(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】縫い目検査装置
(51)【国際特許分類】
D05B 51/00 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
D05B51/00
(21)【出願番号】P 2018097460
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 直樹
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-048710(JP,A)
【文献】特開平11-057265(JP,A)
【文献】特開2005-246060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00-97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転により往復移動するミシン針に掛けられる上糸の張力を検出する張力センサと、
前記張力センサの検出値に基づいて、前記ミシン針によって縫製対象物に形成された縫い目の異常を検出する処理装置と、
前記モータの回転角度を検出する角度センサと、を備え
、
前記処理装置は、
前記張力センサの検出値を解析して、前記検出値の特徴量を示す検出特徴量を算出する検出特徴量解析部と、
前記張力の参照特徴量を記憶する参照特徴量記憶部と、
前記検出特徴量と前記参照特徴量とを照合して、前記異常を判定する判定部と、
を有し、
前記張力センサは、前記モータの回転において規定周期で前記検出値を出力し、
前記判定部は、前記張力センサの検出値及び前記角度センサの検出値に基づいて、前記異常を判定し、
前記検出特徴量は、前記モータの回転における前記検出値の累積値を示す検出累積曲線を含み、
前記参照特徴量は、前記縫い目が正常であるときの前記張力の累積値を示す参照累積曲線を含む、
縫い目検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記モータの回転角度が特定角度のときに導出された前記検出特徴量と前記参照特徴量とを照合して、前記異常を判定する、
請求項
1に記載の縫い目検査装置。
【請求項3】
モータの回転により往復移動するミシン針に掛けられる上糸の張力を検出する張力センサと、
前記張力センサの検出値に基づいて、前記ミシン針によって縫製対象物に形成された縫い目の異常を検出する処理装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記張力センサの検出値を解析して、前記検出値の特徴量を示す検出特徴量を算出する検出特徴量解析部と、
前記張力の参照特徴量を記憶する参照特徴量記憶部と、
前記検出特徴量と前記参照特徴量とを照合して、前記異常を判定する判定部と、を有し、
前記張力センサは、前記モータの回転において規定周期で前記検出値を出力し、
前記検出特徴量は、前記モータの回転における前記検出値をフーリエ変換することにより算出される検出周波数スペクトルを含み、
前記参照特徴量は、前記縫い目が正常であるときの前記張力をフーリエ変換することにより算出される参照周波数スペクトルを含む、
縫い目検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫い目検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縫製工場においては、ミシンを使用して衣類が生産される。ミシンで形成された縫い目を検査する縫い目検査装置の一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縫い目の検査が煩雑である場合、衣類の生産性が低下する可能性がある。衣類の生産性の低下を抑制するために、縫い目の検査を効率良く実施できる技術が要望される。
【0005】
本発明の態様は、縫い目の検査を効率良く実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、ミシン針に掛けられる上糸の張力を検出する張力センサと、前記張力センサの検出値に基づいて、前記ミシン針によって縫製対象物に形成された縫い目の異常を検出する処理装置と、を備える縫い目検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、縫い目の検査を効率良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るミシンを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る針棒及び天秤のモーションダイアグラムを示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る縫い目検査装置を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、正常な縫い目を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、異常な縫い目を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、異常な縫い目を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、張力センサの検出値を示す図である。
【
図8】
図8は、張力センサの検出値を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る縫製方法を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施形態に係る縫製方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[第1実施形態]
<ミシン>
本実施形態に係るミシン1について説明する。本実施形態においては、ミシン1に規定されたローカル座標系に基づいて各部の位置関係について説明する。ローカル座標系は、XYZ直交座標系により規定される。所定面内のX軸と平行な方向をX軸方向とする。X軸と直交する所定面内のY軸と平行な方向をY軸方向とする。所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸を中心とする回転方向をθX方向とする。
【0011】
図1は、本実施形態に係るミシン1を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、ミシン1は、ミシンヘッド2と、針棒4と、天秤5と、糸調子器6と、針板7と、押え部材8と、釜9と、モータ10と、縫い目検査装置20とを備える。
【0012】
針棒4は、ミシン針3を保持してZ軸方向に往復移動する。針棒4は、ミシン針3とZ軸とが平行となるようにミシン針3を保持する。針棒4は、ミシンヘッド2に支持される。針棒4は、針板7の上方に配置され、縫製対象物Sの表面と対向可能である。ミシン針3に上糸UTが掛けられる。ミシン針3は、上糸UTが通過する糸通し孔を有する。ミシン針3は、糸通し孔の内面で上糸UTを保持する。針棒4がZ軸方向に往復移動することにより、ミシン針3は、上糸UTを保持した状態でZ軸方向に往復移動する。
【0013】
天秤5は、ミシン針3に上糸UTを供給する。天秤5は、ミシンヘッド2に支持される。天秤5は、上糸UTが通過する天秤孔を有する。天秤5は、天秤孔の内面で上糸UTを保持する。天秤5は、上糸UTを保持した状態でZ軸方向に往復移動する。天秤5は、針棒4に連動して往復移動する。天秤5は、Z軸方向に往復移動することによって、上糸UTを繰り出したり引き上げたりする。
【0014】
糸調子器6は、上糸UTに張力を付与する。糸供給源から糸調子器6に上糸UTが供給される。上糸UTが通過する経路において、天秤5は、ミシン針3と糸調子器6との間に配置される。糸調子器6は、天秤5を介してミシン針3に供給される上糸UTの張力を調整する。
【0015】
針板7は、縫製対象物Sを支持する。針棒4に保持されているミシン針3と針板7とは対向する。針板7は、ミシン針3が通過可能な針孔を有する。針板7に支持される縫製対象物Sを貫通したミシン針3は、針孔を通過する。
【0016】
押え部材8は、縫製対象物Sを上方から押える。押え部材8は、ミシンヘッド2に支持される。押え部材8は、針板7の上方に配置され、針板7との間で縫製対象物Sを保持する。
【0017】
釜9は、ボビンケースに収容されたボビンを保持する。釜9は、針板7の下方に配置される。釜9は、θX方向に回転する。釜9は、針棒4に連動して回転する。釜9は、下糸LTを供給する。釜9は、針板7に支持されている縫製対象物Sを貫通し、針板7の針孔を通過したミシン針3から上糸UTをすくい取る。
【0018】
モータ10は、動力を発生する。モータ10は、ミシンヘッド2に支持されるステータと、ステータに回転可能に支持されるロータとを有する。ロータが回転することにより、モータ10は動力を発生する。モータ10で発生した動力は、動力伝達機構(不図示)を介して、針棒4、天秤5、及び釜9のそれぞれに伝達される。針棒4と天秤5と釜9とは連動する。モータ10で発生した動力が針棒4に伝達されることにより、針棒4及び針棒4に保持されているミシン針3は、Z軸方向に往復移動する。モータ10で発生した動力が天秤5に伝達されることにより、天秤5は、針棒4に連動してZ軸方向に往復移動する。モータ10で発生した動力が釜9に伝達されることにより、釜9は、針棒4及び天秤5に連動してθX方向に回転する。ミシン1は、針棒4に保持されているミシン針3と釜9との協働により縫製対象物Sを縫製する。
【0019】
以下の説明においては、ロータが回転することを、モータ10が回転する、という。また、ロータの回転角度を、モータ10の回転角度、という。ミシン針3は、モータ10の回転により往復移動する。天秤5は、モータ10の回転によりミシン針3に連動して往復移動する。釜9は、モータ10の回転によりミシン針3及び天秤5に連動して回転する。
【0020】
糸供給源からの上糸UTは、糸調子器6に掛けられた後、天秤5を経由して、ミシン針3に掛けられる。モータ10が回転し、針棒4が下降すると、針棒4に保持されているミシン針3が縫製対象物Sを貫通し、針板7に設けられている針孔を通過する。ミシン針3が針板7の針孔を通過すると、ミシン針3に掛けられている上糸UTに釜9から供給された下糸LTが掛けられる。上糸UTに下糸LTが掛けられた状態で、ミシン針3が上昇して、縫製対象物Sから退去する。ミシン針3が縫製対象物Sを貫通しているとき、ミシン1は、縫製対象物Sを停止させる。ミシン針3が縫製対象物Sから退去したとき、ミシン1は、縫製対象物Sを+Y方向に移動させる。ミシン1は、縫製対象物Sの+Y方向の移動と停止とを繰り返しながらミシン針3を往復移動させて縫製対象物Sに縫い目SEを形成する。縫製対象物Sに形成された縫い目SEは、Y軸方向に延在する。
【0021】
<モーションダイアグラム>
図2は、本実施形態に係る針棒4及び天秤5のモーションダイアグラムを示す図である。
図2において、横軸は、針棒上死点を基準としたときのモータ10の回転角度[°]を示す。縦軸は、針棒ストローク及び天秤ストロークを示す。
図2に示すモーションダイアグラムは、針棒運動曲線及び天秤糸供給曲線を示す。
【0022】
針棒上死点とは、Z軸方向における針棒4の可動範囲において最も+Z側の針棒4の位置をいう。針棒下死点とは、Z軸方向における針棒4の可動範囲において最も-Z側の針棒4の位置をいう。天秤上死点とは、Z軸方向における天秤5の可動範囲において最も+Z側の天秤5の位置をいう。天秤下死点とは、Z軸方向における天秤5の可動範囲において最も-Z側の天秤5の位置をいう。
【0023】
針棒ストロークとは、Z軸方向における針棒4の位置をいう。天秤ストロークとは、Z軸方向における天秤5の位置をいう。天秤糸供給量とは、天秤5がミシン針3に供給する上糸UTの量をいう。
【0024】
針棒4及び天秤5のそれぞれは、モータ10の回転に連動してZ軸方向に往復移動する。モータ10の回転角度が0[°]のとき、針棒4は針棒上死点に配置される。モータ10の回転角度が約70[°]のとき、天秤5は天秤上死点に配置される。モータ10の回転角度が約180[°]のとき、針棒4は針棒下死点に配置される。モータ10の回転角度が約320[°]のとき、天秤5は天秤下死点に配置される。Z軸方向における針棒4の位置と天秤5の位置との差に基づいて、上糸UTの張力が変化する。
【0025】
<縫い目検査装置>
縫い目検査装置20は、縫製対象物Sに形成された縫い目SEを検査する。縫い目検査装置20は、縫製対象物Sが針板7に支持されている状態で、縫製対象物Sに形成された縫い目SEを検査する。縫い目検査装置20は、ミシン1による縫い目SEの形成と並行して、縫い目SEを検査する。縫い目検査装置20は、縫製対象物Sに形成された縫い目SEの異常の有無を検出する。また、縫い目検査装置20は、縫い目SEの異常のパターンを検出する。
【0026】
図3は、本実施形態に係る縫い目検査装置20を示す機能ブロック図である。
図1及び
図3に示すように、縫い目検査装置20は、ミシン針3に掛けられる上糸UTの張力を検出する張力センサ21と、モータ10の回転角度を検出する角度センサ22と、張力センサ21の検出値に基づいて、ミシン針3によって縫製対象物Sに形成された縫い目SEの異常を検出する処理装置30と、処理装置30の検出結果を出力する出力装置23と、作業者に操作される入力装置24とを備える。
【0027】
処理装置30は、コンピュータシステムを含む。処理装置30は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む演算装置30Aと、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む記憶装置30Bと、信号及びデータを入出力可能な入出力回路を含む入出力インターフェース30Cとを有する。
【0028】
張力センサ21は、ミシン針3に供給される上糸UTの張力を検出する。張力センサ21は、例えば歪ゲージや、圧電素子を含む。
図1に示すように、張力センサ21は、上糸UTが通過する経路において、天秤5とミシン針3との間に配置される。張力センサ21は、天秤5とミシン針3との間において上糸UTの張力を検出する。張力センサ21は、入出力インターフェース30Cに接続される。張力センサ21は、上糸UTの張力の検出値を処理装置30に出力する。
【0029】
角度センサ22は、モータ10の回転角度を検出する。角度センサ22は、例えばエンコーダを含む。角度センサ22は、針棒4が針棒上死点に配置されているときのモータ10の回転角度を0[°]として、モータ10の回転角度を検出する。角度センサ22は、入出力インターフェース30Cに接続される。角度センサ22は、モータ10の回転角度の検出値を処理装置30に出力する。
【0030】
出力装置23は、処理装置30の検出結果を出力する。出力装置23は、入出力インターフェース30Cに接続される。出力装置23として、表示装置及び印刷装置の少なくとも一つが例示される。表示装置は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイを含む。
【0031】
入力装置24は、作業者に操作されることにより入力データを生成する。入力装置24は、入出力インターフェース30Cに接続される。入力装置24は、生成した入力データを処理装置30に出力する。入力装置24として、操作ボタン、タッチパネル、及びコンピュータ用キーボードの少なくとも一つが例示される。
【0032】
演算装置30Aは、検出値取得部31と、検出特徴量解析部32と、判定部33と、出力部34と、参照特徴量生成部35とを有する。記憶装置30Bは、参照特徴量記憶部36を有する。
【0033】
検出値取得部31は、張力センサ21の検出値を取得する。また、検出値取得部31は、角度センサ22の検出値を取得する。
【0034】
検出特徴量解析部32は、検出値取得部31により取得された張力センサ21の検出値を解析して、張力センサ21の検出値の特徴量を示す検出値特徴量を算出する。検出特徴量は、上糸UTの張力の実際の特徴量を示す。
【0035】
判定部33は、検出特徴量解析部32の解析結果に基づいて、縫い目SEの異常の有無を判定する。また、判定部33は、検出特徴量解析部32の解析結果に基づいて、縫い目SEの異常のパターンを判定する。
【0036】
出力部34は、検出値取得部31により取得された検出値、検出特徴量解析部32の解析結果、及び判定部33の判定結果の少なくとも一つを含む出力データを出力装置23に出力する。出力装置23は、出力部34からの出力データを出力する。
【0037】
参照特徴量生成部35は、正常な縫い目SEが形成されたときの張力センサ21の検出値に基づいて、正常な縫い目SEが形成されたときの上糸UTの張力の特徴量を示す参照特徴量を算出する。すなわち、本実施形態において、参照特徴量は、正常な縫い目SEが形成されたときの上糸UTの張力の特徴量を示す正常特徴量を含む。
【0038】
参照特徴量記憶部36は、参照特徴量生成部35により生成された張力の参照特徴量を記憶する。
【0039】
判定部33は、検出特徴量解析部32において算出された検出特徴量と、参照特徴量記憶部36に記憶されている参照特徴量とを照合して、縫い目SEの異常を判定する。縫い目SEの異常の判定は、縫い目SEの異常の有無の判定及び縫い目SEの異常のパターンの判定を含む。
【0040】
<縫い目の異常>
図4は、正常な縫い目SEを模式的に示す図である。
図5及び
図6は、異常な縫い目SEを模式的に示す図である。
【0041】
本実施形態において、ミシン1は、本縫いを実施する本縫いミシンである。
図4に示すように、本縫いにおける正常な縫い目SEは、Y軸方向に直線状に形成される。正常な1つの縫い目SEは、正常長さPnで形成される。複数の縫い目SEのそれぞれが、正常長さPnで形成される。
【0042】
縫い目SEの異常のパターンは、複数存在する。縫い目SEの異常のパターンとして、縫い目SEの少なくとも一つの長さが長くなる第1パターンの異常、縫い目SEの少なくとも一部が無くなる第2パターンの異常、及び縫製対象物Sにおいて上糸UT及び下糸LTの少なくとも一方が弛む第3パターンの異常が例示される。第1パターンの異常は「目飛び」と呼ばれる。第2パターンの異常は「糸切れ」と呼ばれる。第3パターンの異常は「ちょうちん」と呼ばれる。
【0043】
図5は、第1パターンの異常である「目飛び」の一例を示す図である。「目飛び」とは、一定の正常長さPnで縫い目SEが形成されずに、正常長さPnよりも長い異常長さPuで縫い目SEが形成される現象をいう。「目飛び」のパターンとして、
図5(A)に示すような異常長さPu1の縫い目SEが単発的に発生する「単発目飛び」、
図5(B)に示すような異常長さPu1の縫い目SEが連続的に発生する「連続目飛び」、及び
図5(C)に示すような異常長さPu1よりも長い異常長さPu2の縫い目SEが発生する「長尺目飛び」が例示される。
【0044】
図6は、第3パターンの異常である「ちょうちん」の一例を示す図である。「ちょうちん」とは、上糸UTと下糸LTとが掛かっているものの、縫製対象物Sの表面において上糸UTが弛んだり縫製対象物Sの裏面において下糸LTが弛んだりする現象をいう。
図6は、縫製対象物Sの裏面において下糸LTが弛んでいる例を示す。
【0045】
<縫い目の異常検出の第1の方法>
縫い目SEの異常検出の第1の方法について説明する。第1の方法において、判定部33は、張力センサ21の検出値及び角度センサ22の検出値に基づいて、縫い目SEの異常を判定する。
【0046】
張力センサ21は、モータ10の回転において、規定周期で(例えば0.1[ms]毎に)上糸UTの張力の検出値を出力する。すなわち、張力センサ21は、モータ10が複数の回転角度のそれぞれに回転したときに、複数の回転角度のそれぞれにおいて、検出値を出力する。
【0047】
参照特徴量は、
図4に示したような正常な縫い目SEが形成されたときにおいて、モータ10が複数の回転角度のそれぞれに回転したときに、複数の回転角度のそれぞれにおいて張力センサ21から出力された張力の検出値を含む。参照特徴量は、予備実験(シミュレーション実験を含む)などに基づいて導出され、参照特徴量記憶部36に予め記憶される。
【0048】
検出特徴量は、実際に縫い目SEが形成されたときにおいて、モータ10が複数の回転角度のそれぞれに回転したときに、複数の回転角度のそれぞれにおいて張力センサ21から出力された実際の張力の検出値を含む。
【0049】
本実施形態において、判定部33は、モータ10の回転角度が特定角度のときに導出された検出特徴量と参照特徴量とを照合して、縫い目SEの異常を判定する。
【0050】
「目飛び」が発生したか否かを判定する場合、判定部33は、モータ10の回転角度が270[°]以上360[°]以下の特定角度のときに取得された張力センサ21の検出値から導出される検出特徴量と参照特徴量記憶部36に記憶されている参照特徴量とを照合して、「目飛び」が発生しているか否かを判定する。
【0051】
図7は、張力センサ21の検出値を示す図である。
図7において、横軸はモータ10の回転角度を示し、縦軸は張力センサ21の検出値を示す。
図7において、範囲Sa及び範囲Snは、モータ10の回転角度が特定角度である270[°]以上360[°]以下の範囲を示す。判定部33は、モータ10の回転角度が270[°]以上360[°]以下のときに導出された検出特徴量と参照特徴量とを照合して、「目飛び」が発生したか否かを判定する。
【0052】
正常な縫い目SEが形成された場合、張力センサ21は、範囲Snに示すような検出値を出力する。「目飛び」が発生した場合、張力センサ21は、範囲Saに示すような検出値を出力する。
図7に示すように、範囲Snにおける張力センサ21の検出値と範囲Saにおける張力センサ21の検出値とは異なる。モータ10の回転角度が270[°]以上360[°]以下の範囲において、「目飛び」が発生したときの上糸UTの張力は、正常な縫い目SEが形成されるときの上糸UTの張力によりも小さくなる。
【0053】
本実施形態においては、範囲Snに示すような検出値が参照特徴量として参照特徴量記憶部36に記憶される。検出特徴量解析部32は、検出値取得部31により取得された張力センサ21の検出値からモータ10の回転角度が270[°]以上360[°]以下の範囲における検出値を抽出して、「目飛び」を判定するための検出特徴量を導出する。判定部33は、検出特徴量解析部32により算出された検出特徴量と参照特徴量記憶部36に記憶されている参照特徴量とを照合して、「目飛び」が発生しているか否かを判定する。検出特徴量が範囲Saに示すような検出値を含む場合、判定部33は、検出特徴量と参照特徴量との照合結果に基づいて、「目飛び」が発生していると判定することができる。検出特徴量が範囲Snに示すような検出値を含む場合、判定部33は、検出特徴量と参照特徴量との照合結果に基づいて、「目飛び」が発生していないと判定することができる。
【0054】
「糸切れ」が発生したか否かを判定する場合、判定部33は、モータ10の回転角度が0[°]以上90[°]以下の特定角度のときに取得された張力センサ21の検出値から導出される検出特徴量と参照特徴量記憶部36に記憶されている参照特徴量とを照合して、「糸切れ」が発生しているか否かを判定する。
【0055】
図8は、張力センサ21の検出値を示す図である。
図8において、横軸はモータ10の回転角度を示し、縦軸は張力センサ21の検出値を示す。
図8において、範囲Sa及び範囲Snは、モータ10の回転角度が特定角度である0[°]以上90[°]以下の範囲を示す。判定部33は、モータ10の回転角度が0[°]以上90[°]以下のときに導出された検出特徴量と参照特徴量とを照合して、「糸切れ」が発生したか否かを判定する。
【0056】
正常な縫い目SEが形成された場合、張力センサ21は、範囲Snに示すような検出値を出力する。「糸切れ」が発生した場合、張力センサ21は、範囲Saに示すような検出値を出力する。
図8に示すように、範囲Snにおける張力センサ21の検出値と範囲Saにおける張力センサ21の検出値とは異なる。モータ10の回転角度が0[°]以上90[°]以下の範囲において、「糸切れ」が発生したときの上糸UTの張力は、正常な縫い目SEが形成されるときの上糸UTの張力よりも小さくなる。
【0057】
本実施形態においては、範囲Snに示すような検出値が参照特徴量として参照特徴量記憶部36に記憶される。検出特徴量解析部32は、検出値取得部31により取得された張力センサ21の検出値からモータ10の回転角度が0[°]以上90[°]以下の範囲における検出値を抽出して、「糸切れ」を判定するための検出特徴量を導出する。判定部33は、検出特徴量解析部32により算出された検出特徴量と参照特徴量記憶部36に記憶されている参照特徴量とを照合して、「糸切れ」が発生しているか否かを判定する。検出特徴量が範囲Saに示すような検出値を含む場合、判定部33は、検出特徴量と参照特徴量との照合結果に基づいて、「糸切れ」が発生していると判定することができる。検出特徴量が範囲Snに示すような検出値を含む場合、判定部33は、検出特徴量と参照特徴量との照合結果に基づいて、「糸切れ」が発生していないと判定することができる。
【0058】
<縫い目の異常検出の第2の方法>
縫い目SEの異常検出の第2の方法について説明する。第2の方法においても、判定部33は、張力センサ21の検出値及び角度センサ22の検出値に基づいて、縫い目SEの異常を判定する。
【0059】
第2の方法において、検出特徴量は、モータ10の回転における張力センサ21の検出値の累積値を示す検出累積曲線を含む。参照特徴量は、縫い目SEが正常であるときの張力の累積値を示す参照累積曲線を含む。
【0060】
判定部93は、モータ10の回転における張力センサ21の検出値の累積値を示す検出累積値曲線と、縫い目SEが正常であるときの上糸UTの張力の累積値を示す参照累積曲線とを照合して、縫い目SEの異常を判定する。本実施形態において、判定部93は、検出累積曲線と参照累積曲線とを照合して、「ちょうちん」が発生したか否かを判定する。
【0061】
上述のように、張力センサ21は、モータ10の回転において、規定周期で上糸UTの張力の検出値を出力する。すなわち、張力センサ21は、モータ10が複数の回転角度のそれぞれに回転したときに、複数の回転角度のそれぞれにおいて、検出値を出力する。
【0062】
累積値とは、モータ10の複数の回転角度のそれぞれにおいて張力センサ21により検出された張力の検出値の累積値をいう。張力センサ21の検出時間が長いほど累積値は大きくなる。累積曲線とは、モータ10の複数の回転角度と複数の回転角度のそれぞれにおける張力の累積値との関係を示す曲線をいう。
【0063】
参照累積曲線は、正常な縫い目SEが形成されたときの張力の累積値を示す累積曲線であり、参照特徴量記憶部36に予め記憶される。
【0064】
検出累積曲線は、実際の検出値の累積値を示す累積曲線であり、検出特徴量解析部32により算出される。
【0065】
判定部93は、検出累積曲線と参照累積曲線とを照合して、縫い目SEの異常を判定する。
【0066】
図9は、累積曲線を示す図である。
図9において、横軸はモータ10の回転角度を示し、縦軸は張力の累積値を示す。
図9は、モータ10が例えば1000回転/分のときの累積曲線を示す。例えばモータ10の回転角度が180[°]のときの張力の検出値を取得し、次に181[°]のときの張力の検出値を取得し、前記180[°]の検出値に加算する。同様に、182[°]、183[°]、…、0[°]、…、359[°]と順次加算することにより、累積値が算出される。
【0067】
正常な縫い目SEが形成された場合、曲線Lnで示すような累積曲線が生成される。「ちょうちん」が発生した場合、曲線Laで示すような累積曲線が生成される。
図9に示すように、曲線Lnの傾きと曲線Laの傾きとは異なる。「ちょうちん」が発生したときの累積曲線(曲線La)の傾きは、正常な縫い目SEが形成されたときの累積曲線(曲線Ln)の傾きよりも大きくなる。
【0068】
本実施形態においては、曲線Lnで示すような累積曲線が参照累積曲線として参照特徴量記憶部36に記憶される。検出特徴量解析部32は、検出値取得部31により取得された張力センサ21の検出値に基づいて、「ちょうちん」を判定するための検出累積曲線を算出する。判定部33は、検出特徴量解析部32により算出された検出累積曲線と参照特徴量記憶部36に記憶されている参照累積曲線とを照合して、「ちょうちん」が発生しているか否かを判定する。検出累積曲線が曲線Laで示すような累積曲線である場合、判定部33は、検出累積曲線と参照累積曲線との照合結果に基づいて、「ちょうちん」が発生していると判定することができる。検出累積曲線が曲線Lnで示すような累積曲線である場合、判定部33は、検出累積曲線と参照累積曲線との照合結果に基づいて、「ちょうちん」が発生していないと判定することができる。
【0069】
<縫い目の異常検出の第3の方法>
縫い目SEの異常検出の第3の方法について説明する。第3の方法において、検出特徴量は、モータ10の回転における張力センサ21の検出値をフーリエ変換することにより算出される検出周波数スペクトルを含む。参照特徴量は、縫い目SEが正常であるときの張力をフーリエ変換することにより算出される参照周波数スペクトルを含む。
【0070】
判定部93は、モータ10の回転における張力センサ21の検出値をフーリエ変換することにより算出される検出周波数スペクトルと、縫い目SEが正常であるときの上糸UTの張力をフーリエ変換することにより算出される参照周波数スペクトルとを照合して、縫い目SEの異常を判定する。判定部93は、検出周波数スペクトルと参照周波数スペクトルとを照合して、例えば「ちょうちん」が発生したか否かを判定することができる。
【0071】
図10は、張力の周波数スペクトルを示す図である。
図10において、横軸は張力の検出値の周波数を示し、縦軸は張力の検出値の振幅を示す。
図10は、モータ10を例えば1000回転/分のときに検出された張力の検出値を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)した結果を示す。
【0072】
正常な縫い目SEが形成された場合、
図10(A)に示すような周波数スペクトルが生成される。「ちょうちん」が発生した場合、
図10(B)に示すような周波数スペクトルが生成される。
図10に示すように、「ちょうちん」が発生すると、特定の周波数においてピークPKが形成される。「ちょうちん」が発生した場合、上糸UTの張力が微振動するため、ピークPKが形成される。
【0073】
本実施形態においては、
図10(A)に示すような周波数スペクトルが参照周波数スペクトルとして参照特徴量記憶部36に記憶される。検出特徴量解析部32は、検出値取得部31により取得された張力センサ21の検出値に基づいて、「ちょうちん」を判定するための検出周波数スペクトルを算出する。判定部33は、検出特徴量解析部32により算出された検出周波数スペクトルと参照特徴量記憶部36に記憶されている参照周波数スペクトルとを照合して、「ちょうちん」が発生しているか否かを判定する。検出周波数スペクトルが
図10(B)に示すような周波数スペクトルである場合、判定部33は、検出周波数スペクトルと参照周波数スペクトルとの照合結果に基づいて、「ちょうちん」が発生していると判定することができる。検出周波数スペクトルが
図10(A)に示すような周波数スペクトルである場合、判定部33は、検出周波数スペクトルと参照周波数スペクトルとの照合結果に基づいて、「ちょうちん」が発生していないと判定することができる。
【0074】
<縫製方法>
次に、本実施形態に係る縫製方法について説明する。
図11は、本実施形態に係る縫製方法を示すフローチャートである。
図11に示すように、本実施形態に係る縫製方法は、参照特徴量算出処理と、縫い目検査処理とを含む。
【0075】
参照特徴量算出処理について説明する。縫製対象物Sがミシン1の針板7に設置される。ミシン1は、縫製対象物Sの縫製を開始する。張力センサ21は、縫製対象物Sの縫製と並行して、上糸UTの張力を検出する。張力センサ21は、上糸UTの張力の検出値を処理装置30に出力する。参照特徴量生成部35は、検出値取得部31を介して張力センサ21の検出値を取得する(ステップSA1)。
【0076】
縫製対象物Sに形成された縫い目SEが確認される。正常な縫い目SEが形成された場合、正常な縫い目SEが形成されたことを示す入力データが生成されるように、入力装置24が作業者に操作される。参照特徴量生成部35は、正常な縫い目SEが形成されたことを示す入力データを取得する(ステップSA2)。
【0077】
参照特徴量生成部35は、張力センサ21の検出値と入力データとに基づいて、正常な縫い目SEが形成されたときの上糸UTの張力の特徴量を示す参照特徴量を算出する(ステップSA3)。
【0078】
参照特徴量生成部35は、算出した参照特徴量を参照特徴量記憶部36に記憶させる(ステップSA4)。
【0079】
次に、縫い目検査処理について説明する。縫製対象物Sがミシン1の針板7に設置される。ミシン1は、縫製対象物Sの縫製を開始する。張力センサ21は、縫製対象物Sの縫製と並行して、上糸UTの張力を検出する。張力センサ21は、上糸UTの張力の検出値を処理装置30に出力する。検出特徴量解析部32は、検出値取得部31を介して、張力センサ21の検出値を取得する(ステップSB1)。
【0080】
検出特徴量解析部32は、張力センサ21の検出値を解析して、検出値の検出特徴量を算出する(ステップSB2)。
【0081】
判定部33は、検出特徴量解析部32により算出された検出特徴量と、参照特徴量記憶部36に記憶されている参照特徴量とを照合して、縫い目SEの異常を判定する(ステップSB3)。
【0082】
判定部33は、縫い目SEの異常検出の第1の方法、第2の方法、及び第3の方法の少なくとも一つに基づいて、縫い目SEの異常を判定する。出力部34は、判定部33の判定結果を出力装置23に出力させる(ステップSB4)。
【0083】
<効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、上糸UTの張力が張力センサ21により検出される。上糸UTの張力の検出値に基づいて、縫い目SEの異常を簡単に検出することができる。そのため、縫い目SEの検査を効率良く実施することができる。
【0084】
本実施形態においては、正常な縫い目SEが形成されたときの張力の検出値に基づいて、参照特徴量が予め導出される。これにより、参照特徴量と検出特徴量とを照合するだけで、縫い目SEの異常を効率良く判定することができる。
【0085】
縫い目SEの異常検出の第1の方法及び第2の方法のように、張力センサ21の検出値のみならず、角度センサ22の検出値も取得されることにより、張力センサ21の検出値及び角度センサ22の検出値に基づいて、縫い目SEの異常を高精度に判定することができる。
【0086】
また、縫い目SEの異常検出の第2の方法のように、張力の累積値に基づいて累積曲線が生成されることにより、張力センサ21の検出値にノイズが含まれても、そのノイズの影響が軽減される。したがって、縫い目SEの異常を高精度に判定することができる。
【0087】
また、縫い目SEの異常検出の第3の方法のように、張力の検出値の周波数スペクトルが生成されることにより、角度センサ22の検出値を用いなくても、縫い目SEの異常を高精度に判定することができる。
【0088】
<変形例>
なお、上述の実施形態においては、検出特徴量と参照特徴量とを照合して、縫い目SEの異常を検出することとした。張力の検出値に係る閾値を設け、検出値と閾値との比較結果に基づいて、縫い目SEの異常を検出してもよい。
【0089】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0090】
図12は、本実施形態に係る縫製方法を示すフローチャートである。
図12に示すように、本実施形態に係る縫製方法は、学習処理と、識別処理とを含む。
【0091】
学習処理について説明する。縫製対象物Sがミシン1の針板7に設置される。ミシン1は、縫製対象物Sの縫製を開始する。張力センサ21は、縫製対象物Sの縫製と並行して、上糸UTの張力を検出する。張力センサ21は、上糸UTの張力の検出値を処理装置30に出力する。参照特徴量生成部35は、検出値取得部31を介して、張力センサ21の検出値を取得する(ステップSC1)。
【0092】
参照特徴量生成部35は、張力センサ21の検出値にラベルを付与する(ステップSC2)。ラベルは、正常な縫い目SEが形成されたことを示す正解ラベル、第1パターンの異常である「目飛び」が発生したことを示す第1異常ラベル、第2パターンの異常である「糸切れ」が発生したことを示す第2異常ラベル、及び第3パターンの異常である「ちょうちん」が発生したことを示す第3異常ラベルを含む。参照特徴量生成部35は、正常な縫い目SEが形成されたときに取得された張力センサ21の検出値に正解ラベルを付与する。参照特徴量生成部35は、第1パターンの異常が発生したときに取得された張力センサ21の検出値に第1異常ラベルを付与する。参照特徴量生成部35は、第2パターンの異常が発生したときに取得された張力センサ21の検出値に第2異常ラベルを付与する。参照特徴量生成部35は、第3パターンの異常が発生したときに取得された張力センサ21の検出値に第3異常ラベルを付与する。
【0093】
参照特徴量生成部35は、ラベルが付与された検出値を規定の機械学習アルゴリズムで機械学習する(ステップSC3)。機械学習アルゴリズムとして、決定木(Decision Tree)、ランダムフォレスト(Random Forest)、及びニューラルネットワーク(Neural Network)の少なくとも一つが例示される。
【0094】
ラベルが付与された検出値を機械学習することにより学習モデルが生成される(ステップSC4)。生成された学習モデルは参照特徴量記憶部36に記憶される。
【0095】
次に、識別処理について説明する。縫製対象物Sがミシン1の針板7に設置される。ミシン1は、縫製対象物Sの縫製を開始する。張力センサ21は、縫製対象物Sの縫製と並行して、上糸UTの張力を検出する。張力センサ21は、上糸UTの張力の検出値を処理装置30に出力する。検出特徴量解析部32は、検出値取得部31を介して、張力センサ21の検出値を取得する(ステップSD1)。
【0096】
検出特徴量解析部32は、張力センサ21の検出値を解析して、検出値の検出特徴量を算出する。判定部33は、検出特徴量解析部32により算出された検出特徴量と、参照特徴量記憶部36に記憶されている学習モデルとに基づいて、縫い目SEの異常のパターンを識別する(ステップSD2)。
【0097】
出力部34は、判定部33の識別結果を出力装置23に出力させる(ステップSD3)。例えば、縫い目SEの異常のパターンが第1パターンであると識別されたとき、出力部34は、第1パターンの異常である「目飛び」が発生したことを示す出力データを出力装置23に出力させる。縫い目SEの異常のパターンが第2パターンであると識別されたとき、出力部34は、第2パターンの異常である「糸切れ」が発生したことを示す出力データを出力装置23に出力させる。縫い目SEの異常のパターンが第3パターンであると識別されたとき、出力部34は、第3パターンの異常である「ちょうちん」が発生したことを示す出力データを出力装置23に出力させる。正常な縫い目SEであると識別されたとき、出力部34は、縫い目SEが正常であることを示す出力データを出力装置23に出力させる。
【0098】
以上説明したように、張力センサ21の検出値に基づいて機械学習(教師あり学習)が実施され、生成されたモデルに基づいて、縫い目SEの異常が検出されてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…ミシン、2…ミシンヘッド、3…ミシン針、4…針棒、5…天秤、6…糸調子器、7…針板、8…押え部材、9…釜、10…モータ、20…縫い目検査装置、21…張力センサ、22…角度センサ、23…出力装置、24…入力装置、30…処理装置、30A…演算装置、30B…記憶装置、30C…入出力インターフェース、31…検出値取得部、32…検出特徴量解析部、33…判定部、34…出力部、35…参照特徴量生成部、36…参照特徴量記憶部、LT…下糸、S…縫製対象物、SE…縫い目、UT…上糸。