(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】火災報知設備の感知器試験システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20220622BHJP
G08B 29/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B29/00 Z
(21)【出願番号】P 2019194999
(22)【出願日】2019-10-28
(62)【分割の表示】P 2018114159の分割
【原出願日】2014-01-24
【審査請求日】2019-11-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】島 裕史
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】衣鳩 文彦
【審判官】丸山 高政
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-242869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災感知器と、
前記火災感知器と接続する受信機と、
携帯端末と、
を備え、
前記携帯端末は、
前記火災感知器の試験時に火災感知器の発報に基づく信号を前記受信機から受信した場合に、感知器試験による所定の試験発報を報知し、
前記信号を受信した後に、前記信号を再度受信した場合は、火災警報を報知し、
前記火災感知器の試験を複数の感知器で行う場合には、前記信号を再度受信しても前記火災警報を報知しないことを可能とすることを特徴とする火災報知設備の感知器試験システム。
【請求項2】
火災感知器と、
前記火災感知器と接続する受信機と、
携帯端末と、
を備え、
前記携帯端末は、
前記火災感知器の試験時に火災感知器の発報に基づく信号を前記受信機から受信した場合に、感知器試験による所定の試験発報を報知し、
前記信号を受信した後に、前記信号を再度受信した場合に
、火災警報を報知するかどうかを選択可能とすることを特徴とする火災報知設備の感知器試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験治具を用いて火災感知器を試験する火災報知設備の感知器試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災報知設備にあっては、設備の運用中に定期点検を行っており、その中で、試験治具を用いて火災感知器を実際に作動させる感知器試験を行う。
【0003】
感知器試験は、受信機に一人、感知器側に一人の2名の試験員により行われる。感知器側の試験員は、支持ポールの先端に試験ヘッドを設けた試験治具を使用し、試験ヘッドを例えば煙感知器を覆うように下から密着させ、この状態で試験ヘッドから煙を流入させて煙感知器を動作するか、あるいは磁石によるリードスイッチ等の動作で煙感知器を擬似的に動作し、受信機の試験員が火災感知器の動作試験に伴う火災受信の有無を確認し、インターホンなどで連絡を取りながら試験作業を進めている。
【0004】
このように、感知器試験は少なくとも2名の試験員が必要であり、作業工数の削減を目的として、これを1名でできるようにした感知器試験システムが期待されている。例えば受信機に火災受信を検出して試験結果として打ち出すプリンタを設け、試験治具を用いて警戒区域に設置している火災感知器の動作試験を行い、感知器試験が終了した時点でプリンタの記録内容をみることで、動作試験を行った火災感知器が正常か異常かを判断する感知器試験システムである。
【0005】
このような試験員1名による感知器試験では、受信機側に試験員がつかず、感知器試験に伴う受信機からの火災警報の復旧操作が行えないことから、感知器試験に先立ち、例えば地区音響警報については警報停止操作を行っておき、また受信機から出す主音響警報については、復旧操作によらず、火災検出信号が受信されている間だけ警報を出力するように設定する操作を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平05-151478号公報
【文献】実開平07-025496号公報
【文献】特開2003-099870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の試験員1名による感知器試験を可能とした感知器試験システムにあっては、試験員が試験治具を用いて警戒区域に設置している火災感知器の動作試験を行った場合、感知器が試験発報して受信機で正常に受信されたがどうかは受信機に戻ってプリンタの記録内容を見なければわからず、試験員2名でインターホンで連絡を取りながら行っている試験に比べ、受信機側の状況をリアルタイムで把握することができないために不安となり、ある程度作業が進んだ段階で受信機に戻って試験結果を確認しながら行うことから、作業負担が増加する問題がある。
【0008】
また、感知器の試験作業中に実際に火災が発生した場合、受信機から火災警報が出力されるが、この火災警報が感知器試験によるものか、実際に起きた火災によるものかの区別がつきにくく、また受信機からの警報音が聞こえにくい場所で作業している場合もあり、火災に気付くまでに時間がかかり、迅速且つ適正な対処ができなくなる恐れがある。
【0009】
また、感知器試験の作業中に、試験員が火災を知った場合、受信機に戻って地区音響災警報を出力させる操作を必要とし、地区音響警報が出力されるまでに時間がかかる問題もある。
【0010】
本発明は、試験員1名による試験作業であっても受信機側の動作を確認可能として不安なく感知器の試験作業を進めることを可能とする火災報知設備の感知器試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、火災報知設備の感知器試験システムに於いて、
火災感知器と、
火災感知器と接続する受信機と、
携帯端末と、
を備え、
携帯端末は、火災感知器の試験時に火災感知器の発報に基づく信号を受信機から受信した場合に、感知器試験による所定の試験発報を報知し、当該信号を受信した後に、当該号を再度受信した場合は、火災警報を報知することを特徴とする。
【0012】
携帯端末は火災感知器の試験を複数の感知器で行う場合には、火災感知器の発報に基づく信号を受信した後に、当該信号を再度受信しても火災警報を報知しないようにする。
【0013】
携帯端末は、火災感知器の発報に基づく信号を受信した後に、当該信号を再度受信した場合に、火災警報を報知するかどうかを選択可能とする。
【発明の効果】
【0014】
(基本的な効果)
本発明による火災報知設備の感知器試験システムは、受信機の制御部に設けた入出力ポートと電話回線との間に接続されて少なくとも入出力ポートからの信号を電話回線に送信する電話回線アダプタと、発信機の電話機接続端子に着脱自在に接続され、少なくとも電話回線アダプタから受信した信号を無線信号に変換して送信する無線回線アダプタと、無線回線アダプタからの無線信号を受信して処理する携帯端末とを設け、受信機の制御部は、所定の音響停止警報を含む感知器試験モードの設定状態で火災感知器から火災信号を受信した場合に、携帯端末を宛先とする試験発報信号を入出力ポートに出力し、電話回線アダプタ及び無線回線アダプタを経由して携帯電末に送信し、携帯端末の制御部は、電話回線アダプタ及び無線回線アダプタを経由して受信機の制御部からの試験発報信号を受信した場合に、感知器試験による試験発報を報知するようにしたため、試験員1名により試験治具を用いた感知器試験作業を行う場合、火災感知器を試験発報して火災信号が受信されると受信機から試験発報信号が送信されて試験員が保有しているスマートフォン等の携帯端末から試験発報が表示及び音響により報知され、火災感知器の試験発報による火災受信が正常に行われたことをリアルタイムで知ることができ、受信機の動作が分かることで、試験員1名であっても不安なく試験作業を進めることができ、作業の途中で受信機に戻ってプリンタ打ち出し等を確認する必要がなく、作業負担を大幅に低減可能とする。
【0015】
また、感知器試験作業を行う場合には、携帯試験用機器として準備した無線回線アダプタを試験作業を行う監視領域に設置している発信機の電話機接続端子(電話ジャック)に接続することで、受信機に内蔵している電話回線アダプタと電話回線を介して通信接続し、発信機の設置場所を中心に携帯端末と通信接続可能な無線通信エリアを形成することができ、電話ジャックを備えた発信機は例えば階別に分かれた警戒区域毎に必ず設置していることから、感知器試験を行う警戒区域に携帯端末と通信接続可能な無線通信エリアを確実に形成し、受信機から離れた場所であっても、試験員の保有する携帯端末に試験発報を確実に送信して報知可能とする。
【0016】
(試験発報復旧の報知による効果)
また、受信機の制御部は、火災感知器からの火災信号を受信して試験発報信号を送信した後に、火災感知器から火災信号の受信が停止した場合に、携帯端末を宛先とする試験発報復旧信号を入出力ポートに出力し、電話回線アダプタ及び無線回線アダプタを経由して携帯端末に送信し、携帯端末の制御部は、電話回線アダプタ及び無線回線アダプタを経由して受信機の制御部からの試験発報復旧信号を受信した場合に、感知器試験終了による試験発報復旧を報知するようにしたため、試験員が試験治具を使用して火災感知器の発報試験を行って携帯端末の報知で受信機の動作を確認した後に、試験治具を外して火災感知器が復帰すると、携帯端末で受信機側での試験発報復旧を確認することができ、感知器試験に伴う受信機側の動作が更に詳細に分かることで、安心して試験作業を進めることができる。
【0017】
(火災警報による効果)
また、携帯端末の制御部は、電話回線アダプタ及び無線回線アダプタを経由して受信機の制御部からの試験発報信号を受信した後に、再度、試験発報信号を受信した場合、火災と判断して火災警報を出力するようにしたため、試験員一人による試験作業では、試験発報が2回連続することはないことから、2回目の試験発報を携帯端末で受信した場合に火災と判断して火災警報を報知することで、試験員1名による試験作業中に起きた火災を確実に知って迅速且つ適切に対処可能とする。
【0018】
(火災判断による保守点検モードの自動解除による効果)
また、受信機の制御部は、感知器試験モードの設定状態で地区音響警報を停止すると共に火災信号を受信している間、主音響警報を出力するように設定しており、携帯端末の制御部は、火災を判断した場合に火災警報を出力すると共に受信機を宛先とする感知器試験モードの解除指示信号を送信し、受信機の感知器試験モードを解除して火災監視モードに切替えるようにしたため、携帯端末からの指示で受信機の感知器試験モードが自動的に解除され、通常監視中の場合と同様に、実火災に基づく火災検出信号の受信により火災警報(主音響警報と地区音響警報)を出力することができ、感知器試験中に起きた火災に対し迅速且つ適切な対処可能とする。
【0019】
(回線番号又は感知器アドレスの報知による効果)
また、複数の発信機に設けた電話機接続端子に複数の無線回線アダプタを接続して複数の携帯電話端末で各無線回線アダプタからの無線信号を受信して処理する場合、受信機の制御部は、全ての携帯端末を宛先とするブロードキャストの試験発報信号及び試験発報復旧信号に、火災信号を受信した回線番号又は感知器アドレスを含めて送信し、携帯端末の制御部は、試験発報信号又は試験発報復旧信号を受信した場合に、感知器試験による試験発報又は試験復旧と回線番号又は感知器アドレスを報知するようにしたため、例えば回線が相違する複数の監視区域、例えば異なる階に設置している火災感知器の試験を、複数の試験員が同時に並行して行っても、携帯端末に表示される回線番号から自分が試験した火災感知器の試験発報による受信機動作を知ることができ、複数の試験員による同時並行的な感知器試験作業を可能とし、大規模施設に設置した火災報知設備の感知器試験に要する作業時間を大幅に短縮して作業能率を高めることを可能とする。なお、この場合は、携帯電話端末による試験発報信号の再受信に基づく火災警報は禁止する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による火災報知設備の感知器試験システムの概略を示した説明図
【
図2】
図1における受信機の構成を発信機に接続した無線回線アダプタ及び携帯電話端末と共に示した説明図
【
図3】携帯電話端末の機能構成の概略を示したブロック図
【
図4】携帯電話端末の初期画面とその通信テスト結果を示した説明図
【
図5】携帯電話端末の試験発報画面と試験発報復旧画面を示した説明図
【
図8】携帯電話端末の感知器試験モニタ制御を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
[感知器試験システムの概要]
図1は本発明による火災報知設備の感知器試験システムの概略を示した説明図であり、回線単位に火災を監視するP型として知られた受信機を使用した火災報知設備の感知試験システムを例にとっている。
【0022】
図1に示すように、建物の管理人室などに設置した受信機10からは建物内の警戒区域に向けて信号回線12が引き出されており、信号回線は例えば火報線L、コモン線C及び電話線Tの3本で構成している。ここで火報線Lとコモン線Cで火報回線12aを構成し、電話線Tとコモン線Cで電話回線12bを構成している。
【0023】
受信機10から引き出された火報回線12aには警戒区域内の所定の感知区域ごとに設置した火災感知器14を接続している。火災感知器14は火災に伴う煙を検出する煙感知器又は火災に伴う熱を検出する熱感知器である。火災感知器14は煙濃度又は温度の検出信号から火災を検出して動作した場合(これを「発報」又は「発報動作」という)、発報電流を火報回線12aに流すことで火災信号を受信機10に送信して火災警報を出力させる。
【0024】
受信機10は感知器回線12aを介して火災感知器14が送信した火災信号を受信すると、主音響警報、地区音響警報、代表火災表示、地区火災表示等による火災警報の出力を行う。
【0025】
また受信機10から引き出された火報回線12aには発信機16を接続している。発信機16は複数の火災感知器14が設置された警戒区域ごと、例えば各部屋に火災感知器14を設置した場合は廊下壁面等の共用部に設置される。発信機16は保護板でカバーされた発信機釦16aを備え、この押し込み操作によるスイッチ16b(
図2参照)のオンにより火報回線12aに発報電流を流すことで火災発信信号を受信機10に送信して火災警報を出力させる。
【0026】
発信機16に設けた開閉自在なカバー扉の中には電話機接続端子として機能する電話ジャック18を設けており、電話ジャック18は受信機10からの電話回線12bに接続している。発信機16に設けた電話ジャック18に試験員が携帯した非常電話機のプラグを差し込むことで、受信機10側の電話ジャックに差し込んでいる非常電話機との間の通話接続が可能となる。
【0027】
ここで、発信機16は受信機10から警戒区域毎に引き出された火報回線12aに接続されているが、受信機10から引き出された電話回線12bは全ての警戒区域に共通回線として引き回されており、このため複数の発信機16に設けた電話ジャック18は同じ電話回線12bに共通に接続されている。
【0028】
このような火災報知設備に対し本発明の感知器試験システムにあっては、受信機10に後の説明で明らかにする電話回線アダプタを設けて受信機10の制御部と電話回線12bとの間を接続し、また発信機16の電話ジャック18に無線回線アダプタ26をプラグの差し込みにより接続し、更に、試験治具20を使用して感知器試験を行う試験員22は携帯端末として機能するスマートフォンなどの携帯電話端末28を保有している。
【0029】
ここで、スマートフォン等を用いた携帯電話端末28は、無線LANのアクセスポイントとして機能する無線LAN通信機能、例えばデザリング機能を備えており、無線ルータを経由せず、発信機16の電話ジャック18に接続した無線回線アダプタ26との間で無線LANによる通信接続を可能とする。
【0030】
これにより受信機10の制御部と試験員22の携帯電話端末28との間は、受信機内蔵の電話回線アダプタ、電話回線12b、発信機16の電話ジャック18に接続した無線回線アダプタ26を介して通信接続が可能となる。
【0031】
[受信機と携帯電話端末の間の通信経路]
図2は、
図1における受信機の構成を発信機に接続した無線回線アダプタ及び携帯電話端末と共に示した説明図である。
【0032】
図2に示すように、受信機10は制御部30を備え、制御部30は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成している。制御部30に対しては、回線受信部32、表示部34、操作部35、警報部36、移報部38及び通話回路部40を設けている。
【0033】
また制御部30に設けたCPUからは、例えばUSBとして知られた汎用シリアルバス(Universal Serial Bus)が引き出され、この汎用シリア ルバスに入出力ポートして機能するUSBコネクタ によるUSBポート42を1又は複数設けており、その内の1つに電話回線アダプタ24の一方の入出力端子を接続している。
【0034】
回線受信部32は火災感知器14の火災検知による発報動作又は発信機16の押し釦操作で流れる発報電流を検出して火災信号を制御部30に出力する。火災感知器14は煙濃度や温度に基づく火災を検知している場合に発報動作を継続しており、煙濃度や温度に基づく火災状態が解消されると発報動作を停止する。このため回線受信部32は火災感知器14が火災を検知して発報動作をしている間、火災信号を出力しており、火災感知器14の火災発報動作が停止すると火災信号の出力を停止する。
【0035】
表示部34は受信機の盤前面や盤内に設けた各種の表示灯や表示器を備えている。例えば表示部34には、火災代表灯、地区表示灯、電話灯、地区音響一時停止灯、主音響停止灯等を設けている。
【0036】
操作部35は受信機の盤前面や盤内に設けた各種の操作スイッチを備えている。例えば操作部35には、地区音響一時停止スイッチ、主音響停止スイッチ等を設けている。
【0037】
警報部36には音響警報や音声案内を行うスピーカやブザー等を設けている。移報部38には、外部接続する例えば表示盤等に火災代表移報信号や回線移報信号を出力する無電圧リレー接点を用いた移報回路を設けている。
【0038】
通話回路部40は電話回線12bの電話線TにコンデンサC1,C2を直列接続し、コンデンサC1,C2の接続点を受信機10に設けた電話ジャック44に接続している。また電話線Tには抵抗R3を介して電源電圧Vcを印加しており、更に抵抗R1,R2を直列接続した分圧回路の分圧電圧を通話接続検出信号として制御部30に出力している。
【0039】
発信機16の電話ジャック18に非常電話機のプラグ26aを差し込み接続すると、抵抗R3から電話線T、電話ジャック18の非常電話機及びコモン線Cとなる経路で電流が流れ、抵抗R1,R2で分圧した通話接続検出信号(電圧信号)が所定値以下に低下し、これを制御部30で検出して電話灯を点灯すると共に呼出音を出力し、受信機10の電話ジャック44に別の非常電話機のフラグを差し込み接続することで、発信機16側の非常電話機との間で通話ができる。
【0040】
制御部30のUSBポート42にUSBコネクタを用いた一方の入出力端子を接続した電話回線アダプタ24は、他方の入出力端子を通話回路部40に設けたコンデンサC1,C2の間に接続し、コンデンサC1,C2を介して電話回線12bに接続している。
【0041】
電話回線アダプタ24は、制御部30のUSBポート42と電話回線12bとの間でパケット信号を送受信する。即ち、電話回線アダプタ24は、USBポート42から受信したパケット信号を電話回線12bの可聴帯域の音声周波数帯域300~3400Hzを搬送波とするパケット信号に変換し、例えば1200bpsの速度で通信する。また、電話回線アダプタ24は、電話回線12bから受信した音声周波数帯域300~3400Hzを搬送波とするパケット信号をUSBプロトコルに従ったパケット信号に変換して制御部30に出力する。
【0042】
電話回線アダプタ24の電話回線12bに対する通信は、半二重通信又は全二重通信のFSK方式(周波数シフトキーイング方式)やPSK方式(位相シフトキーイング方式)等とし、市販の電話回線用のモデムが使用できる。なお、受信機10から携帯電話端末28への一方向の通信とする場合は単方向通信の電話回線アダプタ24で良い。
【0043】
発信機16の電話ジャック18にプラグ26aを介して接続して使用する無線回線アダプタ26は、例えば電池電源で動作し、電話回線12bを介して電話回線アダプタ24から受信した可聴帯域の音声周波数帯域300~3400Hzを搬送波とするパケット信号を所定の無線LANのパケット信号に変換して送信する。また無線回線アダプタ26は、アンテナにより外部から受信した無線LANのパケット信号を可聴帯域の音声周波数帯域300~3400Hzを搬送波とするパケット信号に変換して電話回線12bに送信する。
【0044】
無線回線アダプタ26による無線LANの変換はイーサネット(登録商標)による無線ネットワークをベースにしたIEEE802.11に準拠した変換を行う。また、無線回線アダプタ26による無線通信は、5GHz帯や2.4GHz帯を使用した特定小電力無線或いは920MHz帯を使用した特定小電力無線とする。920MHz帯の無線通信は、5GHz帯や2.4GHz帯より通信到達距離が長く、バランスの良い周波数割当帯域であり、本実施形態で使用する無線LANネットワークの構築に好適といえる。
【0045】
また受信機10、電話回線アダプタ24、無線回線アダプタ26及び携帯電話端末28の制御部には、パケット通信の宛先に設定する所定のネットワークアドレスを予め設定登録している。なお、以下の説明にあっては、パケット信号を単に信号という場合がある。
【0046】
[受信機の感知器試験に対する制御]
図2に示した受信機10の制御部30は、感知器試験を行う場合には、操作部35による感知器試験モードの設定操作を検知したときに、通常監視状態における火災監視モードを解除して感知器試験モードの設定に切替える制御を行う。制御部30による感知器制御モードは、地区音響警報を禁止すると共に、主音響警報を火災信号が受信されている間、出力するモードとする。
【0047】
また、制御部30は、感知器試験モードの設定状態で、火災信号の受信を検知すると、電話回線アダプタ24を接続しているUSBポート42に対し携帯電話端末28を宛先とする試験発報信号を送信する制御を行い、当該試験発報信号を電話回線12bから発信機16の電話ジャック18に接続した無線回線アダプタ26を介して携帯電話端末28に送信させる。この場合、制御部30は火災信号が感知器試験発報によるものか、火災検知に基づく発報によるものかの如何にかかわらず、試験発報信号を送信する制御を行う。
【0048】
また、制御部30は、感知器試験モードの設定状態で、火災信号の受信を検知して試験発報信号を送信した後に、火災信号の受信停止を検知した場合、電話回線アダプタ24を接続しているUSBポート42に対し携帯電話端末28を宛先とする試験発報復旧信号を送信する制御を行い、当該試験発報復旧信号を電話回線12bから発信機16の電話ジャック18に接続した無線回線アダプタ26を介して携帯電話端末28に送信させる。
【0049】
また、制御部30は、感知器試験モードの設定状態で、USBポート42からの受信機10を宛先とする感知器試験モードの解除指示信号の受信を検知した場合、感知器試験モードの設定を解除して火災監視モードの設定に切替える制御を行い、これにより感知器試験モードで設定していた地区音響警報の停止を解除して地区音響警報を出力させ、また、火災信号を受信している間、主音響警報を出力する設定も解除して主音響警報を継続して出力させる火災監視モードの警報制御に移行する。
【0050】
[携帯電話端末]
(携帯電話機の機能構成)
図3は携帯電話端末の機能構成の概略を示した説明図であり、個人用の携帯コンピュータの機能を併せもつ携帯電話端末として知られたスマートフォンを例にとっている。
【0051】
図3において、携帯電話端末28は、制御部46、携帯電話通信部48、無線LAN通信部50、高速移動通信部52、GPS通信部(全地球測位システム通信部)54、カメラ部56、SIMカード58、ディスプレイ60、タッチパネル62、音声入出力部64、USB端子部66、操作部68及びメモリカード70等を備える。
【0052】
制御部46は、プロセッサを構成するCPU、メモリ、各種入出力インタフェースを備えたLSIで実現され、インストールされたプログラムを実行する。
【0053】
携帯電話通信部48は、第3世代移動通信システム(3G)として知られたW-CDMAにより携電話通信を行う。
【0054】
無線LAN通信部50は、イーサネット(登録商標)による無線ネットワークをベースにしたIEEE802.11に準拠した無線通信を行い、
図2の発信機16の電話ジャック18に接続した無線回線アダプタ26との間に無線LAN回線を確立してデータ伝送を行う。このため無線LAN通信部50は、無線LANのアクセスポイントとして機能する無線LAN通信機能、例えばデザリング機能を備えている。
【0055】
無線LAN通信部50は、イーサネット(登録商標)による無線ネットワークをベースにしたIEEE802.11に準拠した無線通信を行い、
図2の発信機16の電話ジャック18に接続した無線回線アダプタ26との間に無線LAN通信回線を確立してパケット伝送を行う。
【0056】
高速移動通信部52は、IEEE802.16eに準拠したモバイルWiMAX(R)によるモバイル高速移動通信を行う。
【0057】
GPS通信部54は、米国が運用する周回衛星を使用した全地球測位システム(Global Positioning System)を利用して、現在位置の経度と緯度を取得するための通信を行う。
【0058】
カメラ部56は、CMOS撮像素子を使用して画像の撮像を行い、静止画及び動画を取得する。
【0059】
SIMカード58は、携帯電話番号を識別するための番号であるIMSI(International Mobile Subscriber Identity)番号を格納したカードであり、SIMカード58の差し替えにより、複数の携帯電話端末で同じ携帯電話番号を利用可能とする。
【0060】
ディスプレイ60は、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示デバイスを使用し、パネル表面にはタッチパネル62を配置している。音声入出力部64は、マイク、スピーカ、及びオーディオコーデック(Audio CODEC)を備えて音声入出力を行う。
【0061】
USB端子部66は、適宜の周辺機器を接続するデジタル・インタフェースのコネクタを接続する。操作部68は、キーパッドや操作釦による利用者の操作を受け付けて制御部46に通知する。メモリカード70は、着脱自在な外部メモリであり、カメラ部56で撮像した画像等の各種データの外部記憶に使用する。
【0062】
制御部46にはプログラムの実行により実現する機能として、通話接続、メール接続、インターネット接続などの通信接続及び関連する各種の制御を行う。
【0063】
また、制御部46は、電話回線アダプタ24及び無線回線アダプタ26を経由して受信機10の制御部30からの試験発報信号を受信した場合に、感知器試験による試験発報を報知する制御を行う。
【0064】
また、制御部46は、電話回線アダプタ24及び無線回線アダプタ26を経由して受信機10の制御部30からの試験発報復旧信号を受信した場合に、感知器試験終了による試験発報復旧を報知する制御を行う。
【0065】
また、制御部46は、電話回線アダプタ24及び無線回線アダプタ26を経由して受信機10の制御部30からの試験発報信号を受信した後に、再度、試験発報信号を受信した場合、火災と判断して火災警報を出力する制御を行う。
【0066】
また、制御部46は、受信機10の制御部30からの試験発報信号の再受信を検知して火災警報を出力した場合、受信機10を宛先とする感知器試験モードの解除指示信号を送信する制御を行い、これにより受信機10の制御部30に感知器試験モードを解除させて火災監視モードに切替え、試験員が受信機10に戻って感知器試験モードの解除操作を必要とすることなく火災警報の出力状態を自動的に作り出すことを可能とする。
【0067】
(無線LAN通信部のアクセスポイント制御機能)
携帯電話端末28に設けた無線LAN通信部50のアクセスポイント制御機能は次のようになる。ここで、携帯電話端末28の無線LAN通信部50は無線LANのアクセスポイントとなり、発信機16の電話ジャック18に接続した無線回線アダプタ26は無線LANのステーションとなる。
【0068】
アクセスポイントとして機能する携帯電話端末28の無線LAN通信部50に通信接続する無線回線アダプタ26には、アクセスポイントの識別子であるESS-ID(Extended Service Set Identifier)を予め設定登録しておく。これにより携帯電話端末28の無線LAN通信部50は設定登録されている識別子ESS-IDの端末としか通信しないようにすることができる。
【0069】
アクセスポイントとなる携帯電話端末28の無線LAN通信部50とそのステーションとなる無線回線アダプタ26との間の通信接続を行うアクセスポイント制御機能は、パッシブスキャン方式とアクティブスキャン方式に大別される。
【0070】
(パッシブスキャン方式)
パッシブスキャン方式は、携帯電話端末28の無線LAN通信部50が定期的にブロードキャストするビーコンフレームを無線回線アダプタ26で受信し、無線回線アダプタ26は予め設定登録している携帯電話端末28の無線LAN通信部50の識別子ESS-IDが、接続しようとしている携帯電話端末28の無線LAN通信部50の識別子ESS-IDと同じかどうかを問い合わせるプローブ要求フレームを送信する。
【0071】
携帯電話端末28の無線LAN通信部50はプローブ要求フレームにより受信した識別子ESS-IDが自己の識別子ESS-IDと同じであればプローブ応答フレームを返送し、無線回線アダプタ26はこれを受信して、携帯電話端末28の無線LAN通信部50の識別子ESS-IDが設定登録しているものと同じ識別子であることを確認する。
【0072】
続いて無線回線アダプタ26と携帯電話端末28の無線LAN通信部50の間で、予め設定した認証方式を使って認証を行い、認証に成功すると、無線回線アダプタ26から携帯電話端末28の無線LAN通信部50へ接続要求としてアソシエーション要求フレームを送信し、携帯電話端末28の無線LAN通信部50が許可応答としてアソシエーション応答フレームを返送すると接続が完了し、パケット信号の通信を行う。
【0073】
(アクティブスキャン方式)
アクティブスキャン方式は、無線回線アダプタ26で携帯電話端末28の無線LAN通信部50からのビーコンフレームを一定時間にわたり受信できなかった場合に、無線回線アダプタ26が接続を行いたい識別子ESS-IDの情報をプローブ要求フレームにより送信し、携帯電話端末28の無線LAN通信部50からプローブ応答フレームが得られれば、パッシブスキャン方式と同様に、認証、アソシエーション要求と応答に移行し、接続を完了し、パケット信号の通信を行う。
【0074】
(感知器試験に伴う携帯電話端末の画面)
図4乃至
図7は、感知器試験に伴う試験員が保有している携帯電話端末の初期画面、試験発報画面、試験発報復旧画面及び火災警報画面を示した説明図であり、感知器試験に伴う受信機側の状態をモニタ可能とする。
【0075】
図4(A)は感知器発報試験の初期画面であり、通信テスト釦74を設けている。感知器試験に際し試験員は、
図2に示す受信機10の操作部35の操作で感知器試験モードを設定し、これによる地区音響警報の停止と主音響警報の火災信号連動を設定し、また感知器試験を行う警戒区域に設置している発信機16の電話ジャック18に無線回線アダプタ26のプラグ26aを差し込んでおり、この状態で初期画面72の通信テスト釦74を操作すると、携帯電話端末28から所定の通信テスト信号が送信される。
【0076】
携帯電話端末28から送信した受信機10を宛先とする通信テスト信号は無線回線アダプタ26、電話回線12b、電話回線アダプタ24を経由して受信機10の制御部30に送られ、通信テスト信号を正常受信した制御部30はUSBポート42に携帯電話端末28を宛先とする通信テスト確認信号を送信し、これは電話回線アダプタ24、電話回線12b及び無線回線アダプタ26を経由して携帯電話端末28に送られる。携帯電話端末28は受信機10からの通信テスト確認信号を受信すると
図4(B)の初期画面72に示すように、「通信接続正常」と「感知器試験を開始してください」のメッセージ76を表示し、試験員に感知器試験の開始をガイダンスする。
【0077】
なお、通信テストに失敗した場合はエラーメッセージが初期画面72に表示され、試験員は発信機16の電話ジャック18に対する無線回線アダプタ26のプラグ26aの差し込み等を確認して再度通信テストを行う。
【0078】
図1に示したように、試験員22が試験治具20を使用して火災感知器14の試験を行うと、火災感知器14が発報動作して火報回線12aに発報電流を流し、これにより
図2に示した受信機10の制御部30は発報電流を検出した回線受信部32からの火災信号を検知し、警報部36のスピーカから主音響警報を出力させると共に、USBポート42に携帯電話端末28を宛先とする試験発報信号を出力する。
【0079】
この試験発報信号は電話回線アダプタ24、電話回線12b,無線回線アダプタ26を経由して試験員22が保有している携帯電話端末28に送られ、携帯電話端末28は
図5(A)に示す試験発報画面78により「試験発報確認」のメッセージを表示すると共に試験発報を示す所定の報知音を出力し、これにより試験員22は火災感知器14の試験発報に対し受信機10で正常に受信動作が行われたことを確認できる。
【0080】
この確認を受けて試験員22が試験治具20を火災感知器14から外して発報試験を終了すると、火災感知器14の火災検知状態が解消して発報動作を停止して復旧する。このため受信機10の制御部30は、回線受信部32からの火災信号が停止したことを検知し、USBポート42に携帯電話端末28を宛先とする試験発報復旧信号を出力する。
【0081】
この試験発報復旧信号は電話回線アダプタ24、電話回線12b,無線回線アダプタ26を経由して試験員22が保有している携帯電話端末28に送られ、携帯電話端末28は
図5(B)に示す試験発報復旧画面80により「試験発報復旧確認」のメッセージを表示すると共に、試験発報復旧を示す所定の報知音を出力し、これにより試験員22は火災感知器14の試験終了に対し受信機10で正常に受信復旧動作が行われたことを確認でき、次の火災感知器の試験に移ることになる。
【0082】
図6は感知器発報試験中に火災を検知した場合に携帯電話端末で表示する火災警報画面を示した説明図である。
図2に示した受信機10の回線受信部32は、火災感知器14の試験発報による火災信号の受信中に、他の火報回線に接続している火災感知器が火災を検知して発報した場合の火災信号の受信を検知したときにも、携帯電話端末28を宛先とする試験発報信号を送信する。
【0083】
このため
図3に示した携帯電話端末28の制御部46は、試験発報信号を受信して試験発報画面を表示している状態で、再び試験発報信号を受信した場合には、これは実際に発生している火災による試験発報信号と判断し、
図6に示す火災警報画面82に切替えて火災警報表示を行うと共に、所定の火災警報音を出力して試験員に火災警報を報知する。
【0084】
また、携帯電話端末28の制御部46は、火災の判断に基づき、受信機10を宛先とする感知器試験モードの解除指示信号を送信する。この感知器試験モードの解除指示信号を受信した受信機10の制御部30は、そのとき設定している感知器試験モードを解除して通常の火災監視モードの設定に切替える。
【0085】
受信機10は感知器試験モードの解除により、地区音響警報の禁止を解除し、火災を検知した回線系統に設けている地区音響装置を制御して地区音響警報を出力させる。また受信機10は感知器試験モードの解除により主音響警報の火災信号連動を解除し、火災信号の受信が断たれても主音響警報の出力を継続する。
【0086】
このため携帯電話端末28の火災警報出力により火災発生を知った試験員が受信機10に戻って感知器試験モードの解除操作をすることなく、受信機10を自動的に通常の火災監視モードに戻して火災警報制御を行うことが可能となる。
【0087】
[受信機制御]
図7は受信機制御を示したフローチャートであり、
図2の受信機10に設けた制御部30による制御となる。
【0088】
図7に示すように、ステップS1(以下「ステップ」は省略)で電源投入に伴う所定の初期化処理を行った後、S2に進んで火災監視モードを設定して火災監視制御を行う。火災監視制御では火災感知器の発報による火災信号を受信して火災警報を出力する。
【0089】
監視モードによる火災監視制御中にS3で試験員の操作による感知器試験モードの設定操作の検知を判別するとS4に進んで感知器試験モードを設定し、地区音響警報の禁止と主音響警報の火災信号連動を設定する。
【0090】
続いて火災感知器の試験発報による火災信号の受信をS5で判別するとS6に進み、試験発報信号をUSBポート42に出力し、携帯電話端末28へ送信させる。なお、S5で実際の火災による火災感知器からの火災信号の受信を判別した場合にも、S6で試験発報信号を携帯電話端末28へ送信させる。
【0091】
続いて、火災感知器の試験終了に伴う火災信号の受信停止をS7で判別すると、S8に進んで試験発報復旧信号をUSBポート42に出力して携帯電話端末28へ送信させる。
【0092】
続いてS9で携帯電話端末28が火災を判断して送信した感知器試験モードの解除指示信号の受信による解除指示または感知器試験を終了した場合の試験員の終了操作による感知器試験モードの解除指示を判別するとS10に進み、感知器試験モードを解除してS2に戻り、火災監視モードによる火災監視制御を行う。
【0093】
[携帯電話端末の感知器試験モニタ制御]
図8は携帯電話端末による感知器試験モニタ制御を示したフローチャートであり、
図3の携帯電話端末28に設けた制御部46による制御となる。
【0094】
携帯電話端末28のメニュー画面に表示している感知器試験のアイコンを操作すると
図8に示す感知器試験モニタ制御が実行される。感知器試験モニタ制御は、S11で
図4に示した初期画面72を表示し、通信テスト釦74の操作に基づき受信機10との間の通信接続を確認する通信テストを行い、通信接続を確認するとS12に進む。
【0095】
S12で試験員の感知器試験に伴い受信機10が送信した試験発報信号の受信を判別するとS13に進み、
図5(A)に示した試験発報画面78による表示と所定の報知音の出力により試験発報を報知する。
【0096】
続いてS14で試験員の感知器試験終了に伴い受信機10が送信した試験発報復旧信号の受信を判別するとS15に進み、
図5(B)に示した試験発報復旧画面80による表示と所定の報知音の出力により試験発報復旧を報知し、S12からの処理をS16で試験員による試験終了操作を判別するまで繰り返す。
【0097】
一方、S14で試験発報復旧信号の受信を判別しない場合はS17に進み、試験発報信号の再受信の有無を判別しており、もし試験発報信号の再受信を判別した場合は、これは火災を検知して動作した別の火報回線による火災信号の受信であることからS19に進み、火災と判断して
図6に示した火災警報画面82による火災警報表示と所定の火災警報音の出力により火災警報を報知し、更にS19に進んで感知器試験モードの解除指示信号を受信機10に送信し、受信機10の感知器試験モードを解除して火災監視モードの設定に切替え、現在受信している火災信号に基づく火災警報動作を受信機10に行わせる。
【0098】
[複数の警戒区域の感知器試験]
図2の受信機10に設けた制御部30は、複数の監視区域の感知器試験を、複数の試験員が同時に並行して行うために、複数の警戒区域に設置している複数の発信機16の電話ジャック18に複数の無線回線アダプタ26を接続している場合、操作部35による感知器マルチ試験モードの設定操作を検知したときに、通常監視状態における火災監視モードを解除して感知器マルチ試験モードの設定に切替える制御を行う。制御部30による感知器マルチ制御モードは、地区音響警報を禁止すると共に、主音響警報を火災信号が受信されている間、出力するモードとする。
【0099】
受信機10の制御部30は、感知器マルチ試験モードの設定状態で火災感知器14の試験による火災信号の受信を検知した場合、火災信号を受信した火報回線を示す回線番号を含む試験発報信号を全ての携帯電話端末を宛先とするブロードキャストで送信し、複数の携帯電話端末28は、
図5(A)に示した試験発報画面78に発報した回線番号を表示させる。
【0100】
ここで、受信機10からの電話回線12bは監視区域の異なる複数の発信機16に設けた電話ジャック18を全て共通に接続していることから、電話ジャック18の各々に接続している複数の無線回線アダプタ26からは同じ回線番号を含むブロードキャストの試験発報信号が送信され、全ての試験員が保有している携帯電話端末12には同じ回線番号を含む試験発報の表示が一斉に行われる。このため各試験員は現在自分が試験している監視区域の回線番号を試験に先立ち確認しておくことで、自分が行っている感知器試験による試験発報を回線番号の表示から確認することができる。
【0101】
また、受信機10に設けた制御部30は、感知器マルチ試験モードの設定状態で火災感知器14の試験終了による火災信号の受信停止を検知した場合、火災信号の受信停止を検知した火報回線を示す回線番号を含むブロードキャストの試験発報復旧信号を送信し、複数の携帯電話端末28は、
図5(B)に示した試験発報画面80に試験復旧した回線番号を表示し、試験員は自分が行って感知器試験による試験発報復旧の表示を回線番号から確認することを可能とする。
【0102】
なお、複数の試験員が同時に並行して感知器試験の作業を進める場合には、携帯電話端末28で試験発報信号の再受信を検知して火災警報を出力する制御機能は禁止状態に設定し、誤って火災警報を出力しなうようにして作業を行う。
【0103】
このように受信機10からのブロードキャストの試験発報信号及び試験発報復旧信号に回線番号を含めて複数の携帯電話端末28に送信して表示させることで、複数の警戒区域に設けた回線単位に複数の試験員の並行作業による感知器試験が可能となり、規模の大きな施設に設置した火災報知設備の感知器試験作業を短時間で行うことができ、感知器試験の作業効率を大幅に向上可能とする。
【0104】
[R型受信機を用いた火災報知設備]
図1~
図8に示した感知器試験システムは、R型として知られた受信機から引き出された伝送回線にアドレスを設定したアナログ火災感知器を接続して感知器単位に火災を監視して警報する防災監視設備についても同様に適用することができる。
【0105】
R型受信機の伝送回線に接続したアナログ火災感知器を試験した場合には、R型受信機で火災信号の受信を検知したときに、試験発報したアナログ火災感知器のアドレスが分かることから、試験発報した感知器アドレスを含む携帯電話端末28を宛先とする試験発報信号を、
図2の場合と同様に、USBポート42、電話回線アダプタ24、電話回線12b、発信機16の無線回線アダプタ26を経由して携帯電話端末28に送信し、携帯電話端末28では試験発報の画面表示に感知器アドレスを表示して試験発報の確認を確実なものとする。この点は試験発報復旧信号についても同様である。
【0106】
また、携帯電話端末28は、感知器試験中に感知器発報信号を再度受信した場合の火災の判断は、1回目の発報感知器のアドレスと2回目の発報感知器のアドレスが不一致の場合に火災と判断して火災警報を出力すると共に、R型受信機を宛先とする感知器試験モードの解除指示信号を送信すれば良い。
【0107】
また、複数の試験員が同時に並行して感知器試験の作業を進める場合には、携帯電話端末28の火災判断機能は解除し、ブロードキャストの試験発報信号又は試験発報復旧信号に感知器アドレスを含めて送信し、これを複数の携帯電話端末28でを受信して試験発報又は試験発報復旧の報知と共に感知器アドレスを表示し、感知試験を行う感知器アドレスを予め確認しておくことで、自分が行って感知器試験による試験発報の表示を感知器アドレスから確認することができる。
【0108】
また、感知器アドレスでは区別が難しい場合には、R型受信機の制御部で感知器アドレスを地区番号や地区名等に変換して送って携帯電話端末28で表示すれば良い。
【0109】
[本発明の変形例]
(携帯電話端末)
上記の実施形態は、受信機からの試験発報信号をスマートフォン等の携帯電話端末で受信する場合を例にとっているが、携帯電話端末に代え、無線LAN通信機能を備えたタブレット等の電話機能を持たない携帯端末機器としても良い。
【0110】
(入出力ポート)
上記の実施形態は、受信機の制御部に設ける入出力ポートとしてUSBポートを例にとっているが、これ以外に例えばRS232シリアルポートなど適宜の入出力ポートを含む。
【0111】
(受信機と携帯電話端末の通信)
上記の実施形態は、受信機と携帯電話端末との間の双方向通信を例にとっているが、少なくとも受信機から携帯電話端末に信号を送ることのできる片方向通信であっても良い。この片方向通信の場合には、携帯電話端末で火災警報を出力した場合、試験員は受信機に戻って感知器試験モードを解除して火災監視モードに切り替える操作を必要とする。
【0112】
(電話回線)
上記の実施形態は、受信機から引き出した電話回線に全ての発信機に設けた電話ジャックを共通接続した場合を例にとっているが、電話回線を複数系統設けている場合には、電話回線毎に電話回線アダプタを設けて受信機制御部のUSBポートと接続することになる。
【0113】
(電話ジャック)
上記の実施形態は発信機の電話ジャックに感知器試験の際に無線回線アダプタを着脱自在に接続する場合を例にとっているが、発信機以外の機器に設けた電話ジャックに無線回線アダプタを接続して感知器試験を行うことを妨げるものではない。
【0114】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0115】
10:受信機
12:信号回線
12a:火報回線
12b:電話回線
14:火災感知器
16:発信機
18:電話ジャック
20:試験治具
22:試験員
24:電話回線アダプタ
26:無線回線アダプタ
28:携帯電話端末
30,46:制御部
32:回線受信部
34:表示部
35:操作部
36:警報部
38:移報部
40:通話回路部
42:USBポート
50:無線LAN通信部