(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】窒素含有溶媒に分散したアルミニウム含有シリカゾル及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C01B 33/145 20060101AFI20220622BHJP
C01B 33/146 20060101ALI20220622BHJP
C09D 5/25 20060101ALI20220622BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20220622BHJP
H01B 3/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C01B33/145
C01B33/146
C09D5/25
C09D7/62
H01B3/00 A
(21)【出願番号】P 2022502996
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2021040649
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2020184448
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 和也
(72)【発明者】
【氏名】大西 耀
(72)【発明者】
【氏名】菅原 由紀
(72)【発明者】
【氏名】末村 尚彦
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/101974(WO,A1)
【文献】特開2011-026183(JP,A)
【文献】国際公開第2011/059081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00
C09D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子表面にアルミノシリケートサイトを形成したアルミニウム原子を含有する平均一次粒子径5~100nmのシリカ粒子が
分子内にカルボニル基とアミノ基を有する窒素含有溶媒に分散したシリカゾルであって、
リーチング法により測定したアルミニウム原子がシリカ粒子表面にAl
2O
3換算にて800~20000ppm/SiO
2の割合で結合したシリカゾル。
【請求項2】
上記シリカ粒子は下記一般式(1)乃至(3):
【化1】
〔式(1)中、R
1はフェニル基若しくはフェニル基を含む有機基、アミノ基若しくはアミノ基を含む有機基、(メタ)アクリロイル基若しくは(メタ)アクリロイル基を含む有機基、ビニル基若しくはビニル基を含む有機基、ハロゲン原子を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又はそれらの組み合わせであり、R
2はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R
3及びR
5はそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R
4及びR
6はそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。〕からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物又はその加水分解物が結合したものである請求項1に記載のシリカゾル
。
【請求項3】
上記一般式(1)のシラン化合物がシリカ粒子表面の単位面積当たり0.5~5.0個/nm
2で結合したものである請求項2に記載のシリカゾル。
【請求項4】
上記シリカ粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液で浸出する
上記リーチング法により測定したシリカ粒子表面に結合したアルミニウム原子が、Al
2O
3換算にて800~20000ppm/SiO
2の割合である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項5】
上記シリカ粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液で浸出する
上記リーチング法により測定したシリカ粒子表面に結合したアルミニウム原子が、Al
2O
3換算にて800~20000ppm/SiO
2の割合であり、且つ上記シリカ粒子をフッ酸水溶液で溶解法により測定したシリカ粒子全体に存在するアルミニウム原子が、Al
2O
3換算にて2700~30000ppm/SiO
2の割合である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項6】
上記シリカ粒子表面に存在する負電荷量が、0.25~0.45μeq/m
2である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項7】
窒素含有溶媒がアミド系溶媒である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項8】
上記窒素含有溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、又はN-エチルピロリドンである請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のシリカゾル。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の上記シリカゾルと窒素含有ポリマーとを含む組成物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の上記シリカゾルと窒素含有ポリマーとを含む絶縁性樹脂から成る組成物。
【請求項11】
上記シリカゾルに含まれるシリカ粒子の1質量部に対し上記窒素含有ポリマーの質量部が1~100である請求項9又は請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
上記窒素含有ポリマーが、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、又はポリエステルイミドのいずれかである請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
上記組成物を50℃で2週間保管後の粘度が、25℃で測定した初期粘度に比べて0.80~1.05倍である請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項10に記載の絶縁性樹脂から成る組成物により導線を絶縁被覆した絶
縁被覆導線。
【請求項15】
上記絶縁被覆導線の絶縁被覆層中のシリカ配合量を7~15質量%
、上記絶縁被覆導線の絶縁被覆層を厚み23μmで絶縁被覆した絶縁被覆導線の該絶縁被覆層が1d~2dの可撓性を有する
、請求項14に記載の絶縁被覆導線。
【請求項16】
上記絶縁被覆導線の絶縁被覆層中のシリカ配合量を7~15質量%
、上記絶縁被覆導線の絶縁被覆層を厚み23μmで絶縁被覆した絶縁被覆導線を、パルス印加電圧1.5kVp、両極性及び10kHz矩形波とする条件で測定した絶縁寿命が0.2時間~20時間である
請求項14に記載の絶縁被覆導線。
【請求項17】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法であって、下記(A)工程乃至(B)工程:
(A)工程:アルミニウム原子がシリカ粒子表面にAl
2O
3換算にて800~20000ppm/SiO
2の割合で結合した5~100nmの平均一次粒子径を有する水性シリカゾルを得る工程と、
(B)工程:(A)工程で得られたシリカゾルの溶媒を窒素含有溶媒に溶媒置換する工程と、
を有するシリカゾルの製造方法。
【請求項18】
(A)工程の水性シリカゾルが、アルミニウム原子を含有する珪酸アル
カリ水溶液、又はアルミニウム原子をアルミン酸塩として添加した珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂に接触させることにより陽イオン交換し、得られた活性珪酸を80~300℃で加熱して得られた水性シリカゾルである請求項17に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項19】
(A)工程の水性シリカゾルが、アルミニウム原子をアルミン酸塩として水性シリカゾルに添加し、当該水性シリカゾルを80~300℃で加熱して得られた水性シリカゾルである請求項17に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項20】
(A)工程の後に、(A)工程で得られたシリカゾルと、上記式(1)のシラン化合物を反応させる(A-1)工程を有する請求項17乃至請求項19のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項21】
(A)工程又は(A-1)工程の後に、(A)工程又は(A-1)工程で得られた水性シリカゾルの水をメタノールに置換する請求項17乃至請求項20のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒素含有溶媒に分散したアルミニウム含有シリカゾルと、それらシリカゾルと窒素含有ポリマーとの樹脂組成物、特に絶縁性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ等の無機酸化物粒子の表面のヒドロキシル基がアルコールと反応し、アルコキシシリル基を導入し有機化してトルエン等の有機溶媒に分散した無機酸化物ゾルを得る方法が開示されている。この方法ではメタノール分散シリカゾルにフェニルトリメトキシシランを反応させ、トルエン溶媒に分散させたシリカゾルが開示されている(特許文献1参照)。
また、メタノール分散シリカゾルをアセトニトリルで溶媒置換してアセトニトリル・メタノール混合溶媒分散シリカゾルを得て、その後にフェニルトリメトキシシランを反応させたシリカゾルが開示されている(特許文献2参照)。
また、シリカ粒子の表面をアルミニウム化合物で修飾したシリカゾルが開示されている(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-200294
【文献】国際公開2009-008509号パンフレット
【文献】特開2011-026183
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はシリカ粒子をポリイミドやポリアミド系の極性樹脂と相溶性が良く混合するための窒素含有溶媒に分散させたシリカゾルを得る事を目的とする。また、それらシリカゾルと樹脂を配合した樹脂組成物であり、絶縁性樹脂組成物とした場合には高い絶縁寿命を有する絶縁被覆導線を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は第1観点として、アルミニウム原子を含有する平均一次粒子径5~100nmのシリカ粒子が窒素含有溶媒に分散したシリカゾルであって、アルミニウム原子がシリカ粒子表面にAl2O3換算にて800~20000ppm/SiO2の割合で結合したシリカゾル、
第2観点として、上記シリカ粒子は下記一般式(1)乃至(3):
【化1】
〔式(1)中、R1はフェニル基若しくはフェニル基を含む有機基、アミノ基若しくはアミノ基を含む有機基、(メタ)アクリロイル基若しくは(メタ)アクリロイル基を含む有機基、ビニル基若しくはビニル基を含む有機基、ハロゲン原子を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又はそれらの組み合わせであり、R2はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、式(2)及び式(3)中、R3及びR5はそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R4及びR6はそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。〕からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物又はその加水分解物が結合したものである第1観点に記載のシリカゾル、
第3観点として、上記一般式(1)のシラン化合物がシリカ粒子表面の単位面積当たり0.5~5.0個/nm2で結合したものである第2観点に記載のシリカゾル、
第4観点として、上記シリカ粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液で浸出するリーチング法により測定したシリカ粒子表面に結合し
たアルミニウム原子が、Al2O3換算にて800~20000ppm/SiO2の割合である第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第5観点として、上記シリカ粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液で浸出するリーチング法により測定したシリカ粒子表面に結合したアルミニウム原子が、Al2O3換算にて800~20000ppm/SiO2の割合であり、且つ上記シリカ粒子をフッ酸水溶液で溶解法により測定したシリカ粒子全体に存在するアルミニウム原子が、Al2O3換算にて2700~30000ppm/SiO2の割合である第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第6観点として、上記シリカ粒子表面に存在する負電荷量が、0.25~0.45μeq/m2である第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第7観点として、窒素含有溶媒がアミド系溶媒である第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のシリカゾル、
第8観点として、上記窒素含有溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、又はN-エチルピロリドンである第1観点乃至第6観点の何れか一つに記載のシリカゾル、
第9観点として、第1観点乃至第8観点の何れか一つに記載の上記シリカゾルと窒素含有ポリマーとを含む組成物、
第10観点として、第1観点乃至第8観点の何れか一つに記載の上記シリカゾルと窒素含有ポリマーとを含む絶縁性樹脂から成る組成物、
第11観点として、上記シリカゾルに含まれるシリカ粒子の1質量部に対し上記窒素含有ポリマーの質量部が1~100である第9観点又は第10観点に記載の組成物、
第12観点として、上記窒素含有ポリマーが、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、又はポリエステルイミドのいずれかである第9観点乃至第11観点のいずれか一つに記載の組成物、
第13観点として、上記組成物を50℃で2週間保管後の粘度が、25℃で測定した初期粘度に比べて0.80~1.05倍である第9観点乃至第12観点のいずれか1つに記載の組成物、
第14観点として、第10観点に記載の絶縁性樹脂から成る組成物により導線を絶縁被覆した絶
縁被覆導線、
第15観点として、上記窒素含有溶媒中のシリカ粒子の濃度を15質量%に調整した第10観点に記載の絶縁性樹脂から成る組成物を厚み23μmで絶縁被覆した絶縁被覆導線
の絶縁被覆層が1d~2dの可撓性を有する絶縁被覆導線、(ただし、上記可撓性は20%伸長した絶縁被覆導線が無伸長の絶縁被覆導線に対して絶縁皮膜に亀裂の発生が見られない最小巻き付け倍径dを求めるものであって、亀裂を発生しない最小巻き付け倍径が自己径(1d)から、それが自己径のn倍である(nd)の範囲で測定される、)
第16観点として、上記窒素含有溶媒中のシリカ粒子の濃度を15質量%に調整した第10観点に記載の絶縁性樹脂から成る組成物を厚み23μmで絶縁被覆した絶縁被覆導線を、パルス印加電圧1.5kVp、両極性及び10kHz矩形波とする条件で測定した絶縁寿命が0.2時間~20時間である絶縁被覆導線、(ただし、絶縁寿命は上記絶縁被覆導線の2線間を50mmの距離に保った温度155℃の環境下において、2線間に昇圧電圧は500V/sで電圧を印加、絶縁破壊検出電流5mAが検出されるまでの時間である、)
第17観点として、第1観点乃至第8観点の何れか1つに記載のシリカゾルの製造方法であって、下記(A)工程乃至(B)工程:(A)工程:アルミニウム原子がシリカ粒子表面にAl2O3換算にて800~20000ppm/SiO2の割合で結合した5~100nmの平均一次粒子径を有する水性シリカゾルを得る工程と、
(B)工程:(A)工程で得られたシリカゾルの溶媒を窒素含有溶媒に溶媒置換する工程と、を有するシリカゾルの製造方法、
第18観点として、((A)工程の水性シリカゾルが、アルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液、又はアルミニウム原子をアルミン酸塩として添加した珪酸アルカリ水溶
液を陽イオン交換樹脂に接触させることにより陽イオン交換し、得られた活性珪酸を80~300℃で加熱して得られた水性シリカゾルである第17観点に記載のシリカゾルの製造方法、
第19観点として、(A)工程の水性シリカゾルが、アルミニウム原子をアルミン酸塩として水性シリカゾルに添加し、当該水性シリカゾルを80~300℃で加熱して得られた水性シリカゾルである第17観点に記載のシリカゾルの製造方法、
第20観点として、(A)工程の後に、(A)工程で得られたシリカゾルと、上記式(1)のシラン化合物を反応させる(A-1)工程を有する第17観点乃至第19観点のいずれか一つに記載のシリカゾルの製造方法、及び
第21観点として、(A)工程又は(A-1)工程の後に、(A)工程又は(A-1)工程で得られた水性シリカゾルの水をメタノールに置換する第17観点乃至第20観点のいずれか一つに記載のシリカゾルの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
アルミニウム含有シリカ粒子は、シリカ粒子表面に存在するアルミノシリケートサイトのアルミニウム原子が4配位となり、アルミニウム原子が負電荷を有する事でそれらシリカ粒子を含むシリカゾルは全pH域で負のゼータ電位を示し、その絶対値は大きい。また、本発明に用いられる窒素含有溶媒は、分子内にカルボニル基とアミノ基を有し分極構造や窒素原子の孤立電子対により極性の高い溶媒である。
本発明のシリカゾルは、窒素含有溶媒の極性構造と、アルミニウムによるアルミノシリケートサイトがシリカ粒子表面に負電荷をもたらす事で、窒素含有溶媒中に上記シリカ粒子が高い分散性をもった分散体を形成できることが分かった。
これらのアルミノシリケートサイトを形成するためには、シリカ粒子を形成する前に珪酸アルカリ水溶液にアルミン酸塩を添加してから陽イオン交換を行ってアルミン酸イオンを有する活性珪酸から、それを加熱してシリカ粒子全体にアルミノシリケートサイトが形成されたシリカ粒子を用いる方法がある。また、シリカゾルが形成された後にアルミン酸塩を添加してその後に加熱処理を行いシリカ粒子表面にアルミノシリケートサイトを形成する事ができる。本発明ではどちらの方法によるアルミノシリケートサイトの形成方法でも利用可能であるが、極性構造を有する窒素含有溶媒に分散する際に必要な事は、シリカ粒子表面に存在するアルミノシリケートサイトであり、シリカ粒子表面にアルミノシリケートサイトが形成される方法であればいずれの方法でも利用可能である。
配線材料や基板材料は、電気絶縁性と共に耐衝撃性や耐摩耗性の向上が求められている。電気絶縁性の高い樹脂としてはポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のカルボニル基と窒素原子を含むポリマーが多く用いられている。
これらのポリマーに相溶性が良くナノレベルのシリカ粒子を導入する場合に、シリカ粒子が分散媒に高い分散性を有する有機溶媒分散シリカゾルを用いる事が好ましい。有機溶媒分散シリカゾルの分散媒はポリマー構造と共通構造が高いことで、相溶性よくポリマーに混合する事ができワニスとする事ができる。この様な分散媒として窒素含有溶媒を用いる事で、上記樹脂と良く混合する事ができ、混合後に濁りのないシリカ分散塗布組成物のワニスが得られる。
このシリカ分散塗布組成物のワニスを、絶縁被覆を必要とする導線の絶縁性樹脂組成物に適用した場合、当該シリカ粒子はその表面が負電荷を有していて、絶縁被覆という点では欠点であると予想されるが、意外にも非常に高い絶縁性能を有する事が分かった。それは従来のシリカ粒子の分散性が十分でないワニスを適用した場合には、被覆された樹脂中にシリカが凝集し、局在化したシリカ凝集体の間は放電に対して無防備のエリアが生じ、放電を受けた時にその部分で絶縁破壊を生じ絶縁性は消滅する。一方、本発明ではワニス
中に十分に分散したシリカ粒子が存在する事により、被覆された樹脂中にシリカが高度に分散し、非局在化しているシリカ粒子は樹脂中に均一なシリカ層を形成することができるので、放電を受けた時にシリカ粒子同士の間は放電に対して十分にシールドされていて絶縁性が高い事が分かった。
本発明の窒素含有溶媒に分散したシリカゾルは、窒素含有ポリマーと相性が高く、シリカ粒子が十分に分散した樹脂組成物が形成される。このワニスを絶縁性樹脂組成物として適用した場合に、絶縁性が必要とする導体(例えば、銅線やエナメル被覆銅線)に被覆して絶縁被覆導線が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例4のシリカ配合樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真。
【
図2】実施例8のシリカ配合樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真。
【
図3】比較例1のシリカ配合樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真。
【
図4】比較例4のシリカ配合樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真。
【
図5】リファレンスとしてシリカを配合しない樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真。
【
図6】実施例4のシリカ配合樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真。
【
図7】実施例8のシリカ配合樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真。
【
図8】比較例1のシリカ配合樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真。
【
図9】比較例4のシリカ配合樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真。
【
図10】リファレンスとしてシリカを配合しない樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明はアルミニウム原子を含有する平均一次粒子径5~100nmのシリカ粒子が窒素含有溶媒に分散したシリカゾルであって、アルミニウム原子がシリカ粒子表面にAl2O3に換算して800~20000ppm/SiO2の割合で結合した上記シリカゾルである。
【0009】
本発明のシリカ粒子の平均一次粒子径は窒素ガス吸着法(BET法)により測定される粒子径(nm)を採用する事ができる。
また、本発明のシリカゾルは窒素含有溶媒に分散性が良く、窒素含有溶媒中での動的光散乱法(DLS法)による粒子径が5~100nm、又は10~70nmの範囲を示す。
そして、動的光散乱法(DLS法)/窒素ガス吸着法(BET法)の比は、1.10~4.50、又は1.20~4.00である。
【0010】
本発明ではアルミニウム原子が、シリカ粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液でリーチング法によるシリカ粒子表面に存在するアルミニウムを測定することによりAl2O3に換算して示す事ができる。即ち、アルミニウム原子がシリカ粒子表面にAl2O3に換算して800~20000、800~10000、又は800~5000ppm/SiO2の割合でシリカ粒子に結合している。シリカ表面に存在してアルミノシリケートサイトを形成する事が、極性の高い窒素含有溶媒に分散するために重要である。シリカ粒子の表面にアルミノシリケートとして存在するアルミニウムは、当該シリカ粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液により、アルミニウムがアルミニウム塩、アルミニウム酸化物、又はアルミニウム水酸化物に近い構造でリーチング(溶出)されて、その溶液からICP発光分光分析装置を用いてアルミニウムを測定でき、Al2O3に換算して示す事ができる。特に硝酸水溶液を用いてリーチング(溶出)する方法が用いられる。リーチングに用いる硝酸水溶液は、その水溶液のpHが0.5~4.0、0.5~3.0、0.5~2.0、又は1.0~1.5の範囲で用いる事ができ、典型的にはpH1.0となる硝酸水溶液を用いる事ができる。例えばシリカ1gに対して100mLの上記の硝酸水溶液を添加して、20~70℃、又は40~60℃の温度で10~24時間保持してシリカ粒子表面からアルミニウム化合物を溶出させ、それを分析用試料に用いる事ができる。
【0011】
本発明において、シリカ粒子表面とは上記リーチングによりアルミニウム化合物が溶出可能な領域をシリカ粒子表面と定義する事ができる。それはシリカゾルから溶媒を蒸発させ更に250℃で乾燥したシリカゲルをすりつぶしてシリカ粉体として、そのシリカ粉体0.2gにpH1.0の硝酸水溶液20mLを加え十分に振とうし、50℃の恒温槽に17時間保持した後、遠心ろ過して得られたろ液中のアルミニウム含有量をICP発光分光分析装置で測定し、Al2O3に換算したアルミニウム含有量をシリカ粉体の質量で除する事で、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)(ppm)を求めるものである。
【0012】
また、シリカ粒子表面にアルミノシリケートを形成させる場合においても、製造方法によっては選択的に表面だけではなく、シリカ粒子内部にもアルミノシリケートが形成されることがある。表面と内部を含めたシリカ粒子全体に存在するアルミニウムがAl2O3に換算して2700~30000ppm/SiO2の割合でシリカ粒子に結合している。
【0013】
シリカ粒子をフッ酸水溶液で溶解法によりシリカ粒子全体に存在するアルミニウムを測定することによりAl2O3に換算して示す事ができる。即ち、シリカ粒子全体にアルミノシリケートとして存在するアルミニウムは、フッ酸水溶液で溶解する事により、その溶液からICP発光分光分析装置を用いて測定でき、Al2O3に換算してシリカ粒子全体に存在するアルミニウムを示す事ができる。
【0014】
このようにシリカ粒子表面にアルミノシリケートサイトが形成される事により、シリカ粒子表面に存在する負電荷量が、0.25~0.45μeq/m2で計測される。
【0015】
本発明に用いられる窒素含有溶媒は、少なくとも窒素原子を含有する官能基を有するものである。窒素原子を有する官能基としてはアミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。溶媒分子の一分子中に窒素含有官能基とカルボニル基が存在するアミド系溶媒が好適であり、鎖状構造や環状構造が挙げられる。窒素原子含有官能基はアミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられるが、アミノ基を用いる事が好ましい。アミノ基とカルボニル基は隣接する事も、炭素原子を介して存在する事も可能であるが、例えばアミド結合として用いる事ができ、アミド系溶媒は好適に用いられる。
【0016】
窒素含有溶媒の具体例として、例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、テトラメチルウレア、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩等が挙げられる。
そして、窒素含有溶媒としてはジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、及びN-エチルピロリドンが好ましく例示される。
【0017】
本発明では効果を損なわない限り、窒素含有溶媒にその他の溶剤を含有する事ができる。
即ち、全溶媒中に窒素含有溶媒を50~100体積%、90~100体積%、98~100体積%、又は99~100体積%の割合で含有する事ができ、その他の溶媒を0~50体積%未満、0~10体積%未満、0~2体積%未満、又は0~1体積%未満で含有する事もできる。
【0018】
その他の溶剤として、水、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、グリコール系溶媒、アミン系溶媒が挙げられる。
例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン系溶媒、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアミン系溶媒が挙げられる。
【0019】
本発明ではシリカ粒子表面を一般式(1)乃至(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物又はその加水分解物で被覆する事ができる。
式(1)中、R1はフェニル基若しくはフェニル基を含む有機基、アミノ基若しくはアミノ基を含む有機基、(メタ)アクリロイル基若しくは(メタ)アクリロイル基を含む有機基、ビニル基若しくはビニル基を含む有機基、ハロゲン原子を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又はそれらの組み合わせであり、R2はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示す。
式(2)及び式(3)中、R3及びR5はそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R4及びR6はそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。
特に、一般式(1)においてa=1、2のシラン化合物を用いる事ができ、特にa=1は好ましい。
ビニル基若しくはビニル基を含む有機基としては、炭素原子数2~10の官能基であり、例えばエテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、1-オクチニル基等が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、炭素数1~10の直鎖、分岐、環状のアルキル部分を有するアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。
また、炭素数2~10のアシルオキシ基は、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
また、ハロゲン基としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、フッ素原子は好ましく用いる事ができる。
【0020】
式(1)のシラン化合物の具体例として以下に例示する事ができる。
フェニル基含有シランとしては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、(2,2-ジフェニルエチル)トリメトキシシラン、フルオレン系シランカップリング剤(例えば、大阪ガスケミカル株式会社製オグソールSC-001、SC-003)等が挙げられる。
フェニル基を含む有機基含有シランとしては、p-スチリルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基含有シラン化合物の具体例として、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基若しくは(メタ)アクリロイル基を含む有機基を含むシランとしては、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、4-メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、5-メタクリロキシペンチルトリメトキシシラン、6-メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、7-メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ビニル基若しくはビニル基を含む有機基含有シランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、1-ブテニルトリメトキシシラン、1-ブテニルトリエトキシシラン、1-オクテニルトリメトキシシラン、1-オクテニルトリエトキシシランが挙げられる。
ハロゲン原子を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基含有シランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
官能基の組み合わせとして、例えばN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記式(2)及び式(3)はトリメチルシリル基をシリカ粒子の表面に形成できる化合物が好ましい。
それら化合物としては以下に例示することができる。
【化2】
上記式中、R
12はアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
これらのシランは信越化学工業(株)製のシランカップリング剤として使用する事ができる。
【0021】
本発明において、シリカ粒子の表面に式(1)乃至(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を被覆する場合は、水性シリカゾル、又はメタノールシリカゾルに上記式(1)乃至(3)のシラン化合物を加え、10~60℃の温度、典型的には室温(20℃)で1~10時間の攪拌を行う事で達成される。式(1)乃至(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物の加水分解には水が必要であるが、水性シリカゾルの場合はその水性媒体が加水分解の水となり、メタノールシリカゾルでは水性媒体をメタノールに溶媒置換する際に存在している水分を加水分解の水とする事ができる。
【0022】
上記一般式(1)乃至(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物がシリカ粒子表面の単位面積当たり0.5~5.0個/nm2、0.5~4.0個/nm2、0.5~3.0個/nm2、又は0.5~2.0個/nm2で結合したシリカ粒子が得られる。
【0023】
本発明のシリカゾルは、下記(A)工程乃至(B)工程:
(A)工程:アルミニウム原子がシリカ粒子表面にAl2O3に換算して800~20000ppm/SiO2の割合で含有した5~100nmの平均一次粒子径を有する水性シリカゾルを得る工程、
(B)工程:(A)工程で得られたシリカゾルの溶媒を窒素含有溶媒に溶媒置換する工程、を含み製造する事ができる。
【0024】
(A)工程の水性シリカゾルが、アルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液、又はアルミニウム原子をアルミン酸塩として珪酸アルカリ水溶液に添加した珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換し、得られた活性珪酸を80~300℃で加熱して得られた水性シリカゾルとして用いる事ができる。上記アルミン酸塩としてはアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムが挙げられ、珪酸アルカリ水溶液は珪酸ナトリウム水溶液、珪酸カリウム水溶液が挙げられる。アルミン酸塩は0.1~30質量%水溶液として、温度20~100℃で、珪酸アルカリ水溶液中に添加し、0.1~24時間の攪拌を行う事ができる。陽イオン交換にはH型強酸性陽イオン交換樹脂に接触する事で行われる。陽イオン交換後に必要により陰イオン交換樹脂に接触する事ができる。このように製造されたアルミン酸イオンを含有する活性珪酸は、80~300℃で、0.1~24時間の加熱を行う事により、シリカ粒子の表面と内部にアルミノシリケートサイトが形成された(A)工程のシリカゾルが製造される。
【0025】
また、(A)工程の水性シリカゾルが、アルミニウム原子をアルミン酸塩として水性シリカゾルに添加し、当該水性シリカゾルを80~300℃で加熱して得られた水性シリカゾルとして用いる事ができる。上記アルミン酸塩としてはアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムが挙げられ、アルミン酸塩は0.1~30質量%水溶液として、温度20~100℃で、シリカゾル中に添加し、0.1~24時間の攪拌を行う事ができる。このようにアルミン酸イオンを含有するシリカゾルは、80~300℃で、0.1~24時間の加熱を行う事により、シリカ粒子の表面及び、表面と内部にアルミノシリケートサイトが形成された(A)工程のシリカゾルが製造される。
【0026】
(A)工程で得られたシリカゾルは必要により陽イオン交換、陰イオン交換を行う事ができる。また、pH2~5、2~4、又は2~3に調整する事ができる。
【0027】
更に、エバポレーターや限外ろ過装置を用いて、シリカ濃度5~50、又は10~30質量%に調整する事ができる。
【0028】
(A)工程において、シリカ粒子の表面をシラン化合物で被覆する時は、(A)工程の終了後にシラン化合物を添加して行われる。
【0029】
(A)工程で得られたシリカゾルの溶媒を窒素含有溶媒に溶媒置換する工程(B)工程の前に、(A)工程の水性シリカゾルの水をメタノールに置換する事ができる。
【0030】
(B)工程では、(A)工程で得られたシリカゾルの溶媒を窒素含有溶媒に溶媒置換する事ができる。溶媒置換はエバポレーターによる蒸発法や、限界濾過法により行われる。
エバポレーターによる蒸発法では、温度30~200℃、圧力50~600Torrで行われる。
【0031】
(B)工程では塩基を添加する事ができる。塩基としてはアミンやアルコール性水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが用いられる。アミンとしては例えばトリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン、N-メチルピペリジン、キヌクリジン等の脂環式アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第4級アンモニウム、イミダゾール、イミダゾール誘導体、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザ-ビシクロ(4,3,0)ノナ-5-エン、1,4-ジアザ-ビシクロ(2,2,2)オクタン等の環状アミンを例示することができる。
【0032】
(B)工程を経た窒素含有溶媒分散シリカゾルは、純水とメタノールと窒素含有溶媒分散ゾルを質量比1:1:1に混合して、pH4.0~10.0、4.0~9.5、又は4.0~9.0に調製する事ができる。
【0033】
(B)工程では、全溶媒中に窒素含有溶媒を50~100体積%、90~100体積%、98~100体積%、又は99~100体積%の割合で含有する事ができ、その他の溶媒を0~50体積%未満、0~10体積%未満、0~2体積%未満、又は0~1体積%未満で含有する事ができる。その他の溶媒として、(A)工程のシリカゾルに含まれる水、メタノールが上述の範囲に含まれていても効果を損なわない限り許容される。
【0034】
本発明の窒素含有溶媒に分散したシリカゾルは、窒素含有ポリマーと組み合わせて塗布組成物(樹脂ワニス)が得られる。
また、本発明の窒素含有溶媒に分散したシリカゾルは、窒素含有ポリマーと組み合わせて絶縁性樹脂組成物(樹脂ワニス)が得られる。
【0035】
窒素含有ポリマーとシリカ粒子に被覆されるシラン化合物の組み合わせとして以下に例示することができる。例えばポリアミドイミド系樹脂とは、フェニル基含有シラン、トリフルオロアルキル基含有シラン、アルキル基含有シラン、アミノ基含有シラン、又はそれらの組み合わせによる有機基を含有するシランが好ましい組み合わせとして例示される。より具体的には、ポリアミドイミド系樹脂と、フェニルトリメトキシシランで被覆されたシリカ粒子、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランで被覆されたシリカ粒子又はメチルトリメトキシシランで被覆されたシリカ粒子を、それぞれDMAC(N,N-ジメチルアセトアミド)溶媒に分散させたゾルとの組み合わせによる塗布組成物又は絶縁性樹脂組成物が挙げられる。
【0036】
また、ポリイミド系樹脂とは、フェニル基含有シラン、アミノ基含有シラン、又はそれらの組み合わせによる有機基を含有するシランが好ましい組み合わせとして例示される。より具体的には、ポリイミド樹脂と、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランで被覆されたシリカ粒子をDMAC(N,N-ジメチルアセトアミド)溶媒に分散させたゾルとの組み合わせによる塗布組成物又は絶縁性樹脂組成物が挙げられる。
【0037】
前記シリカゾルに含まれるシリカの1質量部に対し前記窒素含有ポリマーの質量部が1~100である上記塗布組成物や、絶縁性樹脂組成物等の樹脂ワニスを得る事ができる。前記窒素含有ポリマーは、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、及びポリエステルイミドが挙げられる。
【0038】
上記塗布組成物や、絶縁性樹脂組成物等の樹脂ワニスは50℃で2週間の保管後の粘度が、25℃で測定した初期粘度に比べて0.80~1.05倍であり、高い保存安定性を有する。50℃の2週間保管後の測定は、50℃の恒温保管庫から取り出し直ちに25℃に降温させた後に25℃の温度で粘度測定が行われる。
【0039】
絶縁性樹脂組成物は、絶縁性を必要とする導体に被覆し、溶剤が蒸発する温度で加熱硬化する事で導体表面に絶縁性被膜を形成することができる。溶剤を除去する加熱温度は、圧力により決定されるが、常圧であれば150℃~220℃程度の加熱温度である。
【0040】
上記導体としては金属線であり、特に銅線が用いられる。銅線はエナメルの皮膜で被覆して電線として、産業用、家庭用のモーター、トランス、コイル等に利用されている。
本発明の絶縁性樹脂組成物はエナメル被覆銅線を被覆する方法や、エナメルに変わり絶縁性樹脂組成物を直接に銅線に被覆する方法で絶縁被覆導線を製造する事ができる。
【0041】
上記絶縁性樹脂組成物はシリカゾルに含まれるシリカの1質量部に対して窒素含有ポリマーの1~100質量部の割合で混合して得られる。
【0042】
絶縁性樹脂組成物は、シリカゾルとポリマーをミキサーやディスパーで混合や攪拌を行う事で得られる。これらの調合には所望により添加剤を加える事ができる。
【0043】
上記窒素含有ポリマーが、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、及びポリエステルイミドが好ましく用いられる。
【0044】
本発明の絶縁性樹脂組成物で被覆された導体は、絶縁性と可撓性を有している。
可撓性はJIS C 3216-3 5項に準拠し測定されるが、シリカ濃度15質量%に調整した絶縁性樹脂組成物より厚み23μmで絶縁被覆した絶縁被覆導線が、該絶縁被覆層が1d~2dの可撓性を有する上記絶縁被覆導線。ただし、上記可撓性は20%伸長した絶縁被覆導線が無伸長の絶縁被覆導線に対して絶縁皮膜に亀裂の発生が見られない最小巻き付け倍径dを求めるものであって、亀裂を発生しない最小巻き付け倍径が自己径(1d)から、それが自己径のn倍である(nd)の範囲で測定される。
【0045】
また、絶縁性はJIS C 3216-5 4項に準拠し測定されるが、シリカ濃度15質量%に調整した絶縁性樹脂組成物により厚み23μmで絶縁被覆した絶縁被覆導線が、パルス印加電圧1.5kVp(両極性、10kHz矩形波)で測定した絶縁寿命が0.2時間~20時間、又は0.1~10時間である上記絶縁被覆導線。ただし、絶縁寿命は上記絶縁被覆導線の2線間を50mmの距離に保った温度155℃の環境下において、2線間に昇圧電圧は500V/sで電圧を印加、絶縁破壊検出電流5mAが検出されるまでの時間である。
【実施例】
【0046】
(分析方法)
〔SiO2濃度の測定〕
シリカゾルを坩堝に取り、分散媒の沸点よりも10℃高い温度で加熱乾燥して分散媒を除去した後、得られたシリカゲルを1000℃で焼成し、焼成残分を計量して算出した。
〔平均一次粒子径(窒素吸着法(BET法)粒子径)の測定〕
酸性シリカゾル300℃乾燥粉末の比表面積を、比表面積測定装置(モノソーブMS-16、ユアサアイオニクス(株)製)を用いて測定した。平均一次粒子径は下記式より算出した。平均一次粒子径(nm)=2720/比表面積(m2/g)
〔水分の測定〕
カールフィッシャー滴定法にて求めた。
〔シリカゾルの粘度の測定〕
オストワルド粘度計を用いて20℃で測定した。
〔樹脂ワニスの粘度測定〕
B型粘度計(東機産業 B型粘度計BMII型)を用いて25℃で測定した。
〔pH測定〕
pHメーター(東亞ディーケーケー(株)製)を用いて20℃で測定した。
有機溶媒分散シリカゾルについては、純水とメタノールと有機溶媒分散シリカゾルを質量比1:1:1で混合した溶液で測定した。
〔動的光散乱法粒子径の測定〕
動的光散乱法粒子径測定装置(スペクトリス社製 ゼーターサイザー ナノ)により測定した。
〔シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量の測定〕
シリカゾルを乾燥して得られるシリカゲルをフッ化水素酸溶液によって分解した後、硝酸水溶液で溶解させた。得られた水溶液中のアルミニウム含有量を、ICP発光分光分析装置を使用して測定し、シリカの質量で除する事で、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)(ppm)を求めた。
〔シリカ表面に結合したアルミニウム量の測定〕
シリカゾル5gを坩堝に取り、溶媒の沸点よりも10℃高い温度でホットプレート上で加熱して、溶媒を蒸発させた。更に、250℃の乾燥機中で2時間加熱乾燥した後、得られたシリカゲルを乳鉢ですりつぶして粉体を得た。得られたシリカ粉体0.2gをポリプロピレン製容器(PPサンプラボトル20mL)に投入し、pH1.0に調整した硝酸水溶液を20mL加えて10分間手で強く振とうした。次に、サンプルを超音波洗浄器(アズワン製、AS486)に10分間かけることで、シリカ粉体と硝酸水溶液を十分馴染ませた。それを50℃の恒温槽に投入し、17時間保持した。その後、内容液を遠心式限外ろ過フィルター(製品名:アミコン ウルトラ-15、分画分子量1万)に仕込み、遠心分離装置にかけて得られた濾液中のアルミニウム含有量を、ICP発光分光分析装置を使用して測定した。得られたアルミニウム含有量をシリカ粉体の質量で除する事で、シリカ表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)(ppm)を求めた。
〔シリカ粒子表面の負電荷量の測定〕
シリカ濃度0.5質量%に濃度調整した酸性シリカゾルを100g用意し、アンモニア水溶液を添加して20℃においてpHを5.0に調整した測定用水溶液を調製した。調製した測定用水溶液を20g分取して、流動電位測定装置(MicrotracBEL社製、Stabino PMX400)により、カチオン標準滴定液としてN/400 DADMAC溶液(和光純薬工業製)を用いて、カチオン流動電位滴定値を測定して得られた流動電位滴定値を表面負電荷量とした。上記測定により得られる値は、シリカ粒子1gあたりの表面負電荷量(μeq/g)である。この値をシリカ粒子の比表面積(m2/g)で割った値をシリカ粒子表面の単位比表面積あたりに存在する負電荷量とした。
【0047】
〔合成例1/酸性シリカゾル(1)の合成〕
水分散シリカゾル(1)を準備した。(平均一次粒子径11nm、pH9、シリカ濃度20質量%、Al2O3濃度0.17重量%、日産化学株式会社製)。
内容積3LのSUS製オートクレーブ反応器にアルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液を原料として製造された水分散シリカゾル(1)2500gを仕込み、150℃で5.0時間水熱処理を実施した。得られたゾル2000gを水素型強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIR-120Bを200mL充填した約25℃のカラムに、1時間当たりの空間速度5で通液することで、酸性シリカゾル(1)2000gを得た(pH2.5、SiO2濃度20質量%、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)4500ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5915ppm、平均一次粒子径11nm、負電荷量0.43μeq/m2)。
【0048】
〔合成例2/酸性シリカゾル(2)の合成〕
内容積3LのSUS製オートクレーブ反応器にアルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液を原料として製造された水分散シリカゾル(1)2500gを仕込み、245℃で2.5時間水熱処理を実施した。得られたゾル2000gを水素型強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIR-120Bを200mL充填した約25℃のカラムに、1時間当たりの空間速度5で通液することで、酸性シリカゾル(2)2000gを得た(pH2.9、SiO2濃度20質量%、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)3200ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)7534ppm、平均一次粒子径21nm、負電荷量0.40μeq/m2)。
【0049】
〔合成例3/酸性シリカゾル(3)の合成〕
合成例1においてオートクレーブ中の加熱温度を150℃から110℃に変えた以外は合成例1と同様に行い、酸性シリカゾル(3)(pH2.6、SiO2濃度20質量%、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)4000ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2) 5400ppm、平均一次粒子径11nm、負電荷量0.39μeq/m2)を得た。
〔合成例4/酸性シリカゾル(4)の合成〕
水分散シリカゾル(2)を準備した。(平均一次粒子径9.5nm、pH3、シリカ濃度18質量%、Al2O3濃度0.5重量%、日産化学株式会社製)。
内容積3LのSUS製オートクレーブ反応器にアルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液を原料として製造された水分散シリカゾル(2)2500gを仕込み、130℃で5.0時間水熱処理を実施した。得られたゾル2000gを水素型強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIR-120Bを200mL充填した約25℃のカラムに、1時間当たりの空間速度5で通液することで、酸性シリカゾル(4)2000gを得た。
(pH2.6、SiO2濃度18質量%、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)4000ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5454ppm、平均一次粒子径9.5nm、負電荷量0.41μeq/m2)。
〔合成例5/酸性シリカゾル(5)の合成〕
水分散シリカゾル(3)を準備した。(平均一次粒子径4nm、pH10、シリカ濃度15質量%、Al2O3濃度0.43重量%、日産化学株式会社製)。
内容積3LのSUS製オートクレーブ反応器にアルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液を原料として製造された水分散シリカゾル(3)2500gを仕込み、120℃で5.0時間水熱処理を実施した。得られたゾル2000gを水素型強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIR-120Bを200mL充填した約25℃のカラムに、1時間当たりの空間速度5で通液することで、酸性シリカゾル(5)2000gを得た(pH2.7、SiO2濃度14質量%、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)17000ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)22857ppm、平均一次粒子径5nm、負電荷量0.29μeq/m2)。
【0050】
〔比較合成例1/酸性シリカゾル(6)の準備〕
酸性シリカゾル(6)(pH2.6、SiO2濃度20質量%、(シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)760ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2300ppm、平均一次粒子径11nm、負電荷量0.30μeq/m2、日産化学株式会社製)を準備した。このシリカゾルはアルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液を原料として製造されたシリカゾルであった。
【0051】
〔比較合成例2/酸性シリカゾル(7)の準備〕
酸性シリカゾル(7)(pH3、SiO2濃度20質量%、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)450ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2570ppm、平均一次粒子径21nm、負電荷量0.35μeq/m2、日産化学株式会社製)を準備した。このシリカゾルはアルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液を原料として製造されたシリカゾルであった。
【0052】
〔比較合成例3/酸性シリカゾル(8)の準備〕
酸性シリカゾル(8)(pH3、SiO2濃度20質量%、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)460ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2) 2500ppm、平均一次粒子径45nm、負電荷量0.31μeq/m2、日産化学株式会社製)を準備した。このシリカゾルはアルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液を原料として製造されたシリカゾルであった。
〔比較合成例4/酸性シリカゾル(9)の準備〕
水分散シリカゾル(4)を準備した。(平均一次粒子径4nm、pH12、シリカ濃度7質量%、Al2O3濃度0.7重量%、日産化学株式会社製)。
内容積3LのSUS製オートクレーブ反応器にアルミニウム原子を含有する珪酸アルカリ水溶液を原料として製造された水分散シリカゾル(4)2500gを仕込み、110℃で5.0時間水熱処理を実施するとゲル化し、酸性ゾルを作製することはできなかった。
【0053】
(実施例1)
酸性シリカゾル(1)の1000gを2Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーゾルでゾルを攪拌しながら、N,N-ジイソプロピルエチルアミン1.6g及び(N,N-ジメチルアセトアミド、以下DMACと略す。)400gを添加し、15分間混合した。ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下(圧力170Torr、浴温105℃)でDMAC200gをフィードしながら、水を留去させることでDMAC・水混合溶媒分散シリカゾル1000gを得た(シリカ濃度20重量%、水分20質量%)。得られたシリカゾルをマグネチックスターラーで攪拌しながら、フェニルトリメトキシシラン(信越化学製、商品名KBM-103)16.3gを添加した後、液温を60℃で1時間保持した。次いで、N, N-ジイソプロピルエチルアミン0.8gを添加して60℃で1時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下(圧力170~90Torr、浴温105~125℃)でDMAC(400g)をフィードしながら、水を留去させることでDMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH4.7、粘度(20℃)4.8mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径24nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量1.0個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2915ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5797ppm)を得た。
実施例1で得られたDMAC分散シリカゾルをポリアミドイミド絶縁樹脂ワニス(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名HPC-5012-32、樹脂固形分32質量%、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶媒)に樹脂/SiO2=85/15になるようにガラス瓶中で添加混合した。手で10回程度強く振とうした後、ミックスローター(アズワン社製、商品名MR-5)を用いて23℃で12時間混合し、シリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。
得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2600cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2620cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2630cpsであった。
【0054】
(実施例2)
実施例1に記載の方法で得られたDMAC分散シリカゾル670gに、2%NaOHメタノール溶液(水分18質量%含有)8.4gを添加することでDMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.1質量%、pH8.5、粘度(20℃)5.6mPa・s、水分0.3質量%、動的光散乱法粒子径28nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量1.0個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2915ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5797ppm)を得た。
得られたシリカゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2640cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2400cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2200cpsであった。
【0055】
(実施例3)
実施例1の方法で得られたDMAC分散シリカゾル667gにトリ-n-ペンチルアミンを1.2g添加することでDMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH8.5、粘度(20℃)5.5mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径27nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量1.0個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2915ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5797ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、2週間後で元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2700cpsであり、このワニスを50℃、2週間保管して粘度は2500cpsであり、50℃、4週間保管して粘度は2400cpsであった。
【0056】
(実施例4)
実施例1で得られた酸性シリカゾル(1)1000gを撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積2Lのガラス製反応器に仕込み、反応器内のゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込んで、液面徐々に上昇させながらメタノールによる水の置換を行った。留出液の体積が9Lになったところで置換を終了して、メタノール分散シリカゾル(SiO2濃度20.5質量%、水分1.6質量%、粘度2mPa・s)を1100g得た。
得られたメタノールゾルの1000gを2Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、フェニルトリメトキシシラン21.2gを添加した後、液温を60℃で1時間保持した。次に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン1.6gを添加し、液温60℃で1時間保持した。その後、フェニルトリメトキシシラン19.6g、メチルエチルケトン150gを添加し、液温60℃で5時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度450~110Torr、浴温度85~125℃で溶媒を蒸発留去させながらDMACを供給し、ゾルの分散媒をDMACに置換することにより、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH4.6、粘度(20℃)5mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径18nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量2.5個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2330ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5619ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2400cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2420cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2400cpsであった。
【0057】
(実施例5)
実施例1において、フェニルトリメトキシシラン16.3gの代わりに3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学製、商品名KBM-7103)17.9gを添加した以外は実施例1と同様に行う事で、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH4.6、粘度(20℃)6.6mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径28nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量1.0個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)3050ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5797ppm)
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2260cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2000cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は1860cpsであった。
【0058】
(実施例6)
実施例1において、フェニルトリメトキシシラン16.3gの代わりにメチルトリメトキシシラン(信越化学製、商品名KBM-13)11.2gを添加したこと以外は実施例1と同様に行う事で、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH4.8、粘度(20℃)4.8mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径28nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量1.0個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)3240ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5797ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2570cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2520cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2480cpsであった。
【0059】
(実施例7)
実施例1において、フェニルトリメトキシシランを添加しなかった以外は実施例1と同様に行う事で、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度20.5質量%、pH4.5、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径40nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)4490ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5915ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は1600cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は1560cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は1480cpsであった。
【0060】
(実施例8)
酸性シリカゾル(2)1000gを撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積2Lのガラス製反応器に仕込み、反応器内のゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込んで、液面徐々に上昇させながらメタノールによる水の置換を行った。留出液の体積が9Lになったところで置換を終了して、メタノール分散シリカゾルを1100g得た。得られたメタノール分散シリカゾルは、SiO2濃度20質量%、水分1.0質量%、粘度2mPa・sであった。
得られたメタノールゾルの1000gを2Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、フェニルトリメトキシシラン11.7gを添加した後、液温を60℃で1時間保持した。次に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン1.6gを添加し、液温60℃で1時間保持した。その後、フェニルトリメトキシシラン10.8g、メチルエチルケトン150gを添加し、液温60℃で5時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度450~110Torr、浴温度85~125℃で溶媒を蒸発留去させながらDMACを供給し、ゾルの分散媒をDMACに置換することでDMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH4.9、粘度(20℃)7.4mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径39nm、平均一次粒子径21nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量2.5個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)3054ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)7308ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2400cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2220cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2300cpsであった。
【0061】
(実施例9)
酸性シリカゾル(2)の1000gを2Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、N,N-ジイソプロピルエチルアミン1.6g及びDMAC400gを添加し、15分間混合した。ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下(圧力170Torr、浴温105℃)でDMAC200gをフィードしながら、水を留去させることでDMAC・水混合溶媒分散シリカゾル1000gを得た(シリカ濃度20重量%、水分20質量%)。得られたゾルをマグネチックスターラーで攪拌しながら、フェニルトリメトキシシラン(信越化学製、商品名KBM-103)9.0gを添加した後、液温を60℃で1時間保持した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン0.8gを添加して60℃で1時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下(圧力170~90Torr、浴温105~125℃)でDMACをフィードしながら、水を留去させることでDMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、粘度(20℃)13.4mPa・s、水分0.2質量%)を得た。得られたDMAC分散シリカゾル670gにトリ-n-ペンチルアミンを1.0g添加することでDMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH8.6、粘度(20℃)13.4mPa・s、水分0.2質量%、動的光散乱法粒子径42nm、平均一次粒子径21nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量1.0個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2444ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)7383ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2600cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2360cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2160cpsであった。
【0062】
(実施例10)
実施例9において、フェニルトリメトキシシランを添加しなかった以外は実施例9と同様に行う事で、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度20.5質量%、pH4.5、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径43.0nm、平均一次粒子径21nm、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)3130ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)7534ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は1440cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は1380cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は1440cpsであった。
【0063】
(実施例11)
酸性シリカゾル(3)を用いて、実施例1と同様の手法で反応及び溶媒置換を行なう事で、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH4.4、粘度(20℃)4.8mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径24nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量1.0個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2663ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5297ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2600cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2550cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2500cpsであった。
【0064】
(実施例12)
実施例4において、フェニルトリメトキシシラン19.6gの代わりにN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン25.2gを添加した以外は、実施例4と同様の手法で反応及び溶媒置換を行なう事で、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH4.7、粘度(20℃)5mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径20nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量2.5個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2780ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5560ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2450cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2470cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2490cpsであった。
(実施例13)
酸性シリカゾル(4)1000gを撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積2Lのガラス製反応器に仕込み、反応器内のゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込んで、液面徐々に上昇させながらメタノールによる水の置換を行った。留出液の体積が9Lになったところで置換を終了して、メタノール分散シリカゾルを1100g得た。得られたメタノール分散シリカゾルは、SiO2濃度20質量%、水分1.0質量%、粘度2mPa・sであった。
得られたメタノールゾルの1000gを2Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、フェニルトリメトキシシラン24.6gを添加した後、液温を60℃で1時間保持した。次に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン1.8gを添加し、液温60℃で1時間保持した。その後、フェニルトリメトキシシラン22.7g、メチルエチルケトン150gを添加し、液温60℃で5時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度450~110Torr、浴温度85~125℃で溶媒を蒸発留去させながらDMACを供給し、ゾルの分散媒をDMACに置換することでDMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.7質量%、pH4.4、粘度(20℃)7.8mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径20nm、平均一次粒子径9.5nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量2.5個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2230ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5072ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2200cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2400cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2200cpsであった。
(実施例14)
酸性シリカゾル(5)500g、及び純水500gを撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積2Lのガラス製反応器に仕込み、反応器内のゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込んで、液面徐々に上昇させながらメタノールによる水の置換を行った。留出液の体積が9Lになったところで置換を終了して、メタノール分散シリカゾルを1100g得た。得られたメタノール分散シリカゾルは、SiO2濃度12質量%、水分1.0質量%であった。
得られたメタノールゾルの1000gを2Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、フェニルトリメトキシシラン23.1gを添加した後、液温を60℃で1時間保持した。次に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン0.8gを添加し、液温60℃で1時間保持した。その後、フェニルトリメトキシシラン21.0g、メチルエチルケトン150gを添加し、液温60℃で5時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度450~110Torr、浴温度85~125℃で溶媒を蒸発留去させながらDMACを供給し、ゾルの分散媒をDMACに置換することでDMAC分散シリカゾル(シリカ濃度20.8質量%、pH3.6、粘度(20℃)46mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径60nm、平均一次粒子径5.3nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量2.5個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)7286ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)21028ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2180cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2180cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2200cpsであった。
(実施例15)
実施例4記載のメタノール分散シリカゾル(SiO2濃度20.5質量%、水分1.6質量%、粘度2mPa・s)1000gを2Lナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーでゾルを攪拌しながら、ヘキサメチルジシロキサン(信越化学社製、商品名KF-96L)19.6gを添加し、液温60℃で3時間保持した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧度450~110Torr、浴温度85~125℃で溶媒を蒸発留去させながらDMACを供給し、ゾルの分散媒をDMACに置換することでDMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.3質量%、pH3.8、粘度(20℃)4.0mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径27nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量2.0個/nm2、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5619ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2300cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2160cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2160cpsであった。
(実施例16)
実施例4において、ゾルの分散媒をDMACの代わりにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)に変更した以外は、実施例4と同様の手法で反応及び溶媒置換を行なう事で、NMP分散シリカゾル(シリカ濃度30.0質量%、pH4.8、粘度(20℃)10mPa・s、水分0.1質量%、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子の表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量2.5個/nm2、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)5797ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は50℃、4週間後に元のポリアミドイミド樹脂ワニスと同様に透明であった。初期粘度は2800cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2720cpsであり、50℃で4週間保管して粘度は2660cpsであった。
【0065】
(比較例1)
実施例7において、酸性シリカゾル(1)の代わりに酸性シリカゾル(4)を使用した以外は、実施例7と同様に行い、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度20.5質量%、pH4.5、粘度(20℃)3mPa・s、水分0.9質量%、 動的光散乱法粒子径18nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)760ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2300ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は当初から濁っており、シリカの凝集が生じていた。初期粘度は2000cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2400cpsであり、外観に濁りが生じたままであった。
【0066】
(比較例2)
実施例4において、酸性シリカゾル(1)の代わりに酸性シリカゾル(4)を使用した以外は、実施例4と同様に行い、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH4.2、粘度(20℃)4.3mPa・s、水分0.1質量%、動的光散乱法粒子径16nm、平均一次粒子径11nm、シリカ粒子表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量2.5個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)380ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2300ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は当初は透明であったが、50℃2週間で濁りが生じた。
初期粘度は2240cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は3340cpsであり、外観に濁りが生じた。50℃で4週間保管して粘度は3620cpsであり、外観に濁りが生じたままであった。
【0067】
(比較例3)
実施例10において、酸性シリカゾル(2)の代わりに酸性シリカゾル(7)を使用した以外は、実施例10と同様に行い、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度20.5質量%、pH4.0、粘度(20℃)3.8mPa・s、水分0.4質量%、動的光散乱法粒子径14nm、平均一次粒子径21nm、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)450ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2570ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は当初から濁っており、シリカの凝集が生じていた。初期粘度は1800cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2100cpsであり、外観に濁りが生じたままであった。
【0068】
(比較例4)
実施例9において、酸性シリカゾル(2)の代わりに酸性シリカゾル(7)を使用した以外は、実施例9と同様に行い、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度30.5質量%、pH8.6、粘度(20℃)9.8mPa・s、水分0.3質量%、 動的光散乱法粒子径20nm、平均一次粒子径21nm、シリカ粒子表面単位面積当たりのシラン化合物の結合量1.0個/nm2、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)300ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2495ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は当初から濁っており、シリカの凝集が生じていた。初期粘度は2700cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は3200cpsであり、外観に濁りが生じたままであった。
【0069】
(比較例5)
実施例10において、酸性シリカゾル(2)の代わりに酸性シリカゾル(8)を使用した以外は、実施例10と同様に行い、DMAC分散シリカゾル(シリカ濃度20.5質量%、pH4.3、粘度(20℃)2mPa・s、水分0.1質量%、 動的光散乱法粒子径90nm、平均一次粒子径45nm、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al2O3/SiO2)460ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(Al2O3/SiO2)2500ppm)を得た。
得られたゾルを使用し、実施例1と同様の手法でシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニス(樹脂/SiO2=85/15)を得た。得られたワニスの外観は当初は透明であったが、50℃2週間で濁りが生じた。
初期粘度は1500cpsであり、このワニスを50℃で2週間保管して粘度は2240cpsであり、外観に濁りが生じた。50℃で4週間保管して粘度は2640cpsであり、外観に濁りが生じたままであった。
【0070】
(シリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニスの透明性試験)
ガラス製シャーレにシリカ配合ポリアミドイミドワニスを高さ3mmになるように仕込んだ。図を印刷した紙の上に高さ10mmのスペーサーを2個離して置き、その上に上記ワニス入りシャーレを置いて、上方から観察した際の図中の文字の識別可否によって、透明性を評価した。
【0071】
シリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニスの透明性が高ければ文字を識別できる。実施例4、8のシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニスは、リファレンスのポリアミドイミド樹脂ワニスと同等に鮮明に文字を識別できた。一方で、比較例1、4のシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニスは濁っていて文字を識別できなかった。
図1~
図5にその結果を示す写真を添付した。
図1は実施例4のシリカ配合樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真、
図2は実施例8のシリカ配合樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真、
図3は比較例1のシリカ配合樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真、
図4は比較例4のシリカ配合樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真、
図5はリファレンスとしてシリカを配合しない樹脂ワニスの透明性の評価試験を示す写真をそれぞれ添付した。
【0072】
(シリカ配合ポリアミドイミド樹脂硬化膜の透明性試験)
アプリケーターを用い、ガラス基板上にシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニスの塗膜を作成した。それを250℃の乾燥機中で45分乾燥し、シリカ配合ポリアミドイミド樹脂の硬化膜(硬化膜厚35μm)を得た。図を印刷した紙の上に高さ10mmのスペーサーを2個離して置き、その上に上記硬化膜付きガラス基板置いて、上方から観察した際の図中の文字の識別可否によって、透明性を評価した。
【0073】
シリカ配合ポリアミドイミド樹脂硬化膜の透明性が高ければ文字を識別できる。実施例4、8のシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニスから得られた硬化膜は、リファレンスのポリアミドイミド樹脂ワニスから得られた硬化膜と同等に鮮明に文字を識別できた。一方で、比較例1、4のシリカ配合ポリアミドイミド樹脂ワニスから得られた硬化膜は濁っており文字を識別できなかった。
図6は実施例4のシリカ配合樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真、
図7は実施例8のシリカ配合樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真、
図8は比較例1のシリカ配合樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真、
図9は比較例4のシリカ配合樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真、
図10はリファレンスとしてシリカを配合しない樹脂ワニスの硬化物の透明性の評価試験を示す写真をそれぞれ添付した。
【0074】
(絶縁性樹脂組成物の作成)
(実施例E1)
実施例3で得られたDMAC分散シリカゾル1.0kgを10Lポリ容器に入れ、メカニカルスターラーで攪拌しながら、ポリアミドイミド絶縁樹脂ワニス(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名HPC-5012-32、樹脂固形分32質量%、NMP溶媒)を6.5kg添加し、室温で2時間攪拌することで、シリカゾル配合ポリアミドイミド樹脂ワニスを得た(樹脂/SiO2=85/15)。
【0075】
(実施例E2)
実施例8で得られたDMAC分散シリカゾル1.0kgを10Lポリ容器に入れ、メカニカルスターラーで攪拌しながら、ポリアミドイミド絶縁樹脂ワニス(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名HPC-5012-32、樹脂固形分32質量%、NMP溶媒)を6.5kg添加し、室温で2時間攪拌することで、シリカゾル配合ポリアミドイミド樹脂ワニスを得た(樹脂/SiO2=85/15)。
【0076】
(実施例E3)
実施例3で得られたDMAC分散シリカゾル0.5kg、DMAC 0.4kgを10Lポリ容器に入れ、メカニカルスターラーで攪拌しながら、ポリアミドイミド絶縁樹脂ワニスを6.1kg添加し、室温で2時間攪拌することで、シリカゾル配合ポリアミドイミド樹脂ワニスを得た(樹脂/SiO2=93/7)。
(実施例E4)
実施例14で得られたDMAC分散シリカゾル1.0kgを10Lポリ容器に入れ、メカニカルスターラーで攪拌しながら、ポリアミドイミド絶縁樹脂ワニスを6.0kg添加し、室温で2時間攪拌することで、シリカゾル配合ポリアミドイミド樹脂ワニスを得た(樹脂/SiO2=90/10)。
【0077】
(絶縁被覆導線の作成と評価)
銅導体(0.4mm径)にポリアミドイミド樹脂ワニス(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名HPC-5012-32)を塗布・焼き付けし、厚み4μmの絶縁層を形成した後、上記実施例E1~E4で得られたシリカゾル配合ポリアミドイミド樹脂ワニスの塗布・焼き付けを行い、最終的に厚さ23μmの絶縁被覆層を持つ絶縁導線を作成した。
また、参考例として、銅導体(0.4mm径)にポリアミドイミド絶縁樹脂ワニス(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名HPC-5012-32)の塗布・焼き付けを行い、厚さ23μmの絶縁層を持つ絶縁導線を作成した。
上記で得られた絶縁導線の可撓性、絶縁破壊電圧、絶縁寿命(V-t試験)の評価を実施した。評価方法、条件を下記に示す。
【0078】
(可撓性)
JIS C 3216-3 5項に準拠し、皮膜に亀裂が発生しない合格巻きつけ倍径を調査した(無伸長及び20%伸長後のエナメル線で実施)。
可撓性試験(無伸長)は、伸長していない絶縁導線を絶縁導線の導体径の1~10倍の直径を有する巻き付け棒へ巻き付け、光学顕微鏡を用いて絶縁皮膜に亀裂の発生が見られない最小巻き付け倍径を測定した。
可撓性試験(20%伸長)は、絶縁導線を20%伸長した。その後上記(無伸長)と同様の試験を行った。
可撓性試験結果は、亀裂を発生しない最小巻き付け倍径が自己径(1d)、亀裂を発生しない最小巻き付け倍径が自己径の2倍(2d)、亀裂を発生しない最小巻き付け倍径が自己径の3倍(3d)となり、最小巻き付け倍径dが小さいほど可撓性に優れているといえる。
【0079】
(絶縁破壊電圧)
JIS C 3216-5 4項に準拠し、50mmの距離に保った2個より試験片の2線間に50Hzの交流電圧を印加し、絶縁破壊した時の電圧を測定した。昇圧電圧は500V/s、絶縁破壊検出電流は5mA。
(V-t試験)
JIS C 3216-5 4項に準拠し、2個より試験片を作成し、温度155℃の環境下に置いて、50mmの距離に保った2線間に下記電圧を印加し、破壊するまでの時間を計測した。
・周波数:10kHz矩形波
・パルス幅:5μs
・両極性
・パルスの立上り時間:80ns
【0080】
【0081】
参考例は、ポリアミドイミド絶縁樹脂ワニスのみの組成である。
実施例1で得られた絶縁導線は、シリカ無配合のポリアミドイミドで被覆した導線に比べて、機械特性を維持しつつ、絶縁寿命を大幅に増加させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明はシリカ粒子をポリイミドやポリアミド系の極性樹脂と相溶性が良く混合するための窒素含有溶媒に分散させたシリカゾルを得る事ができる。それらシリカゾルと樹脂を配合した樹脂組成物であり、絶縁性樹脂組成物とした場合には高い絶縁抵抗を有する絶縁被覆導線を提供する。
【要約】
【課題】 窒素含有溶媒に分散したシリカゾルと、窒素原子を含むポリマーを配合したシリカ配合樹脂組成物、特に絶縁性樹脂組成物を提供。
【解決手段】
アルミニウム原子を含有する平均一次粒子径5~100nmのシリカ粒子が窒素含有溶媒に分散したシリカゾルであって、アルミニウム原子がシリカ粒子表面にAl
2O
3に換算して800~10000ppm/SiO
2の割合で結合した上記シリカゾル。上記シリカ粒子はシラン化合物又はその加水分解物が結合したものである。窒素含有溶媒がアミド系溶媒である。窒素含有溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、又はN-エチルピロリドンである。上記シリカゾルと窒素含有ポリマーとを含む絶縁性樹脂組成物。窒素含有ポリマーが、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、又はポリエステルイミドである。上記絶縁性樹脂組成物により絶縁被覆した絶縁性被覆導線。
【選択図】
図1