(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システム及び充填方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20220622BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20220622BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220622BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20220622BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20220622BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220622BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F17C5/06
H01M8/04 Z
H01M8/0432
H01M8/0438
H01M8/00 Z
H01M8/04 H
(21)【出願番号】P 2020202572
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039619
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0059889
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520481194
【氏名又は名称】ミレ イーエイチエス-コード リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チュン グン
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177991(JP,A)
【文献】特開2020-031512(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235386(WO,A1)
【文献】特開2017-150646(JP,A)
【文献】特開2019-132360(JP,A)
【文献】特開2013-117301(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/02
F17C 5/06
H01M 8/04
H01M 8/0432
H01M 8/0438
H01M 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素充填機において実行される安全充填方法において、
CHSS(Compressed Hydrogen Storage System)内の水素タンク及び前記水素充填機内の水素供給部から初期状態値を取得するステップと、
前記初期状態値に基づいて、予め保存されている熱力学的モデルを用いて、質量流量、前記水素タンク内の温度及び圧力、充填率を決定するステップと、
前記決定した充填率が所定の充填率よりも小さくないと、前記決定した質量流量、温度及び圧力と、予め保存されている各安全閾値間の差を算出するステップと、
前記算出した差に基づいて、
前記質量流量、水素タンク内の温度、圧力及び充填率を決定する際に適用した圧力上昇率を維持するか、増加させるか、或いは減少させるかを決定し、該決定によって維持、増加或いは減少した圧力上昇率を、前記水素供給部内の最適圧力上昇率
として算出して適用するステップとを含
み、
前記算出ステップは、
予め保存されている第1安全閾値から、前記決定した質量流量を差し引き、予め保存されている第2安全閾値から、前記決定した水素タンクの温度を差し引き、予め保存されている第3安全閾値から、前記決定した水素タンクの圧力を差し引く方式で各差を算出するステップを含むことを特徴とする燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法。
【請求項2】
前記算出した差に基づいて、前記水素供給部内の最適圧力上昇率を
算出して適用するステップの後に、
予め設定された時間が経過すると、前記水素タンクの温度及び圧力と、前記水素供給部の温度及び圧力に基づいて新たな最適圧力上昇率を
再算出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項
1に記載の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法。
【請求項3】
前記初期状態値は、
前記水素タンクの構造的変数値、前記データ水素移動装置の構造的変数値、前記水素充填機が供給するガスの初期熱力学的変数値、前記水素タンク内の水素の熱力学的変数値を含むことを特徴とする請求項
1に記載の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法。
【請求項4】
前記水素タンクの構造的変数値は、前記水素タンクの数、水素タンクの入口の内径、及び水素タンクの体積を含み、
前記データ水素移動装置の構造的変数値は、前記水素供給部で測定されるデータ水素移動装置の圧力損失係数を含み、
前記水素充填機が供給するガスの初期熱力学的変数値は、前記水素充填機が供給する水素の圧力及び温度を含み、
前記水素タンク内の水素の熱力学的変数値は、前記水素タンクの水素タンクバルブに内蔵される温度センサ及び圧力センサで取得される前記水素タンクの圧力及び温度を含むことを特徴とする請求項
3に記載の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法。
【請求項5】
前記予め保存されている熱力学的モデルは、
前記水素充填機の供給水素圧力を設定するステップと、
前記供給水素圧力に基づいて、前記データ水素移動装置の水素流量である質量流量を算出するステップと、
前記質量流量に基づいて、前記水素タンクに流入する水素のよどみ点エンタルピー(Stagnation Enthalpy)を算出するステップと、
前記水素タンク内の温度を算出するステップと、
前記水素タンク内の圧力と水素が充填された程度に対応する充填率(State of Charge)を算出するステップと、
前記算出された水素タンク内の圧力、温度及び質量流量と、直前の水素タンク内の圧力、温度及び質量流量とを比較し、前記水素タンクの最大圧力及び最大温度と、前記データ水素移動装置の最大水素流量に対応する最大質量流量を決定するステップとを行うことにより実行されることを特徴とする請求項
1に記載の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法。
【請求項6】
前記決定した充填率が所定の充填率よりも小さいと、前記予め保存されている熱力学的モデルを用いて質量流量、前記水素タンク内の温度、圧力及び充填率を再算出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法。
【請求項7】
前記所定の充填率は100であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法。
【請求項8】
前記最適圧力上昇率を算出して適用するステップは、
前記算出された各差がいずれも正数であり、前記各差のいずれか一つが、予め設定されている値の以下であれば、前記質量流量、水素タンクの温度及び圧力を決定する際に適用した圧力上昇率を維持し、維持されている圧力上昇率を最適圧力上昇率として算出し、
前記算出された各差がいずれも正数であり、前記いずれか一つでも、予め設定されている値の以下でないと、前記決定の際に適用した圧力上昇率を増加させ、増加した圧力上昇率を最適圧力上昇率として算出するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法。
【請求項9】
前記最適圧力上昇率を算出して適用するステップは、
前記算出された各差のいずれか一つが負数でないと、前記質量流量、水素タンクの温度及び圧力を決定する際に適用した圧力上昇率を減少させ、減少した圧力上昇率を最適圧力上昇率として算出するステップと、
前記減少させて算出した最適圧力上昇率及び前記予め保存されている熱力学的モデルに基づいて前記質量流量、前記水素タンクの温度及び圧力を再決定するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法。
【請求項10】
水素充填機において、
水素タンクに水素を供給するための水素供給部と、
CHSS(Compressed Hydrogen Storage System)内の水素タンク及び前記水素充填機内の水素供給部から初期状態値を取得し、
前記初期状態値に基づき、予め保存されている熱力学的モデルを用いて質量流量、前記水素タンク内の温度及び圧力、充填率を決定し、
前記決定した充填率が所定の充填率よりも小さくないと、前記決定した質量流量、温度及び圧力と、予め保存されているそれぞれの安全閾値との差を算出し、
前記算出された差に基づき、前記質量流量、水素タンク内の温度、圧力及び充填率を決定する際に適用した圧力上昇率を維持するか、増加させるか、或いは減少させるかを決定し、前記決定によって維持、増加或いは減少した圧力上昇率を、前記水素供給部内の最適圧力上昇率として算出して適用する充填機制御部とを含み、
前記充填機制御部は、
予め保存されている第1安全閾値から、前記決定した質量流量を差し引き、予め保存されている第2安全閾値から、前記決定した水素タンクの温度を差し引き、予め保存されている第3安全閾値から、前記決定した水素タンクの圧力を差し引く方式で各差を算出することを特徴とする水素充填機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システムに関し、水素タンクの温度及び圧力をリアルタイムで測定することにより短時間で燃料を充填することができるプロトコルを提供する。
【背景技術】
【0002】
水素自動車は、動力の燃料として水素を用いる自動車であり、電動機駆動のために内燃機関の水素を燃焼させるか、燃料電池内で水素を酸素と反応させることにより、水素の化学エネルギーを力学的エネルギーに変換する。運送燃料の供給のために水素を用いるが、水素燃料は高圧で急速に充填されるという特性を有するので、注油と比較すると危険性が高く、圧縮とジュール=トムソン効果(Joule-Thomson effect)により熱が発生するので、完全充填が容易ではない。よって、各国で充填プロトコル(Fueling Protocol)を開発しているが、それらは充填する際にパラメータに基づいて圧力上昇率と目標圧力に関するルックアップテーブルを用いるプロトコル(Hydrogen Fueling Protocol)に関する研究が多い。しかし、それらはリアルタイムで測定された値を基準に充填制御を行うものではなく、自動車以外にもフォークリフト、ドローン、船舶など様々なモビリティが開発されているため、多くの条件と多くのルックアップテーブルに基づいて複雑な充填プログラムを作成しなければならず、条件に合わないと適用することもできないので、正確な充填及び制御が不可能な状況である。
【0003】
よって、リアルタイムで水素充填のための制御方法が研究及び開発されているが、それに関して、先行技術である特許文献1(2019年10月23日公開)及び特許文献2(2013年6月11日公開)には、水素充填機から圧縮水素貯蔵容器に水素を充填する際に、目標温度と検知温度の差をリアルタイムで測定し、検知温度が目標温度に達するように水素の充填フローを制御する構成と、圧縮水素貯蔵容器内の変形の程度をリアルタイムで測定し、変形の程度に基づいて予め設定された規定以上の変形が検知されると水素充填を中断する制御方法がそれぞれ開示されている。
【0004】
しかし、上記構成を用いたとしても、実際にリアルタイム通信を仮定して開発された制御プロトコルではないので、リアルタイム水素制御が不可能な状況である原点に戻ることになる。また、プロトコルが複雑になった理由も、水素ステーションと水素自動車間の通信が行われていない場合と、通信が信頼できない場合を仮定しているからであるので、常に通信を行うことができ、通信の信頼性が保証された標準化プロトコルの研究及び開発が求められている。もし、通信の信頼性が保証されれば、水素の危険性の要因である温度と圧力をリアルタイムで監視・予測することによりリアルタイムで圧力上昇速度と目標圧力を計算することができ、プロトコルを簡単にすることができる。よって、強靭な通信プロトコル及びリアルタイムモニタのための制御方法の研究が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2014/0311622号明細書
【文献】韓国公開特許第2013-0061268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態は、水素充填時にCHSSが無線通信を介して水素充填機に送信する水素タンクの構造的情報と熱力学的情報を反映することにより、水素をより安全かつ迅速に充填できるように、水素タンク内の水素の圧力及び温度をリアルタイムで測定し、水素充填機が無線通信を介してCHSSからリアルタイムで測定した圧力及び温度を受信することにより、最適圧力上昇率を計算し、計算した最適圧力上昇率で充填が行えるようにするので、水素タンク内の水素の圧力、温度及び充填流量が設定された閾値を逸脱しない範囲で充填時間を最小限に抑えられるようにする、燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法を提供することができる。しかし、本実施形態において解決しようとする技術的課題は上記技術的課題に限定されるものではなく、他の技術的課題が存在することもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を達成するための技術的手段として、本発明の一実施形態は、水素タンク及び水素タンクバルブを備えるCHSS(Compressed Hydrogen Storage System)と、水素タンク内の圧力及び温度を含む検知データを受信する充填機制御部、並びに検知データに基づいて水素タンク内の水素を供給する水素供給部を備える水素充填機と、検知データを無線通信用のデータに変換して出力する貯蔵制御部、貯蔵制御部と水素充填機内の充填機制御部間の無線通信のために設けられる無線通信部、及び水素供給部から噴射される水素を水素タンクバルブに送達するレセプタクルを備えるデータ水素移動装置とからなる。
【0008】
本発明の他の実施形態は、CHSS(Compressed Hydrogen Storage System)内の水素タンク及び水素充填機内の水素供給部から初期状態値を取得するステップと、初期状態値に基づいて、予め保存されているシンプル熱力学的モデルを用いて、質量流量、水素タンク内の温度及び圧力、充填率を決定するステップと、決定した質量流量、温度及び圧力と、予め保存されている各安全閾値間の差を算出するステップと、算出した差に基づいて、水素供給部内の最適圧力上昇率を取得して適用するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
前述した本発明の課題解決手段のいずれかによれば、水素充填時にCHSSが無線通信を介して水素充填機に送信する水素タンクの構造的情報と熱力学的情報を反映することにより、水素をより安全かつ迅速に充填できるように、水素タンク内の水素の圧力及び温度をリアルタイムで測定し、水素充填機が無線通信を介してCHSSからリアルタイムで測定した圧力及び温度を受信することにより、最適圧力上昇率を計算し、計算した最適圧力上昇率で充填が行えるようにするので、水素タンク内の水素の圧力、温度及び充填流量が設定された閾値を逸脱しない範囲で充填時間を最小限に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システムについて説明するための図である。
【
図2】
図1のシステムに含まれる内部構成について説明するためのブロック構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態による燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システムにおける水素充填機の充填機制御部の充填方法について説明するための動作フローチャートである。
【
図4】
図3のシンプル熱力学的モデルの駆動方法について説明するための動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は様々な形態で実現することができ、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明を明確に説明するために、図面における説明に関係のない部分は省略し、本明細書全体を通じて、類似した部分には類似した符号を付した。
【0012】
本明細書全体を通じて、ある部分が他の部分と「接続」されているとは、「直接接続」されている場合だけでなく、中間に他の素子を介して「電気的に接続」されている場合をも指すものである。また、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に断らない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し、1つ又はそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、それらの組み合わせなどの存在又は付加の可能性を予め排除するものではない。
【0013】
本明細書全体を通じて、程度を示す「約」、「実質的に」などは、言及した意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される場合、その数値であるか、その数値に近接するという意味で用い、本発明の理解を助けるために正確又は絶対的な数値を言及した開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために用いるものである。本明細書全体を通じて、「~(する)ステップ」又は「~のステップ」とは、「~のためのステップ」を意味するものではない。
【0014】
本明細書における「部」には、ハードウェアにより実現されるユニット(unit)と、ソフトウェアにより実現されるユニットの両方のユニットが含まれる。また、1つのユニットが2つ以上のハードウェアにより実現されてもよく、2つ以上のユニットが1つのハードウェアにより実現されてもよい。なお、「~部」は、ソフトウェア又はハードウェアに限定されるものではなく、アドレッシング可能な記憶媒体に存在するように構成されてもよく、1つ又はそれ以上のプロセッサを再生させるように構成されてもよい。よって、例えば「~部」には、ソフトウェアの構成要素、オブジェクト指向ソフトウェアの構成要素、クラスの構成要素、タスクの構成要素などの構成要素、プロセス、関数、属性、プロシージャ、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバ、ファームウェア、マイクロコード、回路、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ及び変数が含まれる。構成要素及び「~部」において提供される機能は、より少ない数の構成要素及び「~部」に結合されてもよく、他の構成要素及び「~部」に分離されてもよい。さらに、構成要素及び「~部」は、デバイス又はセキュリティマルチメディアカード内の1つ又はそれ以上のCPUを再生させるように実現されてもよい。
【0015】
本明細書における端末、装置又はデバイスが行うと記載された動作や機能の一部は、当該端末、装置又はデバイスに接続されたサーバが代わりに行ってもよい。同様に、サーバが行うと記載された動作や機能の一部も、当該サーバに接続された端末、装置又はデバイスが行ってもよい。
【0016】
本明細書における端末とマッピング(Mapping)又はマッチング(Matching)すると記載された動作や機能の一部は、端末の識別情報(Identifying Data)である端末の固有番号や個人の識別情報をマッピング又はマッチングするものと解釈されてもよい。
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態による燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システムについて説明するための図であり、
図2は
図1のシステムに含まれる内部構成について説明するためのブロック構成図である。
【0019】
図1に示すように、燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システム1は、少なくとも1つのCHSS 100と、データ水素移動装置200と、水素充填機300とを備える。しかし、このような
図1の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システム1は本発明の一実施形態にすぎず、これに本発明が限定されるものではない。
【0020】
ここで、
図1の各構成要素は、一般にネットワーク(Network)(200)を介して接続される。例えば、
図1に示すように、少なくとも1つのCHSS 100は、ネットワークを介してデータ水素移動装置200に接続される。また、データ水素移動装置200は、ネットワークを介して少なくとも1つのCHSS 100、水素充填機300に接続される。さらに、水素充填機300は、ネットワークを介してデータ水素移動装置200に接続される。
【0021】
ここで、ネットワークとは、複数の端末やサーバなどの各ノード間で情報交換が行える接続構造を意味し、前記ネットワークの一例としては、近距離通信網(LAN: Local Area Network)、広域通信網(WAN: Wide Area Network)、インターネット(WWW: World Wide Web)、有線、無線データ通信網、電話網、有線、無線テレビ通信網などが挙げられる。無線データ通信網の一例としては、3G、4G、5G、3GPP(3rd Generation Partnership Project)、5GPP(5th Generation Partnership Project)、LTE(Long Term Evolution)、WIMAX(World Interoperability for Microwave Access)、ワイファイ(Wi-Fi)、インターネット(Internet)、LAN(Local Area Network)、Wireless LAN(Wireless Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、PAN(Personal Area Network)、RF(Radio Frequency)、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth)ネットワーク、NFC(Near-Field Communication)ネットワーク、衛星放送ネットワーク、アナログ放送ネットワーク、DMB(Digital Multimedia Broadcasting)ネットワークなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
以下、少なくとも1つとは、単数及び複数を含むものと定義され、少なくとも1つという文句がなくても、各構成要素は単数又は複数の存在であり、単数又は複数のものを意味することは言うまでもない。また、各構成要素を備える場合に単数又は複数であることは、実施形態により変更されてもよい。
【0023】
以下、
図2を参照して
図1の各構成について説明する。
【0024】
CHSS 100は、水素タンク110と、水素タンクバルブ130とを備える。CHSSは、水素車両に設置されるものであり、燃料である水素が供給されると貯蔵できるように構成される。また、水素タンクバルブ130は、圧力センサ及び温度センサを有し、水素タンク110に供給される水素の圧力及び温度を測定し、データ水素移動装置200の貯蔵制御部240に測定値を送る役割を果たす。
【0025】
データ水素移動装置200は、水素供給部330から噴射される水素を水素タンクバルブ130に送達するレセプタクル210と、貯蔵制御部240と水素充填機300内の充填機制御部310間の無線通信のために備えられる無線通信部と、検知データを無線通信用のデータに変換して出力する貯蔵制御部240とを備える。データ水素移動装置200は、レセプタクル210と水素供給部330間に連結され、水素タンク110に水素タンクバルブ130を経由して水素を供給する充填ノズル220をさらに備えてもよい。ここで、無線通信部は、車両に水素が注入されるレセプタクル210の一側に設けられる貯蔵制御部240の他側に設けられるIR送信機250と、一側がIR送信機250に接続され、他側が充填機制御部310に接続されるIR受信機260とからなる。
【0026】
水素充填機300は、水素タンク110内の圧力及び温度を含む検知データを受信する充填機制御部310と、検知データに基づいて水素タンク110内の水素を供給する水素供給部330とを備える。充填機制御部310は、無線通信部及び水素供給部330からデータを受信して水素供給部330内のリアルタイム圧力上昇率を算出し、算出した圧力上昇率を水素供給部330に返すことができる。
【0027】
以下、
図3及び
図4を例に挙げて、前述した
図1及び
図2の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システムの構成による動作過程について詳細に説明する。しかし、この実施形態は本発明の様々な実施形態のうちの1つにすぎず、これに限定されるものではない。
【0028】
図3は本発明の一実施形態による燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システムにおける水素充填機の充填機制御部の充填方法について説明するための動作フローチャートであり、
図4は
図3のシンプル熱力学的モデルの駆動方法について説明するための動作フローチャートである。
【0029】
図3に示すように、本発明の一実施形態による燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填システム1は、水素充填時にCHSSが無線通信を介して水素充填機300に送信する水素タンクの構造的情報と熱力学的情報を反映することにより、水素をより安全かつ迅速に充填できるようにする。そのために、CHSS 100において水素タンク110内の水素の圧力及び温度をリアルタイムで測定し、水素充填機300が無線通信を介してCHSS 100からリアルタイムで測定した圧力及び温度を受信することにより、最適圧力上昇率を計算し、計算した最適圧力上昇率で充填が行えるようにする。よって、水素タンク110内の水素の圧力、温度及び充填流量が設定された閾値を逸脱しない範囲で充填時間を最小限に抑えられる。
【0030】
図3及び
図4において用いる略字を表1に示す。以下では重複する説明を省略する。
【0031】
【0032】
図3に示す全ステップは、充填機制御部310がIR受信機260及び水素供給部330からデータを受信して新たな圧力上昇率(prr
new,最適圧力上昇率)を計算し、それを水素供給部330に返す過程である。そのために、水素充填機300の充填機制御部310は、
図3のアルゴリズムを行う。
【0033】
<第1ステップ>
まず、第1ステップS3100において、充填機制御部310は、CHSS 100内の水素タンク110及び水素充填機300の水素供給部330から初期状態値を取得する。ここで、初期状態値は、水素タンク110の構造的変数値、データ水素移動装置200の構造的変数値、水素充填機300が供給するガスの初期熱力学的変数値、水素タンク110内の水素の熱力学的変数値を含む。
【0034】
また、水素タンク110の構造的変数値は、水素タンク110の数(Ntank)、水素タンク110の入口の内径(dinlet)、及び水素タンク110の体積(Vtank)を含む。ここで、1つのCHSS 100に装着される水素タンク110の構造的変数値は全て同一であると仮定する。すなわち、CHSS 100に備えられる全ての水素タンク110の数、内径及び体積は標準化されて規格が同一であると仮定する。これらの値は、IR受信機260を介して充填機制御部310が受信するものであり、CHSS 100の固有値であるので、充填開始前に1回だけ受信すればよい。
【0035】
【0036】
【0037】
水素充填機300が供給するガスの初期熱力学的変数値は、水素充填機300が供給する水素の圧力(Pt=1
ba)及び温度(Tt=1
ba)を含む。この値としては、水素充填機300の周辺で測定した大気温度を用いる。水素タンク110内の水素の熱力学的変数値は、水素タンク110の水素タンクバルブ130に内蔵される温度センサ及び圧力センサで取得される水素タンク110の圧力(Pt=1
tank)及び温度(Tt=1
tank)を含む。
【0038】
新たな圧力上昇率(prrnew)を計算するための初期の圧力上昇率(prr)としては、20MPa/minを水素タンク110の数で割った値を用いる。これらの変数の初期値に基づいて、水素充填シミュレーションを経て新たな圧力上昇率(prrnew)を計算して水素充填に適用するので、初期の圧力上昇率(prr)は実際には重要でない。本発明の一実施形態においては、適正な初期の圧力上昇率(prr)を取得するのにかかる時間を節約するために、経験的に周知の値の中間値を採用する。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
<第5ステップ>
充填機制御部310は、算出した差に基づいて、水素供給部330内の圧力上昇率を取得して適用し、その後予め設定された時間が経過すると、水素タンク110の温度及び圧力と、水素供給部330の温度及び圧力に基づいて新たな最適圧力上昇率を再計算する。このステップは、新たな最適圧力上昇率(prrnew)の計算を要求するステップS3600であり、S3500ステップで適用した新たな最適圧力上昇率(prrnew)のアップデートを要求するステップである。例えば、所定の時間(例えば、2秒)が経過すると、IR受信機260及び水素供給部330から受信した新たな水素タンク100の圧力(Ptank’)、温度(Ttank’)、データ水素移動装置200の圧力(Pba’)、温度(Tba’)に基づいて、新たな最適圧力上昇率(prrnew)を再計算する。例えば、0秒で圧力上昇率がAであれば、2秒で圧力上昇率が再計算によりBに変更され、さらに2秒後の4秒でCに変更されるように、続けて新たな最適圧力上昇率(prrnew)がアップデート(A-B-C)される。
【0043】
本発明の一実施形態による水素充填シミュレーションにおいて用いる熱力学的モデルは、データ水素移動装置200及び水素タンク110における熱伝達を反映していない。よって、水素タンク110内の水素の温度計算結果に誤差が発生する。しかし、水素充填中に現状の水素タンク110内の圧力及び温度に基づいて水素充填シミュレーションを行うので、シミュレーションの時間が十分に短ければ誤差を減らすことができる。よって、水素充填終了の直前まで、充填残り時間中は水素充填シミュレーションを繰り返す。
【0044】
前述したステップ(S3100~S3600)の順序は例示にすぎず、これに限定されるものではない。すなわち、前述したステップ(S3100~S3600)の順序を変更してもよく、それらのうちの一部のステップを同時に行ってもよく、削除してもよい。
【0045】
【0046】
<第1ステップ>
充填機制御部310は、水素充填機300の供給水素圧力を設定する。第1ステップS4100は、水素充填機300に供給される水素の圧力を設定するステップである。水素充填機300の供給水素圧力値は、直前時間ステップ(-△t)の供給水素圧力(Pt-1
ba)と、現在のステップの圧力上昇率(prrk)と、水素充填シミュレーション時間周期(△t)を数式2に代入して算出する。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
前述したステップ(S4100~S4600)の順序は例示にすぎず、これに限定されるものではない。すなわち、前述したステップ(S4100~S4600)の順序を変更してもよく、それらのうちの一部のステップを同時に行ってもよく、削除してもよい。
【0060】
このような
図3及び
図4の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法について説明していない事項は、前述した
図1及び
図2の燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法について説明した内容と同一であるか、又は説明した内容から容易に類推可能であるので、以下では説明を省略する。
【0061】
図3及び
図4を参照して説明した一実施形態による燃料電池用CHSSのリアルタイム通信情報に基づく水素安全充填方法は、コンピュータにより実行されるアプリケーションやプログラムモジュールなどのように、コンピュータにより実行可能なコマンドを含む記録媒体の形態で実現することもできる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータによりアクセスできる任意の可用媒体であり、揮発性及び不揮発性媒体、分離型及び非分離型媒体の全てが含まれる。また、コンピュータ可読媒体には、コンピュータ記憶媒体が全て含まれる。コンピュータ記憶媒体には、コンピュータ可読コマンド、データ構造、プログラムモジュール、その他のデータなどの情報の保存のための任意の方法又は技術で実現される揮発性及び不揮発性、分離型及び非分離型媒体が全て含まれる。
【0062】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形できることを理解するであろう。なお、上記実施形態はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。例えば、単一のものを説明した各構成要素を分散して用いてもよく、同様に分散したものを説明した構成要素を結合した形態で用いてもよい。
【0063】
本発明には、明細書ではなく特許請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。