IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 協同乳業株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人早稲田大学の特許一覧

特許7093262高強度運動による疲労軽減・回復用組成物
<>
  • 特許-高強度運動による疲労軽減・回復用組成物 図1
  • 特許-高強度運動による疲労軽減・回復用組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】高強度運動による疲労軽減・回復用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/21 20160101AFI20220622BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20220622BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20220622BHJP
   A23G 9/36 20060101ALI20220622BHJP
   A23L 9/10 20160101ALI20220622BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20220622BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20220622BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20220622BHJP
   A61K 31/7032 20060101ALI20220622BHJP
   A61K 31/736 20060101ALI20220622BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220622BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A23L33/21
A23C9/13
A23C9/152
A23G9/36
A23L9/10
A23L29/244
A23L29/30
A61K31/702
A61K31/7032
A61K31/736
A61P21/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018147093
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020018273
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】305018395
【氏名又は名称】協同乳業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】松本 光晴
(72)【発明者】
【氏名】角 沙樹
(72)【発明者】
【氏名】枝 伸彦
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057718(WO,A1)
【文献】特開2017-190298(JP,A)
【文献】特表2015-531363(JP,A)
【文献】角沙樹 et al,腸内細菌を利用した水素ガス産生乳飲料,New Food Industry,2017年,59(9),23-28
【文献】Matsumoto Mitsuharu et al,Effects of functional milk containing galactooligosaccharide, maltitol, and glucomannan on the production of hydrogen gas in the human intestine,Journal of Functional Foods,2017年,35,13-23
【文献】Kosuke Aoki et al,Pilot study: Effects of drinking hydrogen-rich water on muscle fatigue caused by acute exercise in elite athletes,Medical Gas Research,2012年,2(12)
【文献】Ostojic, S,Molecular Hydrogen in Sports Medicine: New Therapeutic Perspectives,International Journal of Sports Medicine,2015年,36(04),273-276
【文献】Toru Ishibashi et al,Consumption of water containing a high concentration of molecular hydrogen reduces oxidative stress and disease activity in patients with rheumatoid arthritis: an open-label pilot study,Medical Gas Research,2012年,2(27),1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
A23L
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチトールとガラクトオリゴ糖とグルコマンナンとを含む難消化性食品成分を有効成分として含む、高強度運動による疲労軽減及び/又は回復用組成物。
【請求項2】
持久力競技のアスリートに適用する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記高強度運動は、1時間の75%VO2max以上の負荷を伴う運動である、請求項1または2に記載の組成物
【請求項4】
VOmaxの70~80%で1時間程度の運動をする人に適用する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記疲労が、少なくとも翌朝まで継続する疲労、または、翌朝以降に生じる疲労である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物
【請求項6】
前記難消化性食品成分を、組成物中約0.1%w/w~約20%w/w含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、飲食品である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記飲食品が乳製品である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記乳製品が、乳飲料、ヨーグルト、アイスクリームおよびプリンからなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
運動開始の約3~5時間前に適用し、任意に運動開始後にも適用する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度運動による疲労軽減及び/又は回復用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
運動は、活性酸素の産生を増大させ、生体に酸化ストレスを与えることが知られている。生体には抗酸化防御機能があるが、高強度運動により、それを上回る顕著な量の活性酸素が発生する場合には、筋肉などの疲労の原因になり、その後の疲労の発生及び疲労回復の遅延に影響すると考えられている。
特に、日常的に高強度トレーニングを行うアスリートにとって、日々の運動後の疲労の発生及び回復はパフォーマンス向上のために重要な課題である。運動の種類、時間や個々の抗酸化防御機能に応じて、酸化ストレスの度合いも異なるので、疲労の抑制及び回復は、個別に適切な方法を考える必要がある。また、運動選手には、ドーピング規制の問題があるため、特殊な薬剤を用いない方法が望まれる。
運動後疲労回復の1手段として、水素ガス溶存水(水素水)摂取の可能性が報告されている(非特許文献1~3)。しかしながら、水素ガスはその性状から、水素水摂取後、僅か10分足らずで消失し、持続的な効果は期待できない。
一方、健常成人において難消化性食品成分を摂取した場合に、大腸内で腸内細菌が水素ガスを発生させることが知られている(特許文献1、非特許文献4)。しかしながら、難消化性食品成分の高強度運動による疲労軽減及び/又は回復の効果は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO 2017/057718
【非特許文献】
【0004】
【文献】Medical Gas Research 2-12,2012
【文献】Sports Medicine 36; 273-279,2015
【文献】Posgraduate Medicine, Vol.126,Issue 5, 188-196,2014
【文献】J Functional Foods 35:13-23,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高強度運動による疲労軽減及び/又は回復用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、マルチトールとガラクトオリゴ糖とグルコマンナンとを含む難消化性食品成分を有効成分として含む組成物は、高強度運動による疲労軽減及び/又は回復に非常に効果があることを発見し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、マルチトールとガラクトオリゴ糖とグルコマンナンとを含む難消化性食品成分を有効成分として含む、高強度運動による疲労軽減及び/又は回復用組成物を提供する。
【0007】
本発明の態様は下記があげられる。
[1]マルチトールとガラクトオリゴ糖とグルコマンナンとを含む難消化性食品成分を有効成分として含む、高強度運動による疲労軽減及び/又は回復用組成物。
[2]持久力競技のアスリートに適用する、[1]に記載の組成物。
[3]VOmaxの70~80%で1時間程度の運動をする人に適用する、[1]または[2]に記載の組成物。
[4] 前記難消化性食品成分を、組成物中約0.1%w/w~約20%w/w含む、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]前記組成物が、飲食品である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]前記飲食品が乳製品である、[5]に記載の組成物。
[7]前記乳製品が、乳飲料、ヨーグルト、アイスクリームおよびプリンからなる群より選択される、[6]に記載の組成物。
[8]運動開始の約3~5時間前に適用し、任意に運動開始後にも適用する、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高強度運動による疲労軽減及び/又は回復に優れた組成物及び方法を提供することができる。本発明の組成物によれば、高強度トレーニングによる疲労軽減及び/又は回復に優れており、疲労が蓄積せずに、新たなトレーニングをすることができるので、パフォーマンスの向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、被験者A(年齢32歳、VO2max (ml/kg/min)38.6)の試験結果を示す。
図2図2は、被験者B(年齢25歳、VO2max (ml/kg/min)69.7)の試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において『最大酸素摂取量VOmax』とは、トレッドミルや自転車エルゴメータを使用して、段階的に負荷を上げていき、負荷を上げていっても、酸素消費量が変化しなくなったときの酸素摂取量をいう。
本発明において『高強度運動』とは、生体の抗酸化防御機能を上回る顕著な量の活性酸素が発生するような運動をいい、例えば、1時間の75%VO2max以上の負荷をいう。
本発明の組成物が適用される対象は、VOmaxの70~80%で1時間程度の運動をする人であれば、年齢問わず誰にでも適用することができる。したがって、本発明の組成物は、日常的に高強度トレーニングを行うアスリートに効果的に用いられる一方で、例えば、60歳以上の高齢者のリハビリにも効果的に用いられることが考えられる。
VOmaxの70~80%で1時間程度の運動としては、例えば、持久力競技があげられるが、一連のトレーニングが上記を満たせば、その他の運動も含まれる。「持久力競技」としては、例えば、マラソン、陸上中長距離、水泳中・長距離、自転車ロード、クロスカントリー、スピードスケート長距離などがあげられる。
本発明において『疲労』とは、身体および精神機能の減退であり、筋疲労を含む。「筋疲労」とは、筋の最大張力もしくは最大パワーが低下する現象、あるいは筋が一定の張力もしくは一定のパワーを継続して発揮できなくなる現象をいう。本発明においては、高強度運動により引き起こされる筋損傷も含む。
本発明において『疲労軽減及び/又は回復』とは、疲労が生じた後のリカバリーだけでなく、疲労が生じることを未然に防ぐことも含む。
本発明の組成物が適用される好ましい時間は、高強度運度の種類及び時間にもよるが、疲労が生じることを未然に防ぐために効果的なのは、一般的に運動開始の約3~5時間前の適用であり、任意に運動開始後にも適用することができる。
【0011】
本発明において『難消化性食品成分』とは、小腸で消化吸収されないか若しくは消化吸収されにくい食品成分である、日本食物繊維学会がルミナコイドと定義付けている物質を指す(食品と開発48:15-17、2013)。
本発明において『難消化性食品成分』は、マルチトールとガラクトオリゴ糖とグルコマンナンとの3成分からなることが好ましいが、3成分以外の難消化性食品成分を含んでもよい。
本発明において『マルチトール』とは、4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルシトールであり、還元麦芽糖とも呼ばれる。
【0012】
本発明において『ガラクトオリゴ糖』とは、4’-ガラクトシルラクトースである。
【0013】
本発明において『グルコマンナン』とは、グルコースとマンノースがおよそ2:3の割合でβ-1,4-結合で直鎖上に連なった多糖である。本発明に用いるグルコマンナンの重合度は特に限定されない。
【0014】
本発明の組成物における難消化性食品成分の添加量は特に限定されないが、量が多すぎる場合には下痢の副作用の可能性があるので、好ましい1回の摂取量は、難消化性食品成分の組合せが0.2g~40g、好ましくは1g~30g、更に好ましくは2g~20gである。200mlの飲料の場合は、組成物の重量に対して難消化性食品成分の組合せを0.1%w/w~20%w/w、好ましくは0.5%w/w~15%w/w、更に好ましくは1%w/w~10%w/w、含む。
【0015】
難消化性食品成分の各成分間の重量比率は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えば、難消化性食品成分の3成分の各成分は、難消化性食品成分の全体の重量に対して、少なくとも0.5%以上、1%以上、5%以上、10%以上、20%以上の重量比率で含まれることが好ましい。難消化性食品成分の各成分は、難消化性食品成分の全体に対して等量ずつ含まれていてもよく、または互いに異なる重量比率で含まれていてもよいが、マルチトールとガラクトオリゴ糖とグルコマンナンの内、最少量のものが難消化性食品成分の全体の重量の5%以上を占める重量比率が好ましい。
【0016】
難消化性食品成分の3成分の各成分の添加量は、特に限定されないが、量が多すぎる場合には下痢の副作用の可能性があるので、好ましい1回の摂取量は、下記の通りである:組成物に含まれるマルチトールとガラクトオリゴ糖の1回の摂取量は0.2g~6g、好ましくは1g~5g、更に好ましくは1.6g~3gであってよく、組成物に含まれるグルコマンナンの1回の摂取量は、0.1g~6g、好ましくは0.2~5g、更に好ましくは0.2g~3gであってよい。200mlの飲料の場合は、例えば、組成物に含まれるマルチトールの濃度は0.1%w/w~3%w/w、好ましくは0.5%w/w~2.5%w/w、0.8%w/w~1.5%w/wであってよく、組成物に含まれるガラクトオリゴ糖の濃度は0.1%w/w~3%w/w、好ましくは0.5%w/w~2.5%w/w、0.8%w/w~1.5%w/wであってよく、そして、組成物に含まれるグルコマンナンの濃度は、0.05%w/w~3.0%w/w、好ましくは0.1%w/w~2.5%w/w、更に好ましくは0.1%w/w~2.0%w/wであってよい。上記の濃度は、組成物の重量に対する濃度である。なお、1日あたりの摂取量は上記1回の摂取量の1回ないしは2回分が好ましく、1回あたりの量を2回等に分割して摂取することも可能である。
【0017】
本発明の組成物は、上記難消化性食品成分に加えて、プロバイオティクスを含んでいてもよい。本明細書においてプロバイオティクスは、摂取することによりヒトに有益な作用をもたらす生きた微生物を意味する。本発明の組成物に含まれるプロバイオティクスは特に限定されないが、当該技術分野においてビフィズス菌と称されるビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)に属する微生物、乳酸菌と理解される微生物、例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する微生物、ラクトコッカス・ラクティス、エンテロコッカス・フェカリス、ペディオコッカス・ペントサセウスが挙げられる。プロバイオティクスは、上記微生物の単独の株を含むものであってもよく、又は、複数の種若しくは株の組合せを含むものであってもよい。
【0018】
ラクトバチルス属に属する微生物の例として、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・デリブルエッキ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ロイテリが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
ビフィドバクテリウム属に属する微生物の例として、ビフィドバクテリウム・アニマリス・亜種アニマリス、ビフィドバクテリウム・アニマリス・亜種ラクティス、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス及びビフィドバクテリウム・アドレスセンティスが挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、好ましくはビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティス及びビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、より好ましくはビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティスを用いることができる。ビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティスの一態様として、LKM512株を用いることができる。LKM512株は、受託番号FERMP-21998として受託機関(NITE特許生物寄託センター)から入手することができる。
【0020】
本発明の組成物におけるプロバイオティクスの量は特に限定されないが、1回の摂取あたり、2×10~8×1012cfu、好ましくは2×10~8×1011cfu、より好ましくは2×10~8×1013cfuを含むように配合することができる。本明細書においてcfuとは、コロニー形成ユニットを意味する。cfuは、当業者に知られたいずれの方法を用いて測定してもよいが、例えば、微生物をリン酸緩衝液(PBS)で希釈し、当該希釈液をMRS培地上にまき、37℃で48時間培養した後、生育したコロニーの数をカウントすることにより測定することができる。
【0021】
本発明の組成物は、好ましくは飲食品である。飲食品は食品または飲料である限り特に限定されないが、より好ましくは乳製品または洋生菓子である。乳製品は、生乳または加工乳を原料に使用した食品または飲料で有る限り特に限定されないが、例えば、乳飲料、チーズ、発酵乳、およびアイスクリーム類が含まれ、洋生菓子にはプリンが含まれる。特に好ましい態様において本発明の組成物は乳飲料である。
【0022】
本明細書において乳飲料とは、生乳または加工乳を原料に乳由来でない成分を添加した飲料を意味する。乳飲料は、脱脂乳(脱脂粉乳を水で戻したもの)をさらに含んでいてもよい。乳飲料はまた、添加する成分として、コーヒー、果汁、香料など味や香り等の嗜好を調整するものや、ビタミンやミネラルなどの栄養素を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の組成物は、さらにプロバイオティクスを含んでいてもよい。本発明の組成物に含まれるプロバイオティクスについては、上記飲食品の項目において定義したとおりである。この態様において組成物は、難消化性食品成分の組合せとプロバイオティクスとが同一の組成物中に含まれるものであってもよく、あるいは難消化性食品成分の組合せを含む組成物及びプロバイオティクスを含む組成物で構成される組合せ組成物であってもよい。組合せ組成物の場合、難消化性食品成分の組合せを含む組成物とプロバイオティクスを含む組成物は、同時に摂取するものであってもよく、あるいは別々に摂取するものであってもよい。
【0024】
本発明の組成物の形態は、ヒトが摂取するのに適した形態である限り特に限定されず、例えば、液体、懸濁液(分散液状)、乳濁液、半固体、ペースト、粉末、顆粒、錠剤、タブレット剤、カプセル剤、または丸剤の形態であってもよい。また、本発明の組成物は、乳化剤、安定剤、甘味料、防腐剤、着色料、酸化防止剤、または香料等の添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の組成物は、高強度運動による疲労軽減及び/又は回復に非常に効果がある。本発明の組成物の効果は、例えば、疲労の原因となる、乳酸及び/又は活性酸素による筋肉等の損傷度合を測定することによって、また、筋肉の疲労度合を測定することによって確認することができる。活性酸素による損傷度合の測定としては、DNAの酸化損傷物8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)の量などを測定することがあげられる。また、筋肉の疲労度合の測定としては、筋細胞傷害により増加する血中のミオグロビン量、筋損傷により増加する血中のクレアチン キナーゼ量、自覚症状(疲労感、全身筋痛、下肢筋痛)は、Visual Analog Scale (VAS法)を用いて測定することができる。
また、本発明の組成物の効果は、二重盲検ランダム化クロスオーバーデザイン(同じ被験者で、試験食+運動の試行とプラセボ+運動の試行との間1~2週間の休業期間を設けた試験を実施し、その効果を比較する)にて確認することができる。
【0026】
以下、本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明の1例に過ぎなく、本発明の権利範囲を限定するものではない。

[実施例1]
高強度運動による疲労軽減及び/又は回復試験
本発明の組成物による高強度運動による疲労軽減及び/又は回復試験を下記の方法により行った。

方法
<被験者>
食物アレルギー(乳)および強い乳糖不耐症(牛乳を飲めば下痢になる)を持たない健常成人男性を対象とした。被験者Aは、年齢32歳、VO2max (ml/kg/min)38.6であり、被験者Bは、年齢25歳、VO2max (ml/kg/min)69.7であった。

<試験食>
本発明の組成物として難消化性食品成分添加牛乳(生乳44%、脱脂乳4.75%、にマルチトール1.1%、ガラクトオリゴ糖1.55%、グルコマンナン0.11%、コハク酸モノグリセライド0.2%、水48.29%を混合させた飲料)を200ml用いた。また、プラセボ飲料200ml(粉飴5%、乳タンパク質3.5%、デキストリン3%、グラニュー糖2.3%、無塩バター1.83%、精製塩0.02%、微結晶セルロース0.3%、コハク酸モノグリセライド0.2%、ミルクフレーバー0.02%、水83.83%を混合させた飲料)を200ml使用した。
両試料間の見た目や味に加えカロリーも殆ど同じに調整しており、二重盲検試験が十分に可能なレベルであった。

<試験プロトコール>
高強度運動+プラセボ、高強度運動+難消化性食品成分添加牛乳の2試行を二重盲検ランダム化クロスオーバーデザイン(同じ被験者が試験食とプラセボを飲んで比較)にて実施した。
高強度運動として、自転車エルゴメーターを用いて75%VO2max負荷の自転車ペダリング運動を1時間実施した。各試行の4時間前にプラセボ飲料または難消化性食品成分添加牛乳を200mL摂取した。食事は前日の夜、当日の朝・昼のすべて規定食を配布し、前日の午後8:00から翌朝の午前9:00の測定が終了するまで水以外の摂取を制限した。測定は、人工気象室で室温21℃、湿度50%の環境下で行った。

測定項目
A) 乳酸、ミオグロビン、クレアチンキナーゼ
運動直前、運動直後、運動30分後、運動60分後及び翌朝に、上肢静脈から採血を実施した。採取した血液を除蛋白上清用のスピッツに入れて15分間室温にて静置し、3000rpmで10分間遠心分離した後に得られた上清を用いて、乳酸、ミオグロビン、クレアチンキナーゼを測定した。
乳酸は酵素法(試薬デタミナLA(協和メデックス(株));BioMajesty JCA-BM9130(日本電子(株)))により測定した。
ミオグロビンは、CLIA法(試薬ケミルミ ミオグロビン(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス(株));ADVIA Centaur XP(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス(株)))により測定した。
クレアチンキナーゼは、UV法(試薬N-アッセイCPK-L ニットーボー(ニットーボーメディカル(株));BioMajesty JCA-BM8060(日本電子(株)))により測定した。

B) 8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)
運動直前、運動60分後及び翌朝に、全尿を採取したのちに尿量を計量し、採取した尿から酸化ストレスマーカーであるDNAの酸化損傷物8-OHdGを試薬New 8 OHdG Check ELISA(日研ザイル(株))を用いて、Quad-MACS((株)医学生物学研究所)により測定した。体重、尿量、前回の排尿からの経過時間から、体重1kg当たり、1時間当たりの8-OHdG生成速度を算出した。また、同時に測定したクレアチニン値(試薬シカリキッド-S CRE(関東化学(株))を用いてBioMajesty JCA-BM8060(日本電子(株))により測定)で割った比(クレアチニン補正)も求めた。

C) 自覚症状(疲労感、全身筋痛、下肢筋痛)
自覚症状(疲労感、全身筋痛、下肢筋痛)は、Visual Analog Scale (VAS法)を用いて測定した。各スケール上(疲労感の場合は100mm)で、「全く症状がない」(0mm)から「(想定できる範囲の)最大の症状」(疲労感の場合は100mm)の連続体で、自分の症状がどの位置にあるのかをチェックしてもらい、定規で1mm単位で測定することによって定量的に求めた。

結果
図1及び2に、被験者A及びBの結果を各々示す。
乳酸は、対象によってばらつきがあったが、1対象では、プラセボ飲料では運動前後で約30mg/dL増加したのに対し、難消化性食品成分添加牛乳では約10mg/dLしか増加しなかった。
尿中の8-OHdG生成速度は、両被験者において、プラセボ飲料では運動前後で約10-15ng/kg/hr増加したのに対し、難消化性食品成分添加牛乳では増加しなかった。
自覚症状に関しては、両被験者において、疲労感は、難消化性食品成分添加牛乳摂取により、プラセボ摂取と比較して、運動後の時間の経過に伴う減少が速く、ベースラインに早く戻ることが示された。同様に、被験者Aでは、全身筋痛および下肢筋痛が、難消化性食品成分添加牛乳摂取により、プラセボ摂取と比較して、運動後の時間の経過に伴う減少が速く、ベースラインに早く戻ることが示された。被験者Bは、翌朝の全身筋痛および下肢筋痛が、難消化性食品成分添加牛乳摂取により、プラセボ摂取と比較して、低いことが示された。
筋損傷マーカーに関して、ミオグロビンは、被験者Aでは、プラセボ飲料では運動直後上昇が認められたのに対し、難消化性食品成分添加牛乳では上昇が抑制されていた。被験者Bは、両試験食で運動により上昇が認められたものの、難消化性食品成分添加牛乳ではプラセボ飲料と比較し上昇が抑制されていた。
クレアチンキナーゼは、翌朝に上昇が認められた被験者Bにおいて、プラセボ飲料と比較して、難消化性食品成分添加牛乳では抑制される傾向が観察された。
【産業上の利用の可能性】
【0027】
本発明の組成物によれば、高強度運動による疲労軽減及び/又は回復に優れた組成物及び方法を提供することができる。本発明の組成物によれば、高強度トレーニングによる疲労軽減及び/又は回復に優れており、疲労が蓄積せずに、新たなトレーニングをすることができるので、パフォーマンスの向上が期待できる。
図1
図2