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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20220622BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220622BHJP
   C04B 35/569 20060101ALI20220622BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20220622BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20220622BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20220622BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B01D53/94 222
B01J35/04 301E
B01J35/04 301J
B01J35/04 301A
B01J35/04 301F
C04B35/569 ZAB
B01D39/20 D
B01D46/00 302
F01N3/022 C
F01N3/035 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018032274
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019147080
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 真梨子
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-029941(JP,A)
【文献】特開2016-056714(JP,A)
【文献】特開2017-047371(JP,A)
【文献】国際公開第2008/120499(WO,A1)
【文献】特開2016-056049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73,53/86-53/90,53/94,53/96
B01J 21/00-38/74
C04B 35/56-35/599
B01D 39/00-41/04
B01D 46/00-46/90
F01N 3/01,3/02-3/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁と、排ガス入口側の端部が開口され且つ排ガス出口側の端部が目封止された排ガス導入セルと、排ガス出口側の端部が開口され且つ排ガス入口側の端部が目封止された排ガス排出セルを備えたハニカム焼成体が複数個、接着材層を介して結束されたセラミックブロックから構成されるハニカムフィルタであって、
前記セルの長手方向に垂直な断面において、前記複数のセルは交互に配置された大容量セルと断面積が前記大容量セルより小さい小容量セルとからなり、
前記セルの長手方向に垂直な断面において、外周壁と1面で隣接する大容量セル及び小容量セルの断面積が、それぞれ、前記外周壁と隣接していない大容量セル及び小容量セルの断面積の60~80%であり、
前記外周壁の厚さが一定であることを特徴とするハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素からなる請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記セル隔壁にSCR触媒が担持されている請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記セルの長手方向に垂直な断面において、前記外周壁と隣接するセルを除く前記大容量セルの断面形状は八角形であり、前記外周壁と隣接するセルを除く前記小容量セルの断面形状は正方形である請求項1~3のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記セルの長手方向に垂直な断面において、前記外周壁と隣接するセルを除く前記大容量セルの断面形状は正方形であり、前記外周壁と隣接するセルを除く前記小容量セルの断面形状は正方形である請求項1~3のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記セル隔壁の気孔率は40~65%である請求項1~5のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記セル隔壁の厚さは、150~400μmである請求項1~6のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中に含有されるスス等のパティキュレート(以下、PMという)やその他の有害成分が環境や人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。そこで、排ガス中のPMを捕集して排ガスを浄化するハニカムフィルタとして、多孔質セラミックからなるハニカムフィルタが種々提案されている。
【0003】
ハニカムフィルタとしては、1個のハニカム焼成体から構成されるハニカムフィルタ(以下、一体型ハニカムフィルタという場合がある)や、複数のハニカムフィルタが接着材層を介して結束された構造のハニカムフィルタ(以下、集合型ハニカムフィルタという場合がある)とが存在する。
【0004】
集合型ハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体として、接合後の最外周壁が均一な厚さとなるよう、最外周のセル配置を調整したハニカムセグメントが開示されている(特許文献1)。
また、セグメントの外周部の強度を向上させるために、側面から第1列目~第3列目に存在するセルの開口率を調整したハニカムセグメントが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2008/126335号
【文献】特開2014-188400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたようなハニカムセグメントにSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒を担持すると、担持させた触媒量に対して充分なNOx浄化性能が発揮されていないことがあった。
特許文献1においては、集合型ハニカムフィルタの最外周となるセルに着目しており、ハニカムセグメントの外周に存在するセルのうち接着剤層に隣接する小容量セルの形状は、ハニカムセグメントの外周以外に存在する小容量セルの形状と同じである。
特許文献2は、外周付近のセル隔壁のジグザグの振れ幅を小さくしたものであって、セルの形状の違いに着目したものではない。
【0007】
特許文献1、2に記載されたハニカムセグメントに触媒を担持させると、ハニカムセグメントの最外周に存在するセル(以下、最外周セルともいう)に、想定量以上の触媒が付着してしまう。ハニカムセグメントの最外周セルに想定量以上の触媒が付着すると、最外周セル以外のセルに担持される触媒量が低下し、さらに触媒が過剰に存在する最外周セルではセルの容積が小さくなるため、NOx浄化性能が低下していると考えられる。
【0008】
発明者が上記問題について鋭意検討した結果、特許文献1、2に記載されたハニカムセグメントでは、触媒担持中に最外周セルを通過するガスの速度が最外周セル以外のセルを通過するガスの速度よりも遅いことに起因して、SCR触媒が、通過するガスの速度が遅い部分(最外周セル)に集中して担持されてしまうことが原因であることが推察された。
図5(a)は、SCR触媒が担持された従来のハニカム焼成体の中央付近のセルのSEM写真であり、図5(b)は、同ハニカム焼成体の最外周セルのSEM写真である。図5(a)及び図5(b)から、ハニカム焼成体の最外周セルに過剰量の触媒が担持されている様子が確認できる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、触媒を担持させた場合に、ハニカム焼成体における触媒の担持量の均一性を向上させてNOx浄化性能を向上させることができるハニカムフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明のハニカムフィルタは、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁と、排ガス入口側の端部が開口され且つ排ガス出口側の端部が目封止された排ガス導入セルと、排ガス出口側の端部が開口され且つ排ガス入口側の端部が目封止された排ガス排出セルを備えたハニカム焼成体が複数個、接着材層を介して結束されたセラミックブロックから構成されるハニカムフィルタであって、上記セルの長手方向に垂直な断面において、上記複数のセルは交互に配置された大容量セルと断面積が上記大容量セルより小さい小容量セルとからなり、上記セルの長手方向に垂直な断面において、上記外周壁と1面で隣接する大容量セル及び小容量セルの断面積が、それぞれ、上記外周壁と隣接していない大容量セル及び小容量セルの断面積の60~80%であることを特徴とする。
【0011】
ハニカムフィルタに触媒を付与する方法としては、触媒を含む分散媒とハニカムフィルタを接触させた後、ハニカムフィルタの端面から過剰の分散媒を吸引することで分散媒を除去する方法等が用いられる。
特許文献1、2に記載されたハニカムセグメントを含むハニカムフィルタに上記方法によって触媒を担持させる場合、吸引時にハニカムセグメントの最外周セルを通過するガスの速度が最外周セル以外を通過するガスの速度よりも遅いために、ハニカムセグメントの中心部分より外周部分に分散媒が残存しやすくなる。そのため、最外周セルを構成するセル隔壁に触媒が多く担持されてしまう。
一方、本発明のハニカムフィルタでは、ハニカム焼成体の、セルの長手方向に垂直な断面において、上記外周壁と1面で隣接する大容量セル及び小容量セルの断面積が、それぞれ、上記外周壁と隣接していない大容量セル及び小容量セルの断面積の60~80%であるため、外周壁と1面で隣接するセルと外周壁と隣接していないセルとで、セル内を通過するガスの速度が略同じである。
そのため、最外周セルを構成するセル隔壁に触媒が集中して担持されることがなく、高いNOx浄化性能を発揮することができる。
【0012】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素からなることが好ましい。
炭化ケイ素からなるハニカム焼成体は、耐熱性、機械強度、熱伝導特性等に優れる。
【0013】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記セル隔壁にSCR触媒が担持されていることが好ましい。
SCR触媒はNOx浄化触媒として作用するため、セル隔壁にSCR触媒が担持されていると高いNOx浄化性能を発揮することができる。
【0014】
本発明のハニカムフィルタにおいては、上記セルの長手方向に垂直な断面において、上記外周壁と隣接するセルを除く上記大容量セルの断面形状は八角形であり、上記外周壁と隣接するセルを除く上記小容量セルの断面形状は正方形であることが好ましい。
外周壁と隣接するセルを除く大容量セル及び小容量セルの断面形状がそれぞれ八角形及び四角形であると、フィルタとして使用した際の圧力損失を低減することができる。
【0015】
本発明のハニカムフィルタにおいては、上記セルの長手方向に垂直な断面において、上記外周壁と隣接するセルを除く上記大容量セルの断面形状は正方形であり、上記外周壁と隣接するセルを除く上記小容量セルの断面形状は正方形であることが好ましい。
上記外周壁と隣接するセルを除く大容量セル及び小容量セルの断面形状がいずれも正方形であると、フィルタとして使用した際の圧力損失を低減することができる。
【0016】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記セル隔壁の気孔率は40~65%であることが好ましい。
ハニカム焼成体を構成するセル隔壁の気孔率を上記範囲とすることにより、ハニカム焼成体の強度を維持することができる。
【0017】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記セル隔壁の厚さは、150~400μmであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明のハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)は、本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)におけるA-A線断面図である。
図3図3は、図2(a)におけるB-B線断面図の一部である。
図4図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、実施例1~2及び比較例1~3に係るハニカム焼成体のガス流速のシミュレーション結果を示す図である。
図5図5(a)は、SCR触媒が担持された従来のハニカム焼成体の中央付近のセルのSEM写真であり、図5(b)は、同ハニカム焼成体の外周セル付近のSEM写真である。
【0019】
(発明の詳細な説明)
[ハニカムフィルタ]
まず、本発明のハニカムフィルタについて説明する。
【0020】
図1は、本発明のハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すハニカムフィルタ1は、複数のハニカム焼成体10が接着材層16を介して接着されることにより形成されている。
複数のハニカム焼成体10が接着材層16を介して接着されてなるセラミックブロック17の外周には、外周コート層18が形成されており、その外形は円柱状である。
【0021】
ハニカムフィルタ1を構成するハニカム焼成体10の数は特に限定されない。
【0022】
ハニカムフィルタ1を構成するハニカム焼成体10同士は、接着材層16を介して接合されている。
接着材層16の平均厚さは特に限定されないが、0.5~1.5mmであることが好ましい。
接着材層16の平均厚さが0.5~1.5mmであると、接着材層16の厚さが適切な厚さとなり、ハニカム焼成体10からの剥離が発生しにくくなるとともに、ハニカム焼成体10にクラック等が発生しにくくなる。
接着剤層16の平均厚さが0.5mm未満であると、接着剤層16の厚さが薄すぎるため、ハニカム焼成体10同士を接着させる力が弱くなり、接着剤層16の部分からクラックが発生しやすくなる。一方、接着剤層16の平均厚さが1.5mmを超えると、接着剤層16の断面積の割合が大きくなりすぎて、圧力損失が増大する。
【0023】
外周コート層18の平均厚さは、0.2~2.5mmであることが好ましい。
外周コート層18の平均厚さが0.2~2.5mmであると、外周コート層18の厚さは、ハニカムフィルタ1の特性に大きな影響を与えない。
【0024】
ハニカムフィルタの形状としては、円柱状に限定されず、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0025】
[ハニカム焼成体]
続いて、本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体について説明する。
【0026】
図2(a)は、本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)におけるA-A線断面図である。
図2(a)及び図2(b)に示すハニカム焼成体10は、一方の端部が封止材11により封止されており排ガスの流路となる複数のセル(12、13)と、セルを区画成形する多孔質のセル隔壁20を備えている。セルは、交互に配置された大容量セル12(12a、12b)と小容量セル13(13a、13b)とからなる。さらに、大容量セル12は、外周壁15と隣接していない大容量セル12aと外周壁15と1面で隣接している大容量セル12bとを有している。小容量セル13は、外周壁15と隣接していない小容量セル13aと外周壁15と1面で隣接している小容量セル13bとを有している。また、セルの長手方向(図2(a)中、両矢印aで示す方向)に垂直な断面において、小容量セル13a、13bの断面積はそれぞれ大容量セル12a、12bの断面積よりも小さい。
なお、外周壁15と1面で隣接するセルに、外周壁と2面で隣接するセルは含まない。
大容量セル12は、排ガス入口側の端部10aが開口され且つ排ガス出口側の端部10bが封止材11により目封止された排ガス導入セルでもあり、小容量セル13は、排ガス出口側の端部10bが開口され且つ排ガス入口側の端部10aが封止材11により目封止された排ガス排出セルでもある。
セルの長手方向に垂直な断面に関し、大容量セル12aは八角形であり、小容量セル13aは正方形である。また大容量セル12b及び小容量セル13bは、それぞれ、大容量セル12a及び小容量セル13aの一部を切り取った形状である。
【0027】
図3は、図2(a)におけるB-B線断面図の一部である。
図3に示すように、ハニカム焼成体10の外周壁15と1面で隣接する大容量セル12b及び小容量セル13bの断面積(図3中、破線で囲って塗りつぶした領域の面積S12b及びS13b)は、それぞれ、外周壁15と隣接していない大容量セル12a及び小容量セル13aの断面積(図3中、破線で囲って塗りつぶした領域の面積S12a及びS13a)よりも小さくなっており、その割合は60~80%である。すなわち、0.6S12a≦S12b≦0.8S12a、及び、0.6S13a≦S13b≦0.8S13aがいずれも成立する。
より具体的には、図3における大容量セル12b及び小容量セル13bの断面形状は、外周壁と隣接する大容量セル及び小容量セルと、外周壁と隣接しない大容量セル及び小容量セルとが形状が同じであるハニカム焼成体から、外周壁と隣接していないセルの形状を変更せずに外形寸法を小さくしたことによって得られるセルの形状に相当する。図3には、外周壁15と1面で隣接する大容量セル12b及び小容量セル13bが、外周壁15と隣接しない大容量セル12a及び小容量セル13aと同じ形状であったと仮定した際のセルの断面形状及び外周壁を2点鎖線で示している。
大容量セル12bの断面形状は、x方向及びy方向のうち一方の長さが大容量セル12aと同じであるが、他方の長さは大容量セル12aよりも短くなっている。小容量セル13bについても大容量セル12bと同様で、x方向及びy方向のうち一方の長さは小容量セル13aと同じであるが、他方の長さは小容量セル13aよりも短くなっている。
そのため、外周壁15と1面で隣接する大容量セル12b及び小容量セル13bの断面積は、外周壁15と隣接しない大容量セル12a及び小容量セル13aの断面積のそれぞれ60~80%である。
【0028】
なお、本発明のハニカムフィルタにおいて、ハニカム焼成体の外周壁に隣接するセルの形状は、図3に示したような、外周壁15に隣接しないセル形状の一部を切り取った形状でなくてもよい。すなわち、外周壁に1面で隣接する大容量セル及び小容量セルの断面積が、それぞれ外周壁に隣接しない大容量セル及び小容量セルの断面積の60~80%となるような形状であれば、外周壁に1面で隣接する大容量セル及び小容量セルの断面形状は、外周壁と隣接していない大容量セル及び小容量セルの一部を切り取った形状であってもよく、それ以外の形状であってもよい。
【0029】
大容量セルは排ガス導入セルであってもよく、排ガス排出セルであってもよい。
小容量セルについても大容量セルと同様で、排ガス導入セルであってもよく、排ガス排出セルであってもよい。
【0030】
大容量セルの断面積に対する小容量セルの断面積の割合は特に限定されないが、35~70%であることが好ましい。なお、上記セルの断面積は外周壁に隣接していない大容量セルの断面積の平均値及び小容量セルの平均値から算出する。
【0031】
ハニカム焼成体を構成するセルの断面形状は特に限定されないが、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形、及び、円形等が挙げられる。また、これらの形状の一部を切り取った形状であってもよい。
ただし、外周壁に隣接していない大容量セル同士の断面形状は略同一であり、外周壁に隣接していない小容量セル同士の断面形状は略同一である。
これらの中では、外周壁と隣接するセルを除く大容量セルの断面形状が八角形であり外周壁と隣接するセルを除く小容量セルの断面形状が正方形であるか、又は、外周壁と隣接するセルを除く大容量セル及び小容量セルの断面形状がいずれも正方形である場合が好ましい。
【0032】
ハニカム焼成体を構成するセルの断面形状及び断面積は、外周壁が含まれるように適当な大きさに切断したハニカム焼成体の断面を電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0033】
ハニカム焼成体を構成するセル隔壁の気孔率は、40~65%であることが好ましい。
ハニカム焼成体を構成するセル隔壁の気孔率を上記範囲とすることにより、ハニカム焼成体の強度を維持しつつ、高い排ガス浄化性能を発揮することができる。
【0034】
セル隔壁の気孔率は、水銀圧入法にて測定することができる。
なお、水銀圧入法による測定の際の条件としては、接触角を130°、表面張力を485mN/mとする。
【0035】
ハニカム焼成体を構成するセル隔壁の厚さは、150~400μmであることが好ましい。
ハニカム焼成体を構成するセル隔壁の厚さが150μm未満であると、セル隔壁の厚さが薄く、ハニカム焼成体の強度を保つことができなくなる。一方、セル隔壁の厚さが400μmを超えると、ハニカムフィルタの圧力損失の上昇を引き起こしやすくなる。
【0036】
ハニカム焼成体を構成するセル隔壁の平均気孔径は、10~30μmであることが望ましい。
ハニカム焼成体の平均気孔径が10μm未満であると、ハニカムフィルタの圧力損失が高くなる。一方、ハニカム焼成体の平均気孔径が30μmを超えると、ハニカムフィルタのPMの捕集効率が低くなる。
【0037】
ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面におけるセル密度は特に限定されないが、好ましい下限は、31.0個/cm(200個/in)、好ましい上限は、93.0個/cm(600個/in)、より好ましい下限は、38.8個/cm(250個/in)、より好ましい上限は、77.5個/cm(500個/in)である。
【0038】
ハニカム焼成体を構成する材料は特に限定されず、例えば、コージェライト、アルミナ、シリカ、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン等の炭化物セラミック、及び、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物セラミック、炭化ケイ素とケイ素の複合体等を挙げることができるが、これらのなかでは、耐熱性が大きく、機械的特性に優れ、かつ、熱伝導特性に優れる炭化ケイ素が好ましい。
【0039】
ハニカム焼成体を構成するセル隔壁には、SCR触媒が担持されていることが好ましい。
SCR触媒はNOx浄化触媒として作用するため、セル隔壁にSCR触媒が担持されていると高いNOx浄化性能を発揮することができる。
【0040】
SCR触媒としては、例えば、ゼオライトが挙げられる。
ゼオライトとしては、CHA、BEA、AEI、AFX、ERI構造が挙げられる。このうち、熱耐久性、NOx浄化性能の観点から、CHA構造が好ましい。また、ゼオライトは金属イオンで交換されている。金属イオンとしては、Cu、Fe、Ce、Mn、Ag等が挙げられる。このうち、NOx浄化性能の観点からCuイオンでイオン交換されていることが好ましい。
SCR触媒の担持量としては、50~200g/Lであることが好ましく、70~180g/Lであることがより好ましい。
本明細書において、SCR触媒の担持量とは、ハニカムフィルタの見かけの体積あたりのSCR触媒の重量をいう。ハニカムフィルタの見かけの体積は、セルの体積を含む体積である。
【0041】
[ハニカムフィルタを製造する方法]
続いて、本発明のハニカムフィルタを製造する方法について説明する。
なお、以下においては、ハニカム焼成体の材料であるセラミック粉末として、炭化ケイ素を用いる場合について説明するが、ハニカム焼成体の材料は、炭化ケイ素に限定されるものではない。
【0042】
本発明のハニカムフィルタは、例えば、炭化ケイ素が含まれている原料組成物を押出成形することによりハニカム成形体を得る成形工程と、上記ハニカム成形体を脱脂してハニカム脱脂体を得る脱脂工程と、上記ハニカム脱脂体を焼成してハニカム焼成体を得る焼成工程と、上記ハニカム焼成体を接着材層を介して接合してセラミックブロックを得る接合工程と、上記セラミックブロックの外周に外周コート層を形成する外周コート層形成工程と、により作製することができる。
【0043】
(1)成形工程
セラミック粉末として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末と、有機バインダと、可塑剤と、潤滑剤と、水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0044】
上記炭化ケイ素粉末の粒子径としては特に限定されないが、例えば、3.0~50μm程度の平均粒子径を有する炭化ケイ素粉末100重量部と、0.1~1.0μm程度の平均粒子径を有する炭化ケイ素粉末5~65重量部とを組み合わせたものが好ましい。上記粒子径の炭化ケイ素粉末を上記配合で混合することにより、高強度の多孔体を得ることができるからである。
【0045】
上記有機バインダは特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機バインダの中では、メチルセルロースが好ましい。
【0046】
上記湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらの中では、アルミナバルーンが好ましい。
【0047】
上記湿潤混合物を押出成形機に投入し、押出成形することにより所定の形状のハニカム成形体を作製する。
成形工程で得られるハニカム成形体の形状は、排ガスの流路となる複数のセルを区画成形する多孔質のセル隔壁と、セル隔壁により区画され長手方向に並設されたセルとを有し、さらに、図3に示したように、大容量セルと小容量セルとが交互に配置され、外周壁に1面で隣接する大容量セル及び小容量セルの断面積が、外周壁に隣接していない大容量セル及び小容量セルの断面積の60~80%とする。
このハニカム成形体を乾燥機により乾燥させ、ハニカム成形体の乾燥体(ハニカム乾燥体ともいう)とする。
【0048】
次いで、ハニカム成形体の乾燥体を構成するセルのいずれかの端部に、封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封止する。セルを目封止する際には、例えば、ハニカム成形体の端面(すなわち両端を切断した後の切断面)にセル封止用のマスクを当てて、封止の必要なセルにのみ封止材ペーストを充填し、封止材ペーストを乾燥させる。このような工程を経て、セルの一端部が目封止されたハニカム乾燥体を作製する。
封止材ペーストとしては、上記湿潤混合物を用いることができる。
【0049】
(2)脱脂工程
脱脂工程は、酸素含有雰囲気中、300~650℃に加熱することにより、有機物を酸化分解させて完全に除去する。
【0050】
(3)焼成工程
上記脱脂工程の後、焼成工程では、脱脂されたハニカム成形体(ハニカム脱脂体ともいう)を、完全不活性ガス雰囲気中において焼成する。焼成工程は、通常、1400~2200℃で行われる。
完全不活性ガス雰囲気とは、全く酸素や水素等を含まない不活性ガス雰囲気をいい、例えば、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気等が挙げられる。
【0051】
(4)接合工程
焼成工程により得られたハニカム焼成体の側面に、接着材ペーストを塗布して接着材ペースト層を形成し、この接着材ペースト層を介して順次他のハニカム焼成体を積層する。この手順を繰り返して所定数のハニカム焼成体が接着材ペーストにより接着されたハニカム焼成体の集合体(セラミックブロックともいう)を作製する。なお、接着材ペーストとしては、例えば、無機バインダーと有機バインダーと無機繊維及び/又は無機粒子とからなるものを使用することができる。
得られたセラミックブロックは、ダイヤモンドカッター等を用いて切削加工して所定の形状に切断してもよい。
【0052】
上記接着材ペーストに含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物粒子、窒化物粒子等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子の中では、熱伝導性に優れる炭化ケイ素粒子が好ましい。
【0053】
上記接着材ペーストに含まれる無機繊維としては、例えば、シリカ-アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等からなる無機繊維が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維の中では、アルミナファイバが好ましい。また、無機繊維は、生体溶解性ファイバであってもよい。
【0054】
さらに、上記接着材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。
【0055】
[外周コート層形成工程]
セラミックブロックの外周に、外周コート層用ペーストを塗布し、乾燥、固化することによって外周コート層を形成する。
上記のような手順により、本発明のハニカムフィルタを製造することができる。
なお、上記外周コート層用ペーストを構成する材料としては、上記接着材ペーストと同様の材料を用いることができる。上記外周コート層用ペーストは、接着材ペーストと異なる材料を用いてもよい。
【0056】
なお、本発明のハニカムフィルタは、セル隔壁にSCR触媒が担持されていることが好ましい。
セル隔壁にSCR触媒を担持させる場合、例えば、以下に示すSCR触媒担持工程を行えばよい。
【0057】
[SCR触媒担持工程]
SCR触媒担持工程では、例えば、SCR触媒を含む分散液にハニカムフィルタを浸漬させ、引き上げた後に過剰の分散液を吸引により除去した後に乾燥させる方法が挙げられる。
【0058】
ハニカム焼成体を構成するセル内に吸引によりガスを流通させる速度は特に限定されないが、ハニカムフィルタに流入するガスの流速が、1~10m/sであることが好ましい。
また、外周壁と隣接していないセルにおけるガス流速を1とした場合に、外周壁と1面で隣接するセルにおけるガス流速の比(ガス流速比)は、0.9~1.2であることが好ましい。
【0059】
(実施例)
以下、本発明のハニカムフィルタの構成による効果を確認するための実施例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
本発明のハニカムフィルタにガスを流入させた際のガス流速を、以下の方法によりシミュレーションして解析した。
シミュレーションは、ソフトウエア“ANSYS Fluent”(アンシス株式会社製の汎用熱流体解析ソフトウエア)を用いて行った。
【0061】
(参照例)
参照例として、気孔率が60.5%、気孔のメディアン径D50が20μm、セル隔壁の厚さが330μm(13mil)、セル密度が350cpsi(個/in)とし、長手方向の長さが150mm、長手方向に垂直な方向における断面寸法が34.3mm×34.3mmの正方形であり、長手方向に延びる大容量セルの断面形状を一辺1.15mmの正方形(断面積1.3214mm)、小容量セルの断面形状を一辺0.91mmの正方形(断面積:0.82685mm)としたハニカム焼成体のデータを準備した。
このデータにおける、外周壁と隣接していない大容量セルに対する、外周壁と1面で隣接する大容量セルの断面積の割合は91.8%であり、外周壁と隣接していない小容量セルに対する、外周壁と1面で隣接する小容量セルの断面積の割合は100%であった。
【0062】
(実施例1)
参照例から、外周壁の厚さ、セル隔壁の厚さ及びセル配置を変えずに、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向における断面寸法を33.77mmに変更して1辺当たりの長さを0.53mm削ることで、外周壁に1面で隣接する大容量セルの断面積を参照例の68.7%に、外周壁に1面で隣接する小容量セルの断面積を参照例の73.6%にそれぞれ変更したハニカム焼成体のデータを準備した。このハニカム焼成体に対して、ガス流速1m/s、5m/s、10m/sでガスを送り込んだ際の、ガス流速をシミュレーションした結果を、図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示す。
図4(a)、図4(b)及び図4(c)において、横軸は、外周壁と隣接していない小容量セルの断面積に対する、外周壁と1面で隣接する小容量セルの断面積の割合(図中、小容量セルの面積[%]と記載している)であり、縦軸は、ハニカム焼成体に対して送り込むガスの流速に対する、各セルのガス流速の比(流速比)である。さらに、外周壁に隣接していない小容量セルのガス流速比の平均値(図中では、中央セルのガス流速比と記載している)を破線で記載した。また、45°方向のガス流速とは、ハニカム焼成体の外周壁に1面で隣接するセル列のうちで、セル列が隣接している外周壁と直交する他の外周壁に最も近い小容量セルにおけるガス流速を意味し、90°方向のガス流速とは、ハニカム焼成体の外周壁に1面で隣接するセル列の中央に位置する小容量セルにおけるガス流速を意味する。
【0063】
(実施例2)
参照例から、実施例1と同様の方法で、外周壁の厚さを変えずに長手方向に垂直な方向におけるハニカム焼成体の断面寸法を33.57mmに変更することで、外周壁に1面で隣接する大容量セルの断面積を参照例の60%に、外周壁に1面で隣接する小容量セルの断面積を参照例の63%にそれぞれ変更したほかは、実施例1と同様の手順でガス流速をシミュレーションした。結果を図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示す。
【0064】
(比較例1)
参照例から、外周壁に隣接する大容量セル及び小容量セルの断面形状を変更しないままで、実施例1と同様の手順でガス流速をシミュレーションした。結果を図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示す。
【0065】
(比較例2)
参照例から、実施例1と同様の方法で、外周壁の厚さを変えずに長手方向に垂直な方向におけるハニカム焼成体の断面寸法を34.03mmに変更することで、外周壁に1面で隣接する大容量セルの断面積を参照例の80%に、外周壁に1面で隣接する小容量セルの断面積を参照例の88%にそれぞれ変更したほかは、実施例1と同様の手順でガス流速をシミュレーションした。結果を図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示す。
【0066】
(比較例3)
参照例から、実施例1と同様の方法で、外周壁の厚さを変えずに長手方向に垂直な方向における断面寸法を33.34mmに変更することで、外周壁に1面で隣接する大容量セルの断面積を参照例の50%に、外周壁に1面で隣接する小容量セルの断面積を参照例の50%にそれぞれ変更したほかは、実施例1と同様の手順でガス流速をシミュレーションした。結果を図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示す。
【0067】
図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示すように、いずれのガス流速においても、外周壁と1面で隣接する小容量セルの断面積が、外周壁と隣接していない小容量セルの断面積の60~80%である場合には、外周壁と1面で隣接している小容量セルと外周壁と隣接していない小容量セルとで、ガス流速が略同じであることがわかる。
一方、外周壁と隣接していない小容量セルの断面積に対する外周壁と1面で隣接している小容量セルの断面積の割合が60%未満となる比較例3の場合、並びに、80%を超える比較例1~2では、外周壁と1面で隣接している小容量セルにおける45°方向のガス流速、90°方向のガス流速ともに、外周壁と隣接しない小容量セルの流速との差が大きくなっているため、SCR触媒を担持させた際に、外周壁と1面で隣接する小容量セル付近に過剰のSCR触媒が担持されてしまうと考えられる。
上記の結果より、本発明のハニカムフィルタは、SCR触媒の担持バラツキを抑えられるため、高いNOx浄化効率を発揮することができると考えられる。
【符号の説明】
【0068】
1 ハニカムフィルタ
10 ハニカム焼成体
10a 排ガス入口側の端部
10b 排ガス出口側の端部
11 封止材
12、12a、12b 大容量セル(排ガス導入セル)
13、13a、13b 小容量セル(排ガス排出セル)
15 ハニカム焼成体の外周壁
16 接着剤層
17 セラミックブロック
18 外周コート層
20 セル隔壁
12a 大容量セル12aの断面積
12b 大容量セル12bの断面積
13a 小容量セル13aの断面積
13b 小容量セル13bの断面積
図1
図2
図3
図4
図5