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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20220622BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20220622BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20220622BHJP
   F21Y 105/18 20160101ALN20220622BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220622BHJP
【FI】
F21S2/00 340
F21S2/00 600
F21V8/00 310
G01N21/84 E
F21Y105:18
F21Y115:10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017253668
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019121451
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳大
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-235925(JP,A)
【文献】特開2002-214143(JP,A)
【文献】特表2011-522372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 8/00
G01N 21/84
F21Y 105/18
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側から入射した光を先端側へ導く導光部材と、前記導光部材の基端側と対向するように設けられた発光素子と、を備えた照明装置であって、
前記導光部材が、
基端から先端に向かって形成された中央貫通孔と、
基端側における中央貫通孔の外側に設けられた光入射面と、
先端側に前記中央貫通孔と連通して形成され、前記光入射面から入射した光が内周面から射出される発光凹部と、
基端側から先端側に向かって形成された光制御溝と、を備え、
前記光制御溝が、前記中央貫通孔の周囲の一部又は全部を取り囲むように形成されており、
前記発光素子の発光面が、前記導光部材の基端側において前記光制御溝の開口又は前記光制御溝よりも外側とのみ対向するように設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記光入射面が、前記光制御溝の外側に配置されている請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記光制御溝の底面が、前記発光凹部よりも基端側に形成されている請求項1又は2記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基端側の光入射面から入射した光を先端側の発光凹部へと導く導光部材、及び、これを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばワークのエッジや傷を撮像画像から抽出する外観検査システムでは、その画像中において抽出対象が鮮明となるようにワークに対してローアングルの光を照射する照明装置が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
そして、この種の照明装置には、先端側に発光凹部が形成された導光部材に対して基端側の光入射面から光を入射させ、発光凹部の内周面から光を射出させることによりローアングルの照明を実現しているものがある。なお、導光部材には、基端側から発光凹部へ向かって形成され、当該発光凹部と連通する中央貫通孔が形成されており、この中央貫通孔を介してワークを撮像可能となっている。
【0004】
ところで、本願発明者が鋭意検討を重ねたところ、このような中央貫通孔が存在する導光部材では、光入射面に入射した光の一部が中央貫通孔から漏れてワークに照射される光量が低下していることを初めて見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-122037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような問題に鑑みてなされたものであり、光入射面から入射した光が基端側にある中央貫通孔の内周面から漏れにくくして、先端側にある発光凹部の内周面からより射出されやすくすることで、出力ロスを抑え、さらに明るい照明を実現できる導光部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る導光部材は、基端側から入射した光を先端側へ導く導光部材であって、基端から先端に向かって形成された中央貫通孔と、基端側における中央貫通孔の外側に設けられた光入射面と、先端側に前記中央貫通孔と連通して形成され、前記光入射面から入射した光が内周面から射出される発光凹部と、基端側から先端側に向かって形成された光制御溝と、を備え、前記光制御溝が、前記中央貫通孔の周囲の一部又は全部を取り囲むように形成されていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、前記光入射面から入射した光のうち前記中央貫通孔側へと進行した光の一部を、光制御溝内に形成される空気層と導光部材との屈折率差によって当該空気層と導光部材との境界部で反射させて前記中央貫通孔から漏れるのを防止できる。
【0009】
したがって、発光凹部の内周面に導かれる光を増加させるとともに、前記中央貫通孔から漏れる光を抑制することができる。こうして、光の取り出し効率を高めることが可能となる。
【0010】
前記光入射面から入射した光が前記中央貫通孔に到達しにくくして、前記発光凹部へ到達しやすくするには、前記光入射面が、前記光制御溝の外側に配置されていればよい。
【0011】
前記光制御溝が前記発光凹部の内周面へと向かう光の進行を妨げないようにして、出力ロスが発生しないようにするには、前記光制御溝の底面が、前記発光部凹部よりも基端側に形成されていればよい。
【0012】
本発明に係る導光部材と、前記導光部材の光入射面に対向して配置される発光素子と、を備えた照明装置であれば、従来よりも出力ロスを抑え、より明るい照明を実現でき、例えばワークの外観検査の精度や効率をさらに高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明に係る導光部材であれば、前記光制御溝が前記中央貫通孔の一部又は全部を囲うように設けられているので、前記光入射面から入射した光が前記中央貫通孔側へ進行したとしても、前記光制御溝内に形成される空気層と導光部材との屈折率差によって当該空気層と導光部材との境界部で当該光を反射させて、発光凹部内周面に導くとともに、前記中央貫通孔の内周面から漏れるのを防止できる。したがって、前記発光凹部の内周面から射出されない光の量を低減して出力ロスを低下させることができる。このため、例えばワークに照射される光量を増加させ、外観検査の精度や効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る導光部材、及び、この導光部材を用いた照明装置を示す模式的斜視図。
図2】第1実施形態の照明装置の使用態様を示す模式的縦断面図。
図3】第1実施形態の照明装置の模式的分解斜視図。
図4】第1実施形態のケーシングの構造を示す模式図。
図5】第1実施形態の導光部材の構造を示す模式図。
図6】第1実施形態の照明装置と従来の照明装置の放射照度の違いを示すグラフ。
図7】本発明の第2実施形態に係る導光部材、及び、この導光部材を用いた照明装置を示す模式的斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態に係る導光部材100、及び、この導光部材100を備えた照明装置200について各図を参照しながら説明する。
【0016】
図1及び図2に示す照明装置200は、先端側から光を射出する角型環状のものである。この照明装置200は例えばマシンビジョンによる外観検査システムに用いられるものであって、先端側をワークWに対し近接させて光を照射し、ワークWで反射又は散乱された光が中央の空間を介してワークWとは反対側に配置されたカメラに入射するように構成される。
【0017】
図3(a)の先端側から見た分解斜視図と、図3(b)の基端側から見た分解斜視図に示すように、この照明装置200は、LED4が基端側の内部底面に設置された概略立方体形状のケーシング101と、当該ケーシング101内にほぼ嵌合するように収容され、LED4から射出された光を導く導光部材100と、を備えている。
【0018】
ケーシング101は図4(a)の縦断面図、及び、図4(b)の平面図に示すように、基端側中央に断面が概略正方形状の貫通孔THが形成されている。また、ケーシング101の先端側には導光部材100が収容される収容空間が形成してある。このケーシング101の基端側の内部底面には、貫通孔THの周囲に十字状に4つの発光素子であるLED4が設けてある。
【0019】
導光部材100は、図5(a)の縦断面図、及び、図5(b)の斜視図に示すように、概略角丸四角枠形状をなす導光部Aと、基端側において導光部Aの中央部から突出し、ケーシング101の貫通孔THに対して挿入される挿入筒Bと、を備えている。また、この導光部材100は、図5(b)に示すように挿入筒Bの周囲には4つの光制御溝5が形成されている。
【0020】
導光部材100は、基端側から入射した光を先端側へ導くものであって、導光部A及び挿入筒Bに形成され、導光部材100の基端から先端に向かって形成された中央貫通孔2と、基端側における中央貫通孔2の外側に設けられた光入射面3と、先端側に中央貫通孔2と連通して形成され、前記光入射面3から入射した光がその内周面11から射出される発光凹部1と、前述した光制御溝5と、を備えている。なお、導光部材100の、光入射面3と発光凹部1の内周面11とを除いた部分には白塗装が施されており、白塗装部分は、光が拡散反射して外部に漏れ難い構造となっている。
【0021】
中央貫通孔2は、図2に示すようにワークWで反射又は散乱された光をワークWとは反対側に通すために形成されている。図5(a)に示すように、中央貫通孔2の半径方向の寸法は、発光凹部1の半径方向の寸法よりも小さく形成されている。また、中央貫通孔2の内周面から光が射出されても、直下に配置されたワークWにほとんど到達せず、照明の明るさにはほとんど寄与しない。
【0022】
光入射面3は、図5(a)に示すように中央貫通孔2の軸方向中央部とほぼ同じ位置に設定された平面であり、中央貫通孔2の周囲4箇所に設けてある。図2に示すように、各光入射面3には、LED4が近接して設置される。なお、LED4は光入射面3だけに対向するのではなく、一部が光入射面3に隣接する光制御溝5側にもはみ出して配置されているが、LED4からの大部分の光は光入射面3に入射するようになっている。
【0023】
発光凹部1は、矩形状の空間であって、光入射面3に入射した光が内周面11に導かれて当該内周面11から射出される。
【0024】
光制御溝5は、図5(b)に示すように、各LED4に対応して各辺に形成された概略コの字状の溝要素を備えており、各溝要素によって中央貫通孔2の周囲をほぼ取り囲むようにしてある。また、溝要素は、中央貫通孔2の各辺と平行となるように形成された長尺部分と、この長尺部分の端部から導光部材100の外側に向けて垂直に延びる短尺部分とを備えている。すなわち、溝要素は光入射面3の周囲をほぼ取り囲むようにも形成されている。
【0025】
光制御溝5の深さは、図5(a)に示すように、発光凹部1の近傍まで到達するようにしつつ、光制御溝5が発光凹部1内へ貫通しないようにしてある。
【0026】
このように構成された導光部材100、及び、照明装置200であれば、LED4から射出され光入射面3に入射した光の一部が、中央貫通孔2側へ進行したとしても、光制御溝5内の空気層と導光部材100との屈折率差によって当該空気層と導光部材100との境界部で反射され、発光凹部1の内周面11に導かれる。また、溝要素によって光入射面3自体も囲われているので、溝要素の長尺部分と平行な方向に進行している光の一部も同様に反射して導光部材100の先端側へと導くことができる。
【0027】
したがって、従来の光制御溝5を有していない導光部材と比較して第1実施形態の導光部材100であれば、中央貫通孔2の内周面から漏れる等してワークWに照射される光とならず明るさに寄与しない光の量を低減できる。そして、従来は明るさに寄与していなかった光についても発光凹部1の内周面11に到達させ、ワークWに照射される光の量を増加させることができる。
【0028】
このため、従来よりも光の取り出し効率を向上させた外観検査等に好適な照明装置200とすることができる。
【0029】
最後に光制御溝5の有無による明るさ(放射照度)の違いについての実測結果について図6を参照しながら説明する。この実測では光制御溝5の有無以外の要素については条件を揃えている。
【0030】
図6のグラフに示すように照明装置200から離間距離が0mmから15mmといった近接した状態であり、発光凹部1の内周面11から射出されるローアングルからの光の影響が支配的な領域においては、従来よりも第1実施形態の照明装置200の方が放射照度は高くなることが確認できた。これは上述したように光制御溝5によってLED4から射出された光が発光凹部1の内周面11以外の明るさに寄与しない部分から射出されてしまうのを防ぎ、発光凹部1の内周面11から射出される光の量を増加させることができているからである。なお、図6は、ローアングル照射が特に有効なことを示すものであるが、当該照明装置200はローアングル照射以外にも適用することが可能である。
【0031】
次に第2実施形態の照明装置200、及び、導光部材100について図7を参照しながら説明する。なお、第1実施形態で説明した部材に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0032】
第2実施形態の照明装置200は、第1実施形態より寸法がほぼ2倍大きく形成されており、導光部材100内において中央貫通孔2の占める割合が相対的に大きくなっている。また、第2実施形態では、LED4は光入射面3に対して全て対向するようにしてあり、LED4の一部が光入射面3に隣接する光制御溝5側へはみ出さないようにしてある。
【0033】
このように構成された第2実施形態であっても第1実施形態と同様に光入射面3に入射した光が中央貫通孔2側へと進行して漏れるのを光制御溝5により抑制することができる。この結果、発光凹部1の内周面11から射出される光の量を従来よりも増加させて、より放射照度の高い外観検査等に適した照明を実現できる。
【0034】
その他の実施形態について説明する。
【0035】
本発明に係る導光部材、及び、照明装置の形状は立方体形状や直方体形状に限られるものではなく、例えばリング状の照明装置を構成するものであってもよい。また、発光凹部の形状について直方体形状の空間をなすものに限られず、例えば発光凹部の内周面がドーム状や半球状をなすものであっても構わない。
【0036】
光制御溝の深さ方向は、光入射面に対して垂直に設けていたが、例えば光入射溝の深さ方向が光入射面に対して斜めに交差するようにしてもよい。
【0037】
また、光制御溝は、中央貫通孔の周囲を切れ目なく完全に囲うように形成しても構わないし、例えば、一部が途切れていても構わない。また、前記実施形態において発光凹部の内周面の一部のみの光量を大きくしたい場合等には、導光部材の各辺のうちいくつかについてのみ光制御溝を形成しても構わない。
【0038】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の組み合わせや変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0039】
200・・・照明装置
100・・・導光部材
1 ・・・発光凹部
11 ・・・内周面
2 ・・・中央貫通孔
3 ・・・光入射面
4 ・・・LED
5 ・・・光制御溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7