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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】スマートネブライザ
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/02 20060101AFI20220622BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A61M11/02 K
A61M15/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019530773
(86)(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 IB2017055603
(87)【国際公開番号】W WO2018104805
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】62/432,304
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504054413
【氏名又は名称】トゥルーデル メディカル インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】コステラ スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ディトマー アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】キルロイ ルーク
(72)【発明者】
【氏名】キルヒナー アラナ
(72)【発明者】
【氏名】モートン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ジェイムズ
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-087968(JP,A)
【文献】特開2008-036406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0066968(US,A1)
【文献】特開2011-092418(JP,A)
【文献】特表2016-533245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0296772(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0327323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸作動式ネブライザシステムであって、
周囲空気入口(24)、エーロゾルを保持するチャンバ(26)、加圧ガス入口、液体薬物リザーバ(46)、ダイヤフラム(20)に結合され前記ダイヤフラム(20)により付勢されるアクチュエータ(22)および、前記チャンバと連通していて前記エーロゾルを前記チャンバから引き出すことができる空気出口(84)を備えたハウジング(14)を有するネブライザ(10)と、
前記アクチュエータ(22)に結合されていて前記アクチュエータの運動を検出し、それにより、エーロゾルが発生しているときの前記ネブライザの作動を検出する作動検出器(320)と、
前記ネブライザに結合されていて前記チャンバを通る吸息流量を検出するよう動作できる流量検出器(310)と、
前記吸息流量に関するフィードバックをユーザに提供して前記ユーザが前記吸息流量をリアルタイムで調整することができるようにするよう動作できるフィードバック装置(350)とを含み、
前記ハウジング(14)は円筒形本体を有し、前記アクチュエータ(22)と前記ダイヤフラム(20)の組立体は、前記ネブライザ(10)内で前記ハウジング(14)の円筒形本体に対して同軸に位置決めされ、
前記アクチュエータ(22)は、UP/OFF非噴霧化位置およびDOWN/ON噴霧化位置の間で動くよう構成され、
前記ダイヤフラム(20)は、吸入が行われていないときのUP/OFF非噴霧化位置と吸入が行われているときのDOWN/ON噴霧化位置の間の前記アクチュエータ(22)の運動を助ける、ネブライザシステム。
【請求項2】
前記ネブライザに結合されていて前記薬物リザーバ中に導入された薬物の種類を識別するよう動作できる薬物識別装置をさらに含む、請求項1記載のネブライザシステム。
【請求項3】
前記ネブライザに結合されていて前記薬物リザーバ内に納められた薬物の濃度を識別するよう動作できる濃度検出器を含む、請求項1記載のネブライザシステム。
【請求項4】
前記ネブライザに結合されていて前記チャンバ内のエーロゾル化薬物の粒径分布を測定するよう動作できる粒径検出器(270)をさらに含む、請求項1記載のネブライザシステム。
【請求項5】
前記ネブライザに結合されていて治療の終了に達したときに前記ユーザに前記フィードバック装置を介して知らせるよう動作できる治療終了検出器をさらに含む、請求項1記載のネブライザシステム。
【請求項6】
前記ネブライザに結合されていて治療の終了に達したときに前記ユーザに薬物の残留体積を知らせるよう動作できる残留体積検出器(280、288、298)をさらに含む、請求項5記載のネブライザシステム。
【請求項7】
前記ネブライザに結合されていて前記ネブライザに結合された空気供給源の圧力および/または流量を識別するよう動作できる空気供給源検出器をさらに含む、請求項1記載のネブライザシステム。
【請求項8】
前記フィードバック装置は、前記ユーザに投与される呼吸可能な用量を伝えるよう動作できる、請求項7記載のネブライザシステム。
【請求項9】
治療発生回数をログ記録するよう動作できる記憶装置をさらに含む、請求項1記載のネブライザシステム。
【請求項10】
前記作動検出器(320)は、前記アクチュエータ(22)が動かされると動いて作動を示す磁気コンポーネント(144)を有するリードスイッチを含む、請求項1記載のネブライザシステム。
【請求項11】
前記作動検出器(320)は、誘導性素子およびコイル素子を有する誘導性近接センサまたはスイッチを含み、前記アクチュエータの運動が前記誘導性素子を前記コイル素子に近づけるかまたは前記コイル素子から遠ざけ、それにより、コイルインピーダンスに測定可能な変化を引き起こし、導電性素子がネブライザ(10)の可動コンポーネントに組み込まれている、請求項1記載のネブライザシステム。
【請求項12】
前記作動検出器(320)は、キャパシタ素子が前記アクチュエータ(22)に配置された容量型スイッチセンサを含み、2枚の平行なプレート(156、158)が、一方のプレートが前記ネブライザ(10)の静止コンポーネント上に配置され、もう一方のプレートが前記アクチュエータ(22)上に配置されるように位置決めされ、前記2枚の平行なプレート(156、158)相互間のキャパシタンスは、自由空間の誘電率(d)、隙間内の材料の誘電定数、プレートのオーバーラップ面積およびプレート相互間の距離で決まる、請求項1記載のネブライザシステム。
【請求項13】
前記作動検出器(320)は、ホールセンサおよび前記アクチュエータ(22)に取り付けられた磁気コンポーネントを含む、請求項1記載のネブライザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する実施形態は、一般に、スマートネブライザおよびスマートネブライザの使用および組立方法に関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2016年12月9日に出願された米国特許仮出願第62/432,304号の権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
現行のネブライザの提供するフィードバックは、種々の薬物コンプライアンス観点に関してほとんどなくまたは全くなく、かかる薬物コンプライアンス観点としては、治療順守度、薬剤送り出し、用量確実性および適正な呼吸技術が挙げられるが、これらには限定されない。薬物コンプライアンスは、モニタすることが困難な場合が多いが、重要な情報をユーザ、介護提供者および保険業者に提供することができる。
【発明の概要】
【0004】
呼吸作動モードであるにせよ連続モードであるにせよいずれにせよ、スマートネブライザシステムは、作動が起こってエーロゾルが作られている時点を突き止める。スマートネブライザシステムは、患者の治療進行状況、送り出された薬剤がどのようなものであるか(正体)およびその量、および治療の完了時点の指標に関するリアルタイムフィードバックを提供することができる。患者が治療を受けているとき、スマートネブライザシステムは、患者が生じさせた吸息および呼息流量をモニタし、そして最適薬剤送り出しを可能にするために適正な呼吸技術を伝える。スマートネブライザシステムは、ネブライザへの空気供給量をモニタして空気供給量が使用範囲内にありかつ許容可能な粒径および薬剤出力レートを生じさせておりまたは生じさせることが可能であるようにすることができる。
【0005】
患者、介護者または他のユーザが薬物をネブライザ中に収納しまたは挿入すると、スマートネブライザシステムは、薬物を識別して薬物を適正に投与するのに必要な適切な送り出し方法を決定することができるとともにこの情報を治療ログ中に出力して患者が適正な薬物を摂するようにすることができる。このシステムは、薬物の濃度および薬物入れ物、例えばボウル内に納められた薬物の体積を測定することができる。
【0006】
装置が作動して流れが患者によって作られた時点の分析に加えて、このシステムはまた、エーロゾルの粒径を分析するとともに呼吸可能フラクションを求めることができる。この装置は、治療の終了に達した時点を求め、しかる後この情報を患者、または他のユーザ、例えば介護者に伝えることができる。治療の完了時、ネブライザシステムは、残留体積を認識するとともにこの情報を治療ログ内に出力し/記憶させる。
【0007】
これらの方法またはこれら方法の任意のサブセットを用いると、ネブライザシステムは、患者に送り出される薬物の正体および量を求めることができ、しかも用量確実性を患者、保健医療提供者および保険業者に提供することができる。次にこの情報をネブライザシステム中に記憶させて適当な関係者によって視認することができるようにする。
【0008】
ネブライザシステムはまた、適正な呼吸技術および下気道への薬剤送り出しを最適化するための姿勢に関するコーチングを提供することができる。保健医療提供者に関し、ネブライザシステムは、治療履歴記録を提供して患者が適正な治療方式を順守しているようにするとともにかかる治療方式の開発の続行を助けることができる。この治療ログを自動化することができ、それにより患者の入力が回避されるとともに同様なログ記録方法、例えば日誌と比較して、治療負担が軽減される。治療履歴記録は、定期的なチェックアップと結び合わされると、保健医療提供者が適正な治療方式を開発するのを助け、と言うのは、これにより疾患の進展が不適切な薬物または患者による最適以下の順守度に起因しているかどうかに関する不確実性が除かれるからである。かかる情報を提供するため、ネブライザシステムは、作動および作動解除を検出し、患者の呼吸パターンをモニタし、ネブライザへの空気供給源の性能を測定し、薬物の種類および濃度ならびにネブライザが生じさせている粒径を識別することができる。ネブライザシステムはまた、治療の終了およびネブライザ内に残された薬物の残留体積を突き止めることができる。
【0009】
一実施形態では、スマートネブライザシステムの電子部分は、かかるネブライザがこれらの有効寿命を超えるとともに/あるいはもはや最適に動作していない場合、機械的部分から取り外し可能であり、それにより、比較的高価でインテリジェントな部品を多数のネブライザに使用することができる。スマートネブライザシステムはまた、患者が治療を追尾し、さらに順守を促すようにするための治療リマインダとして作用することができる。携帯可能である取り外し可能部分は、例えばクリップ、テザー/ランヤード、キャリングケース、リストバンドなどにより患者/ユーザによって持ち運び可能である。携帯可能部分はさらに、視覚的、聴覚的、触知的(例えば、振動)および/または触覚フィードバックにより次回の治療要件に関するリマインダを提供することができる。
【0010】
スマートネブライザシステムは、情報を患者/ユーザに好ましくは待ち時間を少なくした状態で伝えることができるユーザインターフェースを含むのが良く、かかる情報としては、治療進捗状況、吸息流量および呼吸量が挙げられるが、これらには限定されない。インターフェースがネブライザ、例えばハウジング中に組み込まれるのが良く、あるいは、ネブライザからの情報が視認するためのスタンドアロン型装置、例えば周辺機器に伝送されるのが良く、かかる周辺機器としては、スマートフォンまたはタブレットが挙げられる。情報の伝送は、視覚的情報、例えば図形またはテキストには限定されず、可聴および触覚情報、通信方法およびコンポーネントをさらに含むことができる。
【0011】
理解されるべきこととして、本明細書において説明する種々の実施形態、種々の特徴および種々のプロセスは、呼吸作動式ネブライザと連続式ネブライザの両方に利用できる。
【0012】
上記段落は、一般的な導入部として提供されており、以下の特許請求に記載された本発明を限定するものではない。本発明の実施形態は、別の目的および別の利点と一緒になって、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を読むと最も良く理解されよう。
【0013】
図は、薬物送り出しまたはネブライザシステムの種々の実施形態、ブロック/流れ図ならびに使用方法組立方法を示している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ダイヤフラムを有するネブライザの一実施形態の斜視図である。
図2図1に示されたネブライザの分解組立図である。
図3A】吸息中におけるネブライザの断面側面図である。
図3B】呼息中におけるネブライザの断面側面図である。
図4】スマートネブライザ装置のための使用およびフィードバックループを示す流れ図である。
図5】コンピュータの構造を示す略図である。
図6】通信システムの略図である。
図7】ダイヤフラムの平面図または底面図である。
図8】アクチュエータ、ダイヤフラムおよびノズルカバーの一実施形態の側面図である。
図9】アクチュエータおよびダイヤフラムの別の実施形態の側面図である。
図10】ネブライザの一実施形態の一圧力および流量プロフィールを示す図である。
図11】ネブライザの別の実施形態の側面図である。
図12】ネブライザ用のマウスピースの斜視図である。
図13A】呼吸サイクルの種々の団塊におけるネブライザを通る流路を示す図である。
図13B】呼吸サイクルの種々の団塊におけるネブライザを通る流路を示す図である。
図13C】呼吸サイクルの種々の団塊におけるネブライザを通る流路を示す図である。
図13D】呼吸サイクルの種々の団塊におけるネブライザを通る流路を示す図である。
図13E】呼吸サイクルの種々の団塊におけるネブライザを通る流路を示す図である。
図14】ネブライザの一実施形態の断面図である。
図15】ノズルおよびカバーの断面図である。
図16】呼吸サイクル中におけるサウンドレベルと時間との関係を示すグラフ図である。
図17】ネブライザの一実施形態の断面図である。
図18】アクチュエータの略図である。
図19】マウスピースの一実施形態の略図である。
図20】呼吸サイクル中における相対湿度と時間の関係を表わすグラフ図である。
図21】マウスピースの一実施形態の断面図である。
図22】アクチュエータおよびダイヤフラムの側面図である。
図23A】互いに異なる位置におけるドームを示すネブライザの頂部の斜視図である。
図23B】互いに異なる位置におけるドームを示すネブライザの頂部の斜視図である。
図24】アクチュエータ、リテーナおよびダイヤフラムの一実施形態の断面図である。
図25】アクチュエータおよびダイヤフラムの変形実施形態の断面図である。
図26】アクチュエータの変形実施形態の断面図である。
図27A】流路の変形実施形態の断面図である。
図27B】流路の変形実施形態の断面図である。
図28A】流路の一実施形態の断面図である。
図28B】流路の一実施形態の断面図である。
図29】ネブライザの一実施形態の断面図である。
図30】マイクロフォンを用いた流量の計算方法を示す流れ図である。
図31】吸息窓の部分断面図である。
図32】流路の一実施形態の断面図である。
図33】マウスピースの一実施形態の断面図である。
図34】ネブライザの一実施形態の断面図である。
図35】流路の一実施形態の断面図である。
図36】流路の一実施形態の断面図である。
図37】ネブライザの一実施形態の拡大断面図付きの断面図である。
図38】流路の一実施形態の断面図である。
図39】流路の一実施形態の断面図である。
図40】患者をネブライザの一実施形態とともに示す側面図である。
図41】流路の一実施形態の断面図である。
図42】流路の一実施形態の断面図である。
図43】弁の一実施形態を通る流路を示す図である。
図44】弁の一実施形態を通る流路を示す図である。
図45A】弁が閉じ位置にある状態の流路の図である。
図45B】弁が開き位置にある状態の流路の図である。
図46】ネブライザの一実施形態の断面図である。
図47A】種々の流路の略図である。
図47B】種々の流路の略図である。
図47C】種々の流路の略図である。
図48】流路の一実施形態の断面図である。
図49A】ネブライザの一実施形態の断面図である。
図49B】ネブライザの一実施形態の斜視図である。
図50】流路の一実施形態の断面図である。
図51A】非吸息中におけるダイヤフラムを示す斜視図である。
図51B】吸息中におけるダイヤフラムを示す斜視図である。
図52】振動検知素子の側面図である。
図53】検知回路の図である。
図54】流路の一実施形態の断面図である。
図55】流路の一実施形態の断面図である。
図56】流路の一実施形態の断面図である。
図57】流路の一実施形態の断面図である。
図58】流路の一実施形態の断面図である。
図59】流路の一実施形態の断面図である。
図60】流路の一実施形態の断面図である。
図61】ネブライザ内の種々の流路の例示の図である。
図62】ネブライザの一実施形態の断面図である。
図63図62に示されたネブライザの斜視図である。
図64】ノズルおよびバッフルの部分断面図である。
図65】ノズルおよびバッフルの部分断面図である。
図66】ネブライザに結合された圧縮機の斜視図である。
図67】流路の一実施形態の断面図である。
図68】供給管の一部分の図である。
図69】流路の一実施形態の断面図である。
図70】流路の一実施形態の断面図である。
図71A】付帯状況としての粒子分離状態が示されたネブライザの一実施形態およびその拡大部分の断面図である。
図71B】付帯状況としての粒子分離状態が示されたネブライザの一実施形態およびその拡大部分の断面図である。
図71C】付帯状況としての粒子分離状態が示されたネブライザの一実施形態およびその拡大部分の断面図である。
図72】粒径の光を利用した分析方式を示す略図である。
図73】治療の終わりの通知が行われる使用サイクルを示す流れ図である。
図74】ノズルおよびバッフルの部分断面図である。
図75A】「スパッタ」に関するスイッチシグナチャを示す図である。
図75B】「スパッタ」に関するスイッチシグナチャを示す図である。
図76】バーコード付きの包装材またはネブライザの一実施形態を示す図である。
図77】RFIDタグおよび読み取り装置付きのネブライザの一実施形態を示す図である。
図78】通信プロトコルの略図である。
図79】分光学的薬剤識別のためのグラフ図である。
図80A】互いに異なる流路の互いに異なる実施形態を示す図である。
図80B】互いに異なる流路の互いに異なる実施形態を示す図である。
図81】リザーバの一実施形態の断面図である。
図82】リザーバの一実施形態の断面図である。
図83】ノズルおよびバッフルの一実施形態の断面図である。
図84】呼吸サイクル中における力/圧力グラフ図である。
図85】リザーバの一実施形態の断面図である。
図86】リザーバの一実施形態の断面図である。
図87A】種々のリザーバ実施形態の断面図である。
図87B】種々のリザーバ実施形態の断面図である。
図87C】種々のリザーバ実施形態の断面図である。
図88】リザーバの一実施形態の断面図である。
図89】リザーバの一実施形態の断面図である。
図90】導電性ストリップ付きのリザーバの一実施形態の断面図である。
図91】ネブライザの一実施形態の断面図である。
図92】ネブライザの一実施形態の断面図である。
図93】リザーバ内における流体高さ位置の一実施形態の略図である。
図94】リザーバの一実施形態の断面図である。
図95】ネブライザおよび秤の図である。
図96】ネブライザの一実施形態の側面図および底面図である。
図97】リザーバおよびノズルの一実施形態の断面図である。
図98】リザーバの一実施形態の断面図である。
図99】リザーバの一実施形態および吸収波長の断面図である。
図100】濃度決定のための導電性装置の図である。
図101A】オン形態にあるアクチュエータおよびダイヤフラムの断面図である。
図101B】オフ形態にあるアクチュエータおよびダイヤフラムの断面図である。
図102A】アクチュエータおよびダイヤフラムの断面図である。
図102B】電圧グラフ図である。
図103A】接触スイッチ付きのアクチュエータの断面図である。
図103B】接触スイッチ付きのアクチュエータの断面図である。
図104A】接触スイッチ付きのアクチュエータおよびダイヤフラムの断面図である。
図104B】接触スイッチ付きのアクチュエータおよびダイヤフラムの断面図である。
図105】スマートネブライザシステムを示す略図である。
図106】スマートネブライザ治療サイクルを示す流れ図である。
図107】出力ゲームの一実施形態とのユーザインターフェースの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で用いられる「複数」という用語は、2つまたは3つ以上を意味していることは理解されるべきである。「結合され」という用語は、直接的であるにせよ間接的であるにせよいずれにせよ、例えば介在する部材によって連結されまたは係合することを意味し、この用語は、係合が固定されまたは永続的であることを必要とせず、ただし、この用語は、固定されまたは永続的であっても良く、さらに、この用語は、機械的または例えばワイヤレス通信を含む電気的であっても良い。「流体連通」という語句およびその変型語は、直接的であるにせよ間接的であるにせよいずれにせよ、例えば1つまたは2つ以上の導管またはコンポーネントにより流体がコンポーネント相互間を通ることができることを意味している。本明細書で用いられる「第1」、「第2」、「第3」などという数を表わす用語の使用は、コンポーネントの任意特定のシーケンスまたは順序を示していないことは理解されるべきである。本明細書で用いられる「ユーザ」および「患者」という用語は、小児、青年または大人の人および/または動物を含む任意のユーザを示していることは理解されるべきである。
【0016】
「スマート」という用語は、情報がシステム中にエンターされる場合の入力、システムが情報に基づいて作用しまたは変更する場合の分析、および新たな情報がシステムから出る出力を有する一般的なフォーマットに従う特徴を意味している。「性能特定」という語句は、装置がどのように良好に機能しているかを定量化する測定値、例えば周波数または振幅を意味している。
【0017】
次に図1および図2を参照すると、ネブライザ10の一具体化例が示されている。ネブライザは、6つの別々のコンポーネント(図2)を有するのが良く、これらのうちの5つは、トップダウン方法において組み立て可能であり、各コンポーネント(マウスピース12以外のコンポーネント)は、共通の中心軸線を共有している。この構造は、自動組み立てを行う際に複雑さを減少させるのを助けることができる。理解できるように、コンポーネントはまた、手作業で組み立て可能であり、しかも組み立てプロセスにおけるヒューマンエラーの確率を減少させるための特徴を組み込むことができる。
【0018】
ネブライザ10のコンポーネントは、円筒形本体を備えた底部ハウジング14を含む。ネブライザ10は、リテーナ16と呼ばれる頂部分、および内側ハウジング18と呼ばれる内部組立体をさらに有する。柔軟性コンポーネントもまたネブライザ10内に含まれ、この柔軟性コンポーネントは、ダイヤフラム20と呼ばれる。アクチュエータ22と呼ばれる長いシャフト状のコンポーネントもまた収納されている。最後のコンポーネントは管状マウスピース12である。ダイヤフラム20以外のネブライザ10のコンポーネントは、射出成形プロセスによって単一の材料片で形成でき、そして溶接または接着剤の使用なしで組み立てられて締まり嵌めを用いて互いに接合されるのが良い。
【0019】
リテーナ16、アクチュエータ22、内側ハウジング18、底部ハウジング14およびマウスピース12は全て、プラスチック材料、例えばポリプロピレン(これには限定されない)で作られるのが良い。多くの種類のプラスチックのうちの任意のものを用いてネブライザ10のこれらの部品を構成することができる。ダイヤフラム20は、柔軟性材料、例えばシリコーンで構成されても良いが、これには限定されない。
【0020】
図3Aを参照すると、底部ハウジング14の加圧ガス入口24が底部ハウジング14のチャンバ26中に延びている。加圧ガス入口24の外部開口部28は、圧力ガスホース取り付け具(図示せず)と圧力嵌めするよう設計されている。底部ハウジング14内において、加圧ガス入口24は、所定の直径を有する加圧ガスオリフィス30を備えたノズル中に先細り状態で延びている。好ましくは、ガス入口24は、底部ハウジング14の円筒形本体と同軸でありかつチャンバ26の底壁32を貫通している。内側ハウジング18は、底部ハウジング組立体14に設けられた加圧ガス入口24上を摺動するノズルカバー34を備えている。
【0021】
ノズルカバー34は、各端に開口部を備えたテーパ付き管状部材である。加圧ガス入口24を覆って位置決めされると、ノズルカバー34と加圧ガス入口24との間の空間は、ノズルカバー34と底部ハウジング14の底壁32との間の隙間によって作られる半径方向開口部と、加圧ガス入口24のノズル端部の外周部およびノズルカバー34の内周部によって画定された環状開口部38との間に少なくとも1つの通路36を作る。環状開口部38の適正なサイズおよび加圧ガス入口24を覆うノズルカバー34の位置を維持するため、三角形リブ40がノズルカバー34の内面上に設けられるのが良く、これら三角形リブは、ノズルカバー34を同心状に配置してノズルカバー34の底縁と底部ハウジング14の底壁32との間の通路開口部44を維持するよう先端部の近くに形成された加圧ガス入口24の棚部42と協働するよう設計されている。
【0022】
底部ハウジング14の下側チャンバは、好ましくは、リザーバ46として用いられ、この下側チャンバは、噴霧化のための流体、例えば薬物の入った溶液を保持する。一実施形態では、底部ハウジング14の底壁は、加圧ガスノズルの基部まで下方に傾斜しており、その結果、重力が流体を通路36の開口部44に向かってリザーバ46中に押し込むようになっている。図3Aに示されているように、リザーバの壁は、ネブライザの中心軸線からほぼ45°の角度をなして設定されるのが良く、ただし、他の壁角度を用いて治療の終了時に薬物の残留体積を減少させても良い。底部ハウジング14は、患者および医療スタッフがネブライザ10内の薬物レベルをモニタすることができるようにするよう透明なプラスチック材料で作られるのが良い。
【0023】
図3Aおよび図3Bを参照すると、加圧ガス入口24とノズルカバー34との間に形成された通路36は、流体をリザーバ46から開口部44に通して通路36に、そして環状オリフィス38に案内する。この形態では、通路36を通る流体の流れと加圧ガス入口24を通る加圧ガスの流れは、ほぼ平行である。流体(例えば、液体)を通す通路36の初期部分は、垂直に分割することができない環状または円筒形経路である。加圧ガス入口24に対するノズルカバー34の同心性および高さを維持する内部ハウジング14のノズルカバー34に設けられているリブは、通路36をノズルカバー34の先端部の近くで3つの別々の通路に分割するのが良いが別々の通路は、加圧ガスオリフィス30の前においてリブを過ぎたところで合体して非分割状態になる。ネブライザ10内で生じたエーロゾルの特性は、ネブライザの出力に加えて、通路36の端部の近くでこれら通路のサイズおよび数を変更するとともに通路を加圧ガスオリフィス30の表面まで延長させることによって変更可能である。他の通路寸法および配置は、噴霧化中における所望のエーロゾルサイズおよび密度を達成するよう具体化されることが可能である。加圧ガスオリフィス30は、好ましくは、形状が円形でありかつ通路36と連絡状態にある環状オリフィス38内で同心状に整列している。
【0024】
ノズルカバー34の先端部および加圧ガス入口24の先端部は、平坦な表面であるのが良い。一具体化例では、加圧ガスオリフィス30は、環状オリフィス38の平面内に位置決めされている。変形例として、ガスオリフィス30の平面は、ノズルカバーの頂部の平面からオフセットした状態でこれに平行であるのが良い。加圧ガス入口24およびノズルカバー34の先端部の相対高さ(オフセット)は、所望の噴霧化特性を達成するよう変更可能である。
【0025】
加圧ガス入口24から見て底部ハウジング14の反対側の端部において、内側ハウジング18は、底部ハウジング14と内側ハウジング18の両方に設けられた3つの等間隔を置いた棚部の使用により底部ハウジング14の円筒形壁に取り外し可能に取り付けられ、内側ハウジング18を、底部ハウジング14への摩擦嵌めが可能であるようにこれら棚部まで下にルーズに回転させることができる。底部ハウジング14に対する内側ハウジング18の回転の向きは、内側ハウジング18に組み込まれたタブおよび底部ハウジング14に設けられていて正確に位置決めされたときに内側ハウジング18の回転運動を阻止する対応の平坦な表面によって制御されるのが良い。底部ハウジング14に設けられた傾斜路プロフィールは、タブが傾斜路プロフィールをたどっているときに内側ハウジング18の棚部が底部ハウジング14の棚部の下を動くようにする。この実施例は、底部ハウジング14および内側ハウジング18の外面周りに3つの等間隔を置いて配置された棚部を利用しているが、任意の数のこれらねじ山付き特徴部を用いて他の具体化例において同一の作用効果をもたらすよう使用できる。組み立て時、内側ハウジング18の外面は、空気およびエーロゾルが2つのコンポーネント相互間から漏れ出て周囲環境中に漏れることができないようにするよう底部ハウジング14の内面と締まり嵌め関係をなしている。
【0026】
リテーナ16の外側フランジは、4つの切欠き50を有し、これら切欠きは、リテーナ16を内側ハウジング18に組み付けるよう内側ハウジング18の外面に設けられている対応の雄型突き出し部52とスナップ嵌め関係をなす。2つの模様付き平坦部54がリテーナ16の外面上に設けられ、これら2つの模様付き平坦部は、外側フランジの円形プロフィールを中断させ、これは、これら平坦部が内側ハウジング18の外面に設けられた対応の平坦部56と嵌合したときに底部ハウジング14への内側ハウジング18の組み付けを助ける。これは、自動組み立ての具体化を助け、というのは、平坦部54,56がロボット組み立てシステムのつかみならびにビジョンシステムによる包囲決定特徴部を提供するとともに組み立ての際のヒューマンエラーの確率を減少させるからである。また、内側ハウジング18およびリテーナ16に設けられた平坦部54,56により、部品を自動組立体にボウル供給することができる。リテーナ16は、リテーナ16が、リテーナ16の特徴部が対象であるときに内側ハウジング18および底部ハウジング14に設けられている平坦部が組み立て時に互いに平行であるようにすることができる考えられる形態のうちのいずれにおいても内側ハウジング18に組み付け可能であるよう設計されている。平坦部54,56はまた、組み立て後における内側ハウジング18に対するリテーナ16の回転の向きを保持するのを助ける。
【0027】
図2図3Aおよび図3Bを参照すると、ダイヤフラム20とリテーナ16は、同軸に組み立てられかつダイヤフラム20のアクチュエータ22ラッチ特徴部とアクチュエータ22の受け入れ幾何学的形状との間の締まり嵌めにより互いに取り付けられる。この形態では、アクチュエータ22は、グロメット型連結可能にアクチュエータをダイヤフラム20の内側の円形開口部中に挿入することによって、ダイヤフラム20と組み立てられるのが良い。ダイヤフラム20の内側開口部60の表面周りの三角形の隆起部58は、ダイヤフラム20のラッチ止め表面に設けられた相補する受け入れ三角形溝62と嵌合する。アクチュエータ22は、ラッチ特徴部のこのバージョンでは、ダイヤフラム20の内面に設けられたほぼ等しい直径の2つの湾曲した表面を有する。
【0028】
押し通されると、棚部は、アクチュエータ22に設けられた受け入れ溝中に滑り込み、そしてダイヤフラム20をアクチュエータ22に対して定位置に弱く保持する。アクチュエータ22とダイヤフラム20との間の締め代の量は、過剰の力がダイヤフラム20の変形を生じさせて弁の流れ特性に悪影響を及ぼす場合があるので、設計上の重要な要素である。ダイヤフラム20とアクチュエータ22の組み立てについては回転の向きは不要である。ダイヤフラム20をアクチュエータ22に組み付ける際にはトップダウンの向きだけが存在する。ダイヤフラム20およびアクチュエータ22の共通軸線回りに180°だけ離されたアクチュエータ22の中心軸線から延びる支持アーム64の端部のところに位置決めされている2つの接触表面66だけがダイヤフラム20を安定化するのに用いられるが、種々の合致する幾何学的形状の任意の数のかかる特徴部を使用することができ、ただし、これらは、好ましくは、ダイヤフラム20が変形しないようにするためにアクチュエータ22の周りに等距離を置いて位置決めされている。
【0029】
ダイヤフラム20とアクチュエータ22の組立体は、ネブライザ内で内側ハウジング18により作られた空所内に同軸にかつ摺動可能に位置決めされ、アクチュエータ22のピストンの同軸本体は、ネブライザの長手方向軸線に沿って内側ハウジング18内にかつリテーナ16の本体に設けられた同軸開口部中に延びている。内側ハウジング18の空所内に延びているアクチュエータ22の閉鎖下側特徴部は、加圧ガスオリフィス30から出ている加圧ガスの流れをそらすためのダイバータ68を構成している。一具体化例では、ダイバータ68は、所定の面積を備えた平坦な円形の表面を有する。この表面はまた、好ましくは、加圧ガス入口の先端部に平行にかつ加圧ガスオリフィス30を通る加圧ガスの流れ方向に垂直に整列している。加圧ガスオリフィス30に対するダイバータ68の同心整列は、2本のアーム突出部72を備えた主アクチュエータ本体に連結されている下向き傾斜フランジ70によって助けられる。下向き傾斜フランジ70は、案内として役立ち、かつノズルカバー34のテーパ付き端部の外面に沿って摺動する。下向き傾斜フランジ70は、各端部のところに設けられていて加圧ガスがノズルカバー34のテーパ付き端部に加えてその中心を通って妨げのない状態で移動することができるようにする開口部を備えた短いテーパ付き管状特徴部であるのが良い。フランジ70はまた、フランジ70の底部がノズルカバー34に設けられた対応の肩に接触するときにダイバータ表面と加圧ガスオリフィスの表面との間に所定の距離“h”を設定するのを助ける。マウスピース12は、一端のところに設けられていて患者が呼吸する際に利用する卵形開口部および他端部のところに円筒形開口部を備えた管状部品であり、この管状部品は、底部ハウジング14から他の全てのコンポーネントのための組み立て軸線に垂直に延びる対応の円筒形管中に圧力嵌めされる22[mm]ISO規格取り付け具であるのが良い。
【0030】
次に、図1図3Bの実施形態を参照してネブライザの操作について説明する。操作の際、ガス源から加圧ガス入口24に提供された加圧ガスは、加圧ガスオリフィス30を通って連続的にネブライザ10に入る。アクチュエータ22が取り得る2つの主要な位置が存在し、これらの位置は、操作中、ネブライザの2つの状態を扱う。第1の位置では、ダイバータ68は、加圧ガスオリフィス30の頂部から十分に長い距離を置いて配置されており、その結果、噴霧化は、開始されない。第2の位置は、吸息中(および連続噴霧化モードが手動で設定されているときには連続噴霧化モード)で起こり、この第2の位置は、アクチュエータ22がネブライザの残部に対して下方に動いてリザーバ46内の流体の噴霧化が起こるのに適したノズルのオリフィスから所定の距離“h”置いたところまでダイバータ68が動くようになっているときに達成される。ガスオリフィス30から連続して流れる酸素または任意他の呼吸可能なガスであるのが良い加圧ガスは、次に、ダイバータ68によって360°パターンをなしてガスオリフィスから半径方向外方にそらされる。ガスは、高速で環状オリフィス38上に扇形に広がり、環状オリフィス上に低圧ゾーンを作る。低圧ゾーンは、毛管効果と一緒になって、液体をリザーバ46から通路36を通って加圧ガスの流れ中に引き込む。液体は、エーロゾル化されてマウスピース12を通って底部ハウジング14の空気出口84から引き出される。
【0031】
非最適状態のサイズの粒子をなくす上でのネブライザ10の性能を向上させるため、内側ハウジング18の外面は、底部ハウジング14の内面までかつ内側ハウジングの外周に沿って少なくとも途中まで延びる延長部86を有するのが良い。延長部86は、ガス流中に同伴された大きめの粒子を遮って延長部86の下面上に凝縮させ、そしてリザーバ46中に落として戻すよう作用する。これはまた、マウスピースを通って吸息されている大きめの粒子の数を減少させるのを助ける。延長部はまた、ネブライザ中に引き込まれている周囲空気が、これがネブライザを出る前にエーロゾルを通る連続した道筋を取るようにする。これは、粒子密度を制限し、そして偶発的な粒子衝突による粒子成長の恐れを減少させるのを助けることができる。上述したように、アクチュエータは、UP/OFF(非噴霧化)位置および噴霧化が起こるようにするためのDOWN/ON(噴霧化)位置から動くために必要とされる。マウスピース12を介するネブライザ中への周囲空気の吸い込みおよびネブライザを通って周囲雰囲気に出る呼息空気の排出ならびにこの空気流に対する抵抗は、治療中、患者によってなされることが必要な作業を最小限に抑えるために制御されなければならない重要な要因である。
【0032】
ダイヤフラム20に組み込まれた付勢要素78は、アクチュエータ22の運動を助け、この付勢要素は、呼吸作動モードにあるときに噴霧化が吸息時に起こるようにするが、周囲環境に放出される薬物の恐れを減少させるために吸息が行われていないときにはオフのままであるようにするよう構成される。アクチュエータ22を動かすのに必要な吸息流量を最小限に抑えることが望ましく、その理由は、作動するのに必要な流量を下げることは、薬物の噴霧化が吸息中に早期に開始する場合がありかつ呼息の終了の近くに停止する場合があり、かくして各呼吸の際に多量のエーロゾルを発生させて薬剤出力を最大にすることを意味するからである。図1図3Bのダイヤフラム20内において、呼息弁82は、ダイヤフラムの情報に傾斜した円周方向弁中に組み込まれて一方向圧力逃がし弁として作用する。
【0033】
吸息空気流は、中心開放型吸息弁80を通過する。この形態では、吸息弁80は、ドーナツ形弁設計を用いている。上述したように、アクチュエータ22に密着する吸息弁80の使用の結果として、垂直の向きだけが考慮されることを必要とする状態でアクチュエータ22とダイヤフラム20との間には回転の向きを不要とする組み立てが得られる。ダイヤフラム20は、リテーナ16上に設けられたリング形突き出し部88(本明細書では呼息スカートともいう)と内側ハウジング18に設けられた封止面90との間で定位置にピン止めされる。このダイヤフラム保持技術は、ダイヤフラム20に関して一定の休止位置を維持するのを助け、ダイヤフラム20をネブライザ10内で同心状に位置決めし、付勢要素78の運動を周囲方向呼息弁82から分離し、そして呼息流経路と吸息流経路を隔離する。吸息時、呼息フランジは、内側ハウジング18に組み込まれた封止面に接触し、この経路が遮断される。十分な負圧に達すると、ドーナツ形吸息弁80は、アクチュエータ22の封止面98から引き離され、空気が封止面98周りに流れてドーナツ形吸息弁80によって作られた経路を通り、そしてネブライザ10の主要空所中に流れることができる。リテーナ16に設けられた開口部94および内側ハウジング18に設けられた開口部96により、空気は、ネブライザの主チャンバからネブライザ10内に流れ、そしてネブライザ10から流れ出ることができる。
【0034】
次に、図3Aおよび図3Bを参照して、ネブライザ10内の吸息流路および呼息流路について説明する。患者による吸息に先立って、アクチュエータ22に作用する上向きの力は、加圧ガスが加圧ガスオリフィス30を通って主チャンバに入ってダイバータ68に当たることによって引き起こされる。この上向きの力は、アクチュエータ22をその最も上の位置に上昇させ、ダイバータ68の位置を加圧ガスオリフィス30から遠ざけた状態に、かくして非噴霧化位置に維持する。アクチュエータの最も上側の位置の維持はまた、ダイヤフラム20に設けられた付勢要素78のばね特性によって助けられ、かかる付勢要素は、アクチュエータ22を上方にかつ加圧ガスオリフィス30から押し離す。ネブライザに入る加圧ガスはまた、ネブライザ10内に与圧を生じさせ、そして吸息弁をアクチュエータの封止面に押しつける。
【0035】
吸息時、ダイヤフラム20の付勢要素78は、ダイヤフラムの下面に作用するネブライザ10内からの負圧に応答して内方にロールする。これにより、アクチュエータ22の位置が下がり、ダイバータ68が加圧ガスオリフィス30の近くに至り、ついには、アクチュエータ22が噴霧化位置に達するようになり、その結果、ダイバータ68は、加圧ガスの流れをそらすようになる。ネブライザ内の負圧はまた、ダイヤフラムの吸息弁を開き、周囲空気を装置中に引き込むことができ、それにより細かい粒子の塊の送り出し状態を向上させるとともに吸息中に患者によって行われることが必要な作業を最小限に抑えるために低い吸息抵抗を維持することができる。周囲空気は、リテーナに組み込まれた開口部94を通ってネブライザ中に引き込まれる。
【0036】
図3Aは、吸息時における同伴空気、供給空気およびエーロゾルの空気流経路を示している。吸息中に装置内で生じる負圧はまた、ダイヤフラム20の外側円周方向呼息弁82が内側ハウジング18の内面に密着されて呼息経路が吸息空気流から遮断されるようにする。図3Bは、呼息時における呼息空気および供給空気の空気流経路を示している。
【0037】
呼息時、呼息空気は、ネブライザ10を通って動き、そしてネブライザの後部を通って出て患者から遠ざかり、それにより患者の顔面または眼上に堆積する薬物がないようにする。一実施形態では、内側ハウジング18の背部および頂部に設けられた2つの長方形窓は、呼息空気がネブライザ10を出ることができるようにするために用いられるが、ベントの形状および寸法の他の変形例が想定される。内側ハウジング18のベントにより、供給空気と呼息空気の両方がネブライザ10の主チャンバ26を出て円周方向呼息弁82の下を動くことができる。呼息空気は、呼息スカート88がダイヤフラム20を内側ハウジング18にピン止めして呼息弁82と吸息弁80を隔離しているので、リテーナ16の頂部窓94を出るのが阻止される。空気流は、呼息スカート88と内側ハウジング18との間でリテーナ16周りに導かれ、そして内側ハウジング18に組み込まれているベント96を通ってネブライザ10の背部から抜き出される。ネブライザ内で生じた与圧は、吸息弁80をアクチュエータ22の封止面98に密着させて空気がリテーナ16の頂部窓94から流れ出るのを阻止する。
【0038】
好ましくは呼吸作動により操作されるが、ネブライザ10を手動で作動させることも可能である。ネブライザ10は、作動ピストンに連結され、これと一体であり、あるいはこれと接触することができ、かつ空気入口または他の開口部を通ってハウジングの上側部分から延び出る手動作動部材を有するのが良い。手動作動部材は、アクチュエータピストンと一体に形成されるのが良い。作動部材により、介護者または患者は、アクチュエータピストンを手で動かすことができ、かくしてノズルカバーを動かすことができ、その結果、ネブライザは、噴霧化を開始する。手動で作動可能なネブライザは、蓋と一体に形成されているダイバータを有することができるが、本明細書において開示する他のダイバータもしくはノズル形態またはこれらの均等例のうちの任意のものを使用することができる。
【0039】
図4図6を参照すると、ブロック図および略図は、装置の操作方法を示している。例示の一呼吸作動式ネブライザ(BAN)装置は、ロンドン所在のトルーデル・メディカル・インターナショナル(Trudell Medical International)から入手できるAEROECLIPSE BAN 装置である。BANの種々の特長は、2017年7月7日に出願された米国特許出願第15/644,427号明細書、2016年6月14日に発行された米国特許第9,364,618号明細書、および米国特許出願公開第2013/0247903号明細書に開示されており、これらの特許文献の発明の名称は、Nebulizer Apparatus and Methodであり、これらの特許文献は、本出願人の譲受人であるトルーデル・メディカル・インターナショナルに譲渡されており、これら特許文献を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。機械的部分を含む装置の種々の部分は、プラスチック材料で作られるのが良く、かかるプラスチック材料としては、ポリプロピレンが挙げられるが、これには限定されない。付勢要素が例えば柔軟性材料、例えばシリコーンで作られるのが良いが、これには限定されない。
【0040】
「入力」という用語は、スマートネブライザシステムに入る任意の上方を意味しており、かかる入力は、センサからの生データ、プロセスを開始させるための指令またはユーザによってエンターされる個人データの形態を取ることができる。例えば、入力は、1つまたは2つ以上のセンサからの信号であるのが良い。例えば、圧力センサは、システム内の圧力の関数として電気信号を発生させる。圧力センサは、上述の性能特性のうちの任意のものを計算するとともにユーザの技術を評価するために使用されるのが良い。センサ組立体が印刷回路板(PCB)上に実装された圧力センサをブルートゥース(登録商標)低エネルギー(BTLE)モジュール、マイクロプロセッサ、およびバッテリと一緒に含むのが良く、かかるセンサ組立体は、例えばブルートゥース(登録商標)を介してユーザ(患者、介護者および/または他の公認ユーザ)のコンピューティング装置、例えばモバイル装置と通信することができ、モバイル装置としては、スマートフォンまたはタブレット型コンピュータが挙げられる。単一の圧力センサが測定要件の全てを提供することができる。圧力センサは、差動型、絶対型またはゲージ型のセンサであるのが良い。センサ組立体は、例えばカバーがセンサ組立体を覆って設けられた状態でネブライザ装置に結合されるのが良い。
【0041】
患者/ユーザ、介護者、医師、保険業者は、BANであるにせよ連続装置であるにせよいずれにせよ、スマートネブライザの種々の特長から恩恵を受ける。例えば、ネブライザは、ブルートゥース(登録商標)を介してモバイル装置、例えば携帯情報端末、タブレットまたはスマートフォンに、例えばアプリケーションによりリンクされるのが良い。記憶可能であるとともに/あるいは通信可能な種々の情報としては、測定流量、呼吸パターン、例えば呼吸の回数、吸息のタイミング、治療の終了に関する信号、装置を使用した時期(時間および日付)の記録、正確な吸息流量の信号、作動検出、薬物の識別、薬物の濃度、粒径測定、空気供給圧力、ノズル流量、ならびに充填および残留体積算定が挙げられる。
【0042】
スマートネブライザ内で生じたセンサデータの迅速かつ正確な処理を行うようにするため、データは、ワイヤレスでスマートフォン、ローカルコンピューティング装置および/またはリモートコンピューティング装置に伝送されて生のセンサデータを解釈するとともにこれに作用するのが良い。スマートフォンは、図形または命令をユーザに表示することができ、そして処理ソフトウェアを実行して生データを解釈するとともにこれに作用することができる。スマートフォンは、生のセンサデータをフィルタにかけてこれを処理し、そして生のセンサデータ中に含まれている適切な状態情報をスマートフォン上のディスプレイに出力するソフトウェアを有するのが良い。スマートフォンまたは他のローカルコンピューティング装置は、変形令として、そのローカルリソースを使用してリモートデータベースまたはサーバに接触し、それにより処理命令を検索しまたは生のセンサデータを遠隔処理および解釈のために転送し、そしてユーザまたはスマートネブライザのユーザとともにいる介護者への表示のために処理されるとともに解釈されたセンサデータをリモートサーバから受けても良い。
【0043】
データ、統計または命令をスマートネブライザの近くに位置するスマートフォンまたは他のローカルコンピュータのディスプレイ上に単に表示することに加えて、スマートネブライザに関する先行する操作を能動的に管理して制御するのが良い。例えば、スマートネブライザの近くに位置するスマートフォンまたは他のローカルコンピュータによりセンサデータが治療の終了に達したことを指示していることが判定された場合、スマートフォンまたは他のローカルコンピューティング装置は、スマートネブライザへのガス供給源と関連した加圧ガスラインリレーと直接通信してガスの供給を止めることができる。例えばスマートフォンと連絡状態にあり、または通信ネットワークを介してスマートネブライザと直接連絡状態にあるリモートサーバが、治療状態の終了が決定されたときにスマートネブライザへの加圧ガス供給を停止させる決定を行うことができる場合、他の変形例もまた想定される。
【0044】
さらに別の具体化例では、スマートネブライザで集められてスマートフォンを介してリモートサーバに中継されるリアルタイムデータがリモートサーバをトリガして特定の噴霧化セッションまたは特定のユーザに関する過去の噴霧化セッションに基づいて経時的に生じたパターンに関する問題を探し出して医師または監督介護者に知らせることができる。スマートネブライザ内の1つまたは2つ以上のセンサからのデータに基づいて、リモートサーバは、警告を出してテキスト、Eメールまたは他の電子通信媒体を介してユーザの医師または他の介護者に送ることができる。
【0045】
図105を参照すると、スマートネブライザシステムの一実施形態がネブライザ10およびコントローラ340を含むものとして示されており、コントローラ340は、このコントローラへの入力を提供する複数のセンサ(幾つかの実施形態では、検出器と呼ばれる)(一実施形態では、3つ、310,320,330として示されている)を備えている。センサ310,320,330は、以下に開示する種々のセンサまたは検出器として具体化できまたはこれらの形態を取ることができる。一実施形態では、センサ310は、ネブライザに入る圧縮空気の圧力および流量を検出し、センサ320は、エーロゾル発生、例えば起動/作動を検出し、センサ330は、吸息および呼息流量、呼吸パターンおよび流量を検出し、これらセンサの各々の特定の実施形態が例示として以下に記載されているが、これらには限定されない。薬物識別、濃度識別、粒径測定、充填/残留体積算定および治療の終了のための追加のセンサもまた、以下に説明するようにシステム中に組み込まれるのが良い。システムは、フィードバックコンポーネント350をさらに含み、かかるフィードバックコンポーネントとしては、視覚、可聴または触覚フィードバックコンポーネント、あるいは例えばディスプレイ(ユーザインターフェース)、スピーカおよび振動コンポーネントを含むこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
【0046】
呼吸可能容量(mrespirable)を計算するためには、システムは、送り出された全質量(mtotal)および呼吸可能フラクション(RF)に関する入力を必要とする。
respirable[μg]=mtotal[μg]×RF[%]
【0047】
流量が所与の場合に一定の質量出力量[μg/min]のネブライザを用いると、システムは、全質量出力が平均吸息流量に基づいて全吸気時間に全質量出力量を乗算してさらに増倍率k1を乗算した値に等しいという仮定を立てることができる。増倍率の目的は、吸息流量に基づいて漸変薬剤出力および呼吸可能フラクションを計算に入れることにある。
total[μg]=k1・mrate[μg/min]×k1・tinspiratory[min]
【0048】
しかしながら、出力量および呼吸可能フラクションは、圧縮空気の圧力および流量で決まる。したがって、出力量と呼吸可能フラクションの両方は、入力流量および圧力という用語で表わされることが必要である。これらの関係は、ネブライザの形式に従って経験的に計算されて分類できる。例えば、一ネブライザの出力量は、次式の形態を取ることができる。
rate=k2・Qinput+k3・Pinput=C
【0049】
k2およびk3が増倍率である場合、Qinputは、入力流量であり、Pinputは、入力圧力であり、Cは、オフセット定数である。
【0050】
図105を参照すると、センサ310は、圧縮空気源の圧力および流量を検出して出力量を求め、この出力量は、全出力および呼吸可能フラクション(RF)を計算するために用いられ、これら両方は、呼吸可能容量を計算するのに必要である。
【0051】
呼吸可能容量を計算するのに必要な別の変数は、患者/ユーザが吸息していてかつネブライザがエーロゾルを発生している全時間である。全時間は、センサ320,330がそれぞれエーロゾルおよび吸息を検出しているオーバーラップ時間の持続時間を計算することによって算定できる。
【0052】
この頂部上には、ネブライザシステム中の互いに異なる薬物の性能差が層状化されている。薬物の記憶データベースは、ネブライザにより各薬物の必要な性能特性を提供する。一実施形態では、患者/ユーザは、例えばネブライザシステムとワイヤレス通信状態にあるスマート装置アプリケーションにより薬物情報を手動で入力する。
【0053】
スマートネブライザはまた、コーチングおよびフィードバックにより吸息技術を向上させる仕組みを提要する。適正な呼吸技術、特に吸息は、下気道への薬物送り出しを最適化することができる。吸息が強制的に過ぎる場合、その結果として、上気道中にかなり呼吸可能な粒子の固着が生じる場合がある。吸息流量のリアルタイムフィードバックにより、スマートネブライザは、ユーザ/患者の呼吸サイクルを案内してユーザ/患者が理想的な薬剤投与量を受けるようにする呼吸コーチを提供することができる。
【0054】
例えば、図107に示されているように、フィードバック、例えば視覚ディスプレイがゲームとして構成されるのが良い。一実施形態では、鳥380は、限界(上および下)384,386を超えないで、管382を通過しなければならない吸息流量を表わしている。
【0055】
図106を参照すると、スマートネブライザ流れ図が示されている。システムにより例えば起動/作動検出、1つまたは2つ以上のセンサからの流量を検知することにより、または開始もしくはオンボタンを押すことによって治療が開始したことがいったん検出されると、センサ310,320,330または以下において開示する他のセンサからの入力がモニタされてデータが捕捉される。吸息が所定の期間にわたって停止している場合、システムは、タイムアウトして待機状態に戻ることになる。吸息が検出されるが、入力圧縮空気流が正確ではない場合、エラーが出される。吸息が検出されるとともに入力空気流が正確であるが、ネブライザがエーロゾルを生じさせていない場合、システムは、治療の終了を指示して呼吸可能用量を計算するとともに治療データをログ記録する。
【0056】
吸息が検出され、入力空気流が正確であり、しかもエーロゾルが生じている場合、システムは、フィードバック装置によりユーザの吸息流量および/または治療の終了に関するリアルタイムフィードバックを提供して技術を向上させる。このフィードバックは、視覚(例えば図107参照)、可聴および触覚を含む幾つかの形態を取ることができる。フィードバックは、吸息流量がある特定の範囲を上回っている場合または下回っている場合に視覚インターフェース、可聴または振動警告を出すことができる。フィードバック装置はまた、治療の終了に達したという、視覚、可聴または振動フィードバックを提供することができる。このフィードバックに作用して、ユーザ/患者は、自分の吸息流量を制御/調整するとともにその流量を許容可能範囲内に維持することができ、それにより自分の呼吸可能用量を最大にすることができる。
【0057】
ネブライザシステムによりユーザがネブライザの使用を停止したことが判定されると、ネブライザシステムは、治療データを局部的に記憶しまたはこのデータを別個の装置で記憶するために送信する。治療順守度を追跡するためにこのデータを後の時点で/日にユーザまたは保健提供業者が視認するのが良い。種々の特長がこれらのそれぞれの技術的要件と一緒に、しかもネブライザシステムに負荷された値と一緒に表1に列記されている。
【0058】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0059】
〔起動検出〕
システムが患者に送り出された投与量を追跡するとともに治療の終了に達した時点を決定することができるようにするため、ネブライザシステムは、装置を起動した時点およびエーロゾルが作り出されている時点を識別する。ネブライザの既知の性能特性と関連して起動の持続時間を知ると、送り出された投与量を経時的に追跡することができ、そして治療の終了を計算することができる。BAN装置では、アクチュエータがOFF位置からON位置に動いたときにエーロゾルを発生させ、そしてエーロゾルを液体チャネルに沿って吸い上げ、このエーロゾルは、主バッフルに当たってエーロゾルを発生させる。幾つかのBAN装置、例えば、AEROECLIPSEネブライザでは、手動オーバーライドボタンを手動で押し下げてエーロゾルを生じさせても良く、あるいは、モードセレクタダイヤルを作動させてネブライザを連続モードに位置決めしまたは構成しても良く、この場合、エーロゾルが連続的に作られる。スマートネブライザシステムは、BAN装置またはモードと連続送り出し装置またはモードとを区別することができれば有利であるが、必要ではなく、と言うのは、これらシナリオの各々は、患者に送り出されている投与量に影響を及ぼす場合があるからである。ネブライザを起動させた時点および起動解除させた時点を判定するためには、アクチュエータの運動、可聴キュー、圧力特性、エーロゾルの流れを通る透過性、エーロゾルの存在下における温度および湿度変化、キャパシタンスおよびインダクタンスが全て用いられるが、これらには限定されない。
【0060】
装置内における音を利用した方式のセンサ
【0061】
図14図16を参照すると、音利用方式では、マイクロフォン102,104が、起動が起こってエーロゾルが作られていることを指示する可聴キューがあるかどうかについて「聞く」。マイクロフォンによって提供される信号を分析するために使用できる多くの時間および周波数ドメイン方法が利用できる。音利用方式は、ネブライザがドライ状態で作動されている時点(例えば、患者が薬物ボウルを満たす前に呼吸技術を練習している時点)を識別することができるという追加の利点を有する。
【0062】
ドライで作動されている装置および流体をエーロゾル化している装置には可聴差がある。加うるに、マイクロフォンを用いると、スパッタがあるかどうか、治療が完了したことの指標を聞くことができる。作動に先立って、圧縮空気が装置を通って流れている。作動時、液体が液体チャネルに沿って吸い上げられてバッフル/ダイバータに当たり、作動が起こったという可聴キューを生じさせる。第2のマイクロフォンを用いると、背景信号およびノイズレベルを測定することができる。ノイズまたは音レベルを経時的に記録するのが良い。マイクロフォンはまた、作動停止を記録することができる。
【0063】
全ての音を利用した方式では、マイクロフォン102,104の役割は、起動および起動解除があるかどうかにを聞くことに限定されるわけではなく、背景ノイズを記録したり、システム内からこのノイズを打ち消してどの信号が起動の発生を指示しているかを突き止めるのを助けたりすることができる。この一例は、多くのノイズキャンセリングヘッドフォンで用いられているアルゴリズムであり、この場合、外部マイクロフォンは、基準ノイズ信号を出し、システムは、振幅が同じであるが位相が逆の信号を弱めあう干渉としてシステム内から出る信号に追加する。
【0064】
外部マイクロフォン
スマートネブライザシステムの一実施形態では、外部マイクロフォン102は、ネブライザを「聞く」ために用いられる。この用途では、マイクロフォンは、ネブライザそれ自体から別個のスタンドアロン型部品であるのが良くまたは治療中に起こる音を記録し、アプリケーション利用インターフェースを用いて情報を患者に表示するために患者の近くに配置されたフォンからのマイクロフォンであっても良い。
【0065】
光を利用した方法
光透過‐アクチュエータ
図26を参照すると、光透過起動検出セットアップでは、光検出器106が光源108と対向して位置決めされ、空隙がこれらを隔てている。一実施形態では、光源と検出器との間の隙間は、不透明なアクチュエータ22がOFF位置にあるときには塞がれることがない。アクチュエータ22の運動により光源とセンサとの間の空隙が壊され、光検出器からの出力が変化し、それによりアクチュエータのエーロゾルを発生させるのに十分に移動したことが示される。別の実施形態では、光源と光検出器との間の空隙は、OFF位置にあるアクチュエータによって塞がれる。アクチュエータがON位置に動くと、隙間はもはや損なわれず、センサからの信号が変化する。これは、光の可視スペクトルには限定されない。一実施形態では、赤外線が用いられ、これが患者には見えないようになっている。
【0066】
光透過‐エーロゾル
図27Aおよび図27Bを参照すると、上述したように、光透過方法では、光源108と検出器106との間には空隙が存在し、光センサからの信号の変化は、作動が起こったことを指示する。エーロゾルを利用したトリガでは、光源およびセンサは、これらの間の空隙がエーロゾルまたは流路112内に位置し、例えば、マウスピース12またはチャンバ14内に位置するように位置決めされ、エーロゾルの発生は、エーロゾル粒子による散乱に起因して光を乱す。これにより、センサによって検出される光が減少し、起動が起こったことが指示される。これは、光の可視スペクトルには限定されず、多数の波長を用いることができる。一実施形態では、赤外線が用いられ、これが患者には見えないようになっている。
【0067】
光反射
図28Aおよび図28Bを参照すると、光反射実施形態では、光センサ110および光源108がエーロゾル経路112に沿って配置されている。これらコンポーネントは、互いに隔離された状態で互いに隣接して配置されており、その結果、ネブライザを起動させずにエーロゾルが生じていないとき、この装置の反対側の面による限定された反射に起因して限定された光がセンサによって検出される。エーロゾルの存在下において、隣り合う光源とセンサに密接していることに起因して反射量が増大し、これは、センサにより検出される光の強度の測定可能な違いを生じさせる。これは、光の可視スペクトルには限定されず、多数の波長を用いることができる。一実施形態では、赤外線が用いられ、これが患者には見えないようになっている。
【0068】
色反射
また、図28Aおよび図28Bを参照すると、白色光源108が検出された光の色スペクトルを識別することができる検出器110に隣接して位置決めされている。これらのコンポーネントは、エーロゾル経路内に配置され、その結果、起動時、エーロゾルがこれらのコンポーネントの前に引かれ、したがってエーロゾル粒子の存在により光がセンサのところで後方に反射されるようになっている。エーロゾルの存在下において、エーロゾルは、光のある特定の波長を吸収し、かくしてセンサに自由に戻ることができる波長が変化する。センサによって検出される波長の変化は、エーロゾルが存在していることを指示し、そしてエーロゾル化されている薬物およびその濃度を識別することができる。
【0069】
加速度
図17および図18を参照すると、呼吸作動式ネブライザの一実施形態では、アクチュエータ22は、装置内の与圧に打ち勝つのに十分な吸息に応答してOFF位置とON位置との間で動く。アクチュエータ22内にまたはアクチュエータ22上に配置された加速度計116を用いると、アクチュエータの移動量およびアクチュエータが加速する持続時間を測定することができる。次に、生じた加速と時間の関係を表わす曲線の下の面積を用いると、速度の変化およびアクチュエータの全変位を求めることができる。起動の判定は、アクチュエータの変位の計算には限定されず、他のアルゴリズムを用いて同じ仕事、例えば吸息時およびアクチュエータが一番下まで動かされてノズルカバーの底にあたるときの突然の減速を達成することができる。加速度計を利用した起動検出方法の精度を向上させるため、第2の加速度計118がアクチュエータ運動に関するベースラインまたは基準系としての役目を果たすよう使用できる。第2の加速度計は、装置の残部に対して静止状態にあるネブライザの一部分内に配置され、この第2の加速度計は、吸息および呼息流に応答して動くことはない(例えば、マウスピース12内、リテーナ16上、頂部、底部などに配置される)。そのようにすることによって、装置を持っている患者の動きにより生じる運動アーチファクトは、「偽陽性」起動検出をトリガすることはなく、と言うのは、両方の加速度計がほぼ同じ加速度を記録するはずであり、これらの差は、ほぼ0であるからである。加速度計116,118は、処理ユニットが理想的には静止加速度計とともに配置されている状態で別々のコンポーネント内に配置されているので、ワイヤードまたはワイヤレス通信システムが装置相互間をインターフェースすることができる。ワイヤード接続実施形態では、単一の電力供給源を用いるのが良く、他方、ワイヤレスシステム実施形態は、センサについて多数の電力供給源を必要とする場合がある。
【0070】
圧力
絶対圧
図10図12を参照すると、呼吸作動式ネブライザ10は、患者の吸息および呼息により生じる装置内の圧力の変化に応答するコンポーネント120を備えている。圧縮機または与圧空気供給源に連結されると、装置内の与圧は、付勢要素/ダイヤフラム20を押し上げてアクチュエータをOFF位置に維持する。患者が装置を通して吸息し、それにより装置内の圧力がアクチュエータをON位置に引くのに十分な負圧状態になると、エーロゾルが生じる。装置内、例えばマウスピース12の流路112内に配置された圧力センサ120が大気条件に対する圧力を測定することができ(センサ122を用いて)、そして吸息時におけるネブライザの既知の圧力特性に基づいて、起動が起こった時点を識別することができる。図10に示されているように、圧力および流量プロフィールのグラフ図が示されており、作動は、測定圧力に基づいて判定される。第2の圧力センサ122が装置の外部に、例えば、リテーナまたはマウスピース上に設けられるのが良く、それにより大気圧について基準データ点を提供することができる。単純なしきい値分析または限界値分析を用いると、現在の圧力読みと装置を起動するのに必要な最小圧力を比較することができる。
【0071】
圧力センサは、呼吸パターンを求めるための情報およびそのモニタを提供することができる。マウスピースに結合されると、センサ120,122は、マウスピースとともに取り外し可能であり、その結果、装置の残部をクリーニングすることができる。例えば、図12に示されているように、センサ120,122は、印刷回路板124がユーザとの口腔インターフェースを邪魔することがない場所でマウスピースの頂部または底部上に位置した状態で取り付けられるのが良い。
【0072】
別の方式は、ネブライザ内の圧力プロフィールを分析することである。呼吸サイクル全体にわたるシステムの圧力曲線は、ネブライザ装置にとって特有であり、吸息および呼息弁の運動に応答する。この既知の特性プロフィールを用い、そして起動が起こったことを信号で知らせる領域を標的にして、ネブライザシステム内の圧力センサ120に由来する信号を時間ドメインと周波数ドメインの両方において標的信号と比較することができる。これは、しきい値、自己相関、二乗平均値の最小化およびスペクトルコヒーレンスを含むが、これらには限定されない。多数の分析技術を一緒に用いると、アルゴリズムの精度を向上させることができる。
【0073】
ひずみゲージ
図7図9を参照すると、呼吸作動式ネブライザの一実施形態では、ダイヤフラム20は、装置内の圧力の変化に応答してアクチュエータをOFF位置からON位置に動かす。したがって、アクチュエータ22を一番下まで動かしてノズルカバー34に当てると、ダイヤフラム20には最小限のひずみが生じる。ひずみゲージ128がネブライザの可撓性付勢要素に取り付けられるのが良く、このゲージのインピーダンスは、ネブライザ内の圧力の変化に応答して変化する。かかる装置の一実施形態は、ダイヤフラム20の表面上の回路の印刷を含む。ひずみを受けると、回路経路は、引き伸ばし状態にかつ幅が細くなり、その結果、抵抗が高くなる。これとは逆に、圧縮されると、回路は、短くかつ幅が広くなり、抵抗が小さくなる。このシステムの別の実施形態は、別個のフレックスセンサ/ひずみゲージ130を有するのが良く、その運動は、ダイヤフラム20またはアクチュエータ22の運動によって駆動され、それによりダイヤフラムの表面上に印刷されたひずみゲージと同一の機能が達成される。アクチュエータをON位置に動かすのに十分なひずみがダイヤフラムに生じた時点を求めるために単純なしきい値アルゴリズムが必要とされる。ゲージの受けるひずみの大きさは、装置内に生じる圧力およびユーザにより生じる流量に関連している。加うるに、ダイヤフラムの受ける初期ひずみは、空気供給圧力(中央壁空気に対する圧縮機)を表わし、かかる初期ひずみは、送り出された用量を計算する際に使用できる。
【0074】
物理的スイッチ
単極単投(SPST)スイッチ
図103A図104Bを参照すると、SPSTスイッチ実施形態では、ネブライザ内の可動要素、例えばアクチュエータ22またはダイヤフラム20は、スイッチを開閉するために用いられる。常態では、「オフ」スイッチの実施形態では、アクチュエータ22およびノズルカバー34のフード受け座は、単極単投スイッチ132を形成する。電気電力供給源がノズルカバー上のフード受け座の領域内では不連続である導電性経路に接続されている。アクチュエータのフードの底面134は、ノズルカバーに設けられている不連続区分136を橋渡しする導電性経路を有し、それにより回路が閉じられるとともに起動が起こったことを示す信号が出される。ネブライザが起動解除すると、回路は、不連続状体になる。マイクロコントローラがスイッチの状態をモニタするために用いられる。
【0075】
図104Aおよび図104Bに示されているように、常態では「オン」スイッチの実施形態では、ダイヤルの内面138は、ダイヤルのレッグがダイヤフラムに当たる場所までダイヤルのレッグに沿って下方に延びる導電性経路を有する。ダイヤルレッグの接点を接続する導電性経路140がダイヤフラム20の表面上に印刷されている。この経路は、連続モードに切り替えられたときにレッグが移動する傾斜路沿いに上方には連続していない。ネブライザがオフのとき、回路は連続している。吸息時、ダイヤフラム20は、ネブライザ内の負圧に応答して動いて回路を開く。これとは逆に、ダイヤル142を回して連続モードにすると、レッグは、導電性経路を備えていないダイヤフラムの傾斜路上を移動する。マイクロコントローラは、スイッチの状態をモニタして起動または起動解除が起こった時点を突き止める。
【0076】
このセクションにおいて説明した2つの実施形態は、スイッチを形成するためにネブライザの既存のコンポーネントを用いているが、起動および起動解除が起こった時点を指示するために吸息流および呼息流に応答する追加のコンポーネントをネブライザに付加しても良いことに注目することが重要である。加うるに、この方法を上述した2つの実施形態よりもさらに拡張させることができ、そしてネブライザの起動または起動解除に応答して状態を変化する任意の常態ではオンまたは常態ではオフのスイッチを含むよう拡張可能である。このセクションで用いられる実施形態は、例示目的で記載されており、これら実施形態は、かかる方法をどのように具体化できるかを示している。
【0077】
リードスイッチ
図101Aおよび図101Bを参照すると、リードスイッチ実施形態では、磁気コンポーネント144が静止表面に対して動くことができるよう構成されている。磁気要素を変位させているときにこの磁気要素は、リードスイッチ146の状態をONからOFFにまたはOFFからONに変化させ、このことは、起動または起動解除が起こったことを指示する。一実施形態では、アクチュエータ22のドームは、磁気材料で作られており、このドームは、磁気コンポーネント144を構成し、リードスイッチがリテーナ16中に組み込まれている。アクチュエータが十分に動くと、アクチュエータは、リードスイッチの状態を変化させ、これは、マイクロコントローラ148によって認識され、起動がログ記録される。アクチュエータ22がその初期位置に戻ると、リードスイッチ146は、その初期状態に戻り、マイクロコントローラ148は、起動解除が起こったことを認識する。リードスイッチおよび磁気コンポーネントの配置がこの一実施形態に限定されないことに注目することが重要である。これとは異なり、リードスイッチは、ネブライザの作動および/または起動解除を検出し、説明した実施形態は、例示目的であるに過ぎない。
【0078】
導電性近接センサ/スイッチ
図22図23Bを参照すると、一実施形態では、導電性素子150がネブライザの可動コンポーネント、例えばアクチュエータ22のドーム(これには限定されない)中に組み込まれている。対応のコイル152は、このコンポーネントが例えばダイヤルの内周部内で動く経路周りにまたはこの近くに配置されている。吸息時、可動コンポーネント(アクチュエータ)22は、OFF位置からON位置に動き、この可動コンポーネントの導電性素子150をコイル152またはネブライザの静止コンポーネントのループに近づける。高周波電流がコイル152またはループ中に流されて電界を生じさせる。可動コンポーネントの導電性素子をループに近づけまたはこれから遠ざけると、コイル152またはループ中にインピーダンスの測定可能な変化が生じる。インピーダンスのこの変化は、起動が起こった時点を知らせることができる。この特徴および原理をネブライザ内の可動コンポーネントのうちの任意のものに適用することができる。
【0079】
キャパシタンス(静電容量)スイッチ
図24および図25を参照すると、キャパシタンススイッチ/近接センサ154もまた、作動が起こった時点を突き止めるために使用できる。2枚の互いに平行なプレート156,158は、一方のプレートがネブライザの「静止」コンポーネント(呼吸サイクルに応答して動くことがない)上に配置され、もう一方のプレートが可動コンポーネント、例えばアクチュエータまたはダイヤフラム上に配置されるよう位置決めされている。平行なプレート156,158相互間のキャパシタンスは、自由空間の誘電率(d)、隙間内の材料の誘電定数、プレートのオーバーラップ面積およびプレート相互間の距離で決まる。プレートのオーバーラップ面積、自由空間の誘電率および隙間内の材料の誘電定数が固定されている領域にプレートが位置決めされた場合、キャパシタンスの変化は、プレート相互間の距離の変化に起因している。一実施形態では、2枚のプレートは、空隙によって互いに隔てられている。一方のプレートは、ダイヤル/リテーナの下側周りにリングを形成し、他方のプレートは、ダイヤル/リテーナ上のプレートと反対側でダイヤフラムの頂面上にリングを形成する。吸息流量に応答して、プレート相互間の距離が増大し、キャパシタンスが変化する。キャパシタンスと距離の関係を知ることにより、ダイヤルからのアクチュエータの距離を求めることができ、かくして、アクチュエータがエーロゾルを生じさせるのに十分に移動していることを条件とする。空隙中の材料の誘電定数が好ましくは不変のものとして維持されるので、空隙は、好ましくは、エーロゾル経路内には配置されない。キャパシタンスをオシレータまたは充電/放電回路でモニタすることができ、周波数の変化は、エーロゾルの発生が起こったことまたは停止したことを指示する。
【0080】
図25に示されている別の実施形態では、プレート156,158相互間の距離、自由空間の誘電率および2枚のプレート相互間の材料の誘電定数は、一定に保たれ、2枚のプレートのオーバーラップ面積は、変化する。一方のプレートは、アクチュエータのドーム内に配置され、他方のプレートは、静止リテーナまたはダイヤル内に配置される。吸息時、2枚のプレートのオーバーラップ面積は、これらの初期の位置決めに応じて増減する。アクチュエータは、ネブライザ内で軸方向に動くので、プレート相互間の距離は、一定のままであり、オーバーラップ面積だけが変化し、かくしてキャパシタンスが変化する。空隙内の材料の誘電定数が好ましくは不変のものとして維持されるので、空隙は、好ましくは、エーロゾル経路中には位置しない。キャパシタンスをオシレータまたは充電/放電回路でモニタすることができ、周波数の変化は、エーロゾル発生が起こったことまたは停止されたことを指示する。
【0081】
ホール効果
図102Aおよび図102Bを参照すると、ホール効果素子160がネブライザの起動および起動解除を計測するために使用できる。ホール効果素子は、ホール効果素子を横切る電流の流れの方向に垂直にホール効果素子の電圧を測定することによって働く。磁界の存在下において、電圧は、磁界強さに比例してホール効果素子前後に誘導される。一実施形態では、ホール効果センサ160は、リテーナ16に取り付けられ、アクチュエータのドームは、磁気特徴部144を有する。吸息時、アクチュエータ22の運動は、センサまでの磁気ドームの近接度が出力電圧を変化させるので、ホール効果素子の横方向電圧を測定するマイクロコントローラ148によってモニタされるのが良い。電圧しきい値に達すると、マイクロコントローラは、アクチュエータがエーロゾルを発生させるのに十分動いたときに起動が起こったことを信号で知らせることができる。この実施形態は、磁石をホール効果センサに近づけるアクチュエータの運動を記載しているが、磁気コンポーネントが吸息時にセンサから遠ざかる実施形態もまた適している。また、ホール効果センサおよび磁気特徴部の配置は、リテーナおよびアクチュエータには限定されず、任意のホール効果素子を用いて起動および起動解除を計測することができる。
【0082】
力検出バッフル
図83および図84を参照すると、一実施形態では、力または圧力検出素子162がバッフル165中に組み込まれている。アクチュエータがOFF位置にあるとき、減少した流量の空気が、この流量の一部分がノズルカバー34に設けられた真空破壊窓を通って逃げ出るときにバッフルに当たる。アクチュエータ22が下がっているとき、全ての空気流がバッフル165に向かって差し向けられ、と言うのは、ノズルカバーの窓がノズルカバーの底部海溝部を通る同伴空気とともに遮断されるからである。この力は、液体が液体チャネル中に引き込まれてバッフルに当たるときにさらに増大する。この力/圧力の読みを検出素子162によって記録するとともに制御ユニットによってモニタすることができ、ある特定のしきい値を上回る増加は、空気流/アクチュエータ上昇、アクチュエータ下降/液体なしおよびバッフルに当たる液体の各々について図84に示されているようにエーロゾル生成を指示する。この実施形態は、装置がドライ状態で作動されている間に患者が適正な呼吸技術を練習している場合とエーロゾルが作られている場合とを区別することができる。
【0083】
湿度
図19および図20を参照すると、一実施形態では、湿度センサ166がエーロゾル経路112内でネブライザ内に配置されている。考えられる1つの配置場所は、これが患者に近接しているマウスピース12内である。エーロゾル生成前に、中央空気供給源または圧縮機からの加圧空気は、センサを通り過ぎて動く。起動時、装置内で生じたエーロゾルは、圧縮同伴空気によって集められて吸息経路に沿って患者の方へ流れる。空気は、エーロゾル化された薬物の液滴で飽和状態になり、そしてこれがセンサを超えて流れているときに湿度の増加として記録される。装置が起動解除すると、エーロゾル生成が止んでセンサを超えて流れている圧縮同伴空気は、もはや水蒸気で飽和しない。このような実施形態では、センサ166は、好ましくは、これが用いられている環境および圧縮空気源の相対湿度に関する各治療前に較正される。この較正は、第2の外部湿度センサを用いて実施されるのが良い。既定の期間における最小湿度変化を用いると、起動および起動解除を検出することができるが、多くの検出アルゴリズムを使用することができる。
【0084】
温度
図13A図13Eを参照すると、一実施形態では、温度センサ168がエーロゾル経路112内でネブライザ内に配置されている。温度センサ168は、温度センサ上の空気の流れが淀んだ空気と比較して温度の測定可能な減少を生じさせるので、装置に圧縮空気が供給されているかどうかを判定することができる。これは、装置をスリープまたは低電力モードから「起こす」ために使用されるのが良い。アクチュエータがON位置に打つってエーロゾルが吸息経路(図13B)に沿って流れると、粒子がセンサ上に付着して蒸発するので温度が減少する。温度のこの一段の減少は、起動が起こったことを指示し、温度レベルの連続した減少は、エーロゾル生成の持続時間を知らせる。
【0085】
起動解除は、2つの仕方で起こることができる。第1のシナリオは、患者が装置を通じて呼息した時(図13C)である。これにより装置内に与圧が生じ、アクチュエータがOFF位置に動く。温度の増大は、エーロゾルの停止および患者の肺からの温かい湿った空気がセンサを通過するので生じる。これは、起動が停止したことを指示する。第2のシナリオ(図13D)では、患者は、自分の口をマウスピースから外して呼息し、負の吸息流がないので、アクチュエータは、OFF位置に戻る。上述したように、エーロゾルがセンサに付着してこれから蒸発することがないということが温度の増大として記録され、システムは、起動解除が起こったことを認識する。
【0086】
上述の実施形態は、エーロゾル経路内に直接配置された温度センサを記載しているが、温度センサは、装置上のどこか別の場所に配置されても良く、そして局所的温度変化を測定しても良い。多数の温度センサ168,170(図13E参照)を用いると、外部環境に対する相対温度変化を測定することができ、その目的は、システムの精度を向上させるとともに基準温度を設定することにある。
【0087】
キャパシタンス‐エーロゾルの誘電定数
図21を参照すると、エーロゾルの誘電定数が空気の誘電定数とは異なると仮定して、容量検出方法を用いて起動が起こった時点を突き止めることができる。キャパシタ154が2つの導電性材料156,158を例えばマウスピース12の流れ経路112内で絶縁空隙だけ互いに隔てることによって作られるのが良い。空隙は、エーロゾル生成時、エーロゾルが隙間を通って流れるよう配置される。エーロゾルが空気とは異なる誘電定数を有している場合、導電性変化相互間のエーロゾルの存在の結果として、キャパシタンスの測定可能な変化が生じる。キャパシタンスをオシレータまたは充電/放電回路でモニタすることができ、周波数の変化は、エーロゾル生成が起こったことまたは停止したことを指示する。
【0088】
流量
装置を通る流量を測定することは、起動が起こった時点を突き止める直接的な方法ではないが、装置の既知の性能特定、例えば作動させるための流量を用いると、作動を記録することができる。流量の測定はまた、治療中における患者の呼吸パターンのモニタにとって重要である。したがって、次のセクションで取り上げられる全ての実施形態および方法、すなわち、流量の測定もまた、起動が起こった時点を突き止める際に利用できる。
【0089】
本明細書において開示する種々の実施形態および方法を組み合わせると作動を記録することができるということに注目することが重要である。確かに、これら技術の任意のものの組み合わせが想定され、と言うのは、互いに異なる実施形態/技術を互いに関連させると、ネブライザシステムの精度を向上させるとともにその能力を拡張することができるからである。
【0090】
〔流量測定/呼吸パターン〕
スマートネブライザが患者の治療中、患者の吸息および呼息をモニタすることができることが有利である。適正な呼吸技術、特に吸息は、下気道への薬剤送り出しを最適化することができる。吸息が強力すぎると、その結果として上気道内への呼吸可能な粒子の衝突が起こる場合がある。呼息流量のリアルタイムフィードバックにより、スマートネブライザシステムは、患者/ユーザの呼吸サイクルを案内して患者/ユーザが理想的な投与量を受け取るようにするための呼吸コーチ特徴を提供することができる。流量を測定するための種々の電子装置が利用でき、かかる電子装置としては、ネブライザ内に配置できる内部センサ、ネブライザの動作特性を解釈してこれら信号を、装置を通る流量に関連させることができる外部センサおよびスタンドアロン型装置が挙げられる。呼吸モニタ実施形態および方法は、様々な圧力で多様な空気供給源に用いられる場合に流量を算定するよう適合可能でありかつこれを行うことができる。呼吸モニタ実施形態は、好ましくは、環境騒音を除くとともに関心のある信号を隔離するのに十分ロバストである。
【0091】
音利用方式
固有音
図29および図30を参照すると、流れが装置を通っているときに装置により生じる固有音を計測するためにマイクロフォン104が用いられるのが良い。ネブライザ内の空気流経路112は、多くの場合、エーロゾル粒径を制御するために故意に曲がりくねっている。これにより、乱流が生じ、この乱流は、複雑で尖っていない幾何学的形状の周りを通らなければならない。流量の増大により、生じる乱流の増加が生じるとともに装置により生じる固有音に変化が生じる。マイクロフォンは、ネブライザを通る空気流により生じる音を検出するよう装置内に、外面上にまたはスタンドアロン型センサとして配置されるのが良い。実験的試験により検出音と流量の関係を求めることができる。多くの信号処理および分析技術が、流れのマイクロフォンデータ、例えば単純な音量しきい値をより複雑な周波数ドメイン分析技術に関連付けるのに利用できる。音は、人間の耳によって検出可能な音には限定されず、広範な周波数帯域を用いることができる。
【0092】
固有音を利用した流量測定技術は、単一のマイクロフォンの使用には限定されず、複数のマイクロフォン102,104を用いて流量測定の精度を向上させるとともに環境騒音を捕捉することができる。
【0093】
発生音
固有音方式と酷似した図31を参照すると、単一のマイクロフォン104および多数のマイクロフォンが特定の幾何学的形状170を用いたネブライザによって意図的に生じさせた音を検出するために使用され、この特定の幾何学的形状170は、AEROCHAMBER エーロゾル保持チャンバ内におけるFLOWSIGNAL流量指示器と酷似して、空気流がこの特定の幾何学的形状上を通過するときに音を出す。一実施形態では、音を生じさせる幾何学的形状170、例えばリードがネブライザの吸息窓172の前に配置されている。変形例として、音発生幾何学的形状は、吸息窓それ自体に成形により組み込まれる。吸息時、空気は、音発生幾何学的形状を通って引き込まれ、そして既知の音を生じさせる。漸変流量により生じる音量変化または周波数シフトをネブライザシステムの音検出ユニットによって認識することができ、そして流量に関連付けることができる。呼息流量を認識する同様なコンポーネントが呼息ポートに追加されるのが良い。発生音を用いた流量の測定は、吸息および呼息窓のところへの配置には限定されず、吸息および呼息経路内に位置する装置内のどこの場所にでも配置できる。吸息流と呼息流を識別するために各流路について互いに異なる音質を生じさせることができる。固有音方法の場合と同様、発生ノイズは、人の可聴範囲には限定されない。
【0094】
ドップラー
図32を参照すると、ドップラー効果を用いてネブライザ内の通過粒子の速度(および流量)を測定することができる。送信機および受信機ユニット174,176が、エーロゾルの存在下において送信機により生じた音が受信機のところで反射して戻されるよう配置されている。これは、送信機および受信機を流路に対して角度をなして差し向けることによって達成できる。音を反射しているエーロゾルの速度に起因して、受信した音の周波数にシフトが生じる。粒子が送信されている音の方向と反対側に動いている場合、反射音波は、圧縮され、したがって高い周波数の状態になる。周波数シフトのレベルを粒子の速度に関連付けることができる。ガス流の断面積を知ることにより、速度を用いて流量を計算することができる。この方法は、受け取った音が送信された音波よりも低い周波数を有している場合を除き、両方の方向における流れについて有効である。この方法は、エーロゾルの存在が反射エージェントとして働くことを必要とすることに注目することが重要である。したがって、この方法はまた、起動を検出するために使用できるが、起動に先立ってネブライザ内の乾燥空気の流量を測定することはできない場合がある。
【0095】
一実施形態では、送信コンポーネントと受信コンポーネントは、マウスピースの壁上に互いに隣接して配置されている。送信機および受信機は、信号が流路に沿って角度をなして投射されていて流れに対して垂直に出ることがないように角度が付けられている。この方法は、これが超音波信号に使用される場合が多いが、任意の一周波数範囲には限定されない。
【0096】
飛行時間/通過時間
図33を参照すると、飛行時間または通過時間流路測定実施形態では、2つの送信機および受信機コンポーネント174,176が空気の流通する円筒形要素の互いに反対側のフェース上に配置されている。センサは、流路に対して角度θをなして配置され、各コンポーネントの各送信機/受信機は、他方に向いている。一実施形態では、この円筒形要素は、マウスピースである。音が互いに反対の時間間隔中に各コンポーネントによって出され、音が反対側のセンサに達するのに要する時間が計算される。両方向におけるセンサ相互間の飛行時間を知ることにより、空気チャネルを通過するガスまたは粒子とは独立した流れの平均速度が与えられる。ネブライザの幾何学的形状および速度を知ることにより、流量の計算が可能である。
【0097】
圧力利用方式
大気圧に対する圧力
図34を参照すると、一実施形態では、圧力センサ120が内部圧力を測定するよう装置内に配置されている。センサは、患者が自分の口をマウスピースに当てて置いたときに形成される閉鎖系内に配置されなければならない。これは、例えばマウスピース12内における患者の呼吸に応答して圧力を変化させる領域である。吸息時、ネブライザの内圧は、大気圧に対して負圧になり、流れが吸息弁を通って患者の肺の中に引き込まれる。また、流量の増大により、ネブライザ中への空気の流れが吸息弁によって制限されて吸息ポートが制限されるので強い真空が生じる。その結果、空気流を増大させるには、患者による多大な努力が必要である。呼息時、ネブライザ内の圧力は、正になり、装置からの流出が呼息ポートおよびこれらを覆う弁のサイズによって制限されるので呼息流量の増大につれて増大する。内圧と流量の間には関係が存在するが、ただし、この関係は、かろうじて各弁の特性およびネブライザ内における漏れの可能性で決まる。大気圧を測定するために第2の圧力センサ124が設けられるのが良く、その結果、外部環境とは独立して正確な内圧測定を行うことができるロバストな設計が得られる。
【0098】
ベンチュリ
図35を参照すると、ベンチュリ効果を用いると、既知の幾何学的形状で領域内に圧力降下を強制的に生じさせるベンチュリ管180をネブライザ内に作ることによって流量を測定することができる。一直径から別の直径への滑らかな移行部を有するとともに既知の断面積を備えた円筒形管が作られる。流れが定常状態にありかつ層状であると仮定するとともにガスの圧縮度が最小限であると仮定すると、質量を保存するには速度が同一の流量を維持するよう変化しなければならない。ベルヌーイの方程式により、局所圧力降下が生じる。圧力降下を測定することができ、そして流量を計算することができる。
【0099】
ベンチュリ幾何学的形状がネブライザの一部分、例えば図36に示されているようにマウスピース12中に組み込まれ、それにより差圧として記録される測定可能な圧力降下を生じさせる。この方法の欠点は、マウスピースのくびれがエーロゾルを加速させてこれらに大きな運動量を与え、潜在的に上気道内における衝突を増大させることにある。
【0100】
変形例として、バイパスベンチュリ管182が、図37に示されているように、流れの一部分が通過する主空気流経路から作られる。マウスピースのこの部分を通る流量は、本体を通る空気の流量と相関する。マウスピースは、小さな直径まで移行する筒体の基本的幾何学的形状を有し、このマウスピースは、この実施形態について測定可能な局所圧力降下を生じさせることができる。
【0101】
ピトー静圧管
図38を参照すると、ピトー静圧管は、よどみの領域が代表的には一方の閉鎖端を備えた円筒形の幾何学的形状部184を用いて流路中に作られる。円筒形管の開放端は、到来流に向いている。1対の管184が互いに反対側の方向に向くのが良い。圧力センサ186が通常閉鎖フェースの内側上で管内に配置される。空気流の存在下において、流れの一部分が管に入ってよどみ、管内に圧力を発生させる。流量が多い場合、管内には増大した圧力が生じ、と言うのは、空気が大きな減速度を受けて大きな力をセンサに及ぼすからである。この圧力プロフィールは、試験によって特徴付け可能であり、ピトー静圧管内の圧力と流量との間には関係が生じる。また第2のセンサが基準および較正目的で大気圧を測定するよう配置されるのが良い。
【0102】
一実施形態では、2本のピトー静圧管がマウスピース内に配置されるのが良く、これらの管は、互いに反対側の流れ方向に向く。吸息時、一方のピトー管は、圧力の増大を生じ、他方のピトー管は、圧力の変化を認めずまたは僅かな減少を生じさせる。この実施形態は、流量を測定するだけでなくネブライザ内の流れ方向を測定する利点を有する。
【0103】
制限オリフィス
図39および図40を参照すると、ベンチュリ管と同様、流量を測定する制限オリフィス方法は、測定可能な圧力降下を強制的に生じさせるよう横断面積の変化を用いる。ベンチュリ実施形態とは異なり、制限オリフィス188は、断面積の急変であり、それにより圧力の大きな変化をもたらすことができる。しかしながら、制限オリフィスが結果として、エーロゾルの大きな加速を生じさせるとともに流路を乱す。加うるに、断面積の急変は、エーロゾルの衝突を増大させることがある。ベンチュリ流量測定とは異なり、制限オリフィスは、双方向圧力測定をもたらす。制限オリフィスは、患者/ユーザ183と任意の弁装置または漏れ部との間に位置決めされ、その結果、制限オリフィスは、患者の肺に出入りする流量を測定するようになっている。
【0104】
図40に示されているように、ユーザ183は、自分の口腔内にマウスピースを位置決めしている。理解されるべきこととして、同じことが本明細書において開示する他の全ての実施形態に当てはまり、このことは、これらの実施形態もまた使用中、ユーザの口の中に位置決めされることを意味している。
【0105】
ウェッジフロー測定
図41および図42を参照すると、制限オリフィス実施形態に類似しているが、流路の一方の側部は、例えばマウスピース12の円筒形流路内において三角形断面またはウェッジ190で制限されている。この断面は、制限オリフィスよりも低い圧力差を生じさせ、したがって、流れを乱す程度が小さい。この実施形態は、低いレイノルズ数を有する空気流(層流)に適応できる。制限オリフィスの場合と同様、この実施形態は、流量を測定する双方向の方法を提供する。一実施形態では、流れ制限部が1つには流れがネブライザ内におけるこの箇所では最も小さな乱流であるので、円筒形の形を有するマウスピース内に配置される。
【0106】
光利用方法
反射率‐内部
図43を参照すると、光源108およびセンサ106は、互いに隣接して配置されるのが良いが、不透明材料によって互いに隔てられており、その結果、光源からの直接的な光がセンサに達することができないようになっている。光源とセンサの両方は、流れに応答して動くネブライザのコンポーネントに向かって同一方向に差し向けられており、部材が動く程度は、流量で決まる。例示目的で、既存の吸息弁192および呼息弁194を用いる実施形態について説明する。患者が装置を通した呼吸をしていない場合、弁は閉じられ、光の大部分は、弁で反射されて光センサに戻る。吸息時、吸息弁192は、流れに応答してカールし、幾分かの光が吸息窓を通過するようになり、幾分かが依然として反射してセンサに戻される。吸息流量が増大すると、弁のカール角度が大きすぎるほどになり、反射して光センサに戻される光の量が少なくなる。同じプロセスは、呼息時に呼息弁194が呼息流により弁座から離れるときに起こる。流量と各光センサにより受け取られる光の強度との関係を求めることができる。この実施形態は、吸息弁からの反射率の減少が吸息流量を指示するので、そしてまたこの逆の関係が成り立つので、流れ方向を突き止めることができるという利点を有する。この実施形態および方法は、既存の吸息および呼息弁に限られることはなく、流れに応答して動き、運動の程度が流量で決まる任意のコンポーネントに拡張可能である。この実施形態および方法は、光の全ての波長および全ての濾波方法に利用できる。
【0107】
シャインスルー(Shine Through)
図45Aおよび図45Bを参照すると、光源108とセンサ106がコンポーネント192の互いに反対側に配置されており、コンポーネント192は、流れに応答して動き、センサに達する光の強度を制限する。光源は、周辺光であっても良くあるいは例えばLEDのような源によって生じたものであっても良い。これはまた、光の全ての波長に適応でき、可視スペクトルには限定されない。流量の増大につれ、可動コンポーネントによる運動度が増大する。これにより、増大した量の光が通過してセンサまで至ることができる。光源によって記録される光強度と流量との間に関係を求めることができる。反射率‐内部実施形態について説明したように、既存の吸息および呼息弁(図46)を用い、光センサがこれら弁に対向して配置され、その結果、吸息および呼息時、弁の運動により光が通過して光センサに至ることができるようになっている。
【0108】
振動部材
図47A図47Cを参照すると、不透明な振動コンポーネント200が流路112内に配置され、光源108とセンサ106が各側に配置されている。流れが存在する場合、振動コンポーネントが流量に特有の振動数で動く。コンポーネントの振動は、光源とセンサとの間の経路を定期的に遮断する。この振動コンポーネントの振動数を流量に関連付けることができる。振動要素、例えばリード200を用いることができる(リード200は、一実施形態では左右に(図47B)に動く)または回転コンポーネント202(図47C)、例えばピンホイールを用いることができる。しかしながら、この実施形態/方法は、これら2つの振動コンポーネントには限定されず、これとは異なり、流れの存在下において設定振動数で運動し、定期的にセンサへの光の伝送を遮断する任意のコンポーネントに利用できる。
【0109】
温度利用方法
熱線風速計
図48を参照すると、ワイヤ204が電子的に加熱して流路112内に配置されている。空気がワイヤ204を通り過ぎると、ワイヤは、冷却され、ワイヤの抵抗が変化する。温度変化を測定するために用いられる回路は、定電流定電圧またはパルス幅変調形態であるのが良い。全ての方法が温度変化を効果的に測定し、かかる方法を実験により空気流量に関連付けることができる。この実施形態は、装置内に位置決めされる任意のサーミスタまたは熱電対を含むことができる。
【0110】
薄膜温度センサ
図49Aおよび図49Bを参照すると、薄膜センサ206が装置の内面または外面上に(流路内ではなく)、例えば底部ハウジング14の外側上に配置されている。空気がネブライザ内で流れているとき、空気は、装置の表面を冷却し、熱線風速計形態の場合と同様、それによりマイクロコントローラ148によってモニタできるセンサ内の抵抗の測定可能な変化が生じるが、これには限定されない。この実施形態は、ネブライザの温度がエーロゾルの存在に関連し、そして応答時間が遅い場合があることを考慮に入れなければならず、と言うのは、装置の表面上に配置された薄膜によって検出されるべき温度変化について、熱移動がこの装置の本体内で生じなければならないからである。
【0111】
ひずみ/フレックスセンサ
撓み
図50を参照すると、空気流経路112中で要素208を通り過ぎて流れる空気は、この要素に力を及ぼす。空気流の増大はまた、及ぼされる力を増大させ、と言うのは、粒子は、これらが当たるときに、これらが及ぼす力に直接関連付けられる大きな加速度を受けるからである。フレックスセンサ208を空気流路中に配置することによって、フレックスセンサの撓みのレベルに基づいて空気流量を計算することが可能である。撓みのレベルは、実験により流量に関連付けられる。
【0112】
これは、吸息および呼息流に対応する既存の吸息および呼息弁にも利用でき、これらの撓みレベルは、ネブライザに入りまたはこれを出る流れに関連付けられる。ひずみゲージがこれらの撓みレベルを測定するために既存の弁表面上に印刷されるのが良く、次に、かかる撓みレベルを流量に関連付けることができる。変形例として、既存の弁はこれら自体、流量および流れ方向を制御するフレックスセンサで置き換え可能である。
【0113】
フレックスセンサは、抵抗利用型のものであっても良く、または圧電材料で作られても良い。抵抗利用実施形態では、センサの撓みにより、抵抗の変化が生じ、この抵抗の変化を種々の方法を用いて制御ユニットによってモニタすることができる。圧電実施形態では、センサの撓みは、撓みの大きさに比例した電圧を生じさせる。
【0114】
ダイヤフラムに加わるひずみ
図51Aおよび図51Bを参照すると、一実施形態では、1つまたは複数のひずみゲージ128が可撓性部材の受けるひずみを測定するためにネブライザの付勢要素20、例えばダイヤフラムに組み込まれている。付勢素子は、シリコーンダイヤフラムにより形成されるばね幾何学的形状であるのが良い。吸息時、ダイヤフラム20は、内圧の変化に応答し、かかるダイヤフラムは、アクチュエータを起動させるために引き下げられる。吸息空気流の増大により、真空圧力の増大が生じ、アクチュエータの位置がたとえノズルカバーによって拘束されても、ダイヤフラムは、連続的に引き下げられてさらにひずみが加えられる。受けるひずみのレベルを吸息流量に関連付けることができる。呼息時、装置内には与圧の発生が生じ、これはまた、ダイヤフラムにひずみを加え、呼息流量に関連付け可能である。この実施形態を起動/起動解除検出と関連して用いると、ネブライザシステムは、流量および流れ方向を突き止めることができる。
【0115】
振動
図52および図53を参照すると、振動コンポーネント210が空気流路112内に配置され、この振動コンポーネントは、流量に比例した振動数で振動する。このコンポーネントは、撓み時にインピーダンスを変える抵抗型フレックスセンサまたは撓み時に電圧を発生させる圧電材料で構成されるのが良い。振動の振動数は、この振動数を実験により求められた関係式により流量に関連付けることができる制御ユニットによってモニタされるのが良い。
【0116】
タービン流量計
図54を参照すると、ロータまたはピンホイール212が流路112内に配置されている。流れによりロータまたはピンホイールは、流量に関連付けられた周期数で回転する。タービンの回転速度を多くの方法で、例えばホール効果素子により測定することができ、それにより通過中のロータブレード、接触スイッチ、または光カーテンの破断を検出することができる。タービンの回転速度を求めることは、本明細書において記載した方法に限定されないことに注目することが重要である。この方法は、これが相当大きな圧力降下を生じさせることがないので有利である。しかしながら、タービンをエーロゾル経路中に配置することにより、エーロゾル衝突度が高くなりかつ薬剤出量が減少する場合がある。
【0117】
変位
図55を参照すると、変位を測定する全ての方法は、少なくとも2つの共通要素、すなわち、(1)吸息および呼息流に応答しない静止コンポーネント212、および(2)吸息および呼息時に一軸方向に動く可動コンポーネント214を有する。種々の実施形態は、第3の要素、すなわち、(3)静止コンポーネントと可動コンポーネントを互いに連結する連結コンポーネント、例えば可動コンポーネントを空気流の存在しない場合に定常状態位置に戻すばね216(線形または非線形)を含むのが良い。吸息時、空気の流れは、可動コンポーネントを静止コンポーネントに対して動かす。流量が大きいと、生じる変位が大きく、というのは、空気流は、これが可動コンポーネントに当たったときに大きな減速度を受け、かくして大きな力が及ぼされるからである。この形態は、用いられるばねの形式に応じて一方向または双方向運動を可能にすることができ、それにより一形態は、吸息流量と呼息流量の両方を測定することができる。図61に示されているように、変位は、好ましくは、空気経路中、例えばマウスピース内におけるユーザ/患者と任意の逸脱部との間の領域228で測定される。
【0118】
以下に開示する種々の実施形態では、変位流量測定技術は、局所流れの測定を利用しており、しかも代表的には、口腔インターフェースと空気流経路中の逸脱部との間に位置決めされる。漏れならびに呼息および吸息経路は、これらの逸脱部の例である。検出ユニットをこの領域内に配置することによって、患者の受ける空気流を直接測定することができる。検出素子は、ネブライザシステム内のどこかの場所に配置できるが、患者の受ける流量の直接的な測定はもはや行われない。
【0119】
ホール効果
図56を参照すると、ホール効果センサ212が静止位置に位置しており、可動コンポーネント214は、磁気材料で構成されている。ばね216が2つのコンポーネントを互いに連結している。吸息時、流れが力を磁気要素に及ぼし、これをホール素子に近づけ、そして測定可能な磁界の変化を生じさせる。この変化を磁気コンポーネントの変位に、かくして空気流量に関連付けることができる。呼息時、磁気要素は、ホール効果からさらに遠ざかる。上述の実施形態は、磁気要素が吸息時に近づき、呼息時に遠ざかる状態を説明しているが、向きが逆であっても同一の仕事が達成される。
【0120】
キャパシタンス
図57を参照すると、キャパシタンススイッチ/近接センサ方法もまた、静止コンポーネントに対する可動コンポーネントの変位を求めるよう使用できる。2枚の互いに平行なプレート212,214は、一方のプレート212がネブライザの「静止」コンポーネント(呼吸サイクルに応答して動くことがない)上に配置され、もう一方のプレート214が可動コンポーネント上に配置されるよう位置決めされ、これら2枚のプレートは、非導電性付勢要素、例えばばね216によって互いに連結されている。これら平行なプレート相互間のキャパシタンスは、自由空間の誘電率、隙間内の材料の誘電定数、プレートのオーバーラップ面積およびプレート相互間の距離で決まる。これらプレートのオーバーラップ面積、自由空間の誘電率および隙間中の材料の誘電定数が固定されている領域内にプレートが位置決めされた場合、キャパシタンスの変化は、これらプレート相互間の距離の変化に起因しており、かかる距離は、空気流量に関連付けられる。ホール効果実施形態の場合と同様、これは、単一の形態を用いて吸息流量と呼息流量の両方を測定することができ、ただし、多数の形態を適宜使用することができる。この実施形態は、好ましくは、空隙中の材料の誘電定数が普遍である場合に使用され、したがって、空隙は、好ましくは、エーロゾル経路またはプレートがエーロゾルから遮蔽される空間内には配置されない。キャパシタンスをオシレータまたは充電/放電回路でモニタすることができ、周波数の変化は、流量を指示する。
【0121】
インダクタンス
図58を参照すると、導電性素子が変位センサの可動コンポーネント214中に組み込まれている。対応のコイル212がコンポーネントの動く経路周りにまたはこの近くに配置され、ネブライザシステムの残部に対して静止している。変形例として、コイルは、可動であっても良く、導電性素子は、静止状態にある。吸息時、可動コンポーネントは、静止コンポーネントに対して動く。高周波電流をループに通して電界を生じさせる。可動コンポーネントの導電性素子をループに近づけまたはこれから遠ざけると、ループ内のインピーダンスの測定可能な変化が生じる。インピーダンスのこの変化は、センサの変位に直接関連付けられる。これはまた、流量に関連付けられる。
【0122】
リードスイッチ
図59および図60を参照すると、リードスイッチ実施形態に関し、磁気コンポーネント218が静止表面220に対して可動であるように作られかつ付勢要素216によって連結されている。磁気要素を変位させているとき、これは、リードスイッチ224の連続体222の状態を変化させ、これらリードスイッチは、スイッチの起動または起動解除を可動素子の変位に関連付けることができるよう位置決めされている。この原理は、任意の数のリードスイッチに適用できるとともにスイッチを起動しまたは起動解除する磁気要素に適用できる。この場合、この変位を流量に関連付けることができる。
【0123】
電位差計
図60を参照すると、可動コンポーネント226が電位差計に接続されており、その結果、可動コンポーネントの変位時、この可動コンポーネントは、電位差計のインピーダンスを変化させるようになっている。単純なホイートストンブリッジ回路およびマイクロコントローラを用いて抵抗をモニタすることができる。インピーダンスのモニタは、この基本回路に限定されないことに注目されたい。
【0124】
振動/加速度
図62および図63を参照すると、音利用方式と同様、呼吸可能なサイズの粒子を生じさせるよう設計されているネブライザ内の蛇行流は、空気流を不規則な尖っていない幾何学的形状周りに強制的に向けているときに乱流を生じさせる。これら表面に当たる空気流およびエーロゾル粒子は、力をネブライザに及ぼし、それにより装置は、極めて小さい振幅でかつ高い振動数レベルで振動する。加速度計230を装置の表面上に配置することによって、この振動を測定することが可能である。この概念は、一軸、二軸、および三軸加速度計に拡張可能である。マイクロコントローラ148が加速度計からのデータをサンプリングしてその分析を実施する。この分析をマイクロコントローラ中にプログラムしても良くあるいは大きな処理電力を備えた外部ユニットに伝送しても良い。信号を時間ドメインと周波数ドメインの両方で多くの方法によって分析することができ、それにより装置を通る空気流に関連付けることができる加速中のパターンを検出することができる。加速度計は、患者による装置の運動により生じ、場合によっては運動アーチファクトと呼ばれている加速度を記録することができる。代表的には、運動アーチファクトは、低周波数であり、広域フィルタを用いてかかる運動アーチファクトを除去することができる。空気流により生じる振動は、高い周波数のものであってこれを周波数ドメインで運動アーチファクトから分離できることが見込まれる。
【0125】
この実施形態は、振動コンポーネントにより生じる加速度の測定を含むよう拡張できる。上述の発生した音を利用する方法と酷似して、コンポーネントを通過する流量に比例した振動数で振動するコンポーネントを追加することができる。音利用方法とは異なり、振動コンポーネントは、音を生じさせず、振動が装置または加速度計に直接伝えられて振動の大きさおよび振動数を測定する。これはまた、流量に関連付け可能である。
【0126】
〔空気供給圧力およびノズル流量〕
図64および図65を参照すると、圧力および装置に供給されている空気流を求めることは、薬剤出力および送り出しレートの正確な計算にとって重要である。2つのパラメータを分離することができず、と言うのは、これら両方とも、薬物出力レートおよび粒径に寄与するからである。病院によって用いられる壁または中央空気供給源は、一般に、50psiを送り出すことができる。しかしながら、種々のネブライザは、ユーザまたは介護者に流量が7~8L/minになるまでダイヤルを回して圧力を下げる命令を出すことができる。ネブライザはまた、ネブライザ圧縮機236で働くよう構成されているのが良く、かかる圧縮機としては、トルーデル・メディカル・インターナショナル社のOMBRAテーブル・トップ・アンド・ポータブル(OMBRA Table Top and Portable)型圧縮機が挙げられる。これら供給コンポーネントにより、圧力または流量を減少させることが必要ではなく、と言うのは、これらは、これらの最大性能で動作するよう構成されているからである。同一コンプレッサで動作する装置相互間のノズル流量の差は、ノズルオリフィスサイズおよびフラッシュのばらつきに起因している。圧力と流量の両方を知ることは、粒径が圧縮空気供給源により供給されるエネルギーに依存しているので重要である。圧縮機が同一のノズル流量を有するが一圧縮機が高い圧力を有する状況では、高圧圧縮機は、潜在的に、他の要因が全て同一であるとすると、細かい粒子を生じさせ、と言うのは、かかる高圧圧縮機は、表面積を増大させるよう液体に伝わる高いエネルギーを有するからである(液滴生成)。
【0127】
ノズル圧力および流量を直接測定することができまたは推定することができる。圧縮空気供給源およびノズルオリフィスと一致した直接測定を利用することができまたは空気供給圧力および流量に関連付け可能な測定をネブライザシステム内のどこか他の場所で行うことができる。
【0128】
圧力を直接測定する実施形態および方法は、好ましくは、特に圧縮機を用いて50[psi]最大動作圧力よりも十分低く動作するネブライザ内に圧力の相当な永続的損失を生じさせないよう構成されている。
【0129】
直接圧力測定
絶対または大気圧に対して相対的
図66および図67を参照すると、圧力利用方式‐流量測定項目において説明したように、圧力センサ232が空気供給源、例えば管234と一線をなしてネブライザに配置されるのが良く、この圧力センサは、装置内の絶対圧力を測定し大気に対して第2のセンサ236を追加した状態で、大気圧に対する圧力を測定することができる。圧力センサは、ノズル内の配置には限定されず、管234それ自体内に配置することも可能である。
【0130】
ひずみゲージ
図68を参照すると、圧縮供給空気を運ぶために用いられる柔軟性ホース234に設けられているひずみゲージ128を用いると、ネブライザに供給される圧力を測定することができる。一実施形態では、ひずみゲージは、ネブライザを壁に設けられているエア部(wall air)または圧縮機に連結するために用いられる管上に配置される。管が加圧されると、これは、引っ張り状態になって拡張する。この拡張をひずみゲージで測定することができ、そして物理的またはワイヤレス通信により制御ユニットに伝送することができる。
【0131】
直接流量測定
圧力
流量測定‐圧力利用方式の項目に記載された全ての流量測定技術は、インライン型流量測定技術として利用できるが、これらの全ての結果として、永続的な圧力損失の種々の程度を回避する必要がある。この方法はまた、外部環境にさらされる第3のセンサの追加により下流側の圧力センサの読みまたは大気に対する圧力をモニタすることによって絶対圧力を提供することができる。
【0132】

流量測定‐飛行時間/通過時間の項目に記載されている内容は、ネブライザに適用される空気流量の測定に当てはまる。センサは、管取り付け部とネブライザの出口オリフィスとの間のどの場所にも配置できる。
【0133】
温度
流量測定‐温度利用方法の項目に記載されている内容は、ネブライザに適用される空気流量の測定に当てはまる。センサは、管取り付け部とネブライザの出口オリフィスとの間のどの場所にも配置できる。
【0134】
タービン
流量測定‐タービン流量計の項目に記載されている内容は、ネブライザの加圧ガスオリフィスを出る空気流量の測定に当てはまる。センサは、管取り付け部とネブライザの出口オリフィスとの間のどの場所にも配置できるが、この方法の結果として、永続的な圧力損失が生じる場合がある。
【0135】
推測圧力/流量測定
推測圧力および流量計算は、圧力または流量の直接的な測定値をもたらすことができないが、圧力と流量の組み合わせの範囲により導入される計算エラーが統計学的に有意ではない場合にこれらを推定することができる。圧力および流量の推論的測定は、圧力と流量とを区別することができず、と言うのは、これらパラメータを各々の直接的な測定なしでは互いに分離することができないからである。したがって、圧力だけが流れの駆動手段である場合に以下の方法において圧力だけを参照する。一定圧力での流量の変動は、加圧ガスオリフィス寸法および存在するフラッシュのレベルのばらつきの結果である。
【0136】
固有音
加圧空気が供給されてドライ状態で作動されているとき、ネブライザは、オリフィスを出る加圧ガスに特有の音を生じさせる。音を用いた流量測定の場合と同様、音は、オリフィスを出る流れおよび装置内の蛇行した経路をたどる空気により生じる結果としての乱流で決まる。圧力の増大により、音強度の可聴増大が生じ、音の周波数内容に影響が及ぼされる場合がある。単一または多数のマイクロフォンを用いると、ネブライザの音をモニタすることができ、その後、処置を施して空気供給源空の圧力/流量を確立する。データがワイヤレスで伝送され、そして既知の性能特性を備えた音プロフィールの既知のライブラリと比較されるローカル制御ユニットまたはリモート制御ユニットを用いて音を分析することができる多くの分析技術が存在する。
【0137】
振動/加速度
振動/加速度‐流量測定の項目の場合と同様、加速度計を用いてエーロゾル化に先立ってネブライザの振動を測定することができる。これら振動は、ネブライザに供給されている圧力/流量の指標を提供することができ、各圧力/流量は、特有の加速シグナチャを有する。上述の振動/加速度‐流量測定の項目は、かかる実施形態および方法の具体化に関する詳細を提供している。
【0138】
装置を通る流量
流量測定/呼吸パターンの項目で説明した全ての実施形態および方法を用いると、ネブライザに供給されている圧力/流量を測定することができる。患者が装置とインターフェースしていない状態で装置がドライ状態で作動されている間に取られる流量測定値は、ネブライザに供給される圧力/流量を表わしている。圧力および流量の局所測定値を実験的検査によって加圧ガスオリフィスを通る流量に関連付けることができる。次にこれら流量測定値を供給された圧力/流量のデータベースおよびこれらの対応の局所流量測定値と比較することができる。
【0139】
空気がバッフルに当たる力
一実施形態では、バッフルは、ロードセルで構成されている。加圧空気がネブライザに供給されると、加圧空気は、加圧ガスオリフィスから出てバッフルに当たり、それにより流量に比例した力をバッフルに及ぼす。制御ユニットは、この力をモニタして実験的に求められた関係により装置に供給されている圧力/流量を計算することができる。加うるに、このシステムを用いると、制御ユニットを低エネルギー状態から起こすことができ、と言うのは、加圧ガスを治療が起こるようにするためにネブライザに供給しなければならないからである。これは、システムのエネルギー要件を緩和し、ユニットが電池式である場合、電池寿命を延ばすのを助ける。感圧センサもまた、ロードセルに代えて使用できる。
【0140】
互換性のあるスマート圧縮
空気供給圧力および流量をモニタするスマートネブライザシステムを提供する別の方法は、スマートネブライザと互換性のある一連の圧縮機を市場に出すことである。これら圧縮機は、種々の手段により供給圧力および流量をモニタし、そしてこのデータをネブライザに伝送する。このデータをワイヤレスでネブライザに、または総合制御ユニット、例えばスマートフォンに直接伝送することができる。データはまた、酸素管を通って延びる物理的接続手段、例えばデータケーブルによって、またはネブライザをデータ同期のために圧縮機に設けられているポート内に配置することによって伝送できる。データ伝送は、これら方法に限定されないことに注目されたい。
【0141】
〔薬物識別〕
スマートネブライザシステムは、患者に投与されている薬物を認識することができるべきである。この情報は、患者、保健医療提供者および保険業者にとって重要であり、と言うのは、この情報は、治療方式を順守することを保証するからである。加うるに、噴霧化されている薬物を知ることもまた、呼吸可能なフラクションを計算する上で重要である。通常噴霧化される薬物のうちの多くは、溶液であって似たような粒径を生じさせるが、薬物の中には、ネブライザが発生させることができる粒径に影響を及ぼす種々の物理的特性、例えば粘度を有するものがある。薬物識別は、包装に基づく識別から薬物の化学分析までの範囲にわたる種々の仕方で達成できる。以下に列挙する個々の方法の各々を用いると、薬物を識別することができまたはこれら方法の組み合わせを用いると、薬物識別特徴のロバストネスを向上させることができる。
【0142】
画像処理
既存の包装材バーコード
図76を参照すると、幾つかの薬物包装材240(箱およびネビュール(nebule))は、バーコードスキャナにより読み取り可能な既存のバーコード238を有する。バーコードスキャナは、スマートネブライザ10それ自体の中に組み込まれても良く、スマートネブライザと通信状態にある電話利用アプリケーションに組み込まれても良く、あるいはブルートゥース(登録商標)によりスマートネブライザシステムと通信することができるスタンドアロン型読み取り装置に組み込まれても良い。
【0143】
供給バーコード
既存の包装材バーコードの項目の記載と同様であるが、既存のバーコードを利用しないで専用バーコードがユーザ、販売業者または製造業者によって薬物上に配置されても良い。この実施形態および方法は、このバーコードを備えた任意の薬物を使用のために事前承認されるようにする。
【0144】
テキスト認識
テキスト認識ソフトウェアは、薬物包装材上に書かれたテキストを認識して利用可能な情報を識別することができる。
【0145】
特徴認識
包装材の画像を互換性のある薬物のデータベース上の画像カーネルと比較する。捕捉した画像と全ての画像カーネルとの相関係数を計算して最も大きな相関係数に基づいて薬物を識別するのが良い。他の照合アルゴリズムが利用可能であり、これらを用いることができる。
【0146】
QRコード(登録商標)
この方法は、QRコード(登録商標)がバーコードに代えて用いられていることを除き、供給バーコードとほぼ同じである。
【0147】
RFIDまたはNFC装置
図77および図78を参照すると、無線認証(RFID)タグ242または他の近距離無線通信(NFC)コンポーネントを薬物包装材240中に取り付けまたは組み込むことができる。識別コンポーネント242をスマートネブライザ10それ自体またはスマートネブライザと通信状態にあるスタンドアロン型装置に設けられた読み取り装置244によって認識されるのが良い。変形例として、多くのスマートフォンには、NFC機能が組み込まれている。これらスマートフォンを用いると、薬物を認識することができるとともにネブライザと通信することができる。
【0148】
患者電子医療記録(EMR)へのアクセス
図78を参照すると、患者の電子医療記録(EMR)に直接Wi‐Fiアクセスまたはインターネットによりアクセス可能な装置とワイヤレス通信によりスマートネブライザシステムによってアクセスすることができる。患者に噴霧可能な多数の薬物が処方されている場合、別の識別方法が選択できる薬物のサブセットを供給することができる。
【0149】
ユーザによる手動選択
患者によって用いられている薬物を自動的に検出するのではなく、ユーザは、自分が用いている薬物を手動で入力することができる。これは、装置それ自体でまたはスマートネブライザと通信状態にあるスタンドアロン型装置で行える。患者が患者の薬物を入力するために利用できる多くの方法、例えばドロップダウンリストまたは調査可能なデータベースが存在する。変形例として、チャットボットを用いても良い。これは、自動化支援を用い、この自動化支援は、チャットウィンドウ型インターフェースを用いて患者に一連の質問をし、患者は、自然な言語を用いて応答することができ、ユーザインターフェースをナビゲートする必要はない。
【0150】
キャパシタンス
2つの互いに逆に帯電した特徴部が空隙によって互いに隔てられている。起動時、エーロゾルは、隙間を通って流れる。エーロゾルが互いに異なる誘電定数を有すると仮定すると、空隙中のエーロゾルによって生じるキャパシタンスの変化を測定して互換性のあるエーロゾルのキャパシタンス値のデータベースと比較するのが良い。変形例として図71に示されているように、2つの逆に帯電した特徴部246,248を薬物ボウルまたはリザーバの各側に配置しても良く、その結果、薬物がネブライザ中に挿入されると、薬物は、これら特徴部相互間の空間を満たすようになる。薬物の誘電定数が測定可能に異なっていると仮定すると、薬物を識別することができる。容量プローブもまた、液体薬物内に直接配置するのが良い。
【0151】
単一薬剤ネブライザ
ネブライザ内で用いられている薬物を識別するのではなく、ネブライザを単一の薬物に関する情報でプログラムするのが良く、そしてこの薬剤についてのみ使用できるよう販売するのが良い。ネブライザが多数の薬剤に使用される恐れを減少させるため、薬物であらかじめ充填された状態にし、そして追加の薬物を容易に挿入することができるポートを備えていない1回使用装置であるのが良い。ネブライザの電子部分は、取り外し可能であり、使用の度に、ネブライザの使い捨て部分を破棄する。ネブライザ内の薬剤に関する情報を低コストコンポーネント、例えばEEPROMチップ(これには限定されない)中にプログラムするのが良く、そしてドッキング時にネブライザの再使用可能な部分によってアクセス可能であるのが良い。
【0152】
分光学的薬剤ID/色
図79図80Bを参照すると、単一または多波長分光検査法を用いると、エーロゾルまたは液体薬物を分析してその科学的構造を決定することができる。全ての化学物質は、光の特有の波長を吸収し、これら化学物質が光を吸収する程度は、これらの化学構造中に存在する結合で決まる。単一または多波長の光源108をエーロゾルまたは液体薬物を通して光らせるのが良く、そして吸光度を光源と反対側に配置された検出器によって分析するのが良い。次に吸光度情報を互換性のある薬剤のデータベースと比較するのが良い。光源および検出器は、液体の分析のために、エーロゾル経路に沿う任意の場所に、例えば、マウスピース(図80B)または薬物ボウル(図80A)内に配置されるのが良い。これは、事実、薬物の色の分析であるが、色は、吸光度ではなく物質によって反射されるものの尺度である。
【0153】
pH
図82を参照すると、各薬物のpHを用いると、薬物を識別するのを助けることができまたは別の識別方法の選択可能な薬物のサブセットを選択することができる。噴霧化薬物は、これらをこれらの釣り合いを取って中性に近づけるためにpH調整される場合が多いが、薬物相互間には差が依然として存在する。この一例は、アセチルシステインとアルブテロールの区別である。薬物が別の方法によりこれら2つの薬物まで絞り込まれると仮定すると、pHを用いてこれらを区別することができ、と言うのは、アセチルシステイン溶液が6.0から7.5までの範囲にわたるpHを有し、これに対し、アルブテロール溶液は、典型的には、3.0~5.0だからである。
【0154】
一実施形態では、pHセンサ250が薬物ボウル46内に配置され、ここで、pHセンサは、液体と接触関係をなす。センサは、水素イオン濃度の差に起因して液体のpHを測定することができる。センサは、これをマイクロコントローラに伝え、マイクロコントローラは、薬物または薬物のサブセットを実験的に求められたpH読みおよび薬物のデータベースから選択することができる。
【0155】
濃度識別
スマートネブライザが任意の時点で薬物ボウル内の薬物濃度を測定することができれば有利である。薬物の識別は、濃度についての情報をもたらすことはなく、濃度を知ることは、薬剤出力を計算するために必要である。薬物が識別されたときに薬物濃度が得られた場合であっても、ボウル内の薬物の濃度が治療中に増大し、その結果として、薬剤出力レートが増大することが通例である。以下の方法を上述した薬物識別方法と関連して使用しても良くまたは使用しなくても良い。
【0156】
キャパシタンス
図97を参照すると、薬物が既に識別されていると仮定すると、任意の時点における薬物の特定のキャパシタンスは、濃度に関連付け可能である。キャパシタンスが既に識別されている場合、初期濃度は、初期キャパシタンスから測定可能である場合がある。薬物の誘電特性がこれらを希釈する水性混合物とは異なることが想定される。ネブライザによる治療が進展するとともに薬剤がネブライザボウル内で濃縮状態になると、薬物の濃度の増大に起因して全体的誘電定数の変化が生じる場合がある。これは、互いに逆に帯電した絶縁状態の互いに平行な特徴部によって測定できる。充電/放電回路を用いると、キャパシタンスを検査することができ、そしてこれをマイクロコントローラによってモニタすることができる。一実施形態では、キャパシタンスプローブがノズルおよびノズルカバーの最も下の区分中に組み込まれ、ノズルの外面とノズルカバーの内面は、互いに逆に帯電した特徴部として働く。これら相互間の隙間は、この隙間が常時流体のレベルの下に位置するとともにこれら相互間の距離は不変であるように位置決めされる。別個の容量型プローブもまた、薬物ボウルの底面中に組み込まれるのが良い。プローブは、好ましくは、互いに逆に帯電した特徴部相互間の空気の存在がキャパシタンスに悪影響を及ぼす場合があるので、薬物中に浸漬される。
【0157】
分光検査法/色
図99を参照すると、分光検査法/色を用いた薬物識別の場合と同様、単一または多波長分光検査法を用いると、液体を分析してその化学構造ならびに各成分の相対濃度を求めることができる。全ての化学物質は、光を1つの程度までまたは別の程度まで吸収し、化学物質がこれらを吸収する程度は、これらの化学構造中に存在する結合で決まる。単一または多波長の光源を液体薬物越しに光らせるのが良く、そして吸光度を光源と反対側に配置された検出器によって分析するのが良い。次に吸光度情報を互換性のある薬剤のデータベースと比較するのが良い。光源および検出器は、薬物ボウル内に配置されるのが良く、その結果、液体は、存在する場合にはこれらの間を通過することができる。各化合物の濃度は、相対吸光度測定において反映されるはずであり、より濃度の高い化合物は、光を多く吸収することができる。これは、事実、薬物の色の分析であるが、色は、吸光度ではなく物質によって反射されるものの尺度である。
【0158】
光透過
図86を参照すると、検出された波長および吸光レベルの詳細な分析の代わりに液体を透過する光の相対強度を分析することを除き、分光検査法/色技術とほぼ同じである。一実施形態では、光透過装置/方法は、赤外線が患者によって見えないので、赤外線透過だけを見ることができる。センサ262が透明/半透明なボウルの下に位置決めされるのが良く、光源264がボウル内に位置決めされ、光が液体を通過する。
【0159】
導電率
図100を参照すると、導電率もまた、薬物の濃度を測定するために使用できる。多くの噴霧化薬物は、酸および塩基を使用してpHを釣り合わせ、それにより帯電粒子を液体に導入する。これら耐電粒子の数は、液体の導電率に直接関連付けられ、と言うのは、電流が多量の耐電粒子の存在下で容易に電導することができるからである。これは、pHの測定に関連付けられるが、薬物中の全てのイオンを考慮に入れ、他方、pHは、水素イオンのみの尺度である。導電性センサは、容量変化または誘導変化によって導電率を測定する傾向がある。好ましくは、センサの活性領域は、薬物ボウル内に配置され、その結果、これは、液体薬物中に連続的に浸漬される。
【0160】
pH
図85を参照すると、薬物の濃度変化の結果として薬物中の水素イオンの数が変化する場合、pHを濃度に関連付けることができる。pHプローブ250は、液体と接触関係をなして薬物ボウル内に配置されるのが良く、これをマイクロコントローラ148でモニタすることができる。この測定は、初期濃度を算定するためにしようすることはできず、濃度の変化だけを測定することができるということに注目されたい。と言うのは、大抵のネブライザ薬物は、pHが中性に近くなるまで酸および塩基の追加によって釣り合わされるからである。
【0161】
飛行時間
図98を参照すると、薬物が既知である場合、変換器300と受信機302との間における飛行時間に基づいて濃度を識別することができる。プローブ304が薬物ボウル内に配置されており、このプローブは、互いに向かって方向付けられるとともに空隙によって互いに隔てられた変換器と受信機を有する。プローブは、薬物がボウル内にあるときにプローブが常時浸漬されるよう配置される。変換器と受信機との間の空隙は、測定精度に影響を及ぼす。超音波振動数の音のありかたは、このクレームに適用可能な全ての振動数によって用いられる場合が多い。プローブは、音が変換器から受信機に移動するのに要する時間を測定する。変換器と受信機との間における薬物の濃度は、音波の伝搬速度に影響を及ぼす場合がある。マイクロコントローラは、飛行時間をモニタし、これを実験的に求められた値のデータベースから濃度に関連付ける。
【0162】
手動エントリ
初期薬物濃度をこれが患者によって知られている場合に手動でネブライザ中に入力することができる。これは、装置それ自体でまたはネブライザと通信することができるスタンドアロン型装置で実施できる。この実施形態および方法は、濃度が変化しまたは治療の持続時間がそれほど長くはない薬物療法に特に有用である場合がある。
【0163】
粒径測定
粒径分布状態は、患者に送り出される用量を計算する上で、重要な要因である。これは、0.4[μm]~4.7[μm]の呼吸可能な粒子範囲が存在するからである。この直径を下回る粒子は、小さすぎるので気道内には堆積せず、これら粒子は、呼気により失われ、他方、この範囲を上回る粒子は、これらの慣性が極めて大きいので下気道中への回旋状経路をたどることができないので上気道内に衝突する。上気道内に衝突する薬剤は、患者には利用できない。患者に送り出される用量は、薬剤出力と呼吸可能フラクションとも呼ばれている呼吸範囲内の粒子のフラクションの積である。ネブライザの粒径を入口圧力および流量ならびに吸息流量に基づいて特徴付けてこれらの関係をスマートネブライザシステムにより調査可能な電子データベース内にコンパイルすることが可能である。しかしながら、ネブライザ内に直接存在するエーロゾルの粒径分布状態を直接測定し、別のレベルの不確実性を用量送り出し計算に導入することがないようにすることが有利である。
【0164】
光回折測定
図69および図70を参照すると、粒径分布の光回折測定は、粒子の形状がほぼ球形であることを前提としている。ほぼコリメートされた(平行である)光源266からの単色光は、エーロゾルが吸息経路に沿って流れているときにエーロゾルを照らす。光がエーロゾル経路全体を照らしているときに、この光は、光を回折させるエーロゾル液滴を通過する場合があり、または通過しない場合がある。回折角度は、粒径で決まり、サイズの等しい粒径は、光を均等に回折する。光源266の反対側でエーロゾル経路の他方の側にはフーリエレンズ268が設けられ、このフーリエレンズは、回折角によって受けとった光ビームを分離してこの光をこの後ろに位置する検出器270上に収束させる。同一角度で回折した通過光は、検出器の中心から等距離を置いたところに位置する検出器の部分上に収束される。これにより、光がエーロゾルによって回折された角度に基づいて光の空間分離が生じる。検出器によって受け取られた光強度のパターンは、処理のために制御ユニットに通され、そして既知の粒径の高強度パターンのデータベースと比較される。
【0165】
あらゆるバッフリング(baffling)後にセットアップ位置決めすることが重要であり、と言うのは、このバッフリングは、所要の粒径を生じさせる役目を担っているからである。気道がたどらなければいけない曲がりくねった経路により、呼吸可能な範囲を上回る大抵の粒子は、装置の内壁に衝突して止まり、薬物ボウル中に戻り、ここで、再噴霧化可能である。
【0166】
一実施形態は、この特定の測定方法をマウスピース12中に組み込んでいる。円筒形のマウスピースの一方の側部上には光源266が設けられ、他方の側は、フーリエレンズ268および検出器270を有する。制御ユニット148もまた、検出器からの信号を処理するためにマウスピース内に納められるのが良い。変形例として、データを処理のための外部装置、例えば電話にワイヤレス送信しても良い。システムは、起動検出実施形態のうちの1つと結びつけられるのが良く、その結果、光源および検出器は、エーロゾルが存在する場合にのみターンオンする。エーロゾルがこの領域を通過すると、エーロゾルは、フーリエレンズによって検出器上に空間的に符号化される独特の回折パターンを生じさせる。次に、ネブライザは、このデータを取り込んで呼吸可能な範囲内にあるエーロゾルの百分率を求めることができる。この実施形態は、起動を検出するためにも使用できる。エーロゾル生成に先立って、光源とレンズとの間を通るエーロゾルは存在せず、したがって、散乱する光はなく、フーリエレンズは、全ての光をDC上にまたは検出器の低周波区分上に収束させる。起動時、光は、散乱されて検出器の他の部分に収束され、このことは、エーロゾルおよびその粒径分布が存在することを指示する。
【0167】
慣性分離
図71A図71Cを参照すると、粒径を測定する別のオプションは、粒子をこれらのサイズに基づいて機械的に分離し、そしてセンサを通り過ぎるこれらの順序づけられた粒子の流れを分析することである。互いに異なるサイズの粒子は、互いに異なる質量を有する。空気流がネブライザ内でバッフリング周りにエーロゾルを推し進めているとき、全ての粒子は、これらの慣性力に起因して方向の変化に抵抗する。質量の大きな粒子は、これらの慣性力が大きいので、質量の小さな粒子よりも大きく方向の変化に抵抗する。その結果、質量の小さな粒子は、質量の大きな粒子よりもコーナーを迅速に曲がることができ、そして粒子をこれらの軌道に基づいて分離することができる。この慣性分離方法は、多くの幾何学的形状および例えばマイクロフルイディックチャネルを通る流路ならびに渦分離を用いて種々の仕方で実施でき、これらの全ては、この実施形態に利用できる。
【0168】
一実施形態では、ネブライザの既存の幾何学的形状が用いられる。エーロゾルを生じさせているとき、空気は、圧縮ガスオリフィスおよび吸息ポートを通って入り、一次バッフリングによって形成されたエーロゾルを集め、そしてこの時点よりフィン280と呼ぶ二次バッフリング周りに動く。空気流がフィン280の頂縁部周りに動いてマウスピース12に向かって動いているとき、フィンは、空気流が約180°の方向変化(図71B)を生じさせるようにする。質量の小さな粒子は、フィンの輪郭をたどることができ、これに対し、質量の大きな粒子の慣性により、これら粒子は、幅の広い軌道を取る。これにより、「バンド」への粒径の空間分離が生じ、質量の大きな粒子は、装置の上半分に近くなる傾向があり、質量の小さな粒子は、低くなってフィンの輪郭に近くなる。
【0169】
光センサ108および検出器106またはこれらのアレイ/連続体が互いに対向して配置されるのが良く、この分離された空気流は、図72に示されているようにこれら相互間を動く。反対側のセンサにより検出される光強度の範囲は、粒径の回折の差を考慮に入れると、粒径分布に関連付け可能である。光源および検出器の多数の波長が粒径の各「バンド」について使用できる。そのようにすることによって、粒径の1つのバンドから別の検出器までの回折は、検出器が異なる波長の光を記録しないので光強度の増大としては現れない。また、画像処理を用いると、グラジエントの各区分内のエーロゾルの相対「密度」を見ることができ、そしてこれに基づいて粒子分布を推定することができる。変形例として、粒子は、マイクロフルイディックチャネルを通る流れのサブセットを案内することによって物理的に分離されても良く、そして各チャネル内のエーロゾルの量に依存する特性、例えばキャパシタンス、インダクタンス、導電率、光透過率、光反射率、pH、温度および湿度(これらには限定されない)についてチャネルの各々を別々に分析することが行われても良い。
【0170】
力検出バッフル
空気圧力およびノズル流れ‐バッフルに当たる空気の力の項で説明したように、力または圧力検出素子がバッフル中に組み込まれる。バッフルに当たるエーロゾルの力を知ることにより、粒径の推定が可能である。この実施形態および方法は、例えばノズル位置合わせ不良およびバッフルのばらつきのような要因を考慮に入れるのが良く、そしてエーロゾルを形成するために混合液対流に及ぼされる実際のエネルギーの局所測定である。
【0171】
治療の終了
治療の終了を多くの仕方で定めることができる。投与量が患者に送り出されなければならない呼吸可能な量に基づいて既知である場合、治療の終了は、上述の方法の組み合わせを用いて計算できる。しかしながら、多くの治療方式は、患者にとって呼吸可能な投与量をもたらすことはなく、時間またはスパッタに基づいて治療プロトコルを提供する。米国では、ホスピタル・プロトコル・サマリ(Hospital Protocol Summary)が現行のAEROECLIPSE ネブライザについて開発された。このプロトコルは、初期スパッタが聞こえるまでに噴霧化された薬剤の量または5分間噴霧化された薬剤の量に基づいて治療の終了を定める。スマートネブライザは、スパッタが起こった時点または初期起動を検出することができる内部クロックを求め、そして治療時間をカウントダウンしてその後、計時された治療の終了に達した時点を患者に知らせることができる(図73参照)。
【0172】
スパッタ
マイクロフォン
図74図75Bを参照すると、一実施形態では、マイクロフォン120がスパッタを聞くためにネブライザ内に配置される。変形例として、マイクロフォンは、外部に配置されまたは別個のスタンドアロン型装置内に納められる。スパッタは、薬物ボウル内の薬物が不十分であることに起因して環状液体チャネルを通る流体の流れ中の隙間によって引き起こされる。これにより、ON状態とOFF状態との迅速な切り替えが生じる。ON状態は、液体が液体チャネルを通って引かれて一次バッフルに当たっているときであり、OFF状態は、エーロゾル化されている液体がなく、空気だけがバッフルに当たっているときである。制御ユニットは、音声信号の現在の状態をデータベース中の既知のOFFおよびON信号と比較することができ、そしてこれら相互間の迅速な切り替えを認識することができる。装置がこれら状態相互間で切り替わる速度は、これが呼吸サイクルおよび液体流れ中の隙間によって引き起こされる起動と起動解除とを区別することができるので重要である。この分析は、時間ドメインには限定されず、別の方法で処理でき、これらは全て、この実施形態に利用できる。ネブライザによりスパッタが起こったことが認識されると、ネブライザは、患者に知らせる。
【0173】
力検出バッフル
空気圧力およびノズル流れ‐バッフルに当たる空気の力の項に記載されたように、力または圧力検出素子がバッフルに組み込まれる。アクチュエータがOFF位置にあるとき、流れがノズルカバーに設けられた真空破断窓を通って流れているのとほぼ同じ量の減少した流量の空気がバッフルに当たる。アクチュエータが下方に位置しているとき、全ての空気流は、バッフルに差し向けられ、と言うのは、ノズルカバーの窓が遮断され、空気が液体チャネルに加わっていてノズルカバーを通る追加の流れを引き込む負圧に起因して同伴されるからである。この力は、液体が液体チャネルに沿って引き上げられてバッフルに当たるときにさらに大きくなる。スパッタは、液体流中の隙間として識別される場合があり、それによりバッフルに加わる力を減少させてこの力をエーロゾル生成直前のレベルまで戻すが、アクチュエータがOFF位置にあるレベルには戻さない。これは、スパッタとネブライザの起動/起動解除との区別を可能にする。変形例として、スパッタ時におけるON状態とOFF状態との迅速な切り替えは、意図的な起動/起動解除の比較的遅い周波数から区別可能である。ネブライザによりスパッタが起こったことが認識されると、ネブライザは、患者に伝える。
【0174】
計時治療
一実施形態では、装置の制御ユニットは、所定長さの時間が経過した時点を求めることができる内部クロック機能を有することができる。起動検出の項で説明した任意の方法と関連して用いられると、装置の起動は、治療持続時間を記録する内部クロックを開始させる。米国では、この時間は、通常5分である。所定長さの時間の終了時、ネブライザは、治療の終了に達したことを患者に知らせる。
【0175】
〔充填体積および残留体積算定〕
スマートネブライザが薬物の初期充填体積および/または残留体積を測定することができれば有益である。初期充填体積が薬物識別特徴および薬剤出力計算に基づいて推定される残留体積により利用可能になるが、これらパラメータを直接測定してシステムからある程度の不確実性を除くことができるということは有利である。残留体積が特に、ネブライザが噴霧化することができず、したがって無駄になる薬物の量を残留体積が表わすので、重要である。これを追跡することは、これがネブライザの性能を潜在的に指示することができるので重要である。スパッタ後における高い残留体積は、装置がその有効寿命を超えたことを指示する場合があり、これを交換すべきである。これにより、患者は、一貫したレベルの治療を常時受けるようになる。高い残留体積はまた、装置が不十分にクリーニングされたことを指示し、ユーザにそのようにするよう促すとともにユーザがしたがう適正な命令を提供する。残留体積を追跡することはまた、研究者および製品開発者にフィードバックを提供することができる。
【0176】
流体レベル
初期充填体積および残留体積を薬物ボウル内の流体レベルに基づいて推定することができる。流体レベルおよび薬物ボウルの幾何学的形状を知ることにより、薬物の量の計算が可能である。かかる方法の利点は、これがネブライザの内面を被覆していて記録しており、排出により薬物ボウル中には戻されなかった薬物を計算に入れることができないということにある。また、流体レベルを計算するには流体表面が比較的穏やかであることが必要である。このことは、装置がエーロゾル化を行っている間、圧縮空気が一次バッフルによって半径方向に変向されているときに圧縮空気から作られる乱流に起因して流体レベルを測定することができないということを意味している。
【0177】
薄膜キャパシタンスセンサ
図87Aを参照すると、薄膜可撓性容量型センサ280が流体体積を測定するために薬物ボウルの外側上に配置されるのが良い。本明細書において説明する他の容量型方法の場合と同様、液体の誘導定数は、空気の誘電定数とは異なっている。容量型センサの近くに液体が存在することにより、測定可能であって実験により流体レベルに関連付けられるキャパシタンスの変化が生じる。薬物ボウル内の液体の体積が多ければ多いほど、液体に近接して位置する容量型ストリップの面積がそれだけ一層大きくなるとともにキャパシタンスの変化がそれだけ一層大きくなる。この方法の利点は、薄膜容量型センサを流体と直接接触しない状態で装置の外側上に配置することができるということにある。
【0178】
図87Cを参照すると、別の形式の容量型流体レベルセンサが環状空隙だけ外側ケーシング290から隔てられた円筒形コアが内部に設けられている円筒形プローブ288を含む。これら2つの要素は、キャパシタを形成するよう互いに逆に帯電される。プローブが薬物中に配置されると、流体は、プローブの底部に入って逆に帯電したプローブと外側ケーシングとの間の空隙の一部分を満たす。流体薬物の誘電定数が空気の誘電定数とは異なるので、測定可能なキャパシタンスの変化が生じることになる。キャパシタンスの変化の程度は、プローブ中の液体のレベルに関連付けられる。
【0179】
フロート
図94および図87Bを参照すると、フロート利用センサもまた、ネブライザ内の薬物の体積を測定するために使用できる。フロートセンサ中には、流体の頂面上に位置する浮動要素286が常に存在する。流体レベルの変化はまた、浮動要素の位置を変化させる。静止検出ユニット284に対するフロートの位置は、多くの方法を用いてモニタでき、この位置は、ネブライザボウルの既知の幾何学的形状に基づいてネブライザ内の体積に関連付けられる。浮動要素の位置を電位差計、容量型近接度検出、誘導型近接度検出、ホール効果、一連のリードスイッチの状態の変化およびその他の抵抗変化によって追跡することができる、これらには限定されない。この実施形態は、フロート利用プローブを用いてネブライザ内の体積を測定する全ての方法に利用できる。
【0180】
圧力
図88を参照すると、圧力センサ290を用いるとボウル内の流体の体積を測定することができる。この方法は、圧力センサの上方の液体の重量を効果的に測定する。一実施形態では、圧力センサは、薬物ボウルの最も下の部分のところに配置される。ネブライザ中への液体の追加時、圧力センサは、液体で覆われ、この圧力センサは、この真上の液体の重量に起因して圧力の増大を記録する。薬物をエーロゾル化しているとき、センサの上方の液体の量が減少し、センサが低い圧力を記録する。この方法は、単一のセンサの使用には限定されず、と言うのは、大気圧をモニタするのに追加のセンサを付加することができるからである。他の流体レベル測定の場合と同様、この方法では、液体が動いていない表面の状態で穏やかであることが必要であり、この方法は、装置の内面上の液体ハングアップを考慮に入れることができない。ロードセルが圧力センサと同一の仕事を達成する。
【0181】
光の透過率
図89を参照すると、液体を通る光の透過率を評価することによって流体レベルを推定することができる。光源108が最大流体レベルの上方に位置決めされるのが良く、センサ106がボウルの底部のところに位置決めされる。変形例として、光源を薬物ボウル内に配置しても良く、センサは、最大充填マーカの上方に配置される。薬物が存在していない場合、センサは、光が最小限の回折で源からセンサに移動することができるので最大光強度を記録する。薬物の追加時、光は、液体によって回折され、低い強度が記録される。源とセンサとの間における液体の量の増加により、光強度がさらに減少する場合があり、かかる増大を実験的に薬物体積に関連付けることができる。この実施形態および方法は、単一波長またはそれどころか可視スペクトルの使用には限定されない。
【0182】
平行な導電性ストリップ
図90を参照すると、多数の互いに平行な導電性ストリップ292が各ストリップ相互間の距離が既知の状態で薬物ボウルの内面上に配置されるのが良い。マイクロコントローラを用いて各導電性ストリップ相互間または各導電性ストリップまでの抵抗をモニタすることができる。全ての導電性ストリップが当初、液体によって覆われる場合、互いに異なるストリップ相互間の抵抗は低い。液体レベルが下降してストリップを露出させると、これは、高インピーダンスとして潜在的に開回路を記録し、と言うのは、電流がもはやアースには容易に流れて戻ることができないからである。これにより、ストリップに露出される導電性ストリップの数および導電性ストリップ相互間の距離に基づいて近似流体レベル高さが与えられる。一実施形態では、導電性ストリップは、ネブライザに設けられた既存の充填体積ラインと一致するよう配置される。
【0183】
飛行時間
図91を参照すると、変換器および受信機174,176が流体の上方に配置されるのが良く、その結果、パルスの発生時、このパルスは、流体表面で反射して受信機に戻るようになる。パルスが変換器から移動し、表面で反射し、そして受信機に戻るのに要する時間に基づいて、センサから流体レベルまでの距離を計算することができ、そしてこれから流体レベルを推定することができる。この方法は、超音波には限定されず、任意の周波数を使用することができる。
【0184】
画像処理
図92を参照すると、既知のマーカに対する流体レベルの像を捕捉してマイクロコントローラによって分析することができ、それによりネブライザボウル内の流体レベルを求めることができる。これは、マーカと流体レベルとの間の画素を計数することによりまたはこの像を既知の体積を備えた像のデータベースと比較して最も高い相関係数を持つ流体レベルを選択することによって実施できる。これは、内部カメラ294の使用には限定されず、外部カメラ、例えばスマートフォンを用いることができ、そして像をスマートネブライザに伝送する。
【0185】
光カーテン
図93を参照すると、光カーテンを用いた起動検出の場合と同様、単一の光源または多数の光源108が、多数の光検出106がこれらの間に薬物が充填した空隙を持たせた状態でこれらの反対側に配置されるよう配置されるのが良い。光透過率方法と同様、流体がセンサと光源との間を通っているときに、減少した強度の光が検出され、と言うのは、多量に光が反射されまたはセンサから回折されるからである。検出器の間隔を知ることによって、流体レベルを推定することができる。変形例として、多数の光源および単一の検出器を用いても良い。ネブライザ内に薬物が存在しない場合、最大光強度が測定される。薬物が光源を覆っているときには検出される光は少ない。
【0186】
装置の重量
図95を参照すると、装置の重量を秤298により測定することは、装置の初期重量が薬物の密度とともに既に既知である場合に残留体積を求める一手法である。たいていの場合、密度を水の密度に近似させることが許容可能である場合がある。残留体積を求めるこの方法は、これが装置内の液体ハングアップにより影響を受けないので有利である。一実施形態では、薬物を追加する前に、薬物を追加した後に、そして治療が完了した後に秤を用いて装置を計量する。秤は、スマートネブライザシステムと通信することができるスタンドアロン型装置であるのが良い。秤の読み出しからの測定値もまた、患者が手動でスマートネブライザシステムに入力することができる。加うるに、多くの現在利用できるスマートフォンは、測定圧力およびスクリーンと接触状態にある表面積に基づいてネブライザの重量を計算することができる感圧ディスプレイを有する。
【0187】
図96に示されている別の実施形態では、感圧表面またはロードセル296がネブライザの底面に組み込まれている。ネブライザが平坦な表面上に配置されると、センサは、ネブライザの重量を記録し、この情報を中央制御ユニットに送り戻す。
【0188】
通信およびデータ処理
スマートネブライザ内で生じたセンサデータの迅速かつより正確な処理を行うため、データは、スマートフォン、ローカルコンピューティング装置および/またはリモートコンピューティング装置にワイヤレス送信されるのが良く、それにより生のセンサデータを解釈してこれに作用するのが良い。
【0189】
一具体化例では、スマートネブライザは、生のセンサデータをリアルタイムでローカル装置、例えばスマートフォンに伝送する回路を含む。スマートフォンは、グラフィックスまたは命令をユーザに表示して処理ソフトウェアを実行し、それにより生のデータを解釈してこれに作用することができる。スマートフォンは、生のセンサデータをフィルタリングして処理し、そして生のセンサデータに含まれている関連の状態情報をスマートフォンのディスプレイに出力するソフトウェアを含むのが良い。スマートフォンまたは他のローカルコンピューティング装置は、変形例として、そのローカルリソースを用いてリモートデータベースまたはサーバに接触し、それにより処理命令を検索しまたは生のセンサデータを遠隔処理および解釈のために転送し、そして処理されるとともに解釈されたセンサデータをリモートサーバから戻して受け取り、それによりユーザまたはスマートネブライザのユーザとともにいる介護者に表示することができる。
【0190】
データ、統計学的資料または命令をスマートネブライザの近くに位置するスマートフォンまたは他のローカルコンピュータのディスプレイ上に単に提供することに加えて、スマートネブライザに関連した事前操作を能動的に管理して制御するのが良い。例えば、スマートネブライザの近くに位置するスマートフォンまたは他のローカルコンピュータによりセンサデータが治療の終了に達したことを指示していることが判定されると、スマートフォンまたは他のローカルコンピューティング装置は、スマートネブライザへのガス供給源と関連した加圧ガスラインリレーと直接通信してガスの供給を止めることができる。例えば、スマートフォンと連絡状態にありまたは通信ネットワークを介してスマートネブライザと直接的な通信状態にあるリモートサーバが治療状態の終了が判定されたときにスマートネブライザへの加圧ガス供給を止めるという決定を下すことができる場合、他の変形例もまた想定される。
【0191】
さらに他の具体化例では、スマートネブライザで集められてスマートフォンを介してリモートサーバに中継されるリアルタイムデータがリモートサーバをトリガして特定の噴霧化セッションまたは特定のユーザに関する過去の噴霧化セッションに基づいて経時的に生じたパターンに関する問題を探し出して医師または監督介護者に知らせることができる。スマートネブライザ内の1つまたは2つ以上のセンサからのデータに基づいて、リモートサーバは、警告を出してテキスト、Eメールまたは他の電子通信媒体を介してユーザの医師または他の介護者に送ることができる。
【0192】
上述のスマートネブライザ、ローカルコンピューティング装置および/またはリモートサーバ内の電子回路は、ネットワーク526と通信するとともに/あるいは他のコンピュータと直接通信するコンピュータ500の能力のうちの何割かまたは全てを含むのが良い。図5に示されているように、コンピュータ500は、プロセッサ502、記憶装置516、ディスプレイまたは他の出力装置510、入力装置512、およびネットワークインターフェース装置520を含むのが良く、これらは全てバス508を介して接続されている。コンピュータは、ネットワークと通信することができる。プロセッサ502は、任意形式のアーキテクチャ、例えばCISC(Complex Instruction Set Computing:複数命令セットコンピューティング)、RISC(Reduced Instruction Set Computing:縮小命令セットコンピューティング)、VLIW(Very Long Instruction Word:超長命令語)またはハイブリッドアーキテクチャの中央処理装置を表わしており、ただし、適当なプロセッサを用いることができる。プロセッサ502は、命令を実行し、このプロセッサは、コンピュータ全体の作動を制御するコンピュータ500の部分を含む。図6には示されていないが、プロセッサ502は、代表的には、メモリ中のデータおよびプログラム記憶領域を組織化してデータおよび他の情報をコンピュータ500の種々の部分相互間で伝送する制御ユニットを含む。プロセッサ502は、入力装置512から入力データを受け取り、ネットワーク526は、命令(例えば、プロセッサ実行可能コード)524およびデータを読みとってこれらを主記憶装置504、例えば読みとり書き込み記憶装置(RAM)、スタティックメモリ506、例えば読みとり専用記憶装置(ROM)、および記憶装置516に記憶させる。プロセッサ502は、出力装置510を介してデータをユーザに提供することができる。
【0193】
コンピュータ500が、単一のプロセッサ502および単一のバス508だけを有するものとして示されているが、開示した実施形態は、多数のプロセッサを有するのが良いコンピュータおよび多数のバスを備える場合があって幾つかまたは全てが互いに異なる仕方で互いに異なる機能を実行するコンピュータに等しく当てはまる。
【0194】
記憶装置516は、データを記憶または格納するための1つまたは2つ以上の機構を表わしている。例えば、記憶装置516は、コンピュータ可読媒体522、例えば読みとり専用記憶装置(ROM)、RAM、不揮発性記憶媒体、光学式記憶媒体、フラッシュメモリ装置、および/または他の機械可読媒体を含むのが良い。他の実施形態では、適当な形式の記憶装置を使用することができる。記憶装置516が1つだけ示されているが、多数の記憶装置および多くの形式の記憶装置が存在していても良い。さらに、コンピュータ500は、記憶装置516を含むものとして描かれているが、このコンピュータは、例えばサーバ上で他のコンピュータ全体にわたって分散して配置されても良い。
【0195】
記憶装置516は、コントローラ(図示せず)およびセンサデータの処理と関連して上述した機能を実行するようプロセッサ502上で実行可能であり、スマートネブライザの観点を制御してその動作を変更することができ、または第三者もしくは他の遠隔に位置するリソースに接触して遠隔に位置するリソースにアップデート情報を提供しまたはデータをかかる遠隔に位置するリソースから検索することができる命令524を備えたコンピュータ可読媒体522を含むのが良い。別の実施形態では、これら機能のうちの幾つかまたは全ては、プロセッサ利用システムに代えてハードウェアにより実施される。一実施形態では、コントローラは、ウェブブラウザであるが、他の実施形態では、コントローラは、データベースシステム、ファイルシステム、電子メールシステム、メディアマネジャ、イメージマネジャであっても良く、あるいはデータアイテムにアクセスすることができる任意他の機能を有しても良い。記憶装置516は、本発明を理解する上では必要ではない追加のソフトウェアおよびデータ(図示せず)をさらに含んでも良い。
【0196】
出力装置510は、出力をユーザに表示するコンピュータ500の部分である。出力装置510は、コンピュータハードウェア技術においては周知である液晶ディスプレイ(LCD)であるのが良い。他の実施形態では、出力装置510に代えてガスまたはプラズマ利用フラットパネルディスプレイまたは伝統的な陰極線管(CRT)ディスプレイを用いても良い。さらに他の実施形態では、適当なディスプレイ装置を使用することができる。出力装置510が1つしか示されていないが、他の実施形態では、互いに異なる形式または同一形式の任意の数の出力装置が存在しても良い。一実施形態では、出力装置510は、ユーザインターフェースを表示する。入力装置512は、キーボード、マウスまたは他のポインティング装置、トラックボール、タッチパッド、タッチスクリーン、キーパッド、マイクロフォン、音声認識装置、またはユーザがデータをコンピュータ500に入力して上述したユーザインターフェースを操作することができるようにするための任意他の適当な機構であるのが良い。入力装置512が1つしか示されていないが、別の実施形態では、任意数および任意形式の入力装置が存在しても良い。
【0197】
ネットワークインターフェース装置520は、任意適当な通信プロトコルを介してコンピュータ500からネットワーク526への接続性を提供する。ネットワークインターフェース装置520は、ワイヤレスまたはワイヤードトランシーバ514を介してデータアイテムを送信したりネットワーク526からデータアイテムを受信したりする。トランシーバ514は、セルラー周波数、無線周波数(RF)、赤外線(IR)またはネットワーク525または図2の例示のコンピュータの特徴のうちの幾つかまたは全てを備えた他のスマート装置102と通信することができる多くの既知のワイヤレスまたはワイヤード送信システムのうちの任意のものであって良い。バス508は、1つまたは2つ以上のバス、例えばUSB、PCI、ISA(業界標準アーキテクチャ)、X‐バス、EISA(拡張業界標準アーキテクチャ)または任意他の適当なバスおよび/またはブリッジ(バスコントローラとも呼ばれる)を表わしている。
【0198】
コンピュータ500は、任意適当なハードウェアおよび/またはソフトウェア、例えばパーソナルコンピュータまたは他の電子コンピューティング装置を用いて具体化できる。コンピュータ500は、ポータブルコンピュータ、ラップトップ型、タブレット型またはノートブック型コンピュータ、スマートフォン、PDA、ポケットコンピュータ、アプライアンス、電話であるのが良く、メインフレームコンピュータがコンピュータ500の他の考えられる形態の例示である。ネットワーク526は、任意適当なネットワークであって良く、このネットワークは、コンピュータ500への通信に適した任意適当なプロトコルをサポートするのが良い。一実施形態では、ネットワーク526は、ワイヤレス通信をサポートするのが良い。別の実施形態では、ネットワーク526は、ハードワイヤード通信、例えば電話線またはケーブルをサポートするのが良い。別の実施形態では、ネットワーク526は、イーサネット(登録商標)(Ethernet)IEEE(電気電子技術者協会)802.3x規格をサポートするのが良い。別の実施形態では、ネットワーク526は、インターネット(Internet)であるのが良く、このネットワークは、IP(インターネットプロトコル)をサポートするが良い。別の実施形態では、ネットワーク526は、LANまたはWANであるのが良い。別の実施形態では、ネットワーク526は、ホットスポットサービスプロバイダネットワークであるのが良い。別の実施形態では、ネットワーク526は、イントラネット(intranet)であるのが良い。別の実施形態では、ネットワーク526は、GPRS(ジェネラル・パケット・ラジオ・サービス)ネットワークであるのが良い。別の実施形態では、ネットワーク526は、任意適当なセルラーデータネットワークまたはセル利用ラジオネットワーク技術であって良い。別の実施形態では、ネットワーク526は、IEEE802.11ワイヤレスネットワークであるのが良い。さらに別の実施形態では、ネットワーク526は、任意適当なネットワークまたはネットワークの組み合わせであって良い。一ネットワーク526が示されているが、他の実施形態では、任意の数のネットワーク(同一または互いに異なる形式の)が存在しても良い。
【0199】
理解されるべきこととして、本明細書において説明した種々の技術をハードウェアまたはソフトウェアと関連して、あるいは該当する場合にはこれら両方の組み合わせと関連して実施できる。かくして、本明細書において開示した本発明の方法および装置、あるいはある特定の観点または部分は、有形媒体、例えばフロッピーディスク、CD‐ROM、ハードドライブ、または任意他の機械可読記憶媒体で具体化されるプログラムコード(すなわち、命令)の形態を取ることができ、プログラムコードが機械、例えばコンピュータ中にローディングされてこれによって実行されると、この機械は、本明細書に開示した本発明を実施する装置になる。プログラム可能コンピュータ上でのプログラムコード実行の場合、今ピューティング装置は、一般に、プロセッサ、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体(揮発性および不揮発性メモリおよび/または記憶素子を含む)、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置を含む。1つまたは2つ以上のプログラムが例えばAPI、再使用可能な制御装置などと関連して説明したプロセスを実行することができまたは使用することができる。かかるプログラムは、コンピュータシステムと通信するよう高水準手続き型またはオブジェクト指向プログラミング言語で具体化できる。しかしながら、プログラムは、所望ならばアセンブリまたは機械語で具体化できる。任意の場合において、言語は、コンパイラ型またはインタプリタ型言語であるのが良く、この言語は、ハードウェア具体化例と組み合わされるのが良い。例示の実施形態は、1つまたは2つ以上のスタンドアロン型コンピュータシステムとの関連で本明細書において開示した本発明の観点の使用に関するが、本発明は、これには限定されず、これとは異なり、任意のコンピューティング環境、例えばネットワークまたは分散型コンピューティング環境と関連して具体化できる。さらにまた、本明細書において開示した本発明の観点を複数の処理チップまたはデバイス内でまたはこれら全体にわたって具体化でき、記憶装置を複数の装置全体にわたって同様に分配することができる。かかる装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、ネットワークサーバ、および手持ち型装置を含む場合がある。
【0200】
本発明を好ましい実施形態に関して説明したが、当業者であれば認識されるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および細部における変更が可能である。したがって、上述の詳細な説明は、本発明を限定するものではなく例示として介されるべきであり、本発明の範囲を定めるようになっているのは、特許請求の範囲の記載およびその全ての均等範囲である。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14
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図20
図21
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図23A
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図27A
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図28A
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図29
図30
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図34
図35
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図37
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図39
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図41
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図45A
図45B
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図47A
図47B
図47C
図48
図49A
図49B
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図51B
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図61
図62
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図64
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図71A
図71B
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図98
図99
図100
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図101B
図102A
図102B
図103A
図103B
図104A
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図105
図106
図107