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特許7093112洗浄液再生装置、洗浄装置および洗浄液再生方法
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  • 特許-洗浄液再生装置、洗浄装置および洗浄液再生方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】洗浄液再生装置、洗浄装置および洗浄液再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/00 20060101AFI20220622BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20220622BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20220622BHJP
   C23G 5/04 20060101ALN20220622BHJP
【FI】
B01D3/00 B
B01D5/00 E
B08B3/10 Z
C23G5/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019066044
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163281
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591282711
【氏名又は名称】アクア化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100182796
【弁理士】
【氏名又は名称】津島 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100181308
【弁理士】
【氏名又は名称】早稲田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】岸永 成美
(72)【発明者】
【氏名】川畑 彩華
(72)【発明者】
【氏名】仲野 真一
(72)【発明者】
【氏名】和田 龍一
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122298(JP,A)
【文献】特開2015-040217(JP,A)
【文献】特開平10-202001(JP,A)
【文献】特開平02-207801(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01878479(EP,A1)
【文献】特開平10-057909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D1/00-8/00
B08B3/00-3/14
C23G1/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済の洗浄液を回収する第1回収槽と、
該第1回収槽に接続され、第1回収槽から使用済の洗浄液が送られる蒸留器と、
該蒸留器から留出したガスを冷却し、洗浄液に含まれる有機溶剤成分を凝縮させる第1凝縮器と、
該第1凝縮器で凝縮した有機溶剤成分を回収する第2回収槽と、を備え、
前記第2回収槽は、洗浄運転待機時に前記有機溶剤成分を前記第1回収槽へ送る手段と、洗浄運転時に前記有機溶剤成分を洗浄部へ送る手段とを有することを特徴とする洗浄液再生装置。
【請求項2】
前記第2回収槽は、前記第1回収槽内に収容された洗浄液の液面よりも上方に位置し、
前記有機溶剤成分を前記第2回収槽から前記第1回収槽へ送る手段が、前記第2回収槽に設けたオーバーフロー部であり、
前記有機溶剤成分を前記第2回収槽から前記洗浄部へ送る手段が、前記第2回収槽に接続された給送管である、請求項1に記載の洗浄液再生装置。
【請求項3】
前記洗浄部が、前記第2回収槽から送られた前記有機溶剤成分を加熱しガスに変換するための蒸気発生手段と、前記ガスにより被洗浄物を蒸気洗浄し乾燥する乾燥槽とを備える請求項1または2に記載の洗浄液再生装置。
【請求項4】
前記第1凝縮器より下流側に、第1凝縮器における冷却温度で凝縮しない他の成分を凝縮させる第2凝縮器を設けた請求項1~3のいずれかに記載の洗浄液再生装置。
【請求項5】
前記他の成分が水であり、前記第1凝縮器における冷却温度が水の沸点よりも高い請求項4に記載の洗浄液再生装置。
【請求項6】
前記洗浄液が、有機溶剤成分および水を含む非引火性洗浄液である請求項1~5のいずれかに記載の洗浄液再生装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の洗浄液再生装置を備えた洗浄装置。
【請求項8】
使用済の洗浄液を第1回収槽に回収する工程と、
前記第1回収槽から使用済の洗浄液を蒸留器に送り、蒸留する工程と、
該蒸留器から留出した洗浄液のガスを第1凝縮器に送り、洗浄液に含まれる有機溶剤成分を凝縮させる工程と、
前記第1凝縮器で凝縮した有機溶剤成分を第2回収槽で回収する工程と、を含み、
洗浄運転待機時には、前記第2回収槽に回収された前記有機溶剤成分を前記第1回収槽へ送り、洗浄運転時には前記有機溶剤成分を前記第2回収槽から洗浄部へ送ることを特徴とする洗浄液再生方法。
【請求項9】
前記洗浄運転待機時には、前記第2回収槽に回収された前記有機溶剤成分を第2回収槽からオーバーフローさせて前記第1回収槽へ送り、
洗浄運転時には、前記有機溶剤成分を前記第2回収槽から給送管を経て洗浄部へ送る請求項に記載の洗浄液再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種機械部品等の加工品の洗浄液を再生するための洗浄液再生装置、これを用いる洗浄装置、および洗浄液再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品等の加工には種々の加工油が使用されるため、加工品を洗浄して加工油を除去する必要がある。従来使用されている洗浄液としては、アルコール系、炭化水素系などの有機溶剤が使用されている。
【0003】
一方、近時は、水溶性加工油を用いた金属加工も広く行われている。そのため、加工品に付着した、いわゆる水溶性汚れを除去するために、水性洗浄液が使用される。水性洗浄液として、例えばグリコールエーテル類等の有機溶剤成分と水を含む非引火性洗浄液を利用すると、安全性が高いという利点がある。
【0004】
水性洗浄液は、使用後、再生し繰り返し使用するのが環境面や省資源の面からも好ましい。特許文献1には、使用済の洗浄液を蒸留後、第1段冷却手段で水の沸点よりも高い冷却温度で洗浄液中の有機溶剤成分を凝縮させ、第2段冷却手段で水の沸点よりも低い冷却温度で水蒸気を凝縮させて、洗浄液溶剤を再生する装置および方法が記載されている。
【0005】
ところで、洗浄装置は連続的に運転状態にあるのではなく、運転と停止とを繰り返している。そのため、洗浄運転の停止中は、再生装置も運転を停止することになるが、再び運転を開始する場合に、蒸留器内を再度昇温させて、蒸留温度を安定させる必要がある。これにより、洗浄液の組成を安定させることができる。しかし、洗浄装置の停止ごとに再生装置も停止させる場合は、再稼動に時間とコストがかかり、効率が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-172468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、再生した洗浄液で効率よく洗浄操作を行うことができる洗浄液再生装置、洗浄装置および洗浄液再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の洗浄液再生装置は、使用済の洗浄液を回収する第1回収槽と、該第1回収槽に接続され第1回収槽から使用済の洗浄液が送られる蒸留器と、該蒸留器から留出したガスを冷却し、洗浄液に含まれる有機溶剤成分を凝縮させる第1凝縮器と、該第1凝縮器で凝縮した有機溶剤成分を回収する第2回収槽と、を備え、前記第2回収槽は、洗浄運転待機時に前記有機溶剤成分を前記第1回収槽へ送る手段と、洗浄運転時に前記有機溶剤成分を洗浄部へ送る手段とを有することを特徴とする。
本発明の洗浄装置は、上記洗浄液再生装置を備えたものである。
本発明の洗浄液再生方法は、使用済の洗浄液を第1回収槽に回収する工程と、前記第1回収槽から使用済の洗浄液を蒸留器に送り蒸留する工程と、該蒸留器から留出したガスを第1凝縮器に送り、洗浄液に含まれる有機溶剤成分を凝縮させる工程と、前記第1凝縮器で凝縮した有機溶剤成分を第2回収槽で回収する工程と、を含み、洗浄運転待機時には、前記第2回収槽に回収された前記有機溶剤成分を前記第1回収槽へ送り、洗浄運転時には前記有機溶剤成分を前記第2回収槽から洗浄部へ送ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄運転時はもとより、洗浄運転待機時にも洗浄液の蒸留再生を行うので、蒸留温度が安定化する。また、第1凝縮器で凝縮した有機溶剤成分は、比較的高温である。そのため、この有機溶剤成分を洗浄部に送って洗浄操作に使用すると、有機溶剤成分の再加熱工程が簡略化され、洗浄操作の効率が向上すると共に、省エネルギーにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る洗浄液再生装置を備えた洗浄装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る洗浄装置を図1に基づいて説明する。図1に示すように、洗浄装置100は、第1洗浄槽1、第2洗浄槽2および乾燥槽3を備える。第1洗浄槽1および第2洗浄槽2は槽内に超音波振動子(US)6が設置されており、機械部品等の被洗浄物(以下、ワークということがある)4は、第1洗浄槽1および第2洗浄槽2の順で超音波洗浄され、乾燥槽3ですすぎ(蒸気洗浄)後、乾燥される。
【0012】
洗浄液は、ワーク4とは逆に、第2洗浄槽2および第1洗浄槽1の順で送られ、第1洗浄槽1から排出された洗浄液は第1蒸留器5に送られ、洗浄液の蒸留再生が行われる。第1蒸留器5で汚れ成分を分離した洗浄液は、第2洗浄槽2および第1洗浄槽1の順で循環される。
【0013】
使用する洗浄液は、有機溶剤成分を含む非引火性洗浄液であるのが好ましい。非引火性の有機溶剤成分としては、例えばグリコールエーテル類を含む有機溶剤成分が挙げられる。第1洗浄槽1および第2洗浄槽2での洗浄に使用する洗浄液は、有機溶剤成分と水を含んでいてもよい。水の含有量は洗浄液総量に対して5~40体積%程度、好ましくは10~30体積%程度である。
【0014】
グリコールエーテル類は、常圧下での沸点が120~275℃、好ましくは135~230℃である。これにより、有機溶剤成分を水と分離しやすくなり、かつ洗浄液の乾燥性に優れる。すなわち、グリコールエーテル類の沸点が120℃未満であると、蒸留再生時に水と分離しにくくなる。また、グリコールエーテル類の沸点が275℃を超えると、乾燥工程でワークが乾燥しにくくなる。
上記のように、グリコールエーテル類は、水との間に沸点差があることによって、水と分離しやすくなり、そのため短時間で蒸留量・温度・洗浄液組成を安定化することができる。
【0015】
使用可能なグリコールエーテル類としては、例えばプロピレングリコール類およびエチレングリコール類から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0016】
プロピレングリコール類の具体例としては、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0017】
エチレングリコール類の具体例としては、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールn-プロピルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールtert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールn-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどが挙げられる。
【0018】
また、プロピレングリコール類およびエチレングリコール類は、引火点が30℃以上、好ましくは40℃以上である。このような低い引火点のグリコールエーテル類が使用可能であるのは、水と混合するからである。これにより、非引火性の洗浄液が得られる。なお、引火点はタグ密閉式引火点測定器(JIS K 2265-1)により測定される。
【0019】
本発明では、特に水溶性汚れに対して効果的な親水性のグリコールエーテル類を使用するのが好ましい。このような親水性のグリコールエーテル類としては、例えばプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルなどのプロピレングリコール類;およびエチレングリコールn-プロピルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールtert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどのエチレングリコール類が挙げられる。
【0020】
また、油溶性汚れを除去するために親油性溶剤を混合してもよい。親油性溶剤は、常圧下での沸点が水の沸点より高いものが好ましいが、特に限定されない。親油性溶剤としては、親油性のグリコールエーテル類の他、例えば、ヘキサン、ナフサなどの炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤などが挙げられる。親油性溶剤の添加量は、洗浄液組成物総量に対して30~60体積%程度であるのがよい。また、洗浄液組成物に、酸化防止剤等を適宜添加することができる。
【0021】
図1に戻って、第1洗浄槽1から排出された使用済の洗浄液の一部は、三方弁7を操作して洗浄液再生装置101に送られる。洗浄液再生装置101は、三方弁7を経て送られた使用済の洗浄液を回収する第1回収槽8と、第1回収槽8に接続された第2蒸留器9と、この第2蒸留器9から留出したガスが送られる第1凝縮器10と、この第1凝縮器10の下流側に接続された第2凝縮器11とを備える。第2凝縮器11には真空ポンプ14が接続される。すなわち、第2蒸留器9から留出したガスは、第1凝縮器10および第2凝縮器11を経て真空ポンプ14に送られる。なお、真空ポンプ14によって、第2蒸留器9内は減圧雰囲気に維持され、洗浄液の減圧蒸留が行われる。真空ポンプ14は、さらに、乾燥槽3にも接続されており、乾燥槽3内を減圧して蒸気洗浄および乾燥の効率を向上させる。
【0022】
第1凝縮器10は、第2蒸留器9から留出したガス(有機溶剤成分と水を含有)を水の沸点よりも高い冷却温度で凝縮させる。洗浄液中の有機溶剤成分は、水の沸点より高いので、主として有機溶剤成分が凝縮する。
また、第2凝縮器11は、水の沸点より低い冷却温度に設定されている。これにより、第1凝縮器10から排出されたガスから水分が凝縮し除去される。
【0023】
第1回収槽8は、上部に第2回収槽12が収容されており、第1凝縮器10から凝縮した有機溶剤成分が第2回収槽12に回収される。第2回収槽12は、第1回収槽8内に収容された洗浄液の液面よりも上方に位置する。第2回収槽12は、上部が開口するか、または壁部に図示しない孔ないし開口部を形成して構成されるオーバーフロー部を有する。そして、第2回収槽12からオーバーフローした有機溶剤成分は第1回収槽8に収容される。また、第2回収槽12には、ポンプ15を有する給送管17を介して蒸気発生器16が接続される。これにより、第2回収槽12に回収された有機溶剤成分を蒸気発生器16に送り、有機溶剤成分を加熱して蒸気を発生させる。発生した蒸気は乾燥槽3に送られ、ワーク4の蒸気洗浄に使用される。
【0024】
なお、第2回収槽12は、第1回収槽8内に収容されているが、これに限定されるものではなく、例えば第1回収槽8の上方に設置して、前記したオーバーフロー部からオーバーフローした有機溶剤成分が第1回収槽8内に落下するようにしてもよい。あるいは、オーバーフロー部を設けずに、第2回収槽12と第1回収槽8とを給送管で接続して、有機溶剤成分を第2回収槽12から第1回収槽8に送るようにしてもよい。その際、ポンプ15を設けた給送管17との間で図示しない切替弁を設けるなどして流路を制御する必要がある。
【0025】
一方、第2凝縮器11には、第3回収槽13が接続され、第2凝縮器11にて冷却凝縮した水が回収される。回収した水はそのまま廃棄するか、あるいは有機溶剤成分と混合して洗浄液として再利用してもよい。
【0026】
次に、本実施形態におけるワーク4の洗浄方法および洗浄液再生方法を説明する。ワーク4は、第1洗浄槽1および第2洗浄槽2の順に送られて超音波洗浄され、ついで乾燥槽3に送られて、有機溶剤成分による蒸気洗浄(すすぎ)後、乾燥される。
【0027】
洗浄液は、ワーク4とは逆に、第2洗浄槽2および第1洗浄槽1の順で送られ、第1洗浄槽1から排出された洗浄液は第1蒸留器5に送られる。第1蒸留器5において、使用済の洗浄液から油分等の汚れ成分を分離する蒸留再生が行われる。蒸留再生後、凝縮器(図示せず)により液化させた洗浄液は、再び、第2洗浄槽2および第1洗浄槽1の順で送られ、ワーク4の洗浄が行われる。汚れ成分は、第1蒸留器5の底部から排出される。
第1蒸留器5の蒸留温度は、洗浄液を構成する有機溶剤と水とが揮発して、汚れ成分を分離するのに十分高い温度である。蒸留は常圧下ないし減圧下で行うことができる。
【0028】
洗浄運転開始時の他、定常運転時に第1回収槽8内の洗浄液量が少なくなった場合、第1、第2洗浄槽1,2もしくは第1蒸留器5から排出された洗浄液の一部は、三方弁7を操作して、第1回収槽8に送られる。第1回収槽8に回収・貯留された洗浄液は、第2蒸留器9に送られ、第1蒸留器5と同様にして蒸留され、洗浄液中の有機溶剤成分と水とが蒸発し、第2蒸留器9から留出される。第2蒸留器9には、液量を検知するセンサ18(例えば、液面を検知するフロートセンサ等)が設置されており、液量が少なくなると、バルブ19が開いて、洗浄液が第2蒸留器9内に供給される。
【0029】
留出したガスは、真空ポンプ14にて第1凝縮器10および第2凝縮器11の順に送られる。第1凝縮器10では、水の沸点よりも高い冷却温度で洗浄液中の有機溶剤成分を凝縮させ、水蒸気と分離する。第1凝縮器10で冷却凝縮した有機溶剤成分を第2回収槽12で回収する。一方、第1凝縮器10から排出された水蒸気は、第2凝縮器11で水の沸点以下に冷却され、水を凝縮させ、第3回収槽13で回収する。
【0030】
洗浄運転開始時には、上記のように、第2蒸留器9から留出したガスを第1凝縮器10に送り、有機溶剤成分を凝縮させ、第2回収槽12に回収する。
洗浄運転時(すなわち、蒸気洗浄時)には、ポンプ15を駆動させて、第2回収槽12内に回収された有機溶剤成分を給送管17にて蒸気発生器16に送り、蒸気発生器16内で加熱し、発生した蒸気を乾燥槽3に送って、ワーク4の蒸気洗浄を行う。
その際、第1凝縮器10で凝縮した有機溶剤成分は、水の沸点よりも高い冷却温度で冷却されているために比較的高温であるので、蒸気発生器16での蒸気化、すなわち再加熱工程を簡単にかつ短時間で行うことができ、洗浄操作の効率が向上すると共に、省エネルギーにもなる。
【0031】
一方、洗浄運転待機時には、ポンプ15を停止するが、第2蒸留器9の運転は継続させる。そのため、第2回収槽12には、第1凝縮器10で冷却凝縮した有機溶剤成分が洗浄運転時と変わらず、第2回収槽12に送られるので、第2回収槽12に収容される有機溶剤成分の量は増え続ける。そして、遂には、有機溶剤成分はオーバーフロー部よりオーバーフローして、第1回収槽8内に落下し、再び第2蒸留器9に送られて蒸留される。つまり、有機溶剤成分は第1回収槽8、第2蒸留器9、第1凝縮器10および第2回収槽12の順で循環する。
【0032】
このようにして、洗浄運転待機中も第2蒸留器9で有機溶剤成分の蒸留再生を継続させているので、第2蒸留器9の蒸留温度が安定し、蒸気量も安定するため、第2蒸留器9からの留出蒸気の組成も安定する。そのため、洗浄液の再生および洗浄操作を効率よく行うことができる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の改良や改善が可能である。例えば、上記実施形態では、有機溶剤成分および水を含む非引火性洗浄液を使用する洗浄液再生装置や再生方法について説明したが、有機溶剤成分単独の洗浄液を使用してもよい。その場合には、第2凝縮器11および第3回収槽13は省略することができる。また、水に代えて、他の有機溶剤成分等の他の成分を使用してもよい。このとき、他の成分の沸点は、有機溶剤成分と分離可能な沸点差を有しているのが望ましい。
【符号の説明】
【0034】
1 第1洗浄槽
2 第2洗浄槽
3 乾燥槽
4 ワーク
5 第1蒸留器
6 超音波振動子
7 三方弁
8 第1回収槽
9 第2蒸留器
10 第1凝縮器
11 第2凝縮器
12 第2回収槽
13 第3回収槽
14 真空ポンプ
15 ポンプ
16 蒸気発生器
17 給送管
18 液量を検知するセンサ
19 バルブ
100 洗浄装置
101 洗浄液再生装置
図1