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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】骨固定プレート
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/80 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
A61B17/80
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019218076
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021087505
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593090204
【氏名又は名称】岸上 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】岸上 義弘
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-308559(JP,A)
【文献】特表2019-518528(JP,A)
【文献】特開2005-065762(JP,A)
【文献】仏国特許発明第01051847(FR,A)
【文献】中国特許出願公開第105147382(CN,A)
【文献】国際公開第2013/170164(WO,A1)
【文献】特表2010-510852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56-17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折により分断された第一の骨と第二の骨とを接合した状態で固定する骨固定プレートであって、
前記第一の骨に固定される第一の固定部と、前記第一の骨から離間する位置に固定される第一の対向部と、前記第一の固定部と前記第一の対向部とを連結する第一の連結部と、を備える第一プレートと、
前記第二の骨に固定される第二の固定部と、前記第二の骨から離間する位置に固定される第二の対向部と、前記第二の固定部と前記第二の対向部とを連結する第二の連結部と、を備える第二プレートと、を備え、
前記第一の対向部と前記第二の対向部とは、互いに近接離間可能に構成されるとともに他方向の相対変位及び相対回転が規制され、
前記第一の連結部及び前記第二の連結部における前記第一の骨の周方向の幅は、前記第一の固定部及び前記第二の固定部における前記周方向の幅よりも小さくなるように形成され、
前記第一の連結部が伸縮可能に構成されることにより、前記第一の固定部と前記第一の対向部との間隔が変更可能とされ、
前記第二の連結部が伸縮可能に構成されることにより、前記第二の固定部と前記第二の対向部との間隔が変更可能とされる、骨固定プレート。
【請求項2】
前記第一の連結部は、前記第一の固定部から延出される第一の固定側基部と、前記第一の対向部から延出される第一の対向側基部と、を備え、
前記第二の連結部は、前記第二の固定部から延出される第二の固定側基部と、前記第二の対向部から延出される第二の対向側基部と、を備え、
前記第一の固定側基部及び前記第一の対向側基部は、一方が他方に挿入された状態で進退可能に連結されることにより、前記第一の連結部が伸縮可能とされ、
前記第二の固定側基部及び前記第二の対向側基部は、一方が他方に挿入された状態で進退可能に連結されることにより、前記第二の連結部が伸縮可能とされる、請求項1に記載の骨固定プレート。
【請求項3】
前記第一の連結部は、前記第一の固定部から延出される第一の固定側基部と、前記第一の対向部から延出される第一の対向側基部と、を備え、
前記第二の連結部は、前記第二の固定部から延出される第二の固定側基部と、前記第二の対向部から延出される第二の対向側基部と、を備え、
前記第一の固定側基部及び前記第一の対向側基部は、互いに近接離間可能に第一の調節部材により連結されることにより、前記第一の連結部が伸縮可能とされ、
前記第二の固定側基部及び前記第二の対向側基部は、互いに近接離間可能に第二の調節部材により連結されることにより、前記第二の連結部が伸縮可能とされる、請求項1に記載の骨固定プレート。
【請求項4】
前記第一の対向部と前記第二の対向部とは、互いの近接離間方向の相対位置を固定する固定状態と、互いの近接離間方向の相対位置を可変とする可動状態と、の何れかの状態とされる、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の骨固定プレート。
【請求項5】
前記第一の固定部と前記第二の固定部とは、前記第一の骨及び前記第二の骨の軸方向に長さが可変とされる、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の骨固定プレート。
【請求項6】
前記第一の連結部と前記第一の固定部との連結部分、前記第一の連結部と前記第一の対向部との連結部分、前記第二の連結部と前記第二の固定部との連結部分、及び、前記第二の連結部と前記第二の対向部との連結部分、のうち少なくとも一箇所に、互いの相対角度を可変とする角度調整機構が設けられる、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の骨固定プレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折時に骨を固定するために用いる骨固定プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば大腿骨のように比較的大きな骨を骨折した場合に、分断された骨同士を接合した状態で固定するための骨固定プレートが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-517349号公報
【文献】特開2011-139865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
骨固定プレートによって骨折部分を完全に固定すると、骨折部分の治癒(癒合)が遅くなることが知られている。一方、骨折部分で大きな動きが生じると微細な毛細血管を断裂させるため、骨癒合を阻害することが知られている。そこで、骨折を良質に治癒させるために、骨折部分にある程度の微細な動きを許容する、「ダイナミゼーション」を用いて固定する方法が用いられる場合がある。
【0005】
ダイナミゼーションを用いた場合、骨折部分における軸方向の断続的な圧力による微細な移動がくり返されることにより、生体が骨折しているという事実を認識する。そして、生体が骨折している部位を把握し、骨折を修復する細胞やサイトカイン(細胞が出すタンパク質)を骨折部分に送り込み、治癒させようとする。特許文献1には、骨の骨折部分においてこのようなダイナミゼーションを可能とする固定具が記載されている。
【0006】
一方、骨固定プレートを骨折部の骨に沿って装着しようとする場合、筋を骨から剥離する必要がある。このため、筋から骨表面の骨膜・骨芽細胞への微細血管が切断され、血液が骨膜・骨芽細胞に供給されなくなり、骨芽細胞が壊死して骨折の治癒が阻害されてしまうという課題がある。この課題を解消するために、特許文献2には、二つの固定板の連結部を骨から離間させることにより、筋を骨膜から剥離せず骨折部分において筋からの血液の供給を阻害しない形状の骨固定プレートが記載されている。
【0007】
特許文献2に記載の技術を特許文献1に記載の骨固定プレートに適用することにより、骨の骨折部分においてダイナミゼーションを可能としつつ筋からの血液の供給を阻害しない骨固定プレートを形成することができる。
【0008】
しかし、上記の如く構成された骨固定プレートによれば、骨折部分から固定板の連結部までの距離が一定であるため、骨折部分における筋の厚さごとに骨固定プレートを作成する必要がある。即ち、患者の筋の厚さが異なる場合ごとに骨固定プレートを適用することが困難であった。また、骨折の部位による骨の形状が異なるので、それに応じてプレートを変形させることも困難であった。
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、患者の筋の厚さが異なる場合でも、骨の骨折部分においてダイナミゼーションを可能とし、かつ、筋から骨折部分への血液の供給を可能とする、骨固定プレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
本発明は、骨折により分断された第一の骨と第二の骨とを接合した状態で固定する骨固定プレートであって、前記第一の骨に固定される第一の固定部と、前記第一の骨から離間する位置に固定される第一の対向部と、前記第一の固定部と前記第一の対向部とを連結する第一の連結部と、を備える第一プレートと、前記第二の骨に固定される第二の固定部と、前記第二の骨から離間する位置に固定される第二の対向部と、前記第二の固定部と前記第二の対向部とを連結する第二の連結部と、を備える第二プレートと、を備え、前記第一の対向部と前記第二の対向部とは、互いに近接離間可能に構成されるとともに他方向の相対変位及び相対回転が規制され、前記第一の連結部及び前記第二の連結部における前記第一の骨の周方向の幅は、前記第一の固定部及び前記第二の固定部における前記周方向の幅よりも小さくなるように形成され、前記第一の連結部が伸縮可能に構成されることにより、前記第一の固定部と前記第一の対向部との間隔が変更可能とされ、前記第二の連結部が伸縮可能に構成されることにより、前記第二の固定部と前記第二の対向部との間隔が変更可能とされる。
【0012】
本構成により、患者の筋の厚さが異なる場合でも、骨の骨折部分においてダイナミゼーションを可能とし、かつ、筋から骨折部分への血液の供給が可能となる。
【0013】
また、骨固定プレートにおいて、前記第一の連結部は、前記第一の固定部から延出される第一の固定側基部と、前記第一の対向部から延出される第一の対向側基部と、を備え、前記第二の連結部は、前記第二の固定部から延出される第二の固定側基部と、前記第二の対向部から延出される第二の対向側基部と、を備え、前記第一の固定側基部及び前記第一の対向側基部は、一方が他方に挿入された状態で進退可能に連結されることにより、前記第一の連結部が伸縮可能とされ、前記第二の固定側基部及び前記第二の対向側基部は、一方が他方に挿入された状態で進退可能に連結されることにより、前記第二の連結部が伸縮可能とされることが好ましい。
【0014】
本構成により、第一及び第二の連結部を伸縮可能として、筋の厚さが異なる場合に適用することが可能となる。
【0015】
また、骨固定プレートにおいて、前記第一の連結部は、前記第一の固定部から延出される第一の固定側基部と、前記第一の対向部から延出される第一の対向側基部と、を備え、前記第二の連結部は、前記第二の固定部から延出される第二の固定側基部と、前記第二の対向部から延出される第二の対向側基部と、を備え、前記第一の固定側基部及び前記第一の対向側基部は、互いに近接離間可能に第一の調節部材により連結されることにより、前記第一の連結部が伸縮可能とされ、前記第二の固定側基部及び前記第二の対向側基部は、互いに近接離間可能に第二の調節部材により連結されることにより、前記第二の連結部が伸縮可能とされることが好ましい。
【0016】
本構成により、第一及び第二の連結部を伸縮可能として、筋の厚さが異なる場合に適用することが可能となる。
【0017】
また、骨固定プレートにおいて、前記第一の対向部と前記第二の対向部とは、互いの近接離間方向の相対位置を固定する固定状態と、互いの近接離間方向の相対位置を可変とする可動状態と、の何れかの状態とされることが好ましい。
【0018】
本構成により、第一及び第二の対向部を固定状態と可動状態との二つの状態で使用することができる。
【0019】
また、骨固定プレートにおいて、前記第一の固定部と前記第二の固定部とは、前記第一の骨及び前記第二の骨の軸方向に長さが可変とされることが好ましい。
【0020】
本構成により、骨の長さに応じて固定部の長さを調節して固定することができる。
【0021】
また、骨固定プレートにおいて、前記第一の連結部と前記第一の固定部との連結部分、前記第一の連結部と前記第一の対向部との連結部分、前記第二の連結部と前記第二の固定部との連結部分、及び、前記第二の連結部と前記第二の対向部との連結部分、のうち少なくとも一箇所に、互いの相対角度を可変とする角度調整機構が設けられることが好ましい。
【0022】
本構成により、骨の骨折部分において、第一の固定部を固定する箇所と第二の固定部を固定する箇所との間に角度がある場合でも、骨形状に応じて骨固定プレートを固定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る骨固定プレートによれば、患者の筋の厚さが異なる場合でも、骨の骨折部分においてダイナミゼーションを可能とし、かつ、筋から骨折部分への血液の供給が可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第一実施形態に係る骨固定プレートの使用状態を示す平面図。
図2】第一実施形態に係る骨固定プレートの使用状態を示す斜視図。
図3】第一実施形態に係る骨固定プレートを示す斜視図。
図4A】第一実施形態に係る骨固定プレートの第一使用状態を示す断面図。
図4B】第一実施形態に係る骨固定プレートの第二使用状態を示す断面図。
図4C】第一実施形態に係る骨固定プレートの第三使用状態を示す断面図。
図5】第一実施形態の変形例に係る骨固定プレートの一部を示す斜視図。
図6】第一実施形態の変形例に係る骨固定プレートの使用状態を示す側面図。
図7A】第二実施形態に係る骨固定プレートの第一使用状態を示す断面図。
図7B】第二実施形態に係る骨固定プレートの第二使用状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では図1から図4を用いて、本発明の第一実施形態に係る骨固定プレート1について説明する。骨固定プレート1は人又は動物が骨Bを骨折した際に用いられる部材であり、骨Bの長手方向に沿って固定される。具体的には図1に示す如く、骨固定プレート1は骨折部分Fで分断された第一の骨B1と第二の骨B2とを接合した状態で固定する。なお、図1及び図2では説明の便宜上、筋肉や血管等、骨B以外の組織は図示を省略している。
【0026】
骨固定プレート1は、第一の骨B1に固定される第一プレート10と、第二の骨B2に固定される第二プレート20と、を備えている。第一プレート10と第二プレート20とは、互いを連結する部分である第一の対向部13及び第二の対向部23以外の構成は同一になるように構成されている。このため、以下では第一プレート10を中心に説明し、第二プレート20において第一プレート10と共通する構成は詳細な説明を省略する。
【0027】
図1から図3に示す如く、第一プレート10は第一の骨B1に固定される湾曲した板状の第一の固定部10Fと、第一の骨B1から第一の固定部10Fの厚さ方向に離間する位置に固定される第一の対向部13と、第一の固定部10Fと第一の対向部13とを連結する第一の連結部14と、を備える。同様に、第二プレート20は第二の骨B2に固定される湾曲した板状の第二の固定部20Fと、第二の骨B2から第二の固定部20Fの厚さ方向に離間する位置に固定される第二の対向部23と、第二の固定部20Fと第二の対向部23とを連結する第二の連結部24と、を備える。
【0028】
第一の固定部10Fは、互いに近接離間可能に構成される第一の支持部11と第一の調節部12とで構成される。第一の支持部11は第一の連結部14を支持する部材である。第一の支持部11には第一固定孔11aが貫通して形成されている。また、第一の支持部11には凹部が形成され、凹部の内周面には調節溝状部11bが形成される。第一の支持部11には凹部が形成される部分を貫通する複数の固定側調節孔11cが開口されている。
【0029】
第一の調節部12は第一の支持部11に対して近接離間可能に構成される。第一の調節部12には調節部固定孔12aが貫通して形成されている。また、第一の調節部12には、第一の支持部11の凹部に挿入可能な凸部が形成され、凸部の外周面には調節突状部12bが形成される。第一の調節部12には凸部を貫通する可動側調節孔12cが開口されている。
【0030】
図2及び図3に示す如く、第一の支持部11の凹部には第一の調節部12の凸部が挿入され、調節溝状部11bの内部を調節突状部12bがスライド可能とされる。これにより、第一の調節部12が第一の支持部11に対して、骨Bの長手方向に沿って互いに近接離間可能とされる。
【0031】
第一の支持部11に対して第一の調節部12を変位させ、第一の固定部10Fが適切な長さになった状態で、固定側調節孔11cと可動側調節孔12cとの双方に図示しない固定ピン等の固定具を挿入することにより、第一の調節部12を第一の支持部11に対して固定する。なお、固定具は固定ピン以外に、ねじ等の他の部材を採用することも可能である。また、第一の支持部11の両側方から、固定側調節孔11cのそれぞれにねじ等の固定具を螺入して、第一の調節部12を第一の支持部11に対してより強固に固定する構成とすることも可能である。
【0032】
そして、図1に示す如く、第一の支持部11の第一固定孔11a、及び、第一の調節部12の調節部固定孔12aに固定具である固定ねじSが挿入され、固定ねじSが第一の骨B1に螺入されることにより、第一の固定部10Fが第一の骨B1に固定される。
【0033】
第一の固定部10Fは、図2に示す如く、骨Bの長手方向と直交する方向に湾曲した形状に形成されており、これによって骨固定プレート1を骨Bの表面に沿って固定することができる。第二の固定部20Fは、互いに近接離間可能に構成される第二の支持部21と第二の調節部22とで構成される。第二の固定部20Fの構成は第一の固定部10Fと略同一であるため、詳細な説明を省略する。なお、図1から図3において、第一の固定部10Fは伸張した状態、第二の固定部20Fは短縮した状態を示している。
【0034】
第一の対向部13と第二の対向部23とは、互いに近接離間可能に構成される。図2及び図3に示す如く、第二の対向部23には凹部が形成され、凹部の内周面には対向溝状部23aが形成される。第二の対向部23には凹部が形成される部分を貫通する複数の固定側対向調節孔23bが開口されている。
【0035】
第一の対向部13には、第二の対向部23の凹部に挿入可能な凸部が形成され、凸部の外周面には対向突状部13aが形成される。第一の対向部13には凸部を貫通する可動側対向調節孔13bが開口されている。
【0036】
図2及び図3に示す如く、第二の対向部23の凹部には第一の対向部13の凸部が挿入され、対向溝状部23aの内部を対向突状部13aがスライド可能とされる。これにより、第一の対向部13が第二の対向部23に対して、骨Bの長手方向に沿って互いに近接離間可能とされる。この際、第一の対向部13と第二の対向部23とは、対向溝状部23aの内部を対向突状部13aがスライドすることにより、軸方向以外の相対変位、及び、相対回転は規制されている。
【0037】
第一の対向部13と第二の対向部23とは、固定側対向調節孔23bと可動側対向調節孔13bとの双方に図示しない固定ピン等の固定具を挿入することにより、第一の対向部13を第二の対向部23に対して固定することが可能である。このように、第一の対向部13と第二の対向部23とは、互いの近接離間方向の相対位置を固定する固定状態と、互いの近接離間方向の相対位置を可変とする可動状態と、の何れかの状態とされる。
【0038】
第一の連結部14は、互いに近接離間可能に構成される上側連結部14Uと下側連結部14Dとで構成される。下側連結部14Dは、第一の固定部10Fにおける第一の支持部11から延出される第一の固定側基部として構成される。上側連結部14Uは、第一の対向部13から延出される第一の対向側基部として構成される。
【0039】
上側連結部14Uには凹部が形成され、凹部の内周面には高さ調節溝状部14bが形成される。上側連結部14Uには凹部が形成される部分を貫通する複数の上部高さ調節孔14cが開口されている。
【0040】
下側連結部14Dには、上側連結部14Uの凹部に挿入可能な凸部が形成され、凸部の外周面には高さ調節突状部14aが形成される。下側連結部14Dには凸部を貫通する下部高さ調節孔14dが開口されている。
【0041】
図2及び図3に示す如く、上側連結部14Uの凹部には下側連結部14Dの凸部が挿入され、高さ調節溝状部14bの内部を高さ調節突状部14aがスライド可能とされる。これにより、上側連結部14Uが下側連結部14Dに対して、骨Bに対して直交する方向に沿って互いに近接離間可能とされる。このように、骨固定プレート1においては、第一の連結部14が伸縮可能に構成されることにより、第一の固定部10Fと第一の対向部13との間隔が変更可能とされている。
【0042】
下側連結部14Dに対して上側連結部14Uを変位させることにより適切な高さになった状態で、上部高さ調節孔14cと下部高さ調節孔14dとの双方に図示しない固定ピン等の固定具を挿入することにより、上側連結部14Uを下側連結部14Dに対して固定する。なお、固定具は固定ピン以外に、ねじ等の他の部材を採用することも可能である。
【0043】
第二の連結部24は、互いに近接離間可能に構成される上側連結部24Uと下側連結部24Dとで構成される。このように、第二の連結部24は、第一の連結部14と同様に伸縮可能に構成されることにより、第二の固定部20Fと第二の対向部23との間隔が変更可能とされている。第二の連結部24の構成は第一の連結部14と略同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0044】
上記の如く、本実施形態に係る骨固定プレート1において、第一の対向部13と第二の対向部23との相対位置を可変とする可動状態とすることにより、第一プレート10と第二プレート20とが互いに近接離間可能に構成されるとともに、他方向の相対変位、及び、相対回転が規制される。このように、骨折部分Fにおける軸方向変位を許容することにより、骨折部分Fでダイナミゼーションを発生させることができる。
【0045】
即ち、生体が運動等を行った際に、骨折部分Fにおける軸方向の断続的な圧力による微細な移動がくり返されることにより、骨折を修復する細胞やサイトカイン(細胞が出すタンパク質)を骨折部分に送り込み、治癒することが可能となる。この際、骨固定プレート1が軸方向変位以外の変位を規制することにより、骨折部分Fに軸方向以外の回転力等が加わることを防止でき、毛細血管が断裂して治癒に悪影響が出る可能性を低減させることができる。即ち、骨折部分Fにおける骨の癒合を促進でき、固定状態を良好に維持することが可能となるのである。
【0046】
なお、骨固定プレート1において、第一の対向部13と第二の対向部23との相対位置を固定した固定状態とした場合は、上記の如く骨折部分Fでダイナミゼーションを発生させない構成とすることができる。即ち、骨固定プレート1は、第一の対向部13と第二の対向部23との相対位置を可動状態と固定状態とに切り替えることにより、ダイナミゼーションの有無を調節することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態に係る骨固定プレート1において、第一の対向部13と第二の対向部23とは、骨Bから離間する位置に形成される。これにより、骨折部分の外周部分において、骨膜と筋肉とを接触させたままにしておくことができる。このため、筋肉を通る毛細血管を経由して骨折部分に栄養を送り届けやすくなるため、骨の癒合をより促進することができる。
【0048】
また、図3に示す如く、本実施形態に係る骨固定プレート1において、第一の連結部14及び第二の連結部24における骨Bの周方向の幅は、第一の固定部10F及び第二の固定部20Fにおける周方向の幅よりも小さくなるように形成されている。これにより、第一の連結部14及び第二の連結部24を筋方向に沿って形成することができる。このため、筋肉に対する侵襲をより少なくすることができる。
【0049】
また、図3に示す如く、本実施形態に係る骨固定プレート1において、第一の連結部14が伸縮可能に構成されることにより、第一の固定部10Fと第一の対向部13との間隔が変更可能とされる。また、第二の連結部24が伸縮可能に構成されることにより、第二の固定部20Fと第二の対向部23との間隔が変更可能とされる。
【0050】
具体的には、本実施形態に係る骨固定プレート1において、第一の連結部14は、第一の固定側基部である下側連結部14Dと、第一の対向側基部である上側連結部14Uと、を備える。また、第二の連結部24は、第二の固定側基部である下側連結部24Dと、第二の対向側基部である上側連結部24Uと、を備える。
【0051】
そして、図3に示す如く、下側連結部14Dが上側連結部14Uに挿入された状態で進退可能に連結されることにより第一の連結部14が伸縮可能とされ、下側連結部24Dが上側連結部24Uに挿入された状態で進退可能に連結されることにより第二の連結部24が伸縮可能とされている。
【0052】
上記の如く、本実施形態に係る骨固定プレート1は、第一の固定部10Fと第一の対向部13、及び、第二の固定部20Fと第二の対向部23の間隔を変更可能としている。これにより、図4Aから図4Cに示す如く、筋肉Mの厚さが違った場合でも、第一の連結部14及び第二の連結部24の長さを調節することにより、骨固定プレート1を骨折部に用いることが可能となる。
【0053】
具体的には、患者の筋肉Mが厚い場合は、図4Aに示す如く、第一の連結部14及び第二の連結部24の長さを長くした骨固定プレート1Hを構成して骨Bに固定する。一方、患者の筋肉Mが薄い場合は、図4Cに示す如く、第一の連結部14及び第二の連結部24の長さを短くした骨固定プレート1Lを構成して骨Bに固定する。患者の筋肉Mが中程度の場合は、図4Bに示す如く、第一の連結部14及び第二の連結部24の長さを中程度にした骨固定プレート1Mを構成して骨Bに固定するのである。
【0054】
上記の如く、骨固定プレート1によれば、患者の筋の厚さが異なる場合でも、骨の骨折部分においてダイナミゼーションを可能とし、かつ、筋から骨折部分への血液の供給を可能としている。
【0055】
また、本実施形態に係る骨固定プレート1において、第一の固定部10Fと第二の固定部20Fとは、第一の骨B1及び第二の骨B2の軸方向に長さが可変とされる。これにより、骨Bの長さに応じて、第一の固定部10Fと第二の固定部20Fとを適切な長さに調節できるため、骨Bに対して骨固定プレート1を安定して固定することができる。
【0056】
なお、本実施形態に係る骨固定プレート1において、第一の対向部13と第二の対向部23とは、対向溝状部23aの内部に対向突状部13aを挿入することによりスライド可能としたが、第一の対向部13と第二の対向部23との形状を他の構成とすることも可能である。例えば、第一の対向部13の凸部の外周面に断面が長方形状の突条部を形成し、第二の対向部23の凹部の内周面に突条部と同じ形状の溝条部を形成する。そして、溝条部の内部に突条部が挿入されることにより、突条部と溝条部とが係合される。このような構成により、第一の対向部13と第二の対向部23とにおいて、骨Bの長手方向以外の方向の相対変位、及び、相対回転が規制される構成としても差し支えない。
【0057】
また、第一の対向部13に円柱状の凸部を形成し、第二の対向部23に円筒状の凹部を形成する。そして、凹部の内部に凸部が挿入されることにより、凹部と凸部とが係合される。このような構成により、第一の対向部13と第二の対向部23とにおいて、骨Bの長手方向以外の方向の相対変位、及び、相対回転が規制される構成としても差し支えない。
【0058】
本実施形態に係る骨固定プレート1については、図5及び図6に示す変形例として、角度調整機構Tを備える骨固定プレート1tとして構成することも可能である。本変形例では、骨固定プレート1tを構成する第一プレート10tにおいて、第一の連結部14と第一の対向部13との連結部に角度調整機構Tが設けられている。なお、第二プレート20tについては第一プレート10tと同様の角度調整機構Tが設けられているため、詳細な説明は省略する(図6を参照)。
【0059】
図5に示す如く、角度調整機構Tは、第一の対向部13と第一の連結部14とを回動可能に軸支する回動軸13cと、第一の対向部13に開口された角度固定孔13dと、第一の連結部14に開口された複数(本変形例においては七個)の角度調整孔14eと、で構成される。
【0060】
骨固定プレート1tは、角度固定孔13dの位置を任意の角度調整孔14eに合わせることにより、第一の連結部14と第一の対向部13との角度を調整することができる。その状態で、角度固定孔13dと角度調整孔14eとに固定ピン等の固定具を挿入することにより、第一の連結部14と第一の対向部13との相対角度を任意の角度に固定することができる。
【0061】
本変形例の構成によれば、骨の骨折部分において、第一の固定部10Fを固定する箇所と第二の固定部20Fを固定する箇所との間に角度がある場合でも、骨形状に応じて骨固定プレート1tを固定することができる。具体的には図6に示す如く、骨折部分Fで分断された第一の骨B1と第二の骨B2とにおいて、第一の固定部10Fを固定する箇所と第二の固定部20Fを固定する箇所の間に角度がある場合でも、角度調整機構Tで第一・第二の対向部13・23と第一・第二の連結部14・24との角度を調整することにより、骨固定プレート1tを固定することが可能となる。
【0062】
なお、角度調整機構Tは、第一の連結部14と第一の固定部10Fとの連結部分、第一の連結部14と第一の対向部13との連結部分、第二の連結部24と第二の固定部20Fとの連結部分、及び、第二の連結部24と第二の対向部23との連結部分、のうち少なくとも一箇所に設けられていれば良く、その設置箇所及び設置数は本変形例に限定されるものではない。また、角度調整機構Tにおける角度固定孔又は角度調整孔の何れかを長孔にして、無段階で角度を調整する構成とすることも可能である。
【0063】
本発明に係る骨固定プレートについては、第一実施形態に係る骨固定プレート1における第一・第二の連結部14・24と連結部を異なる構成とすることができる。具体的には図7に示す第二実施形態に係る骨固定プレートに示す如く、第一の連結部114は、第一の固定部における第一の支持部11から延出される第一の固定側基部として円柱状の下側連結部114Dを備える。また、第一の連結部114は、第一の対向部13から延出される第一の対向側基部として円柱状の上側連結部114Uを備える。同様に、第二の連結部124は、第二の固定部における第二の支持部21から延出される第二の固定側基部として円柱状の下側連結部124Dを備える。また、第二の連結部124は、第二の対向部23から延出される第二の対向側基部として円柱状の上側連結部124Uを備える。
【0064】
そして、下側連結部114Dと上側連結部114Uとは、互いに近接離間可能に円筒形状の第一の調節部材115により連結される。具体的には図7A及び図7Bに示す如く、下側連結部114Dと上側連結部114Uとの外周面には逆方向に雄ねじ部が形成され、第一の調節部材115の内周面には、前記雄ねじ部と螺合するように逆方向に雌ねじ部が形成される。そして、第一の調節部材115の雌ねじ部と、下側連結部114Dと上側連結部114Uとの雄ねじ部とを螺合し、第一の調節部材115を回転させることにより、下側連結部114Dと上側連結部114Uとが互いに近接離間可能とされる。これにより、本実施形態における第一の連結部114が伸縮可能とされる。このように、第一の連結部114は、第一の調節部材115を回転させ、下側連結部114Dに対して上側連結部114Uを変位させることにより適切な高さに調節される。
【0065】
一方、下側連結部124Dと上側連結部124Uとについても同様に、互いに近接離間可能に円筒形状の第二の調節部材125により連結される。具体的には図7A及び図7Bに示す如く、第二の調節部材125の雌ねじ部と、下側連結部124Dと上側連結部124Uとの雄ねじ部とを螺合し、第二の調節部材125を回転させることにより、下側連結部124Dと上側連結部124Uとが互いに近接離間可能とされる。これにより、本実施形態における第二の連結部124が伸縮可能とされる。このように、第二の連結部材124は、第二の調節部材125を回転させ、下側連結部124Dに対して上側連結部124Uを変位させることにより適切な高さに調節される。
【0066】
上記の如く、本実施形態に係る骨固定プレートにおいても、第一の固定部における第一の支持部11と第一の対向部13、及び、第二の固定部における第二の支持部21と第二の対向部23の間隔を無段階で変更可能としている。これにより、筋肉Mの厚さが違った場合でも、第一の連結部114及び第二の連結部124を適切な長さに調節することにより、骨固定プレートを骨折部に用いることが可能となる。
【0067】
1 骨固定プレート(第一実施形態)
1t 骨固定プレート(変形例)
10 第一プレート 10t 第一プレート(変形例)
10F 第一の固定部 11 第一の支持部
11a 第一固定孔 11b 調節溝状部
11c 固定側調節孔 12 第一の調節部
12a 調節部固定孔 12b 調節突状部
12c 可動側調節孔 13 第一の対向部
13a 対向突状部 13b 可動側対向調節孔
13c 回動軸 13d 角度固定孔
14 第一の連結部 14U 上部連結部
14D 下部連結部 14a 高さ調節突条部
14b 高さ調節溝条部 14c 上部高さ調節孔
14d 下部高さ調節孔 14e 角度調整孔
20 第二プレート 20t 第二プレート(変形例)
20F 第二の固定部 21 第二の支持部
22 第二の調節部 23 第二の対向部
23a 対向溝状部 23b 固定側対向調節孔
24 第二の連結部 24U 上部連結部
24D 下部連結部 114 第一の連結部
114U 上部連結部 114D 下部連結部
115 第一の調節部材 124 第二の連結部
124U 上部連結部 124D 下部連結部
125 第二の調節部材 B 骨
B1 第一の骨 B2 第二の骨
F 骨折部分 S 固定ねじ
T 角度調整機構

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B