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  • 特許-トルクベクタリング装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】トルクベクタリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/22 20060101AFI20220622BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
F16H48/22
F16H48/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018134879
(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公開番号】P2020012511
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陸也
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-016032(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/22
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングギヤが設けられるデフケースと、
前記デフケースに公転および自転可能に設けられるピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤに噛合する一対のサイドギヤと、
一対の前記サイドギヤのいずれかがそれぞれ設けられる一対の駆動輪シャフトと、
前記駆動輪シャフトに設けられるクラッチ板、および、前記クラッチ板に設けられる摩擦面に対して前記駆動輪シャフトの軸方向に対向する被係合部を含み、前記クラッチ板と前記被係合部との少なくともいずれかが前記軸方向に移動可能に設けられるクラッチ機構と、
を備え
前記クラッチ板は、車両が走行中に旋回することで前記軸方向に作用する荷重を受ける平板形状部材であり、
前記クラッチ機構は、
前記車両が走行中に旋回することで前記軸方向に作用する荷重により、前記クラッチ板と前記被係合部との離隔距離を変化させるトルクベクタリング装置。
【請求項2】
前記クラッチ機構は、
前記軸方向の荷重が作用していない場合に、前記摩擦面と前記被係合部とが非接触状態に維持される請求項に記載のトルクベクタリング装置。
【請求項3】
前記軸方向に移動可能に設けられ、前記クラッチ板に対して前記軸方向に対向するウエイト部材をさらに備える請求項1または2に記載のトルクベクタリング装置。
【請求項4】
前記被係合部は、少なくとも前記ウエイト部材に設けられる請求項に記載のトルクベクタリング装置。
【請求項5】
前記クラッチ板は、前記軸方向に移動可能に設けられ、
前記ウエイト部材は、前記クラッチ板を挟んで前記被係合部と反対側に配される請求項に記載のトルクベクタリング装置。
【請求項6】
前記ウエイト部材は、前記クラッチ板よりも、前記サイドギヤから前記軸方向に離隔している請求項からのいずれか1項に記載のトルクベクタリング装置。
【請求項7】
前記ウエイト部材に接続され、前記ウエイト部材を前記クラッチ板から離隔する方向に付勢力を作用させる付勢部材をさらに備える請求項からのいずれか1項に記載のトルクベクタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクベクタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左右輪のトルク分配をコントロールするトルクベクタリング装置が開示されている。トルクベクタリング装置では、車両の走行状況に応じて、電動のアクチュエータが制御される。アクチュエータの作動により制動トルクが作用し、左右輪のトルク分配がコントロールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-141868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のトルクベクタリング装置では、電動のアクチュエータが必要となるため、部品点数が増加し、装置全体が大型化してしまう。
【0005】
本発明は、装置を小型化することができるトルクベクタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のトルクベクタリング装置は、リングギヤが設けられるデフケースと、デフケースに公転および自転可能に設けられるピニオンギヤと、ピニオンギヤに噛合する一対のサイドギヤと、一対のサイドギヤのいずれかがそれぞれ設けられる一対の駆動輪シャフトと、駆動輪シャフトに設けられるクラッチ板、および、クラッチ板に設けられる摩擦面に対して駆動輪シャフトの軸方向に対向する被係合部を含み、クラッチ板と被係合部との少なくともいずれかが軸方向に移動可能に設けられるクラッチ機構と、を備え、クラッチ板は、車両が走行中に旋回することで軸方向に作用する荷重を受ける平板形状部材であり、クラッチ機構は、車両が走行中に旋回することで軸方向に作用する荷重により、クラッチ板と被係合部との離隔距離を変化させる
【0008】
また、クラッチ機構は、軸方向の荷重が作用していない場合に、摩擦面と被係合部とが非接触状態に維持されてもよい。
【0009】
また、トルクベクタリング装置は、軸方向に移動可能に設けられ、クラッチ板に対して軸方向に対向するウエイト部材をさらに備えてもよい。
【0010】
また、被係合部は、少なくともウエイト部材に設けられてもよい。
【0011】
また、クラッチ板は、軸方向に移動可能に設けられ、ウエイト部材は、クラッチ板を挟んで被係合部と反対側に配されてもよい。
【0012】
また、ウエイト部材は、クラッチ板よりも、サイドギヤから軸方向に離隔してもよい。
【0013】
また、トルクベクタリング装置は、ウエイト部材に接続され、ウエイト部材をクラッチ板から離隔する方向に付勢力を作用させる付勢部材をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、トルクベクタリング装置の説明図である。
図2図2は、図1の部分拡大図である。
図3図3は、右旋回時のクラッチ機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、トルクベクタリング装置1の説明図である。図1では、トルクベクタリング装置1が、車両に搭載された状態を示している。図1において、矢印Fは、車両の前進方向を示し、矢印Bは、車両の後進方向を示し、矢印Rは、車両の右方向を示し、矢印Lは、車両の左方向を示している。
【0018】
トルクベクタリング装置1は、車両のハウジング3に設けられる。ハウジング3には、駆動源(エンジンまたはモータ)に接続されるシャフト5が設けられる。シャフト5は、駆動源から伝達される駆動力により回転する。シャフト5には、出力ギヤ5aが設けられている。出力ギヤ5aからトルクベクタリング装置1に回転動力が入力される。
【0019】
トルクベクタリング装置1は、デフケース10を備えている。デフケース10は、大凡円筒形状の本体部10aを有する。本体部10aは、回転軸中心を図中LR方向に沿わせて配置される。本体部10aの外周面には、径方向に拡径するフランジ部10bが設けられている。フランジ部10bは、本体部10aの回転軸方向の一端側に設けられている。
【0020】
デフケース10には、出力ギヤ5aに噛合されるリングギヤ12が設けられる。具体的には、リングギヤ12は、デフケース10のフランジ部10bに取り付けられる。リングギヤ12は、本体部10aの径方向外方において環状に延在している。出力ギヤ5aおよびリングギヤ12により、デフケース10がシャフト5に連結される。デフケース10は、シャフト5と一体回転する。
【0021】
デフケース10の本体部10a内には、ギヤ室14が形成される。ギヤ室14にはピニオンシャフト16が設けられる。ピニオンシャフト16は、デフケース10の回転軸方向に直交する方向に軸心を沿わせて、本体部10aに取り付けられる。ピニオンシャフト16は、その両端が本体部10aに挿通されている。
【0022】
ピニオンシャフト16の両端近傍には、一対のピニオンギヤ18が回転自在に設けられる。つまり、ピニオンギヤ18は、図1中、FB方向を回転軸として回転する。また、デフケース10が、図1中、LR方向を回転軸として回転することから、ピニオンギヤ18もデフケース10と一体となって、LR方向を回転軸として回転する。つまり、ピニオンギヤ18は、デフケース10に公転および自転可能に設けられている。
【0023】
ギヤ室14には、ピニオンギヤ18に噛合する一対のサイドギヤ20L、20Rが設けられる。サイドギヤ20Lは、ピニオンシャフト16よりも車両の左側(図1中L方向)に位置している。サイドギヤ20Rは、ピニオンシャフト16よりも車両の右側(図1中R方向)に位置している。一対のサイドギヤ20L、20Rは、回転軸方向をLR方向に沿わせている。また、一対のサイドギヤ20L、20Rは、回転軸中心が一直線上に位置している。
【0024】
デフケース10の本体部10aには、一対の挿通孔10cが形成されている。一対の挿通孔10cは、LR方向に対向して設けられている。サイドギヤ20L、20Rは、それぞれ挿通孔10cに相対回転自在に挿通されている。サイドギヤ20Lは、駆動輪シャフト22Lの先端に相対回転不可能に設けられている。駆動輪シャフト22Lは、回転軸方向をLR方向に沿わせて設けられる。同様に、サイドギヤ20Rは、駆動輪シャフト22Rの先端に相対回転不可能に設けられている。駆動輪シャフト22Rは、回転軸方向をLR方向に沿わせて設けられる。一対の駆動輪シャフト22L、22Rは、回転軸中心が一直線上に位置している。駆動輪シャフト22L、22Rには、それぞれ車輪が設けられる。
【0025】
デフケース10が回転すると、ピニオンギヤ18がデフケース10と一体回転(公転)する。ピニオンギヤ18が公転すると、ピニオンギヤ18に噛合するサイドギヤ20L、20Rを介して、駆動輪シャフト22L、22Rが回転する。これにより、駆動源の動力が車輪に伝達される。また、車両の旋回時には、駆動輪シャフト22L、22Rの回転数の差がピニオンギヤ18により吸収され、回転数の差に応じたトルク分配がなされる。
【0026】
つまり、本実施形態のトルクベクタリング装置1は、差動装置(オープンデフ)としての役割を備えている。また、トルクベクタリング装置1は、特に車両の旋回時のトルク分配をより積極的にコントロールするべく、クラッチ機構30L、30Rを備える。クラッチ機構30Lは、駆動輪シャフト22Lに設けられる。クラッチ機構30Rは、駆動輪シャフト22Rに設けられる。クラッチ機構30L、30Rは、左右対称の構造であり、動作および作用は実質的に等しい。したがって、ここでは、クラッチ機構30Rについて説明し、クラッチ機構30Lについては説明を省略する。
【0027】
図2は、図1の部分拡大図である。ハウジング3には、駆動輪シャフト22Rが挿通される収容室3aが形成されている。収容室3aは、ハウジング3のR側に開口する。ハウジング3には、収容室3aの開口を被覆するカバー部材7が取り付けられる。カバー部材7には、貫通孔7aが形成されている。駆動輪シャフト22Rは、貫通孔7aに相対回転自在に挿通されている。また、収容室3aには、駆動輪シャフト22Rを軸支する軸受9が設けられている。ハウジング3には、収容室3aに突出する隔壁3bが設けられている。隔壁3bは、軸受9とカバー部材7との間に設けられている。クラッチ機構30Rは、収容室3aのうち、隔壁3bよりもカバー部材7側に設けられる。
【0028】
クラッチ機構30Rは、クラッチ板32を備える。クラッチ板32は、平板円盤形状の部材で構成される。クラッチ板32には、駆動輪シャフト22Rが貫通する中央孔32aが形成される。クラッチ板32は、駆動輪シャフト22Rにスプライン係合される。クラッチ板32は、駆動輪シャフト22Rに対して回転軸方向に移動可能に設けられる。また、クラッチ板32は、駆動輪シャフト22Rと一体回転する。クラッチ板32には、摩擦面34が設けられる。摩擦面34は、クラッチ板32のうち、L方向側に設けられる面である。
【0029】
また、クラッチ機構30Rは、ハウジング3の隔壁3bに設けられる被係合部36を含む。被係合部36は、隔壁3bのうち、R方向側に設けられる面である。被係合部36は、摩擦面34に対して駆動輪シャフト22Rの軸方向に対向する。クラッチ板32が最もL方向に移動すると、摩擦面34と被係合部36とが面接触する。クラッチ板32が回転している状態で、摩擦面34および被係合部36が接触すると、両者の間に摩擦抵抗が生じ、駆動輪シャフト22Rの回転数が低下する。
【0030】
クラッチ板32を挟んで被係合部36と反対側には、ウエイト部材38が設けられる。ウエイト部材38は、クラッチ板32よりも質量が大きい平板円盤形状の部材で構成される。ウエイト部材38には、駆動輪シャフト22Rが貫通する通孔38aが形成される。駆動輪シャフト22Rは、通孔38aの内周面、すなわち、ウエイト部材38と非接触である。ウエイト部材38は、クラッチ板32に対して軸方向に対向する。
【0031】
ウエイト部材38の外周面には、ガイド溝38bが形成される。ガイド溝38bは、駆動輪シャフト22Rの軸方向に延在する溝である。ガイド溝38bは、ウエイト部材38の周方向に等間隔で複数設けられる。ハウジング3のうち、収容室3aの内周面には、ガイド突起3cが設けられる。ガイド突起3cは、ハウジング3の内周面から収容室3aの中央側に向けて突出する。ガイド突起3cは、ウエイト部材38の厚み以上に、駆動輪シャフト22Rの軸方向に延在する。ガイド突起3cは、ウエイト部材38のガイド溝38bと同数設けられ、各ガイド溝38bがガイド突起3cに係合されている。ウエイト部材38は、ガイド溝38bがガイド突起3cにガイドされて、駆動輪シャフト22Rの軸方向に移動可能である。
【0032】
ウエイト部材38とカバー部材7との間には、付勢部材40が設けられる。付勢部材40は、一端がウエイト部材38に接続され、他端がカバー部材7に取り付けられる。ここでは、付勢部材40が引張コイルバネで構成されており、ウエイト部材38をクラッチ板32から離隔する方向(R方向)に付勢力を作用させている。なお、付勢部材40は、圧縮コイルバネで構成されてもよい。この場合、付勢部材40は、被係合部36とウエイト部材38との間に配され、ウエイト部材38をR方向に付勢すればよい。いずれにしても、付勢部材40は、クラッチ板32から離隔する方向にウエイト部材38を付勢すればよい。
【0033】
次に、上記のトルクベクタリング装置1の作用について説明する。車両の直進走行時等、駆動輪シャフト22Rの軸方向の荷重が作用していない場合、クラッチ機構30Rは、図2に示すように、摩擦面34と被係合部36とが非接触状態に維持される。この状態では、駆動輪シャフト22L、22Rに対して、大凡均等にトルク分配がなされている。なお、被係合部36と摩擦面34との間に、両者を非接触状態に維持する弾性部材(例えば圧縮コイルバネ)が設けられるとよい。この場合、例えば、被係合部36に、弾性部材を収容する凹みが設けられれば、摩擦面34と被係合部36との面接触が可能となる。
【0034】
図3は、右旋回時のクラッチ機構30Rを示す図である。車両が走行中に旋回すると、駆動輪シャフト22Rの軸方向の荷重が作用する。クラッチ機構30Rは、駆動輪シャフト22Rの軸方向に作用する荷重により、クラッチ板32と被係合部36との離隔距離を変化させる。
【0035】
例えば、車両が前進走行中に右方向に旋回したとする。この場合、車両に対してL方向の荷重が作用する。L方向に作用する荷重が付勢部材40の付勢力を上回ると、ウエイト部材38がクラッチ板32に近接する方向(L方向)に移動する。ウエイト部材38がL方向に移動すると、クラッチ板32に接触する。クラッチ板32は、ウエイト部材38に押圧され、ウエイト部材38と一体となって被係合部36に近接する方向(L方向)に移動する。その結果、図3に示すように、クラッチ板32の摩擦面34と被係合部36とが面接触する。このとき、L方向に作用する荷重が大きいほど、ウエイト部材38がクラッチ板32をL方向に押圧する力が大きくなる。
【0036】
車両の右方向の旋回時には、駆動輪シャフト22Lの回転数が、駆動輪シャフト22Rの回転数よりも大きくなっている。この回転数の差は、上記のピニオンギヤ18により吸収され、駆動輪シャフト22Rよりも駆動輪シャフト22Lに、より大きなトルクが分配される。この状況下において、摩擦面34が被係合部36に面接触すると、駆動輪シャフト22Rの回転数が低下する。その結果、駆動輪シャフト22L、22Rの回転数の差がさらに大きくなり、オープンデフの原理により、駆動輪シャフト22L側により大きなトルクが分配される。
【0037】
特に、急旋回時あるいは高速走行時には、摩擦面34と被係合部36との間に生じる摩擦抵抗が大きくなる。摩擦面34と被係合部36との間に生じる摩擦抵抗が大きくなると、駆動輪シャフト22Rの回転数がより低下する。その結果、急旋回時あるいは高速走行時には、駆動輪シャフト22L側に分配されるトルクがより大きくなる。
【0038】
なお、ここでは、車両の右方向の旋回時について説明したが、車両の左方向の旋回時には、クラッチ機構30Lが上記と同様に作動する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のトルクベクタリング装置1によれば、簡易な構成でトルク分配が実現される。したがって、電動アクチュエータが不要となり、部品点数を削減して、装置全体の小型化が実現可能となる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0041】
上記実施形態では、クラッチ板32が、軸方向に移動可能に駆動輪シャフト22Rに設けられている。しかしながら、クラッチ板32は、駆動輪シャフト22Rの軸方向に移動不可能であってもよい。この場合であっても、クラッチ板32とウエイト部材38との面接触により、駆動輪シャフト22Rの回転数が低下する。つまり、この場合には、クラッチ板32のうち、ウエイト部材38に対向する面が摩擦面34となり、ウエイト部材38におけるクラッチ板32との対向面が、被係合部36となる。
【0042】
また、上記実施形態では、ウエイト部材38が駆動輪シャフト22Rと非接触に設けられ、ウエイト部材38の回転が規制されている。しかしながら、ウエイト部材38は、駆動輪シャフト22Rと一体回転可能に設けられてもよい。ただし、ウエイト部材38の回転が規制されている場合には、ウエイト部材38とクラッチ板32との間に生じる摩擦抵抗によっても、駆動輪シャフト22Rの回転数を低下させることができる。つまり、上記実施形態によれば、被係合部36がウエイト部材38にも設けられていることになる。
【0043】
なお、上記実施形態では、摩擦面34が被係合部36に面接触する場合について説明した。しかしながら、摩擦面34が被係合部36に完全に面接触しない場合でも、両者間に摩擦抵抗が生じるため、両者が完全に面接触しない構成としてもよい。したがって、クラッチ機構30Rは、駆動輪シャフト22Rに設けられるクラッチ板32、および、クラッチ板32に設けられる摩擦面34に対して駆動輪シャフト22Rの軸方向に対向する被係合部36を含み、クラッチ板32と被係合部36との少なくともいずれかが軸方向に移動可能に設けられていればよい。したがって、上記実施形態におけるウエイト部材38は必須の構成ではない。
【0044】
また、上記実施形態では、クラッチ機構30L、30Rが設けられている。しかしながら、クラッチ機構30L、30Rのいずれか一方のみが設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、トルクベクタリング装置に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 トルクベクタリング装置
10 デフケース
12 リングギヤ
18 ピニオンギヤ
20L、20R サイドギヤ
22L、22R 駆動輪シャフト
30L、30R クラッチ機構
32 クラッチ板
34 摩擦面
36 被係合部
38 ウエイト部材
40 付勢部材
図1
図2
図3