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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】溶接トーチ
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/29 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
B23K9/29 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018546226
(86)(22)【出願日】2017-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2017035780
(87)【国際公開番号】W WO2018074203
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2016205291
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】玉城 怜士
(72)【発明者】
【氏名】宮原 寿朗
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-074858(JP,U)
【文献】特開昭59-001067(JP,A)
【文献】実公昭51-032834(JP,Y1)
【文献】特開平03-291169(JP,A)
【文献】実開昭50-024720(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤを送給するワイヤ送給路を有するワイヤ送給筒と、
該ワイヤ送給筒の一端部に取り付けられたコンタクトチップと、
該コンタクトチップの周囲に設けられており、シールドガスが通流する筒状のノズルと
を備え、
前記ワイヤ送給筒は、前記ワイヤ送給路とは別に、前記シールドガスを前記ノズルに供給するガス供給路を有し、
前記ワイヤ送給筒の他端部に給水口及び排水口が設けられ、
前記給水口、前記ワイヤ送給筒の一端部、前記ノズルの一端部、前記ノズルの他端部及び前記排水口に亘って、冷却水が通流する水路が連続的に形成されており、
前記ワイヤ送給筒の外周面に形成された前記ガス供給路の出口と、
前記ワイヤ送給筒に外嵌して前記出口を覆っており、複数の貫通孔が周方向に並設された筒体と
を備え、
前記筒体及びワイヤ送給筒の間に第1空間が設けられており、
前記貫通孔によって前記第1空間と前記ノズルの内側の第2空間とが連通しており、
前記ワイヤ送給筒は内筒及び外筒を備え、
前記内筒の内部に、前記水路の一部及び前記内筒よりも小径の前記ガス供給路が形成され、
前記筒体は前記内筒の一部に外嵌し、
前記筒体及び内筒の間に前記第1空間が形成されている
溶接トーチ。
【請求項2】
前記ワイヤ送給筒は前記ガス供給路を複数有し、
前記第1空間には前記複数のガス供給路それぞれに連なる室が形成されている
請求項に記載の溶接トーチ。
【請求項3】
前記筒体は前記ワイヤ送給筒に螺合している
請求項又はに記載の溶接トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接を行う溶接トーチに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接用トーチは、上下方向を軸方向とした筒状のカバーと、該カバーの下端部内側に配置されており、絶縁されたノズルと、ノズル内部に設けられたコンタクトチップとを備える。前記カバー及びコンタクトチップの内側にワイヤが挿入され、ワイヤはコンタクトチップの先端から溶接箇所に向けて送出される。カバー及びノズルの間に、溶融金属と空気との反応を抑制するシールドガスが注入され、ノズル先端に向けて送出される。コンタクトチップに電圧を印加することによって、コンタクトチップと対象物との間にアークが発生し、溶接が行われる。シールドガスはアークの周囲を覆い、溶接不良の発生を抑制する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
カバーにはワイヤが送給されるワイヤ送給路が形成されている。溶接用トーチの小型化を図るべく、ワイヤ送給路をシールドガスの通流路としても使用することが考えられる。例えば、ワイヤ送給路の周面に、ワイヤ送給路の内側空間とノズルの内側空間とを連通させる貫通孔を設けることによって、シールドガスは、ワイヤ送給路及び貫通孔を通って、ノズルから放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-237343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ワイヤ送給路の端部にはコンタクトチップが設けられており、コンタクトチップにはワイヤが送出される孔が設けられているので、コンタクトチップの孔からシールドガスが漏れる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、大型化を回避しつつ、シールドガスの漏れを抑制することができる溶接トーチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶接トーチは、溶接ワイヤを送給するワイヤ送給路を有するワイヤ送給筒と、該ワイヤ送給筒の端部に取り付けられたコンタクトチップと、該コンタクトチップの周囲に設けられており、シールドガスが通流する筒状のノズルとを備え、前記ワイヤ送給筒は、前記ワイヤ送給路とは別に、前記シールドガスを前記ノズルに供給するガス供給路を有する。
【0008】
本発明においては、単一のワイヤ送給筒にワイヤ送給路及びガス供給路をそれぞれ別に設ける。
【0009】
本発明に係る溶接トーチは、前記ワイヤ送給筒の外周面に形成された前記ガス供給路の出口と、前記ワイヤ送給筒に外嵌して前記出口を覆っており、複数の貫通孔が周方向に並設された筒体とを備え、前記筒体及びワイヤ送給筒の間に第1空間が設けられており、前記貫通孔によって前記第1空間と前記ノズルの内側の第2空間とが連通している。
【0010】
本発明においては、筒体に複数の貫通孔を周方向に並設することによって、単数の大径の貫通孔を設ける場合に比べて、貫通孔の直径を小さくし、第1空間内の圧力を高めることができる。またシールドガスは複数の貫通孔から放射状に送出される。その結果、各貫通孔から略同じ流量のシールドガスが放射状に送出され、アークの周囲が安定的にシールドガスによって覆われ、溶接不良の発生が抑制される。
【0011】
本発明に係る溶接トーチは、前記ワイヤ送給筒は前記ガス供給路を複数有し、前記第1空間には前記複数のガス供給路それぞれに連なる室が形成されている。
【0012】
本発明においては、複数のガス供給路それぞれに連なる室を第1空間に形成することによって、第1空間に比べて各室の体積は小さくなるので、各室の圧力を短時間で所望の圧力まで上げることができる。
【0013】
本発明に係る溶接トーチは、前記筒体は前記ワイヤ送給筒に螺合している。
【0014】
本発明においては、筒体をワイヤ送給筒に螺合させることによって、第1空間からシールドガスが漏れることを防止することができる。また螺合のラビリンス効果によって第1空間内の密閉度が高まり、第1空間内の圧力を高め易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る溶接トーチにあっては、ワイヤ送給路及びガス供給路をそれぞれ別に設けて、シールドガスの漏洩を抑制することができる。またワイヤ送給路及びガス供給路を単一のワイヤ送給筒に設けることによって、溶接トーチの大型化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】溶接トーチを略示する外観斜視図である。
図2】ガス供給路を示す溶接トーチの縦断面図である。
図3】ガス供給路を示す溶接トーチの斜視断面図である。
図4A図2のIV-IV線を切断線とした斜視断面図である。
図4B図2のIV-IV線を切断線とした平面断面図である。
図5】水路を示す溶接トーチの縦断面図である。
図6】水路を示す溶接トーチの斜視断面図である。
図7】開閉部を上方から視認した斜視図である。
図8】開閉部を下方から視認した斜視図である。
図9】開閉部の略示縦断面図である。
図10】水路が開放された状態の開閉部付近の構成を示す溶接トーチの部分拡大縦断面図である。
図11A図5に示すXI-XI線を切断線とした斜視断面図である。
図11B図5に示すXI-XI線を切断線とした平面断面図である。
図12A図5に示すXII-XII線を切断線とした斜視断面図である。
図12B図5に示すXII-XII線を切断線とした平面断面図である。
図13A図5に示すXIII-XIII線を切断線とした斜視断面図である。
図13B図5に示すXIII-XIII線を切断線とした平面断面図である。
図14A図5に示すXIV-XIV線を切断線とした斜視断面図である。
図14B図5に示すXIV-XIV線を切断線とした平面断面図である。
図15A図5に示すXV-XV線を切断線とした斜視断面図である。
図15B図5に示すXV-XV線を切断線とした平面断面図である。
図16】水路が閉鎖された状態の開閉部付近の構成を示す溶接トーチの部分拡大縦断面図である。
図17】第1ガス供給路~第4ガス供給路を略示する横断面図である。
図18】第1室~第4室を略示する内筒及び分岐筒の横断面図である。
図19】分岐筒を内筒に螺合させた状態を示す部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施の形態に係る溶接トーチを示す図面に基づいて説明する。図1は、溶接トーチを略示する外観斜視図である。以下の説明では図に示す上下を使用する。
【0018】
溶接トーチは、溶接ワイヤを送給する上下方向を軸方向としたワイヤ送給筒1と、ワイヤ送給筒1の下部が挿入された円筒状のノズル4とを備える。ワイヤ送給筒1とノズル4とは、連結筒5によって連結されている。ワイヤ送給筒1及びノズル4は同軸的に配置されている。ワイヤ送給筒1の上端部には、直方体状の接続部6が設けられている。
【0019】
ワイヤを供給するワイヤ供給口7、冷却水を供給する給水口8、冷却水を排出する排水口9、及びシールドガスを供給する給気口10が接続部6に接続されている。ワイヤ供給口7は筒状をなし、外筒2に同軸的に設けられている。
【0020】
図2は、ガス供給路11を示す溶接トーチの縦断面図、図3は、ガス供給路11を示す溶接トーチの斜視断面図である。
【0021】
ワイヤ送給筒1は、外筒2と、該外筒2に挿入された内筒3とを備える。内筒3の下端部は、外筒2よりも下側に突出しており、ノズル4に挿入されている。内筒3の軸心部分には、上下に貫通したワイヤ送給路1aが形成されている。内筒3の下端部にはコンタクトチップ20が挿入されている。コンタクトチップ20は軸方向に伸びた筒状をなし、内筒3に同軸的に設けられている。コンタクトチップ20の下端部はノズル4の下端部付近に位置する。
【0022】
ワイヤ供給口7から溶接ワイヤが供給され、ワイヤ送給路1a及びコンタクトチップ20を通って、ノズル4の下方に送出される。
【0023】
図2及び図3に示すように、内筒3には、ワイヤ送給路1aの隣に、軸方向に延びたガス供給路11が形成されている。ガス供給路11の上端部は内筒3の上側に突出し、接続部6の内部に位置する。ガス供給路11の上端部に入口11が設けられている。入口11と給気口10は、接続部6内の通路を介して連通している。
【0024】
ガス供給路11の下端部は、内筒3の下部側面に向けて湾曲しており、前記側面にガス供給路11の出口11が形成されている。
【0025】
図4Aは、図2のIV-IV線を切断線とした斜視断面図であり、図4Bは、図2のIV-IV線を切断線とした平面断面図である。内筒3の下端部には、シールドガスを分岐させる分岐筒12(筒体)が外嵌している。分岐筒12は、ノズル4と内筒3の下端部との間に配置され、出口11を覆う。
【0026】
分岐筒12の上端部及び下端部は内筒3に接触しているが、分岐筒12の中途部と内筒3との間には、周方向全体に亘って、第1空間13aが形成されている。前記出口11は前記第1空間13aに連なる。分岐筒12の中途部には複数の貫通孔12a、12a、・・・、12aが周方向に並設されている。貫通孔12aは、前記第1空間13aと、ノズル4の内側の第2空間4aとを連通させている。
【0027】
図2及び図3の矢印で示すように、給気口10からシールドガスが供給され、ガス供給路11及び出口11を通って、分岐筒12と内筒3との間の第1空間13aに至る。シールドガスは、複数の貫通孔12aを通って放射状に送出され、ノズル4の内側の第2空間4aに供給され、ノズル4の下端から放出される。内筒3に電圧が印加され、ノズル4から放出されるシールドガスの内側において、溶接ワイヤと対象物との間でアークが発生し、溶接ワイヤが溶融して、対象物に対する溶接が実行される。
【0028】
図5は、水路を示す溶接トーチの縦断面図、図6は、水路を示す溶接トーチの斜視断面図である。溶接トーチは水路を備え、該水路は第1水路31~第8水路38を備える。
【0029】
内筒3の上部の径方向一側には、ワイヤ送給路1aの隣に軸方向に延びた第1水路31が形成されており、内筒3の上部の径方向他側には、ワイヤ送給路1aの隣に軸方向に延びた第8水路38が形成されている。なお第1水路31及び第8水路38は、径方向において互いに反対側に配置されている。第1水路31の上端部と給水口8とは、接続部6に形成した通路を介して、連通している。第8水路38の上端部と排水口9とは、接続部6に形成した通路を介して、連通している。
【0030】
内筒3の下部の径方向一側には、軸方向に延びた第4水路34が形成されており、内筒3の下部の径方向他側には、軸方向に延びた第3水路33が形成されている。第3水路33及び第4水路34の下端は、内筒3の底部(以下第1底部3cという)に至り、該第1底部3cにおいて連なっている(後述する図14参照)。第1水路31の下端部及び第3水路33の上端部は、螺旋状に形成された第2水路32を介して連通している。
【0031】
ノズル4の径方向一側には、軸方向に延びた二つの第5水路35、35が形成されており、ノズル4の径方向他側には二つの第6水路36、36が形成されている(後述する図14参照)。一方の第5水路35及び一方の第6水路36の下端は、ノズル4の底部(以下第2底部4bという)に至り、該第2底部4bにおいて連なっている。また他方の第5水路35及び他方の第6水路36の下端も第2底部4bにおいて、連なっている(後述する図15参照)。第5水路35の上端部は、後述する開閉部40の連通路を介して、第4水路34の上端部に連通する。
【0032】
軸方向において、第3水路33と第8水路38との間に、第7水路37が形成されている。第6水路36の上端部は、第7水路37及び前記連通路を介して、第8水路38の下端部に連通する。
【0033】
図7は、開閉部40を上方から視認した斜視図、図8は、開閉部40を下方から視認した斜視図、図9は、開閉部40の略示縦断面図である。開閉部40は、円筒状の本体41と、該本体41の中途部から径方向に突出した円環状の突出部42とを備える。突出部42の先端部は上方向に向けて屈曲しており、突出部42の縦断面形状はL状をなす(図9参照)。
【0034】
本体41の上端部には、径方向に貫通した二つのガイド挿入孔44、44が設けられている。径方向において、二つのガイド挿入孔44は反対側に配置されている。ガイド挿入孔44には、ガイド45(後述する図10参照)が挿入される。本実施例においては、ボルトをガイド45として使用している。そのため、ガイド挿入孔44は、ボルトの頭部が配置される座繰りを備える。なおガイド45はボルトに限定されず、他の構成(例えばピン)でもよい。ガイド挿入孔44は突出部42よりも上側に位置する。
【0035】
本体41の下部の径方向一側には、径方向に貫通した複数の第1連通路43a、43a、・・、43aが周方向に並設されており、本体41の下部の径方向他側には、径方向に貫通した複数の第2連通路43b、43b、・・、43bが周方向に並設されている。第1連通路43a及び第2連通路43bは突出部42よりも下側に位置する。
【0036】
図10は、水路が開放された状態の開閉部40付近の構成を示す溶接トーチの部分拡大縦断面図である。開閉部40は、ノズル4の上端部に、上下動可能に設けられている。本体41下部は、径方向において、ノズル4上端部と内筒3下部との間に配置されている。本体41上部及び突出部42はノズル4上端よりも上側に配置されている。
【0037】
外筒2の下端には第1フランジ2aが形成されており、ノズル4の上端には第2フランジ4cが形成されている。第1フランジ2aの外周面には雄ねじ2cが形成されている。第1フランジ2aの内周部分には、円環状の溝2bが形成されている。第1フランジ2a及び第2フランジ4cは軸方向に対向する。軸方向において、突出部42は第1フランジ2a及び第2フランジ4cの間に配置されている。断面L形の突出部42の内側と溝2bとの間には、開閉部40を下側(コンタクトチップ20側)に付勢する付勢部材46が設けられている。付勢部材46としては、例えば、ばねが挙げられる。
【0038】
内筒3の外周面におけるガイド挿入孔44に対向する部分に、軸方向に伸びたガイド溝3aが形成されている。ガイド挿入孔44には、ガイド45が挿入され、固定されている。ガイド45の先端部はガイド溝3aの内側に配置されている。
【0039】
連結筒5は、第1フランジ2a及びノズル4上端部の外側に嵌合している。連結筒5の上端部には雌ねじ5aが形成されている。連結筒5の下部の直径は上部よりも小さい。連結筒5の上部及び下部の連結部分には段差部5bが形成されている。第2フランジ4cは、突出部42の下端と段差部5bとの間に配置されている。連結筒5の雌ねじ5aと第1フランジ2aの雄ねじ2cとを螺合させることによって、第2フランジ4c及び突出部42は、付勢部材46の付勢力に抗して、段差部5b及び第1フランジ2aの間で挟まれる。
【0040】
このとき、第1連通路43aを介して、第4水路34と二つの第5水路35とは連通し、第2連通路43bを介して、二つの第6水路36と第7水路37とは連通する。
【0041】
図11A図15Aは、図5に示すXI-XI線~XV-XV線を切断線とした斜視断面図であり、図11B図15Bは、図5に示すXI-XI線~XV-XV線を切断線とした平面断面図である。以下、図5図6図10図15を参照し、冷却水の流れについて説明する。図5図6図11図15の矢印は、冷却水の流れを示す。
【0042】
冷却水が給水口8に供給された場合、冷却水は第1水路31を下方に通流し、第2水路32を通って、第3水路33に至る(図5図6図11図13参照)。冷却水は、第3水路33を更に下方に通流して、第1底部3cに至り、通流方向を上向きに変更し、第4水路34を上方に通流する(図5図6図13及び図14参照)。
【0043】
図14Aにおいて、第1底部3cにて示された下向きの矢印は、第3水路33を通って第1底部3cまで下方に流れる冷却水を示しており、横向きの円弧矢印は、第1底部3cにて、第3水路33から第4水路34に向けて流れる冷却水を示しており、上向きの矢印は、第1底部3cから第4水路34を通って上方に流れる冷却水を示す。
【0044】
冷却水は、第4水路34の上端部において、通流方向を径方向外向きに変更し、複数の第1連通路43aを通り、二つの第5水路35を下方に通流する(図5図6図10及び図13参照)。
【0045】
冷却水は第2底部4bに至り、一方の第5水路35を通流した冷却水は、一方の第6水路36を上方に通流し、他方の第5水路35を通流した冷却水は、他方の第6水路36を上方に通流する(図5図6図14及び図15参照)。図15Aにおいて、下向きの白抜き矢印は、一方の第5水路35を通って第2底部4bまで下方に流れる冷却水を示し、横向きの円弧白抜き矢印は、第2底部4bにて、一方の第5水路35から一方の第6水路36に向けて流れる冷却水を示しており、上向きの白抜き矢印は、第1底部3cから一方の第6水路36を通って上方に流れる冷却水を示す。
【0046】
図15Aにおいて、下向きの実線矢印は、他方の第5水路35を通って第2底部4bまで下方に流れる冷却水を示し、横向きの円弧実線矢印は、第2底部4bにて、他方の第5水路35から他方の第6水路36に向けて流れる冷却水を示しており、上向きの実線矢印は、第1底部3cから他方の第6水路36を通って上方に流れる冷却水を示す。なお図15Aにおける第5水路35及び第6水路36の白抜き矢印及び実線矢印は、図14Aにおいても、同様に使用されている。
【0047】
冷却水は、二つの第6水路36それぞれの上端部において、通流方向を径方向内向きに変更し、複数の第2連通路43bを通り、第7水路37を上方に移動する。なお二つの第6水路36を通った冷却水は、第2連通路43b及び第7水路37にて合流し、上方に移動する(図5図6図10図12及び図13参照)。冷却水は第8水路38を上方に通流し、排水口9から排出される。なお排水口9から排出された冷却水は、冷却後に給水口8に戻され、循環する。なお冷却水を循環させなくてもよい。
【0048】
図16は、水路が閉鎖された状態の開閉部40付近の構成を示す溶接トーチの部分拡大縦断面図である。ユーザは、例えばノズル4を交換する場合に、連結筒5をワイヤ送給筒1から取り外して、ノズル4を取り外す。
【0049】
図16に示すように、連結筒5をワイヤ送給筒1から取り外す場合、ユーザは、連結筒5の雌ねじ5aと第1フランジ2aの雄ねじ2cとの螺合を解除させる。このとき連結筒5及びノズル4は下方に移動する。前述したように、開閉部40は、付勢部材46の付勢力によって下方に付勢されているので、連結筒5及びノズル4の下方への移動に従って、開閉部40も下方へ移動する。
【0050】
ガイド45はガイド溝3aに沿って下方に移動し、開閉部40は円滑に下方に移動する。このとき、図16に示すように、第1連通路43aと第4水路34とが連通しなくなり、第4水路34は本体41によって閉鎖される。また第2連通路43bと第7連通路とが連通しなくなり、第7水路37は本体41によって閉鎖される。そのため、ノズル4を取り外した場合に、ワイヤ送給筒1内の水路、即ち、第1水路31~第4水路34、第7水路37及び第8水路38から水が放出されることを防ぐことができる。
【0051】
ノズル4を取り外した場合、水が放出されたとしても、第5水路35及び第6水路36に残留した水のみが放出されるので、放出される水量を抑制することができる。
【0052】
上述した実施の形態にあっては、ワイヤ送給路1a及びガス供給路11をそれぞれ別に設けて、シールドガスの漏洩を抑制することができる。またワイヤ送給路1a及びガス供給路11を単一のワイヤ送給筒1に設けることによって、溶接トーチの大型化を回避することができる。
【0053】
また分岐筒12に複数の貫通孔12aを周方向に並設しているので、貫通孔12aの直径を、単数の大径の貫通孔12aを設ける場合に比べて小さくし、第1空間13a内の圧力を高めることができる。またシールドガスは複数の貫通孔12aから放射状に送出される。その結果、各貫通孔12aから略同じ流量のシールドガスが放射状に送出され、アークの周囲が安定的にシールドガスによって覆われ、溶接不良の発生が抑制される。
【0054】
以下に示すように、実施の形態に係る溶接トーチの構成を一部変更してもよい。図17は、第1ガス供給路11a~第4ガス供給路11dを略示する横断面図、図18は、第1室131~第4室134を略示する内筒3及び分岐筒12の横断面図である。
【0055】
上述した実施の形態においては、ガス供給路11は単一であったが、図17に示すように、単一のガス供給路11に代えて、複数のガス供給路、例えば第1ガス供給路11a~第4ガス供給路11dを内筒3に形成してもよい。この場合、図18に示すように、分岐筒12の内周面に四つの仕切り12b、12b、12b、12bを、軸周りに略90度の位相間隔で設ける。
【0056】
分岐筒12を内筒3に外嵌させた場合、第1空間13aには、四つの仕切り12bによって、四つの室、すなわち第1室131~第4室134が形成される。第1ガス供給路11a~第4ガス供給路11dの出口は第1室131~第4室134にそれぞれ連なる。
【0057】
第1ガス供給路11a~第4ガス供給路11dそれぞれに連なる第1室131~第4室134を第1空間13aに形成することによって、第1空間13aに比べて第1室131~第4室134それぞれの体積は小さくなるので、第1室131~第4室134それぞれの圧力を短時間で所望の圧力まで上げることができる。
【0058】
なお四つのガス供給路及び室は例示であり、二つ若しくは三つのガス供給路及び室、又は五つ以上のガス供給路及び室を設けてもよい。
【0059】
また以下に示すように、実施の形態に係る溶接トーチの構成を一部変更してもよい。図19は、分岐筒12を内筒3に螺合させた状態を示す部分拡大縦断面図である。分岐筒12の下端に雌ねじ12bを形成し、雌ねじ12bに対応する雄ねじ3bを内筒3の外周面に形成してもよい。
【0060】
分岐筒12を内筒3に外嵌させる場合に、雌ねじ12b及び雄ねじ3bを螺合させることによって、第1空間13aからシールドガスが漏れることを防止することができる。また螺合のラビリンス効果によって第1空間13a内の密閉度が高まり、第1空間13a内の圧力を高め易くなる。
【0061】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、請求の範囲内での全ての変更及び請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 ワイヤ送給筒
1a ワイヤ送給路
2 外筒
3 内筒
3b 雄ねじ
3c 第1底部
4 ノズル
4a 第2空間
11 ガス供給路
11 入口
11 出口
12 分岐筒(筒体)
12a 貫通孔
12b 雌ねじ
13a 第1空間
20 コンタクトチップ
131~134 第1室~第4室
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19