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特許7093089ライナープレート土留壁用坑口根固部材及びライナープレート土留壁坑口根固方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】ライナープレート土留壁用坑口根固部材及びライナープレート土留壁坑口根固方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 1/08 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
E21D1/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022024481
(22)【出願日】2022-02-21
【審査請求日】2022-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391047190
【氏名又は名称】岡三リビック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】大谷 克之
(72)【発明者】
【氏名】相沢 裕之
(72)【発明者】
【氏名】倉知 禎直
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-241287(JP,A)
【文献】特開2001-164870(JP,A)
【文献】特開平07-207664(JP,A)
【文献】特開2001-011874(JP,A)
【文献】特開2011-208389(JP,A)
【文献】特開2013-234509(JP,A)
【文献】特開2015-048573(JP,A)
【文献】特開2005-023612(JP,A)
【文献】特開平06-057762(JP,A)
【文献】米国特許第05401122(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
E02D 5/00-5/20
E21D 1/00-9/14
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
E02D 7/00-13/10
E02D 5/22-5/80
E02D 19/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘り下げたスペースにライナープレートを下段に順次み立てて設置していく仮設の土留壁の掘削の基準となる坑口部を所定の高さに保持して固定するライナープレート土留壁用坑口根固部材であって、
前記ライナープレートの外側形状に応じて上下方向に延びる内壁板と、この内壁板に接続する底面板と、この底面板と前記内壁板とに接続し、前記内壁板から外側に延びる一対の側面板と、を備え、
前記内壁板の内面には、掘削の基準となる最上段のライナープレートを載置して、2段目のライナープレートとの間に介装されて機械的に接合される接続板が内側に向け突設されていること
を特徴とするライナープレート土留壁用坑口根固部材。
【請求項2】
前記内壁板は、前記ライナープレートの外周の円弧形状に応じた円弧状の周面板であり、前記側面板は、前記周面板から外側に延びること
を特徴とする請求項1に記載のライナープレート土留壁用坑口根固部材。
【請求項3】
前記内壁板は、前記ライナープレートの外周の多角形状に応じた直線状の内壁板であり、前記側面板は、前記内壁板から放射状に外側に延びること
を特徴とする請求項1に記載のライナープレート土留壁用坑口根固部材。
【請求項4】
前記一対の側面板は、上端が外側に行くにしたがって下降するように傾斜していること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のライナープレート土留壁用坑口根固部材。
【請求項5】
前記底面板の内側には、グラウト材が所定位置まで注入できたか否かを目視で確認するグラウト材確認孔が穿設されていること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のライナープレート土留壁用坑口根固部材。
【請求項6】
ライナープレートを組み立てて立坑の土留壁を構築し、その土留壁の坑口部の根固めを行うライナープレート土留壁坑口根固方法であって、
請求項1ないし5のいずれかに記載のライナープレート土留壁用坑口根固部材を前記土留壁の掘削基準となる最上段のライナープレートを前記接続板の上に載置して、その下段のライナープレートとの間に前記接続板を介装して接続し、前記内壁板、前記底面板、及び前記一対の側面板に囲われた空間に土砂を埋め戻すこと
を特徴とするライナープレート土留壁坑口根固方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナープレート土留壁用坑口根固部材及びそれを用いたライナープレート土留壁坑口根固方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深礎工法の基礎杭、推進工法用の立坑、地滑り抑制集水井などを施工するためなど立坑を掘削する場合、掘削した立坑が崩壊することを防ぐために、ライナープレートと呼ばれる平面視弧状の波型鋼板を組み合わせて土留壁として設置し、立坑を掘削することが行われている。このとき、立坑の最上部となる土留壁の坑口部のライナープレート外周には、一般には、基準となる最上段のライナープレートを固定するために孔口コンクリート(根固めコンクリート)を打設して固定する必要がある(特許文献1の図4の右側参照)。
【0003】
深礎工法の基礎杭を施工した場合は、完了後坑口部の根固めコンクリートは、そのまま埋め殺されるため撤去が不要である。しかし、耐震補強工事などでライナープレートを仮設構造物として使用する場合、根固コンクリートの撤去が必要となり、斫り作業や搬出撤去作業に手間と労力がかかりコストアップの要因となるとともに、産業廃棄物が発生し、環境に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1には、坑口部に設置する立坑用の内側支保工(4)と該支保工の外周辺に同心円状に設置する土留柵用の外側支保工(3)間に扇形の敷板(1)を繞設し、それぞれを連結、係合させることにより坑口部支保工の根固めコンクリートを打設せずに作業を簡単、容易、安全、確実、かつ短時間に実施できる支保工据付工法が開示されている(特許文献1の明細書の段落[0009]~[0011]、図面の図4図5等参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の支保工据付工法は、根固めコンクリートを打設しないため養生期間は不要となるものの、ライナープレートの土留壁を二重に構築すること、即ち、内側支保工(4)に加え外側支保工(3)を構築することで土留壁坑口全体の剛性を確保しているものであり、土留壁を二重に構築する分、作業に時間がかかり効率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3054936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、根固めコンクリートの打設と養生期間が不要で産業破棄物が発生せずに環境に優しく作業効率が良好なライナープレート土留壁用坑口根固部材及びそれを用いたライナープレート土留壁坑口根固方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材は、掘り下げたスペースにライナープレートを下段に順次み立てて設置していく仮設の土留壁の掘削の基準となる坑口部を所定の高さに保持して固定するライナープレート土留壁用坑口根固部材であって、前記ライナープレートの外側形状に応じて上下方向に延びる内壁板と、この内壁板に接続する底面板と、この底面板と前記内壁板とに接続し、前記内壁板から外側に延びる一対の側面板と、を備え、前記内壁板の内面には、掘削の基準となる最上段のライナープレートを載置して、2段目のライナープレートとの間に介装されて機械的に接合される接続板が内側に向け突設されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材は、請求項1に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材において、前記内壁板は、前記ライナープレートの外周の円弧形状に応じた円弧状の周面板であり、前記側面板は、前記周面板から放射状に外側に延びることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材は、請求項1に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材において、前記内壁板は、前記ライナープレートの外周の多角形状に応じた直線状の内壁板であり、前記側面板は、前記内壁板から放射状に外側に延びることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材は、請求項1ないし3のいずれかに係るライナープレート土留壁用坑口根固部材において、前記一対の側面板は、上端が外側に行くにしたがって下降するように傾斜していることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材は、請求項1ないし4のいずれかに係るライナープレート土留壁用坑口根固部材において、前記底面板の内側には、グラウト材が所定位置まで注入できたか否かを目視で確認するグラウト材確認孔が穿設されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係るライナープレート土留壁坑口根固方法は、ライナープレートを組み立てて立坑の土留壁を構築し、その土留壁の坑口部の根固めを行うライナープレート土留壁坑口根固方法であって、請求項1ないし5のいずれかに記載のライナープレート土留壁用坑口根固部材を前記土留壁の掘削基準となる最上段のライナープレートを前記接続板の上に載置して、その下段のライナープレートとの間に前記接続板を介装して接続し、前記内壁板、前記底面板、及び前記一対の側面板に囲われた空間に土砂を埋め戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1~6に係る発明によれば、根固めコンクリートの打設が不要となるため、コンクリートが硬化するまでの養生期間が不要となる。また、請求項1~6に係る発明によれば、耐震補強工事等において施工後に立坑を埋め戻す際に、廃棄コンクリートが発生しないため環境に優しく、斫り作業や搬出作業が不要となる。その上、請求項1~6に係る発明によれば、ライナープレート間に接続板を介装して機械的に接合するだけで固定が可能となるため作業効率が極めて良好となる。
【0015】
特に、請求項4に係る発明によれば、坑口根固部材の外側端部付近の側面板の高さは埋め戻す際には不要であるため、坑口根固部材全体を軽量化することができる。
【0016】
特に、請求項5に係る発明によれば、グラウト材確認孔が穿設されているので、裏込めに充填するグラウト材が上部まで注入できたか否かをグラウト材確認孔から目視で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る坑口根固部材のみを示す平面図である。
図2図2は、図1のA-A線鉛直断面図である。
図3図3は、土留壁の坑口部を示す全体平面図である。
図4図4は、土留壁の坑口部を拡大して示す鉛直断面図である。
図5図5(a)は、本土留壁坑口根固方法の初期掘削工程を示す工程説明図であり、図5(b)は、本土留壁坑口根固方法の埋戻し工程を示す工程説明図であり、図5(c)は、本土留壁坑口根固方法の土留壁坑口部組立工程を示す工程説明図である。
図6図6(a)は、本立坑掘削方法の掘下げ工程を示す工程説明図であり、図6(b)は、本立坑掘削方法のライナープレート組立工程を示す工程説明図であり、図6(c)は、本立坑掘削方法の上から4段目のライナープレート組立工程が完了した状態を示す説明図である。
図7図7は、坑口根固部材のグラウト材確認孔に鋼管材を取り付けた状態の坑口根固部材の変形例を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材及びライナープレート土留壁坑口根固方法の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
<坑口根固部材>
先ず、図1図4用いて、本発明の実施形態に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材1(以下、単に坑口根固部材1ともいう)について説明する。本実施形態に係る坑口根固部材1は、複数の鋼板が接合されて形成された部材であり、ライナープレートLPを組み合わせた仮設の土留壁RWの坑口部Whの根固め部材として用いられる(図3も参照)。なお、本実施形態では、ライナープレートLPが平面視円形状に組み合わされたものを例示して説明するが、ライナープレートLPが平面視矩形枠体状又は平面視多角形状に組み合わされたものや、平面視楕円形状又は長穴形状に組み合わされたものであっても構わない。
【0020】
この坑口根固部材1は、掘削する立坑W1の土留壁RWの坑口部Whの周囲を補強して剛性を高めるとともに、掘削の基準となる坑口部Whを地盤G1に固定して根固めを行う機能を有する。図1は、本実施形態に係る坑口根固部材のみを示す平面図であり、図2は、図1のA-A線鉛直断面図である。また、図3は、土留壁RWの坑口部Whを示す全体平面図であり、図4は、土留壁RWの坑口部Whを拡大して示す鉛直断面図である。
【0021】
図1図2に示すように、坑口根固部材1は、上下方向に延びる内壁板である平面視円弧状の周面板2と、この周面板2と接続する底面板3と、この底面板3と周面板2とに接続し、周面板2の外周面2bから放射状に外側に延びる一対の側面板4,4と、を備えている。また、坑口根固部材1は、底面板3及び周面板2の中央に、周面板2から放射状に外側に延びる側面板4と同形状の補強板6を備えている。
【0022】
(周面板2)
周面板2は、設計強度に応じた所定厚の矩形の鋼板からなり、図3に示すように、平面視円形の土留壁RWの外周に内周面2aが当接するように所定の曲率に曲面加工が施されている。つまり、周面板2は、図1に示すように、ライナープレートLP同士が接合されたて形成された土留壁RWの外周の円弧形状に応じた円弧状に曲面加工が施されており、図3に示すように、図示形態では、周面板2は、土留壁RWの円の外周の4分割に相当する円弧状となっている。勿論、周面板2の円周の分割数は、4分割に限られず、土留壁RWの径(円周の長さ)に応じて適宜設定すればよいことは云うまでもない。また、分割方法も、長方形で小さく分割されたものを組み合わせてもよく、均等に分割したものに限られず、どのように分割してもよい。さらに、本発明に係る内壁板は、円弧状に曲面加工された周面板2に限られず、矩形状、多角形状、楕円形状、又は長穴形状などのライナープレートLPの外側形状に応じて上下方向に延びる板材であればよい。
【0023】
また、図2に示すように、周面板2の下端2cは、後述の底面板3に溶接等で接続され、上端2dは、鋼板等が接続されていない開放端となっている。
【0024】
そして、この周面板2には、高さ方向の中央付近の内周面2aから内側に向け帯鋼板からなる接続板5が突設されている。この接続板5は、周面板2の内周面2aの曲面の曲率に応じた平面視円弧状となっており、最上段のライナープレートLP1とその直下の上から2段目のライナープレートLP2との間に介装されてボルト接合されている。勿論、ライナープレートLP同士の接合やライナープレートLPと接続板5との接合は、ボルト接合に限られず、リベット接合などの他の機械的な接合手段により接合されていても構わない。
【0025】
このように、坑口根固部材1及びその接続板5は、最上段(1段目)のライナープレートLP1と(上から)2段目のライナープレートLP2との間にボルト接合されることにより、土留壁RWの坑口部Whを所定の高さに保持して固定する機能を有している。なお、ここで内側とは、平面視円形の土留壁RWの中心に向かう半径方向内側を指し、外側とは、反対に、円中心から離れる半径方向外側を指す(以下同じ)。
【0026】
(底面板)
底面板3は、図1に示すように、内周端3a及び外周端3bが円弧状、且つ、左右の側端3cが直線状となった扇形状の鋼板であり、図2に示すように、内周端3aが前述の周面板2の下端2cに接続されている。この底面板3は、後述のように、周囲の土砂S1が載置されることにより、土砂S1の重量で周面板2及び接続板5を介して接続されている坑口部Wh(ライナープレートLP1及びライナープレートLP2)が上下方向及び水平方向ずれないように地盤G1に固定する機能を有している。
【0027】
また、図1図4に示すように、この底面板3には、グラウト材確認孔30が穿設されている。このグラウト材確認孔30は、掘削した立坑W1の地盤とライナープレートLPとの隙間を埋める裏込め材とし注入されるグラウト材Gが底面板3直下の所望の高さ(所定の位置)まで充填されたか否かを目視により確認するための孔である。
【0028】
(側面板及び補強板)
側面板4は、図1に示すように、扇形状の底面板3の左右の直線状の側端3cに沿って、周面板2の外周面2bから放射状に直線的に外側に延びる所定厚の左右一対の鋼板である。また、補強板6は、底面板3及び周面板2の中央に設けられ、側面板4と同様に、周面板2の外周面2bから放射状に直線的に外側に延びる所定厚の左右一対の鋼板である。
【0029】
これらの側面板4及び補強板6は、図2に示すように、内端4a(内端6a)及び下端4b(下端6b)が直線状となっており、上端4c(上端6c)は、水平線が途中から折れ曲がって外側に行くにしたがって下降するように傾斜した直線状となっている。つまり、側面板4及び補強板6は、図2に示すように、五角形状となっている。また、内端4a(内端6a)及び下端4b(下端6b)は、周面板2の外周面2b及び底面板3の上面に接合されており、上端4c(上端6c)は、他の部材と接合しない開放端となっている。
【0030】
これらの側面板4及び補強板6は、周面板2と底面板3とが直交するように保持して両者の角度が変化しないように曲げ剛性を担保する機能を有している。このため、側面板4及び補強板6は、周面板2と底面板3と接続しない開放端である上端4c(上端6c)を傾斜したテーパー状とすることにより、曲げ剛性を担保する機能を保持したまま軽量化を達成することができる。
【0031】
なお、補強板6は、扇形状の底面板3の幅が小さく、側面板4同士の間隔が狭い場合は、省略することが可能であり、逆に、底面板3の幅が大きく、側面板4同士の間隔が広い場合は、複数枚設けてもよい。また、本実施形態に係る側面板4及び補強板6として、周面板2から放射状に外側に延びるものを例示したが、ライナープレートLPの外側形状が平面視で直線状の場合、側面板4及び補強板6も、それに応じた平面視直線状の内壁板から、その内壁板に対して直交するように外側に延びる平面視直線状の板材であればよい。但し、ライナープレートLPの外側形状が平面視で多角形状の場合、側面板4及び補強板6は、本実施形態と同様に平面視多角形状のライナープレートLPの中心部分から放射状に外側に延びるものであることが好ましい。
【0032】
<ライナープレート土留壁坑口根固方法(立坑掘削方法)>
次に、図5図6を用いて、本発明の実施形態に係るライナープレート土留壁坑口根固方法及び立坑掘削方法について説明する。本実施形態に係るライナープレート土留壁坑口根固方法(以下、単に土留壁坑口根固方法ともいう。)は、前述の坑口根固部材1を用いて、ライナープレートLPから組み立てられた土留壁RWの坑口部Whの根固めを行って立坑W1を掘削する場合を例示して説明する。
【0033】
(初期掘削工程)
図5は、本実施形態に係る土留壁坑口根固方法の工程説明図であり、図5(a)は、本土留壁坑口根固方法の初期掘削工程を示す工程説明図である。図5(a)に示すように、本土留壁坑口根固方法では、掘削を開始する土留壁RWの坑口部Whが設置できる所定の深さまで立坑W1を掘削する初期掘削工程を行う。
【0034】
具体的には、図5(a)に示すように、前述の坑口根固部材1が丁度埋設できる深さまで地盤G1を掘削するとともに、坑口根固部材1の内側の立坑W1部分を前述の接続板5の下に2段目のライナープレートLP2を取り付けて設置できる深さまでさらに掘削する。
【0035】
(埋戻し工程)
図5(b)は、本土留壁坑口根固方法の埋戻し工程を示す工程説明図である。次に、本土留壁坑口根固方法では、図5(b)に示すように、立坑W1の周りの地盤G1を掘り下げた部分に坑口根固部材1を設置し、前工程で地盤G1を掘削した際に発生した土砂S1を坑口根固部材1内に充填して埋め戻す。ここで、坑口根固部材1内とは、前述の周面板2及び一対の側面板4と側面板4(補強板6含)、地盤G1の切り下げ斜面とに囲われた底面板3上の空間を指している。
【0036】
(土留壁坑口部組立工程)
図5(c)は、本土留壁坑口根固方法の土留壁坑口部組立工程を示す工程説明図である。次に、本土留壁坑口根固方法では、図5(c)に示すように、立坑W1の土留壁RWの坑口部Whを組み立てて構築する土留壁坑口部組立工程を行う。
【0037】
具体的には、図5(b)に示した前埋戻し工程で設置した坑口根固部材1の突出した接続板5の上に最上段のライナープレートLP1を載置して、接続板5の下に2段目のライナープレートLP2を設置し、接続板5を貫通してライナープレートLP1とライナープレートLP2とを上下にボルト接合する。また、隣接するライナープレートLP1同士、及び隣接するライナープレートLP2同士もそれぞれボルト接合して土留壁RWの坑口部Whを組み立てる。
【0038】
このとき、従来の土留壁坑口根固方法では、最上段のライナープレートLP1の上空にH形鋼などの鋼材を井桁に組んで架け渡して架台を組み、その架台から鋼材等でライナープレートLP1へ控えを取って仮付け溶接し、仮固定して掘削基準となる土留壁RWの坑口部Whを構築していた。
【0039】
しかし、本実施形態に係る土留壁坑口根固方法では、埋戻し工程で坑口根固部材1を設置し、その接続板5を用いてライナープレートLPを組み立てることができるため、極めて作業効率が良い。その上、溶接等が不要で、ライナープレートLPを仮設材として繰り返し使用する場合に、ライナープレートLPが劣化しにくいというメリットもある。
【0040】
また、従来のように、仮付け溶接でレベル調整(水平の高さ調整)を行うのは困難であるが、土留壁坑口根固方法では、土砂の増減で坑口根固部材1及び接続板5のレベル調整が可能であるため、正確な高さに土留壁RWの坑口部Whを組み立てることが容易である。
【0041】
さらに、背景技術で述べたように、従来の土留壁坑口根固方法では、根固コンクリートを打設して土留壁RWの坑口部Whを固定していた。このため、根固コンクリートが硬化する養生期間を経ないと次の掘下げ工程以降の作業に移れなかった。このため、工期が遅延し、作業に時間がかかり効率が悪いという問題があった。
【0042】
しかし、本土留壁坑口根固方法では、坑口根固部材1を設置してその中に掘削発生土砂などの土砂S1を充填して埋め戻すだけで、土砂S1の重量で基準となる接続板5の位置が固定される。このため、次工程をすぐに開始することができ、立坑掘削作業の作業効率が極めて良好となる。
【0043】
(掘下げ工程)
図6は、前述の土留壁坑口根固方法で根固めを行って固定した土留壁RWの坑口部Whを用いて立坑W1を掘削する立坑掘削方法の工程説明図であり、図6(a)は、本立坑掘削方法の掘下げ工程を示す工程説明図である。図6(a)に示すように、本立坑掘削方法では、図5(c)に示した状態からさらにライナープレートLP一段分の高さだけ立坑W1の坑底を掘り下げる掘下げ工程を行う。
【0044】
(ライナープレート組立工程)
図6(b)は、本立坑掘削方法のライナープレート組立工程を示す工程説明図である。図6(b)に示すように、本立坑掘削方法では、前掘下げ工程で掘り下げたスペースに立坑W1の周壁が崩壊しないようにライナープレートLP組み立てて設置するライナープレート組立工程を行う。
【0045】
具体的には、接続板5に接合されたライナープレートLP2の下端のリブに、下段となる上から3段目のライナープレートLP3をボルト接合して組み立てて設置する。
【0046】
その後、本立坑掘削方法では、立坑W1の坑底を掘り下げる掘下げ工程と、ライナープレートLPの下段にさらにライナープレートLPを設置するライナープレート組立工程と、を繰り返して、立坑W1を所定の深さまで掘削する。これにより、本立坑掘削方法が完了する。図6(c)は、本立坑掘削方法の上から4段目のライナープレート組立工程が完了した状態を示す説明図である。
【0047】
また、本立坑掘削方法では、耐震補強工事施工後に土留壁RWを撤去する場合と相違して、土留壁RWを撤去せず、推進工法用の立坑や地滑り抑制集水井などのように、そのまま使用する場合には、土留壁RWと立坑W1との隙間に裏込め材としグラウト材Gを注入する。(図4参照)。このとき、坑口根固部材1の底面板3には、グラウト材確認孔30が穿設されている。このため、グラウト材確認孔30直上の土砂S1を一部掻き出せば、裏込め材とし注入されるグラウト材Gが底面板3直下の所望の高さまで充填されたか否かを目視により確認することができる。
【0048】
なお、図7に示すように、グラウト材確認孔30の形状に応じた円筒状の鋼管材P(鋼製パイプ)を溶接して取り付け、その鋼管材Pを介して覗くことで、グラウト材Gが底面板3直下の所望の高さまで充填されたか否かを目視確認するようにしてもよい。グラウト材確認孔30直上の土砂S1を掻き出さなくてもグラウト材Gの目視確認が可能となるからである。図7は、坑口根固部材1のグラウト材確認孔30に鋼管材Pを取り付けた状態の坑口根固部材1の変形例を示す図2のA-A線断面図に相当する鉛直断面図である。
【0049】
以上説明した本発明の実施形態に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材1及びそれを用いた本発明の実施形態に係るライナープレート土留壁坑口根固方法(立坑掘削方法)によれば、根固めコンクリート(孔口コンクリート)の打設が不要となる。このため、コンクリートが硬化するまでの養生期間が不要となり、次工程をすぐに開始することができ、立坑掘削作業の作業効率が良好となる。
【0050】
また、坑口根固部材1及びそれを用いた土留壁坑口根固方法によれば、耐震補強工事施工後に立坑を埋め戻す際に、廃棄コンクリートが発生しないため環境に優しく、斫り作業や搬出作業が不要となる。その上、ライナープレートLP間に接続板5を介装してボルト接合するだけで固定が可能となるため作業効率が極めて良好となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係るライナープレート土留壁用坑口根固部材1及びそれを用いた本発明の実施形態に係るライナープレート土留壁坑口根固方法について詳細に説明した。しかし、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0052】
1:坑口根固部材(ライナープレート土留壁用坑口根固部材)
2:周面板(内壁板)
2a:内周面
2b:外周面
2c:下端
2d:上端
3:底面板
3a:内周端
3b:外周端
3c:側端
30:グラウト材確認孔
G:グラウト材
P:鋼管材
4:側面板
4a:内端
4b:下端
4c:上端
5:接続板
6:補強板
6a:内周端
6b:外周端
6c:側端
RW:土留壁
Wh:坑口部
LP:ライナープレート
LP1:1段目のライナープレート(ライナープレート)
LP2:2段目のライナープレート(ライナープレート)
LP3:3段目のライナープレート(ライナープレート)
LP4:4段目のライナープレート(ライナープレート)
W1:立坑
G1;地盤
S1:土砂
【要約】
【課題】根固めコンクリートの打設と養生期間が不要で産業破棄物が発生せずに環境に優しく作業効率が良好なライナープレート土留壁用坑口根固部材及びそれを用いたライナープレート土留壁坑口根固方法を提供する。
【解決手段】ライナープレートLPを組み合わせた仮設の土留壁RWの坑口部Whの根固部材として用いられるライナープレート土留壁用坑口根固部材1において、ライナープレートLPの外側形状に応じて上下方向に延びる内壁板(周面板2)と、この内壁板(周面板2)に接続する底面板3と、この底面板3と内壁板(周面板2)とに接続し、内壁板(周面板2)から外側に延びる一対の側面板4と、を備え、周面板2の内周面2aに、ライナープレートLP間に介装されて機械的に接合可能な接続板5を内側に向け突設する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7