(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】肉調理装置
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20220622BHJP
F24C 15/24 20060101ALI20220622BHJP
F24C 3/08 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A47J37/06 316
A47J37/06 366
F24C15/24 B
F24C15/24 C
F24C3/08 Z
(21)【出願番号】P 2018109174
(22)【出願日】2018-06-07
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】396007362
【氏名又は名称】株式会社ペッパーフードサービス
(73)【特許権者】
【識別番号】592181440
【氏名又は名称】株式会社マルゼン
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】二村 慎也
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3053779(JP,U)
【文献】米国特許第04402300(US,A)
【文献】特開2014-152967(JP,A)
【文献】特開平11-225889(JP,A)
【文献】実開平04-036504(JP,U)
【文献】特開2005-055155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00-37/07
F24C 3/00- 3/14
F24C 15/16-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス吹き出し孔を有するバーナーと、該バーナーの上方に設けられバーナーで発生させた熱を蓄熱する蓄熱手段と、肉を載置する肉載置部材を備える肉調理装置において、
上記バーナーの炎の位置する部分の上方に、該バーナーで加熱されて輻射熱を発生させるための輻射部材を備えることと、
上記バーナーの上方に上記蓄熱手段を載置するための蓄熱手段支持網を備えることと、
上記蓄熱手段支持網の一部を被覆する網塞ぎ板を備えることと、
上記蓄熱手段が上記蓄熱手段支持網と網塞ぎ板の上に載置されることと、
上記肉載置部材が上記蓄熱手段の上方に設けられることを特徴とする、
肉調理装置。
【請求項2】
上記網塞ぎ板が高温部となる上記蓄熱手段支持網の部位を被覆する板状体であることを特徴とする、請求項1に記載の肉調理装置。
【請求項3】
上記網塞ぎ板が板面の適所に貫通孔を有する板状体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の肉調理装置。
【請求項4】
上記網塞ぎ板が周縁の一部に下方への折曲片を有する板状体であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の肉調理装置。
【請求項5】
上記網塞ぎ板が中央付近ほど幅広に形成された板状体であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の肉調理装置。
【請求項6】
上記輻射部材が上記バーナーの上方に配設されている金属棒であり、上方が細く下方が太く形成され、加熱された肉から滴り落ちる液体が上記バーナー上に落ちないように配置されていることと、加熱された肉から滴り落ちる液体を受けて貯留する着脱自在なカス受け容器が上記バーナーの下方に配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の肉調理装置。
【請求項7】
上記蓄熱手段が上記蓄熱手段支持網の上に互いに重ならないように載置された金属片あるいは岩石片の集まりであることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の肉調理装置。
【請求項8】
上記肉載置部材が隙間を空けて配置された金属棒からなる焼き網であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の肉調理装置。
【請求項9】
上記肉調理装置の筐体の前面部分が上記バーナー、上記輻射部材、上記蓄熱手段等を直接に収納する筐体の外壁と空間をあけて配置された板で被覆されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の肉調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステーキ等の肉料理のための調理装置に関するもので、特に、レストラン等において熟練していない調理人であっても失敗せずに調理するための肉調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステーキの調理方法は多種多様であり、調理人がプライドをかけて各人の調理方法を実践している。ある高級レストランのシェフは、肉に均一に熱が入るように肉を絶えず動かすこと、肉汁が出てゆかないように肉表面に傷を付けないこと、表面状態を観察することなどを忠告している。しかし高級レストランのシェフであるからこそのコツもあり、料理の良し悪しはシェフの力量にかかることは言うまでもない。
【0003】
ステーキは高級レストランだけで供されるものではなく、リーズナブルな価格で短時間に多数の客にステーキを提供する大衆的なレストランも存在する。このような店では、短時間に肉を加熱するために肉を鉄のグリルの上に載置し、下方から格子の炭火等で加熱することがある。しかしながら、炭火は温度調節が簡単ではなく温度変化が大きく、温度分布も一様でないので、輻射、対流、熱伝導の状態も刻々と変化する。このような熱源を用いるとき肉の中の焼け具合(レア、ミディアム、ウェルダン)を調節することは至難である。
【0004】
このような店では熟練していない調理人が調理する場合もある。そのような場合にも失敗することなく、短時間に多数のステーキを提供できなければならない。そのような調理人でも調理に失敗しないようにするためには、調理装置の熱源の温度変動をできるだけ少なくし、かつ温度分布をできるだけ一様にすることが肝要である。
【0005】
このため、一部のレストランでは、肉を溶岩でできたプレートに載置し、単一の溶岩でできたプレートを一様に加熱してじっくりと肉を加熱することが行われている。この場合でも、従来技術による時は溶岩でできたプレートの温度を所定の温度に保つことはやはり難しく、また調理に時間を要し、大量に肉料理を提供することが困難である。
【0006】
特許文献1には、石板を使う時、肉類から出る油分が多量の場合には石板の表面に油分が滞留してジューシーな焼き上がりを得ることが出来なかったり、飲食客毎に石板の交換、洗浄を必要とするために洗浄作業等が容易でなかったり、更には、焼肉調理時に発生する焼カス等が面積が広い石板上に堆積すると共に、調理続行時に石板表面の無数の凹部に焼カスが嵌まり込み、除去が困難で洗浄作業が容易でないという問題を解決するべく、内箱に収納したバーナー上方に排気流路を有するようにして、石塊保持用の収納具を支持し、該収納具に多数の石塊を収納し、石塊が発する赤外線で肉を加熱し、そのとき過剰な油分が、個々は小さな石塊から落下し、その深皿状の収納具に油分を貯められる石塊加熱ロースターを開示している。
【0007】
また、調理時間を短くするために、一部のレストランでは、肉を鉄棒でできたグリルの上に載置し、下の炭火からの輻射と、空気対流と、加熱されたグリルからの熱伝導で、肉を直接に加熱することが行われている。この場合、多数の溶岩片を炭火の中に混在させることもある。溶岩片は、熱源の炭火の温度の時間的変化と、空間的温度分布を均一化するためのものである。このように熱源の中に溶岩片を混在させても、なお温度変化・温度均一性の問題が残っているので、熟練していない調理人にとって、肉(特に厚い肉)の中の焼け具合(レア、ミディアム、ウェルダン)を調節することが容易ではないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リーズナブルな価格で短時間に多数の客にステーキを提供する大衆的なレストランにおいては、上記したように熟練していない調理人も肉料理を調理することがある。このような現場では、従来の加熱方法では、温度の時間的変動・空間的不均一性に起因して、調理人が意図したようには肉料理が仕上がらないことがある。
【0010】
熟練していない調理人でも、一定の品質を保って調理するためには、調理される肉を一様な温度環境で加熱することが重要である。そこで、本発明の第一の課題は、肉を加熱する環境の温度ができるだけ一様で且つ広い範囲となる肉調理装置を提供することである。
【0011】
肉を焼くとき液体(油分等)が流れ出し、バーナーより上方で滞留する構造の肉調理装置の場合には、そこでバーナーの熱で発火する可能性がある。その火で温度分布が変わり設計した一様な温度分布から外れてしまう場合がある。このような事態が発生すると、熟練していない調理人はそれに対処することに追われ、設定した品質に肉を調理できないことがあり得る。そこで、本発明の他の課題は、肉から流れ出した液体(油分等)の発火の憂いが少なく、同時に保守が容易な調理装置を提供することである。
【0012】
設定した品質に肉を調理することに専念すると、うっかりして肉調理装置の高温部に触れてしまい火傷をすることがある。そこで、本発明のさらに他の課題は、調理人が触れがちな装置前面の温度が低い肉調理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した種々の課題を解決するため、本発明は、次の〔1〕~〔9〕に記載の肉調理装置とした。
〔1〕ガス吹き出し孔を有するバーナーと、該バーナーの上方に設けられバーナーで発生させた熱を蓄熱する蓄熱手段と、肉を載置する肉載置部材を備える肉調理装置において、
上記バーナーの炎の位置する部分の上方に、該バーナーで加熱されて輻射熱を発生させるための輻射部材を備えることと、
上記バーナーの上方に上記蓄熱手段を載置するための蓄熱手段支持網を備えることと、
上記蓄熱手段支持網の一部を被覆する網塞ぎ板を備えることと、
上記蓄熱手段が上記蓄熱手段支持網と網塞ぎ板の上に載置されることと、
上記肉載置部材が上記蓄熱手段の上方に設けられることを特徴とする、
肉調理装置。
〔2〕上記網塞ぎ板が高温部となる上記蓄熱手段支持網の部位を被覆する板状体であることを特徴とする、上記[1]に記載の肉調理装置。
[3]上記網塞ぎ板が板面の適所に貫通孔を有する板状体であることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の肉調理装置。
[4]上記網塞ぎ板が周縁の一部に下方への折曲片を有する板状体であることを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれかに記載の肉調理装置。
[5]上記網塞ぎ板が中央付近ほど幅広に形成された板状体であることを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれかに記載の肉調理装置。
[6]上記輻射部材が上記バーナーの上方に配設されている金属棒であり、上方が細く下方が太く形成され、加熱された肉から滴り落ちる液体が上記バーナー上に落ちないように配置されていることと、加熱された肉から滴り落ちる液体を受けて貯留する着脱自在なカス受け容器が上記バーナーの下方に配置されていることを特徴とする、上記〔1〕~[5]のいずれかに記載の肉調理装置。
〔7〕上記蓄熱手段が上記蓄熱手段支持網の上に互いに重ならないように載置された金属片あるいは岩石片の集まりであることを特徴とする、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の肉調理装置。
〔8〕上記肉載置部材が隙間を空けて配置された金属棒からなる焼き網であることを特徴とする、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の肉調理装置。
〔9〕上記肉調理装置の筐体の前面部分が上記バーナー、上記輻射部材、上記蓄熱手段等を直接に収納する筐体の外壁と空間をあけて配置された板で被覆されていることを特徴とする、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の肉調理装置。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明に係る肉調理装置によれば、肉の調理エリアの温度がかなり一様で且つ広い範囲となる肉調理装置が実現でき、例え熟練していない調理人でも、一定の品質を保って肉を調理することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る肉調理装置の一実施形態を示した概念的な断面図である。
【
図2】
図1に示した肉調理装置の内部部品を示した図であって、(a)はバーナーの斜視図、(b)は肉調理装置の内部に収められたバーナーの上方に設けられる輻射部材の斜視図である。
【
図3】
図1に示した肉調理装置の蓄熱手段支持網と網塞ぎ板の上面図及びその一部拡大図である。
【
図4】網塞ぎ板の作用・効果を概念的に示した図である。
【
図5】網塞ぎ板の他の実施形態を示した斜視図である。
【
図6】
図1に示した肉調理装置の中に蓄熱手段支持網を配置し、その上に網塞ぎ板を置き、その上を蓄熱手段で敷き詰める前の状態の概念的な斜視図である。
【
図7】
図1に示した肉調理装置の中に蓄熱手段支持網を配置し、その上に網塞ぎ板を置き、その上を蓄熱手段で敷き詰めた後の状態の概念的な斜視図である。
【
図8】
図1に示した肉調理装置において肉載置部材を装着した状態の肉調理装置の斜視図である。
【
図9】(a)は網塞ぎ板を設けない肉調理装置の肉載置部の温度分布を示した赤外線写真像であり、(b)は網塞ぎ板を設けた本発明に係る肉調理装置の肉載置部の温度分布を示した赤外線写真像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る肉調理装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明に係る肉調理装置は、バーナー1と、該バーナー1の炎Fで発生した熱を熱輻射線に変えるための輻射部材2を備える。
上記バーナー1は、ガス吹き出し孔を設けた直線状のパイプ1aからなり、各バーナー1は、
図2の(a)に示すように二本のパイプ1a,1aを中央パイプ1bで連結され、その中央パイプ1bに接続されたガス供給口1cに図示しないガス供給部からガスが供給される構成である。また、この実施形態では、各バーナー1は、二本のパイプ1a,1aと中央パイプ1bが上方から見ると「工」字形状をなしている。なお、バーナー1を構成するパイプの数は
図1に示した6本に限られず例えば4本あるいは2本のパイプで形成することも可能である。さらにバーナー1を構成するパイプの形状は直線状に限られず他の形状とすることも可能である。
図2の(b)に肉調理装置の筐体7の内部に収められた状態のバーナー1が示されている。
【0018】
輻射部材2は、上記バーナー1の直上でそれらと平行に配設されている。輻射部材2は、二本一組の本体輻射部材2a,2aをそれらの中央部が互いに中間輻射部材2bによって連結された構成からなり、上方から見るとやはり「工」字形状をなしている。すなわち、上方から見ると「工」字形状をなしているバーナー1を、上方から見ると「工」字形状をなしている輻射部材2が覆うように配設されている。上記輻射部材2は、加熱された肉から滴り落ちる液体Sが上記バーナー1の上に落ちないように、上方の幅が狭く下方の幅が広くなる形状を有している。例えば、
図1或いは
図2の(b)に示すように断面が「ヘ」字状に形成された金属棒、例えばSUS304で形成されている。
【0019】
また、輻射部材2は、
図2の(b)に示すように調理装置の内壁に固定されている輻射部材係止部2cに着脱自在に係止される。輻射部材係止部2cに着脱自在であるので、該輻射部材2およびバーナー1等の肉調理装置内部の清掃等の保守が容易である。輻射部材2は、バーナー1の熱で加熱され輻射線を四方に放射し、温度分布を均一化するという機能をも有するばかりでなく、加熱された肉から滴り落ちる液体Sを
図1に示すように上記バーナー1の上に落さないという機能をも有する。
【0020】
上記バーナー1と輻射部材2の上部には、
図1に示すように蓄熱手段3を支持するための蓄熱手段支持網4と網塞ぎ板5が配置されている。
図3はこの蓄熱手段支持網4と網塞ぎ板5の上面図であり、この図示した実施形態では蓄熱手段支持網4は二枚の網4a,4aからなっている。
図3には蓄熱手段支持網4の下方にバーナー1が破線で示されている。二枚の網塞ぎ板5,5が、上記蓄熱手段支持網4の中央領域でバーナー1と重ならないように、蓄熱手段支持網4の上に載置されている。
図3に示すように下方のバーナー1と網塞ぎ板5が一部重なってもよい。この網塞ぎ板5の配置位置は、下方に配置されたバーナー1によって特に高温部となる蓄熱手段支持網4の部位とし、該部位の蓄熱手段支持網4の網目を載置した網塞ぎ板5によって塞ぎ、熱気を左右に分散させる作用を果たすものである。このような作用を果たす網塞ぎ板5を蓄熱手段支持網4に設けることにより、蓄熱手段支持網4の温度分布はかなり一様で且つその一様な温度分布の範囲が広い範囲に亘るものとなる。
【0021】
バーナー1が4本のパイプから成る場合には、二本一組のパイプの組の中間部分の上方に位置する部位の蓄熱手段支持網4の部分が特に高温部となるため、該部位に一枚の網塞ぎ板5を置くこととなる。この場合の網塞ぎ板5の作用・効果を概念的に図示したものが
図4であり、上段は網塞ぎ板を取り付けなかった場合、中段は矩形の板状体からなる網塞ぎ板5を蓄熱手段支持網4の中央領域に取り付けた場合、下段は板面の中央付近に貫通孔5aを有し且つ中央付近ほど幅広に形成された板状体からなる網塞ぎ板5を蓄熱手段支持網4の中央領域に取り付けた場合をそれぞれ示した図である。なお、図中の破線はバーナー1を示したものである。各場合の温度分布を表した右図に示したように、網塞ぎ板を取り付けなかった場合には、蓄熱手段支持網の中央付近に超高温部が現れ且つ調理の出来る高温部の領域が狭いものとなっている。矩形の板状体からなる網塞ぎ板を取り付けた場合には、該網塞ぎ板によってその部分の熱気の上昇が抑えられ、熱気が網塞ぎ板の左右に分散されることから、超高温部がなくなり且つ調理の出来る高温部の領域が広がったものとなる。板面の中央付近に貫通孔を有し且つ中央付近ほど幅広に形成された板状体からなる網塞ぎ板を取り付けた場合には、中央付近に形成された貫通孔から熱気の一部が流れ且つ中央付近ほど幅広に形成された網塞ぎ板によって熱気は中央付近ほどより遠くまで分散させられることとなり、超高温部がなくなり且つ調理の出来る高温部の領域がより広がったものとなる。上記のように、網塞ぎ板5はバーナー1で加熱された熱気を分散させる作用を果たすものであり、該網塞ぎ板の幅を変えたり、上記したように形状を変えたり、板面に貫通孔を開けたりすることで、使用者がより使い易い温度分布を実現することができる。また、
図5に示したように、網塞ぎ板5の周縁の一部に下方への折曲片5bを有する板状体としてもよい。この場合には、熱気が折曲片5bによって遮られ、その方向への熱気の流れを制限することが可能となり、また該折曲片5bを形成することによって網塞ぎ板の強度向上を図ることができる。
【0022】
上記蓄熱手段支持網4と網塞ぎ板5の上には、
図6と
図7に示すように蓄熱手段3が置かれる。蓄熱手段3は、金属片あるいは岩石片であり、好ましくは溶岩片である。また、蓄熱手段3は、
図1に示すように互いに重ならないように一層にして、かつ蓄熱手段支持網4と網塞ぎ板5の上に均等に配置される。この結果、蓄熱手段3である全ての金属片あるいは岩石片の下面が蓄熱手段支持網4と網塞ぎ板5に接触し、均等に加熱される。蓄熱手段3である金属片あるいは岩石片が均等に加熱され昇温するので、それらの表面から赤外線を含む輻射線が均等に放射される。また金属片または岩石片の熱容量により温度の時間変化が緩慢となるので、調理温度が急変せず、調理が容易となる。
【0023】
図6と
図7に示すように配置された蓄熱手段3は、バーナー1の燃焼ガスによって直接に加熱される熱対流加熱と、加熱された蓄熱手段支持網4および網塞ぎ板5との接触による熱伝導加熱によって加熱される。網塞ぎ板5の作用により、上記したように蓄熱手段支持網4および網塞ぎ板5上の温度分布はかなり一様となっているので、蓄熱手段3も一様な温度となる。
【0024】
図7に示すように蓄熱手段3を配置した後、
図8に示すように肉載置部材6を肉調理装置の上面に装着する。肉載置部材6は、その温度分布を均一化するためにアルミニウム、銅、鉄等の熱伝導率が大きい金属で形成することが好ましい。また、肉載置部材6の形状は、温度分布均一化の観点からと熱効率の観点からは、
図8に概念的に示すように平行に配置された金属棒からなるグリッドとして形成することが好ましい。
【0025】
肉載置部材6は、バーナー1の燃焼ガスによって直接に加熱される熱対流加熱と、加熱された蓄熱手段支持網4および網塞ぎ板5との接触により加熱されて温度分布がかなり一様となっている蓄熱手段3からの熱輻射により加熱される。この結果、肉載置部材6の温度分布は一様となり、その上に載置されて調理される肉Nは一様に加熱される。それと同時に、蓄熱手段3の温度変化が少ないので、輻射熱は変動せず、肉Nは時間的にも一定に加熱される。
【0026】
加熱された肉Nから出る肉汁等の液体Sは下方の加熱された蓄熱手段3によってその一部が燃えてしまうが、燃えなかったものおよび他のカスはさらに下方に落下する。この落下した液体S等は上記したように輻射部材2によってバーナー1の上に落下することは遮られ、バーナー1より下方に設けられているカス受け11(
図1)に溜まる。カス受け11は着脱自在に装置の下部に装着され、仕事を始める前にカスを取り出しておく。カス受け11は、広く平らな容器に液体が入ったものを移動することは困難なので、2以上に分割した小さな容器11a,11aの集合体の構造とすることが、取り扱いが容易で好ましい。
【0027】
調理人がうっかりと肉調理装置の高温部に触れると火傷することがある。これ故、高温部に常に注意していなければならないが、そうすると調理が疎かとなりがちになるという問題が生じる。本発明では、
図8に示すように肉調理装置の上記バーナー1、上記蓄熱手段3等を収納する筐体7の前面は、筐体7の外壁との間に空間8aをあけて配置された熱遮蔽板8で被覆されている。また、
図8の実施形態では、装置を操作するためのコック9類は筐体7の前面下部に配置されている。
【0028】
本発明に係る肉調理装置は、上記した構成とすることにより肉載置部材6における温度は空間的にかなり一様であり、また時間的変動も少ないので、バルブを細かく調整してバーナー1の温度調節する必要がない。その結果、火力を「強火」、「中火」、「弱火」に設定する3段階式のバルブを採用することも可能である。この場合、強火で立ち上げ、立ち上がり後の調理は中火で行う。そしてアイドルタイムでは弱火にすることで省エネの効果も得られる。なお、ガスの立ち消えによる事故を防止するため、肉調理装置内に適宜に熱電対を配置して、ガスの立ち消えの際には自動的にガスを止める等の安全手段は必用である。
【0029】
そして、上記した火力調整が3段階式の場合、調理をマニュアル化することも容易になり、経験の少ない調理人を雇用できるという効果がある。本発明に係る肉調理装置においては、蓄熱手段3の温度を均一且つ一定として、蓄熱手段3からの熱の放射を一定とし、また肉Nの周辺の雰囲気の温度を一定として、肉載置部材6からの熱伝導による加熱条件を一定とし、対流による加熱条件も一定としている。この結果、肉の種類・大きさ・形状が同じであれば、毎回ほぼ同様に肉の内部温度は変化する。これ故、肉の種類・大きさ・形状・肉の仕上がり毎に、必要加熱時間を表形式でマニュアル化することにより、誰が調理しても客の要望通りの肉を失敗無く迅速に焼くことができる。既に述べたように、マニュアルは紙形式にする必要はなく、組み込みマイクロコンピュータの中のプログラムのデータとしても実現できる。
【0030】
例えば、内部がレア・ミディアム・ウェルダンになるための時間が毎回同じとなる。従って、肉の厚さ(例えば15mm、20mm・・・)と肉の重量(例えば150g、200g・・・)等の組み合わせ毎に、内部がレア・ミディアム・ウェルダンになるための時間の表を予め作成できることを意味する。この表を使うことにより、調理人が熟練者であっても、非熟練者であっても、同じように肉Nを調理できる。
【0031】
図9の(a)は上記した網塞ぎ板5を設けない肉調理装置の肉載置部材6の温度分布を示す赤外線写真像であり、(b)は網塞ぎ板5を設けた本発明に係る肉調理装置の肉載置部材6の温度分布を示す赤外線写真像である。
図9(a)から分かるように網塞ぎ板がない場合、顕著な高温部(図中の黒塗り部)が中央に有り、肉を調理することが可能な高温部(調理エリアA)の範囲も狭い。他方、網塞ぎ板5がある場合は、(b)から分かるように高温部(調理エリアA)が長く伸びていて全体としてほぼ楕円形の温度分布を広く呈している。これは、本発明に係る肉調理装置の肉載置部材6の温度が網塞ぎ板5を設けない場合と比較して一様であることを示している。
【0032】
また、網塞ぎ板5を設けた肉調理装置の一つの実施例では、ガス消費量(24~36kW)の場合、強火15~20分で調理面の調理エリアAの温度は390℃以上になった。強火は立ち上がりのみで使った。中火にすると300~340℃が維持される。弱火にすると260~290℃が維持された(LPGの場合)。
【0033】
一方、熱遮蔽板8がないとき、同じ形式の肉調理装置前面の上部、中部、下部の温度はそれぞれ「100~200℃」、「70~80℃」、「50~60℃」であったが、熱遮蔽板8を設けたときの対応する位置における温度はそれぞれ、「50~70℃」、「50~60℃」、「40~50℃」と低温であった。
【0034】
なお、蓄熱手段3として日本の溶岩片を使うと、その原因は未だ究明されていないが遠赤外線が多く発生し、肉の中身は「ジューシー」、表面は「カリッ」とした焼き上がりになると評価する調理人がいた。
【0035】
以上、本発明に係る肉調理装置を詳しく説明してきたが、本発明の適用対象は図面に例示されたものに限られず、同じ技術思想で他の形態の装置として実施することも可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る肉調理装置は、客の好みの量の肉料理を安価に提供することを目的とする外食産業、特にフランチャイズチェーン店における肉料理の調理装置として、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 バーナー
1a パイプ
1b 中央パイプ
1c ガス供給口
2 輻射部材
2a 本体輻射部材
2b 中間輻射部材
2c 輻射部材係止部材
3 蓄熱手段
4 蓄熱手段支持網
4a 網
5 網塞ぎ板
5a 貫通孔
5b 折曲片
6 肉載置部材
7 筐体
8 熱遮蔽板
9 コック
11 カス受け容器
A 調理エリア
F 炎
S 液体
N 肉