(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/14 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
F16K31/14
(21)【出願番号】P 2018206883
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鋸屋 宜和
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-056602(JP,A)
【文献】特開昭60-219198(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0130787(US,A1)
【文献】実開昭59-025753(JP,U)
【文献】特開昭57-107484(JP,A)
【文献】特開2013-190075(JP,A)
【文献】特開平11-072171(JP,A)
【文献】実開昭53-074732(JP,U)
【文献】実開昭52-130131(JP,U)
【文献】国際公開第2016/047322(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/12-31/60,
3/24- 3/26,11/07,
F15B 11/00-11/22,
13/00-13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の流れを制御する制御弁であって、
ハウジングと、
前記ハウジングに形成され前記ハウジングの端面に開口する収容孔と、
前記収容孔に摺動自在に挿入される弁体と、
前記収容孔の開口を封止するキャップと、
前記弁体を一方向へ付勢する付勢部材と、
前記キャップに設けられ、手動操作によって前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁体を移動させる切換部と、
前記キャップの内部に形成され前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁体を付勢するパイロット圧が導かれるパイロット圧室と、
前記キャップに形成され前記パイロット圧室にパイロット圧を導くパイロットポートと、
前記パイロット圧室の圧力を
タンクに逃がすドレン通路と、
前記ドレン通路に設けられ通過する作動流体の流れに抵抗を付与する絞り部と、を備えることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記ドレン通路は、前記パイロット圧室と前記タンクとを常時連通させ、
前記タンクへの前記ドレン通路の連通開度は、前記弁体のストローク位置に関わらず一定であることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記切換部は、前記キャップに形成されるねじ孔に螺合し、手動操作によって前記弁体に対して進退する切換ボルトを有することを特徴とする
請求項1又は2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記キャップ内に設けられ、前記付勢部材の両端が着座して前記付勢部材の伸縮に伴い相対移動する一対の着座部材をさらに備え、
前記一対の着座部材が互いに当接することにより、前記付勢部材の付勢力に抗する前記弁体の移動が規制されることを特徴とする
請求項1から3のいずれか一つに記載の制御弁。
【請求項5】
前記一対の着座部材のうちの一方は、前記ハウジングの端面に接触するフランジ部を有し、
前記ハウジングの端面に接触する前記フランジ部の端面には、前記パイロット圧室と前記ドレン通路とを常時連通させるスリットが形成されることを特徴とする請求項4に記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の流れを制御する制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体圧制御装置に用いられる制御弁として、作業者による手動操作によってポジションが切り換えられる手動制御弁が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手動制御弁は、ハウジングの端部に開口する収容孔に弁体が収容され、収容孔の開口を塞ぐようにキャップが設けられる。キャップの内部には、弁体を一方へ付勢するスプリングが設けられる。スプリングの付勢力に抗して手動で弁体を移動させることで、制御弁のポジションが切り換えられる。
【0005】
このような手動制御弁においては、例えば、自動の検査ラインにおいて作動確認をする場合など、外部からの信号によってもポジションの切り換えを可能にしたいという要望がある。
【0006】
外部からの信号によって制御弁を作動させる方法として、例えば、キャップの内部にパイロット圧を供給して弁体を移動させることが考えられる。しかしながら、手動制御弁では、一般に、タンクに連通するドレン通路を通じてキャップ内の圧力を排出するように構成される。よって、キャップ内にパイロット圧を導いても、弁体を移動させる付勢力を発揮することができない。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、外部からの信号によっても作動可能な手動切換式の制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、作動流体の流れを制御する制御弁であって、ハウジングと、ハウジングに形成されハウジングの端面に開口する収容孔と、収容穴に摺動自在に挿入される弁体と、収容孔の開口を封止するキャップと、弁体を一方向へ付勢する付勢部材と、キャップに設けられ、手動操作によって付勢部材の付勢力に抗して弁体を移動させる切換部と、キャップの内部に形成され付勢部材の付勢力に抗して弁体を付勢するパイロット圧が導かれるパイロット圧室と、キャップに形成されパイロット圧室にパイロット圧を導くパイロットポートと、パイロット圧室の圧力をタンクに逃がすドレン通路と、ドレン通路に設けられ通過する作動流体の流れに抵抗を付与する絞り部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明は、切換部が、キャップに形成されるねじ孔に螺合し、手動操作によって弁体に対して進退する切換ボルトであることを特徴とする。
【0010】
これらの発明では、パイロット圧室の圧力を逃がすドレン通路が設けられると共に、ドレン通路には絞り部が設けられる。パイロット圧室にパイロット圧を導くと、ドレン通路を通じてパイロット圧室内の作動流体の一部は排出されるものの、絞り部によって抵抗が付与されるため、パイロット圧室には所定の圧力が生じる。よって、パイロット圧室にパイロット圧を供給することで、パイロット圧室内に弁体を移動させる推力が発生し、弁体を移動させることができる。
【0011】
本発明は、キャップ内に設けられ、付勢部材の両端が着座して付勢部材の伸縮に伴い相対移動する一対の着座部材をさらに備え、一対の着座部材が互いに当接することにより、付勢部材の付勢力に抗する弁体の移動が規制されることを特徴とする。この発明では、着座部材によって弁体の移動が規制できるため、着座部材の変更により容易に弁体の移動量を調整できる。
【0012】
本発明は、ドレン通路が、パイロット圧室とタンクとを常時連通させ、タンクへのドレン通路の連通開度は、弁体のストローク位置に関わらず一定であることを特徴とする。
本発明は、一対の着座部材のうちの一方が、ハウジングの端面に接触するフランジ部を有し、ハウジングの端面に接触するフランジ部の端面には、パイロット圧室とドレン通路とを常時連通させるスリットが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、手動操作によって作動すると共にパイロット圧によっても作動する制御弁が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る制御弁の断面図であり、連通ポジションにある状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る制御弁の断面図であり、遮断ポジションである状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る制御弁の断面図であり、パイロット圧によって遮断ポジションに切り換えられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る制御弁100について説明する。
【0016】
制御弁100は、例えば油圧ショベルなどの建設機械に搭載される流体圧制御装置(図示省略)に用いられ、流体圧供給源(図示省略)から流体圧機器(図示省略)等に導かれる作動流体の流れを制御するものである。以下の実施形態では、作動流体が作動油である場合について説明する。作動流体は、作動油に限らず、他の非圧縮性流体または圧縮性流体であってもよい。
【0017】
制御弁100は、スプール10の移動によって2つのポジションの間で切り換えられる2ポジションの制御弁である。制御弁100は、
図1に示すように、ハウジング1と、ハウジング1に形成されハウジング1の端面1Bに開口する収容孔1Aと、収容孔1Aに摺動自在に挿入される弁体としてのスプール10と、収容孔1Aの開口を封止するキャップ30と、キャップ30内に設けられスプール10を一方向へ付勢する付勢部材としてのスプリング35と、キャップ30に設けられ、手動操作によってスプリング35の付勢力に抗してスプール10を移動させる切換部40と、キャップ30の内部に形成されスプリング35の付勢力に抗してスプール10を付勢するパイロット圧が導かれるパイロット圧室50と、キャップ30に形成されパイロット圧室50にパイロット圧を導くパイロットポート55と、キャップ30内に設けられ、スプリング35の両端が着座してスプリング35の伸縮に伴い相対移動する一対の着座部材としてのばね座60,65と、を備える。
【0018】
ハウジング1には、作動油が流れる流入通路2A及び流出通路2Bが軸方向に並んで形成される。流入通路2Aは、収容孔1Aに連通し、図示しない配管等を介して流体圧供給源と連通する。流出通路2Bは、収容孔1Aに連通し、図示しない配管等を介して油圧機器等と連通する。また、収容孔1Aの底部には、タンクTに連通するタンクポート2Cが形成される。タンクポート2Cは、収容孔1Aの底部とスプール10の端部との間に導かれる作動油をタンクTに導く。
【0019】
スプール10は、収容孔1Aの内周面に摺接する本体部11と、本体部11の一端(図中左側端)に取り付けられる支持部20と、を有する。
【0020】
本体部11は、収容孔1Aの内周面に沿って摺動する第1ランド部12及び第2ランド部13と、第1ランド部12及び第2ランド部13より小径に形成され第1ランド部12と第2ランド部13とを連結する連結部14と、を有する。
【0021】
連結部14は、第1ランド部12及び第2ランド部13よりも小径に形成されて、収容孔1Aの内周面との間に環状の流体室5を形成する。流体室5は、スプール10に移動に伴い流入通路2A及び流出通路2Bと連通し、流入通路2Aを通過した作動油を流出通路2Bへと導く。
【0022】
本体部11の一端には、収容孔1Aの内径よりも外径が小さい第1小径部15と、第1小径部15の一端側(支持部20側、図中左側)に設けられ第1小径部15よりも外径が小さい第2小径部16と、が形成される。第1小径部15と収容孔1Aとの間には、環状空間6が形成される。
【0023】
支持部20は、キャップ30の内部に収容される。支持部20は、本体部11の一端の第2小径部16にねじ締結によって取り付けられる軸部21と、軸部21よりも外径が大きいヘッド部22と、を有する。つまり、支持部20は、本体部11に対して着脱自在に取り付けられる。
【0024】
軸部21は、本体部11の第2小径部16と略同一の外径を有し、第2小径部16に同軸的に取り付けられる。ヘッド部22の端面には、径方向に延びるスリット23が形成される。
【0025】
キャップ30には、収容孔1Aに連通しスプール10が進入可能な大径穴31と、大径穴31に連通し大径穴31よりも内径が小さい小径穴32と、大径穴31に連通するパイロットポート55と、が形成される。小径穴32及び大径穴31により、パイロット圧室50が形成される。小径穴32には、支持部20のヘッド部22が進入する。
【0026】
スプリング35は、支持部20の軸部21の外周に設けられ、一対のばね座60,65によって両端が支持される。軸部21とヘッド部22との間の段差面22Aに一方のばね座60が着座し、キャップ30が取り付けられるハウジング1の端面1Bに他方のばね座65が着座する。スプリング35の伸縮(スプール10の移動)に伴い、一方のばね座60は、他方のばね座65に対して、スプール10の軸方向に沿って相対移動する。スプリング35は、一対のばね座60,65の間に圧縮状態で介装される。よって、スプリング35は、流入通路2Aと流出通路2Bとを連通する方向(図中左方向)にスプール10を移動させる付勢力を発揮する。
【0027】
一対のばね座60,65は、互いに同一形状に形成される。一方のばね座60は、キャップ30の大径穴31と小径穴32との間の段差面31Aに接触する円板状のフランジ部61と、フランジ部61から他方のばね座65に向けて軸方向に延びる筒状のボス部62と、を有する。フランジ部61の内径は、ヘッド部22の外径よりも小さく形成される。大径穴31と小径穴32との間の段差面31Aに接触するフランジ部61の端面には、径方向に延びるスリット61Aが形成される。
【0028】
他方のばね座65は、ハウジング1の端面1Bに接触する円板状のフランジ部66と、フランジ部66から一方のばね座60に向けて軸方向に延びる筒状のボス部67と、を有する。ハウジング1の端面1Bに接触するフランジ部66の端面には、径方向に延びるスリット66Aが形成される。
【0029】
切換部40は、キャップ30に形成されるねじ孔33に螺合し、手動操作によってスプール10に対して進退する切換ボルト41と、ねじ孔33に対する切換ボルト41の螺合位置の変化を規制する規制ナット45と、を有する。ねじ孔33は、パイロット圧室50(小径穴32)に連通するようにキャップ30に形成される。
【0030】
切換ボルト41は、ねじ孔33に螺合するねじ部42と、スプール10のヘッド部22に軸方向から接触する接触部43と、作業者によって操作される操作部44と、を有する。接触部43は、小径穴32内に収容される。ねじ部42は、一部がキャップ30の外側に突出し、突出するねじ部42の端部に操作部44が設けられる。作業者が操作部44を把持して回転することで、ねじ孔33に対するねじ部42の螺合位置が調整される。
【0031】
規制ナット45は、キャップ30の外側に露出するねじ部42に螺合する。切換ボルト41に螺合する規制ナット45がキャップ30に対して締め付けられることで、キャップ30のねじ孔33に対する切換ボルト41の螺合位置の変化が規制される。反対に、規制ナット45を緩めて規制ナット45とキャップ30との間に隙間を生じさせることで、キャップ30のねじ孔33に対する切換ボルト41の螺合位置の調整が可能となり、切換ボルト41がスプール10に対して進退可能となる。
【0032】
制御弁100は、パイロット圧室50の圧力を逃がすドレン通路70と、ドレン通路70に設けられ通過する作動油の流れに抵抗を付与する絞り部と、をさらに備える。
【0033】
ドレン通路70は、スプール10の内部に形成される。ドレン通路70は、スプール10の本体部11の軸心を通り、ハウジング1に形成されるタンクポート2Cに常時連通する軸方向通路71と、第1小径部15の外周の環状空間6と軸方向通路71を連通し、軸方向通路71よりも流路抵抗が大きい絞り部としての絞り通路72と、を有する。軸方向通路71は、スプール10の本体部11の端面に開口する。軸方向通路71は、本体部11と収容孔1Aの底部との間の空間(収容孔1Aの一部)を通じてタンクポート2Cに常時連通する。また、パイロット圧室50は、他方のばね座65のフランジ部66のスリット66Aを通じて環状空間6に常時連通する。よって、パイロット圧室50は、制御弁100のポジション(スプール10の位置)に関わらず、ドレン通路70及びタンクポート2Cを通じてタンクTに常時連通する。
【0034】
次に、制御弁100の作動について説明する。
【0035】
制御弁100は、切換部40の切換ボルト41の螺合位置を調整することでポジションが切り換えられる。以下では、流入通路2Aと流出通路2Bとが連通する状態を「連通ポジション」、遮断される状態を「遮断ポジション」と称する。
【0036】
制御弁100を連通ポジション(
図1)から遮断ポジション(
図2)に切り換える場合には、規制ナット45を緩め、スプール10に向けて移動するように切換ボルト41を回転させる。これにより、スプール10は、切換ボルト41により押圧され、スプリング35の付勢力に抗して移動する。また、スプリング35の付勢力に抗したスプール10の移動に伴い、軸部21とヘッド部22との間の段差面22Aに押圧されて一方のばね座60も他方のばね座65に向けて移動する。
【0037】
スプール10は、一対のばね座60,65のそれぞれのボス部62,67が当接するまでスプリング35の付勢力に抗して移動する。言い換えれば、一対のばね座60,65が当接することによって、スプリング35の付勢力に抗したスプール10の移動が規制される。一対のばね座60,65が当接するまでスプール10が移動すると、
図2に示すように、第2ランド部13によって流入通路2Aと流出通路2Bとの連通が遮断される。この状態で、規制ナット45を締め付けて、切換ボルト41の螺合位置の変化を規制する。このようにして、制御弁100は、遮断ポジションに切り換えられる。
【0038】
一方、制御弁100を遮断ポジションから連通ポジションに切り換える場合には、規制ナット45を緩め、スプール10から離間するように切換ボルト41を回転させる。これにより、スプール10は、スプリング35の付勢力を受けて、スプール10から離間する切換ボルト41に追従するように一方のばね座60と共に移動する。スプール10は、ばね座60が大径穴31と小径穴32との間の段差面31Aに当接するまで、スプリング35の付勢力を受けて移動する。ばね座60が大径穴31と小径穴32との間の段差面31Aに当接するまで移動すると、
図1に示すように、流入通路2Aと流出通路2Bとが流体室5を通じて連通する。この状態で、規制ナット45を締め付けて、切換ボルト41の螺合位置の変化を規制する。このようにして、制御弁100は、連通ポジションに切り換えられる。
【0039】
このように、制御弁100は、切換部40の切換ボルト41を手動操作することにより、ポジションを切り換えることができる。
【0040】
ここで、一般に、手動操作によって切り換えられる制御弁が組み込まれる流体圧制御装置は、製造時の検査工程において、自動の検査ラインにより出荷時の検査が行われることがある。しかしながら、手動操作される制御弁が流体圧制御装置に組み込まれると、制御弁の動作確認は、自動の検査ラインによる検査とは別に、作業者によって手動で行う必要がある。また、制御弁の切換部の周辺のスペースが少ない場合には、切換部を操作しにくくなり、制御弁の動作確認をする工程に多くの工数を要する。このように、流体圧制御装置と共に自動検査ラインによって動作確認をする場合など、手動操作される制御弁であっても外部からの信号によって作動させたい場合がある。しかしながら、手動の制御弁では、キャップの内部の圧力のこもりによる誤作動を防止するために、キャップの内部は、タンクに連通させる必要がある。このため、キャップの内部にパイロット圧を供給してもパイロット圧がスプールに作用せず、スプールを移動させることが難しい。
【0041】
これに対し、制御弁100では、ドレン通路70に絞り通路72が設けられるため、パイロット圧室50はタンクTに連通するものの、絞り通路72を通過する作動油には抵抗が付与される。よって、パイロット圧室50の圧力は、絞り通路72の抵抗によりタンク圧までは低下せず、所定の圧力が維持される。これにより、制御弁100が連通ポジションにある状態でパイロット圧室50にパイロット圧を供給すると、一方のばね座60のフランジ部61におけるスリット61Aを通じてヘッド部22のスリット23にタンク圧以上の圧力が作用する。ヘッド部22に作用する圧力により、スプール10がスプリング35の付勢力に抗して付勢される。よって、
図3に示すように、パイロット圧室50にパイロット圧が供給されている間は、パイロット圧室50に生じる圧力により、制御弁100は、遮断ポジションに切り換えられる。パイロット圧室50へのパイロット圧の供給を停止すると、パイロット圧室50の圧力はドレン通路70を通じてタンクTに排出される。このため、スプール10は、スプリング35の付勢力を受けて移動し、連通ポジションに切り換えられる。
【0042】
このように、制御弁100は、手動操作によるポジションの切換に加え、パイロット圧によるポジションの切換も可能である。よって、自動の検査ラインによって切換弁の動作確認をすることができ、検査工程に要する工数を低減することができる。なお、パイロット圧室50のパイロット圧による制御弁100の作動は、自動の検査ラインにおいて検査する場合に限らず、その他の状況において実行されてもよい。
【0043】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0044】
上記実施形態では、パイロット圧をパイロット圧室50に供給することにより、制御弁100は、連通ポジションから遮断ポジションに切り換えられる。これに対し、パイロット圧をパイロット圧室50に供給することにより、制御弁100は、遮断ポジションから連通ポジションに切り換えられるものでもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、ドレン通路70は、スプール10に形成される。これに対し、ドレン通路70は、ハウジング1やキャップ30に形成されるものでもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、絞り部は、他のドレン通路70(軸方向通路71)よりも流路抵抗が大きい絞り通路72である。これに対し、絞り部は、ドレン通路70に着脱可能に取り付けられるオリフィスプラグであってもよい。
【0047】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0048】
手動操作される制御弁100では、パイロット圧室50の圧力を逃がすドレン通路70に絞り通路72が設けられる。これにより、パイロット圧室50にパイロット圧を供給すると、絞り通路72の抵抗によりパイロット圧室50にはタンク圧より大きい圧力が生じる。よって、この圧力によりスプール10を移動させることができる。このように、制御弁100によれば、手動操作が可能であると共に、外部からの信号により自動操作も可能である。
【0049】
制御弁100が手動操作及び自動操作可能であるため、自動の検査ラインによって制御弁100の動作確認を行うことができ、制御弁100及び制御弁100が設けられる流体圧制御装置の製造における検査工程を容易に実施することができる。
【0050】
また、制御弁100では、一対のばね座60,65が当接することでスプール10の移動が規制される。ばね座65は、ボス部67がスプール10の第2小径部16及び支持部20の軸部21の外周に設けられる。このように制御弁100を構成することにより、第2小径部16の軸方向長さを変更することで、スプール10のストローク量を変更することができる。よって、異なるストローク量で移動する制御弁100であっても、ばね座60,65と支持部20とを共通に使用することができ、制御弁100の製造コストを低減することができる。
【0051】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0052】
作動油の流れを制御する制御弁100は、ハウジング1と、ハウジング1に形成されハウジング1の端面1Bに開口する収容孔1Aと、収容孔1Aに摺動自在に挿入されるスプール10と、収容孔1Aの開口を封止するキャップ30と、スプール10を一方向へ付勢するスプリング35と、キャップ30に設けられ、手動操作によってスプリング35の付勢力に抗してスプール10を移動させる切換部40と、キャップ30の内部に形成されスプリング35の付勢力に抗してスプール10を付勢するパイロット圧が導かれるパイロット圧室50と、キャップ30に形成されパイロット圧室50にパイロット圧を導くパイロットポート55と、パイロット圧室50の圧力を逃がすドレン通路70と、ドレン通路70に設けられ通過する作動油の流れに抵抗を付与する絞り通路72と、を備える。
【0053】
また、制御弁100では、切換部40は、キャップ30に形成されるねじ孔33に螺合し、手動操作によってスプール10に対して進退する切換ボルト41である。
【0054】
これらの構成では、パイロット圧室50の圧力を逃がすドレン通路70が設けられると共に、ドレン通路70には絞り通路72が設けられる。パイロット圧室50にパイロット圧を導くと、ドレン通路70を通じてパイロット圧室50内の作動油の一部は排出されるものの、絞り通路72によって抵抗が付与されるため、パイロット圧室50には所定の圧力が生じる。よって、パイロット圧室50にパイロット圧を供給することで、パイロット圧室50内にスプール10を移動させる推力が発生し、スプール10を移動させることができる。したがって、制御弁100は、手動操作によって作動すると共にパイロット圧によっても作動する。
【0055】
制御弁100は、キャップ30内に設けられ、スプリング35の両端が着座してスプリング35の伸縮に伴い相対移動する一対のばね座60,65をさらに備え、一対のばね座60,65が互いに当接することにより、スプリング35の付勢力に抗するスプール10の移動が規制される。
【0056】
この構成では、ばね座60,65によってスプール10の移動が規制できるため、ばね座60,65の変更により容易にスプール10の移動量を調整できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0058】
1…ハウジング、1A…収容孔、10…スプール(弁体)、30…キャップ、33…ねじ孔、35…スプリング(付勢部材)、40…切換部、41…切換ボルト、50…パイロット圧室、55…パイロットポート、60,65…ばね座(着座部材)、70…ドレン通路、72…絞り通路(絞り部)、100…制御弁