(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】計器読取システム
(51)【国際特許分類】
G06V 30/196 20220101AFI20220622BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20220622BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20220622BHJP
G06V 30/412 20220101ALI20220622BHJP
G06V 30/148 20220101ALI20220622BHJP
【FI】
G06V30/196 E
G08C15/00 E
G08C17/00 Z
G06V30/412
G06V30/148
(21)【出願番号】P 2019051175
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】519040050
【氏名又は名称】株式会社THIRD
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【氏名又は名称】日高 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179534
【氏名又は名称】関口 かおる
(72)【発明者】
【氏名】今村 安伸
【審査官】小池 正彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082761(JP,A)
【文献】特開2017-207910(JP,A)
【文献】特開2016-173760(JP,A)
【文献】特開2016-115255(JP,A)
【文献】特開2011-175523(JP,A)
【文献】特開2012-022474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 30/196
G08C 15/00
G08C 17/00
G06V 30/412
G06V 30/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数字が外周に表示された計量回転盤を複数有し窓部から前記計量回転盤の数字が露出する直読式の計器を撮像する撮像手段を有して、前記計器で示される値を読み取る計器読取システムであって、
前記計器読取システムは、前記撮像手段により撮像された画像を解析する解析手段を備え、該解析手段は、前記撮像された画像における前記窓部から全形が露出する前記計量回転盤の数字を判定できるとともに、前記窓部から同時に露出する前記計量回転盤における隣接する2つの数字をそれぞれ構成する形状の組み合わせに基づき、これら2つの数字を判定でき
、かつ前記解析手段は、前記撮像された画像における前記計量回転盤の数字にそれぞれ発生する略樽型の歪曲収差により、前記計器で示される計測値を構成する数字と、前記計器に記載された別の数字とを判別することを特徴とする計器読取システム。
【請求項2】
数字が外周に表示された計量回転盤を複数有し窓部から前記計量回転盤の数字が露出する直読式の計器を撮像する撮像手段を有して、前記計器で示される値を読み取る計器読取システムであって、
前記計器読取システムは、前記撮像手段により撮像された画像を解析する解析手段を備え、該解析手段は、前記撮像された画像における前記窓部から全形が露出する前記計量回転盤の数字を判定できるとともに、前記窓部から同時に露出する前記計量回転盤における隣接する2つの数字をそれぞれ構成する形状の組み合わせに基づき、これら2つの数字を判定でき、かつ前記解析手段は、前記撮像された画像において前記計量回転盤の側縁の間隙を検出することで、前記計器で示される計測値を構成する数字と、前記計器に記載された別の数字とを判別することを特徴とする計器読取システム。
【請求項3】
数字が外周に表示された計量回転盤を複数有し窓部から前記計量回転盤の数字が露出する直読式の計器を撮像する撮像手段を有して、前記計器で示される値を読み取る計器読取システムであって、
前記計器読取システムは、前記撮像手段により撮像された画像を解析する解析手段を備え、該解析手段は、前記撮像された画像における前記窓部から全形が露出する前記計量回転盤の数字を判定できるとともに、前記窓部から同時に露出する前記計量回転盤における隣接する2つの数字をそれぞれ構成する形状の組み合わせに基づき、これら2つの数字を判定でき、
前記撮像手段は通信機能を有する携帯情報端末が備える撮像部であり、前記解析手段は前記撮像部により撮像された画像を解析し、前記計器で示される計測値を構成する数字の表記方向の傾斜角を演算し、演算された傾斜角を利用して、左端の前記計量回転盤から右端の前記計量回転盤までに表示された数字の順番を判定することを特徴とする計器読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭やビル、ホテル等の施設に設置された各種計器を読取ることができる計器読取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭やビル等において利用される、水道、ガス、電気等は、それぞれ専用の計器によって計測されており、一般家庭では使用量の算定のために計測が行われ、ビルでは各種設備の総合管理や運転監視、定期点検等のためにも各種計器の計測が行われている。各種計器の計測は、主に専門の検査員が目視し、手入力により計測結果を記録することが多い。しかしながら、検査員が担当する計器の数が多数ある場合には、目視と手入力による計測結果の記録は大変に手間であるばかりか、メータの読み間違いや入力ミスなどが発生する可能性があることから、正しい検針ができない虞もあった。そこで、計器で示される値を読み取ることで、目視と手入力による計測結果の記録を自動化できる計器読取装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の計器読取装置は、特に数字が外周に表示された計量回転盤を複数有し、窓部から計量回転盤の数字が露出する、いわゆる直読式の計器で示される値を読み取ることができる装置である。詳しくは、計器を撮像する撮像手段を有しており、この撮像された画像を解析して窓部から露出した計量回転盤の数字を検出して、この計器で示される値を記録することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5879455号公報(第5頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように計量回転盤を有する計器を撮像手段により撮像する態様の計器読取装置は、計量回転盤の数字の形状を予め記憶させておき、記憶された数字の形状のデータを撮像された画像内で検索する構成であるが、窓部から露出する数字が完全な形状でない場合、例えば「1」と「4」はその形状の下側が近似し、「2」と「3」はその形状の上側が近似しており、その露出程度によってはそれぞれを正確に判定することが難しく、計器で示される値を正確に読み取ることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、直読式の計器で示される値を正確に読み取ることができる計器読取システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の計器読取システムは、
数字が外周に表示された計量回転盤を複数有し窓部から前記計量回転盤の数字が露出する直読式の計器を撮像する撮像手段を有して、前記計器で示される値を読み取る計器読取システムであって、
前記計器読取システムは、前記撮像手段により撮像された画像を解析する解析手段を備え、該解析手段は、前記撮像された画像における前記窓部から全形が露出する前記計量回転盤の数字を判定できるとともに、前記窓部から同時に露出する前記計量回転盤における隣接する2つの数字をそれぞれ構成する形状の組み合わせに基づき、これら2つの数字を判定でき、かつ前記解析手段は、前記撮像された画像における前記計量回転盤の数字にそれぞれ発生する略樽型の歪曲収差により、前記計器で示される計測値を構成する数字と、前記計器に記載された別の数字とを判別することを特徴としている。
この特徴によれば、計器読取システムの解析手段は、窓部から同時に露出する計量回転盤における隣接する2つの数字をそれぞれ構成する形状の組み合わせに基づき、これら2つの数字を判定できる。例えば「2」と「3」は数字の上半分を構成する形状が相似しているが、「2」と隣接する「1」または「3」の形状の一部との組み合わせにより、それぞれ窓部から「1」と「2」が同時に露出している、または「2」と「3」が同時に露出していることを正確に判定できる。このように計器読取システムは直読式の計器で示される値を正確に読み取ることができる。
前記課題を解決するために、本発明の計器読取システムは、
数字が外周に表示された計量回転盤を複数有し窓部から前記計量回転盤の数字が露出する直読式の計器を撮像する撮像手段を有して、前記計器で示される値を読み取る計器読取システムであって、
前記計器読取システムは、前記撮像手段により撮像された画像を解析する解析手段を備え、該解析手段は、前記撮像された画像における前記窓部から全形が露出する前記計量回転盤の数字を判定できるとともに、前記窓部から同時に露出する前記計量回転盤における隣接する2つの数字をそれぞれ構成する形状の組み合わせに基づき、これら2つの数字を判定でき、かつ前記解析手段は、前記撮像された画像において前記計量回転盤の側縁の間隙を検出することで、前記計器で示される計測値を構成する数字と、前記計器に記載された別の数字とを判別することを特徴としている。
前記課題を解決するために、本発明の計器読取システムは、
数字が外周に表示された計量回転盤を複数有し窓部から前記計量回転盤の数字が露出する直読式の計器を撮像する撮像手段を有して、前記計器で示される値を読み取る計器読取システムであって、
前記計器読取システムは、前記撮像手段により撮像された画像を解析する解析手段を備え、該解析手段は、前記撮像された画像における前記窓部から全形が露出する前記計量回転盤の数字を判定できるとともに、前記窓部から同時に露出する前記計量回転盤における隣接する2つの数字をそれぞれ構成する形状の組み合わせに基づき、これら2つの数字を判定でき、
前記撮像手段は通信機能を有する携帯情報端末が備える撮像部であり、前記解析手段は前記撮像部により撮像された画像を解析し、前記計器で示される計測値を構成する数字の表記方向の傾斜角を演算し、演算された傾斜角を利用して、左端の前記計量回転盤から右端の前記計量回転盤までに表示された数字の順番を判定することを特徴としている。
【0008】
前記解析手段は、右端の前記窓部から同時に露出する隣接する2つの前記計量回転盤の数字の隣接端部間の間隙における中心と、前記窓部の上下の中心との位置関係により、前記計量回転盤の数字より下の有効桁を算出することを特徴としている。
この特徴によれば、隣接する2つの計量回転盤の数字より下の有効桁を算出できるため、直読式の計器で示される値を正確に読み取ることができる。
【0009】
前記解析手段は、前記撮像された画像において前記計量回転盤に記載された数字の太さと前記計器に記載された別の数字の太さとの差を条件として、前記計器で示される計測値を構成する数字と前記計器に記載された別の数字とを判別することを特徴としている。
この特徴によれば、計量回転盤に記載された数字の太さと計器に記載された別の数字の太さとが異なることを利用して、計器に記載された別の数字すなわち計器で計測される値とは関係ない数字を誤って計器で計測される値に加えてしまうことがなく、正確に読み取ることができる。
【0010】
前記解析手段は、前記撮像された画像における前記計量回転盤の数字にそれぞれ発生する略樽型の歪曲収差により、前記計器で示される計測値を構成する数字と、前記計器に記載された別の数字とを判別することを特徴としている。
この特徴によれば、撮像された画像における計量回転盤の数字には、奥行き方向の後方側が前方側よりも幅が短くなるようにして略樽型の歪曲収差がそれぞれ発生する。解析手段はこの略樽型の歪曲収差が発生している数字のみを計器で計測される値として判別することで、計器で計測される値を正確に読み取ることができる。
【0011】
前記解析手段は、前記撮像された画像において前記計量回転盤の側縁の間隙を検出することで、前記計器で示される計測値を構成する数字と、前記計器に記載された別の数字とを判別することを特徴としている。
この特徴によれば、計量回転盤の側縁には、物理的な間隙が存在するため、この間隙に挟まれた部分に表示された数字のみを計器で計測される値として判別することで、計器で計測される値を正確に読み取ることができる。
【0012】
前記撮像手段は通信機能を有する携帯情報端末が備える撮像部であり、前記解析手段は前記撮像部により撮像された画像を解析し、前記計器で示される計測値を構成する数字の表記方向の傾斜角を演算し、演算された傾斜角を利用して、左端の前記計量回転盤から右端の前記計量回転盤までに表示された数字の順番を判定することを特徴としている。
この特徴によれば、撮像手段に携帯情報端末を用いることで、複数の撮像手段を用意する必要がなく導入コストを抑えることができるとともに、解析手段は撮像された画像から計器で示される計測値を構成する数字の傾斜角を演算して、横に並んだ計量回転盤に表示された数字の順番を判定できるため、手持ちで撮像を行う携帯情報端末による画像の傾斜に関わらず、計器で計測される値を正確に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1における計器読取システムを示す概念図である。
【
図3】計器を構成する計量回転盤を示す斜視図である。
【
図4】計器読取システムにおいて利用されるアプリケーションのトップ画面を示す図である。
【
図5】サーバにおける台帳リストの作成に利用される基礎データを示す図である。
【
図6】スマートフォンを用いた計器の読み取りの様子を示す図である。
【
図7】(a)~(c)は、計器の右端の窓部から露出する計量回転盤の数字の例を示す図である。
【
図8】計器の右端の窓部から露出する計量回転盤の数字に基づき、台帳リストに記憶される計測値として数字列を本決定する計器読取システムの計測値決定処理を示すフローチャートである。
【
図9】計器読取システムにおいて窓部から同時に露出し判定された計量回転盤の隣接する2つの数字より下の有効桁を算出する判別処理を説明する図である。
【
図10】スマートフォンにより撮像された画像において、計量回転盤自体と印字された数字の形状に略樽型の歪曲収差が発生した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る計器読取システムを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
実施例に係る計器読取システムにつき、
図1から
図10を参照して説明する。
【0016】
本実施例における計器読取システムは、数字が外周に表示された計量回転盤を複数有し窓部から計量回転盤の数字が露出する直読式の計器で示される値を読み取ることで、目視と手入力による計測結果の記録を自動化できる計器読取システムであり、主にビルの各種設備の総合管理や運転監視、定期点検等を行う、いわゆるビル管理会社が利用する。計器読取システムは、後述するサーバ3によって複数の物件に設置された計器の数値を一元的に管理することができ、本実施例ではそのうちの1つの物件(物件Aとする)に設置された複数の計器の数値を読み取り、記録することを例に説明する。
【0017】
図1に示されるように、計器読取システム1は、計器Mを撮影可能な撮像手段の機能を備える携帯情報端末としてのスマートフォン2と、スマートフォン2とインターネットを介して接続され、スマートフォン2により撮像された画像を解析する解析手段としての機能を備える情報端末であるサーバ3と、を備えて構成されている。スマートフォン2は、ビル管理会社の検査員が利用する端末であり、図示しない撮像部と通信部とを備え、所定のアプリケーションがインストールされている。
【0018】
また、計器Mは本実施例の計器読取システム1を構成するものではないが、計器読取システム1の機能を説明する上で必要であるため、
図2と
図3を用いて詳しく説明する。尚、
図2と
図3では水道の計器を例にとり説明する。
図2と
図3に示されるように、本実施例における計器Mは、数字が外周面4bに印字された計量回転盤4を複数有し、表示盤5に横に並んで複数穿設された窓部6から計量回転盤4の外周面4bがそれぞれ露出し、複数の窓部6から露出した数値で計測値を表す、いわゆる直読式の計器である。
【0019】
右端の窓部6Aに外周面4bが一部露出する右端の計量回転盤4Aには、周方向に等間隔で目盛線4cが表示されて、表示盤5における窓部6Aの縁部近傍には指示線5aが表示されており、指示線5aが指し示す目盛線4cにより、隣接する2つの計量回転盤4の数字の間における少数値を表現できるようになっている。
【0020】
また、計器Mには、2次元コードが印字されたシール11が、2次元コードが表示盤5と平行になるように貼着される。2次元コードは、貼着される計器Mが位置する物件を示す識別情報と、物件内において複数の計器Mを区別するための識別情報と、貼着された計器Mが回転可能な指示針が目盛表示上にて指し示す単針回転型の計器と直読式の計器とのいずれの種類であるかを示す情報と、を備えている。スマートフォン2は読み取り機能を備え、2次元コードを撮影することで、これらの情報を得ることができる。
【0021】
図1に示されるように、サーバ3は、解析を行う演算装置9と記憶媒体10とを備えている。記憶媒体10には、各種対応テーブルが記憶されている。例えば、シール11の2次元コードが備える計器Mが設置される物件を示す物件ID及び計器Mにそれぞれ付与された識別情報と、計器Mの分類(例えば、「地下2階〇〇室」や「ガス」)等の情報と、計器Mの識別情報毎に計測値データを記録する台帳リストがある。また、計器読取システム1を利用する検査員に付与された固有の識別情報であるユーザ名と、このユーザ名によって管理を行う計器Mの識別情報とを対応させる対応テーブルがある。
【0022】
計器読取システム1を利用するにあたって、検査員はスマートフォン2のアプリケーションを起動し、インターネットを介してサーバ3にアクセスする。サーバ3は接続してきた情報端末に対して、ユーザ名とパスワードの入力を促すログイン画面(図示せず)を表示させ、サーバ3は入力されたユーザ名とパスワードが正しいと判断できた場合、
図4に示されるようなトップ画面15を表示させる。
【0023】
トップ画面15には、閲覧機能へ進むボタン16と、記録機能に進むボタン17とが選択的に表示される。閲覧機能へ進むボタン16が選択されると、サーバ3はログイン画面で入力されたユーザ名に対応付けられた計器の計測値データを閲覧可能に表示する。
【0024】
詳しくは、サーバ3はユーザ名を対応テーブルで照会し、ユーザ名に対応付けられた計器の識別情報を抽出し、抽出した計器の識別情報に対応する計測値データを台帳リストからリストアップする。例えば、ユーザ名で管理される物件が複数ある場合、まず複数の物件名を選択可能に表示する画面をスマートフォン2に表示させ、ここで選択された物件の計器の計測値データのみをリストアップして閲覧可能に提供する等の処理を行う。
【0025】
続いて、記録機能について説明する。計器Mで表された計測値をデータ上に記録するにあたって、まず検査員は台帳リストの準備をする。台帳リストは編集可能かつ汎用性に優れたファイル形式で作成された基礎データに基づき作成することができる。本実施例においてはコンピュータ上で動作する表計算ソフト上で基礎データ18(
図5参照)を作成する場合を例に取り説明する。
【0026】
図5に示されるように、基礎データ18では物件を示す「物件ID」、「物件名」、各計器の「識別情報」、計器の「分類」、計器で計測される「単位」、計器で計測できる大数と小数のそれぞれの「桁数」の列がそれぞれ作成されている。
【0027】
検針員は、各計器の各種情報を基礎データ18に入力していくにあたって、各計器に貼着する2次元コードのシール11を用意する。これは、物件を示す物件IDと計器の識別情報とを予め決定してから作成してもよいし、先に適当な物件IDと計器の識別情報で用意したものを各計器に対応させて貼着してもよい。
【0028】
こうして、各計器に貼着した2次元コードのシール11における物件IDと計器の識別情報をそれぞれ対応させて基礎データ18に入力し、更に物件名、分類、単位、桁数を入力する。これら基礎データ18に入力された情報は、インターネットを介してサーバ3に送信され、ユーザIDに対応付けられて台帳リストに利用される。
【0029】
次いで、計器の読み取りについて説明する。検査員は、スマートフォン2にて所定のアプリケーションを起動させ、ユーザ名とパスワードを入力してログインが完了した後、記録機能に進むボタン17を選択する。アプリケーションによる記録機能が開始されると、スマートフォン2のカメラ機能を利用して計器Mを撮影可能な状態となる。
【0030】
検査員は、
図6に示されるように、計器Mの表示盤5側から撮影したときに、全ての窓部6とシール11の2次元コードとがスマートフォン2の画角内に収まるように撮影を行う。撮影された画像は、撮影時の日時の情報とともにスマートフォン2の通信部からインターネットを介してサーバ3に送信される。
【0031】
サーバ3では、受信した画像を演算装置9によって解析する。まず、演算装置9は受信した画像の中から数字の形状を判別し、抽出する。次いで、数字列であること、画像中央に近いこと、数字の形状が大きいこと、等の条件を組み合わせることで、計量回転盤4に印字された数字の形状と表示盤5上の他の数字の形状とを判別し、計量回転盤4に印字された数字の形状のみを読み取る対象として判別する判別処理を行う。
【0032】
例えば、数字列であるという条件では、複数の数字の形状のうち、一定間隔かつ同じ向きに横方向に連続して配置されている数字の形状以外を除外することができる。
【0033】
また、検査員は全ての窓部6と2次元コードとが画角内に収まるように撮影を行っていることから、窓部6は画像中央に偏っていることが統計的に多いため、画像中央に近いという条件を利用して複数の数字の形状のうち画像中央に配置されている数字列以外を除外することができる。
【0034】
また、
図2に示されるように、計量回転盤4に印字された数字は、表示盤5上で目立つように他の数字に比べてサイズが大きく、かつ数字を構成する線が太く表示されているため、数字の形状が大きいという条件では、他の数字に比べてサイズが大きくかつ数字を構成する線が太い数字の形状以外を除外することができる。
【0035】
また、演算装置9は、この判別処理とは別に、画像内の2次元コードを検出し、この2次元コードから物件の物件IDと計器Mの識別情報とを読み取り、画像との対応関係とともに一時的に保持するコード読取処理を行う。
【0036】
次いで、演算装置9は、同じ向きに横方向に連続して配置されている数字列において、複数の数字の形状の正確な向きを判定することで、これら数字の順番、すなわち数字列の水平方向における左端から右端までの数字の並びを判定する。これは、演算装置9は複数の数字の形状の向きから、基準となる水平方向に対しての数字列の表記方向の傾斜角を演算することができる。そのため、この演算された傾斜角を利用して、数字の順番を判定していると言い換えることができる。これによれば、スマートフォン2は手持ちで撮像を行うため、数字列が画像内で傾斜する虞があるが、この画像の傾斜に関わらず、数字列における数字の順番を正確に判定することができる。尚、数字列のうちの少なくとも2つの数字の形状から向き傾斜角が演算できれば、その他の数字は演算された傾斜角であることが推測できるため、数字列における全ての数字の形状の傾斜角を判定する必要はない。
【0037】
こうして計量回転盤4に印字された数字のみで構成される数字列が、数字の順番も含めて抽出されると、演算装置9はこの数字列を文字認識し、それぞれの数字を判定する。そして、判定された数字を台帳リストへ記憶する。
【0038】
演算装置9は、前述したようにコード読取処理により画像内の2次元コードから物件の物件IDと計器Mの識別情報とを読み取り、画像との対応関係とともに一時的に保持しており、物件IDと計器Mの識別情報を用いて基礎データ18に予め入力された情報を照会し、参照された桁数に合わせて同じ画像から判定された計量回転盤4に印字された数字列を数値化し、更に参照された単位を付けて計測値データとして台帳リストに記憶する。このとき、台帳リストには計測値データに対して撮影時の日時の情報が対応付けて記憶される。更に、演算装置9は、記憶媒体10に撮影された画像の元データを撮影時の日時の情報と対応付けて記憶する。
【0039】
ところで、計器Mにおいて、その右端、つまり計測値可能な最小の大数の位を示す数字が印字された計量回転盤4A以外は、一つ小さい位の計量回転盤4が9から0に段階的に回転するのに合わせて、数字が一つ段階的に回転するようになっている。一方で、右端の計量回転盤4Aは、無段階的に回転する構成となっており、撮影時のタイミングによっては窓部6Aから露出する数字が完全な形状でない場合がある。
【0040】
また、前述した数字列であるという条件では、複数の数字の形状のうち一定間隔かつ同じ向きに横方向に連続して配置されている数字、つまり右端以外の窓部6内に露出する計量回転盤4の数字は横方向に連続するものの、右端の窓部6A内に露出する計量回転盤4Aの数字は、これらと上下方向にずれた位置に配置され、同じ数字列であると判定できない場合がある。
【0041】
例えば、
図7(b)では窓部6A内に、計量回転盤4Aに印字された数字の「1」と「2」の形状が露出しており、
図7(c)では数字の「2」と「3」の形状が露出しているが、図からも明らかなように、数字の「2」と「3」は数字の上半分を構成する形状が相似している。このような場合、演算装置9は完全な数字の形状について数字の判定を行い、計量回転盤4に印字された数字列を予測する。つまり、上述したような各種条件を満たす数字列を計量回転盤4に印字された数字列として仮決定し、その後に計測値決定処理を行う。
【0042】
計測値決定処理については、
図8のフローチャートを用いて説明する。まず、演算装置9は仮決定された数字列の表記方向の右側における所定の上下幅内に、数字の一部形状に合致する形状が存在するか否かを判定(ステップS01)し、合致する形状が存在する場合、ステップS02に進み、この形状から数字を判定する処理を行う。記憶媒体10には、数字の一部形状と当該一部形状から再現された全体形状における数字を示す情報とが対応付けられた形状データベースを備えており、計測値決定処理では、この形状データベースを利用して数字の一部形状に合致する形状が存在するか否かを判定できる。
【0043】
反対に、仮決定された数字列の表記方向の右側おける所定の上下幅内に数字の一部形状に合致するものが存在しない場合には、ステップS06に移り、数字列の範囲を本決定する。すなわち、台帳リストに記憶される計測値として扱われる数字列が決定される。
【0044】
ステップS02では、仮決定された数字列の表記方向の右側おける所定の上下幅内に、数字の一部形状に合致する形状が上下にそれぞれ存在するか否かを判定し、合致する形状が上下にそれぞれ存在する場合、ステップS03に進む。反対に、合致する形状が上下にそれぞれ存在しない場合、すなわち合致する形状が1つである場合、ステップS04に進み、形状データベースで照会して合致する形状からこの数字を判定する。その後ステップS06に移り、この判定された数字と、その左側に連なる数字列とを合わせて、数字列の範囲を本決定する。
【0045】
尚、合致する形状が上下にそれぞれ存在しない場合とは、
図7(a)に示されるように、窓部6Aから、1つの数字の形状が一部露出し、隣接する数字が露出していない、または数字の形状であると認識できない程度にのみ露出している状態である。言い換えると、隣接する数字が露出していない分、1つの数字の形状はその大部分が露出しているということであり、形状データベースを利用した際の誤判定が発生せず、正確に数字を判定できる。
【0046】
記憶媒体10には、前述の形状データベースに加えて、上下の数字の一部形状の組み合わせと、これら一部形状から再現されたそれぞれの全体形状における数字を示す情報の組み合わせとが対応付けられた組合せデータベースを備えている。ステップS03では、上下の数字の一部形状の組み合わせを、前述の組合せデータベースで照会し、該当するものを、計測値として利用される範囲における右端を示す数字として判定する。
【0047】
例えば
図7(b)では、計量回転盤4Aに印字された数字の「1」の下半分の形状と「2」の上半分の形状とが露出し、
図7(c)では数字の「2」の下半分の形状と「3」の上半分の形状とが露出しており、窓部6A内の下方にて露出する数字の一部形状はいずれも相似しているものの、窓部6A内の上方にて露出する数字との組合せにより、これらを混同して判定してしまうことがない。
【0048】
このように、数字列の右側に存在する数字が判定されると、次いでステップS05にて判定された2つの数字から、いずれかを計測値として採用するかを決定する。そして、計測値として利用する数字として決定された側の数字と、その左側に連なる数字列とを合わせて、数字列の範囲を本決定し(ステップS06)、この数字列を台帳リストに記憶される計測値として利用する。尚、ステップS05において、いずれの数字を計測値として採用するかを決定する条件は種々考えられるが、本実施例では小さい数字を採用する(繰り下げ)ことを条件とした。
【0049】
上述したように、本実施例の計器読取システム1は、窓部6Aから同時に露出する計量回転盤4Aにおける隣接する2つの数字をそれぞれ構成する形状の組み合わせに基づき、これら2つの数字を判定することができる。そのため、相似する形状の数字を正確に判定し、直読式の計器で示される値を正確に読み取ることができる。
【0050】
また、演算装置9は撮像された画像を解析し、その中で数字であると認識された形状を比較し、太く表示された数字の形状を計量回転盤4に記載された数字として判定するようになっていることから、計器Mに記載された別の数字すなわち計器Mで計測される計測値とは関係ない数字を、誤って計器Mで計測される値に加えてしまうことがなく、正確に読み取ることができる。加えて、比較的細く表示された数字の形状を計測値として文字認識する対象から予め除外することができ、文字認識処理にかかる負荷を軽減し、迅速に計測値の読み取りを完了することができる。
【0051】
また、本実施例の計器読取システム1は、計器Mを表示盤5側から撮影した画像から、画像解析を行うことで、計量回転盤4に記載された数字を判別できるため、直読式の計器であれば、異なるメーカー、種類の計器で計測された計測値を汎用的に読み取ることができる。
【0052】
また、本実施例の計器読取システム1では、撮像手段にスマートフォン2を用いることで、複数の計器Mに対して複数の撮像手段を用意する必要がなく導入コストを抑えることができる。
【0053】
また、演算装置9は撮影された画像を解析し、計器Mで示される計測値を構成する数字列の表記方向の傾斜角を演算し、この演算された傾斜角を利用して、数字列を構成する数字の順番を判定することができる。そのため、手持ちで撮像を行うスマートフォン2による画像の傾斜に関わらず、計器Mで計測される計測値を正確に読み取ることができる。
【0054】
尚、本実施例の計器読取システム1において演算装置9は、判別処理のステップS05において、窓部6Aから同時に露出し、判定された隣接する2つの数字のいずれか一方を計測値として採用し、右端の計量回転盤4Aで表示される桁までを計測値として読み取る構成で説明したが、これに限らず、例えば判定された隣接する2つの数字より下の有効桁を算出する構成としてもよい。
【0055】
詳しくは、
図9に示されるように、演算装置9は、右端の窓部6Aから同時に露出する隣接する2つの数字の隣接端部30,30間の間隙における中心(仮想の線分αで表現)と、窓部6Aの上下の中心(仮想の線分βで表現)との位置関係から、右端の計量回転盤4Aの数字より下の有効桁を算出する。
【0056】
例えば
図9(a)では、隣接する「7」の数字の形状の下側の隣接端部30と「8」の数字の形状の上側の隣接端部30間の間隙における中心(仮想の線分α)と窓部6Aの上下の中心(仮想の線分β)とが重なっている場合、数字の「7」と「8」の中間であり、この右端の計量回転盤4Aの数字より下の有効桁が「5」であると算出する。
【0057】
また、
図9(b)では、隣接する「7」の数字の形状の下側の隣接端部30と「8」の数字の形状の上側の隣接端部30間の間隙における中心(仮想の線分α)が窓部6Aの上下の中心(仮想の線分β)よりも上方に位置し、これらは上下方向に離間している。この場合、常に同じ高さに位置する隣の窓部6内に露出する数字の上側の隣接端部30の高さ位置(仮想の線分γ)と仮想の線分αとの距離L1と、仮想の線分αと仮想の線分βとの距離L2とを比較して、右端の計量回転盤4Aの数字より下の有効桁を算出する。例えば、ここでは更に下の桁数は繰り上げ、有効桁が「3」であると算出することもできるし、算出可能な更に下の桁数まで算出して計測値を決定してもよい。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0059】
例えば、前記実施例では、判別処理において、数字列であること、画像中央に近いこと、数字の形状が大きいこと、等の条件を例示して説明したがこれに限らない。例えば、
図10に示されるように、撮像された画像における計量回転盤4自体と印字された数字の形状には、奥行き方向の後方側が前方側よりも幅が短くなるようにして略樽型の歪曲収差がそれぞれ発生する。そのため、判別処理はこの略樽型の歪曲収差が発生している数字を検出できるようにすることで、計器Mで計測される値を正確に読み取ることができる。
【0060】
また、
図2に示されるように、計量回転盤4の両側縁には、物理的な間隙40,40が存在するため、この間隙40,40を検出できるようにし、これら間隙40,40に挟まれた数字の形状を、計量回転盤4に印字された数字の形状として判別してもよい。
【0061】
また、前記実施例等で列挙した判別処理や計測値決定処理は、実際にそのようなプログラムを設定する構成に限らず、複数の画像を繰り返し解析させ、大量の解析結果を用いて正解率を向上させる機械学習により達成されるものでもよい。尚、機械学習を用いて解析を行う場合であっても、前記実施例等で列挙した判別処理や計測値決定処理に相当するような処理が複数組み合わされて、最終的な数字の判定が行われることになる。つまり、
図2や
図9のような画像から、相似する形状の数字を正確に判定できたか、計量回転盤4に印字された数字の形状以外を計測値に含んでいないか、等をテストすることによって、上記したような判別処理や計測値決定処理に相当するような処理が判定に加味されて、実用に耐えうるだけの機械学習が完了したことを確認することができる。
【0062】
また、前記実施例では、スマートフォン2から画像を受信すると、まず画像の中から数字の形状を判別し、次いで判別処理を行う手順で説明したが、これに限らず、例えばスマートフォン2から画像を受信すると、まず画像の中から窓部6を判別するという手順であってもよい。
【0063】
また、計器Mを撮影可能な撮像手段としては、可搬型のスマートフォン2等に限らず、例えば取付手段により読み取り対象となる各計器Mの前に設置されるカメラ装置を用いてもよい。この場合、物件内の全てのカメラ装置は近距離無線通信手段で接続されるアクセスポイントを介してサーバ3と通信可能にすることが好ましい。また、カメラ装置はタイマーによって所定時間おきに撮影する構成とすることで、手動による撮影の手間を省くことができる。
【0064】
尚、このように各計器Mの前にカメラ装置が設置される場合には、台帳リストや対応テーブルでは、計器Mに貼着されるシール11に記載された2次元コードに含まれる計器Mの識別情報に代えて、カメラ装置の個体識別情報を用いて対応関係を照会できるようにしてもよい。
【0065】
また、計測値データの閲覧や編集等はスマートフォン2に限らず、計器読取システム1の提供するウェブページにアクセスし、ログインすることでパソコンなどの各種情報端末で行うことができるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 計器読取システム
2 スマートフォン(撮像手段)
3 サーバ(解析手段)
4 計量回転盤
4A 右端の計量回転盤
4b 外周面
4c 目盛線
5 表示盤
5a 指示線
6 窓部
6A 右端の窓部
9 演算装置
10 記憶媒体
11 シール
18 基礎データ
30 隣接端部
40 間隙
M 計器