(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】マイクロカラム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/60 20060101AFI20220622BHJP
B01D 15/22 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
G01N30/60 K
G01N30/60 P
B01D15/22
(21)【出願番号】P 2021015080
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521023942
【氏名又は名称】エースバイオアナリシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】志村 清仁
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-199041(JP,A)
【文献】特開2000-088805(JP,A)
【文献】特開昭58-005650(JP,A)
【文献】特表2011-508890(JP,A)
【文献】特表2006-521561(JP,A)
【文献】実開平03-051370(JP,U)
【文献】実開平01-118361(JP,U)
【文献】登録実用新案第3107352(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/98
G01N 27/447
B01D 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続構造において使用するためのマイクロカラムであって、
前記接続構造は、前記マイクロカラムと、2つのキャピラリー管とを備えて、前記2つのキャピラリー管は所定の空間を隔てて位置付けられ、
前記マイクロカラムは、コネクタと、充填剤を含む内部カラム管とを備え、
前記コネクタは、
管状部材と、
前記管状部材内に前記所定の空間を隔てて配置されている2つの中間管と、
を備え、
前記内部カラム管は、前記所定の空間内に配置されており、
前記2つの中間管は、各々前記キャピラリー管を受容するための開口部を備える、マイクロカラム。
【請求項2】
前記所定の空間が、約1~20mmの長さを有する、請求項1に記載のマイクロカラム。
【請求項3】
前記管状部材が、約0.2~2mmの内径を有する、請求項1または2に記載のマイクロカラム。
【請求項4】
前記充填剤がモノリス構造である、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項5】
前記内部カラム管の内径が、前記中間管の内径より大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項6】
前記中間管が、フッ素樹脂で構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項7】
前記管状部材に対して外力を付与する力付与手段をさらに備え、
前記力付与手段による外力の付与により、前記管状部材が変形し、前記所定の空間を膨張または収縮させるように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項8】
前記力付与手段は圧力制御部材を備え、
前記圧力制御部材は、前記管状部材との間に圧力調整空間が形成されるように、前記管状部材の少なくとも前記所定の空間を覆う部分の周囲に配置されている、請求項
7に記載のマイクロカラム。
【請求項9】
前記圧力制御部材は、前記圧力調整空間を減圧することにより前記所定の空間を膨張させ、前記圧力調整空間を加圧することにより前記所定の空間を収縮させるように構成されている、請求項8に記載のマイクロカラム。
【請求項10】
前記管状部材の少なくとも前記所定の空間を覆う部分が、可撓性素材で構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項11】
前記可撓性素材はシリコーン素材である、請求項
10に記載のマイクロカラム。
【請求項12】
前記管状部材が、熱収縮素材で構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項13】
使用時に外部から押圧する部材が装着されないことを特徴とする、請求項1~6および12のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項14】
前記管状部材が、前記中間管の端部を部分的に覆っている、請求項1~13のいずれか一項に記載のマイクロカラム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロカラムと、
前記キャピラリー管と、
前記キャピラリー管が前記中間管に受容される位置を規定する位置決め手段と
を含むマイクロカラムキット。
【請求項16】
前記位置決め手段は、前記キャピラリー管に取り付けられたストッパー、または前記キャピラリー管に設けられたインジケータである、請求項15に記載のマイクロカラムキット。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロカラムの製造方法であって、
前記管状部材に前記内部カラム管を挿入する工程と、
前記管状部材に前記中間管を挿入する工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項4、または請求項4に従属する請求項5~14のいずれか一項に記載のマイクロカラムの製造方法であって、
カラム管の内部でモノリス構造の充填剤を形成させる工程と、
前記カラム管を切断することで前記内部カラム管を作製する工程と、
前記管状部材に前記内部カラム管を挿入する工程と、
前記管状部材に前記中間管を挿入する工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャピラリー電気泳動や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)において使用できるマイクロカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
キャピラリー電気泳動やHPLCなどのキャピラリー管を使用した分析技術において、クロマトグラフィーカラムなど機能性を備えたキャピラリー管、およびバルブやサンプラーに接続して一連の流体連通な流路を形成するための配管用のキャピラリー管など各種キャピラリー管が利用される。例えば、これらのキャピラリー管は、未接続のキャピラリー管の先端にスリーブ部材を取り付けてキャピラリー管の外径を拡張し、キャピラリー管およびスリーブ部材を一緒にフェラル部材(押しネジと一体化されることも多い)に挿入し、これらをユニオンに押し込むことで、一方のキャピラリー管をユニオンに固定し、他方のキャピラリー管も同様にして同じユニオンに固定することで配管を液密に保ったまま接続がなされる。このように、キャピラリー管の接続には複数の部材が使用され、接続部は大きな体積を占めることが多い(特許文献1など)。また、接続部に複数の部材が取り付けられる場合、これらの部材を取り付けるためにキャピラリー管にある程度の長さが要求され、例えば非常に短いクロマトグラフィーカラムなどの機能的キャピラリー管は、そもそも接続が困難であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意研究した結果、キャピラリー電気泳動やLC-MSにおいて使用される既存のキャピラリー管に接続できるマイクロカラムを開発した。一つの側面において、本開示のマイクロカラムはキャピラリー管のコネクタである。一つの側面において、本開示のマイクロカラムは、分離などの機能性を備えた小サイズの機能性部材である。本開示は、キャピラリー電気泳動やLC-MSなどのキャピラリー管を使用した分析技術において有用に使用できるマイクロカラムおよびその作製方法を提供する。
【0005】
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1)
接続構造において使用するためのマイクロカラムであって、
前記接続構造は、前記マイクロカラムと、2つのキャピラリー管とを備えて、前記2つのキャピラリー管は所定の空間を隔てて位置付けられ、
前記マイクロカラムは、コネクタと、充填剤を含む内部カラム管とを備え、
前記コネクタは、
管状部材と、
前記管状部材内に前記所定の空間を隔てて配置されている2つの中間管と、
を備え、
前記内部カラム管は、前記所定の空間内に配置されており、
前記2つの中間管は、各々前記キャピラリー管を受容するための開口部を備える、マイクロカラム。
(項目2)
前記所定の空間が、約1~20mmの長さを有する、項目1に記載のマイクロカラム。
(項目3)
前記管状部材が、約0.2~2mmの内径を有する、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目4)
前記充填剤がモノリス構造である、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目5)
前記内部カラム管の内径が、前記中間管の内径より大きい、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目6)
前記中間管が、フッ素樹脂で構成されている、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目7)
前記管状部材に対して外力を付与する力付与手段をさらに備え、
前記力付与手段による外力の付与により、前記管状部材が変形し、前記所定の空間を膨張または収縮させるように構成されている、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目8)
前記力付与手段は圧力制御部材を備え、
前記圧力制御部材は、前記管状部材との間に圧力調整空間が形成されるように、前記管状部材の少なくとも前記所定の空間を覆う部分の周囲に配置されている、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目9)
前記圧力制御部材は、前記圧力調整空間を減圧することにより前記所定の空間を膨張させ、前記圧力調整空間を加圧することにより前記所定の空間を収縮させるように構成されている、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目10)
前記管状部材の少なくとも前記所定の空間を覆う部分が、可撓性素材で構成されている、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目11)
前記可撓性素材はシリコーン素材である、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目12)
前記管状部材が、熱収縮素材で構成されている、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目13)
使用時に外部から押圧する部材が装着されないことを特徴とする、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目14)
前記管状部材が、前記中間管の端部を部分的に覆っている、前述の項目のいずれかのマイクロカラム。
(項目15)
前述の項目のいずれかのマイクロカラムと、
前記キャピラリー管と、
前記キャピラリー管が前記中間管に受容される位置を規定する位置決め手段と
を含むマイクロカラムキット。
(項目16)
前記位置決め手段は、前記キャピラリー管に取り付けられたストッパー、または前記キャピラリー管に設けられたインジケータである、前述の項目のいずれかのマイクロカラムキット。
(項目17)
前述の項目のいずれかのマイクロカラムの製造方法であって、
前記管状部材に前記内部カラム管を挿入する工程と、
前記管状部材に前記中間管を挿入する工程と、
を含む、方法。
(項目18)
前述の項目のいずれかのマイクロカラムの製造方法であって、
カラム管の内部でモノリス構造の充填剤を形成させる工程と、
前記カラム管を切断することで前記内部カラム管を作製する工程と、
前記管状部材に前記内部カラム管を挿入する工程と、
前記管状部材に前記中間管を挿入する工程と、
を含む、方法。
【0006】
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0007】
本開示はマイクロカラムを提供することで、キャピラリー管をコンパクトに接続する、微量試料に適用可能な微小な分離システムを提供する、および/またはキャピラリー管システムのフローの微細な制御を可能にするなどの効果を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示のマイクロカラムおよび接続構造の例示的な実施形態を示す。
【
図2】本開示のマイクロカラムおよび接続構造の例示的な実施形態を示す。
【
図3】本開示のマイクロカラムおよび接続構造の例示的な実施形態を示す。
【
図4】
図3のマイクロカラムの動作の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0010】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0011】
(定義等)
本明細書において「接続構造」とは、マイクロカラム(またはコネクタ)と、マイクロカラム(またはコネクタ)に接続されるべき構造体(キャピラリー管など)とを合わせた部分を指す。例えばLCシステムの配管の一部に組み込まれている場合など、接続構造が構造体全体に占める割合が小さい場合、接続構造は、マイクロカラム(またはコネクタ)の両端部の間の範囲に存在する構造体部分を指して本明細書において使用されることがある。
【0012】
本明細書において「コネクタ」とは、複数のキャピラリー管を互いに接続することができる構造体(接続されている状態におけるものも含む)を指す。
【0013】
本明細書において「マイクロカラム」とは、その内部の少なくとも一部に内部カラム管を含み、小さなサイズ(例えば、4cm以下の長さ)を有する管状の構造体を指し、キャピラリー管と接続されて使用され、分離などの機能性を備え得る。本明細書に記載の力付与手段などの追加の構造体がさらに管状の構造体に取り付けられた場合、管状の構造体に加えてこの追加の構造体も含めた部分をマイクロカラムと呼び得る。一つの実施形態において、コネクタの内部に内部カラム管が位置付けられることでマイクロカラムになり得る。
【0014】
本明細書において「内部カラム管」とは、少なくともその一部が環状部材の内部に位置付けられる筒状または管状の構造体を指す。一つの実施形態において、内部カラム管はその内部に充填剤を含む。
【0015】
本明細書において「キャピラリー管」とは、小さな内径(代表的には約0.01~約1mm)を有する中空構造の管を指す。キャピラリー電気泳動やHPLCにおいて使用されるキャピラリー管は、熔融シリカ製やガラス製であることが多いが、キャピラリー管の材料は特に限定されない。通常、キャピラリー管は、その末端部分以外は液密である。キャピラリー管は、外側がポリイミドなどでコーティングされている場合もある。
【0016】
本明細書において「中間管」とは、本開示のマイクロカラムの管状部材(外側に位置する)とキャピラリー管との間など、少なくともその一部が2つの管状の構造体の間に挟まれる管状の構造体を指す。
【0017】
本明細書において管状の構造体について記載する場合、中空の空間が延在する方向に関して「長さ」という用語を使用し、中空の空間が延在する方向に直交する方向に関して「周囲」、「外径」および「内径」という用語を使用し得る。
【0018】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、本開示のマイクロカラム、キャピラリー管など)が提供されるユニットをいう。キットは、好ましくは、提供される部分などをどのように使用するか、あるいは、どのように操作すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。
【0019】
本明細書において、用語「約」は、特に別の定義が示されない限り、示された値プラスまたはマイナス10%を指す。「約」が、温度について使用される場合、示された温度プラスまたはマイナス5℃を指し、「約」が、pHについて使用される場合、示されたpHプラスまたはマイナス0.5を指す。
【0020】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
【0021】
一つの局面において、本開示は、接続構造を提供し、この接続構造は、コネクタまたはマイクロカラムと、複数(例えば、2つ)のキャピラリー管とを備える。一つの実施形態において、接続構造は、マイクロカラム(またはコネクタ)およびキャピラリー管が流体連通するように構成され得る。一つの実施形態において、接続構造は、液密になるように(構造体の内部から外部への液体の流出が防止されるように)構成され得る。一つの実施形態において、本開示の接続構造は、複数のキャピラリー管を接続する機能以外の機能(例えば、分離および流れ制御などの本明細書に記載のマイクロカラムの機能)も発揮し得る。一つの実施形態において、本開示の接続構造において、キャピラリー管は、互いに所定の空間を隔てて位置付けられる。
【0022】
本明細書に記載のキャピラリー管は、市販のものを使用することができ、例えば、キャピラリー電気泳動やHPLC用の配管として市販されている。キャピラリー管は、例えば、約0.05~5mm、約0.05mm、約0.1mm、約0.18mm、約0.2mm、約0.36mm、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mmなどの外径を有し得る。キャピラリー管は、例えば、約0.01~1mm、約0.01mm、約0.02mm、約0.05mm、約0.1mm、約0.2mm、約0.5mm、約1mmなどの内径を有し得る。キャピラリー管は、例えば、熔融シリカ製またはガラス製であり得る。キャピラリー管は、外側がポリイミドなどでコーティングされていてもよい。
【0023】
一つの局面において、本開示は、接続構造において使用するためのマイクロカラム(またはコネクタ)、あるいは、マイクロカラム(またはコネクタ)とキャピラリー管との組合せ(例えば、キットとして)を提供する。一つの実施形態において、本開示のマイクロカラムは、コネクタおよび内部カラム管を含むかまたはこれらからなる。一つの実施形態において、マイクロカラム(またはコネクタ)は、それぞれ別のキャピラリー管を受容する複数の開口部を備える。マイクロカラム(またはコネクタ)は、同じ外径を有するキャピラリー管を受容してもよいし、異なる外径を有するキャピラリー管を受容してもよく、開口部の大きさはキャピラリー管の外径に応じて調整され得る。
【0024】
一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、約10mm、約20mm、約50mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.5~50mm、約1~50mm、約1~20mm、約1~10mmの長さを有し得る。本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、接続構造の形成のために必要な部材が少数であり得る(例えば、マイクロカラムとキャピラリー管のみ、またはコネクタとキャピラリー管のみ)ため、接続が容易であり得、また各種部材の取り付けのための幅が小さくて済み得る。一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)のキャピラリー管を受容する開口部は、キャピラリー管の外径と同じかまたはその約80%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上の大きさの内径を有し得る。
【0025】
一つの実施形態において、本開示のコネクタは管状部材を備える。一つの実施形態において、本開示のコネクタは、管状部材と、管状部材内に位置付けられる複数(例えば、2つ)の中間管とを含み、中間管は互いに所定の空間を隔てて位置付けられ得る。
【0026】
一つの実施形態において、本開示の管状部材は、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)の長さと同じである。本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)が中間管を備える実施形態において、中間管の少なくとも一部は管状部材の端部から飛び出していてもよい。一つの実施形態において、本開示の管状部材は、約0.1mm、約0.2mm、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、約10mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.1~10mm、約0.5~10mm、約0.5~5mmの外径を有し得る。管状部材の周囲にさらなる部材を取り付けない場合、管状部材の外径が接続構造の外径となり得るので、本開示の接続構造は非常に少ないスペースで形成でき、高い柔軟性での配管を可能にし得る。一つの実施形態において、本開示の管状部材は、約0.05mm、約0.1mm、約0.2mm、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.05~5mm、約0.1~5mm、約0.2~2mmの内径を有し得る。
【0027】
一つの実施形態において、本開示の管状部材は、熱収縮性素材であり得る。熱収縮性素材として、ポリエチレン、酢酸ビニルポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、ポリプロピレンなどが挙げられるが、これらに限定されず、公知の任意の熱収縮性素材を使用することができる。熱収縮性素材として、例えば、直径1mmの棒状の成形品を150℃で10分間加熱した場合に約90%以下、約80%以下、または約70%以下の長さに収縮するような素材を使用することができる。一つの実施形態において、本開示の管状部材は、可撓性素材であり得る。可撓性素材として、シリコーン素材、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、エラストマーなどが挙げられるが、これらに限定されず、公知の任意の可撓性素材を使用することができる。可撓性素材として、例えば、25℃で約0.02kgf/mm2、約0.05kgf/mm2、約0.1kgf/mm2、約0.2kgf/mm2、約0.4kgf/mm2、約0.6kgf/mm2、約0.8kgf/mm2、約1kgf/mm2、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.02~1kgf/mm2、約0.05~0.6kgf/mm2、約0.1~0.4kgf/mm2の引張弾性率を有する素材を使用することができる。可撓性素材として、例えば、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、メタノールおよび水に対して厚さ1mm、一辺1cmの正方形の成形品を50℃で100時間これらの溶媒に浸漬した場合に約20%以下、約10%以下、または約5%以下の体積増加率を示すような素材が好ましくあり得る。
【0028】
一つの実施形態において、本開示の中間管は、キャピラリー管を直接受容する開口部を備える。この開口部は、2つの中間管それぞれの2つの開口部のうち、マイクロカラムにおいて外側(すなわち、キャピラリー管を直接受容する側)に位置付けられる開口部であり得る。一つの実施形態において、中間管の開口部は、キャピラリー管の挿入が容易になるようにキャピラリー管の外径と同じかまたはそれを上回る内径となるように調整されてもよい。例えば、中間管の開口部をラッパ状に広げてもよい。一つの実施形態において、中間管(開口部以外)は、キャピラリー管の外径と同じであるか、またはキャピラリー管の外径より小さく、かつキャピラリー管の外径の約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上の大きさの内径を有し得る。一つの側面において、中間管は、管状部材がキャピラリー管を受容できるようにキャピラリー管の外径を調整するための手段であり得る。
【0029】
一つの実施形態において、本開示の中間管は、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、TEFLON(登録商標)、TEFZEL(登録商標)、DELRIN(登録商標))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリプロピレン、スルホンポリマー、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリオキシメチレン(POM)などの素材で構成され得る。好ましくは、本開示の中間管は、TEFLON(登録商標)のような柔軟性および硬さを備えたフッ素樹脂で構成され、キャピラリー管を受容した際に液密となる。
【0030】
一つの実施形態において、中間管の間の所定の空間は、約0.5mm、約1mm、約2mm、約5mm、約10mm、約20mm、約50mm、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約0.5~50mm、約1~50mm、約1~20mm、約1~10mmの長さを有し得る。中間管の間の所定の空間に内部カラム管を位置付けることができ、一つの実施形態において、所定の空間の長さは、内部カラム管の長さとほぼ等しくなるように(例えば、約10%以下、約5%以下、約2%以下、約1%以下の差)構成され得る。中間管の間の所定の空間および内部カラム管の長さに応じて、内部カラム管に保持できる充填剤の体積が増大するため、中間管の間の所定の空間および内部カラム管はある程度長くするように構成することが有利であり得るが、充填剤の存在する距離が長くなるほどここを通すためにフローの圧力を上昇させる必要があるため、液密な接続構造を維持できる圧力範囲となるようにこの長さを調製することが重要であり得る。
【0031】
一つの実施形態において、内部カラム管は、ガラス製であり得るが、特に材料は限定されない。一つの実施形態において、内部カラム管には充填剤が含まれる。充填剤は、粒子充填剤、モノリス構造など、HPLCシステムなどにおいて使用されるカラムの充填剤構造であり得る。粒子充填剤構造と比較してモノリス構造は一般的に低圧で操作できるので、好ましくあり得る。また、充填剤は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィーなどにおいて使用されるカラムの充填剤であり得、同様の分離モードを実装できる。アフィニティークロマトグラフィーにおける標的分子/アフィニティーリガンドの組み合わせとして、アビジン及びストレプトアビジン等のビオチン結合タンパク質/ビオチン、マルトース結合タンパク質/マルトース、Gタンパク質/グアニンヌクレオチド、オリゴヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/グルタチオン、DNA結合タンパク質/DNA、抗体/抗原分子(エピトープ)、抗原分子(エピトープ)/抗体、抗体/プロテインA、抗体/プロテインG、抗体/プロテインL、レクチン/糖、カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド、ATP結合タンパク質/ATP、あるいはエストラジオール受容体タンパク質/エストラジオールなどが挙げられる。内部カラム管は管状部材に保護され得るため、特に強度は求められず、内部カラム管の内径は、管状部材の内径の約95%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%などであり得る。
【0032】
一つの実施形態において、管状部材(変形する場合は非変形時)の内径は、内部カラム管の外径とほぼ等しくなるように(例えば、約10%以下、約5%以下、約2%以下、約1%以下の差)構成され得る。一つの実施形態において、管状部材の内径は、中間管の外径とほぼ等しくなるように(例えば、約10%以下、約5%以下、約2%以下、約1%以下の差)構成され得る。
【0033】
一つの実施形態において、内部カラム管の内径は大きくなるように構成される。内部カラム管内部には充填剤が含まれ得るので、充填剤の吸着・分離性能の向上のために、および/または充填剤が存在することによるフローに必要な圧力の増大を抑制するために内部カラム管の内径を大きくすることが好ましくあり得る。一つの実施形態において、内部カラム管の内径はキャピラリー管の内径より大きくなるように構成され得る。一つの実施形態において、内部カラム管の内径はさらに中間管の内径より大きくなるように構成され得る。この実施形態において、中間管の内径はキャピラリー管の外径とほぼ等しいので、内部カラム管の内部にキャピラリー管が挿入されるおそれがある。一つの実施形態において、中間管の間の所定の空間および/または内部カラム管には、キャピラリー管が到達しないように構成され、そうすることで充填材の構造がキャピラリー管によって破壊されることを防ぐことができる。そのため、一つの実施形態において、キャピラリー管には、中間管に受容される位置を規定する位置決め手段が設けられる。一つの実施形態において、位置決め手段は、キャピラリー管に取り付けられたストッパー(例えば、キャピラリー管を受容できる内径を有する管状の構造体を短く(例えば、約1mmなど)切り出したものなど)、またはキャピラリー管に設けられたインジケータ(例えば、キャピラリー表面に付された線、凹部あるいは凸部など)である。
【0034】
一つの実施形態において、内部カラム管の内径はキャピラリー管の外径より小さくなるように構成され得る。この実施形態において、内部カラム管の内部にキャピラリー管が挿入されることはないので、位置決め手段は不要であり得る。この実施形態において、内部カラム管の長さの分だけキャピラリー管の間に所定の空間が形成される。
【0035】
一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、管状部材に対して外力を付与する力付与手段を(例えば管状部材の周囲に)さらに備え、力付与手段による外力の付与により、管状部材が変形し、所定の空間が膨張または収縮させられる。例えば、所定の空間の膨張または収縮は、マイクロカラムの軸方向に垂直な方向への変形を伴い得る。力付与手段により付与される外力は、機械的な引張力や、管状部材の周囲の圧力操作を介して管状部材内外に発生する圧力差を利用した力などであり得る。例えば、力付与手段は、管状部材に取り付け管状部材を機械的に引張する部材、管状部材の周囲に気密な空間を創出するように管状部材の周囲に取り付けられる部材、この気密な空間(圧力調整空間)内の気圧を増減させる部材(圧力調整空間に連通して接続されたシリンダまたはポンプなど)を備え得る。この実施形態において、管状部材は、シリコーン素材などの上記の可撓性素材であり得る。所定の空間の体積を変化させることで、液密状態を維持したまま内部カラム管と環状部材の間に新たな流路を形成することができ、これによりキャピラリー管および内部カラム管の内部および外部のフローの速さと向きを制御する可能性を広げることができる。
【0036】
所定の空間を膨張させると、管状部材と内部カラム管との間に隙間ができ、この隙間には充填剤が存在しないため抵抗が低く、フローは優先的にこの隙間を流れ得る。例えば、陽極側に置いた固相抽出カラム(内部カラム管)と等電点電気泳動分離とを直接連結させたシステムにおいては、固相抽出カラムを酸性の陽極液に浸した状態でデバイスの両端に電圧を印加すると、カラム内で陽極方向への電気浸透流が発生し、試料および分離液が等電点電気泳動用キャピラリー内から陽極側に引き出されてしまうという問題が発生するが、上記のフロー制御により、固相抽出カラムからタンパク質を溶離後、電圧を印加する前にカラム管の外側に隙間を発生させると、電気浸透による液の流れがカラムの外側を還流して、下流側の等電点電気泳動用キャピラリーには流れを生じさせないようにすることができる。この実施形態において、内部カラム管と中間管との境界部分に流路が形成されることが好ましいので、内部カラム管の長さは中間管の間の所定の空間の長さより短く構成され、または内部カラム管に対向する中間管の端面に溝(例えば、中心から周囲に向かう放射状の溝)を設けることにより、内部カラム管と中間管との間に流路が形成され得る。また、所定の空間を収縮させると、管状部材と内部カラム管との間の隙間は消失し、内部カラム管外の流路が閉じ、内部カラム管内に流路が切り替えられるので、この状態を利用してもよい。一つの好ましい実施形態において、内部カラム管の外壁にスルホン酸基を結合させ、酸性条件下で電気浸透流を陰極方向へ方向付けることもできる。
【0037】
一つの実施形態において、力付与手段は圧力制御部材を備え、圧力制御部材は、管状部材との間に圧力調整空間が形成されるように、少なくとも所定の空間を覆う管状部材の部分の周囲に配置され得る。圧力制御部材は、圧力調整空間を減圧することにより所定の空間を膨張させ、圧力調整空間を加圧することにより所定の空間を収縮させ得る。特に、管状部材の所定の空間を覆う部分は、可撓性素材で構成され得る。
【0038】
一つの実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、管状部材の周囲にさらなる部材(例えば管状部材を外部から押圧する部材)を備えない。別の実施形態において、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、管状部材の周囲にさらなる部材(例えば管状部材を外部から押圧する部材)を備えてもよく、そうすることで液密性能の向上などが期待され得る。この実施形態において、管状部材は、上記の熱収縮性素材であり得る。一つの実施形態において、管状部材は、(熱収縮により)中間管の端部を部分的に覆うように構成することができ、そうすることでマイクロカラムの耐圧能が向上し得る。例えば、長い管状部材に各種部材を挿入し、管状部材を熱収縮させた後、中間管の端部から離れた位置で管状部材を切断することで、このような構造が形成され得る。
【0039】
限定を意図するものではないが、理解を容易にするために以下で図面を参照して本開示の具体的な実施形態を説明する。
【0040】
図1では、管状部材30に充填剤33を含む内部カラム管32を挿入してマイクロカラム20を形成し、その後、キャピラリー管22を挿入して接続構造10を形成している。管状部材30がコネクタにあたる。キャピラリー管22の間(内部カラム管32の長さ)に所定の空間24が形成される。キャピラリー管22および内部カラム管32の外径はともに管状部材30の内径と同程度であるが、内部カラム管32の内径はキャピラリー管22の内径よりも大きくして体積を大きくしている。
【0041】
図2では、管状部材30(熱収縮素材)に中間管34および充填剤33を含む内部カラム管32を挿入し、熱を加えて管状部材30を収縮させてマイクロカラム20を形成し、その後、位置決め手段23を備えたキャピラリー管22を挿入して接続構造10を形成している。管状部材30および中間管34がコネクタを構成している。中間管34の間に所定の空間24が形成され、ここに内部カラム管32が位置付けられる。位置決め手段23が存在することで、キャピラリー管22は内部カラム管32の内部には侵入しない。管状部材30の熱収縮により、管状部材30は中間管34の端部を部分的に覆っている。
【0042】
図3では、最初に管状部材30(可撓性素材)に中間管34および充填剤33を含む内部カラム管32を挿入してマイクロカラム20を形成する(a)。その後、位置決め手段23を備えたキャピラリー管22を挿入して接続構造10を形成する(b)。次に、管状部材30の周囲に圧力制御部材40、Oリング42および押しネジ41を取り付け、圧力制御手段を備えたマイクロカラム20を形成する(c)。管状部材30および中間管34がコネクタを構成している。中間管34の間に所定の空間24が形成され、ここに内部カラム管32が位置付けられる。位置決め手段23が存在することで、キャピラリー管22は内部カラム管32の内部には侵入しない。圧力制御部材40、Oリング42および押しネジ41が力付与手段を構成する。圧力制御部材40と管状部材30との間には圧力制御空間が形成され、圧力を制御することで可撓性素材の管状部材30を変形させることで所定の空間24の体積が増減する。内部カラム管32と中間管34との間には中間管の端部に設けられた放射状の溝により流路が形成される。
【0043】
図3のマイクロカラムの圧力制御による挙動についてさらに
図4を参照する。ここでは、マイクロカラムの下流(図の上部)に等電点電気泳動用キャピラリー管が接続されている場合を想定している。(A)圧力制御空間を加圧している状態において、内部カラム管32付近には内部カラム管32内を通過する流路のみが形成される。ポンプ等により試料を流すことで内部カラム管32の充填剤33に目的物質(タンパク質など)をトラップできる。(B)圧力制御空間を減圧している状態において、所定の空間24は膨張し、管状部材30と内部カラム管32との間に隙間ができ、この隙間と中間管34の端面に設けられた放射状の溝とが一緒になって新たな流路を形成する。内部カラム管32に陽極液を流した後、電気泳動開始時に減圧し、この状態で電圧を印加すると、内部カラム管32で発生する陽極方向への電気浸透流は陽極側の溝から内部カラム管32の外側、さらに陰極側の溝を通り内部カラム管32内に還流する。このようにして、陰極側にある等電点電気泳動用キャピラリーへの電気浸透流の影響をなくすことができる。この状況をさらに促進するために、内部カラムの外壁にスルホン酸基を結合し、酸性条件下で陰極方向への電気浸透流を発生させることは望ましい選択であり得る。
【0044】
(製造方法)
一つの局面において、本開示は、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)の製造方法を提供する。一つの実施形態において、この製造方法は、管状部材に中間管を挿入する工程を含み得る。一つの実施形態において、この製造方法は、管状部材に内部カラム管を挿入する工程を含み得る。一つの実施形態において、この製造方法は、内部カラム管を調製する工程を含み得る。一つの実施形態において、内部カラム管は、内部カラム管の内部に充填剤(粒子充填剤など)を入れる工程またはカラム管の内部に充填剤(モノリス構造の充填剤など)を形成させる工程によって調製され得る。一つの実施形態において、内部カラム管は、カラム管の内部に充填剤(粒子充填剤など)を入れる工程またはカラム管の内部に充填剤(モノリス構造の充填剤など)を形成させる工程と、カラム管を切断する工程とによって調製され得る。例えば、モノリス構造の充填剤などを内部に形成させたカラム管を切断すると、充填剤の断面とカラム管断面とが揃い、好ましくあり得る。本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)の製造の際には、環状部材、キャピラリー管、中間管、内部カラム管などの内径/外径を適切に選択して全体的に液密となるように構成することが好ましくあり得る。熱や圧力により管状の構造体の内径/外径はわずかに変化し得るので、本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)の製造の際には、管状の構造体に熱や圧力を加えてもよい。例えば、環状部材に内部カラム管を挿入する際、中間管にキャピラリー管を挿入する際に、環状部材や中間管の開口部を広げる、および/または環状部材や中間管を加熱することで挿入が容易になり得る。一つの実施形態において、熱収縮素材の管状部材を使用して本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)を製造する場合、マイクロカラム(またはコネクタ)の製造方法は、管状部材を加熱する工程を含み得る。加熱の温度は、例えば、約100℃、約150℃、約200℃、約300℃、約400℃、約500℃、またはこれらの任意の2つの間の範囲、例えば、約100℃~500℃などであり得るが、熱収縮素材の種類によって当業者が適当に設定できる。
【0045】
(用途)
本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、キャピラリー電気泳動やLC-MSなどに使用されるキャピラリー管と接続して使用することができる。本開示のマイクロカラム(またはコネクタ)は、キャピラリー管との接続の際に締め具などの押圧手段を使用しなくてもよいので、接続が容易であり得る。本開示のマイクロカラムは、充填剤として吸着剤および/または分離剤を含み得るので、特定の物質を分離または単離することができ、種々の分析手段と組み合わせて好適に使用され得る。キャピラリー管との接続の際に締め具などの押圧手段を使用しなくてもよいので、接続が容易であり得る。一つの実施形態において、本開示のマイクロカラムは、約1MPa以下、約0.5MPa以下、約0.2MPa以下、約0.1MPa以下、約0.05MPa以下、約0.02MPa以下、約0.01MPa以下などの比較的低い圧力がかかる条件で使用され得る。
【0046】
(注記)
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0047】
以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0048】
(実施例1:微小分離用のマイクロカラム)
図1の模式図で示されるマイクロカラムを以下の手順に従って作製した。
【0049】
1.1 モノリス充填材内蔵キャピラリー管(内径0.25mm)の作製
外径0.36mm、内径0.25mmの熔融シリカキャピラリー管(ポリイミド外皮付)(Molex LLC、米国)内に、グリコール基を持つモノリス構造を形成させた(Lou, et al., J. Chromatogr. A, 926, 255-264 (2001);Lee, Svec & Frechet, J. Chromatogr. 1051, 53-60 (2004);Jiang, Mallik & Hage, Anal. Chem. (2005)を参照のこと)。本明細書の実施例では、グリコール基をもつモノリス構造を、グリコールモノリスと呼ぶ。
【0050】
1.2 グリコールモノリス充填内部カラム管(内径0.25mm)の作製
上記のグリコールモノリス内蔵キャピラリー管を約10mmに切断してグリコールモノリス充填内部カラム管を作製した。
【0051】
1.3 マイクロカラムおよび接続構造の作製
管状部材として外径1.6mm、内径0.3mmのテフロン(登録商標)チューブ(株式会社ハギテック、千葉県四街道市)を長さ30mmに切断し、熱した針を両端の開口部に押し込むことで、開口部をラッパ状に広げた。上記のグリコールモノリス充填内部カラム管をテフロン(登録商標)チューブに端から圧入した。圧入を容易にするために、テフロン(登録商標)チューブを加熱した。内部カラムの全体がテフロン(登録商標)チューブ内に圧入されたら、外径0.35mm、内径0.05mmのキャピラリー管(ポリイミド外皮付)(Molex LLC、米国)内を押し棒として、内部カラム管がテフロン(登録商標)チューブの中央に達するまで、さらに圧入してマイクロカラムを完成させた。マイクロカラムの両側に外径0.36mmの熔融シリカキャピラリー管(ポリイミド外皮付)(Molex LLC、米国)を接続することで、マイクロカラムを含む接続構造を完成させた。
【0052】
(実施例2:微小分離用の中間管を備えたマイクロカラム)
図2の模式図で示されるマイクロカラムを以下の手順に従って作製した。
【0053】
2.1 モノリス充填材内蔵キャピラリー管(内径0.8mm)の作製
外径1.6mm、内径0.8mmのガラスキャピラリー管(富士理化工業株式会社、大阪市)内に、実施例1と同様にグリコールモノリスを形成させた。
【0054】
2.2 グリコールモノリス充填内部カラム管(内径0.8mm)の作製
上記のグリコールモノリス内蔵キャピラリー管を約3mmの長さに切断し、長さ2.0mmになるまで、両端を400番の耐水紙やすりで研磨し、グリコールモノリス充填内部カラム管を完成させた。
【0055】
2.3 マイクロカラムおよび接続構造の作製
中間管として、外径1.6mm、内径0.3mmのテフロン(登録商標)チューブを長さ10mmに切断し、熱した針を一方の開口部に押し込むことで、一方の開口部をラッパ状に広げた。内径2.1mm、肉厚0.2mm、長さ30mmの熱収縮チューブ(スミチューブA、住友電気工業株式会社、大阪市)の管状部材に中間管、グリコールモノリス充填内部カラム管、中間管の順に挿入した。このとき、中間管はラッパ状に口を広げた側を外側に配置した。熱収縮チューブ内で三者を密着させて配置し、全体を100度の気流内に約30秒置くことで、チューブを収縮させた。放冷後、熱収縮チューブの両端を、中間管の端より約0.5mm長くなるように切断し、マイクロカラムを完成させた。端から10.5mmの位置にストッパーを固定した外径0.36mmの熔融シリカキャピラリー管(ポリイミド外皮付)(Molex LLC、米国)をマイクロカラムの両側に接続することで、接続構造を完成させた。ストッパーは、外径1.6mm、内径0.4mmのPEEKチューブ(Upchurch Scientific Inc.、米国)を長さ1mmに切断したものにキャピラリー管を通し、瞬間接着剤で固定することで取り付けた。
【0056】
この実施例で作製したマイクロカラムは、実施例1で作製したマイクロカラムよりも保持される充填剤が多いため、より多くの量の分析物を分離できると考えられ、検出限界を超える量で検出できる分析物の種類が増大する。また、内部カラム管の内径が大きいため、マイクロカラムにかかる圧力を低減でき、より高流量・短時間の分析が可能となる。
【0057】
(実施例3:フロー調整機能を備えたマイクロカラム)
図3の模式図で示されるマイクロカラムを以下の手順に従って作製した。
【0058】
3.1 グリコールモノリス充填内部カラム管の作製
実施例2と同様にグリコールモノリス充填内部カラム管(外径1.6mm、内径0.8mm、長さ2.0mm)を作製した。
【0059】
3.2 マイクロカラムおよび接続構造の作製
中間管として、外径1.6mm、内径0.3mmのテフロン(登録商標)チューブを長さ10mmに切断し、熱した画鋲の針を一方の開口部に押し込むことで、一方の開口部をラッパ状に広げた。また、もう一方の端面には、中心から放射状に伸びる深さ約0.1mmの溝8本を切削によって設けた。外径2mm、内径1.5mm、長さ22mmのシリコーンチューブ(永柳工業株式会社、東京都)の管状部材に中間管、グリコールモノリス充填内部カラム管、中間管の順に挿入し、マイクロカラムとした。このとき、中間管はラッパ状に口を広げた側を外側に配置し、シリコーンチューブ内で三者を密着させた。マイクロカラムの中間管の一方には、端から10mmの位置にストッパー(実施例2と同様)を固定した外径0.36mm、内径0.15mmのキャピラリー管(内壁を親水性ポリマーで被覆し、外壁にポリイミドの被覆をもつ熔融シリカキャピラリー管)を接続し、もう一方の中間管には、同様のストッパーを持つ外径0.36mm、内径0.05mmの等電点電気泳動用キャピラリー管(内壁を親水性ポリマーで被覆し、外壁にポリイミドの被覆をもつ熔融シリカキャピラリー管)を接続した。中央部の内径が2.7mmである圧力制御部材(PMMA製)(宮本樹脂工業株式会社、福島市)にOリング(NSA3規格、線径1.5mm、内径2.5mm、外径5.5mm)と押しネジ(宮本樹脂工業株式会社、福島市)をセットし、次いでマイクロカラムを挿入し、押しネジを締めてカラムを固定し、等電点電気泳動用キャピラリー管と接続してマイクロカラムの接続構造を完成させた。
【0060】
小サイズのマイクロカラムの装着によりフローの微調整ができ、下流側の等電点電気泳動用キャピラリーにおいて通常発生する電気浸透流の問題に対処できる。
【0061】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示は、新規のマイクロカラムを提供し、これはキャピラリー電気泳動やLC-MSなどのキャピラリー管を使用した分析技術において使用できる。
【符号の説明】
【0063】
10:接続構造
20:マイクロカラム
22:キャピラリー管
23:位置決め手段
24:所定の空間
30:管状部材
32:内部カラム管
33:充填剤
34:中間管
40:圧力制御部材
41:押しネジ
42:Oリング
【要約】
【課題】キャピラリー管に接続できる新規のマイクロカラムを提供すること。
【解決手段】一つの局面において、本開示は、接続構造を提供し、この接続構造は、コネクタまたはマイクロカラムと、複数(例えば、2つ)のキャピラリー管とを備える。一つの実施形態において、接続構造は、マイクロカラム(またはコネクタ)およびキャピラリー管が流体連通するように構成され得る。一つの実施形態において、接続構造は、液密になるように(構造体の内部から外部への液体の流出が防止されるように)構成され得る。
【選択図】なし