の底部側から樹脂を注入し、前記筐体の上部に設けられた排気口より筐体内部の空気を排気することを特徴とし、前記治具は、前記貫通孔が開口する先端面が前記筐体の樹脂注入口の周りに押し当てられる弾性材料から成る筒状治具と、前記筒状治具の外周に嵌め込まれ抜け止めされる補助治具と、を備え、前記筐体の樹脂注入口の周辺に係合用突部が設けられ、前記補助治具には前記係合用突部に係合される凹溝が設けられ、
前記係合用突部と前記補助治具の凹溝とを係合させることにより、前記筒状治具の先端面を前記樹脂注入口の周りに押し当てる筐体への樹脂充填方法である。
上記において、前記筐体は、防爆対応の筐体であり、前記係合用突部が、前記筐体に装着される付加部材を固定するための固定枠であり、前記補助治具が、前記付加部材を筐体に取り付けるためのアダプターであることが望ましい。
また、本発明は、上記記載の筐体への樹脂充填方法に用いられる治具である。
上記において、前記治具の貫通孔は、前記先端面の開口径が後端面側の開口径より小さく、前記先端面の開口径は、前記樹脂注入ノズルの先端側外径より小さく、前記後端面側の開口径は、前記樹脂注入ノズルの先端側外径より大きく形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、筐体の底面側から樹脂注入することが可能で、筐体内部に気泡が発生することを抑制でき、量産安定性を高めることができ、また、外観への充填剤漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は一実施形態に係るバッテリーパックの筐体及び樹脂充填用の治具の外観図、(b)は上記筐体の係合用突部に上記治具を係合させようとしている状態の部分外観図。
図2】上記筐体及び治具の断面図。
図3】上記筐体に上記治具を押し当てて筐体内に樹脂を充填している状態の断面図。
図4】上記筐体に上記治具を押し当てている部分の拡大図。
図5】(a)は上記治具の斜視図、(b)は上記治具の側面図。
図6】(a)は上記治具の筒状治具の側面図、(b)は上記治具の筒状治具の正面図。
図7】上記筐体の係合用突部に上記治具の補助治具を係合させるための構成を示す斜視図。
図8】他の実施形態に係る治具を筐体に押し当てた状態の部分断面図。
図9】(a)は上記他の実施形態に係る治具の上面図、(b)は同治具の正面図、(c)は同治具の底面図、(d)は同治具の断面図、(e)は同治具の側面図。
図10】上記一実施形態の変形例に係る筐体に治具を通して樹脂を充填した状態の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る筐体内部へ樹脂を充填する方法及び樹脂充填用の治具について、図面を参照して説明する。
<実施の形態>
図1は、一実施形態に係る充填対象の筐体がバッテリーパックの場合の、筐体1、及び筐体内部へ樹脂を充填するために用いられる治具4の外観を示す。図2は各々の断面を示す。図1及び図2は、治具4が筐体1から離れた状態を示している。図3及び図4は、筐体1に治具4を押し当てて筐体1内部に樹脂を充填している状態を示す。バッテリーパックは、給電対象機器としてトランシーバーを想定している。筐体1は、直方体形状の外装ケースであって、箱状ケース2と蓋ケース3が嵌合されて成り、耐熱性、絶縁性及び機械的強度に優れるABSやPC等で形成される。治具4は、ゴム等の弾性材料から成る筒状治具5と、この筒状治具5の外周に嵌め込まれる樹脂材料等で成る補助治具6とを備える。
【0010】
筐体1の内部には、コア部品として、回路基板7、板状の内部ホルダー8、及び内部ホルダー8に保持させた電池セル9が収納され適宜に固定されている。電池セル9は、リチウムイオン電池等の二次電池である。筐体1の箱状ケース2には、端子窓を介して充電端子12が露出して配設され、蓋ケース3には、端子窓を介して放電端子13が露出して配設されている。筐体1がバッテリーパックの場合、バッテリーパックから給電される給電対象機器(図示なし)が、蓋ケース3の外面(図1での背面側)にラッチ等を用いて装着される。筐体1内部の、外装ケースとコア部品との空隙には、コア部品を埋設するように樹脂11が充填される。樹脂11は、液状の樹脂が用いられ、時間経過で硬化するポッティング剤が好適である。
【0011】
筐体1の箱状ケース2の外面(図1での前面側)側の底部に、筐体1の底部側から樹脂を筐体1の内部に注入するための樹脂注入口10が設けられている。樹脂注入口10は円形であることが望ましいが、必ずしもそれに限られない。本明細書では、図1で示した姿勢にある直方体形状の筐体1の長手方向を上下方向と言い、下方部位を筐体1の底部と称している。樹脂注入口10を設ける筐体1の底部とは、箱状ケース2の下方部位に限られず、蓋ケース3の下方部位や、箱状ケース2又は蓋ケース3の底面相当の部位であっても構わない。樹脂注入口10の周辺には、治具4の補助治具6を係止するための係合用突部15が筐体1に設けられている。補助治具6として後述するようにベルトクリップなどの付加部材を筐体1に取り付けるためのアダプターを利用している場合には、係合用突部15は、付加部材固定用の部材である。治具4は、図1に矢印で示す方向にスライドさせて係合用突部15に係合させる。筐体1の上部には、樹脂注入時に筐体1内部の空気を排気する排気口16が設けられている。
【0012】
治具4の構成について説明する。治具4のうちの筒状治具5は貫通孔51を有し、この貫通孔51が開口している先端面52は、当該開口の周辺が台形状に膨出している。筒状治具5の先端面52は、樹脂注入時に、筐体1の樹脂注入口10の周りに押し当てられる。この押し当ては、筒状治具5の外周に嵌め込まれている補助治具6によって付勢力を加えることで行うことができる。補助治具6は、筒状治具5の貫通孔51が開口する先端面52寄りに設けられた突起53により抜け止めされている。
【0013】
筒状治具5の貫通孔51は断面円形で、その開口は円形であることが望ましいが、必ずしもそれに限られない。先端面52の開口周辺が膨出している台形状は、樹脂注入口10の開口の形状に応じて例えば円錐又は角錐状とすればよい。樹脂注入口10が円形である場合は、貫通孔51の開口も円形であることが望ましい。また、樹脂注入口10の開口径は、貫通孔51の先端面52の開口径と同等又は当該開口径より大きいことが望ましい。筒状治具5の先端面52を筐体1の樹脂注入口10の周りに押し当てるとき、貫通孔51の開口と樹脂注入口10との各中心軸が合致するように位置付けされる。これにより、筒状治具5の先端面52と筐体1との押圧当接面での樹脂漏れを確実に防止することができる。
【0014】
筒状治具5の先端面52とは反対側の後端側に開口する貫通孔51には、樹脂注入のための樹脂注入ノズル14の先端部が挿入される。このとき、樹脂漏れ防止のため、樹脂注入ノズル14の外周面が、筒状治具5の貫通孔51の内壁面に密着されなければならない。そのためには、樹脂注入ノズル14の貫通孔51に挿入される部位の形状は、貫通孔51の断面形状と相似形状、又は、貫通孔51の先端面52側ほど口径が小さくなるような傾斜テーパーに形成されていることが望ましい。本実施形態では、筒状治具5の先端面52側の貫通孔51の開口径は、後端面側の開口径より小さく、また、樹脂注入ノズル14の先端側外径より小さく形成され、また、当然ながら貫通孔51の後端面側の開口径は、樹脂注入ノズル14の先端側外径より大きく形成されている。これにより、樹脂注入ノズル14を筒状治具5の貫通孔51に挿入するとき、樹脂注入ノズル14は適切な位置にスムーズに挿入することができる。
【0015】
本実施形態における筐体1内部への樹脂充填方法について、図3及び図4を参照して説明する。治具4は、筒状治具5の外周に補助治具6を嵌め込ませた状態とし、この状態の治具4を筐体1に設けられた係合用突部15に係合させることで、補助治具6を介して筒状治具5を筐体1の樹脂注入口10の周りに押し当てる付勢力を加えることができる。もって、筒状治具5の貫通孔51が開口する先端面52を筐体1の樹脂注入口10の周りに押し当てることができる。さらに、樹脂を注入するための樹脂注入ノズル14の先端を、筒状治具5の貫通孔51に後端側から挿入する。
【0016】
上記の状態で、樹脂注入ノズル14の上流側から樹脂11を供給することにより、筒状治具5の貫通孔51及び筐体1の樹脂注入口10を通して、筐体1の底部側から筐体1内に樹脂を注入する。筐体1内の空間に注入、充填される樹脂11の流れを矢印(→)で示している。樹脂注入に伴い、筐体1内の樹脂液面は上昇していき、筐体1内の空気は排気口16より排気される。樹脂の充填が終わると、樹脂注入ノズル14を筒状治具5の貫通孔51から抜き、筒状治具5の入り口をクリップ等で摘まんで、樹脂が漏れ出すのを防止する。この状態で樹脂が硬化するのを待つ。樹脂が硬化したなら、筒状治具5の樹脂注入口10への押し付けを止め、補助治具6を樹脂注入口10から放し、補助治具6から筒状治具5を外す。補助治具6として、ベルトクリップやストラップなどの付加部材を筐体1に取り付けるためのアダプターを利用している場合は、補助治具6を筐体1の係合用突部15に再び係合させ固定する。なお、排気口16は、樹脂の充填硬化後に適宜に封止される。
【0017】
本実施形態では、上記のように筐体1の底部側から樹脂が注入されるため、樹脂充填と排気の各動作を効率良く行え、樹脂の流れも迅速、かつスムーズにすることができ、筐体1内部での気泡発生を抑制して筐体1内に樹脂を密に充填することができ、確実な樹脂充填性の向上により量産安定性が高まる。かくして、筐体1の上部から樹脂注入する場合に比べて、筐体1内部での気泡発生が抑制され、量産安定性が確保される。また、弾性材料から成る筒状治具5が筐体1の樹脂注入口10の周りに適宜の付勢力でもって押し当てられていることにより、この当接部位での樹脂漏れを防止できる。
【0018】
また、樹脂注入ノズル14の貫通孔51への挿入部位での樹脂漏れを防止できる。こうして、充填剤が外部に溢れ出すことが防止され、筐体1の外観への充填剤付着が軽減され、拭き取り作業等が発生することがなくなる。さらには、コア部品等を確実に固定し、かつ部品同士の絶縁を図ることができ、電池セル駆動時に筐体1内で発生した熱を筐体1外面へ効率良く放熱させ、過熱を防いで安定した電池セル駆動が可能となる。樹脂材料に難燃性樹脂を用いることで、筐体1を防爆対応の仕様とすることもできる。樹脂11には、シリコーン樹脂、変性シリコーン、エポキシ等の反応硬化型樹脂を用いればよい。
【0019】
本実施形態では、筐体1の樹脂注入口10の周辺に係合用突部15が一体的に設けられていて、この係合用突部15に補助治具6を係合させることにより、補助治具6を介して筒状治具5に付勢力が付与され、筒状治具5の先端面52を樹脂注入口10の周りに押し当てることができる。係合用突部15は、筐体1に装着される周知のベルトクリップを固定するための固定枠を利用し、補助治具6は、ベルトクリップやストラップなどの付加部材を取り付けるためのアダプターを利用している。なお、ベルトクリップは、筐体1を装着した給電対象機器を持ち運び使用するユーザが肩掛けなどするために用いられるベルトに取付けられるものであり、回転式ベルトクリップとして汎用されている。
【0020】
このように、筐体1がベルトクリップ用の係合用突部15を有している場合、補助治具6を係合用突部15に係合させるだけで、容易に筒状治具5の先端面52を筐体1の樹脂注入口10の周りに押し当てることができる。補助治具6として付加部材用のアダプターを利用する場合、補助治具6をわざわざ作成する必要がなくなり、コストダウンできる。
【0021】
図5及び図6は、上記治具4の筒状治具5及び補助治具6の具体的構成を示す。補助治具6は、筒状治具5の外周に嵌め込まれ、筒状治具5の先端面52寄りに設けられた突起53により抜け止めされる。補助治具6は、上述したベルトクリップなど付加部材用のアダプターであり、筒状治具5を貫通させる穴を有し、筐体1に設けられた係合用突部15(図1)すなわち固定枠に係合させるための取付け部61と、この取付け部61と一体の付加部材との係合部62とを備える。取付け部61は、係合用突部15すなわち固定枠に係合される左右両外向きの凹溝63を有している。付加部材との係合部62と取付け部61との間の谷状部64でもって周知の回転式ベルトクリップが回転自在に保持される。
【0022】
図7は、筐体1の係合用突部15(すなわち固定枠)と治具4の補助治具6との係合構成を示す。筐体1の係合用突部15(すなわち固定枠)は、左右に相対向して上下逆L字状のレール壁として設けられている。係合用突部15、すなわちレール壁で成る固定枠に、その下方向から(筒状治具5を嵌め込んだ)補助治具6の凹溝63を係合させるように補助治具6を挿入し、スライドさせることで、補助治具6を所定位置に保持させることができる。この保持状態において、筒状治具5の先端面52が樹脂注入口10の周りに適切な付勢力でもって押し当てられた状態になり、樹脂注入が可能な状態となる。このように、補助治具6及び係合用突部15としてベルトクリップ構成を利用することにより、特別な構成を付加することなく、容易に筒状治具5の先端面52を樹脂注入口10の周りに押し当てた状態にすることができる。
【0023】
図8は、他の実施形態に係る治具4を筐体1に押し当てた状態を示す。図9は、当該治具4の詳細構成を示す。治具4における筒状治具5Aが、先の実施形態とは構成が異なり、補助治具6は先の実施形態と同等である。筒状治具5Aは、樹脂注入ノズル14が挿入される側の貫通孔51が樹脂注入ノズル14の外径よりも大きい内径の貫通孔とされ、その途中位置から先端面52側に向かうほど内径が小さくなるテーパー状とされている。先端面52での貫通孔51の内径は樹脂注入ノズル14の外径よりも小さくされている。これにより、樹脂注入ノズル14を貫通孔51に挿入していくと、樹脂注入ノズル14は直径方向に締め付けられ、それにより、充填剤(樹脂)の漏れを防ぐことができる。樹脂注入ノズル14の締め付け度合いは、筒状治具5Aを作成する金型製作上の難易度や、充填剤の注入スピードを加味して適宜に設定される。
【0024】
図10は、上記一実施形態の変形例に係る筐体1内に治具4を通して樹脂を充填した状態を示す。筐体1内の電池セル9や回路基板7等の樹脂封止対象物は規定の範囲まで樹脂で封止される。そして、筐体1内で上部に空間を設けることが可能な場合は、筐体1(箱状ケース2又は蓋ケース3)の上部側面に排気口16を設ければよい。矢印Aで示す高さ位置まで樹脂封止する必要がある場合、排気口16は、その高さ位置よりも高い領域に設けられる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記では、筐体1がベルトクリップ用の係合用突部15を有している場合を説明したが、係合用突部15を有していない場合にあっては、樹脂充填を行うためのハンドツール等を用いて補助治具6に付勢力を与えて、筒状治具5を筐体1の樹脂注入口10の周り押し当てればよい。また、筒状治具5自体に付勢力を与えることが可能であれば、治具4として補助治具6は必ずしも用いなくても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、例えばノート型コンピュータ、トランシーバー等の小型電子機器の主電源に用いる筐体の内部への樹脂充填に好適に用いられ、不具合時の発火の恐れを防止し、安全性を高めことができ、その利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0027】
1 筐体
2 箱状ケース
3 蓋ケース
4 治具
5 筒状治具
5A 筒状治具
51 貫通孔
52 先端面
53 突起
6 補助治具
61 取付け部
62 付加部材との係合部
63 凹溝
64 谷状部
7 回路基板
8 板状の内部ホルダー
9 電池セル
10 樹脂注入口
11 樹脂(充填剤)
12 充電端子
13 放電端子
14 樹脂注入ノズル
15 係合用突部(固定枠)
16 排気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10