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特許7093093超音波尿量測定装置、学習モデル生成方法、学習モデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】超音波尿量測定装置、学習モデル生成方法、学習モデル
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
A61B8/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020001135
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021108799
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】309043986
【氏名又は名称】有限会社フロントエンドテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100201363
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 豊
(72)【発明者】
【氏名】日向 恒雄
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0330518(US,A1)
【文献】特表2017-535378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0258386(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0228462(US,A1)
【文献】特表2004-527266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記超音波受信データ取得時に取得される位置情報であって、前記超音波受信データ取得が行われる位置に対する前記被検体の位置情報、および前記超音波受信データ取得の前後に取得される位置情報であって、前記超音波受信データ取得が行われる位置に対して変化する前記被検体の位置情報、のいずれかまたは両方を含む前被検体の位置情報と、前記超音波受信データに関連付けられた尿量データと、からなる教師データを複数取得する取得工程と、
前記教師データを用いて、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記被検体の位置情報を入力とし、尿量データを出力とする学習モデルを生成する機械学習工程と、
を有する学習モデル生成方法。
【請求項2】
被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記超音波受信データ取得時に取得される位置情報であって、前記超音波受信データ取得が行われる位置に対する前記被検体の位置情報、および前記超音波受信データ取得の前後に取得される位置情報であって、前記超音波受信データ取得が行われる位置に対して変化する前記被検体の位置情報、のいずれかまたは両方を含む前記被検体の位置情報と、を取得し、
前記取得した超音波受信データと、前記取得した被検体の位置情報と、を請求項記載の学習モデル生成方法によって学習された学習モデルに入力し、前記学習モデルから尿量データを出力する、
尿量データ生成手段を有する、超音波尿量測定装置。
【請求項3】
被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記超音波受信データ取得時に取得される位置情報であって、前記超音波受信データ取得が行われる位置に対する前記被検体の位置情報、および前記超音波受信データ取得の前後に取得される位置情報であって、前記超音波受信データ取得が行われる位置に対して変化する前記被検体の位置情報、のいずれかまたは両方を含む前記被検体の位置情報と、が入力される入力層、
尿量データを出力する出力層、
被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと前記被検体の位置情報を入力、尿量データを出力とする複数の教師データを用いてパラメータが学習された中間層、
を備え、
被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記被検体の位置情報と、を取得し、
前記取得した超音波受信データと、前記取得した被検体の位置情報と、を前記入力層に入力し、
前記パラメータが学習された中間層にて演算し、尿量データを前記出力層から出力するよう、
コンピュータを機能させるための学習済みプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波尿量測定装置、学習モデル生成方法、学習モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
排泄に関連した疾病診断のための排尿日誌や、介護現場での排尿管理のため、超音波を使った膀胱尿量の計測が行われている。
超音波による尿量の測定は、超音波の送受信により得られた膀胱のAモード信号を解析する手法が良く知られている。例えばAモード信号から膀胱壁を検出し、膀胱壁の反射強度や前壁と後壁間の距離をパラメータとして各種係数との演算から尿量を推定したり、前壁と後壁間の距離から体積を計算して膀胱尿量の推定を行う、などの手法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再表2005-099582
【文献】特開2016-043274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の超音波尿量測定装置は、Aモード信号から膀胱壁を検出し、膀胱壁の反射強度や膀胱壁間の距離をパラメータにして尿量を測定または推定しているので、膀胱壁検出は膀胱計測に必須の技術であった。そのため膀胱壁の検出が可能な信号品質をもったAモード信号が得られない場合は、正確な膀胱計測が行えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するために本発明にかかる学習モデル生成方法は、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記超音波受信データに関連付けられた尿量データと、からなる教師データを複数取得する取得工程と、前記教師データを用いて、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データから尿量データを出力する、学習モデルを生成する機械学習工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
課題を解決するために本発明にかかる超音波尿量測定装置は、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データを取得し、前記取得した超音波受信データを前記学習モデル生成方法によって学習された学習モデルに入力し、前記学習モデルから尿量データを出力する、尿量データ生成手段を有することを特徴とする。
【0007】
課題を解決するために本発明にかかる学習済みプログラムは、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データが入力される入力層、尿量データを出力する出力層、前記超音波受信データを入力、尿量データを出力とする複数の教師データを用いてパラメータが学習された中間層、を備え、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データを取得し、前記取得した超音波受信データを前記入力層に入力し、前記パラメータが学習された中間層にて演算し、尿量データを前記出力層から出力するよう、コンピュータを機能させることを特徴とする。
【0008】
課題を解決するために本発明にかかる学習モデル生成方法は、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記被検体の位置情報と、前記超音波受信データに関連付けられた尿量データと、からなる教師データを複数取得する取得工程と、前記教師データを用いて、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記被検体の位置情報を入力とし、尿量データを出力とする学習モデルを生成する機械学習工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
課題を解決するために本発明にかかる超音波尿量測定装置は、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記被検体の位置情報と、を取得し、前記取得した超音波受信データと、前記取得した被検体の位置情報と、を前記学習モデル生成方法によって学習された学習モデルに入力し、前記学習モデルから尿量データを出力する、尿量データ生成手段を有することを特徴とする。
【0010】
課題を解決するために本発明にかかる学習済みプログラムは、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記被検体の位置情報と、が入力される入力層、尿量データを出力する出力層、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと前記被検体の位置情報を入力、尿量データを出力とする複数の教師データを用いてパラメータが学習された中間層、を備え、被検体への超音波送受信により取得した膀胱の超音波受信データと、前記被検体の位置情報と、を取得し、前記取得した超音波受信データと、前記取得した被検体の位置情報と、を前記入力層に入力し、前記パラメータが学習された中間層にて演算し、尿量データを前記出力層から出力するよう、コンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超音波受信データから膀胱壁を検出する工程を経ることなく尿量を測定する学習モデルを生成できる。また、本発明によれば、超音波受信データから膀胱壁を検出する工程を経ることなく尿量データを出力する尿量測定手段を有する超音波尿量測定装置が実現できる。また、本発明によれば、超音波受信データから膀胱壁を検出する工程を経ることなく尿量データを出力する学習済みプログラムを実現できる。
【0012】
本発明によれば、超音波受信データだけでなく、測定が行われた場所を示す位置情報も入力として尿量データを出力する学習モデルを生成できる。また、本発明によれば、超音波受信データだけでなく、測定が行われた場所を示す位置情報も利用して尿量データを出力する尿量測定手段を有する超音波尿量測定装置が実現できる。また、本発明によれば、超音波受信データだけでなく、測定が行われた場所を示す位置情報も入力として尿量データを出力する学習済みプログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る第一の学習モデルの構成及び生成方法のフローチャートである。
図2】超音波受信データの説明図。
図3】実施の一形態に係る超音波尿量測定装置の説明図。
図4】本発明に係る第一の学習モデルの構成の一例を示す。
図5】本発明に係る第一の学習済みプログラムのフローチャートである。
図6】本発明に係る第二の学習モデルの構成及び生成方法のフローチャートである。
図7】実施の一形態に係る超音波尿量測定装置の説明図。
図8】本発明に係る第二の学習モデルの構成の一例を示す。
図9】本発明に係る第二の学習済みプログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。尚、実施形態は図で示された構成および手段に限定されるものではない。
【0015】
<実施例1>
図1は本発明に係る第一の学習モデル生成方法によって生成された学習モデルの構成(a)と、学習モデル生成方法のフローチャート(b)である。
学習モデル10は図1(a)に示すように超音波受信データ11を入力として尿量データ12を出力する構成である。
超音波受信データ11は、尿量測定のために被検体の膀胱に向けて送受信された超音波データで、複数の超音波振動子により送受信された受信信号のデータで構成されている。
【0016】
超音波受信データ11は、一次元配列、または二次元配列された振動子によって超音波送受信を行い取得した複数の受信データであり、膀胱の複数個所から得られた複数の受信データで構成される。
例えば、一次元に配列された超音波振動子によって膀胱の縦軸に沿って2か所以上送受信した2以上の受信データであっても良いし、膀胱の横軸に沿って2か所以上送受信した2以上の受信データであっても良い。また2次元配列された超音波振動子によって送受信した2か所以上の2以上の受信データであっても良い。
また、超音波受信データ11は、膀胱からの受信信号が含まれない受信データが含まれていても良い。
【0017】
尿量データ12は学習モデル10から出力される膀胱内の尿量を示すデータであり、超音波受信データ11と関連付けられたデータである。
尿量データ12は、容量、体積、重さ、被検体の体重比、増加量、減少量、変化量、変化率、多量、少量、適量、増加中、減少中、変化の有無、など表現形式を問わず、これらの情報のうちいずれか一つを含んでいれば良く、時系列データであっても、複数のデータでも、これらを組み合わせたものでも良く、膀胱の尿量と関連したデータであれば良い。
【0018】
学習モデル10は、入力層と中間層と出力層から構成されるニューラルネットワークであり、複数の中間層を備えていても良い。またこの構成に限定されるものではなく、コンボリューショナルニューラルネットワーク、クラスタリング、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン等のAIであっても良く、またこれらを組み合わせたものでも良い。図3は学習モデル10の構成の一例である。
【0019】
図1(b)は本発明に係る学習モデル生成方法のステップを示すフローチャートである。
ステップS100は、教師データとして複数の超音波受信データと尿量データを取得する工程である。
ステップS200はステップS100で取得した教師データに基づいて、超音波受信データを入力して尿量データを出力とする機械学習を行う機械学習工程である。機械学習はディープラーニング、強化学習、深層強化学習等のAI技術により行われる。ただし、これらに限られるものではなく、またこれらの技術を組み合わせても良い。
機械学習はコンピュータやCPU,GPU、FPGAなどで構成される演算手段や情報処理装置などにより実行される。
【0020】
次に本実施例に係る学習モデルの尿量測定方法について図2を用いて説明する。尚、図2で例示した超音波受信データはRF信号波形であるが、全波整流、対数圧縮増幅、位相データ、ベースバンド信号、包絡線処理された信号等、いずれの形式でも良く、また複数種類の波形で構成されていても良い。
図2(a1)及び(b1)は膀胱に向けて送受信された超音波受信データの例である。この超音波受信データ波形の縦軸は受信信号の強度を表し、横軸は超音波の送信時刻を基準とした経過時間であり、体表からの距離を表す。図2(a2)及び(b2)は被検体の体内の組織を模式的に表した図であり、超音波が送受信される経路の断面模式図である。図2(a1)、(b1)、(a2)及び(b2)において、記号Sは通常超音波振動子が当接する体表位置を示す(体表S、と記す)。記号Aは概球体状の膀胱の体表面に近い部分の膀胱前壁を表す(前壁A、と記す)。また記号Pは概球体状の膀胱の体表面から遠い部分の膀胱後壁を表す(後壁P、と記す)。記号Bは被検体の背中側を示す(背中B、と記す)。
【0021】
図2(a2)及び(b2)において、体表S-前壁A間は体表から膀胱前壁までの体組織を表す。前壁A-後壁P間は膀胱内部であり、すなわち尿を表す。後壁P-背中B間は膀胱後壁から背中までの体組織を表す。
【0022】
図2(a1)及び(b1)において、体表S-前壁A間は体表から膀胱前壁までの受信信号である。体表から皮膚、脂肪、筋肉等と音響インピーダンスの異なる組織を通り、また超音波送信直後の減衰の少ない領域であるため振幅の大きな超音波受信データとなっている。前壁Aの部分の超音波受信データは膀胱壁と尿との音響インピーダンスの差が大きいため、大きな反射波となっている。前壁A-後壁P間は尿からの受信信号であるが、尿からの反射は少ないため振幅の小さい又は変化の小さい超音波受信データとなっている。後壁Pの部分の超音波受信データは、尿と膀胱壁との音響インピーダンスの差が大きいため、大きな反射波となっている。
【0023】
ここで図2(a1)の超音波受信データを見てみる。この超音波受信データから前壁Aと後壁Pの抽出は容易に行えることが分かる。例えば閾値処理により小振幅の信号を除去した後に振幅の大きな部分A及びPを抽出する等の手法が考えられる。また、振幅の変化量の大きな部分に注目して前壁A及び後壁Pを抽出する等の手法が考えられる。また、受信信号の包絡線を求め、その包絡線の下降点および上昇点から前壁A及び後壁Pを抽出する等の手法が考えられる。
【0024】
以上の様な手法により前壁A及び後壁Pを抽出した後、前壁A-後壁P間の距離を膀胱の概直径と推定して膀胱の体積を計算したり、または前壁A-後壁P間の距離または体表Sからのそれぞれの距離と信号振幅から推定式で尿量を求めることができる。従来の超音波尿量測定装置はこのような手法により尿量を測定している。
【0025】
ここで同様に図2(b1)の受信データを見る。この超音波受信データでは前壁Aと後壁Pの振幅が比較的小さく、前記の手法で前壁Aまたは後壁Pの抽出は困難であることが分かる。これは、超音波振動子と被検体の当接が十分でなかったり、被検体の体質によって受信信号が弱かったり、尿からの反射波が大きいために相対的に膀胱壁の反射波が小さくなってしまったり、等の様々な要因により起こりえるものである。図2(b1)場合、前壁Aと後壁Bが抽出されず、従来の超音波尿量測定装置では尿量の測定は行えない。
【0026】
本発明に係る学習モデルは、図2(a1)や(b1)を一例とする受信データを入力として尿量データを出力するAIである。本発明に係る学習モデルは超音波受信データ波形の特徴、複数個所からの超音波受信データの組み合わせの特徴等から尿量データを出力するよう、機械学習されたものであり、尿量データの演算過程において膀胱壁の検出工程を含まないことを特徴とする。よって図2(b1)の様な超音波受信データであっても尿量データを出力することができる。
【0027】
以上説明した本発明に係る学習モデルの尿量測定方法は、以下に説明するその他の実施例に係る学習モデルについても同様である。
【0028】
<実施例2>
図3は本発明に係る超音波尿量測定装置の実施例である。本実施例における超音波受信データ、尿量データの例を説明する。
【0029】
超音波尿量測定装置2は、被検体の膀胱に超音波を送信し、膀胱または他の体組織から反射してきた超音波を受信し、その超音波受信データから膀胱内の尿量を計測、推定、予測する装置である。
【0030】
超音波データ生成手段100は、被検体へ超音波を送信する超音波送信手段と、被検体からの反射超音波を受信して電気信号に変換して信号処理を行う超音波受信手段と、受信手段で受信した超音波受信信号のAD変換等を行うデータ生成手段などからなり、超音波受信データ11を出力する。さらに超音波データ生成手段を制御する操作スイッチや、操作スイッチからの信号を送受信手段に設定したり、装置全体の動作を制御する制御手段を有する。
【0031】
超音波の送受信は、一次元配列、または二次元配列された超音波振動子によって行われる。
超音波受信データ11は、一次元配列、または二次元配列された超音波振動子によって超音波送受信を行った複数の受信データであり、膀胱の複数個所から得られた複数の受信データで構成される。
例えば、膀胱の縦軸に沿って2か所以上送受信した2以上の受信データであっても良いし、膀胱の横軸に沿って2か所以上送受信した2以上の受信データであっても良いし、2次元的に送受信した2か所以上の2以上の受信データであっても良い。また、超音波受信データは膀胱以外への送受信による受信データが含まれていても良い。
【0032】
超音波受信データ11はAモードデータ、全波整流処理されたデータ、非線形圧縮されたデータ、フィルタ処理されたデータ、周波数スペクトラムデータなど形式は限定されず、また少なくとも一種類以上のデータであれば良い。また、同一個所へ複数回送受信を行った受信データで構成されていても良い。
また超音波受信データ11には膀胱のどの位置の送受信データであるか等の超音波送受信を行った超音波振動子の配列情報が含まれていても良い。
【0033】
以上説明した超音波受信データ11は尿量データ生成手段101に入力される。尿量データ生成手段101は、実施例1で説明した学習モデル生成方法により学習された学習モデル10により尿量データ12を出力する処理を行う、コンピュータプログラム実行手段である。
尿量データ生成手段101は超音波尿量測定装置に組み込まれた図示しないCPU、GPU、FPGA等の演算手段で実行されても良い。また、超音波尿量測定装置と接続されたコンピュータまたはネットワークで接続された別のコンピュータで実行されても良い。
【0034】
尿量データ12は、尿の容量、体積、重さ、被検体の体重比、増加量、減少量、変化量、変化率、多量、少量、適量、増加中、減少中、変化無し、測定不能、など表現形式を問わず、これらの情報のうちいずれか一つを含んでいれば良く、時系列データであっても、複数種類のデータでも、これらを組み合わせたものでも良く、膀胱の尿量と関連したデータであれば良い。
【0035】
尿量データ12は、超音波尿量測定装置を構成するディスプレイ等の表示装置に文字、図形、画像、音声、またはこれらの組み合わせで表示されても良いし、図示しないデータ保存手段に保存されても良いし、図示しないネットワーク上のコンピュータ、サーバー、他の超音波尿量測定装置や医用装置などに転送されても良い。
【0036】
<実施例3>
図5は本発明の一つの実施形態である第一の学習済みプログラム150のフローチャートである。学習済みプログラム150は、コンピュータやCPU、GPUで実行されるプログラムであっても良いし、FPGA等のハードウェア演算素子で実行させるための配置情報であっても良い。形態は特に限定されないが演算装置や情報処理装置を機能させるためのデータであれば良い。
【0037】
学習済みプログラム150は入力層と中間層と出力層から構成される。構成はこれに限定されないが、例えば複数の中間層を備えるニューラルネットワークであっても良いし、コンボリューショナルニューラルネットワーク、クラスタリング、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン等のAIであっても良く、またこれらを組み合わせたものでも良い。
【0038】
入力層には超音波受信データが入力され、出力層は尿量データを出力する。
中間層は、複数の超音波受信データと尿量データからなる教師データにより、機械学習によってパラメータが最適化されている。
【0039】
機械学習はディープラーニング、強化学習、深層強化学習等のAI技術により行われる。ただし、これらの技術に限られるものではなく、複数の技術を組み合わせても良い。機械学習はコンピュータやCPU,GPU、FPGAなどで構成される演算手段や情報処理装置などにより実行されていれば良く、特に手段は限定されない。
【0040】
学習済みモデル150は、データの取得ステップS400で超音波受信データを取得する。
取得した超音波受信データはステップS410で学習済みモデル150の入力層に入力される。
入力された超音波受信データはステップS420で演算され、演算結果がステップS430で出力される。演算結果はステップS440で尿量データとして図示しない出力手段に出力される。
【0041】
以上で説明した第一の学習モデルに係る、実施例1の学習モデル生成方法、実施例2の超音波尿量測定装置、実施例3の学習済みモデルによれば、この発明は、膀胱壁の検出が困難な超音波受信データからでも尿量データを得ることができる。
【0042】
<実施例4>
図6は本発明に係る第二の学習モデル生成方法によって生成された学習モデルの構成(a)と、学習モデル生成方法のフローチャート(b)である。
学習モデル510は図6(a)に示すように超音波受信データ511と位置情報512を入力として尿量データ514を出力する構成である。
【0043】
超音波受信データ511は、尿量測定のために被検体の膀胱に向けて送受信された超音波データで、複数の超音波振動子からのデータで構成されている。
【0044】
位置情報512は、尿量測定が行われた場所を示す位置情報である。ただし、位置情報は、移動軌跡情報などの過去の被検体の位置情報であっても良い。
【0045】
尿量データ514は学習モデル510から出力される膀胱内の尿量を示すデータであり、超音波受信データ511と関連付けられたデータである。
尿量データ514は、容量、体積、重さ、被検体の体重比、増加量、減少量、変化量、変化率、多量、少量、適量、増加中、減少中、変化の有無、など表現形式を問わず、これらの情報のうちいずれか一つを含んでいれば良く、時系列データであっても、複数のデータでも、これらを組み合わせたものでも良く、膀胱の尿量と関連したデータであれば良い。
【0046】
学習モデル510は、入力層と中間層と出力層から構成されるニューラルネットワークであり、複数の中間層を備えていても良い。またこの構成に限定されるものではなく、コンボリューショナルニューラルネットワーク、クラスタリング、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン等のAIであっても良く、またこれらを組み合わせたものでも良い。図8は学習モデル510の構成の一例である。
【0047】
図6(b)は本発明に係る学習モデル生成方法のステップを示すフローチャートである。
ステップS610は、教師データとして複数の超音波受信データと位置情報と尿量データを取得する工程である。
ステップS620はステップS610で取得した教師データに基づいて、超音波受信データと位置情報を入力して尿量データを出力とする機械学習を行う機械学習工程である。機械学習はディープラーニング、強化学習、深層強化学習等のAI技術により行われる。ただし、これらに限られるものではなく、またこれらの技術を組み合わせても良い。
機械学習はコンピュータやCPU,GPU、FPGAなどで構成される演算手段や情報処理装置などにより実行される。
【0048】
尚、第二の学習モデルにおいても、第一の学習モデルと同様に超音波受信データから尿量データを出力する演算過程において、膀胱壁の検出工程を含まない解析手法によって尿量データを出力するものである。
【0049】
<実施例5>
図7は本発明に係る超音波尿量測定装置の実施例である。本実施例における超音波受信データ、位置情報、尿量データの例を説明する。
【0050】
超音波尿量測定装置5は、被検体の膀胱に超音波を送信し、膀胱または他の体組織から反射してきた超音波を受信し、その超音波受信データから膀胱内の尿量を計測、推定、予測する装置である。
【0051】
超音波データ生成手段100は、被検体へ超音波を送信する超音波送信手段と、被検体からの反射超音波を受信して電気信号に変換して信号処理を行う超音波受信手段と、超音波受信手段で受信した超音波受信信号のAD変換等を行うデータ生成手段などからなり、超音波受信データ511を出力する。さらに超音波データ生成手段を制御する操作スイッチや、操作スイッチからの信号を送受信手段に設定したり、装置全体の動作を制御する制御手段を有する。
【0052】
超音波の送受信は、一次元配列、または二次元配列された超音波振動子によって行われる。
受信データ511は、一次元配列、または二次元配列された超音波振動子によって超音波送受信を行った複数の受信データであり、膀胱の複数個所から得られた複数の受信データで構成される。
例えば、膀胱の縦軸に沿って2か所以上送受信した2以上の受信データであっても良いし、膀胱の横軸に沿って2か所以上送受信した2以上の受信データであっても良いし、2次元的に2か所以上送受信した2以上の受信データであっても良い。また、超音波受信データ511は膀胱以外への送受信による受信データが含まれていても良い。
【0053】
超音波受信データ511はAモードデータ、全波整流処理されたデータ、非線形圧縮されたデータ、フィルタ処理されたデータ、周波数スペクトラムデータなど形式は限定されず、また少なくとも一種類以上のデータであれば良い。また、同一個所へ送受信を行った受信データで構成されていても良い。
また超音波受信データ511には膀胱のどの位置の送受信データであるか等の超音波送受信を行った超音波素子の配列情報が含まれていても良い。
【0054】
位置情報512は、尿量測定が行われた場所を示す位置情報である。例えば医療施設の所在地、医療施設内での検査室、病室、ICU、一般外来、救急外来などの検査場所を特定する位置情報などである。
また、在宅医療や遠隔医療などでは被検体の居所、または居所内での寝室、居間、トイレなどの場所を特定する位置情報である場合もあるし、さらに屋内に限られず野外における位置情報であっても良い。
【0055】
位置情報512の取得は、超音波尿量測定装置に組み込まれた位置情報検出手段513に構成されたGPSや、超音波尿量測定装置が接続されたネットワーク接続情報、手動で入力された情報、尿量測定を行った者の位置情報等から取得しても良い。
また、超音波尿量測定装置がスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピューターなどの携帯型情報端末との組み合わせて構成される場合、この携帯型情報端末が備えるGPSから取得しても良い。
ただし、これらに限定されるものではなく、携帯型情報端末のネットワーク接続情報、携帯型情報端末に手動で入力された情報、携帯型情報端末を携帯していた検査者の位置情報等から取得しても良く、また携帯型情報端末の移動軌跡から特定した位置情報でも良い。
【0056】
以上説明した超音波受信データ511、位置情報512は尿量データ生成手段501に入力される。尿量データ生成手段501は、実施例4で説明した学習モデル生成方法により学習された学習モデル510により尿量データ514を出力する処理を行う、コンピュータプログラム実行手段である。
尿量データ生成手段501は超音波尿量測定装置に組み込まれた図示しないCPU、GPU、FPGA等の演算手段で実行されても良い。また、超音波尿量測定装置と接続されたコンピュータまたはネットワークで接続された別のコンピュータで実行されても良い。
【0057】
尿量データ514は、尿の容量、体積、重さ、被検体の体重比、増加量、減少量、変化量、変化率、多量、少量、適量、増加中、減少中、変化無しなど表現形式を問わず、これらの情報のうちいずれか一つを含んでいれば良く、時系列データであっても、複数種類のデータでも、これらを組み合わせたものでも良く、膀胱の尿量と関連したデータであれば良い。
【0058】
尿量データ514は、超音波尿量測定装置を構成するディスプレイ等の表示装置に文字、図形、画像、音声、またはこれらの組み合わせで表示されても良いし、図示しないデータ保存手段に保存されても良いし、図示しないネットワーク上のコンピュータ、サーバー、他の医用装置などに転送されても良い。
【0059】
<実施例6>
図9は本発明の一つの実施形態である第二の学習済みプログラム515のフローチャートである。学習済みプログラム515は、コンピュータやCPU、GPUで実行されるプログラムであっても良いし、FPGA等のハードウェア演算素子で実行させるための配置情報であっても良い。形態は特に限定されないが演算装置や情報処理装置を機能させるためのデータであれば良い。
【0060】
学習済みプログラム515は入力層と中間層と出力層から構成される。構成はこれに限定されないが、例えば複数の中間層を備えるニューラルネットワークであっても良いし、コンボリューショナルニューラルネットワーク、クラスタリング、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン等のAIであっても良く、またこれらを組み合わせたものでも良い。
【0061】
入力層には超音波受信データと位置情報が入力され、出力層は尿量データを出力する。
中間層は、複数の超音波受信データと位置情報と尿量データを教師データとして、機械学習によってパラメータが最適化されている。
【0062】
機械学習はディープラーニング、強化学習、深層強化学習等のAI技術により行われる。ただし、これらの技術に限られるものではなく、複数の技術を組み合わせても良い。機械学習はコンピュータやCPU,GPU、FPGAなどで構成される演算手段や情報処理装置などにより実行されていれば良く、特に手段は限定されない。
【0063】
学習済みモデル515は、データの取得ステップS640で図示しない入力手段によって超音波受信データと位置情報を取得する。
取得した超音波受信データと位置情報はステップS641で学習済みモデル515の入力層に入力される。
入力された超音波受信データと位置情報はステップS642で演算され、演算結果がステップS643で出力される。演算結果はステップS644で尿量データとして図示しない出力手段に出力される。
【0064】
以上に説明した第二の学習モデルに係る実施例4の学習モデル生成方法、実施例5の超音波尿量測定装置、実施例6の学習済みモデルによれば、この発明は、超音波受信データからだけでなく、尿量を測定した位置情報も入力とすることで、より有用な尿量データを得ることができる。
【0065】
以下に位置情報を例示して、本発明の効果について説明する。
【0066】
位置情報512が示す測定場所が検査室や一般外来等であった場合、通常被験者は検査ベッドに寝た状態であるので、膀胱に尿が溜まった状態であることが想定される。この場合、超音波受信データは良好な信号品質であること、また尿量は最大値を示すことが予想されるので、これに適応した尿量測定を行うことができる。
【0067】
位置情報512が示す測定場所がトイレである場合、排尿前であれば膀胱に尿が溜まった(尿意が有る)状態であり、排尿後であれば尿が溜まっていない(尿意が無い)状態であることが想定される。
排尿前後の判断は、例えば他の部屋からトイレへの移動直後の測定データであれば排尿前、またトイレから他の部屋への移動直前の測定データであれば排尿後、と判断できる。
【0068】
位置情報512が示す測定場所が病室、寝室などである場合、測定データは徐々に尿が増加していく態様を示すことが予想されるので、次回の排尿時期を予測したり、また、尿量の減少により意図しない排尿を検出したり、排泄管理情報として介護に有用な情報を提供することができる。
【0069】
以上述べた通り、本発明は人工知能による尿量測定を行う際に、超音波受信データだけでなく被検体の位置情報も入力することによって、より高精度で有用な尿量データを得ることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 被験体
2 超音波尿量測定装置
3 膀胱
5 超音波尿量測定装置
10 第一の学習モデル
11 超音波受信データ
12 尿量データ
20 入力層
21 中間層
22 出力層
100 超音波データ生成手段
101 尿量データ生成手段
110 送受信超音波
150 第一の学習済みプログラム
501 尿量データ生成手段
510 第二の学習モデル
511 超音波受信データ
512 位置情報
513 位置情報検出手段
514 尿量データ
515 第二の学習済みプログラム
520 入力層
521 中間層
522 出力層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9