(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】エレベータのブレーキウェッジ
(51)【国際特許分類】
B66B 5/16 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
B66B5/16 Z
(21)【出願番号】P 2018009274
(22)【出願日】2018-01-24
【審査請求日】2021-01-13
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】スコット アラン イーストマン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド ギラーニ
(72)【発明者】
【氏名】チェン キアン ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ランドール エス.デューベ
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-139460(JP,U)
【文献】特開2011-225303(JP,A)
【文献】特開2002-128431(JP,A)
【文献】特開2005-234088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/16- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
概して反対側にある第1の大表面と第2の大表面と、概して反対側にある第1の小表面と第2の小表面とを有する、細長い本体を備え、
前記第2の小表面が、前記第1の小表面よりも大である長さを有し、
前記第1の大表面
は、前記第1の小表面の第1の端部と前記第2の小表面の第1の端部との間に延びており、
前記第2の大表面は、前記第1の小表面の第2の端部と前記第2の小表面の第2の端部との間に延びており、
低摩擦フィルム固定溝が前記第2の大表面に形成されており、前記低摩擦フィルム固定溝は、前記第2の大表面の平面から前記細長い本体内に延びる
、エレベータのブレーキウェッジ。
【請求項2】
前記細長い本体が、金属材料または合金を含んでおり、
前記低摩擦フィルム固定溝が、低摩擦フィルムの取手を受領する、請求項1に記載のエレベータのブレーキウェッジ。
【請求項3】
前記第2の大表面の材料が、直接かつ実質的に接着しない状態で、低摩擦フィルムの材料と接触する、請求項1に記載のエレベータのブレーキウェッジ。
【請求項4】
前記低摩擦フィルム固定溝の各々が、細長い形状を有する、請求項1に記載のエレベータのブレーキウェッジ。
【請求項5】
前記低摩擦フィルム固定溝の各々の長手軸が、前記第2の大表面の前記平面に対して鋭角であり、前記低摩擦フィルム固定溝の各々の角が丸くなっている、請求項4に記載のエレベータのブレーキウェッジ。
【請求項6】
前記低摩擦フィルム固定溝の各々がV形状を有している、請求項1に記載のエレベータのブレーキウェッジ。
【請求項7】
前記低摩擦フィルム固定溝の各々
は、低摩擦フィルムに形成された舌部を受ける、請求項1に記載のエレベータのブレーキウェッジ。
【請求項8】
前記低摩擦フィルム固定溝の各々
は、低摩擦フィルムに形成された球状部を受ける、請求項1に記載のエレベータのブレーキウェッジ。
【請求項9】
レールの両側において、本体内で支持可能である、第1の滑動ガイドと第2の滑動ガイドと、
アクチュエータにより、前記レールの側部と、前記第1の滑動ガイドと前記第2の滑動ガイドとのそれぞれとの間の、前記本体内のそれぞれの非ブレーキ位置及びブレーキ位置
に移動可能となるように構成されている、第1のブレーキウェッジ及び第2のブレーキウェッジと、を備え、
前記第1のブレーキウェッジと前記第2のブレーキウェッジとの各々が、
前記レールとの係合のための第1の大表面と、
前記第1の大表面に対して概して反対側であり、溝
が形成された、第2の大表面と、
低摩擦フィルムであって、前記第1の滑動ガイド
および前記第2の滑動ガイド
のうち隣接する滑動ガイドとの係合のために、前記第2の大表面において前記低摩擦フィルムを支持するために前記溝内に受領可能である、取手を有する、前記低摩擦フィルムと、を備えている、エレベータのブレーキ。
【請求項10】
前記第1のブレーキウェッジと前記第2のブレーキウェッジとの各々が、第1の小表面と、前記第1の小表面に対して概して反対側であり、かつ、前記第1の小表面よりも大である長さを有する第2の小表面と、をさらに備え、
前記溝が、前記第2の大表面の平面から前記第1の大表面の平面に向かって延びる、請求項9に記載のエレベータのブレーキ。
【請求項11】
前記第1のブレーキウェッジと前記第2のブレーキウェッジとが、金属材料または合金を含み、
前記低摩擦フィルムが、低摩擦添加物を含む
、熱可塑性樹脂材料
、ポリマ
、熱可塑性樹脂、及び/若しくは、熱可塑性若しくはエポキシ材料の少なくとも1つを含んでいる、請求項9に記載のエレベータのブレーキ。
【請求項12】
前記第2の大表面の材料が、直接かつ実質的に接着しない状態で、前記低摩擦フィルムの材料と接触する、請求項9に記載のエレベータのブレーキ。
【請求項13】
前記溝の各々が細長い形状を有し、
前記溝の各々の長手軸が、前記第2の大表面の前記平面に対して鋭角であり、前記溝の各々の角が丸くなっている、請求項9に記載のエレベータのブレーキ。
【請求項14】
前記溝の各々がV形状を有している、請求項9に記載のエレベータのブレーキ。
【請求項15】
前記溝の各々
は、前記低摩擦フィルムに形成された舌部を受ける、請求項9に記載のエレベータのブレーキ。
【請求項16】
前記溝の各々
は、前記低摩擦フィルムに形成された球状部を受ける、請求項9に記載のエレベータのブレーキ。
【請求項17】
概して反対側にある第1の大表面と第2の大表面と、概して反対側にある第1の小表面と第2の小表面とを有する、細長い本体を形成することであって、それにより、
前記第2の小表面が前記第1の小表面よりも大である長さを有し、
前記第1の大表面
は、前記第1の小表面の第1の端部と前記第2の小表面の第1の端部との間に延びており、
前記第2の大表面は、前記第1の小表面の第2の端部と前記第2の小表面の第2の端部との間に延びており、かつ、
低摩擦フィルム固定溝が前記第2の大表面に形成されており、前記低摩擦フィルム固定溝は、前記第2の大表面の平面から前記細長い本体内に延びる
、エレベータのブレーキウェッジの形成方法。
【請求項18】
前記形成することが、鋳造と印刷との少なくとも1つによる、前記細長い本体の形成を含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記形成することが、機械加工による前記低摩擦フィルム固定溝の形成を含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の大表面において、前記低摩擦フィルム固定溝によって支持可能である、低摩擦フィルムの射出成型、圧縮成型、加熱溶融、及びネット成型の少なくとも1つをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の記載は、エレベータのブレーキに関し、より詳細には、低摩擦フィルム支持溝を有するエレベータのブレーキウェッジを備えたエレベータのブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
特定のエレベータのための安全アセンブリは、受動部と、この受動部内で移動する能動部とを有している。いくつかの場合では、能動部は、中心レール、及び、横方向に位置する滑動ガイドに対し、非ブレーキ位置とブレーキ位置との間で移動するウェッジとして提供され得る。適切に動作するために、ウェッジは、それ自体で係合し、係合解除可能である必要があり、また、状況により、安全アセンブリが係合し、次いで係合解除するように影響した際に、ウェッジのそれぞれの、レールとの係合及び係合解除を保証するために、滑動ガイド表面に沿っての移動を促進するように、低摩擦ガイド表面が必要である。
【0003】
しかし、経時的に、ウェッジのガイド表面は、機械的摩耗に起因する、信頼性の問題及び耐久性の問題を、特に、そのような状況を緩和するための優先的に低い摩擦の特徴が導入されていない場合に、有し得ることが見られてきている。産業における解決策は、ウェッジのガイド表面と、滑動ガイドとの間に線形ローラ・ベアリング・アセンブリを導入することであるが、ベアリングは概して、過度に厚く、複雑かつ高価である。別の代替案は、滑動ガイドに隣接するウェッジの、必要な低摩擦ガイド表面を提供するように、ウェッジに接着剤で接着された、薄い低摩擦要素(フィルム)を使用することである。しかし、そのようなフィルムの耐久性は、低摩擦ガイド表面の材料が、ウェッジに接着すること、または、安全アセンブリの使用中にフィルムの接着強度を維持することが、本来的に困難であることから、依然として問題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、エレベータのブレーキウェッジが、提供され、概して反対側にある第1の大表面と第2の大表面と、概して反対側にある第1の小表面と第2の小表面とを有する、細長い本体を含んでいる。第2の小表面は、第1の小表面よりも大である長さを有している。第1の大表面と第2の大表面との各々は、第1の小表面と第2の小表面とのそれぞれの、対応する第1の端部と第2の端部との間に延びている。第2の大表面は、第2の大表面の平面から細長い本体内に延びる低摩擦フィルム固定溝を規定している。
【0005】
追加的または代替的実施形態によれば、細長い本体が、金属材料または合金を含んでおり、低摩擦フィルム固定溝が、低摩擦フィルムの取手を受領する。
【0006】
追加的または代替的実施形態によれば、第2の大表面の材料が、直接かつ接着しない状態で、低摩擦フィルムの材料と接触する。
【0007】
追加的または代替的実施形態によれば、低摩擦フィルム固定溝の各々が、細長い形状を有している。
【0008】
追加的または代替的実施形態によれば、低摩擦フィルム固定溝の各々の長手軸が、第2の大表面の平面に対して鋭角であり、低摩擦フィルム固定溝の各々の角が丸くなっている。
【0009】
追加的または代替的実施形態によれば、低摩擦フィルム固定溝の各々がV形状を有している。
【0010】
追加的または代替的実施形態によれば、低摩擦フィルム固定溝の各々がtongue-in-flap形状を有している。
【0011】
追加的または代替的実施形態によれば、低摩擦フィルム固定溝の各々がball-in-shoulder形状を有している。
【0012】
本開示の別の態様によれば、エレベータのブレーキが、提供され、レールの両側において本体で支持可能な第1の滑動ガイドと第2の滑動ガイドと、第1のブレーキウェッジと第2のブレーキウェッジと、低摩擦フィルムとを含んでいる。第1のブレーキウェッジと第2のブレーキウェッジとは、ガイドレールの側部と、第1の滑動ガイドと第2の滑動ガイドとのそれぞれとの間の、本体内のそれぞれの非ブレーキ位置及びブレーキ位置を推定するように構成されている。第1のブレーキウェッジと第2ブレーキウェッジとの各々は、レールとの係合のための第1の大表面と、第1の大表面に対して概して反対側であり、溝を規定するように形成された、第2の大表面と、低摩擦フィルムとを含んでいる。低摩擦フィルムは、第1の滑動ガイドと第2の滑動ガイドとの対応するものとの係合のために、第2の大表面において低摩擦フィルムを支持するために溝内に受領可能である、取手を有している。
【0013】
追加的または代替的実施形態によれば、第1のブレーキウェッジと第2のブレーキウェッジの各々が、第1の小表面と、第1の小表面に対して概して反対側であり、かつ、第1の小表面よりも大である長さを有する第2の小表面と、をさらに含み、溝が、第2の大表面の平面から第1の大表面の平面に向かって延びている。
【0014】
追加的または代替的実施形態によれば、第1のブレーキウェッジと第2ブレーキウェッジとが、金属材料または合金を含み、低摩擦フィルムが、低摩擦添加物を含む、充填されているか充填されていない熱可塑性樹脂材料、充填されているか充填されていないポリマ、充填されているか充填されていない熱可塑性樹脂、及び/若しくは、熱可塑性若しくはエポキシ材料の少なくとも1つを含んでいる。
【0015】
追加的または代替的実施形態によれば、第2の大表面の材料が、直接かつ接着しない状態で、低摩擦フィルムの材料と接触する。
【0016】
追加的または代替的実施形態によれば、溝の各々が細長い形状を有し、溝の各々の長手軸が、第2の大表面の平面に対して鋭角であり、溝の各々の角が丸くなっている。
【0017】
追加的または代替的実施形態によれば、溝の各々がV形状を有している。
【0018】
追加的または代替的実施形態によれば、溝の各々がtongue-in-flap形状を有している。
【0019】
追加的または代替的実施形態によれば、溝の各々がball-in-shoulder形状を有している。
【0020】
本開示のさらに別の態様によれば、エレベータのブレーキウェッジの形成方法が提供される。本方法は、概して反対側にある第1の大表面と第2の大表面と、概して反対側にある第1の小表面と第2の小表面とを有する、細長い本体を形成することであって、それにより、第2の小表面が第1の小表面よりも大である長さを有し、第1の大表面と第2の大表面との各々が、第1の小表面と第2の小表面とのそれぞれの、対応する第1の端部と第2の端部との間に延びており、かつ、第2の大表面が、第2の大表面の平面から細長い本体内に延びる低摩擦フィルム固定溝を規定するようになっている、形成することを含んでいる。
【0021】
追加的または代替的実施形態によれば、形成することが、鋳造と印刷との少なくとも1つによる、細長い本体の形成を含んでいる。
【0022】
追加的または代替的実施形態によれば、形成することが、機械加工による低摩擦フィルム固定溝の形成を含んでいる。
【0023】
追加的または代替的実施形態によれば、本方法が、第2の大表面において、低摩擦フィルム固定溝によって支持可能である、低摩擦フィルムの射出成型、圧縮成型、加熱溶融、及びネット成型の少なくとも1つを含んでいる。
【0024】
本開示であると見なされる主題は、本明細書に添付の特許請求の範囲に特に指摘されるとともに、直接請求されている。本開示の先の、及び他の特徴、ならびに利点は、添付図面と合わせて、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】各実施形態に係る、ブレーキウェッジが非ブレーキ位置にあるエレベータのブレーキの斜視図である。
【
図2】各実施形態に係る、ブレーキウェッジがブレーキ位置にあるエレベータのブレーキの斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2のエレベータのブレーキのトップダウンの図である。
【
図4】各実施形態に係る、低摩擦フィルムを有するエレベータのブレーキウェッジの側部の概略図である。
【
図5】各実施形態に係る、
図4のエレベータのブレーキウェッジの大表面の概略図である。
【
図6】各実施形態に係る、
図4のエレベータのブレーキウェッジの側部の概略図である。
【
図7】さらなる実施形態に係る、低摩擦フィルムを有するエレベータのブレーキウェッジの側部の概略図である。
【
図8】さらなる実施形態に係る、低摩擦フィルムを有するエレベータのブレーキウェッジの側部の概略図である。
【
図9】さらなる実施形態に係る、低摩擦フィルムを有するエレベータのブレーキウェッジの側部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に記載するように、エレベータのブレーキとエレベータのブレーキウェッジとが提供され、低摩擦材料を定位置に維持するために、接着剤に頼っていない。代わりに、エレベータのブレーキとエレベータのブレーキウェッジとは、低摩擦表面を隔離するための、安全ギアの係合から生じた、固有の圧縮力を利用する。このことは、エレベータのブレーキの安全ウェッジの後方側に溝を形成すること、及び、必要に応じて交換することができる、パッドまたはフィルムを形成するように、溝内に低摩擦材料を圧縮または注入することにより、達成される。エレベータのブレーキの安全ウェッジが係合すると、圧縮力により、低摩擦フィルムが溝内に押圧され、こうして、安全な係合及び係合解除に必要であるように、エレベータのブレーキの安全ウェッジを定位置内に移動することを許容しつつ、低摩擦フィルムを動かないように維持する。
【0027】
図1から
図3を参照すると、エレベータのブレーキ10が提供されている。エレベータのブレーキは、ガイドレール11と、ブレーキ要素12とを含んでいる。ガイドレール11は、大梁110と、この大梁110の中心部分から垂直に延びる主梁111とを有している。ブレーキ要素12は、主梁111の、ガイドレール11とは反対側に対し、それ自体の係合及び係合解除が可能であるように構成されている。ブレーキ要素12はこのため、支持構造本体120、アクチュエータ121、第1の滑動ガイド122及び第2の滑動ガイド123、ならびに、第1の安全ブレーキウェッジ124及び第2の安全ブレーキウェッジ125を含んでいる。支持構造本体120は、トラックを規定するように形成され、このトラックに沿って、主梁111が移動することができる。
【0028】
図1から
図3に示すように、支持構造本体120は、ベース部1201と、このベース部1201の両側から延びる側壁1202とを含んでいる。ベース部1201は概して、このベース部1201の長手軸に沿ってテーパが付けられており、それにより、各側壁1202が互いに向かって対応してテーパが付されているようになっている。第1の滑動ガイド122と第2の滑動ガイド123とは、ガイドレール11の両側にそれぞれ、側壁1202に沿って支持するように配置されており、このため、第1の滑動ガイド122と第2の滑動ガイド123とは、側壁1202と同じ角度で互いに向かってテーパが付けられている。第1の滑動ガイド122及び第2の滑動ガイド123は、たとえば、金属材料または合金で形成され得る。第1の安全ブレーキウェッジ124及び第2の安全ブレーキウェッジ125は、アクチュエータ121によって部分的に制御可能であり、ガイドレール11の側部と、第1の滑動ガイド122と第2の滑動ガイド123とのそれぞれとの間の、支持構造本体120内のそれぞれの非ブレーキ位置及びブレーキ位置を推定するように構成されている。
【0029】
第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125との、それぞれの非ブレーキ位置は、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125とが、支持構造本体120の広い端部、またはその近位に配置されていることを特徴とし、一方、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125とのそれぞれのブレーキ位置は、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125とが、支持本体の狭い端部、またはその近位に配置されていることを特徴とする。それぞれのブレーキ位置では、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125との表面の向きと協同する、第1の滑動ガイド122と第2の滑動ガイド123との角度は、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125とに、ガイドレール11に対する内側の力を加える。第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125との表面の向きと協同する、第1の滑動ガイド122と第2の滑動ガイド123との角度は、以下でより詳細に論じる。そのような内側に向いた力により、エレベータのためのブレーキとしての役割を果たすために、第1の安全ブレーキウェッジ124及び第2の安全ブレーキウェッジ125と、ガイドレール11との間の十分な摩擦を生じることができる。
【0030】
作動時には、アクチュエータ121は、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125とを、それらのそれぞれの非ブレーキ位置から、それらのそれぞれのブレーキ位置に移動する。次いで、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125とが、それらがそのそれぞれのブレーキ位置に向かって移動するにつれて、ガイドレール11及び、第1の滑動ガイド122と第2の滑動ガイド123と係合し始め、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125とは、それ自体で、ガイドレール11及び、第1の滑動ガイド122と第2の滑動ガイド123と係合する。
【0031】
図4から
図6を参照すると、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125との各々は、細長い本体40を含んでいる。細長い本体40は、第1の大表面41、この第1の大表面41とは概して反対側の第2の大表面42、第1の小表面43、及び、この第1の小表面43とは概して反対側の第2の小表面44を有している。第2の小表面44は、第1の小表面43よりも大である長さを有しており、第1の大表面41と第2の大表面42との各々は、第1の小表面43と第2の小表面44とのそれぞれの、対応する第1の端部と第2の端部との間に延びている。それとして、第1の大表面41と第2の大表面42とは、第1の小表面43に向かって距離が減少するにつれて、互いに向かってテーパが付けられている。第1の大表面41は、実質的に平面になっているとともに、ガイドレール11の対応する側部とのスムーズな係合のために、平滑である。第2の大表面42は、低摩擦フィルム固定溝45を規定するように形成されている。低摩擦フィルム固定溝45は、第2の大表面42の平面P2から、細長い本体40内に、第1の大表面41の平面P1に向かって延びている。
【0032】
動作条件においては、第1の安全ブレーキウェッジ124と第2の安全ブレーキウェッジ125との各々は、低摩擦フィルム50をも含んでいる。低摩擦フィルム50は、フィルム部分51と、このフィルム部分51から突出する取手52とを含むように形成されている。取手52は、低摩擦フィルム固定溝45内に受領可能であり、それにより、低摩擦フィルム50が、第1の滑動ガイド122と第2の滑動ガイド123との対応するものとの係合のために、第2の大表面42において支持されるように配置されている。
【0033】
各実施形態によれば、細長い本体40は、金属材料または合金を含むか、金属材料または合金で形成されている。低摩擦フィルム50は、低摩擦添加物を含む、熱可塑性樹脂、ならびに、任意選択的には、充填されているか充填されていない熱可塑性樹脂材料、充填されているか充填されていないポリマ、充填されているか充填されていない熱可塑性樹脂、及び/若しくは、熱可塑性若しくはエポキシ材料のいずれか1つまたは複数の、少なくとも1つ含むか、少なくとも1つで形成されている。ポリマには、限定ではないが、ポリビニルエチレン、ポリビニリデンフルオライド、エチレン-テトラフルオロエチレン重合体、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素重合体が含まれ得る。充填剤には、限定ではないが、ガラス、カーボン、グラファイト、または他の同様の材料が含まれ得る。いずれの場合でも、低摩擦フィルム50の材料(複数の場合もある)は、本来的に、細長い本体40の材料(複数の場合もある)に接着することが困難であり得る。このため、低摩擦フィルム固定溝45は、低摩擦フィルム50を定位置に保持することができるように、取手52を受領するように設けられている。すなわち、さらなる実施形態によれば、第2の大表面42の材料(複数の場合もある)は、直接かつ実質的に接着しない状態で、低摩擦フィルム50と接触する材料(複数の場合もある)である。
【0034】
図4から
図6に示すように、低摩擦フィルム固定溝45の各々は、細長い本体40の深さ方向の厚み全体にわたる、細長い断面形状501を有し得る。そのような場合、低摩擦フィルム固定溝45の各々の長手軸は、第2の大表面42の平面P2に対して鋭角であり、低摩擦フィルム固定溝45の各々の角450は、低摩擦フィルム50の削りまたは潜在的なダメージを避けるように、丸くすることができる。さらなる代替実施形態によれば、
図7、
図8、及び
図9を参照すると、低摩擦フィルム固定溝45の各々は、断面におけるV形状502(
図7参照)、断面におけるtongue-in-flap形状503(
図8参照)、または断面におけるball-in-shoulder形状505(
図9参照)を有し得る。
【0035】
いずれの場合でも、低摩擦フィルム固定溝45の形状及び向きにより、取手52が、補足的な向きの補足的形状を想定する状態にされ、また、第1の安全ウェッジ124と第2の安全ウェッジ125とが、それらのそれぞれのブレーキ位置とされる際に、取手52に印加される圧縮力が増大することになる。この圧縮の増大により、次いで、低摩擦フィルム50が第2の大表面42において、それぞれのブレーキ位置が達成されるまで、かつ、通常は接着剤による取付けに伴う耐久性の問題を提起することなく、安全性及び信頼性を増しつつ、定位置に固定されることになる。
【0036】
さらなる態様によれば、エレベータに関する安全ブレーキウェッジを形成する方法が提供される。本方法は、概して反対側にある第1の大表面41と第2の大表面42とを有するように、かつ、概して反対側にある第1の小表面43と第2の小表面44とを有するように、上述の細長い本体40を形成することを含んでいる。この形成することは、第2の小表面44が、第1の小表面43よりも大である長さを有するように、第1の大表面41と第2の大表面42との各々が、第1の小表面43と第2の小表面44とのそれぞれの、対応する第1の端部と第2の端部との間に延びるように、かつ、第2の大表面42が、上述の低摩擦フィルム固定溝45を規定するように、行われる。各実施形態によれば、細長い本体40は、たとえば、鋳造プロセスと印刷プロセスとの少なくとも1つによって形成され得る。低摩擦フィルム固定溝45の形成は、細長い本体40全体の鋳造または印刷の一部として、または、細長い本体40がすでに形成されている場合は、機械加工により、実施することができる。上述の低摩擦フィルム50は、たとえば、第2の大表面42における低摩擦フィルム材料の射出成型、圧縮成型、加熱溶融、またはネット成型によって形成することができ、それにより、低摩擦フィルム材料が低摩擦フィルム固定溝45に充填されて、取手52を形成し、一方、残りの材料が、フィルム部分51として、取手52を互いに接続するようになっている。
【0037】
上述の構成及びプロセスにより、もしあるなら、低摩擦フィルム50が、係合の間、圧縮力の下にあり、かつ、機械的な相互ロックの特徴によって支持されることになることから、低摩擦フィルム50を第2の大表面42に固定するために、最小の接着剤が必要とされる。すなわち、第1の滑動ガイド122と第2の滑動ガイド123とによって印加される圧力により、低摩擦フィルム50を低摩擦フィルム固定溝45内に押しこみ、こうして、せん断に起因するスリップを最小にすることになる。
【0038】
本開示が、限定的数の実施形態のみと関連して詳細に与えられているが、本開示がそのような開示の実施形態に限定されないことは、容易に理解されるものとする。むしろ、本開示は、これまでに記載されていないが、本開示の精神及び範囲と同等である、任意の数の変形形態、変更形態、代替形態、または均等の構成を包含するように変更することができる。さらに、本開示の様々な実施形態を記載したが、例示的実施形態(複数の場合もある)は、記載の例示的態様のいくつかのみを含み得ることを理解されたい。したがって、本開示は、上述の記載によって限定されるものとは見られず、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。