(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】点火プラグの製造方法および点火プラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 21/02 20060101AFI20220622BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20220622BHJP
H01T 13/06 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
H01T21/02
H01T13/20 B
H01T13/20 E
H01T13/06
(21)【出願番号】P 2018094300
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】寺門 貴芳
(72)【発明者】
【氏名】森 直之
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-216291(JP,A)
【文献】特開2017-130267(JP,A)
【文献】特許第4546753(JP,B2)
【文献】特開2009-236017(JP,A)
【文献】特開2017-112000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 21/02
H01T 13/20
H01T 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と接地電極とを含む点火プラグを製造するための点火プラグの製造方法であって、
軸線方向に沿って延在する筒状の絶縁体の内周に前記中心電極を取り付ける中心電極取付ステップと、
筒状の主体金具の内周に前記絶縁体を取り付ける絶縁体取付ステップと、
前記主体金具に前記接地電極を取り付ける接地電極取付ステップと、
前記主体金具又は前記接地電極の少なくとも一方の先端側に遮熱層を設ける遮熱層形成ステップと、を備え
、
前記遮熱層形成ステップは、前記絶縁体取付ステップよりも前に実行される点火プラグの製造方法。
【請求項2】
中心電極と接地電極とを含む点火プラグを製造するための点火プラグの製造方法であって、
軸線方向に沿って延在する筒状の絶縁体の内周に前記中心電極を取り付ける中心電極取付ステップと、
筒状の主体金具の内周に前記絶縁体を取り付ける絶縁体取付ステップと、
前記主体金具に前記接地電極を取り付ける接地電極取付ステップと、
前記主体金具又は前記接地電極の少なくとも一方の先端側に遮熱層を設ける遮熱層形成ステップと、を備え、
前記遮熱層形成ステップは、前記絶縁体取付ステップよりも後に実行され
、
前記接地電極取付ステップは、前記絶縁体取付ステップよりも後、且つ前記遮熱層形成ステップよりも前に実行される点火プラグの製造方法。
【請求項3】
前記遮熱層形成ステップよりも前に、前記接地電極の前記中心電極に対向する部位の表面及び前記中心電極の表面をマスキング材で覆うマスキングステップをさらに備える請求項
2に記載の点火プラグの製造方法。
【請求項4】
前記遮熱層形成ステップは、前記接地電極取付ステップよりも前に実行される請求項
1に記載の点火プラグの製造方法。
【請求項5】
前記遮熱層形成ステップは、前記接地電極取付ステップよりも後に実行される請求項
1に記載の点火プラグの製造方法。
【請求項6】
前記遮熱層形成ステップよりも前に、前記接地電極の前記中心電極に対向する部位の表面をマスキング材で覆うマスキングステップをさらに備える請求項
4又は
5に記載の点火プラグの製造方法。
【請求項7】
中心電極と接地電極とを含む点火プラグを製造するための点火プラグの製造方法であって、
軸線方向に沿って延在する筒状の絶縁体の内周に前記中心電極を取り付ける中心電極取付ステップと、
筒状の主体金具の内周に前記絶縁体を取り付ける絶縁体取付ステップと、
前記主体金具に前記接地電極を取り付ける接地電極取付ステップと、
前記主体金具又は前記接地電極の少なくとも一方の先端側に遮熱層を設ける遮熱層形成ステップと、を備え、
前記遮熱層形成ステップは、
前記主体金具の軸線方向における前記接地電極が取り付けられる側の第1端面に第1遮熱層を形成する第1遮熱層形成ステップ
と、
前記接地電極の軸線方向における前記主体金具から離れた側の第2端面に第2遮熱層を形成する第2遮熱層形成ステップと、を含む点火プラグの製造方法。
【請求項8】
前記遮熱層形成ステップは、前記主体金具の内周の前記第1端面側の部分に第3遮熱層を形成する第3遮熱層形成ステップをさらに含む請求項
7に記載の点火プラグの製造方法。
【請求項9】
中心電極と接地電極とを含む点火プラグを製造するための点火プラグの製造方法であって、
軸線方向に沿って延在する筒状の絶縁体の内周に前記中心電極を取り付ける中心電極取付ステップと、
筒状の主体金具の内周に前記絶縁体を取り付ける絶縁体取付ステップと、
前記主体金具に前記接地電極を取り付ける接地電極取付ステップと、
前記主体金具又は前記接地電極の少なくとも一方の先端側に遮熱層を設ける遮熱層形成ステップと、を備え、
前記遮熱層形成ステップは、
前記主体金具の軸線方向における前記接地電極が取り付けられる側の第1端面に第1遮熱層を形成する第1遮熱層形成ステップと、
前記主体金具の内周の前記第1端面側の部分に第3遮熱層を形成する第3遮熱層形成ステップと、を含む点火プラグの製造方法。
【請求項10】
前記点火プラグは、発電用の内燃機関に装着される点火プラグである請求項1乃至
9の何れか1項に記載の点火プラグの製造方法。
【請求項11】
中心電極と接地電極とを含む点火プラグであって、
軸線方向に沿って延在する筒状の絶縁体と、
前記絶縁体の内周に支持される前記中心電極と、
前記絶縁体の外周に設けられる筒状の主体金具と、
前記主体金具に取り付けられる前記接地電極と、を備え、
前記主体金具は、軸線方向における前記接地電極が取り付けられる側の端面に形成される第1遮熱層を有
し、
前記接地電極は、軸線方向における前記主体金具から離れた側の第2端面に形成される第2遮熱層を有し、
前記第2遮熱層は、前記接地電極の前記中心電極に対向する部位には形成されない、点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点火プラグの製造方法および点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばスパークプラグを含む点火プラグは、エンジンなどの内燃機関において、燃焼室の内部の混合気(未燃燃料)に点火するためのものである。一般的なエンジンは、筒状のシリンダブロックと、該シリンダブロックの開口端を閉塞するシリンダヘッドと、シリンダブロックの内部に収納されたピストンと、により囲まれる燃焼室を備えている。そして、スパークプラグは、中心電極と、接地電極と、中心電極および接地電極の間に形成される火花放電間隙(スパークギャップ)と、を含む点火部(火花放電部)を備えており、該点火部が燃焼室に面するように、該スパークプラグがシリンダヘッドに形成されたプラグホールに例えば螺合により固定されることがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、スパークプラグは、上述した燃焼室である主燃焼室と、該主燃焼室に複数の噴孔を介して連通される副燃焼室(副室)と、を備える副室式のエンジンにおいて、点火部が副燃焼室に面するように、シリンダヘッドに支持されるプラグホルダに例えば螺合により固定されることもある(特許文献2参照)。
【0004】
また、スパークプラグには、シリンダヘッドに固定される主体金具、主体金具に一端部が結合された接地電極、および、主体金具と中心電極とを電気的に絶縁する碍子のそれぞれの特定部位の表面に断熱膜が形成されたものがある(特許文献3参照)。特許文献3における断熱膜は、中心電極と接地電極との間に生じた火炎が広がる際に、スパークプラグによって奪われる火炎の熱エネルギーを低減し、火炎の成長速度低下を抑制するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4546753号公報
【文献】特開2009-236017号公報
【文献】特開2017-112000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、エンジン(内燃機関)の高効率化および高出力化により点火プラグの電極(中心電極、接地電極を含む)の温度、より具体的には接地電極の温度が上昇傾向にある。電極の温度が高くなり過ぎると電極の損耗速度を加速させる虞があり、点火プラグの寿命を低下させる虞がある。電極の温度上昇を抑制するために、空気過剰率を向上させてエンジンの燃焼温度を下げる方法などが考えられるが、エンジンの燃焼悪化や点火プラグによる点火が不安定になる虞がある。
【0007】
ここで、点火プラグの電極は、混合気の燃焼熱を受けて温度が上昇するが、熱伝導によりシリンダヘッドやプラグホルダへ放熱することで適切な温度が保たれるようになっている。点火プラグの温度上昇を抑制するために、特許文献1には、点火プラグが金属層を介してシリンダヘッドに螺合することで、螺合する部分の密着性の低下を抑制し、点火プラグからシリンダヘッドへの放熱性の低下を抑制することが開示されている。また、特許文献2には、副燃焼室を形成する副室口金やプラグホルダを囲むように冷却水が通る冷却水路を設けることが開示されている。しかしながら、特許文献1および2に記載された発明では、電極の熱がシリンダヘッドやプラグホルダへ有効に放熱されずに、電極が高温となる虞がある。
【0008】
また、特許文献3には、火炎の成長速度低下を抑制するために、主体金具などの特定部位の表面に断熱膜を設けることが開示されている。特許文献3に記載された発明は、電極の温度上昇の抑制を目的とする発明ではないため、断熱膜が形成される部位が十分ではなく、電極の熱がシリンダヘッドやプラグホルダへ有効に放熱されずに、電極が高温となる虞がある。また、特許文献3には、断熱膜を有する点火プラグを製造するための製造方法について具体的な開示がされていない。
【0009】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、電極の温度上昇を抑制することができ、点火プラグの長寿命化を実現可能な点火プラグの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかる点火プラグの製造方法は、
中心電極と接地電極とを含む点火プラグを製造するための点火プラグの製造方法であって、
軸線方向に沿って延在する筒状の絶縁体の内周に前記中心電極を取り付ける中心電極取付ステップと、
筒状の主体金具の内周に前記絶縁体を取り付ける絶縁体取付ステップと、
前記主体金具に前記接地電極を取り付ける接地電極取付ステップと、
前記主体金具又は前記接地電極の少なくとも一方の先端側に遮熱層を設ける遮熱層形成ステップと、を備える。
【0011】
上記(1)の方法によれば、点火プラグの製造方法は、絶縁体の内周に中心電極を取り付ける中心電極取付ステップと、主体金具の内周に絶縁体を取り付ける絶縁体取付ステップと、主体金具に接地電極を取り付ける接地電極取付ステップと、主体金具又は接地電極の少なくとも一方の先端側に遮熱層を設ける遮熱層形成ステップと、を備えるので、中心電極、絶縁体、主体金具及び接地電極を含む点火プラグであって、主体金具や接地電極の先端側に熱伝導率の低い遮熱層を有する点火プラグを製造することができる。
【0012】
また、主体金具や接地電極の先端側に熱伝導率の低い遮熱層を有する点火プラグは、遮熱層を有しない点火プラグに比べて、混合気の燃焼熱の主体金具や接地電極への入熱を抑制することができ、主体金具や接地電極の温度上昇を抑制することができる。ここで、中心電極や接地電極は、混合気の燃焼熱を受けて温度が上昇するが、熱伝導により主体金具や絶縁体などを介して、シリンダヘッドやプラグホルダなどへ放熱することで適切な温度が保たれるようになっている。このため、熱の伝達経路である接地電極や主体金具の温度上昇を抑制することで、接地電極や中心電極における熱を主体金具などに効率的に伝達させることができる。したがって、上記の方法によれば、電極の温度上昇を抑制することができ、点火プラグの長寿命化を実現可能な点火プラグを製造することができる。
【0013】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の方法において、上記遮熱層形成ステップは、上記絶縁体取付ステップよりも後に実行される。
上記(2)の方法によれば、遮熱層形成ステップが絶縁体取付ステップよりも後に実行されるので、主体金具に絶縁体を取り付ける際に遮熱層が損傷することを防止することができる。よって、上記の方法によれば、遮熱層の損傷による遮熱層の効果低減を抑制することができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の方法において、上記遮熱層形成ステップは、上記絶縁体取付ステップよりも前に実行される。
上記(3)の方法によれば、遮熱層形成ステップが絶縁体取付ステップよりも前に実行される。すなわち、絶縁体や中心電極を取り付ける前の主体金具や接地電極に対して、遮熱層を形成するので、遮熱層の形成が容易である。また、絶縁体や中心電極を取り付ける前の主体金具や接地電極は、絶縁体や中心電極を取り付けた後の主体金具や接地電極では遮熱層の形成に手間が掛かる部分にも、容易に遮熱膜を形成することができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の方法において、上記接地電極取付ステップは、上記絶縁体取付ステップよりも後、且つ上記遮熱層形成ステップよりも前に実行される。
上記(4)の方法によれば、接地電極取付ステップが遮熱層形成ステップよりも前に実行されるので、主体金具に接地電極を取り付ける際に遮熱層が損傷することを防止することができる。よって、上記の方法によれば、遮熱層の損傷による遮熱層の効果低減を抑制することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の方法において、上記遮熱層形成ステップよりも前に、上記接地電極の上記中心電極に対向する部位の表面及び上記中心電極の表面をマスキング材で覆うマスキングステップをさらに備える。
上記(5)の方法によれば、マスキング材で覆うことで、接地電極の中心電極に対向する部位の表面及び中心電極の表面に遮熱層が形成されることを防止できる。このため、接地電極の中心電極に対向する部位の表面及び中心電極の表面に遮熱層が形成されることによる点火性能の低下を防止することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の方法において、上記遮熱層形成ステップは、上記接地電極取付ステップよりも前に実行される。
上記(6)の方法によれば、遮熱層形成ステップは、接地電極取付ステップよりも前に実行される。すなわち、主体金具に接地電極を取り付ける前の主体金具や接地電極に対して遮熱層を形成するので、遮熱層の形成が容易である。
【0018】
(7)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の方法において、上記遮熱層形成ステップは、上記接地電極取付ステップよりも後に実行される。
主体金具に接地電極を取り付ける際には、例えば溶接による熱などで遮熱層が損傷する虞がある。上記(7)の方法によれば、遮熱層形成ステップは、接地電極取付ステップよりも後に実行されるので、主体金具に接地電極を取り付ける際に遮熱層が損傷することを防止することができる。よって、上記の方法によれば、遮熱層の損傷による遮熱層の効果低減を抑制することができる。
【0019】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)に記載の方法において、上記遮熱層形成ステップよりも前に、上記接地電極の上記中心電極に対向する部位の表面をマスキング材で覆うマスキングステップをさらに備える。
上記(8)の方法によれば、マスキング材で覆うことで、接地電極の中心電極に対向する部位の表面に遮熱層が形成されることを防止できる。このため、接地電極の中心電極に対向する部位の表面に遮熱層が形成されることによる点火性能の低下を防止することができる。また、絶縁体や中心電極を取り付ける前の主体金具や接地電極に対して、遮熱層を形成するので、中心電極をマスキング材で覆う作業を行う必要がなく、その分作業性を向上させることができる。
【0020】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)~(8)の何れかに記載の方法において、上記遮熱層形成ステップは、上記主体金具の軸線方向における上記接地電極が取り付けられる側の第1端面に第1遮熱層を形成する第1遮熱層形成ステップを含む。
上記(9)の方法によれば、主体金具の軸線方向における接地電極が取り付けられる側の第1端面に第1遮熱層が形成されるので、第1端面から主体金具への混合気の燃焼熱の入熱を抑制することができ、主体金具の温度上昇を抑制することができる。
【0021】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の方法において、上記遮熱層形成ステップは、上記接地電極の軸線方向における上記主体金具から離れた側の第2端面に第2遮熱層を形成する第2遮熱層形成ステップをさらに含む。
上記(10)の方法によれば、接地電極の軸線方向における主体金具から離れた側の第2端面に第2遮熱層が形成されるので、第2端面から接地電極への混合気の燃焼熱の入熱を抑制することができ、接地電極の温度上昇を抑制することができる。
【0022】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)に記載の方法において、上記遮熱層形成ステップは、上記主体金具の内周の上記第1端面側の部分に第3遮熱層を形成する第3遮熱層形成ステップをさらに含む。
上記(11)の方法によれば、主体金具の内周の第1端面側の部分に第3遮熱層が形成されるので、主体金具の内周の第1端面側の部分から主体金具への混合気の燃焼熱の入熱を抑制することができ、主体金具の温度上昇を抑制することができる。
【0023】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)~(11)の何れかに記載の方法において、上記点火プラグは、発電用の内燃機関に装着される点火プラグである。
発電用の内燃機関に装着される点火プラグは、例えば自動車用の内燃機関に装着される点火プラグに比べて、長期間にわたり高温にさらされるので、電極の温度が高くなる傾向がある。上記(12)の方法によれば、点火プラグが発電用の内燃機関に装着される点火プラグであっても、混合気の燃焼熱の主体金具や接地電極への入熱を抑制することができ、主体金具や接地電極の温度上昇を抑制することができる。したがって、上記の方法によれば、点火プラグが発電用の内燃機関に装着される点火プラグであっても、電極の温度上昇を抑制することができ、点火プラグの長寿命化を実現可能である。
【0024】
(13)本発明の少なくとも一実施形態にかかる点火プラグは、
中心電極と接地電極とを含む点火プラグであって、
軸線方向に沿って延在する筒状の絶縁体と、
前記絶縁体の内周に支持される前記中心電極と、
前記絶縁体の外周に設けられる筒状の主体金具と、
前記主体金具に取り付けられる前記接地電極と、を備え、
前記主体金具は、軸線方向における前記接地電極が取り付けられる側の端面に形成される第1遮熱層を有する。
【0025】
上記(13)の構成によれば、点火プラグは、軸線方向に沿って延在する筒状の絶縁体と、絶縁体の内周に支持される中心電極と、絶縁体の外周に設けられる筒状の主体金具と、主体金具に取り付けられる接地電極と、を備えている。そして、主体金具は、軸線方向における接地電極が取り付けられる側の端面に形成される第1遮熱層を有している。
【0026】
主体金具の軸線方向における接地電極が取り付けられる側の端面に第1遮熱層を有する点火プラグは、上記端面に第1遮熱層を有しない点火プラグに比べて、上記端面から主体金具への混合気の燃焼熱の入熱を抑制することができ、主体金具の温度上昇を抑制することができる。ここで、中心電極や接地電極は、混合気の燃焼熱を受けて温度が上昇するが、熱伝導により主体金具や絶縁体などを介して、シリンダヘッドやプラグホルダなどへ放熱することで適切な温度が保たれるようになっている。このため、熱の伝達経路である主体金具の温度上昇を抑制することで、接地電極や中心電極における熱を主体金具などに効率的に伝達させることができる。したがって、上記の構成によれば、電極の温度上昇を抑制することができ、点火プラグの長寿命化を実現可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、電極の温度上昇を抑制することができ、点火プラグの長寿命化を実現可能な点火プラグの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態にかかる点火プラグの製造方法のフロー図である。
【
図2】一実施形態にかかる点火プラグの遮熱膜を設ける前の状態を概略的に示す概略半断面図である。
【
図3】
図2に示す点火プラグを
図2中矢印A方向から見た概略図である。
【
図4】
図2に示す点火プラグの点火部近傍の概略断面図である。
【
図5】一実施形態にかかる点火プラグを備える内燃機関の一例として副室式エンジンを概略的に示す概略断面図である。
【
図6】一実施形態にかかる点火プラグの遮熱層が設けられる部位やマスキングされる部位を説明するための図であって、点火プラグの点火部近傍の概略断面図である。
【
図7】一実施形態にかかる点火プラグの遮熱層が設けられる部位やマスキングされる部位を説明するための図であって、
図6中矢印B方向から見た概略図である。
【
図8】他の一実施形態にかかる点火プラグの製造方法のフロー図である。
【
図9A】他の一実施形態における主体金具の遮熱層が設けられる部位を説明するための図であって、主体金具の先端側の概略断面図である。
【
図9B】他の一実施形態における接地電極の遮熱層が設けられる部位を説明するための図であって、接地電極の概略断面図である。
【
図10】他の一実施形態にかかる点火プラグを説明するための図であって、主体金具および接地電極の概略断面図である。
【
図11】他の一実施形態にかかる点火プラグの製造方法のフロー図である。
【
図12】他の一実施形態における主体金具や接地電極に遮熱層が設けられる前の状態を説明するための図であって、主体金具および接地電極の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0030】
図1は、一実施形態にかかる点火プラグの製造方法のフロー図である。
図2は、一実施形態にかかる点火プラグの遮熱膜を設ける前の状態を概略的に示す概略半断面図である。
図3は、
図2に示す点火プラグを
図2中矢印A方向から見た概略図である。
図4は、
図2に示す点火プラグの点火部近傍の概略断面図である。
【0031】
図1~12に示される幾つかの実施形態にかかる点火プラグの製造方法100(100A~100C)は、
図2に示されるような、点火部2(火花放電部)としての電極3(中心電極4、接地電極5を含む)を備える点火プラグ1を製造するための方法である。
【0032】
点火プラグ1は、
図2~4に示されるような、点火部2において火花放電を起こすことで、混合気に点火するスパークプラグである。点火部2は、
図2、4に示されるように、中心電極4と、中心電極4に非接触に配設される接地電極5であって、中心電極4との間に火花を発生させるための火花放電ギャップGを形成する接地電極5と、を含んでいる。以下、軸線方向(点火プラグ1の軸線LAの延在する方向)において、中心電極4が設けられる側(
図2、4中下側)を先端側とし、端子金具11が設けられる側(
図2、4中上側)を後端側とする。
【0033】
点火プラグの製造方法100(100A)は、
図1に示されるように、準備ステップS101と、接地電極取付ステップS102と、中心電極取付ステップS103と、絶縁体取付ステップS104と、ガスケット取付ステップS106と、遮熱層形成ステップS108(S108A)と、を備えている。
図1に示される実施形態では、点火プラグの製造方法100(100A)における点火プラグ1の製造は、準備ステップS101、接地電極取付ステップS102、中心電極取付ステップS103、絶縁体取付ステップS104、ガスケット取付ステップS106、遮熱層形成ステップS108(S108A)の順に行われる。つまり、
図2~4に示されるような点火プラグ1を製造した後に、該点火プラグ1に遮熱層8を設けるようになっている。
【0034】
準備ステップS101では、
図2に示されるような、点火プラグ1の構成部品である主体金具7、絶縁体6、中心電極4および接地電極5を準備する。ここで、点火プラグ1は、
図2に示されるように、軸線方向に沿って延在する筒状の絶縁体6と、絶縁体6の内周の先端側に支持される上述した中心電極4と、絶縁体6の後端側に設けられる端子金具11と、絶縁体6の外周に設けられるとともに絶縁体6を支持する筒状の主体金具7と、主体金具7に取り付けられる上述した接地電極5と、主体金具に取り付けられるガスケット12と、を備えている。
図4に示されるように、中心電極4は、絶縁体6の先端側の端面601よりも外側に突出する先端部41を有している。接地電極5は、一端が主体金具7に取り付けられるとともに他端が中心電極4の先端部41に対向するように配置されている。
【0035】
中心電極4は、絶縁体6に形成された軸線方向に沿って延在する貫通孔61を通じて端子金具11に電気的に接続され、接地電極5は、主体金具7に電気的に接続される。このような点火プラグ1は、図示しない電源に接続された端子金具11に高電圧が印加されることで、中心電極4と接地電極5との間に火花を発生させる。なお、準備ステップS101では、点火プラグ1の上記した構成部品以外の構成部品、例えば端子金具11やガスケット12などの構成部品を併せて準備してもよい。
【0036】
接地電極取付ステップS102では、主体金具7に接地電極5を取り付ける。主体金具7は、
図2に示されるように、主体金具7の内周に絶縁体6を支持する円筒状に形成されている。主体金具7は、炭素鋼などの金属材料により構成されている。接地電極5は、金属材料により棒状に形成されている。より詳細には、接地電極5は、耐熱性を有するニッケル合金により構成されている。なお、接地電極5は、白金やイリジウム、ロジウム合金などの貴金属により構成されていてもよい。
【0037】
図2に示される実施形態では、主体金具7は、外周に雄ネジ部711が形成された固定ネジ部71と、固定ネジ部71よりも後端側に設けられる座部72と、軸線方向において固定ネジ部71と座部72との間に設けられるガスケット係合部73と、座部72よりも後端側に設けられる工具係合部74と、工具係合部74よりも後端側に設けられるカシメ部75と、を有している。また、
図2、4に示される実施形態では、主体金具7は、周方向の一部において、固定ネジ部71の先端側に位置する端面712よりも、先端側に向かって突出する突出部78をさらに有している。なお、他の実施形態では、主体金具7は、突出部78を有していなくてもよい。
【0038】
接地電極5は、突出部78に一端が例えば溶接などにより接合されることで、主体金具7に支持される。
図4に示される実施形態では、突出部78は、端面781よりも後端側に凹んで形成された溝部79を有している。上述した接地電極取付ステップS102では、接地電極5の一端を溝部79に挿入して位置決めが行われた後に、上記一端を突出部78に接合する。接地電極5の他端は、一端が突出部78に接合されることで、一端から軸線方向に対して交差する方向に沿って延在する。より詳細には、接地電極5の他端は、一端から軸線方向に対して直交する方向に沿って延在する。
【0039】
図2、4に示される実施形態では、接地電極5は、点火プラグ1の軸線LAと交差する位置に、後端側に位置する面502よりも中心電極4の先端部41に向かって突設する棒状の電極片51を有している。接地電極5は、電極片51と中心電極4の先端部41との間に上述した火花放電ギャップGを形成する。なお、他の実施形態では、接地電極5は、電極片51を有していなくてもよく、接地電極5の面502と中心電極4の先端部41との間に火花放電ギャップGを形成してもよい。また、接地電極5は、
図4に示されるような、固定ネジ部71の端面712や、雄ネジ部711と端面712との間に形成されるテーパ面713に接合されていてもよい。端面712やテーパ面713などに接合される場合には、接地電極5は、長さ途中に形成される折曲げ部と、軸線方向に沿って延在する部位と、軸線方向に交差する方向に沿って延在する部位と、を有していてもよい。
【0040】
図1に示される実施形態では、点火プラグの製造方法100(100A)は、接地電極5を加工する接地電極加工ステップS105をさらに備えている。
図1に示されるように、接地電極加工ステップS105は、絶縁体取付ステップS104よりも後、且つガスケット取付ステップS106よりも前に行われる。接地電極加工ステップS105において接地電極5を加工することで、接地電極5に上記折曲げ部を形成するというような接地電極5の形状変更や接地電極5の他端の位置調整を行うことができる。なお、例えば上述した溝部79により接地電極5の位置決めが行われるなどの、接地電極5の形状変更や接地電極5の他端の位置調整が不要な場合には、点火プラグの製造方法100(100A)は、接地電極5を加工する接地電極加工ステップS105を備えていなくてもよい。
【0041】
中心電極取付ステップS103では、絶縁体6に中心電極4を取り付ける。絶縁体6は、
図1に示されるように、アルミナなどのセラミックス材料を焼成することで、軸線方向に沿って延在する円筒状に形成されている。中心電極4は、金属材料により棒状に形成されている。より詳細には、中心電極4は、耐熱性を有するニッケル合金により丸棒状に形成されている。なお、中心電極4は、白金やイリジウム、ロジウム合金などの貴金属により構成されていてもよい。また、中心電極4は、胴や銅合金などの熱伝導性に優れる材料により構成されている芯材が内部に埋設されていてもよい。
【0042】
中心電極取付ステップS103では、中心電極4が絶縁体6の貫通孔61に先端側から嵌入することで、中心電極4が軸線方向に沿って延在するとともに、中心電極4の外周が絶縁体6により支持される。
【0043】
中心電極取付ステップS103は、絶縁体6に端子金具11を取り付けるステップを含んでいてもよい。
図2に示される実施形態では、端子金具11は、絶縁体6の貫通孔61に後端側から嵌入することで、端子金具11が絶縁体6に支持される。また、他の実施形態では、端子金具11は、先端側に形成された雄ネジ部に、絶縁体6に形成された不図示の雌ネジ部に螺合することにより、絶縁体6に支持される。
【0044】
絶縁体6は、
図2に示されるように、軸線方向に沿って形成された貫通孔61に中心電極4や端子金具11を収容し、絶縁体6の内周に設けられる中心電極4や端子金具11と、絶縁体6の外周に設けられる主体金具7と、の間を絶縁する。
図2に示される実施形態では、中心電極4は、不図示のセラミック抵抗やシール体を介して端子金具11に電気的に接続されている。なお、他の実施形態では、中心電極4は、後端部が端子金具11に当接することで、端子金具11に電気的に接続されていてもよい。
【0045】
絶縁体取付ステップS104では、主体金具7に絶縁体6を取り付ける。より詳細には、絶縁体取付ステップS104では、主体金具7の内周に後端側から絶縁体6を挿入した後に、主体金具7をカシメ加工することで主体金具7の内周に絶縁体6を支持させる。
【0046】
図2に示される実施形態では、絶縁体6は、軸線方向における中央に形成される中央胴部63と、中央胴部63よりも先端側に形成される先端側胴部62と、中央胴部63よりも後端側に形成される後端側胴部64と、先端側胴部62よりも先端側に形成される脚長部65と、を含んでいる。中央胴部63は、
図2に示されるように、先端側胴部62や後端側胴部64よりも外径が大きく形成されている。また、脚長部65は、先端側胴部62よりも外径が小さく、且つ先端側に向かうにつれて徐々に外径が小さくなっている。脚長部65は、主体金具7と非接触に設けられる部位である。
【0047】
主体金具7の内周に絶縁体6を挿入した際に、主体金具7は絶縁体6の後端側胴部64の先端側の一部から脚長部65までにわたって絶縁体6の外周を覆うようになっている。そして、絶縁体6の中央胴部63は、主体金具7の座部72、工具係合部74およびカシメ部75の径方向の内側に収納される。
【0048】
主体金具7のカシメ部75は、カシメ加工が行われる前は工具係合部74に接続される基端から軸線方向に沿って延在する薄肉の筒状に形成されている。そして、カシメ部75は、カシメ加工中に先端側に向かって押圧されることで、後端側の先端が径方向の内側に折り曲げられることにより、絶縁体6を抜け出し不能に支持する。
【0049】
図2に示される実施形態では、主体金具7は、軸線方向における座部72と工具係合部74との間に、座部72と工具係合部74とに接続される薄肉の変形部76をさらに有している。そして、点火プラグ1は、主体金具7の工具係合部74およびカシメ部75の内周面と、絶縁体6の後端側胴部64との間に設けられる隙間Cに介在する円環状の環状部材13、14と、環状部材13と環状部材14との間に充填されるタルクなどの粉末15と、をさらに備えている。変形部76は、上述したカシメ部75のカシメ加工中に押圧されることで圧縮変形する。また、上述したカシメ部75のカシメ加工中に、主体金具7内に収納された絶縁体6は、環状部材13、14および粉末15に先端側に向かって押圧される。上述したカシメ部75のカシメ加工後も絶縁体6が主体金具7に密着するので、主体金具7内の気密性が向上する。なお、他の実施形態では、主体金具7は、変形部76を有していなくてもよい。
【0050】
また、
図2、4に示される実施形態では、主体金具7は、固定ネジ部71の内周の先端側に形成される膨出部77であって、固定ネジ部71の内周の後端側よりも径方向内側に向かって膨出する膨出部77をさらに有している。膨出部77により、固定ネジ部71の先端側に位置する内周面722と後端側に位置する内周面723との間に環状の第1段差面724が形成されている。また、絶縁体6は、先端側胴部62のテーパ状の外周面621と中央胴部63の外周面631との間に環状の第2段差面622が形成されている。点火プラグ1は、第1段差面724と第2段差面622との間に挟まれて固定される環状の板パッキン16をさらに備えている。板パッキン16は、上述したカシメ部75のカシメ加工中に絶縁体6により先端側に向かって押圧される。上述したカシメ部75のカシメ加工後も板パッキン16が絶縁体6は主体金具7に密着するので、燃焼ガスが絶縁体6と主体金具7との間を通って板パッキン16よりも後端側に流出することを防止することができる。
【0051】
ガスケット取付ステップS106では、主体金具7にガスケット12を取り付ける。より詳細には、
図2に示されるように、主体金具7の座部72は、固定ネジ部71よりも径方向(軸線方向に直交する方向)の外側に延在している。そして、主体金具7のガスケット係合部73は、固定ネジ部71よりも径方向の内側に凹んで形成されている。ガスケット取付ステップS106では、上記ガスケット係合部73に、環状又は円弧状に形成されたガスケット12が嵌挿される。
【0052】
図5は、一実施形態にかかる点火プラグを備える内燃機関の一例として副室式エンジンを概略的に示す概略断面図である。点火プラグ1は、製造後にシリンダヘッド22やプラグホルダ23に固定された際に、シリンダヘッド22又はプラグホルダ23の何れか一方と、点火プラグ1と、の間がガスケット12によりシールされる。
【0053】
図5に示される実施形態では、内燃機関20(副室式エンジン)は、主燃焼室24と、主燃焼室24に複数の噴孔25を介して連通される副燃焼室26と、を備えている。より詳細には、
図5に示されるように、内燃機関20は、閉塞部221およびプラグホルダ支持部222を有するシリンダヘッド22と、プラグホルダ支持部222にシール部材27を介して支持されるプラグホルダ23と、プラグホルダ23に螺合により固定される上述した点火プラグ1と、プラグホルダ23に直列に連結してプラグホルダ23に固定される副室口金28と、を備えている。
【0054】
閉塞部221は、
図5に示されるように、点火プラグ1の軸線方向(図中上下方向)に直交する方向に沿って延在して、不図示の筒状のシリンダブロックの開口端を閉塞する。上述した主燃焼室24は、上述したシリンダブロックの内周面と、該シリンダブロックの内部に収納された不図示のピストンの端面と、上述した閉塞部221を有するシリンダヘッド22のピストンの端面と対向する面(図中下側の面)と、により画定される。プラグホルダ支持部222は、
図5に示されるように、閉塞部221に対して主燃焼室24とは反対側(図中上側)に位置するとともに、点火プラグ1の軸線方向に沿って延在する筒状に形成されている。そして、プラグホルダ支持部222は、内周面より凹んだ凹部にシール部材27が収納されている。
【0055】
プラグホルダ23は、
図5に示されるように、点火プラグ1の軸線方向に沿って延在する筒状に形成されており、プラグホルダ23の内部には点火プラグ1が収納されている。点火プラグ1は、
図5に示されるように、固定ネジ部71の外周に形成された雄ネジ部711が、プラグホルダ23のプラグホール231の内周に形成された雌ネジ部232に螺合することで、プラグホルダ23に固定される。この場合には、点火プラグ1の点火部2が副燃焼室26に面する。
【0056】
なお、内燃機関20は、副室式エンジンに限定されるわけではない。
図5を用いて説明するが、他の実施形態では、内燃機関20は、上述した筒状のシリンダブロックと、該シリンダブロックの開口端を閉塞する閉塞部221を有するシリンダヘッド22と、により囲まれる燃焼室24Aを備えていてもよい。また、点火プラグ1は、固定ネジ部71の雄ネジ部711がシリンダヘッド22のプラグホール223の内周に形成された不図示の雌ネジ部に螺合することで、シリンダヘッド22に固定されるようになっていてもよい。この場合には、点火プラグ1の点火部2が燃焼室24Aに面する。
【0057】
主体金具7の工具係合部74は、
図2、3に示されるように、点火プラグ1をシリンダヘッド22やプラグホルダ23に取り付けるための不図示の工具が係合する部位であり、軸線方向視において多角形状などの上記工具に対応する形状に形成されている。
【0058】
図6は、一実施形態にかかる点火プラグの遮熱層が設けられる部位やマスキングされる部位を説明するための図であって、点火プラグの点火部近傍の概略断面図である。
図7は、一実施形態にかかる点火プラグの遮熱層が設けられる部位やマスキングされる部位を説明するための図であって、
図6中矢印B方向から見た概略図である。
【0059】
遮熱層形成ステップS108(S108A)では、
図6、7に示されるように、主体金具7又は接地電極5の少なくとも一方の先端側に遮熱層8を設ける。遮熱層8は、主体金具7や接地電極5を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料により構成されている。より詳細には、遮熱層8は、安定化ジルコニア、ジルコン、コーディライト、フェライトなどのセラミックスにより構成されている。遮熱層8は、溶射加工やめっき加工、真空蒸着加工などの表面処理により、セラミックスなどの材料が主体金具7や接地電極5の表面に担持されることで形成されている。
【0060】
図1に示される実施形態では、遮熱層形成ステップS108(108A)は、主体金具7の軸線方向における接地電極5が取り付けられる側に位置する第1端面701に第1遮熱層81を形成する第1遮熱層形成ステップS181と、接地電極5の軸線方向における主体金具7から離れた側に位置する第2端面501に第2遮熱層82を形成する第2遮熱層形成ステップS182と、を含んでいる。つまり、遮熱層8は、
図6に示されるように、第1端面701に形成される第1遮熱層81と、第2端面501に形成される第2遮熱層82と、を含んでいる。第1端面701は、
図6に示されるように、固定ネジ部71の先端側に位置する端面712と、突出部78の先端側に位置する端面781と、を含んでいる。また、第2遮熱層形成ステップS182は、第1遮熱層形成ステップS181と同時に行うようにしてもよく、第1遮熱層形成ステップS181よりも前や後に行うようにしてもよい。
【0061】
また、第1遮熱層形成ステップS181では、上述した第1遮熱層81だけでなく、
図6に示されるように、突出部78の外側面782に遮熱層81Aを形成してもよいし、突出部78の外側面782や固定ネジ部71の端面712と、固定ネジ部71の雄ネジ部711と、の間に形成されるテーパ面713に遮熱層81Bを形成してもよい。また、第1遮熱層形成ステップS181では、第1遮熱層81、遮熱層81A及び遮熱層81Bの形成を同時に行うようにしてもよい。なお、他の幾つかの実施形態では、上述した遮熱層形成ステップS108(108A)は、後述する第3遮熱層形成ステップS183をさらに含んでいてもよい。
【0062】
上述したように、幾つかの実施形態にかかる点火プラグの製造方法100(100A)は、
図1に示されるように、上述した中心電極取付ステップS103と、上述した絶縁体取付ステップS104と、上述した接地電極取付ステップS102と、上述した遮熱層形成ステップS108(S108A)と、を備える。
【0063】
上記の方法によれば、点火プラグの製造方法100(100A)は、絶縁体6の内周に中心電極4を取り付ける中心電極取付ステップS103と、主体金具7の内周に絶縁体6を取り付ける絶縁体取付ステップS104と、主体金具7に接地電極5を取り付ける接地電極取付ステップS102と、主体金具7又は接地電極5の少なくとも一方の先端側に遮熱層8を設ける遮熱層形成ステップS108(S108A)と、を備えるので、中心電極4、絶縁体6、主体金具7及び接地電極5を含む点火プラグ1であって、主体金具7や接地電極5の先端側に熱伝導率の低い遮熱層8を有する点火プラグ1を製造することができる。
【0064】
また、主体金具7や接地電極5の先端側に熱伝導率の低い遮熱層8を有する点火プラグ1は、遮熱層8を有しない点火プラグに比べて、混合気の燃焼熱の主体金具7や接地電極5への入熱を抑制することができ、主体金具7や接地電極5の温度上昇を抑制することができる。ここで、中心電極4や接地電極5は、混合気の燃焼熱を受けて温度が上昇するが、熱伝導により主体金具7や絶縁体6などを介して、シリンダヘッド22やプラグホルダ23などへ放熱することで適切な温度が保たれるようになっている。このため、熱の伝達経路である接地電極5や主体金具7の温度上昇を抑制することで、接地電極5や中心電極4における熱を主体金具7などに効率的に伝達させることができる。したがって、上記の方法によれば、電極3の温度上昇を抑制することができ、点火プラグ1の長寿命化を実現可能な点火プラグ1を製造することができる。
【0065】
上述したように、幾つか実施形態では、
図1に示されるように、上述した点火プラグの製造方法100(100A)において、上述した遮熱層形成ステップS108(S108A)は、上述した絶縁体取付ステップS104よりも後に実行される。上記の方法によれば、遮熱層形成ステップS108(S108A)が絶縁体取付ステップS104よりも後に実行されるので、主体金具7に絶縁体6を取り付ける際に遮熱層8が損傷することを防止することができる。よって、上記の方法によれば、遮熱層8の損傷による遮熱層8の効果低減を抑制することができる。
【0066】
上述したように、幾つか実施形態では、
図1に示されるように、上述した点火プラグの製造方法100(100A)において、上述した接地電極取付ステップS102は、上述した絶縁体取付ステップS104よりも後、且つ上述した遮熱層形成ステップS108(S108A)よりも前に実行される。上記の方法によれば、接地電極取付ステップS102が遮熱層形成ステップS108(S108A)よりも前に実行されるので、主体金具7に接地電極5を取り付ける際に遮熱層8が損傷することを防止することができる。よって、上記の方法によれば、遮熱層8の損傷による遮熱層8の効果低減を抑制することができる。
【0067】
幾つか実施形態では、
図1に示されるように、上述した点火プラグの製造方法100(100A)は、上述した遮熱層形成ステップS108(S108A)よりも前に、接地電極5の中心電極4に対向する部位の表面及び中心電極4の表面をマスキング材9で覆うマスキングステップS107(S107A)をさらに備えている。また、
図1に示されるように、上述した点火プラグの製造方法100(100A)は、上述した遮熱層形成ステップS108(S108A)よりも後に、マスキング材9を接地電極5の中心電極4に対向する部位の表面及び中心電極4の表面から取り外すマスキング取外しステップS109(S109A)をさらに備えている。
【0068】
図6、7に示される実施形態では、接地電極5の中心電極4に対向する部位には、電極片51の中心電極4側に位置する端面511や外周面512、接地電極5の面502の電極片51の基端部に隣接する部分が含まれる。また、マスキング材9により覆われる中心電極4の表面には、先端部41の端面411や外周面412が含まれる。マスキングステップS107(S107A)では、
図6、7に示されるように、マスキング材9(9A)により電極片51の端面511や外周面512、接地電極5の面502の電極片51の基端部に隣接する部分が被覆される。そして、マスキング材9(9B)により中心電極4の先端部41の端面411や外周面412が被覆される。
【0069】
マスキング材9(9A、9B)は、被覆した部位に遮熱層8が形成されることを防止できるようになっていればよく、例えば
図7に示されるように、マスキング材9A、9Bが一体的に設けられており、第1遮熱層81が形成される部位よりも径方向内側の部分を覆うようになっていてもよい。マスキング取外しステップS109(S109A)では、マスキング材9(9A、9B)が接地電極5や中心電極4から取り外される。
【0070】
上記の方法によれば、マスキング材9(9A、9B)で覆うことで、接地電極5の中心電極4に対向する部位の表面及び中心電極4の表面に遮熱層8が形成されることを防止できる。このため、接地電極5の中心電極4に対向する部位の表面及び中心電極4の表面に遮熱層8が形成されることによる点火性能の低下を防止することができる。
【0071】
以下で説明する点火プラグの製造方法100(100B、100C)は、上述した点火プラグの製造方法100(100A)と同様のステップを備えているが、各ステップの順番が異なる。上述した点火プラグの製造方法100(100A)と同様のステップについては同一の符号を付して説明を省略し、特徴的なステップを中心に説明する。
【0072】
図8は、他の一実施形態にかかる点火プラグの製造方法のフロー図である。
図9Aは、他の一実施形態における主体金具の遮熱層が設けられる部位を説明するための図であって、主体金具の先端側の概略断面図である。
図9Bは、他の一実施形態における接地電極の遮熱層が設けられる部位を説明するための図であって、接地電極の概略断面図である。
図10は、他の一実施形態にかかる点火プラグを説明するための図であって、主体金具および接地電極の概略断面図である。
図11は、他の一実施形態にかかる点火プラグの製造方法のフロー図である。
図12は、他の一実施形態における主体金具や接地電極に遮熱層が設けられる前の状態を説明するための図であって、主体金具および接地電極の概略断面図である。
【0073】
幾つかの実施形態にかかる点火プラグの製造方法100(100B、100C)は、
図8、11に示されるように、準備ステップS101と、接地電極取付ステップS102と、中心電極取付ステップS103と、絶縁体取付ステップS104と、ガスケット取付ステップS106と、遮熱層形成ステップS108(S108B、S108C)と、を備えている。
【0074】
図8に示されるように、点火プラグの製造方法100(100B)における点火プラグ1の製造は、準備ステップS101、遮熱層形成ステップS108(S108B)、接地電極取付ステップS102、中心電極取付ステップS103、絶縁体取付ステップS104、ガスケット取付ステップS106の順に行われる。なお、点火プラグの製造方法100(100B)が接地電極加工ステップS105を備える場合には、接地電極加工ステップS105は、絶縁体取付ステップS104よりも後、且つガスケット取付ステップS106よりも前に行われる。遮熱層形成ステップS108(S108B)では、上述した遮熱層形成ステップS108(S108A)と同様に、主体金具7又は接地電極5の少なくとも一方の先端側に遮熱層8を設ける。
【0075】
また、
図11に示されるように、点火プラグの製造方法100(100C)における点火プラグ1の製造は、準備ステップS101、接地電極取付ステップS102、遮熱層形成ステップS108(S108C)、中心電極取付ステップS103、絶縁体取付ステップS104、ガスケット取付ステップS106の順に行われる。なお、点火プラグの製造方法100(100C)が接地電極加工ステップS105を備える場合には、接地電極加工ステップS105は、接地電極取付ステップS102よりも後、且つ遮熱層形成ステップS108(S108C)よりも前に行われる。遮熱層形成ステップS108(S108C)では、上述した遮熱層形成ステップS108(S108A)と同様に、主体金具7又は接地電極5の少なくとも一方の先端側に遮熱層8を設ける。
【0076】
上記の方法によれば、点火プラグの製造方法100(100B、100C)は、絶縁体6の内周に中心電極4を取り付ける中心電極取付ステップS103と、主体金具7の内周に絶縁体6を取り付ける絶縁体取付ステップS104と、主体金具7に接地電極5を取り付ける接地電極取付ステップS102と、主体金具7又は接地電極5の少なくとも一方の先端側に遮熱層8を設ける遮熱層形成ステップS108(S108C)と、を備えるので、中心電極4、絶縁体6、主体金具7及び接地電極5を含む点火プラグ1であって、主体金具7や接地電極5の先端側に熱伝導率の低い遮熱層8を有する点火プラグ1を製造することができる。
【0077】
幾つかの実施形態では、
図8、11に示されるように、上述した点火プラグの製造方法100(100B、100C)において、上述した遮熱層形成ステップS108(S108B、S108C)は、上述した絶縁体取付ステップS104よりも前に実行される。
【0078】
図8、11に示される実施形態では、遮熱層形成ステップS108(108B、108C)は、上述した第1遮熱層形成ステップS181と、上述した第2遮熱層形成ステップS182と、主体金具7の内周の第1端面701側の部分に第3遮熱層83を形成する第3遮熱層形成ステップS183と、を含んでいる。つまり、遮熱層8は、
図9Aに示されるように、上述した第1遮熱層81と、上述した第2遮熱層82と、膨出部77の内周面722に形成される第3遮熱層83と、を含んでいる。また、第3遮熱層形成ステップS183は、第1遮熱層形成ステップS181と同時に行うようにしてもよい。第2遮熱層形成ステップS182は、第1遮熱層形成ステップS181や第3遮熱層形成ステップS183よりも前や後に行うようにしてもよいし、第1遮熱層形成ステップS181や第3遮熱層形成ステップS183と同時に行うようにしてもよい。
【0079】
遮熱層形成ステップS108(108B、108C)の第1遮熱層形成ステップS181では、上述した第1遮熱層81、遮熱層81A及び遮熱層81Bだけでなく、
図9Aに示されるように、上述した溝部79を構成する面に遮熱層81Cを形成してもよい。なお、主体金具7と接地電極5との間の熱伝達率の低下を避けるために、第1遮熱層81などの遮熱層の形成時に溝部79をマスキング材9で被覆して、溝部79を構成する面に遮熱層81Cを形成しないようにしてもよい。また、遮熱層81Cの形成は、第1遮熱層81、遮熱層81A及び遮熱層81Bの形成と同時に行うようにしてもよい。
【0080】
遮熱層形成ステップS108(108B、108C)の第2遮熱層形成ステップS182では、上述した第2遮熱層82だけでなく、
図9Bに示されるように、接地電極5の面502に遮熱層82Aを形成してもよいし、接地電極5の側面503~506(
図3参照)に遮熱層82Bを形成してもよい。なお、主体金具7と接地電極5との間の熱伝達率の低下を避けるために、第2遮熱層82などの遮熱層8の形成時に、接地電極5の面502や側面503、505、506の溝部79に接触する部位をマスキング材9で被覆して、溝部79に接触する部位に遮熱層82A、82Bを形成しないようにしてもよい。また、遮熱層82A、82Bの形成は、第2遮熱層82の形成と同時に行うようにしてもよい。
【0081】
遮熱層形成ステップS108(108B、108C)の第3遮熱層形成ステップS183では、上述した第3遮熱層83だけでなく、
図9Aに示されるように、突出部78の内側面783に遮熱層83Aを形成してもよい。
【0082】
上記の方法によれば、遮熱層形成ステップS108(108B、108C)が絶縁体取付ステップS104よりも前に実行される。すなわち、絶縁体6や中心電極4を取り付ける前の主体金具7や接地電極5に対して、遮熱層8を形成するので、遮熱層8の形成が容易である。また、絶縁体6や中心電極4を取り付ける前の主体金具7や接地電極5は、絶縁体6や中心電極4を取り付けた後の主体金具7や接地電極5では遮熱層8の形成に手間が掛かる部分にも、容易に遮熱層8を形成することができる。ここで、絶縁体6や中心電極4を取り付けた後の主体金具7や接地電極5では遮熱層8の形成に手間が掛かる部分には、上述した遮熱層82A、83Aや上述した第3遮熱層83が含まれる。
【0083】
幾つかの実施形態では、
図8に示されるように、上述した点火プラグの製造方法100(100B)において、上述した遮熱層形成ステップS108(108B)は、上述した接地電極取付ステップS102よりも前に実行される。つまり、第1遮熱層形成ステップS181や第3遮熱層形成ステップS183では、
図9Aに示されるような、接地電極5が取り付けられる前の主体金具7に対して遮熱層8(第1遮熱層81、第3遮熱層83)の形成が行われる。また、第2遮熱層形成ステップS182では、
図9Bに示されるような、主体金具7に取り付けられる前の接地電極5に対して遮熱層8(第2遮熱層82)の形成が行われる。上記の方法によれば、遮熱層形成ステップS108(108B)は、接地電極取付ステップS102よりも前に実行される。すなわち、主体金具7に接地電極5を取り付ける前の主体金具7や接地電極5に対して遮熱層8を形成するので、遮熱層8の形成が容易である。
【0084】
幾つかの実施形態では、
図11に示されるように、上述した点火プラグの製造方法100(100C)において、上述した遮熱層形成ステップS108(108C)は、上述した接地電極取付ステップS102よりも後に実行される。つまり、第1遮熱層形成ステップS181や第3遮熱層形成ステップS183では、
図11に示されるような、接地電極5が取り付けられた後の主体金具7に対して遮熱層8(第1遮熱層81、第3遮熱層83)の形成が行われる。また、第2遮熱層形成ステップS182では、
図11に示されるような、主体金具7に取り付けられた後の接地電極5に対して遮熱層8(第2遮熱層82)の形成が行われる。ここで、主体金具7に接地電極5を取り付ける際には、例えば溶接による熱などで遮熱層8が損傷する虞がある。上記の方法によれば、遮熱層形成ステップS108(108C)は、接地電極取付ステップS102よりも後に実行されるので、主体金具7に接地電極5を取り付ける際に遮熱層8が損傷することを防止することができる。よって、上記の方法によれば、遮熱層8の損傷による遮熱層8の効果低減を抑制することができる。
【0085】
幾つかの実施形態では、
図8、11に示されるように、上述した点火プラグの製造方法100(100B、100C)は、上述した遮熱層形成ステップS108(S108B、S108C)よりも前に、接地電極5の中心電極4に対向する部位の表面をマスキング材9(9A)で覆うマスキングステップS107(S107B、S107C)をさらに備えている。また、
図8、11に示されるように、上述した点火プラグの製造方法100(100B、100C)は、上述した遮熱層形成ステップS108(S108B、S108C)よりも後に、マスキング材9を接地電極5の中心電極4に対向する部位の表面から取り外すマスキング取外しステップS109(S109B、S109B)をさらに備えている。
【0086】
図9B、10、12に示される実施形態では、接地電極5の中心電極4に対向する部位には、電極片51の中心電極4側に位置する端面511や外周面512、接地電極5の面502の電極片51の基端部に隣接する部分が含まれる。マスキングステップS107(S107B、S107C)では、
図9B、10に示されるように、マスキング材9(9A)により電極片51の端面511や外周面512、接地電極5の面502の電極片51の基端部に隣接する部分が被覆される。そして、マスキング取外しステップS109(S109B、S109B)では、マスキング材9(9A)が接地電極5から取り外される。
【0087】
上記の方法によれば、マスキング材9(9A)で覆うことで、接地電極5の中心電極4に対向する部位の表面に遮熱層8が形成されることを防止できる。このため、接地電極5の中心電極4に対向する部位の表面に遮熱層8が形成されることによる点火性能の低下を防止することができる。また、絶縁体6や中心電極4を取り付ける前の主体金具7や接地電極5に対して、遮熱層8を形成するので、中心電極4をマスキング材9(9B)で覆う作業を行う必要がなく、その分作業性を向上させることができる。
【0088】
上述したように、幾つかの実施形態では、上述した点火プラグの製造方法100(100A~100C)において、上述した遮熱層形成ステップS108(108A~108C)は、主体金具7の軸線方向における接地電極5が取り付けられる側の第1端面701に第1遮熱層81を形成する第1遮熱層形成ステップS181を含んでいる。上記の方法によれば、主体金具7の軸線方向における接地電極5が取り付けられる側の第1端面701第1遮熱層81が形成されるので、第1端面701から主体金具7への混合気の燃焼熱の入熱を抑制することができ、主体金具7の温度上昇を抑制することができる。
【0089】
上述したように、幾つかの実施形態では、上述した点火プラグの製造方法100(100A~100C)において、上述した遮熱層形成ステップS108(108A~108C)は、接地電極5の軸線方向における主体金具7から離れた側に位置する第2端面501に第2遮熱層82を形成する第2遮熱層形成ステップS182をさらに含んでいる。上記の方法によれば、接地電極5の軸線方向における主体金具7から離れた側に位置する第2端面501に第2遮熱層82が形成されるので、第2端面501から接地電極5への混合気の燃焼熱の入熱を抑制することができ、接地電極5の温度上昇を抑制することができる。
【0090】
また、幾つかの実施形態では、上述した点火プラグの製造方法100(100A~100C)において、上述した遮熱層形成ステップS108(108A~108C)は、主体金具7の内周の第1端面701側の部分に第3遮熱層83を形成する第3遮熱層形成ステップS183をさらに含んでいる。主体金具7の内周の第1端面701側の部分には、上述した内周面722や上述した内側面783が含まれる。
【0091】
上記の方法によれば、主体金具7の内周の第1端面701側の部分に第3遮熱層83が形成されるので、主体金具7の内周の第1端面701側の部分から主体金具7への混合気の燃焼熱の入熱を抑制することができ、主体金具7の温度上昇を抑制することができる。特に、上述した遮熱層形成ステップS108(108B、108C)が、上述した絶縁体取付ステップS104よりも前に実行される場合には、中心電極4や絶縁体6が主体金具7に取り付けられる前に第3遮熱層83を形成するので、中心電極4や絶縁体6が主体金具7に取り付けられた後に第3遮熱層83を形成するのに比べて、第3遮熱層83の形成作業が容易である。
【0092】
幾つかの実施形態では、マスキングステップS107(S107A~S107C)において、上述した接地電極5の中心電極4に対向する部位の表面や中心電極4の表面だけでなく、
図6、9A、10に示されるような、マスキング材9(9C)により固定ネジ部71の雄ネジ部711を被覆してもよい。そして、マスキング取外しステップS109(S109A~S109C)において、雄ネジ部711を被覆するマスキング材9(9C)が主体金具7から取り外される。上記の方法によれば、固定ネジ部71の雄ネジ部711に遮熱層8が形成されることを防止できる。このため、雄ネジ部711に遮熱層8が形成されることによる、固定ネジ部71からシリンダヘッド22やプラグホルダ23などへの放熱性の低下を防止することができる。
【0093】
幾つかの実施形態では、点火プラグ1は、
図2、3に示されるような、発電用の内燃機関20に装着される点火プラグ1Aである。発電用の内燃機関20に装着される点火プラグ1Aは、例えば自動車用の内燃機関に装着される点火プラグに比べて、長期間にわたり高温にさらされるので、電極3の温度が高くなる傾向がある。上述した点火プラグの製造方法100(100A~100C)によれば、点火プラグ1が発電用の内燃機関20に装着される点火プラグ1Aであっても、混合気の燃焼熱の主体金具7や接地電極5への入熱を抑制することができ、主体金具7や接地電極5の温度上昇を抑制することができる。したがって、上記の方法によれば、点火プラグ1が発電用の内燃機関20に装着される点火プラグ1Aであっても、電極3の温度上昇を抑制することができ、点火プラグ1Aの長寿命化を実現可能である。なお、他の幾つかの実施形態では、上述した点火プラグ1には、発電用の内燃機関20以外の内燃機関に装着される点火プラグが含まれる。
【0094】
幾つかの実施形態にかかる点火プラグ1は、
図2、6に示されるように、軸線方向に沿って延在する上述した筒状の絶縁体6と、絶縁体6の内周に支持される上述した中心電極4と、絶縁体6の外周に設けられる上述した筒状の主体金具7と、主体金具7に取り付けられる上述した接地電極5と、を備えている。そして、主体金具7は、軸線方向における接地電極5が取り付けられる側に位置する第1端面701に形成される上述した第1遮熱層81を有している。
【0095】
主体金具7の軸線方向における接地電極5が取り付けられる側に位置する第1端面701に第1遮熱層81を有する点火プラグ1は、第1端面701に第1遮熱層81を有しない点火プラグに比べて、第1端面701から主体金具7への混合気の燃焼熱の入熱を抑制することができ、主体金具7の温度上昇を抑制することができる。ここで、中心電極4や接地電極5は、混合気の燃焼熱を受けて温度が上昇するが、熱伝導により主体金具7や絶縁体6などを介して、シリンダヘッド22やプラグホルダ23などへ放熱することで適切な温度が保たれるようになっている。このため、熱の伝達経路である主体金具7の温度上昇を抑制することで、接地電極5や中心電極4における熱を主体金具7などに効率的に伝達させることができる。したがって、上記の構成によれば、電極3の温度上昇を抑制することができ、点火プラグ1の長寿命化を実現可能である。
【0096】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。例えば上述したガスケット12を有しない点火プラグを製造する場合には、上述した点火プラグの製造方法100(100A~100C)は、上述したガスケット取付ステップS106を備えていなくてもよい。また、上述した点火プラグの製造方法100(100A~100C)における各ステップの順番は、上記した順番に限定されるわけではなく、適宜変更が可能である。例えば、上述した点火プラグの製造方法100(100A~100C)において、上述した中心電極取付ステップS103を接地電極取付ステップS102よりも前に行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1,1A 点火プラグ
2 点火部
3 電極
4 中心電極
5 接地電極
6 絶縁体
7 主体金具
8,81A~81C,82A,82B,83A 遮熱層
9,9A,9B マスキング材
11 端子金具
12 ガスケット
13,14 環状部材
15 粉末
16 板パッキン
20 内燃機関
21 副室式エンジン
22 シリンダヘッド
23 プラグホルダ
41 先端部
51 電極片
61 貫通孔
62 先端側胴部
63 中央胴部
64 後端側胴部
65 脚長部
71 固定ネジ部
72 座部
73 ガスケット係合部
74 工具係合部
75 カシメ部
76 変形部
77 膨出部
78 突出部
79 溝部
81 第1遮熱層
82 第2遮熱層
83 第3遮熱層
100 点火プラグの製造方法
C 隙間
G 火花放電ギャップ
LA 軸線
S101 準備ステップ
S102 接地電極取付ステップ
S103 中心電極取付ステップ
S104 絶縁体取付ステップ
S105 接地電極加工ステップ
S106 ガスケット取付ステップ
S107,S107A~S107C マスキングステップ
S108,S108A~S108C 遮熱層形成ステップ
S109,S109A~S109C マスキング取外しステップ
S181 第1遮熱層形成ステップ
S182 第2遮熱層形成ステップ
S183 第3遮熱層形成ステップ