IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧 ▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧 ▶ スズキ株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 帝人株式会社の特許一覧 ▶ 東レ株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人名古屋大学の特許一覧 ▶ 共和工業株式会社の特許一覧 ▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

特許7093073熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置
<>
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図1
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図2
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図3
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図4
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図5
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図6
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図7
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図8
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図9
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図10
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図11
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図12
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図13
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図14
  • 特許-熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20220622BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20220622BHJP
   B29C 70/52 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C48/305
B29C70/52
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018065468
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019171796
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的新構造材料等研究開発のうち熱可塑性CFRPの開発及び構造設計・応用加工技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】312016780
【氏名又は名称】共和工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正俊
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-263622(JP,A)
【文献】特表2006-502888(JP,A)
【文献】特表2009-544485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29C 48/30
B29C 70/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂に強化繊維が分散した熱可塑性樹脂複合材料の製造方法であって、
熱可塑性樹脂と強化繊維とを加熱下に混錬し、この混練物を所定形状の開口を介して押し出して前記開口の形状に倣った断面形状を有する予備成形体を成形する予備成形工程と、
前記予備成形体を金型内で型締めし、所定形状の前記熱可塑性樹脂複合材料を成形するプレス成形工程と、を有し、
前記予備成形体の型締め方向に対応する前記開口の第一幅は、この第一幅に交差する方向の前記開口の第二幅に渡って不均一になっており、
前記開口の形状は、前記第二幅の延びる方向の少なくとも一方の端部が、前記第二幅の延びる方向の中央部よりも前記第一幅が大きく、前記中央部側から前記第一幅が大きい部位側に向かって前記第一幅が大きくなるテーパ状に形成されており、
前記開口は、前記中央部として矩形部を有していることを特徴とする熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱可塑性樹脂複合材料の製造方法において、
前記開口の形状は、前記第二幅の延びる方向の少なくとも一方の端部での前記第一幅が最も大きいことを特徴とする熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂と強化繊維とを加熱下に混練して押し出す押出機と、
前記押出機から押し出された押出物を型締めして熱可塑性樹脂複合材料を成形するプレス機と、を備える熱可塑性樹脂複合材料の製造装置であって、
前記押出物が押し出される前記押出機のダイの開口は、前記押出物の型締め方向に対応する前記開口の第一幅が、この第一幅に交差する方向の前記開口の第二幅に渡って不均一になっており、
前記開口の形状は、前記第二幅の延びる方向の少なくとも一方の端部が、前記第二幅の延びる方向の中央部よりも前記第一幅が大きく、前記中央部側から前記第一幅が大きい部位側に向かって前記第一幅が大きくなるテーパ状に形成されており、
前記開口は、前記中央部として矩形部を有していることを特徴とする熱可塑性樹脂複合材料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂と強化繊維とを加熱下に混練して押し出す押出機と、押出機からの押出物(成形材料)を型締めして成形するプレス機と、を備える熱可塑性樹脂複合材料の製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような熱可塑性樹脂複合材料の製造装置では、押出機に供給されて溶融した熱可塑性樹脂と強化繊維とが混練される。押出機は、この混練物を所定開口幅のダイから平板状に押し出す。そして、この押出物(成形材料)がプレス機の金型内に供給されて型締めされることで所定形状の熱可塑性樹脂複合材料(成形品)が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-327214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の製造装置(例えば、特許文献1参照)を使用した熱可塑性樹脂複合材料の製造方法では、比較的高粘度となる成形材料の金型内における流動性の向上を目的に、成形材料の温度を高く設定したい要請がある。しかし、過加熱による熱可塑性樹脂の劣化を考慮すると、成形材料の加熱温度は低く制限される。また、脱型時における成形品を十分に固化させる必要があるために、金型温度も低く制限される。そのため、従来の製造方法では、金型内での成形材料の流動距離を増加させることが極めて困難になっている。
また、従来の製造方法においては、金型内で成形材料に生じる圧力分布及び温度分布に起因して脱型後の成形品に不均一な収縮を発生させる。そのため、得られた成形品には反りなどの変形が比較的大きい問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、熱可塑性樹脂に対する過加熱を防止しつつ金型内での成形材料の流動性を向上させることができるとともに、成形品たる熱可塑性樹脂複合材料の反りなどの変形量を低減することができる熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明の熱可塑性樹脂複合材料の製造方法は、熱可塑性樹脂に強化繊維が分散した熱可塑性樹脂複合材料の製造方法であって、熱可塑性樹脂と強化繊維とを加熱下に混錬し、この混練物を所定形状の開口を介して押し出して前記開口の形状に倣った断面形状を有する予備成形体を成形する予備成形工程と、前記予備成形体を金型内で型締めし、所定形状の前記熱可塑性樹脂複合材料を成形するプレス成形工程と、を有し、
前記予備成形体の型締め方向に対応する前記開口の第一幅は、この第一幅に交差する方向の前記開口の第二幅に渡って不均一になっており、前記開口の形状は、前記第二幅の延びる方向の少なくとも一方の端部が、前記第二幅の延びる方向の中央部よりも前記第一幅が大きく、前記中央部側から前記第一幅が大きい部位側に向かって前記第一幅が大きくなるテーパ状に形成されており、前記開口は、前記中央部として矩形部を有していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の熱可塑性樹脂複合材料の製造装置は、熱可塑性樹脂と強化繊維とを加熱下に混練して押し出す押出機と、前記押出機から押し出された押出物を型締めして熱可塑性樹脂複合材料を成形するプレス機と、を備える熱可塑性樹脂複合材料の製造装置であって、前記押出物が押し出される前記押出機のダイの開口は、前記押出物の型締め方向に対応する前記開口の第一幅が、この第一幅に交差する方向の前記開口の第二幅に渡って不均一におり、前記開口の形状は、前記第二幅の延びる方向の少なくとも一方の端部が、前記第二幅の延びる方向の中央部よりも前記第一幅が大きく、前記中央部側から前記第一幅が大きい部位側に向かって前記第一幅が大きくなるテーパ状に形成されており、前記開口は、前記中央部として矩形部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱可塑性樹脂に対する過加熱を防止しつつ、金型内での熱可塑性樹脂の流動性を向上させ、得られた熱可塑性樹脂複合材料の変形量を低減する熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂複合材料の製造装置の構成説明図である。
図2】熱可塑性樹脂複合材料の製造装置を構成する押出機の部分断面図である。
図3】押出機のダイの正面図(端面図)であり、押出物の断面を含む図である。
図4】金型内での成形開始から脱型後、室温に冷却されるまでの成形材料の温度と、成形材料の比容積との関係を示すグラフである。
図5】型締めによる成形材料の流動パターンを説明するための概略図である。(a)は、本発明の実施例の流動パターンを示し、(b)は、比較例の流動パターンを示している。
図6】(a)及び(b)は、変形例に係る予備成形体の構成説明図である。
図7】本発明の熱可塑性樹脂複合材料の製造方法が奏する作用効果の検証に使用した成形材料の斜視図である。(a)は実施例で使用した成形材料の斜視図、(b)は比較例で使用した成形材料の斜視図である。
図8】(a)は実施例で使用した予備成形体(成形材料)の平面図、(b)は比較例で使用した予備成形体(成形材料)の平面図である。
図9】実施例の予備成形体と比較例の予備成形体とにおける、型締め開始から1.60[sec]経過後の流動距離の比較図である。
図10】実施例の予備成形体と比較例の予備成形体とにおける、型締め開始から実施例で10.70[sec]経過後、比較例で10.80[sec]経過後の流動距離の比較図である。
図11】実施例の予備成形体と比較例の予備成形体とにおける、型締め開始から12.00[sec]経過後の流動距離の比較図である。
図12】実施例の予備成形体と比較例の予備成形体とにおける、型締め開始から実施例で16.01[sec]経過後、比較例で16.00[sec]経過後の流動距離の比較図である。
図13】(a)は、型締め充填後の実施例の予備成形体における温度分布を示す平面図、(b)は、型締め充填後の比較例の予備成形体における温度分布を示す平面図である。
図14】(a)は、型締め充填後の実施例の予備成形体における圧力分布を示す平面図、(b)は、型締め充填後の比較例の予備成形体における圧力分布を示す平面図である。
図15】(a)は、脱型後における実施例の成形品(熱可塑性樹脂複合材料)の反り量分布を示す平面図、(b)は、脱型後における比較例の成形品(熱可塑性樹脂複合材料)の反り量分布を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂複合材料の製造装置及びこの製造装置を使用して行われる熱可塑性樹脂複合材料の製造方法について詳細に説明する。以下では、まず熱可塑性樹脂複合材料について説明した後に、製造装置と製造方法とについて説明する。
【0011】
≪熱可塑性樹脂複合材料≫
本実施形態での熱可塑性樹脂複合材料は、熱可塑性樹脂と、強化繊維とを主に含んで構成されている。
熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶性樹脂;ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテルなどの非結晶樹脂が挙げられるがこれらに限定されるものではない。中でもポリアミド樹脂が好ましい。
【0012】
強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、金属繊維(例:ステンレス繊維、アルミニウム繊維、銅繊維など)などの無機系のものや、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリパラフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ジアミノジフェニルエーテルとテレフタル酸又はイソフタル酸からの縮合物から得られる繊維等の全芳香族ポリアミド繊維、あるいは、全芳香族液晶ポリエステル繊維などの有機系のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。中でも炭素繊維が好ましい。この炭素繊維としては、PAN系、ピッチ系のいずれでも構わない。
このような強化繊維には、熱可塑性樹脂との間の接着性を向上させるカップリング剤などによる表面処理を行うこともできる。また、強化繊維には、ポリマーなどからなる集束剤を含めることもできる。
【0013】
また、熱可塑性樹脂複合材料には、さらに各種添加剤を含めることもできる。
添加剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0014】
熱可塑性樹脂複合材料における熱可塑性樹脂に対する強化繊維の含有率は、熱可塑性樹脂複合材料の用途に応じて適宜に設定することができる。例えば、車両用構成部材として熱可塑性樹脂複合材料を利用する場合には、炭素繊維の体積分率(Vf)で20%以上、60%以下が好ましい。この炭素繊維の体積分率(Vf)は、JIS K 7035(2014年)に規定される繊維体積含有率(Vf)と同義である。
【0015】
このような熱可塑性樹脂複合材料は、後記するように、前記の熱可塑性樹脂、強化繊維などを所定量で含む溶融混練物がプレス成形されて得られる。
本実施形態での熱可塑性樹脂複合材料は、前記の車両構成部材として使用されるものを想定している。このような車両構成部材としては、例えば、パネル部材や、サイドシル、センタピラー、フロアクロスメンバなどの主要骨格部材が挙げられる。
しかしながら、このような熱可塑性樹脂複合材料は、その用途が前記の車両構成部材に限定されるものではなく、例えば、船舶、航空機のような車両以外の移動体の構成部材のほか、例えば建築物、各種機器装置などの構成部材にも適用することができる。
【0016】
≪熱可塑性樹脂複合材料の製造装置≫
次に、本実施形態に係る熱可塑性樹脂複合材料の製造装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る熱可塑性樹脂複合材料の製造装置10の構成説明図である。図2は、図1の製造装置10を構成する押出機1の部分断面図である。なお、図2中、ダイ15は仮想線(点線)で示している。
【0017】
図1に示すように、製造装置10は、押出機1と、プレス機2とを主に備えて構成されている。
押出機1は、二軸スクリュ押出機であり、複数のシリンダブロック19が連なって形成されるシリンダ11と、このシリンダ11の内側に配置される後記のスクリュ12(図2参照)とを備えている。
【0018】
シリンダ11の一端には、シリンダ11内に熱可塑性樹脂のペレットを供給するホッパ13が設けられている。
また、シリンダ11の他端には、ダイ15が配置されている。このダイ15については後に詳しく説明する。
【0019】
シリンダ11の長手方向の略中央には、強化繊維3の投入口14が設けられている。なお、本実施形態での投入口14は、繊維束からなるいわゆるロービング状の強化繊維3が供給されるものを想定している。しかし、投入口14は、予め所定長さに切断された強化繊維3が投入されるものであってもよい。
【0020】
また、シリンダ11におけるホッパ13と強化繊維3の投入口14との間には、ガス抜きのベント16が設けられている。
図1中、符号18は、スクリュ12(図2参照)の駆動部である。この駆動部18は、図示しないモータ、変速機などを備えている。
【0021】
図2に示すように、押出機1は、前記したように、シリンダ11の内側にスクリュ12を有している。このスクリュ12は、駆動部18(図1参照)によって軸周りに回転することによって、シリンダ11の内容物を一端側から他端側へと輸送する。つまり、本実施形態での押出機1においては、ホッパ13が配置されるシリンダ11の一端側に上流側が規定され、ダイ15が配置されるシリンダ11の他端側に下流側が規定されている。
【0022】
シリンダ11内には、上流側から下流側に向けて、樹脂フィード部11aと、輸送部11bと、混練部11cと、後輸送部11dと、を有している。そして、これらの樹脂フィード部11a、輸送部11b、混練部11c、及び後輸送部11dには、それぞれに対応してスクリュ12を構成する各スクリュエレメントが配置されている。
【0023】
この押出機1では、ホッパ13から投入されたペレット状の熱可塑性樹脂が、樹脂フィード部11aで加熱されて溶融され、下流側に輸送される。なお、本実施形態での押出機1は、ペレット状の熱可塑性樹脂を、ホッパ13を介して投入するものを想定しているがこれに限定されずに、ホッパ13の位置に予め可塑化した熱可塑性樹脂を投入するための押出機(図示省略)をさらに備える構成とすることもできる。
【0024】
輸送部11bは、樹脂フィード部11aと混練部11cとの間に設けられている。輸送部11bは、投入口14から投入された強化繊維3(図1参照)を、樹脂フィード部11aで生成された溶融熱可塑性樹脂に混入させるとともに、これらを混練部11cに向けて輸送する。
【0025】
混練部11cは、溶融熱可塑性樹脂と強化繊維3(図1参照)とを混練する。この際、強化繊維3は、ロービングの解繊・切断が促進される。切断された強化繊維3は、溶融熱可塑性樹脂に均一に分散される。
【0026】
後輸送部11dは、強化繊維3(図1参照)と溶融熱可塑性樹脂との混練物をダイ15に向けて安定的に押出すように設けられたものである。
そして、この混練物は、図1に示すように、ダイ15から押出物4として押し出される。なお、図1中、符号17は、ダイ15から押し出された押出物4を所定長さに切断するカッタである。
【0027】
図1に示すように、プレス機2は、上型21aと下型21bとからなる金型21と、下型21bを支持するベース22と、下型21bの上方で上型21aを支持するとともに、下型21bに対して上型21aを上下移動させる昇降部23と、を主に備えている。
金型21には、上型21aと下型21bとが上下方向に相互に重ね合わせられた内側にキャビティが形成される。
昇降部23によってベース22上の下型21bに向けて上型21aが所定圧で押圧されて型締めされることで、キャビティ内に配置された成形材料(押出物4)がプレス成形される。
図1中、符号6で示される矢示方向は、押出物4の型締め方向である。
【0028】
また、本実施形態の製造装置10は、これらの押出機1及びプレス機2に加えて、図示しないが、保温炉、押出物4の搬送機構などを備えることもできる。
保温炉としては、カッタ17で所定長さに切断された押出物4を、押出機1の押出口から離れる方向に送り出すコンベヤ(図示省略)と、このコンベヤによって送り出される押出物4を所定温度に保温するヒータ(図示省略)と、を備えるものが挙げられる。
押出物4の搬送機構としては、押出物4を把持してプレス機2の金型21内に配置するマテリアルハンドリングロボット(図示省略)などが挙げられる。
【0029】
次に、押出機1のダイ15について説明する。
図3は、押出物4の断面を含むダイ15の正面図(端面図)である。
図3に示すように、ダイ15は、押出物4が押し出される開口15aを有している。押出物4は、開口15aの形状に倣った断面形状を有している。
後に説明する熱可塑性樹脂複合材料の製造方法では、開口15aの形状に倣った断面形状の押出物4で予備成形体5(図1参照)が形成される。そして、この予備成形体5は、カッタ17(図1参照)にて所定長さに切断されることで、成形材料としてプレス機2(図1参照)に供給される。
【0030】
図3に示すように、ダイ15の開口15aは、押出物4の型締め方向6(図1で符号6を付した方向に同じ)に対応する開口15aの第一幅W1が、この第一幅W1に交差する方向(本実施形態では直交する方向)の開口15aの第二幅W2に渡って不均一になっている。
【0031】
具体的には、ダイ15の開口15aの形状は、第二幅W2の延びる方向(第二幅W2の幅方向)の両端部での第一幅W1が、第二幅W2の幅方向の中央部よりも大きくなっている。さらに具体的には、ダイ15の開口15aの形状は、第二幅W2の幅方向の中央部でこの幅方向に延びる細長い矩形部15bと、第二幅W2の幅方向の両端部のそれぞれで斜辺同士が矩形部15bを挟んで向き合うように配置される、互いに対称形状となる一対の直角台形部15cと、で形成されている。
【0032】
これによりダイ15の開口15aの形状は、第二幅W2の幅方向の端部における第一幅W1、つまり直角台形部15cの高さに相当する部分が最も大きくなっている。また、開口15aには、直角台形部15cの斜辺に対応する部分によって、第二幅W2の幅方向中央から幅方向端部に向かって第一幅W1が大きくなるテーパTaが形成されている。
【0033】
そして、このようなダイ15の開口15aから押し出されて形成される予備成形体5は、前記のように開口15aの形状に倣った断面形状を有する。つまり、予備成形体5は、開口15aの形状に倣って矩形部15bと直角台形部15cとを有する。
【0034】
また、このようなダイ15の開口15aの形状は、第二幅W2の幅方向の両端部のそれぞれにおける第一幅W1が中央部における第一幅W1よりも大きいものに限定されない。つまり、ダイ15の開口15aの形状は、第二幅W2の幅方向の両端部のうち、少なくとも一端部における第一幅W1が中央部における第一幅W1よりも大きいものであればよい。
【0035】
≪熱可塑性樹脂複合材料の製造方法≫
本実施形態の製造方法は、図1に示すように、押出機1からの押出物4(予備成形体5)を直接的にプレス機2にて成形するダイレクトプレス成形法である。
以下に、熱可塑性樹脂複合材料の製造装置10の動作について図1から図3に基づいて説明しながら、本実施形態の熱可塑性樹脂複合材料の製造方法について説明する。
【0036】
この製造方法においては、暖機後の定常運転時の製造装置10において、ホッパ13を介してシリンダ11内に熱可塑性樹脂が投入されるとともに、投入口14から強化繊維3が供給される。
樹脂フィード部11aで加熱溶融された熱可塑性樹脂には、輸送部11bで強化繊維3が混入されて混練部11cに向けて輸送される。溶融熱可塑性樹脂と強化繊維3とは、混練部11cで混練される。これにより溶融熱可塑性樹脂には、強化繊維3が均一に分散された混練物が形成される。
【0037】
この混練物は、後輸送部11dを介してダイ15から押し出される。そして、ダイ15の開口15aから押し出された押出物4は、開口15aの形状に倣った断面形状を有する予備成形体5となる。
なお、ダイ15の開口15aは、特許請求の範囲にいう「所定形状の開口」に相当する。また、混練物をダイ15の開口15aから押し出して、開口15aの形状に倣った断面形状の予備成形体5を形成する工程は、特許請求の範囲にいう「予備成形工程」に相当する。
【0038】
次に、この製造装置10では、カッタ17にて所定長さに切断された押出物4(予備成形体5)が、プレス機2の金型21内に配置されて型締めされる。予備成形体5は、金型21内で流動し、冷却されることで所定形状の成形品(熱可塑性樹脂複合材料)となる。
なお、予備成形体5を金型21で型締めして成形品(熱可塑性樹脂複合材料)を成形する工程は、特許請求の範囲にいう「プレス成形工程」に相当する。
そして、金型21から成形品(熱可塑性樹脂複合材料)を脱型することで、一連の熱可塑性樹脂複合材料の製造方法が終了する。
【0039】
≪作用効果≫
次に、本実施形態に係る熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置10が奏する作用効果について説明する。
図4は、金型21(図1参照)内での成形開始から脱型後、室温に冷却されるまでの成形材料の温度と、成形材料の比容積との関係を示すグラフである。なお、図4中、a´-b´-c´で示される線分は、金型21内での成形開始圧力が比較的低圧である成形材料の温度・比容積の相対変化を示す線分である。a-b-cで示される線分は、金型21内での成形開始圧力が比較的高圧である成形材料の温度・比容積の相対変化を示す線分である。また、図4のグラフの縦軸で示される比容積は、その増大方向が成形材料の膨張を表し、その減少方向が成形材料の収縮を表している。
【0040】
図4に示すように、a´-b´-c´線分及びa-b-c線分で示される成形材料(予備成形体5(図1参照))のそれぞれは、金型21(図1参照)内に供給された後、下型21b(図1参照)に向かって降下する上型21a(図1参照)が成形材料に接触することでプレス成形が開始する。
金型21(図1参照)内で成形を開始する際の成形材料の温度は、図4中、「成形樹脂温度」で示している。
【0041】
下型21b上に配置された成形材料に対して上型21aが接触した後、さらに上型21aが降下して下型21bに近づくにつれて、成形材料は金型21内で流動し広がっていく。成形材料は金型21に冷却されて温度を下げていく。それとともに成形材料は金型21内で型締めされて比容積はこの温度降下にともなって減少する。そして、金型21内で結晶化又は固化することで成形材料の比容積は急激に減少する。成形材料の結晶化が終了すると比容積の減少率は緩慢となる。その後、成形材料は、室温に冷却されるまで、大凡この緩慢な減少率で室温まで比容積が推移するが、成形材料の温度が金型温度に到達した際に、金型21から脱型される。
脱型後、成形材料は、外気に晒されることで室温まで放冷される。
【0042】
つまり成形材料は、図4に示すように、金型21(図1参照)による成形開始から室温に放冷されるまでの比容積の差分によって、収縮量が決定される。
したがって、成形開始時の成形材料の温度が低いほど、また成形開始圧力が高いほど、成形材料の収縮量が小さくなる。
【0043】
次に参照する図5は、型締めによる予備成形体5(成形材料)の流動パターンを説明するための概略図である。図5(a)は、本発明の実施例の流動パターンを示し、図5(b)は、比較例の流動パターンを示している。また、図5(a)及び(b)中、白抜き矢印を挟んで型締め前と型締め時の予備成形体5(成形材料)の様子をそれぞれ表している。
【0044】
なお、図5(a)及び(b)において、符号Aは、予備成形体5(成形材料)が下型21b上に配置された際の下型接触層である。符号Bは、下型接触層Aに隣接する下側内層である。符号Cは、予備成形体5(成形材料)の表層である。符号Dは、表層Cに隣接する上側内層である。符号Eは、下側内層Bと上側内層Dとの間の中央層である。
【0045】
まず、比較例の予備成形体5(成形材料)における流動パターンについて説明する。
図5(b)に示すように、下型21b上に配置する比較例の予備成形体5の形状は、略平板状のものを想定している(図5(b)中、型締め前の図参照)。
この比較例において、予備成形体5を下型21b上に配置した後、型締め直前における予備成形体5の各層A,B,C,D,Eにおける温度の大小関係は、次のようになっている。
下型接触層A<下側内層B<表層C<上側内層D<中央層E
また、予備成形体5の各層A,B,C,D,Eにおける粘度の大小関係は、次のようになっている。
下型接触層A>下側内層B>表層C>上側内層D≫中央層E
【0046】
そして、予備成形体5に対して上型21a及び下型21bによる型締めが開始すると(図5(b)中、型締め時の図参照)、予備成形体5の各層A,B,C,D,Eは、次のような順番で冷却が開始されていく。
下型接触層A>下側内層B>表層C>上側内層D>中央層E
その結果、下型21b上で固化層(スキン層)を形成する下型接触層Aを覆うように、下側内層Bが流動する。
次いで、上型21aに接触することで冷却が促進された表層Cが固化するとともに、この固化層を覆うように上側内層Dが流動する。
【0047】
そして、最も冷却開始のタイミングが遅く、最も粘度が低い中央層Eは、下側内層Bと上側内層Dとの間から符号7の矢示方向に湧き出し流れ(ファウンテンフロー)を形成する。つまり、高い温度で低圧の中央層Eが上型21aと下型21bとの間を優先的に広がっていく。
このような中央層Eの湧き出し流れ(ファウンテンフロー)で上型21aと下型21bとの間に広がった高温・低圧部分は、図4に示したように、冷却後の収縮量が大きくなる。つまり、図5(b)に示すように、中央層Eの湧き出し流れ(ファウンテンフロー)にて広がった部分は、収縮量増大領域Ct2を形成する。
【0048】
次に、本発明の実施例の予備成形体5(成形材料)における流動パターンについて説明する。
図5(a)に示すように、下型21b上に配置する比較例の予備成形体5の形状は、図3に示したものと同様のものを想定している(図5(a)中、型締め前の図参照)。
つまり、この実施例の予備成形体5は、矩形部15bと、この矩形部15bを挟むように形成された一対の直角台形部15cとを有している。
そして、実施例の予備成形体5は、比較例の予備成形体5と異なって、表層Cと上側内層Dとが一対の直角台形部15cに対応して二分されている。
なお、このような予備成形体5の各層A,B,C,D,Eにおける温度及び粘度の大小関係、並びに各層A,B,C,D,Eの冷却開始のタイミングは、前記比較例のものを同様である。
【0049】
そして、予備成形体5に対して上型21a及び下型21bによる型締めが開始すると(図5(a)中、型締め時の図参照)、下型21b上で固化層(スキン層)を形成する下型接触層Aを覆うように、下側内層Bが流動する。
【0050】
次いで、二分された表層Cのそれぞれが上型21aに接触することで固化するとともに、二分された表層Cのそれぞれの固化層を覆うように上側内層Dが流動する。つまり、実施例における上側内層Dは、比較例における上側内層Dよりも上型21aに沿った流動距離が長くなる。
そのため、下側内層Bと上側内層Dとの間からの湧き出し流れ7にて形成される収縮量増大領域Ct1は、比較例の収縮量増大領域Ct2よりも狭められる(Ct1<Ct2)。
したがって、実施例における湧き出し流れ7に起因する成形品(熱可塑性樹脂複合材料)の収縮は、比較例よりも抑制される。
【0051】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置10は、熱可塑性樹脂と強化繊維との混錬物を所定形状の開口15aから押し出した押出物4(予備成形体5)を直接金型21内で型締めして熱可塑性樹脂複合材料を製造する。
【0052】
このような製造方法及び製造装置10によれば、予備成形体5の温度を高温に維持したまま金型21内へ投入可能となる。また、予備成形体5を構成する混錬物は高温で柔らかく、開口15aの形状に倣って形成される押出物4で予備成形体5が容易に形成される。したがって、この製造方法によれば、混練物を予備成形体5に成形するための設備を別途に配置する必要がない。よって、本実施形態によれば、熱可塑性樹脂複合材料の製造設備の小型化が可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る熱可塑性樹脂複合材料の製造方法及び製造装置10によれば、押出機1から排出された予備成形体5をそのまま金型21内へ投入可能であるため、金型21内への投入に係る時間が増加せず、予備成形体5の成形が容易になる。
【0054】
また、本実施形態の製造方法及び製造装置10は、開口15aの形状が、第二幅W2の延びる方向の少なくとも一方の端部での第一幅W1が最も大きい。
【0055】
一般に、成形材料をプレス機でダイレクトプレス成形をする際に、成形材料の外側の方が金型への接触面積が大きいために急速に冷えやすい。成形材料が急速に冷えると(成形材料の低下温度幅が大きいと)、収縮量が大きくなる。そのため成形材料の中心部分と外側部分とで収縮量に差が生まれて成形品に反りなどの変形が生じる。
【0056】
これに対して本実施形態では、予備成形体5の厚みが厚い部分は金型21の型締めの際、厚みの薄い部分よりも先に金型21に当接する。そして、金型21と当接した部分から熱引きが行われて、硬化(固化)が先に始まる。つまり、前記のように湧き出し流れ(ファウンテンフロー)が弱くなるため、収縮変形が小さくなる。よって成形後金型21から取り出しても成形品(熱可塑性樹脂複合材料)の変形が抑制される。
【0057】
また、本実施形態では、第二幅W2の幅方向端部で成形材料が多く配置されるため、金型21内の隅部に対する成形材料の流動が促進される。これにより本実施形態によれば、ヒケのない成形品(熱可塑性樹脂複合材料)を得ることができる。
【0058】
本実施形態の製造方法及び製造装置10は、開口15aにおける第二幅W2の中央部側から端部側に向かってテーパTaが形成されている。予備成形体5(成形材料)は、この開口15aの形状に倣って形成されるので同様のテーパTaが形成される。ちなみに、第一幅W1は、金型21による型締め方向6に一致している。
【0059】
このような本実施形態によれば、予備成形体5(成形材料)が金型21で型締めされる際に、第一幅W1が厚い予備成形体5(成形材料)の端部は、テーパによって第二幅W2の幅方向の外側に向かって容易に流動することができる。したがって、金型21内の隅部に対する成形材料の流動が促進される。これにより本実施形態によれば、ヒケのない成形品(熱可塑性樹脂複合材料)を得ることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。
前記実施形態では、予備成形体5として、矩形部15bと、この矩形部15bを挟むように形成された一対の直角台形部15cとを有するものについて説明したが、予備成形体5はこれに限定されるものではない。
【0061】
図6(a)及び(b)は、変形例に係る予備成形体5の構成説明図である。
図6(a)に示すように、予備成形体5は、前記実施形態での直角台形部15c(図3参照)に代えて、中央部の矩形部15bよりも第一幅W1よりも大きい第一幅W1を有する矩形部15dを有している。
【0062】
また、予備成形体5は、図6(b)に示すように、一対の矩形部15d同士と矩形部15cとを一体に繋ぐ縦壁部15eを有する構成とすることもできる。
このような予備成形体5は、図6(a)に示すように、ダイ15を固定ダイ150と、固定ダイ150に対して進退可能な可動ダイ151とによって構成することで成形可能となる。
つまり、縦壁部15eの成形時には、可動ダイ151の下縁8aを二点鎖線で示す下線8bまで移動させ、矩形部15c,15dの成形時には、可動ダイ151の下縁8aを図6(a)に示す位置に復元することで、図6(b)に示す予備成形体5を得ることができる。
また、固定ダイ150によって成形した樹脂に、別途加熱しておいた樹脂を金型に配置する前に積層することによって縦壁部15eを有する予備成形体5を成形することも可能である。
【実施例
【0063】
次に、本発明が奏する作用効果を検証した実施例について説明する。
図7(a)は実施例で使用した予備成形体5(成形材料)の斜視図である。図7(b)は比較例で使用した予備成形体50(成形材料)の斜視図である。
図7(a)に示すように、実施例の予備成形体5は、前記実施形態に係る予備成形体5(図3参照)と同様に、矩形部15bと、直角台形部15cとを備えている。
この予備成形体5は、熱可塑性樹脂としての6ナイロンに対して強化繊維としての炭素繊維の体積分率(Vf)が30%となるように含むものを想定している。
【0064】
予備成形体5の押出幅Wは180mmであり、押出長さLは700mmである。また、図示しないが、予備成形体5の最大高さt1は45mmであり、予備成形体5の矩形部15bの高さt2は6mmである。また、予備成形体5の直角台形部15cにおける上底の長さW´1は15mmであり、下底の長さW´3は42mmである。
そして、後記の「成形材料の流動距離」の測定では、図7(a)中、点線で区画した予備成形体5の4分の1サイズのものを試料Sとして設定した。
【0065】
図7(b)に示すように、比較例の予備成形体50は、実施例の予備成形体5と体積が略同じの平板体(直方体)である。この予備成形体50は、予備成形体5と同様に、熱可塑性樹脂としての6ナイロンに対して強化繊維としての炭素繊維の体積分率(Vf)が30%となるように含むものを想定している。
ちなみに、予備成形体50の押出幅Wは180mmであり、押出長さLは700mmであり、高さt´は17.8mmである。
そして、後記の「成形材料の流動距離」の測定では、図7(b)中、点線で区画した予備成形体50の4分の1サイズのものを試料Sとして設定した。
【0066】
図8(a)は実施例で使用した予備成形体5(成形材料)の平面図である。
そして、後記の「成形材料の温度分布」、「成形材料の圧力分布」及び「成形品の反り量分布」の測定では、図8(a)中、点線で区画した予備成形体5の4分の1サイズのものを試料Sとして設定した。
【0067】
図8(b)は比較例で使用した予備成形体50(成形材料)の平面図である。
そして、後記の「成形材料の温度分布」、「成形材料の圧力分布」及び「成形品の反り量分布」の測定では、図8(b)中、点線で区画した予備成形体50の4分の1サイズのものを試料Sとして設定した。
なお、図8(a)及び(b)に示す「対称軸」は、予備成形体5,50のXY平面の中央部において、XY平面に直交する方向(図8紙面の直交方向)に延びる軸である(以下、図9から図15において同じ)。
【0068】
本実施例では、(1)金型内での成形材料(試料S)の流動距離、(2)型締め充填後の成形材料(試料S)の温度分布、(3)型締め充填後の成形材料(試料S)の圧力分布、及び(4)脱型後の成形品の反り量分布についてCAE(computer aided engineering)による測定試験を行った。
なお、予備成形体5,50の成形条件は、次のように設定した。
押出物の温度:265℃
金型温度:180℃
押出物と空気(25℃)の熱伝達係数:10W/m2
押出物と金型間の熱伝達係数:1000W/m2
初期型開き:50mm
流動距離測定時のプレス速度:3mm/s
流動距離測定時のプレス力:200t
反り量測定時のプレス速度:50mm/s
反り量測定時のプレス力:700t
【0069】
(1)金型内での成形材料の流動距離の測定結果を図9から図12に示す。
図9から図12は、実施例の予備成形体5(試料S(図7(a)参照))と、比較例の予備成形体50とについて、型締め開始から所定時間経過後の流動距離(第1ステージから第4ステージ)の測定結果を示す比較図である。
図9は、型締め開始から1.60[sec]経過後の流動距離比較図である。図10は、型締め開始から、実施例で10.70[sec]経過後、比較例で10.80[sec]経過後の流動距離比較図である。図11は、型締め開始から、12.00[sec]経過後の流動距離比較図である。図12は、型締め開始から、実施例で16.01[sec]経過後、比較例で16.00[sec]経過後の流動距離比較図である。
また、予備成形体5,50の流動距離比較は、比較例の予備成形体50の流動先端を基準に行っている。
なお、図9から図12において、予備成形体5,50には、経過時間に応じた温度分布を高温(白抜き)、中温(網掛け)、及び低温(黒塗り)で表している。
【0070】
図9から図12に示すように、実施例の予備成形体5の金型内での流動距離は、比較例の予備成形体50と比べて、第1ステージから第4ステージの全てにおいて長いことが確認された。
また、図12に示すように、金型内に広がった実施例の予備成形体5の温度は、比較例の予備成形体50に比べて低く、収縮量が小さくなることが確認された。
【0071】
(2)型締め充填後の成形材料(試料S)の温度分布の測定結果を図13(a)及び(b)に示す。
図13(a)は、型締め充填後の実施例の予備成形体5における温度分布を示す平面図である。図13(b)は、型締め充填後の比較例の予備成形体50における温度分布を示す平面図である。
なお、温度分布は、T1<T2<T3<T4<T4<T5の大小関係を表す網掛けで表現している。
【0072】
図13(a)及び(b)に示すように、実施例の予備成形体5は、比較例の予備成形体50と異なって、対称軸に近い領域で温度が低いT1領域が現れている。
これにより実施例の予備成形体5は、比較例の予備成形体50と比べて収縮量が小さくなることが確認された。
【0073】
(3)型締め充填後の成形材料(試料S)の圧力分布の測定結果を図14(a)及び(b)に示す。
図14(a)は、型締め充填後の実施例の予備成形体5における圧力分布を示す平面図である。図14(b)は、型締め充填後の比較例の予備成形体50における圧力分布を示す平面図である。
なお、圧力分布は、P1<P2<P3<P4<P5の大小関係を表す網掛けで表現している。
【0074】
図14(a)及び(b)に示すように、実施例の予備成形体5は、比較例の予備成形体50と比べて、対称軸に近い領域で、圧力の高いP5領域が広いことが確認された。
これにより実施例の予備成形体5は、比較例の予備成形体50と比べて収縮量が小さくなることが確認された。
【0075】
(4)脱型後における成形品(熱可塑性樹脂複合材料)の反り量分布の測定結果を図15(a)及び(b)に示す。
図15(a)は、脱型後における実施例の成形品(熱可塑性樹脂複合材料)の反り量分布を示す平面図である。図15(b)は、脱型後における比較例の成形品(熱可塑性樹脂複合材料)の反り量分布を示す平面図である。
なお、反り量分布は、Wp1<Wp2<Wp3<Wp4<Wp5の大小関係を表す網掛けで表現している。
【0076】
図15(a)及び(b)に示すように、実施例の成形品(熱可塑性樹脂複合材料)は、比較例の成形品(熱可塑性樹脂複合材料)と異なって、最も反り量が大きいWp5領域がなく、反り量が比較的大きいWp4領域も小さいことが確認された。また、実施例の成形品(熱可塑性樹脂複合材料)は、反り量が比較的小さいWp1領域及びWp2領域が広いことも確認された。
【符号の説明】
【0077】
1 押出機
2 プレス機
3 強化繊維
4 押出物
5 予備成形体
6 型締め方向
7 湧出し流れ
10 製造装置
11 シリンダ
11a 樹脂フィード部
11b 輸送部
11c 混練部
11d 後輸送部
12 スクリュ
15 ダイ
15a ダイの開口
21 金型
21a 上型
21b 下型
W1 開口の第一幅
W2 開口の第二幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15