(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】回転電機および軸受構造体
(51)【国際特許分類】
H02K 5/15 20060101AFI20220622BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
H02K5/15
H02K5/20
(21)【出願番号】P 2018082152
(22)【出願日】2018-04-23
【審査請求日】2020-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 将来
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-56510(JP,U)
【文献】実開平5-57530(JP,U)
【文献】実開昭57-130555(JP,U)
【文献】特開2008-29099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/15
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取りつけられた回転子鉄心と、を有する回転子と、
前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線と、を有する固定子と、
静止支持されて、前記回転子鉄心を挟んで軸方向の両側で前記ロータシャフトを回転可能に支持する2つの軸受構造体と、
前記固定子の径方向外側に配されたフレームと、
前記フレームの両端に取り付けられて前記2つの軸受構造体のそれぞれを支持する2つの軸受ブラケットと、
を備える回転電機であって、
前記2つの軸受構造体の少なくとも一方は、
前記ロータシャフトを直接支持する軸受本体と、
前記軸受本体からみて軸方向の回転子鉄心側またはその反対側に設けられた油切りと、
前記油切りからみて軸方向に前記軸受本体側と反対側から前記油切りを加圧する加圧部と、
前記軸受ブラケットに支持された軸受キャップと、
を具備し、
前記加圧部は、
前記ロータシャフトに取り付けられた羽根ベースと、
前記油切りに支持された羽根カバーと、
前記羽根カバーを介さずに前記羽根ベースに周方向に互いに間隔をあけて取り付けられ、前記羽根カバーに覆われた複数の羽根と
、
を有し、
前記油切りは、
前記ロータシャフトの径方向外側に位置し、前記軸受本体と軸方向に並び、前記軸受本体側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有する第1の円筒部と、
前記第1の円筒部の前記一端部から径方向外側に延びて前記軸受キャップに支持された第1の円環部と、
前記第1の円筒部の前記他端部から径方向外側に延びた第1の接続用円環部と、
を有し、
前記羽根ベースは、
前記油切りに対して前記軸受本体とは反対側で前記ロータシャフトの径方向外側に位置して前記ロータシャフトに接触し、前記ロータシャフトと結合し、前記油切り側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有し、前記複数の羽根が取り付けられた第2の円筒部と、
前記第2の円筒部の前記一端部から径方向外側に延びた第2の円環部と、
を有し、
前記羽根カバーは、
前記油切りに対して前記軸受本体とは反対側で前記複数の羽根の径方向外側に位置し、前記油切り側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有した第3の円筒部と、
前記第3の円筒部の前記一端部から径方向外側に延び、前記第1の接続用円環部に支持された第2の接続用円環部と、
前記第3の円筒部の前記他端部から径方向内側に延びたカバー用円環部と、
を有し、
前記複数の羽根は、前記第2の円環部と前記カバー用円環部との間に位置し、
前記第1の接続用円環部と前記第2の円環部との間に、間隙が形成され、
前記第2の円環部と前記第3の円筒部との間に、前記間隙と通じた連通部が形成され、
前記第2の円筒部の前記他端部と前記カバー用円環部との間に、前記連通部と通じた入口開口が形成されたことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記羽根カバーは、前記羽根の径方向外側に、圧力室を形成することを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記羽根ベースおよび前記羽根カバーのそれぞれは、周方向に複数の要素に分割可能であり、かつ、前記複数の要素は一体に組み立て可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記加圧部の前記羽根の出口の下流側の流路と外気とを連通させる放出配管と、前記放出配管上に設けられた調節弁と、を有する放出部をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項5】
軸方向に延びるロータシャフトおよび回転子鉄心を有する回転子と、固定子と、前記回転子鉄心および前記固定子を収納するフレームと、前記フレームの両端に取り付けられた軸受ブラケットとを備える回転電機の軸受構造体であって、前記軸受ブラケットに静止支持されて、前記回転子鉄心の軸方向の外側で前記ロータシャフトを回転可能に支持する軸受構造体において、
前記ロータシャフトを直接支持する軸受本体と、
軸受本体からみて軸方向の回転子鉄心側またはその反対側に設けられた油切りと、
前記油切りからみて軸方向に前記軸受本体側と反対側から前記油切りを加圧する加圧部と、
前記軸受ブラケットに支持された軸受キャップと、
を具備し、
前記加圧部は、
前記ロータシャフトに取り付けられた羽根ベースと、
前記油切りに支持された羽根カバーと、
前記羽根カバーを介さずに前記羽根ベースに周方向に互いに間隔をあけて取り付けられ、前記羽根カバーに覆われた複数の羽根と、
を有し、
前記油切りは、
前記ロータシャフトの径方向外側に位置し、前記軸受本体と軸方向に並び、前記軸受本体側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有する第1の円筒部と、
前記第1の円筒部の前記一端部から径方向外側に延びて前記軸受キャップに支持された第1の円環部と、
前記第1の円筒部の前記他端部から径方向外側に延びた第1の接続用円環部と、
を有し、
前記羽根ベースは、
前記油切りに対して前記軸受本体とは反対側で前記ロータシャフトの径方向外側に位置して前記ロータシャフトに接触し、前記ロータシャフトと結合し、前記油切り側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有し、前記複数の羽根が取り付けられた第2の円筒部と、
前記第2の円筒部の前記一端部から径方向外側に延びた第2の円環部と、
を有し、
前記羽根カバーは、
前記油切りに対して前記軸受本体とは反対側で前記複数の羽根の径方向外側に位置し、前記油切り側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有した第3の円筒部と、
前記第3の円筒部の前記一端部から径方向外側に延び、前記第1の接続用円環部に支持された第2の接続用円環部と、
前記第3の円筒部の前記他端部から径方向内側に延びたカバー用円環部と、
を有し、
前記複数の羽根は、前記第2の円環部と前記カバー用円環部との間に位置し、
前記第1の接続用円環部と前記第2の円環部との間に、間隙が形成され、
前記第2の円環部と前記第3の円筒部との間に、前記間隙と通じた連通部が形成され、
前記第2の円筒部の前記他端部と前記カバー用円環部との間に、前記連通部と通じた入口開口が形成されたことを特徴とする軸受構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機、および、これに用いる軸受構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、典型的には、軸方向に延びたロータシャフトとその径方向外側に取り付けられた回転子鉄心を有する回転子と、回転子鉄心の径方向外側に設けられた固定子鉄心とその径方向内側部分を軸方向に貫通する固定子巻線を有する固定子とを備える。ロータシャフトは、軸方向の両側をそれぞれ軸受により回転可能に支持される。
【0003】
軸受部分から、機内側あるいは外部雰囲気側に油漏れが生ずることを防止するために、たとえば、油切りが設けられている。さらに、油漏れを抑制するために、ラビリンスシールが用いられる場合がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7は、軸受構造体の従来例の上半部分縦断面図である。軸受構造体50は、軸受本体51、軸受本体51の径方向外側に設けられた軸受パッド52、軸受パッド52を径方向外側から支持する軸受キャップ53を有する。
図7は、軸受本体51が滑り軸受である場合の例を示しており、ロータシャフト11の回転時には、ロータシャフト11の外表面と、軸受本体51の径方向の内側表面とは、互いに摺動する。
【0006】
軸受キャップ53は、軸受ブラケット40により支持されている。軸受本体51の軸方向の内側には、内側油切り54が設けられている。また、軸受本体51の軸方向の外側には、外側油切り55が設けられている。内側油切り54および外側油切り55は、軸受キャップ53により支持されている。以上の各要素は、すべて、直接的あるいは間接的に、軸受ブラケット40により静止支持されている。
【0007】
内側油切り54の径方向の内面には、内側ラビリンス部54aが形成されており、軸受本体51から機内側への潤滑油の漏えいを抑制している。また、外側油切り55の径方向の内面には、外側ラビリンス部55aが形成されており、軸受本体51から機外側への潤滑油の漏えいを抑制している。しかしながら、たとえば、軸受本体51側の空間の圧力は、外気の圧力に比べて高いことから、外側ラビリンス部55aの内外の圧力差が大きく、外側ラビリンス部55aを介して外気への潤滑油の漏えいを十分に抑制することが難しい。また、機内側についても、たとえば、内扇が設けられている場合に、内扇の吸込み側の圧力が軸受本体51側の圧力より低くなり、潤滑油が機内側に漏れやすい場合があるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような背景のもとになされたもので、回転電機の軸受構造体からの油漏れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明は、軸方向に延びるロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取りつけられた回転子鉄心と、を有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線と、を有する固定子と、静止支持されて、前記回転子鉄心を挟んで軸方向の両側で前記ロータシャフトを回転可能に支持する2つの軸受構造体と、前記固定子の径方向外側に配されたフレームと、前記フレームの両端に取り付けられて前記2つの軸受構造体のそれぞれを支持する2つの軸受ブラケットと、を備える回転電機であって、前記2つの軸受構造体の少なくとも一方は、前記ロータシャフトを直接支持する軸受本体と、前記軸受本体からみて軸方向の回転子鉄心側またはその反対側に設けられた油切りと、前記油切りからみて軸方向に前記軸受本体側と反対側から前記油切りを加圧する加圧部と、前記軸受ブラケットに支持された軸受キャップと、を具備し、前記加圧部は、前記ロータシャフトに取り付けられた羽根ベースと、前記油切りに支持された羽根カバーと、前記羽根カバーを介さずに前記羽根ベースに周方向に互いに間隔をあけて取り付けられ、前記羽根カバーに覆われた複数の羽根と、を有し、前記油切りは、前記ロータシャフトの径方向外側に位置し、前記軸受本体と軸方向に並び、前記軸受本体側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有する第1の円筒部と、前記第1の円筒部の前記一端部から径方向外側に延びて前記軸受キャップに支持された第1の円環部と、前記第1の円筒部の前記他端部から径方向外側に延びた第1の接続用円環部と、を有し、前記羽根ベースは、前記油切りに対して前記軸受本体とは反対側で前記ロータシャフトの径方向外側に位置して前記ロータシャフトに接触し、前記ロータシャフトと結合し、前記油切り側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有し、前記複数の羽根が取り付けられた第2の円筒部と、前記第2の円筒部の前記一端部から径方向外側に延びた第2の円環部と、を有し、前記羽根カバーは、前記油切りに対して前記軸受本体とは反対側で前記複数の羽根の径方向外側に位置し、前記油切り側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有した第3の円筒部と、前記第3の円筒部の前記一端部から径方向外側に延び、前記第1の接続用円環部に支持された第2の接続用円環部と、前記第3の円筒部の前記他端部から径方向内側に延びたカバー用円環部と、を有し、前記複数の羽根は、前記第2の円環部と前記カバー用円環部との間に位置し、前記第1の接続用円環部と前記第2の円環部との間に、間隙が形成され、前記第2の円環部と前記第3の円筒部との間に、前記間隙と通じた連通部が形成され、前記第2の円筒部の前記他端部と前記カバー用円環部との間に、前記連通部と通じた入口開口が形成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、軸方向に延びるロータシャフトおよび回転子鉄心を有する回転子と、固定子と、前記回転子鉄心および前記固定子を収納するフレームと、前記フレームの両端に取り付けられた軸受ブラケットとを備える回転電機の軸受構造体であって、前記軸受ブラケットに静止支持されて、前記回転子鉄心の軸方向の外側で前記ロータシャフトを回転可能に支持する軸受構造体において、前記ロータシャフトを直接支持する軸受本体と、軸受本体からみて軸方向の回転子鉄心側またはその反対側に設けられた油切りと、前記油切りからみて軸方向に前記軸受本体側と反対側から前記油切りを加圧する加圧部と、前記軸受ブラケットに支持された軸受キャップと、を具備し、前記加圧部は、前記ロータシャフトに取り付けられた羽根ベースと、前記油切りに支持された羽根カバーと、前記羽根カバーを介さずに前記羽根ベースに周方向に互いに間隔をあけて取り付けられ、前記羽根カバーに覆われた複数の羽根と、を有し、前記油切りは、前記ロータシャフトの径方向外側に位置し、前記軸受本体と軸方向に並び、前記軸受本体側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有する第1の円筒部と、前記第1の円筒部の前記一端部から径方向外側に延びて前記軸受キャップに支持された第1の円環部と、前記第1の円筒部の前記他端部から径方向外側に延びた第1の接続用円環部と、を有し、前記羽根ベースは、前記油切りに対して前記軸受本体とは反対側で前記ロータシャフトの径方向外側に位置して前記ロータシャフトに接触し、前記ロータシャフトと結合し、前記油切り側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有し、前記複数の羽根が取り付けられた第2の円筒部と、前記第2の円筒部の前記一端部から径方向外側に延びた第2の円環部と、を有し、前記羽根カバーは、前記油切りに対して前記軸受本体とは反対側で前記複数の羽根の径方向外側に位置し、前記油切り側の一端部と当該一端部の反対側の他端部とを有した第3の円筒部と、前記第3の円筒部の前記一端部から径方向外側に延び、前記第1の接続用円環部に支持された第2の接続用円環部と、前記第3の円筒部の前記他端部から径方向内側に延びたカバー用円環部と、を有し、前記複数の羽根は、前記第2の円環部と前記カバー用円環部との間に位置し、前記第1の接続用円環部と前記第2の円環部との間に、間隙が形成され、前記第2の円環部と前記第3の円筒部との間に、前記間隙と通じた連通部が形成され、前記第2の円筒部の前記他端部と前記カバー用円環部との間に、前記連通部と通じた入口開口が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転電機の軸受構造体からの油漏れを抑制することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る軸受構造体の上半部分縦断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る軸受構造体の加圧部の構成を示す
図4のIII-III矢視正面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る軸受構造体の加圧部の構成を示す
図3のIV-IV矢視縦断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る軸受構造体の加圧部周りの構成を示す上半部分縦断面図である。
【
図6】第2の実施形態に係る軸受構造体の加圧部の運転特性を示すグラフである。
【
図7】軸受構造体の従来例の上半部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る回転電機、および軸受構造体について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す縦断面図である。回転電機200は、回転子10、固定子20、フレーム30、軸受ブラケット40、および軸受構造体100を有する。以下、回転電機の例として、かご形誘導回転電機の場合を例にとって説明する。
【0015】
回転子10は、水平に延びたロータシャフト11、ロータシャフト11の径方向外側に取り付けられた回転子鉄心12、および、回転子導体13を有する。回転子導体13は、回転子鉄心12を軸方向に貫通する複数の導体バーと、導体バーの回転子鉄心12の両外側に突出する部分をそれぞれ互いに結合し短絡する2つの短絡環を有する。
【0016】
軸受構造体100は、回転子鉄心12の両側でロータシャフト11を回転可能に支持する。ロータシャフト11の軸方向に回転子鉄心12と一方の軸受構造体100との間の部分には、内扇15が取り付けられている。
【0017】
固定子20は、回転子鉄心12の径方向外側に配された円筒状の固定子鉄心21と、固定子鉄心21の径方向内側に形成された固定子スロット(図示せず)内を貫通する固定子巻線22を有する。
【0018】
フレーム30は、回転子鉄心12および固定子20を収納するように、固定子20の径方向外側に配されている。フレーム30には、空気などの冷却用気体(内気)を循環するために、少なくとも一つ、軸方向に延びたフレーム通風路31が形成されている。フレーム通風路31が形成されている部分は、軸方向に内扇15の近傍にある入口開口32が、また、固定子20を挟んで入口開口32の反対側には出口開口33が形成されている。
【0019】
軸受ブラケット40は、フレーム30の軸方向の両端でフレーム30に取り付けられている。それぞれの軸受ブラケット40は、それぞれの軸受構造体100を静止支持している。フレーム30と軸受ブラケット40は、互いに相俟って冷却用気体を収納する閉空間30aを形成する。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係る軸受構造体の上半部分縦断面図である。
【0021】
軸受構造体100は、ロータシャフト11を直接支持する軸受本体110、軸受本体110の径方向外側に設けられた軸受パッド120、軸受パッド120を径方向外側から支持する軸受キャップ130、内側油切り140、外側油切り150、および加圧部160を有する。ロータシャフト11とその径方向外側に配された軸受キャップ130、内側油切り140、外側油切り150は、軸受室101を形成する。
【0022】
軸受本体110は、ロータシャフト11の径が縮小している第1径部11aが形成されている軸方向位置に設けられている。軸受本体110は、滑り軸受であり、円筒状で、径方向内側の面に、ロータシャフト11の第1径部11aの表面との摺動部が形成されている。軸受本体110の軸方向の内側および外側を覆うように、内側端部カバー111および外側端部カバー112がそれぞれ設けられており、潤滑油の飛散を抑制している。
【0023】
軸受パッド120は円筒状であり、軸受本体110の径方向外側に取り付けられている。軸受パッド120は、ほぼ円筒状であるが、径方向外表面は、軸方向の中央で最大となっている回転対称な曲面状である。
【0024】
軸受キャップ130は、円筒部131、外側接続部135、内側接続部134、円環部133、および2つの軸受パッド押さえ部132を有する。
【0025】
円筒部131は、円筒形状でロータシャフト11の回転軸中心に同軸に配されている。外側接続部135は、円筒部131の外気側の端部に接続し径方向の内側および外側に拡がり円環状である。内側接続部134は、円筒部131の機内側の端部に接続し径方向内側に拡がり円環状である。円環部133は、円筒部131の軸方向の途中から径方向外側に拡がり円環状である。また、軸受パッド押さえ部132は、円筒部131の途中から径方向内側に拡がり円環状である。
【0026】
軸受キャップ130は、軸受ブラケット40に形成された開口40aを塞ぐように円環部133で軸受ブラケット40と結合し、軸受ブラケット40に支持されている。
【0027】
軸受パッド120は、径方向外側を軸受キャップ130により支持されている。具体的には、周方向わたって軸受パッド120に接触するように径方向内側に突出するように円環状に形成された2つの軸受パッド押さえ部132により支持されている。2つの軸受パッド押さえ部132は、軸方向に軸受パッド120の最大径部を挟んだ両側に配されていることから、軸受パッド120およびこれに結合している軸受本体110の軸方向の移動が拘束される。軸受キャップ130は、円環部133において軸受ブラケット40に結合し、軸受ブラケット40により支持されている。
【0028】
ロータシャフト11の第1径部11aの機内側、すなわち、回転子鉄心12および固定子20が配されている側は、第2径部11bとなっており、第1径部11aのように径が縮小されておらず、第1径部11aより径が大きい。軸受本体110の軸方向の内側の第2径部11bには、内側油切り140が設けられている。内側油切り140は、ロータシャフト11の回転軸中心に同軸に配された円筒部142、および、円筒部142の軸受本体110側の端部に接続し径方向外側に拡がる円環部141を有する。円筒部142の径方向の内面には、内側ラビリンス部142aが形成されており、軸受本体110から機内側への潤滑油の漏えいを抑制する。内側油切り140は、円環部141において軸受キャップ130の内側接続部134と接続し、軸受キャップ130により支持されている。
【0029】
ロータシャフト11の第1径部11aの機内側と反対側は、第3径部11cとなっており、第2径部11bと同様の大きさの径を有する。軸受本体110の軸方向の外側の第3径部11cには、外側油切り150が設けられている。外側油切り150は、円筒形状でロータシャフト11の回転軸中心に同軸の円筒部152、円筒部152の軸方向内側端部に接続し径方向外側に延びて軸受キャップ130の外側接続部135に接続される円環部151、および、円筒部152に軸方向外側端部に接続し径方向外側に延びる接続用円環部153を有する。外側油切り150の円筒部152の内面には、外側ラビリンス部152aが形成されており、軸受本体110から機外側への潤滑油の漏えいを抑制する。外側油切り150は、円環部151と軸受キャップ130の外側接続部135との接続により、軸受キャップ130により支持される。
【0030】
ロータシャフト11の第3径部11cの外側は、第4径部11dとなっており、第4径部11dは、第3径部11cの径より小さい。外側油切り150の軸方向の外側の位置となる第4径部11dには、加圧部160が配されている。加圧部160は、羽根161、羽根ベース162、および、羽根カバー163を有する。羽根161は、羽根ベース162を介して、外気を外側ラビリンス152a側に圧送する。間隙160aについては、後述する。
【0031】
なお、以上の説明で、軸受構造体100の各要素が設けられている軸方向位置を、ロータシャフト11の径の異なる第1径部11a、第2径部11b、第3径部11c、および第4径部11dに対応させて示したが、ロータシャフト11のそれぞれの部分の径は、本実施形態における軸受構造体100の構成に本質的なものではなく、径の大小の関係が本実施形態に示したものと異なっている場合でもよい。
【0032】
図3は、第1の実施形態に係る軸受構造体の加圧部の構成を示す
図4のIII-III矢視正面図である。また、
図4は、
図3のIV-IV矢視縦断面図である。
【0033】
羽根ベース162は、複数の羽根161が取り付けられる部分であり、ロータシャフト11とともに回転する。羽根ベース162は、円環部162a、および、円環部162aの径方向の内縁に端部が接続する円筒部162bを有する。円筒部162bは、ロータシャフト11の第4径部11dの径方向外側に密着し、ロータシャフト11と結合している。なお、羽根161を、直接にロータシャフト11に取り付けてもよい。
【0034】
円筒部162bには、周方向に互いに間隔をおいて、羽根161が取り付けられている。ロータシャフト11が回転すると、羽根ベース162に取り付けられた羽根161が回転する。この結果、羽根161は、根元側(径方向内側)から外気を吸込み、羽根161の径方向外側への外気の流れを形成する。
【0035】
羽根カバー163は、外側油切り150に支持されている。羽根カバー163は、接続用円環部163a、円筒部163b、および、カバー用円環部163cを有する。
【0036】
円筒部163bは、ロータシャフト11の回転軸中心に同軸に、羽根161の径方向の外側に配されている。接続用円環部163aは、円筒部163bの外側端面に接続し、径方向の内側に拡がって、外側油切り150の接続用円環部153と接続されている。カバー用円環部163cは、円筒部163bの外側端面に接続し、羽根161を覆うように径方向の内側に延びている。
【0037】
羽根ベース162および羽根カバー163は、互いに相俟って、羽根161を囲む環状空間163vを形成する。環状空間163vは、羽根161の径方向の長さよりも大きな径方向への拡がりを有しており、環状空間163v内の羽根161の径方向外側には、圧力室163pが形成されている。
【0038】
環状空間163vは,入口開口163dで外気と連通しており、また、以下に述べる連通部162cおよびその下流側の間隙160a(
図2)を介して外側ラビリンス部152aと連通している。
【0039】
すなわち、羽根カバー163のカバー用円環部163cの内側の半径r2の方が、羽根ベース162の円筒部162bの外径r1より大きい。この結果、全周にわたる入口開口163dが形成される。
【0040】
また、羽根カバー163の円筒部163bの内側の半径r4の方が、羽根ベース162の円環部162aの外径r3より大きい。この結果、連通部162cが全周にわたり形成される。
【0041】
また、羽根カバー163の円筒部163bの軸方向の幅z2の方が、羽根ベース162の円筒部162bの軸方向の幅z1より大きい。このため、羽根ベース162の円環部162aの軸方向内側の表面は、羽根カバー163の接続用円環部163aの軸方向の内側の表面よりも、(z2-z1)だけ軸方向外側にずれている。この結果、外側油切り150の接続用円環部153の軸方向外側の表面と、羽根ベース162の円環部162aの軸方向内側の表面との間には、連通部162cと外側ラビリンス部152a間の通路となる間隙160aが全周にわたり形成される。
【0042】
なお、連通部162cおよび間隙160aは、全周にわたり形成される場合を示したが、これに限定されない。すなわち、周方向のある部分に1か所、あるいは複数個所、同様の通路を設けてもよい。
【0043】
また、羽根ベース162および羽根カバー163はそれぞれ、円周方向に一体に形成されている場合を例にとって示したが、これに限定されない。すなわち、それぞれが、周方向にたとえば2つに分割可能で、ロータシャフト11の径方向外側からそれぞれ取付けて互いにボルト等で組み立て可能としてもよい。この場合、羽根161の形状、寸法等を変更したものに容易に取り換え可能であり、油漏れの状況に応じて調整することが可能となる。
【0044】
以上のような構成により、加圧部160は、遠心ファンと同様の働きをする。すなわち、加圧部160は、入口開口163dから外気を吸いこみ、外気を径方向外側に駆動する。圧力室163pでは流れの速度が圧力に変換され、連通部162cおよび間隙160aを介して、外気を外側ラビリンス部152a側に圧送する。ただし、外側ラビリンス部152aを通過して流れる量はごく微量と考えられるので、遠心ファンと同様に、ほぼ、締め切り圧力に近い圧力が、加圧部160の出口側に印加されることになる。したがって、軸受室101の圧力に余裕を見た締め切り圧を有するように加圧部160の性能を設定すればよい。
【0045】
この結果、外側油切り150の外側の圧力は、外側油切り150の内側すなわち軸受室101の圧力より高くなり、軸受本体110側から外側油切り150を経由して潤滑油が外部に漏えいすることを抑制することができる。
【0046】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係る軸受構造体の加圧部周りの構成を示す上半部分縦断面図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、放出部170をさらに有する。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0047】
放出部170は、放出配管171および調節弁172を有する。放出配管171は、外側油切り150の接続用円環部153を貫通しかつ接続用円環部153に接続され、間隙160a内の雰囲気と外気とを連通させる。調節弁172は、放出部170の流動抵抗を調節可能であり、放出配管171上に設けられている。
【0048】
なお、放出配管171が外側油切り150の接続用円環部153を貫通し、間隙160a内の雰囲気と外気とを連通させる場合を示したが、これに限定されない。すなわち、加圧部160の羽根161の出口側以降、すなわち羽根161の出口側あるいはその下流側の流路から外気に接続するのであればたとえば、放出配管171が、羽根カバー163の円筒部163bを貫通しかつ円筒部163bに接続され、圧力室163pと外気とを連通させることでもよい。
【0049】
図6は、第2の実施形態に係る軸受構造体の加圧部の運転特性を示すグラフである。横軸は、加圧部160を通過する流量を、また、縦軸は、圧力を示す。
【0050】
Psは、外気圧と軸受室101内の圧力との差圧、すなわち、外気側から見た場合の軸受室の相対的な静圧である。
【0051】
曲線Hは、加圧部160の流量に対する圧力(ヘッド)の特性、すなわち加圧部160の性能を示す特性曲線である。P0は、加圧部160の締め切り圧力である。
【0052】
曲線Aは、第1の実施形態と同様に放出部170が設けられていない場合の、加圧部160から軸受室101に至る流路の流動抵抗に基づく抵抗曲線である。この場合は、特性曲線Hと抵抗曲線Aとの交点である運転点AAでの運転状態となり、流量はFa、加圧部160の出口圧力はPaである。
【0053】
曲線Bは、放出部170において調節弁172の開度を全開とした場合の抵抗曲線である。この場合は、特性曲線Hと抵抗曲線Bとの交点である運転点BBでの運転状態となり、流量はFb、加圧部160の出口圧力はPbである。
【0054】
曲線Cは、放出部170において調節弁172の開度を中間開度とした場合の抵抗曲線である。この場合は、特性曲線Hと抵抗曲線Cとの交点である運転点CCでの運転状態となり、流量はFc、加圧部160の出口圧力はPcである。
【0055】
なお、抵抗曲線Bおよび抵抗曲線Cの場合は、加圧部160から軸受室101に至る第1の流路と、加圧部160から放出部170を経由して外気に至る第2の流路とが存在することにより、一部流路が重複し、一部流路が並行した状態での流路の全体としての等価的な抵抗特性である。このような状態において安定した運転点が1つ存在することから、このような等価的な抵抗曲線を一義的に決定することができる。このような状態においては、流量Fb,流量Fcはそれぞれ、第1の流路を流れる最終的な流量と第2の流路を流れる最終的な流量の合計となる。
【0056】
調節弁172の開度を全開にすれば、抵抗曲線Cは抵抗曲線Bに一致する。また、調節弁172の開度を全閉にすれば、抵抗曲線Cは抵抗曲線Aに一致する。すなわち、調節弁172の開度を変化させることにより、加圧部160の出口圧力を、PbからPaまでの範囲で調整することができる。したがって、たとえば、締め切り圧力Paが高すぎることが分かった場合でも、容易に加圧部160の出口圧力を調整することができる。
【0057】
以上のように、本実施形態においては、羽根161を変更することなく、加圧部160の出口圧力を調節することができる。
【0058】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、実施形態において、回転電機が、かご形誘導回転電機の場合を例にとって示したが、これに限定されない。たとえば、巻線形誘導回転電機、あるいは同期回転電機など他の型式の回転電機の場合であってもよい。また、たとえば、実施形態においては、軸受構造体が、すべり軸受を用いる場合を例にとって示したが、これに限定されない。たとえば、玉軸受を有する場合であってもよい。
【0059】
また、実施形態では、両側の軸受構造体に加圧部を設ける場合を例にとって示したが、これに限定されず、いずれか一方に加圧部を設けることでもよい。
【0060】
さらに、実施形態では、外側油切りから外部への油漏れを防止するために、外側油切りの軸方向外側に加圧部を設ける場合を例にとって示したが、これに限定されない。すなわち、内側油切りから機内側への油漏れを防止するために、内側油切りの軸方向内側に加圧部を設けることでもよい。
【0061】
また、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0062】
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
10…回転子、11…ロータシャフト、11a…第1径部、11b…第2径部、11c…第3径部、11d…第4径部、12…回転子鉄心、13…回転子導体、15…内扇、20…固定子、21…固定子鉄心、22…固定子巻線、30…フレーム、30a…閉空間、31…フレーム通風路、32…入口開口、33…出口開口、40…軸受ブラケット、40a…開口、50…軸受構造体、51…軸受本体、52…軸受パッド、53…軸受キャップ、54…内側油切り、54a…内側ラビリンス部、55…外側油切り、55a…外側ラビリンス部、100…軸受構造体、101…軸受室、110…軸受本体、111…内側端部カバー、112…外側端部カバー、120…軸受パッド、130…軸受キャップ、131…円筒部、132…軸受パッド押さえ部、133…円環部、134…内側接続部、135…外側接続部、140…内側油切り、141…円環部、142…円筒部、142a…内側ラビリンス部、150…外側油切り、151…円環部(第1の円環部)、152…円筒部(第1の円筒部)、152a…外側ラビリンス部、153…接続用円環部(第1の接続用円環部)、160…加圧部、160a…間隙、161…羽根、162…羽根ベース、162a…円環部(第2の円環部)、162b…円筒部(第2の円筒部)、162c…連通部、163…羽根カバー、163a…接続用円環部(第2の接続用円環部)、163b…円筒部(第3の円筒部)、163c…カバー用円環部、163d…入口開口、163p…圧力室、163v…環状空間、170…放出部、171…放出配管、172…調節弁、200…回転電機