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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】アーチ状構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/32 20060101AFI20220622BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
E04B1/32 101C
E04H9/16 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017243411
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019108760
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220893
【氏名又は名称】東光鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】永石 充
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悟史
(72)【発明者】
【氏名】中田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 康昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康仁
(72)【発明者】
【氏名】畠山 祥平
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-135221(JP,A)
【文献】特開2001-329609(JP,A)
【文献】特開平11-117636(JP,A)
【文献】実開平05-032545(JP,U)
【文献】特開平05-044227(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0092799(KR,A)
【文献】実開昭56-036815(JP,U)
【文献】特開2003-306995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/32
E04H 9/16
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波付け方向と直交する方向に弧状に折り曲げられた波形鋼板からなる複数枚の壁体を、アーチ状に接合することにより構築されるアーチ状構造物において、
一方の壁体の端部には、段差が施され、前記一方の壁体に接合される他方の壁体の端部は、前記段差が施された前記一方の壁体の端部上に重ね合わされ、かくして、前記一方の壁体の端部と前記他方の壁体の端部との接合部の外周側には、段差が形成されず、
前記段差が施された前記一方の壁体の端部の谷部の幅は、先広がりテーパー状に形成されているとともに、前記段差が施された前記一方の壁体の端部の山部の幅は、先狭まりテーパー状に形成されており、
前記他方の壁体の端部の谷部の幅と山部の幅とは、それぞれ一定に形成されていることを特徴とするアーチ状構造物。
【請求項2】
前記壁体は、ボルト接合されていることを特徴とする、請求項1に記載のアーチ状構造物。
【請求項3】
前記波形鋼板は、大型デッキプレートからなることを特徴とする、請求項1または2に記載のアーチ状構造物。
【請求項4】
前記壁体は、一対の側部壁と、前記側部壁間を連結する頂部壁とからなり、前記段差は、前記側部壁の端部としての上端部に施され、前記側部壁の上端部上に前記頂部壁の端部が重ね合わされていることを特徴とする、請求項1からの何れか1つに記載のアーチ状構造物。
【請求項5】
前記アーチ状構造物は、スノーシェルターであることを特徴とする、請求項1からの何れか1つに記載のアーチ状構造物。
【請求項6】
前記アーチ状構造物は、骨組により補強されていることを特徴とする、請求項に記載のアーチ状構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アーチ状構造物、特に、波形鋼板により構築される、高強度を有し、曲線状に設置することが容易に行え、しかも、外観に優れたアーチ状構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
波形鋼板により構築されるアーチ状構造物の一例が特許文献1に開示されている。以下の、このアーチ状構造物を従来アーチ状構造物といい、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図10は、従来アーチ状構造物を示す部分斜視図、図11は、従来アーチ状構造物を示す部分正面図である。
【0004】
図10および図11に示すように、従来アーチ状構造物は、それぞれ台座12を介して基礎13上に固定された一対の側部壁11と、一対の側部壁11間を連結する頂部壁14とから構成されている。
【0005】
側部壁11と頂部壁14とは、大型デッキプレートからなる波形鋼板を弧状に曲げ加工したものからなり、側部壁11の端部上に頂部壁14の端部を乗せ、これらをボルト15により結合することによって、アーチ状構造物が構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-135221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来アーチ状構造物は、高強度を有していることから、これを、例えば、豪雪地帯にスノーシェルターとして設置した場合、その機能を十分に発揮することができるが、さらなる優れた機能を備えたアーチ状構造物の開発が要望されている。
【0008】
従って、この発明の目的は、高強度を有し、曲線状に設置することが容易に行え、しかも、外観に優れたアーチ状構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明は、波付け方向と直交する方向に弧状に折り曲げられた波形鋼板からなる複数枚の壁体を、アーチ状に接合することにより構築されるアーチ状構造物において、一方の壁体の端部には、段差が施され、前記一方の壁体に接合される他方の壁体の端部は、前記段差が施された前記一方の壁体の端部上に重ね合わされ、かくして、前記一方の壁体の端部と前記他方の壁体の端部との接合部の外周側には、段差が形成されず、前記段差が施された前記一方の壁体の端部の谷部の幅は、先広がりテーパー状に形成されているとともに、前記段差が施された前記一方の壁体の端部の山部の幅は、先狭まりテーパー状に形成されており、前記他方の壁体の端部の谷部の幅と山部の幅とは、それぞれ一定に形成されていることに特徴を有するものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記壁体は、ボルト接合されていることに特徴を有するものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記波形鋼板は、大型デッキプレートからなることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1からの何れか1つに記載の発明において、前記壁体は、一対の側部壁と、前記側部壁間を連結する頂部壁とからなり、前記段差絞り加工は、前記側部壁の端部としての上端部に施され、前記側部壁の上端部上に前記頂部壁の端部が重ね合わされていることに特徴を有するものである。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1からの何れか1つに記載の発明において、前記アーチ状構造物は、スノーシェルターであることに特徴を有するものである。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記アーチ状構造物は、骨組により補強されていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、波付け方向と直交する方向に弧状に折り曲げられた波形鋼板からなる複数枚の壁体を、アーチ状に接合することにより構築されるアーチ状構造物において、一方の壁体の端部に段差絞り加工を施し、一方の壁体に接合される他方の壁体の端部を、段差絞り加工が施された一方の壁体の端部上に重ね合わることによって、壁体の接合部に段差が形成されないので、外観が優れる。
【0018】
また、この発明によれば、段差絞り加工が施された一方の壁体の端部の谷部の幅を、先広がりテーパー状に形成することによって、壁体の接合部の可動域が広がるので、アーチ状構造物を曲線状に構築することが容易に行える。
【0019】
また、この発明によれば、壁体を、一対の側部壁と、側部壁間を連結する頂部壁とにより構成し、段差絞り加工を側部壁の上端部に施し、側部壁の上端部上に頂部壁の端部を重ね合わすことによって、側部壁と頂部壁との接合部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0020】
また、この発明によれば、壁体を、一対の側部壁と、側部壁間を連結する頂部壁とにより構成し、段差絞り加工を側部壁の上端部に施し、側部壁の上端部上に頂部壁の端部を重ね合わすことによって、頂部壁の端部が、段差絞り加工を施すことによって形成された側部壁の段部に当接する結果、この段部が頂部壁のストッパーの作用をするので、アーチ状構造物に内側に向かって作用する力に対するアーチ状構造物の強度が上昇する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明のアーチ状構造物を示す正面図である。
図2図1のA部拡大図である。
図3図1のB部拡大図である。
図4】この発明のアーチ状構造物における壁体の接合部を示す部分斜視図である。
図5図1の部分拡大図である。
図6図5のA矢視図である。
図7】この発明のアーチ状構造物における壁体の別の例を示す部分斜視図である。
図8図7の壁体を別の方向から見た部分斜視図である。
図9図7の壁体を使用した場合の壁体の接合部を示す部分斜視図である。
図10】従来アーチ状構造物を示す部分斜視図である。
図11】従来アーチ状構造物を示す部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明のアーチ状構造物の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
以下に説明する例は、この発明のアーチ状構造物をスノーシェルターに適用した場合であるが、これ以外の構造物であってもよいことは勿論である。
【0024】
図1は、この発明のアーチ状構造物を示す正面図、図2は、図1のA部拡大図、図3は、図1のB部拡大図、図4は、この発明のアーチ状構造物における壁体の接合部を示す部分斜視図、図5は、図1の部分拡大図、図6は、図5のA矢視図である。
【0025】
図1から図6において、1は、壁体としての一対の側部壁、2は、側部壁1間を連結する壁体としての頂部壁、3は、側部壁1と頂部壁2とを補強する骨組である。
【0026】
側部壁1と頂部壁2とは、波付け方向と直交する方向に弧状に折り曲げられた大型デッキプレートからなる波形鋼板からなり、それぞれの波形寸法は、同一である。側部壁1と頂部壁2とは、ボルト4(図2図3参照)によりアーチ状に接合されている。骨組3は、H形鋼等の形鋼からなり、基礎5上に台座6を介して固定されている。側部壁1と頂部壁2とは、形鋼等の取付け部材7によって骨組3の外側に取り付けられている。
【0027】
側部壁1の上端部には、段差絞り加工が施され、これによって段部8が形成されている(図4参照)。頂部壁2の端部は、側部壁1の上端部上に重ね合わされ、頂部壁2の端部は、側部壁2の段差絞り加工が施されることによって形成された段部8に当接する。この結果、段部8が頂部壁2のストッパーの作用をするので、アーチ状構造物に内側に向かって作用する力に対するアーチ状構造物の強度が上昇する。
【0028】
また、段差絞り加工を側部壁1の上端部に施し、側部壁1の上端部上に頂部壁2の端部を重ね合わすことによって、側部壁1と頂部壁2との接合部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0029】
また、段差絞り加工を側部壁1の上端部に施し、側部壁1の上端部上に頂部壁2の端部を重ね合わすことによって、側部壁1と頂部壁2との接合部に段差が形成されないので、外観が優れる。
【0030】
次に、この発明のアーチ状構造物における壁体の別の例について説明する。
【0031】
図7は、この発明のアーチ状構造物における壁体の別の例を示す部分斜視図、図8は、図7の壁体を別の方向から見た部分斜視図、図9は、図7の壁体を使用した場合の壁体の接合部を示す部分斜視図である。
【0032】
図7から図9に示すように、この別の壁体は、段差絞り加工が施された壁体の端部の谷部の幅を先広がりテーパー状に形成したものである。
【0033】
この別の壁体を、上述したスノーシェルターに適用した場合で説明すると、側部壁1の端部の谷部の幅は、先広がりテーパー状に形成されている。すなわち、図8に示すように、側部壁1の谷部の幅をB1とすると、側部壁1の端部の谷部の幅B2は、テーパー状に広がっている。すなわち、B1<B2になっている。これにより、図8に示すように、側部壁1の山部の幅をT1とすると、側部壁1の端部の山部の幅T2は、テーパー状に狭まっている。すなわち、T2<T1になっている。
【0034】
これによって、図9に示すように、側部壁1の上端部上に頂部壁2の端部を重ね合せた場合、図7に示すように、側部壁1と頂部壁2との接合部の可動域が広がるので、アーチ状構造物を曲線状に構築することが容易に行える。図7に、接合部の可動域をLで示す。
【0035】
以上の例では、一箇所の接合部の谷部および山部のボルト4の本数がそれぞれ2本になっているが、ボルト4の本数を1本にすることによって、接合部の可動域がより広くなる。
【0036】
以上、説明したように、この発明によれば、波付け方向と直交する方向に弧状に折り曲げられた波形鋼板からなる側部壁1および頂部壁2を、アーチ状に接合することにより構築されるアーチ状構造物において、側部壁1の上端部に段差絞り加工を施し、頂部壁2の端部を、側部壁1の上端部上に重ね合わせることによって、側部壁1と頂部壁2との接合部に段差が形成されないので、外観が優れる。
【0037】
また、この発明によれば、段差絞り加工が施された側部壁1の上端部の谷部の幅を、先広がりテーパー状に形成することによって、側部壁1と頂部壁2との接合部の可動域が広がるので、アーチ状構造物を曲線状に構築することが容易に行える。
【0038】
また、この発明によれば、側部壁1の上端部に段差絞り加工を施し、頂部壁2の端部を、側部壁1の上端部上に重ね合わせることによって、側部壁1と頂部壁2との接合部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0039】
また、この発明によれば、側部壁1の上端部に段差絞り加工を施し、頂部壁2の端部を、側部壁1の上端部上に重ね合わせることによって、頂部壁2の端部が側部壁1の段差絞り加工が施されることによって形成された段部8に当接する結果、この段部8が頂部壁2のストッパーの作用をするので、アーチ状構造物に内側に向かって作用する力に対するアーチ状構造物の強度が上昇する。
【符号の説明】
【0040】
1:側部壁
2:頂部壁
3:骨組
4:ボルト
5:基礎
6:台座
7:取付け部材
8:段部
11:側部壁
12:台座
13:基礎
14:頂部壁
15:ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11