(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】電動ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
B60R 25/0215 20130101AFI20220622BHJP
E05B 83/00 20140101ALI20220622BHJP
E05B 81/42 20140101ALI20220622BHJP
E05B 85/02 20140101ALI20220622BHJP
【FI】
B60R25/0215
E05B83/00 A
E05B81/42
E05B85/02
(21)【出願番号】P 2019080909
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 丈展
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 光生
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-182177(JP,A)
【文献】特開2008-100643(JP,A)
【文献】特開2008-114786(JP,A)
【文献】特開2007-145299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0051486(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00-25/40
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向操作に応じて回動する操向連動部材(23)に係合するロック位置ならびにその係合を解除するアンロック位置間での移動を可能としたロック部材(25)と、電動モータ(26)で回転駆動されるギヤ(51)と、前記ロック部材(25)を前記ロック位置および前記アンロック位置間で移動させるようにして前記ギヤ(51)に連動、連結されるカム部材(52)と、当該カム部材(52)の作動位置を検出するスイッチ(100)と、前記カム部材(52)の作動に応じて前記スイッチ(100)のスイッチング態様を変化させることを可能として前記カム部材(52)および前記スイッチ(100)間に介装される中継部材(101)とを備える電動ステアリングロック装置において、前記ロック部材(25)が前記アンロック位置側に向けて付勢され、当該ロック部材(25)の側方に配置される支軸(79)に、前記ギヤ(51)と、当該ギヤ(51)よりも径方向で小さく形成される前記カム部材(52)とが連動して回動するようにして回動可能に支持され、前記カム部材(52)に、当該カム部材(52)の回動に応じて前記ロック部材(25)を前記アンロック位置から前記ロック位置に移動させるためのロック部材駆動部(85)と、前記カム部材(52)の回動に応じて前記中継部材(101)を駆動する中継部材駆動部(108)と、前記ギヤ(51)および前記カム部材(52)の回動端を規制するようにして固定の回動規制部(86)に当接可能な被規制部(89)とが一体に設けられることを特徴とする電動ステアリングロック装置。
【請求項2】
前記被規制部(89)が、前記ギヤ(51)に形成された貫通孔(90)に挿通させるようにして前記カム部材(52)に突設されることを特徴とする請求項1に記載の電動ステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操向操作に応じて回動する操向連動部材に係合するロック位置ならびにその係合を解除するアンロック位置間での移動を可能としたロック部材と、電動モータで回転駆動されるギヤと、前記ロック部材を前記ロック位置および前記アンロック位置間で移動させるようにして前記ギヤに連動、連結されるカム部材と、当該カム部材の作動位置を検出するスイッチと、前記カム部材の作動に応じて前記スイッチのスイッチング態様を変化させることを可能として前記カム部材および前記スイッチ間に介装される中継部材とを備える電動ステアリングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような電動ステアリングロック装置は、特許文献1等で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示されたものでは、電動モータで回動駆動されるヘリカルギヤにカム部材か一体に設けられており、マイクロスイッチのスイチング態様を変化させるための中継部材であるアクチュエータを回動駆動するための突起と、ヘリカルギヤの回転を規制するストッパとなるための突部とがヘリカルギヤに一体に設けられており、ヘリカルギヤが大型化し、ひいては装置の大型化を招いてしまう。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、大型化を回避し得るようにした電動ステアリングロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、操向操作に応じて回動する操向連動部材に係合するロック位置ならびにその係合を解除するアンロック位置間での移動を可能としたロック部材と、電動モータで回転駆動されるギヤと、前記ロック部材を前記ロック位置および前記アンロック位置間で移動させるようにして前記ギヤに連動、連結されるカム部材と、当該カム部材の作動位置を検出するスイッチと、前記カム部材の作動に応じて前記スイッチのスイッチング態様を変化させることを可能として前記カム部材および前記スイッチ間に介装される中継部材とを備える電動ステアリングロック装置において、前記ロック部材が前記アンロック位置側に向けて付勢され、当該ロック部材の側方に配置される支軸に、前記ギヤと、当該ギヤよりも径方向で小さく形成される前記カム部材とが連動して回動するようにして回動可能に支持され、前記カム部材に、当該カム部材の回動に応じて前記ロック部材を前記アンロック位置から前記ロック位置に移動させるためのロック部材駆動部と、前記カム部材の回動に応じて前記中継部材を駆動する中継部材駆動部と、前記ギヤおよび前記カム部材の回動端を規制するようにして固定の回動規制部に当接可能な被規制部とが一体に設けられることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記被規制部が、前記ギヤに形成された貫通孔に挿通させるようにして前記カム部材に突設されることを第2の特徴とする。
【0008】
なお実施の形態のステアリングシャフト23が本発明の操向連動部材に対応し、実施の形態のロックピン25が本発明のロック部材に対応し、実施の形態のウォームホイル51が本発明のギヤに対応し、実施の形態のロックピン駆動部85が本発明のロック部材駆動部に対応し、実施の形態のマイクロスイッチ100が本発明のスイッチに対応し、実施の形態のスイッチスライダー101が本発明の中継部材に対応し、実施の形態のスイッチスライダー駆動部108が本発明の中継部材駆動部に対応する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、ギヤよりも径方向で小さなカム部材に、ロック部材駆動部、中継部材駆動部および被規制部が一体に設けられており、3つの機能を小さなカム部材に持たせるようにしたことでギヤの大型化を回避し、装置の小型化を図ることができる。
【0010】
また本発明の第2の特徴によれば、被規制部がギヤの貫通孔に挿通されるので、ギヤに対するカム部材の周方向位置決めが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】電動ステアリングロック装置の斜視図である。
【
図2】電動ステアリングロック装置の分解斜視図である。
【
図6】シール部材およびシールカバーを外した状態での電動ステアリングロック装置の斜視図である。
【
図7】上部カバーおよびギヤカバーを外した状態での電動ステアリングロック装置の平面図である。
【
図8】スライダーを斜め上方から見た斜視図である。
【
図10】ウォームホイルおよびカム部材を斜め上方から見た分解斜視図である。
【
図11】ウォームホイルおよびカム部材を斜め下方から見た分解斜視図である。
【
図13】
図12の13矢視方向から見たギヤカバーの斜視図である。
【
図14】スイッチスライダーおよびコイルスプリングの分解斜視図である。
【
図15】ロックピンがアンロック位置にある状態でのロックピン、スライダー、カム部材およびスイッチスライダーの相対位置を示す図である。
【
図16】ロックピンがロック位置側に移動を開始する状態でのロックピン、スライダー、カム部材およびスイッチスライダーの相対位置を示す図である。
【
図17】ロックピンがロック位置側にフルストロークした状態でのロックピン、スライダー、カム部材およびスイッチスライダーの相対位置を示す図である。
【
図18】ロックピンがロック位置側にフルストロークした状態での
図5に対応した断面図である。
【
図19】ロックピンのロック位置を保持している状態でのロックピン、スライダー、カム部材およびスイッチスライダーの相対位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付の
図1~
図19を参照しながら説明すると、先ず
図1において、この電動ステアリングロック装置は、たとえば自動二輪車用のスマートエントリーシステムに用いられるものであり、携帯送・受信器を携帯したユーザーが自動二輪車に乗車するのに応じてステアリングロック状態を解除し、前記携帯送・受信器を携帯したユーザーが自動二輪車から退出するのに応じて前記ステアリングロック状態を解除するように作動するものである。
【0013】
図2~
図5を併せて参照して、車体フレーム21の一部を構成するヘッドパイプ22内に、操向操作に応じて回動する操向連動部材としてのステアリングシャフト23が回動可能に挿通されており、前記電動ステアリングロック装置は、前記ステアリングシャフト23に係合したロック状態と、その係合を解除したアンロック状態とを切り替えるように構成される。
【0014】
前記電動ステアリングロック装置は、固定のケーシング24と、前記ステアリングシャフト23に係合するロック位置ならびにその係合を解除するアンロック位置間での直線的な往復移動を可能として前記ケーシング24に支持されるロック部材としてのロックピン25と、当該ロックピン25を駆動する動力を発揮することを可能として前記ケーシング24内に固定される電動モータ26と、当該電動モータ26の回転運動を前記ロックピン25の直線運動に変換するようにして前記ケーシング24内で前記電動モータ26および前記ロックピン25間に介設される運動変換機構27とを備える。
【0015】
前記ケーシング24は、前記車体フレーム21に固定されるボディ28と、該ボディ28の上部に締結される上部カバー29と、前記ボディ28の下部に締結される下部カバー30とから成る。
【0016】
前記ボディ28は、前記ヘッドパイプ22側に臨む第1の壁部28aaならびに当該第1の壁部28aaを前記ヘッドパイプ22との間に挟むようにして前記第1の壁部28aaから間隔をあけた位置に配置される第2の壁部28abを有して無端状に連なる側壁28aと、当該側壁28aの下端部寄りの部分の内周に連なる中間壁28bとを一体に有するように形成される。
【0017】
前記ボディ28における前記側壁28aの前記第1の壁部28aaには、前記ステアリングシャフト23の軸線と直交する方向に延びる支持孔31が設けられており、この支持孔31に、前記ロック位置および前記アンロック位置間での直線的な移動を可能として前記ロックピン25が摺動可能に嵌合され、前記ボディ28および前記ロックピン25間には環状のシール部材32が介装される。
【0018】
図6を併せて参照して、前記ボディ28の前記第1の壁部28aaには、前記支持孔31の前記ステアリングシャフト23側の端部に同軸に連なって前記ステアリングシャフト23側に開放する環状のシール収容凹部33が設けられており、このシール収容凹部33に前記シール部材32が収容される。しかも前記ボディ28における前記第1の壁部28aaの前記ステアリングシャフト23側に臨む壁面35にはシールカバー34が、たとえば一対の第1のねじ部材36で取付けられており、このシールカバー34は、前記ボディ28の前記壁面35に取付けられた状態では、前記シール収容凹部33に収容される前記シール部材32を前記シール収容凹部33内で押しつぶして前記ロックピン25の外周面に摺接させるように前記ボディ28との間に挟み込む。
【0019】
前記ボディ28の前記壁面35には、前記シール収容凹部33の周囲に配置される一対の位置決め突起37が突設されており、それらの位置決め突起37を嵌合させる一対の位置決め凹部38が前記シールカバー34に形成され、前記位置決め突起37を前記位置決め凹部38に嵌合させた状態の前記シールカバー34が一対の前記第1のねじ部材36で前記ボディ28の前記壁面35に取付けられる。
【0020】
前記シールカバー34は、前記ヘッドパイプ22に設けられた嵌合孔39に嵌合され、前記シールカバー34の前記ステアリングシャフト23側に臨む外面34aは、前記ステアリングシャフト23の外面形状に沿う形状、すなわち円弧状の横断面形状を有するように形成される。
【0021】
ところで前記ロックピン25の一端部は、そのロック位置にある状態では前記シールカバー34から前記ステアリングシャフト23側に突出するものであり、前記ステアリングシャフト23の外面に形成されている係止凹部40に前記ロックピン25の一端部が係合することによって前記ステアリングシャフト23の回動が阻止され、ステアリングロック状態となる。
【0022】
図7を併せて参照して、前記ボディ28には、当該ボディ28の側壁28aの一部と、前記側壁28aに一体に連なる仕切壁43とで、前記中間壁28bの上方に配置されるモータ収容凹部44が、前記上部カバー29側に開放するようにして形成され、フェルト45が巻装された前記電動モータ26が、その回転軸線が前記ロックピン25の移動方向と平行となるようにして収容される。一方、前記上部カバー29には、前記電動モータ26の外周の一部に対応して湾曲した膨出部29aが形成されており、前記フェルト45が巻装された前記電動モータ26は、前記上部カバー29の前記膨出部29aおよび前記ボディ28間に挟持されることで前記ケーシング24に固定される。
【0023】
ところで前記電動モータ26の長手方向両端部には、出力軸46を回転自在に軸支する第1および第2の軸受部26a,26bが突設されており、第1の軸受部26aから前記出力軸46が突出される。しかも前記仕切壁43の上部には前記第1の軸受部26aを嵌合させる嵌合凹部47が形成される。また前記ケーシング24内で前記中間壁28bおよび前記上部カバー29間には、前記仕切壁43を挟んで前記モータ収容凹部44に隣接するギヤ室48が形成されており、前記出力軸46は前記ギヤ室48内に突入され、前記出力軸46の先端部は前記ボディ28の前記中間壁28bに形成されて上方に開放した支持凹部49に嵌合、支持される。
【0024】
前記ギヤ室48には前記運動変換機構27が収容され、この運動変換機構27は、前記電動モータ26の出力軸46に設けられるウォーム50と、該ウォーム50に噛合するギヤであるウォームホイル51と、該ウォームホイル51に連動、連結されるカム部材52と、前記ロックピン25の他端部に連動、連結されるスライダー53とを備え、前記運動変換機構27を覆って前記上部カバー29の下方に配置されるギヤカバー54(
図4および
図5参照)が、前記ボディ28に設けられる一対のねじ孔55にそれぞれ螺合される第2のねじ部材56(
図2参照)で前記ボディ28に取付けられる。
【0025】
図8および
図9を併せて参照して、前記スライダー53は、前記電動モータ26の回転軸線と直交する平面に沿うとともに前記回転軸線に沿う方向に間隔をあけて対向配置される一対の側板部53aと、それらの側板部53aの上部間を連結する連結板部53bと、一対の前記側板部53aの前記ロックピン25とは反対側の端部に直角に連なって相互に離反する方向に延びる一対の張り出し板部53cと、一対の前記側板部53aの前記ロックピン25とは反対側の端部側を相互に連結する連結部53dと、その連結部53dから下方に突出する下方突出部53eとを一体に有する。
【0026】
前記ボディ28の前記中間壁28bには、
図3で明示するように、前記支持孔31に連なるガイド溝57が、前記支持孔31の内径よりも大きな幅を有しつつ上方に開放するようにして形成されており、前記スライダー53が有する一対の前記側板部53aの一部は前記ガイド溝57に摺動可能に嵌合される。
【0027】
前記ロックピン25の他端部には、前記スライダー53が有する一対の前記側板部53a間に挿入される挿入部25aと、その挿入部25aから両側に張り出す一対の係合腕部25bとが一体に形成されており、前記スライダー53の前記側板部53aには、前記係合腕部25bを挿通、係合させるようにして下方に開いた係止凹部58がそれぞれ形成される。しかも前記スライダー53の前記連結部53dには、前記ロックピン25の前記挿入部25aに突出する棒状の第1のスプリングガイド59が突設され、前記挿入部25aには前記第1のスプリングガイド59に対応した第1のスプリング収容凹部60が形成される。
【0028】
前記ロックピン25の前記挿入部25aと、前記スライダー53の前記連結部53dとの間には第1のコイルスプリング61が縮設されており、前記第1のスプリング収容凹部60に一部が収容されるようにして前記挿入部25aに一端部が当接される第1のコイルスプリング61の他端部は、前記第1のスプリングガイド59を囲繞しつつ前記連結部53dに当接される。この第1のコイルスプリング61によって、前記ロックピン25は、前記係合腕部25bが前記係止凹部58の前記ステアリングシャフト23側の側縁に当接するように付勢される。
【0029】
また前記スライダが備える一対の前記張り出し板部53cには、前記第1のスプリングガイド59と同方向に突出する棒状の第2のスプリングガイド62がそれぞれ突設される。一方、前記ボディ28には、前記第2のスプリングガイド62に対応する一対の第2のスプリング収容凹部63が形成される。
【0030】
前記スライダー53が有する一対の前記張り出し板部53cと、前記ボディ28との間には、一対の第2のコイルスプリング64が縮設されており、前記第2のスプリング収容凹部63に一部が収容されるようにして一端部が前記ボディ28に当接される前記第2のコイルスプリング64の他端部が、前記第2のスプリングガイド62を囲繞しつつ前記張り出し板部53cに当接される。この第2のコイルスプリング64によって、前記スライダー53は、前記ロックピン25をアンロック位置とする側に付勢されることになる。
【0031】
前記ロックピン25および前記スライダー53を前記ボディ28への組付けおよび取り外しのために、前記ボディ28における第2の壁部28abの前記ロックピン25および前記スライダー53に対応する部分には、下方に開いた矩形状の切欠き67が形成される。この切欠き67を閉じるために、前記下部カバー30は、前記ボディ28が有する前記側壁28aに対応した平板部30aと、前記側壁28aの前記切欠き67を閉じるようにして前記平板部30aから上方に突出する縦板部30bとを一体に有するように形成される。
【0032】
前記ボディ28および前記上部カバー29間には、前記ボディ28における前記側壁28aの上端部に形成される上部シール溝68に嵌合されるようにして無端状に連なる上部シール部材69が介装され、複数個たとえば4個の第3のねじ部材70で前記上部カバー29が前記ボディ28に締結される。また前記ボディ28および前記下部カバー30間には、前記切欠き67の側縁を含んで前記側壁28aの下端部に形成される下部シール溝71に無端状の下部シール部材72が介装され、複数個たとえば4個の第4のねじ部材73(
図2参照)で前記下部カバー30が前記ボディ28に締結される。
【0033】
また前記下部カバー30には、回路基板76がたとえば2個の第5のねじ部材75(
図2参照)で締結されており、この回路基板76に装着される複数の電気部品および前記電動モータ26との電気的接続を果たすためのコネクタ77が前記下部カバー30に組み付けられ、このコネクタ77は、第6のねじ部材78で前記ボディ28の前記側壁28aに締結される。
【0034】
前記ウォームホイル51および前記カム部材52は、ともに連動して回動するようにして支軸79で回動可能に支持される。前記支軸79は、前記ロックピン25の移動方向の延長線上から側方にオフセットした位置、この実施の形態では前記ロックピン25および前記スライダー53に対して前記電動モータ26とは反対側の側方にオフセットした位置に配置されて、前記ボディ28に一端部が嵌合されるものであり、この実施の形態で前記支軸79は金属製であるが、コスト低減のために樹脂製とすることも可能である。
【0035】
前記ウォームホイル51と、当該ウォームホイル51よりも径方向で小さく形成されて前記ウォームホイル51に連動、連結されるカム部材52とは、前記ウォームホイル51の下方に前記カム部材52が配置されるようにして、前記カム部材52の一部が前記支軸79の軸線に沿う方向から見て前記スライダー53における前記連結板部53bに一部が重なるようにしつつ、前記スライダー53よりも上方に配置される。
【0036】
図10および
図11を併せて参照して、前記ウォームホイル51は、円板部51aと、そのの円板部51aの外周縁に直角に連なる円筒部51bと、前記円板部51aの下面のほぼ半周の外周部から下方に突出するとともに周方向両端部が前記円筒部51bの内周に連なる円弧状突部51cとを一体に有し、前記円筒部51bの外周に、前記ウォーム50に噛合する斜歯80が形成される。
【0037】
また前記カム部材52は、前記ウォームホイル51における前記円板部51aの下方に配置されるものであり、前記ウォームホイル51の前記円板部51aよりも小径に形成される円板状の基部52aと、その基部52aのほぼ半周の外周から側方に張り出すとともに当該基部52aよりも下方に突出する突出部52bと、その突出部52bの周方向一端部の内周から前記基部52aの下面外周部に沿って延出される円弧状の延出部52cとを一体に有するように形成される。しかも前記カム部材52は、前記ロックピン25をロック位置に移動させるときには
図10および
図11の矢印で示すロック位置側回動方向81に回動するものであり、前記延出部52cは、ロック位置側回動方向81での前記突出部52bの前端部から延出される。
【0038】
前記ウォームホイル51の下部において、前記円筒部51bのうち前記円弧状突部51cを除く部分と、前記円弧状突部51cとは、前記カム部材52の外周形状に対応する嵌合凹部82を形成するものであり、前記カム部材52の一部はその嵌合凹部82に嵌合される。
【0039】
しかも前記ウォームホイル51における前記円板部51aの中央に、前記支軸79を挿通させる中心孔83が形成され、前記カム部材52の前記基部52aにも前記中心孔83に対応する中心孔84が前記支軸79を挿通させるようにして形成される。
【0040】
ところで前記ロックピン25に連動、連結された前記スライダー53は、前記ロックピン25をアンロック位置からロック位置に移動させるときには前記カム部材52で押圧駆動されるものであり、前記スライダー53における前記連結板部53bの前記ロックピン25側端部に突設される受圧突起53fに当接可能なロック部材駆動部としてのロックピン駆動部85が、前記カム部材52の前記ロック位置側回動方向81への回動に応じて前記受圧突起53fに押圧力を加えるようにして、前記カム部材52における前記突出部52bの前記ロック位置側回動方向81に沿う前端に設けられる。
【0041】
図12および
図13を併せて参照して、前記ギヤカバー54の下面中央部には、前記ボディ28における前記中間壁28bに一端部が嵌合支持される前記支軸79の他端部を嵌合、支持するようにしたボス部54aが突設される。また前記ボス部54aから半径方向外方に突出する回動規制部86が前記ギヤカバー54の下面に一体に設けられる。
【0042】
前記回動規制部86は、前記ウォームホイル51および前記カム部材52の回動を規制するものであり、前記ウォームホイル51とともに回動する前記カム部材52に前記回動規制部86に当接し得る被規制部89が設けられる。
【0043】
前記被規制部89は、
図10および
図11で示すように、前記カム部材52における前記突出部52bの前記ロック位置側回動方向81に沿う前端の上面に突設されており、この被規制部89は、前記ウォームホイル51の前記円板部51aに形成された第1の貫通孔90に挿通されて前記ウォームホイル51よりも上方に突出する。
【0044】
また前記カム部材52の中心孔を前記被規制部89との間に挟む位置で前記カム部材52における前記突出部52bの上面には位置決め突部91が突設されており、この位置決め突部91は、前記ウォームホイル51の前記円板部51aに形成された第2の貫通孔92に挿通される。
【0045】
また前記ギヤカバー54の下面には、前記ウォーム50を上方から覆って当該ウォーム50の浮き上がりを防止するためのウォームカバー87が、下方に開いた略U字状の横断面形状を有するようにして一体に形成される。
【0046】
さらに前記ギヤカバー54には、前記ロックピン25の前記ロック位置および前記アンロック位置間での直線的な移動方向のアンロック位置側への延長線上に配置される規制壁88が一体に設けられ、この規制壁88は、前記スライダー53における前記張り出し板部53cに当接して、前記スライダー53の移動を規制し、それによって前記ロックピン25の前記アンロック位置側への移動端が規制される。
【0047】
前記下部カバー30における前記平板部30aの上面に締結される前記回路基板76の上面には、
図4で示すように、前記スライダー53の移動方向に沿って間隔をあけて第1および第2のホールIC94,95が取付けられる。一方、前記スライダー53における前記下方突出部53eは、前記ボディ28の前記中間壁28bに形成された開口部96から前記回路基板76側に突出しており、前記下方突出部53eに形成されるマグネット収容凹部97にマグネット98が収容され、前記マグネット98を前記下方突出部53eに保持するためのマグネットホルダ99が前記下方突出部53eに弾発、係合される。
【0048】
而して前記第1のホールIC94は、前記ロックピン25がアンロック位置にあるときに前記マグネット98が近接することによって前記ロックピン25がアンロック位置にあることを検出するものであり、前記第2のホールIC95は、前記ロックピン25がロック位置にあるときに前記マグネット98が近接することによって前記ロックピン25がロック位置にあることを検出するものである。
【0049】
また前記回路基板76には、
図5で示すように、前記ウォームホイル51および前記カム部材52の回動位置を検出するためのスイッチであるマイクロスイッチ100が取付けられる。また前記カム部材52の回動に応じて前記マイクロスイッチ100のスイッチング態様を変化させる中継部材であるスイッチスライダー101が、前記カム部材52に向けて付勢されつつスライドすることを可能として前記カム部材52および前記マイクロスイッチ100間に配置されるものであり、この実施の形態で前記スイッチスライダー101は、前記カム部材52の回動軸線と平行な方向にスライドすることを可能として、前記回動軸線に沿う方向で前記カム部材52および前記マイクロスイッチ100間に配置される。
【0050】
図14を併せて参照して、前記スイッチスライダー101は、前記カム部材52側の先端部に当接部102を有するスライダー主部101aと、そのスライダー主部101aから両側に突出する一対の腕部101bとを一体に有するように形成される。
【0051】
一方、前記ボディ28における前記中間壁28bの前記マイクロスイッチ100に対応する部分には、前記スライダー主部101aをスライド可能に嵌入させるスライド孔103と、そのスライド孔103の両側に配置されて前記カム部材52側に開放した一対の第3のスプリング収容凹部104と、前記スライド孔103および前記第3のスプリング収容凹部104間を結ぶスリット105とが形成される。
【0052】
前記スイッチスライダー101の腕部101bは、前記スライド孔103に嵌入される前記スライダー主部101aから前記スリット105を貫通して前記第3のスプリング収容凹部104側に突出される。前記腕部101bには、前記第3のスプリング収容凹部104内に向けて突出する第3のスプリングガイド106が突設されており、それらの第3のスプリングガイド106を一端側で囲繞するようにして前記第3のスプリング収容凹部104に収容される一対の第3のコイルスプリング107が、前記腕部101bおよび前記ボディ28間に縮設され、それらの第3のコイルスプリング107によって前記スイッチスライダー101が前記カム部材52側に向けて付勢される。
【0053】
前記カム部材52には、当該カム部材52の回動に応じて前記スイッチスライダー101を駆動する中継部材駆動部としてのスイッチスライダー駆動部108が設けられる。このスイッチスライダー駆動部108は、
図10および
図11で示すように、前記カム部材52における前記突出部52bおよび延出部52cに設けられるものであり、前記突出部52bの前記ロック位置側回動方向81に沿う後端下面に形成される第1の斜面109と、前記延出部52cの前記ロック位置側回動方向81に沿う前端下面に形成される第2の斜面110とを備える。第1の斜面109は、前記ロック位置側回動方向81に沿う前方側に向けて次第に下方位置となるように傾斜して形成され、前記第2の斜面110は、前記ロック位置側回動方向81に沿う前方側に向けて次第に上方位置となるように傾斜して形成される。
【0054】
前記スイッチスライダー101の前記当接部102は、前記第1の斜面109、前記突出部52bの下面、前記延出部52cの下面および前記第2の斜面110に接触するものであり、前記当接部102は、その少なくとも一部が、前記カム部材52の回動軸線に沿う方向から見て前記カム部材52と重なるように配置されることになる。
【0055】
前記電動モータ26の作動による前記運動変換機構27の作動に伴う前記ロックピン25およびスライダー53の作動状況について次に説明すると、
図15において、前記ロックピン25がアンロック位置にあって電動モータ26の非作動状態にあるとき、すなわち前記カム部材52の非作動状態では、前記カム部材52の前記被規制部89は前記ギヤカバー54の回動規制部86に前記ロック位置側回動方向81とは反対側から当接しており、前記スイッチスライダー101の前記当接部102は、前記カム部材52における前記突出部52bの下面に当接し、
図5で示すように、前記マイクロスイッチ100に接触した状態にある。
【0056】
次いで前記電動モータ26の作動を開始して、
図16で示すように、カム部材52のロックピン駆動部85を前記スライダー53の前記受圧突起53fに当接させる位置まで前記カム部材52を前記ロック位置側回動方向81に回動したときにも、前記スイッチスライダー101の前記当接部102は、前記カム部材52における前記突出部52bの下面に当接し、
図5で示すように、前記マイクロスイッチ100に接触したままである。
【0057】
前記電動モータ26によって前記カム部材52を前記ロック位置側回動方向81にさらに回動すると、
図17で示すように、前記スライダー53の受圧突起53fが前記ロックピン駆動部85で押され、前記ロックピン25がロック位置に移動することになる。この際、前記スイッチスライダー101の前記当接部102は前記突出部52bの下面から第1の斜面109を経て、前記カム部材52における前記基部52aの外周部に接触した状態にあり、この状態で前記スイッチスライダー101は、
図18で示すように、前記マイクロスイッチ100から離間して当該マイクロスイッチ100のオン状態からオフ状態へとスイッチング態様を変化させることになる。
【0058】
また前記スライダー53の前記受圧突起53fは、前記ロックピン駆動部85から前記突出部52bの外周面に接触する位置まで変位し、前記ロックピン駆動部85から前記突出部52bの外周面への前記受圧突起53fの接触部の変位を円滑に行なうために、前記ロックピン駆動部85および前記突出部52bの外周面間には斜面であるガイド面111が形成される。
【0059】
前記ロックピン25が前記ロック位置側にフルストロークしたことが前記第2のホールIC95で検出された後には、前記電動モータ26の作動継続によって前記カム部材52は前記ロック位置側回動方向81にさらに回動し、
図19で示すように、前記カム部材52の回動は、そのカム部材52の前記被規制部89が前記ギヤカバー54の回動規制部86に前記ロック位置側回動方向81から当接することで規制され、前記スライダー53の前記受圧突起53fが前記カム部材52における前記突出部52bの外周面に当接することで前記ロックピン25のロック位置が保持される。また前記スイッチスライダー101の前記当接部102は、第2の斜面110から前記延出部52cの下面に当接した状態にあり、
図5で示すように、前記マイクロスイッチ100に接触する。
【0060】
前記ロックピン25を前記ロック位置から前記アンロック位置に戻すときには、前記電動モータ26の逆方向への回転作動によって、前記カム部材52を
図19で示す位置から
図16で示す位置まで回動して戻せばよく、前記ロックピン25および前記スライダー53は、第2のコイルスイッチプリング64の付勢力でアンロック位置側に移動することになる。
【0061】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、ボディ28に、ロックピン25を摺動可能に嵌合させる支持孔31と、当該支持孔31のステアリングシャフト23側の端部に同軸に連なって前記ステアリングシャフト23側に開放する環状のシール収容凹部33とが設けられ、ボディ28およびロックピン25間に介装されるようにして前記シール収容凹部33に収容される環状のシール部材32を前記シール収容凹部33内で押しつぶして前記ロックピン25の外周面に摺接させるように前記ボディ28との間に挟み込むシールカバー34が、前記ボディ28の前記ステアリングシャフト23側に臨む壁面35に取付けられるので、シール部材32の組付けにあたってシール部材32は前記シール収容凹部33に入れられるだけでよく、シール部材32の組付け性を高めることができる。
【0062】
また前記シールカバー34の前記ステアリングシャフト23側に臨む外面34aが、前記ステアリングシャフト23の外面形状に沿う形状に形成されるので、シールカバー34をステアリングシャフト23により近接させてステアリングシャフト23およびシールカバー34間の隙間を小さく抑え、ロックピン25に外部から容易に操作を加えたり、破壊したりしてステアリングロック状態を解除することを防止することができ、防盗性の向上を図ることができる。
【0063】
また電動モータ26およびロックピン25間に設けられる運動変換機構27およびロックピン25の一部を覆うようにして前記ボディ28に取付けられるギヤカバー54に、前記ロックピン25のロック位置およびアンロック位置間での移動方向の延長線上に配置される規制壁88が、前記ロックピン25の前記アンロック位置側への移動端を規制するようにして一体に設けられるので、カム部材52を回動可能に支持する支軸79が前記ロックピン25の移動方向の延長線上から側方にオフセットした位置にあっても、ギヤカバー54に規制壁88が一体に設けられるようにした簡単な構造でロックピン25からの衝撃を受けることができ、部品の形状変更等による構造の複雑化や大型化を回避することができる。
【0064】
また前記ギヤカバー54に、前記カム部材52の回動を規制する回動規制部86が一体に設けられるので、ロックピン25の移動規制機能およびカム部材52の回動規制機能をギヤカバー54に持たせることができ、部品点数の増大を回避しつつ、装置の大型化防止がより一層図れる。
【0065】
また前記カム部材52の作動位置を検出するよにして回路基板76に取付けられるマイクロスイッチ100と、前記カム部材52の作動に応じて前記マイクロスイッチ100のスイッチング態様を変化させることを可能としたスイッチスライダー101が、前記カム部材52に向けて付勢されつつスライドすることを可能として前記カム部材52および前記マイクロスイッチ100間に配置されるので、前記回動軸線に沿う方向で前記カム部材52の作動に応じて前記マイクロスイッチ100のスイッチング態様を変化させるようにした中継部材を回動可能に支持するための支軸をカム部材52の側方に配置することが不要であり、スイッチスライダー101をカム部材52に近づけて配置して装置の小型化を図ることができる。
【0066】
しかも前記カム部材52に当接する当接部102を有する前記スイッチスライダー101は、前記カム部材52の回動軸線と平行な方向にスライドすることを可能として、前記回動軸線に沿う方向で前記カム部材52および前記マイクロスイッチ100間に配置され、その当接部102の少なくとも一部が、前記カム部材52の回動軸線に沿う方向から見て前記カム部材52と重なるように配置されるので、スイッチスライダー101をカム部材52により近づけて配置して装置の小型化を一層図ることができる。
【0067】
また前記ロックピン25が前記アンロック位置側に向けて付勢され、当該ロックピン25の側方に配置される支軸79に、ウォームホイル51と、当該ウォームホイル51よりも径方向で小さく形成される前記カム部材52とが連動して回動するようにして回動可能に支持され、前記カム部材52に、当該カム部材52の回動に応じて前記ロックピン25を前記アンロック位置から前記ロック位置に移動させるためのロックピン駆動部85と、前記カム部材52の回動に応じて前記スイッチスライダー101を駆動するスイッチスライダー駆動部108と、前記ウォームホイル51および前記カム部材52の回動端を規制するようにしてギヤカバー54に設けられる回動規制部86に当接可能な被規制部89とが一体に形成されるので、3つの機能を小さなカム部材52に持たせるようにしたことでウォームホイル51の大型化を回避し、装置の小型化を図ることができる。
【0068】
さらに前記被規制部89が、前記ウォームホイル51に形成された第1の貫通孔90に挿通させるようにして前記カム部材52に突設されるので、ウォームホイル51に対するカム部材52の周方向位置決めが容易となる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0070】
たとえば上述の実施の形態では、ギヤカバー54に回動規制部85が設けられるようにしたが、ボディ28に回動規制部85が設けられるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
23・・・操向連動部材であるステアリングシャフト
25・・・ロック部材であるロックピン
26・・・電動モータ
51・・・ギヤであるウォームホイル
52・・・カム部材
79・・・支軸
85・・・ロック部材駆動部であるロックピン駆動部
86・・・回動規制部
89・・・被規制部
90・・・貫通孔
100・・・スイッチであるマイクロスイッチ
101・・・中継部材であるスイッチスライダー
108・・・中継部材駆動部であるスイッチスライダー駆動部