(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】同心管型電気化学セルの内部電気接続
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
(21)【出願番号】P 2019553449
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(86)【国際出願番号】 US2018027574
(87)【国際公開番号】W WO2018191669
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-01-08
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー グリーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】リ-シャン リャン
(72)【発明者】
【氏名】ポール ベドーズ
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/133985(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104934(WO,A1)
【文献】特表2018-508339(JP,A)
【文献】特表2016-516577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46-1/48
C02F 5/00-5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己洗浄電気化学セルであって、
ハウジング内に該ハウジングの中心軸の周りに同心配置された複数の電極と、
前記複数の電極の隣接する電極の間に画定され且つ前記中心軸に実質的に平行に延びる流体チャネルと、
前記複数の電極の少なくとも1つの遠位端に設置され且つ前記複数の電極の少なくとも1つに電気的に接続された電気コネクタと、を備え、
前記電気コネクタは、前記流体チャネルを通して流体を流すことができ且つ前記複数の電極の前記少なくとも1つに実質的に均一な電流分布を提供すると同時に、前記電気コネクタの下流の流体チャネル内の速度低下ゾーンを所定の長さ未満に維持するように寸法決めされ、前記速度低下ゾーンは、流体流速が前記流体チャネル内の平均流体流速から20%以内の偏差である流体チャネル内の領域と定義さ
れ、
前記電気コネクタは、ホイールと該ホイールから延びる複数のスポークとを含み、
前記スポークの幅は、前記ホイールの前記スポークの高さの0.25倍から2倍である、自己洗浄電気化学セル。
【請求項2】
前記電気コネクタは
、7.8×10
-7オーム・メートル未満の平均抵抗率を有する、請求項1に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項3】
前記電気コネクタは、前記複数の電極の前記少なくとも1つに少なくとも100Wの電力を送電するとき
に25W未満の熱を発生するように寸法決めされる、請求項2に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項4】
前記電気コネクタは、前記複数の電極の少なくとも1つに少なくとも1kWの電力を送電するとき
に25W未満の熱を発生するように寸法決めされる、請求項3に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項5】
前記隣接する電極間に配置されたセパレータをさらに備え、前記セパレータは、前記電気コネクタと結合するように構成された機構部を備える、請求項
1に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項6】
前記セパレータの特徴部は、前記電気コネクタのスポークと嵌合するように構成されたスロットを含む、請求項
5に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項7】
前記複数のスポークの各スポークは、前記電気コネクタの電気抵抗を最小限に抑え、少なくとも100Wの電力を複数の電極の1つ少なくともに送電する際の電気コネクタの発熱
を0.1℃未満に維持するように寸法決めされる、請求項
5に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項8】
前記複数のスポークは、前記ホイール上に実質的に均等に分布される、請求項
5に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項9】
前記スポークは、前記ハウジングの中心軸に平行な方向にアクアライン化した形状を有している、請求項
5に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項10】
前記隣接する電極のそれぞれの対の間に同心配置された複数の流体チャネルを備え、前記電気コネクタは、複数のホイールと、前記複数のホイールの隣接するホイール間に延びる複数のスポークとを備える、請求項1に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項11】
前記隣接するホイールから延びるスポークは互いに角度オフセットされている、請求項
10に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項12】
前記隣接するホイールから延びるスポークは互いに実質的に均等に角度オフセットされている、請求項
11に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項13】
自己洗浄電気化学セルであって、
ハウジング内に該ハウジングの中心軸の周りに同心配置された複数の電極と、
前記複数の電極の隣接する電極の間に画定され且つ前記中心軸に実質的に平行に延びる流体チャネルと、
前記複数の電極の少なくとも1つの遠位端に設置され且つ前記複数の電極の少なくとも1つに電気的に接続された電気コネクタと、を備え、
電気コネクタは、前記チャネルを通して流体を流すことができるように寸法決めされ、且つ前記複数の電極の前記少なくとも1つに少なくとも100Wの電力を送電している間に、前記流体チャネル
を2m/sで流れ
る20℃の温度を有する電解質の温度
が0.5℃以上増加しないように構成され
、
前記電気コネクタは、ホイールと該ホイールから延びる複数のスポークとを含み、
前記スポークの幅は、前記ホイールの前記スポークの高さの0.25倍から2倍である、自己洗浄電気化学セル。
【請求項14】
前記電気コネクタは、外部電源に接続するための電気接続部を含み、前記電気接続部と前記電極との間の電気コネクタの電気抵抗は
、5×10
-5オーム未満である、請求項
13に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項15】
前記電気コネクタは、前記複数の電極に実質的に均一な電流分布を提供するように寸法決めされている、請求項
13に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項16】
前記電気コネクタは、前記電気コネクタの下流の前記流体チャネル内の速度低下ゾーンを所定の長さ未満に維持するように寸法決めされている、請求項
13に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項17】
前記所定の長さにおける平均からの電解質溶液の速度偏差は、前記流体チャネルを通る電解質溶液の平均流速の±5%未満である、請求項
16に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項18】
前記所定の長さにおける平均からの電解質溶液の速度偏差は、前記流体チャネルを通る電解質溶液の平均流速の±2%未満である、請求項
17に記載の自己洗浄電気化学セル。
【請求項19】
前記流体チャネルと流体連通する入口および出口を有する請求項1および
13の何れかに記載の自己洗浄電気化学セルと、
前記自己洗浄電気化学セルの入口に流体接続可能な出口を有し、電解質溶液を2m/s以上の平均流速で前記流体チャネルを通して供給するように構成された電解質溶液の供給源と、を備え、
前記自己洗浄電気化学セルは、前記電解質溶液から製品化合物を生成し、前記製品化合物を含む製品溶液を出力するように構成され、
前記自己洗浄電気化学セルは、前記出口を通して使用箇所に流体接続可能である、
システム。
【請求項20】
前記電解質溶液の供給源は、海水、汽水、およびブラインのうちの少なくとも1つを備える、請求項
19に記載のシステム。
【請求項21】
前記システムは、直列に配置された複数の自己洗浄電気化学セルを含む、請求項
19に記載のシステム。
【請求項22】
電気化学システムを動作させる方法であって、
請求項1および請求項
13の何れかに記載の自己洗浄電気化学セルを準備するステップと、
電解質溶液
を2m/s以上の平均流速で前記流体チャネルを通して前記自己洗浄電気化学セルに導入するステップ、
前記自己洗浄電気化学セル内の前記電解質溶液から製品化合物を生成するのに十分な電圧で前記複数の電極間に電流を供給するステップと、
電気化学システムを所定の期間連続的に動作させるステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
少なくとも6ヶ月の間前記電気化学システムを連続的に動作させるステップをさらに含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
複数の自己洗浄電気化学セルを準備するステップ、および前記複数の自己洗浄電気化学セルを直列に流体接続するステップをさらに含む、請求項
22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法35条119項に基づいて、2017年4月14日に提出された、「同心管型電気化学セルの内部電気接続」と題する、米国暫定出願第62/485,542号に対して優先権を主張するものであり、その全内容はすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本明細書で開示される態様および実施形態は、一般に電気化学装置に関し、より具体的には、電気塩素化セルおよび装置、それを動作させる方法、およびそれを利用するシステムに関する。
【発明の概要】
【0003】
一態様によれば、自己洗浄電気化学セルが提供される。前記自己洗浄電気化学セルは、ハウジング内にその中心軸の周りに同心配置された複数の電極と、前記複数の電極の隣接する電極間に画定され且つ中心軸に実質的に平行に延びる流体チャネルと、前記複数の電極のうちの少なくとも1つの遠位端に設置され、前記複数の電極のうちの前記少なくとも1つに電気的に接続された電気コネクタとを含む。いくつかの実施形態において、前記電気コネクタは、前記流体チャネルを通して流体を流すことができ且つ前記複数の電極のうちの前記少なくとも1つに実質的に均一な電流分布を提供すると同時に、前記電気コネクタの下流の前記流体チャンネル内に生じる速度低下ゾーンを所定の長さ以下に維持するように寸法決めすることができる。前記速度低下ゾーンは、流体流速がチャネル内の平均流体流速から20%以内の偏差である流体チャネル内の領域と定義することができる。
【0004】
いくつかの実施形態では、前記電気コネクタは、約7.8×10-7オーム・メートル未満の平均抵抗率を有する。前記電気コネクタは、少なくとも100Wの電力を前記複数の電極の前記少なくとも1つに送電するときに、約25W未満の熱を生成するように寸法決めすることができる。前記電気コネクタは、少なくとも1kWの電力を前記複数の電極の前記少なくとも1つに送電するときに約25W未満の熱を生成するように寸法決めすることができる。
【0005】
特定の実施形態によれば、前記電気コネクタは、ホイールと該ホイールから延びる複数のスポークとを備えてもよい。前記自己洗浄電気化学セルは、前記隣接する電極間に配置されたセパレータをさらに備えてもよく、前記セパレータは、前記電気コネクタと嵌合するように構成された機構部を備える。いくつかの実施形態では、前記セパレータの機構部は、電気コネクタのスポークと嵌合するように構成されたスロットを含んでよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記複数のスポークの各スポークは、前記電気コネクタの電気抵抗を最小限に抑え、少なくとも100Wの電力を複数の電極の1つ少なくともに送電するときの電気コネクタの発熱を約0.1℃に維持するように寸法決めすることができる。
【0007】
前記複数のスポークは、ホイール上に実質的に均等に分布させることができる。いくつかの実施形態では、前記スポークは、前記ハウジングの中心軸に平行な方向にアクアライン化した形状を有してもよい。
【0008】
特定の実施形態によれば、前記自己洗浄電気化学セルは、前記隣接する電極のそれぞれの対の間に同心配置された複数の流体チャネルを備えてもよい。前記電気コネクタは、複数のホイールと、該複数のホイールの隣接するホイール間に延びる複数のスポークとを備えてもよい。隣接するホイールから延びるスポークは互いに角度オフセットしてよい。隣接するホイールから伸びるスポークは互いに実質的に均等にオフセットしてよい。
【0009】
別の実施形態によれば、複数の電極と、流体チャネルと、および電気コネクタとを含む自己洗浄電気化学セルが提供される。複数の電極は、ハウジング内にハウジングの中心軸を中心に同心配置することができる。流体チャネルは、隣接する電極間に規定され、中心軸に実質的に平行に延在してよい。電気コネクタは、複数の電極のうちの1つ電極の遠位端に設置し、その電極に電気的に接続してよい。電気コネクタは、チャネルを通して流体を流すことができるように寸法決めされ且つ流体チャネルを約2m/sで流れる約20℃の温度を有する電解質の温度が、複数の電極の少なくとも1つに少なくとも100Wの電力を送電している間に、約0.5℃以上増加しないように構成することができる。
【0010】
電気コネクタは、外部電源に接続するための電気接続部を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電気接続部と電極との間の電気コネクタの電気抵抗は、約5×10-5オーム未満としてよい。
【0011】
電気コネクタは、複数の電極に実質的に均一な電流分布を提供するように寸法決めしてもよい。電気コネクタは、電気コネクタの下流の流体チャネル内の速度低下ゾーンを所定の長さ未満に維持するように寸法決めしてよい。いくつかの実施形態では、所定の長さでの平均からの電解質溶液の速度偏差は、流体チャネルを通る電解質溶液の平均流速の±5%未満としてよい。いくつかの実施形態では、所定の長さでの平均からの速度偏差は、流体チャネルを通る電解質溶液の平均流速の±2%未満としてよい。
【0012】
別の実施形態によれば、流体チャネルと流体連通する入口および出口を有する自己洗浄電気化学セルと、自己洗浄電気化学セルの入口に流体接続可能な出口を有する電解質溶液の供給源とを備えるシステムが提供される。電解質溶液の供給源は、電解質溶液を流体チャネルを通して2m/s以上の平均流速で供給するように構成してよい。自己洗浄電気化学セルは、電解質溶液から製品化合物を生成し、製品化合物を含む製品溶液を出力するように構成してよい。自己洗浄電気化学セルは、出口を通して使用箇所に流体接続可能とし得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、電解質溶液の供給源は、海水、汽水、およびブラインのうちの少なくとも1つを含み得る。前記システムは、直列に配置された複数の自己洗浄電気化学セルを含んでもよい。
【0014】
別の態様によれば、電気化学システムを動作させる方法が提供される。この方法は、自己洗浄電気化学セルを準備するステップ、電解質溶液を約2m/s以上の流体チャネルを通して平均流速で自己洗浄電気化学セルに導入するステップ、自己洗浄電気化学セル内の電解質溶液から製品化合物を生成するのに十分な電圧で複数の電極間に電流を供給するステップ、および電気化学システムを所定の期間連続的に作動させるステップを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも6ヶ月間電気化学システムを連続的に動作させるステップを含むことができる。この方法は、複数の自己洗浄電気化学セルを準備するステップ、および複数の自己洗浄電気化学セルを直列に流体接続するステップを含むことができる。
【0016】
本開示は、前述の態様および/または実施形態のいずれか1つまたは複数のすべての組み合わせ、ならびに詳細な説明および例に記載の実施形態のいずれか1つまたは複数との組み合わせを企図している。
【0017】
添付図面は一定の縮尺で描くことが意図されているのではない。図面において、様々な図に示される同一またはほぼ同一の各構成要素は同等の番号で表されている。明瞭のために、すべての構成要素がすべての図面において番号付けされているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1Aは、同心管型電気化学セルの一実施形態の等角投影図である。
図1Bは、
図1Aの同心管型電気化学セルの断面図である。
図1Cは、
図1Aの同心管型電気化学セルの立面図および断面図を含む。
図1Dは、
図1Aの同心管型電気化学セルの別の等角投影図である。
【
図2A】同心管型電気化学セルの一実施形態を通る電流フローを示す。
【
図2B】同心管型電気化学セルの別の実施形態を通る電流フローを示す。
【
図2C】同心管型電気化学セルの別の実施形態を通る電流フローを示す。
【
図3A】一実施形態による、電気化学セルの断面図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、電気化学セルの流体チャネルを下る速度プロファイルのコンター図である。
【
図5】別の実施形態による、電気化学セルの流体チャネルを下る速度プロファイルのコンター図である。
【
図6】
図6Aは、一実施形態による、セパレータの等角投影図である。
図6Bは、一実施形態による、セパレータの突起の立面図である。
図6Cは、一実施形態による、セパレータの突起の平面図である。
図6Dは、一実施形態による、セパレータの突起の等角投影図である。
【
図7A】一実施形態による、電極管間に配置されたセパレータの等角投影図である。
【
図7C】一実施形態によるセパレータの等角投影図である。
【
図8A】一実施形態による電気化学セルの立面図である。
【
図9A】一実施形態による、エンドキャップの上からの平面図である。
【
図10A】一実施形態による、電気化学セルの一部の断面図である。
【
図11A】一実施形態による、電気化学セルの一部の断面図である。
【
図11B】別の実施形態による、電気化学セルの一部の等角投影図である。
【
図12】一実施形態による、電気化学セルの両端間の圧力降下のコンター図である。
【
図13】
図13Aは、一実施形態による、電気化学セルの入口エンドキャップ内の入口圧力のコンター図である。
図13Bは、別の実施形態による、電気化学セルの入口エンドキャップ内の入口圧力の別のコンター図である。
図13Cは、別の実施形態による、電気化学セルの入口エンドキャップ内の入口圧力の別のコンター図である。
【
図14】
図14Aは、様々な入口錐体部の実施形態を有する電気化学セルの入口エンドキャップ内の入口圧力のコンター図のコレクションである。
図14Bは、
図14Aの入口錐体部の実施形態の圧力降下対錐体部角のグラフである。
【
図15】
図15Aは、一実施形態による、電気化学セルの断面図である。
図15Bは、一実施形態による、出口錐台を有する電気化学セルの出口キャップ内の出口圧力のコンター図である。
【
図16】一実施形態による、電気化学セルの一部の等角投影図である。
【
図17A】一実施形態による、電気化学セルの一部の等角投影図である。
【
図18A】一実施形態による、電気化学セルの一部の等角投影図である。
【
図19A】一実施形態による、セパレータの分解図である。
【
図20A】一実施形態による、セパレータの一部の等角投影図である。
【
図21A】一実施形態による、セパレータの等角投影図である。
【
図22】一実施形態による、セパレータより下流の平均からの速度偏差のグラフである。
【
図23A】一実施形態による、電気化学セルの断面図である。
【
図23C】一実施形態による、電気化学セルの電気コネクタの立面図である。
【
図24A】一実施形態による電気コネクタの立面図である。
【
図25】
図25Aは、一実施形態による、電気化学セルの一部の等角投影図である。
図25Bは、
図25Aの電気化学セルの該部分にわたる電流分布のコンター図を含む。
図25Cは、一実施形態による、電気化学セルの電気コネクタ周辺の温度のコンター図である。
図25Dは、一実施形態による、電気化学セルの電気コネクタより下流の速度のコンター図である。
【
図26】
図26Aは、一実施形態による、電気化学セルの電気接続部の立面図である。
図26Bは、別の実施形態による、電気化学セルの代替電気接続部の立面図である。
図26Cは、
図26A(左)および
図26B(右)の電気接続部の周りの電流分布の上面コンター図である。
図26Dは、
図26A(左)および
図26B(右)の電気接続部の周りの電流分布の側面コンター図である。
【
図27】
図27Aは、一実施形態による、電気化学セルの電気接続部の立面図である。
図27Bは、別の実施形態による、電気化学セルの代替電気接続部の立面図である。
図27Cは、
図27A(左)および
図27B(右)の電気接続部の周りの電流分布の上面コンター図である。
図27Dは、
図27A(左)および
図27B(右)の電気接続部の周りの電流分布の側面コンター図である。
【
図29A】一実施形態による、電気化学セルの電気コネクタおよびセパレータアセンブリの等角投影図である。
【
図30】一実施形態による、電気化学セルを通る流速のコンター図を含む。
【
図31】一実施形態による、電気化学セルを通る流速のコンター図を含む。
【
図32】一実施形態による、電気化学セルを通る流速のコンター図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に開示される態様および実施形態は、以下の説明に記載されるかまたは図面に示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されない。本明細書に開示される態様および実施形態は、さまざまな方法で実施または実行することができる。本開示は電気塩素化セルおよび電気塩素化装置の様々な実施形態を説明するが、本開示は電気塩素化セルまたは装置に限定されず、本明細書に開示される態様および実施形態は、複数の目的のいずれか1つに使用される電解および電気化学セルに適用可能である。
【0020】
電極での化学反応に基づく電気化学装置は、産業および自治体の事業で広く使用されている。化学反応の例は次のとおりである。
【0021】
塩化ナトリウムと水から次亜塩素酸ナトリウムを生成する電気塩素化:
陽極での反応:2Cl-→Cl2+2e-
陰極での反応:2Na++2H2O+2e-→2NaOH+H2
溶液中:Cl2+2OH-→ClO-+Cl-+H20
全体の反応:NaCl+H2O→Na℃l+H2
【0022】
陽極と陰極を分離する陽イオン交換膜を使用した、塩化ナトリウムと水からの水酸化ナトリウムと塩素の生成:
陽極での反応:2Cl-→Cl2+2e-
陰極での反応:2H20+2e-→2OH-+H2
全体の反応:2NaCl+2H20→2NaOH+Cl2+H2
【0023】
電極を分離するプロトン透過膜を用いたエネルギー貯蔵用のバナジウムレドックス電池:
充電中:
第1電極での反応:V3++e-→V2+
第2電極での反応:V4+→V5+e-
放電中:
第1電極での反応:V2+→V3+e-
第2電極での反応:V5++e-→V4+
【0024】
電気塩素化セルは、海上、沿岸、自治体、産業および商業の事業で使用することができる。電気化学装置の設計パラメータ、例えば、電極間の間隔、電極の厚さとコーティング密度、電極面積、電気接続の方法などは、さまざまな実施に合わせて最適化できる。
【0025】
陰極で生成されたH2ガスの除去は、電気化学装置およびシステム全体の設計における主要な課題である。このガスは、配管内の選択した場所または製品タンクで安全に排気する必要がある。いくつかの実施形態では、H2ガスの生成を軽減するために、必要に応じ酸化剤を導入してH2O2を発生させてもよい。
【0026】
本明細書に開示される態様および実施形態は、一般に、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を生成する電気化学装置に関する。 「電気化学装置」および「電気化学セル」という用語およびそれらの文法的変化は、「電気塩素化装置」および「電気塩素化セル」およびそれらの文法的変形を包含すると理解されたい。
【0027】
本明細書に開示されるように、態様および実施形態は、同心管型電気化学セル(CTE)に関する。
図1Aは、ハウジング116内に配置された同心管を有する例示的な電気化学セル100を示す。外側管の内側表面および内側管の外側表面は、活性電極領域を含む。
図1Bに示すように、供給電解質溶液は、電気化学セル100の長さに沿って同心管102、104間を流れる。
図1Dに示されるように、フローチャネルが同心管間の隙間により形成される。
【0028】
この例示的な実施形態における電極間の隙間は約3.5mmである。原料として海水を使用する特定のアプリケーション(海上および沿岸アプリケーションなど)では、流体チャネルを通る液体の速度は2.0m/sより大きくすることができ、例えば2.1m/s程度に、最大3m/sまで、最大3.5m/sまで、最大6m/s、または最大10m/sまでとすることができ、その結果、強い乱流が生じ、電極表面のファウリングとスケーリングの可能性が減少する。
【0029】
電気化学セル100は、
図1Cに示されるように、エンドキャップ106、108およびセンターキャップ110を含むことができる。電気化学セルは、
図1Bおよび
図1Cに示すように、錐体部112、114を含むことができる。錐体部112、114は内側電極に設けて供給電解質溶液を同心管102、104間の隙間に向けることができる。入口キャップ、出口キャップ、および中心キャップの1つ以上にセパレータ(位置合わせ機構部)を配置して、同心円管の内部位置を維持するとともに隙間を規定することができる。エンドキャップ、錐体部、およびセパレータは、電気化学セルを通る流速と圧力降下に影響を与る。流速が下がると、ファウリングおよびスケーリングの可能性が高まり、メンテナンスの必要性が高まる。直列に配置された複数の電気化学セルを備えたシステムでは、各電気化学セルにおける圧力降下がシステムに累積的な影響を及ぼす。本明細書に開示される特定の実施形態によれば、1つ以上の機構部は、電気化学セル内の流速および圧力降下への影響を低減するように設計することができる。さらに、1つまたは複数の機構部は、電気化学セルおよびその構成要素の製造が簡単になるように設計することができる。本明細書に開示されるように、機構部は、数学関数によって設計するか、自由に生成することができる。いくつかの実施形態では、機構部は経験的に生成するか、計算流体力学(CFD)ソフトウェアを使用して設計することができる。
【0030】
本明細書に開示される態様および実施形態は、1つ以上の電極を含むものとして説明される。本明細書で使用される「金属電極」という用語またはその文法的変化は、1つまたは複数の金属、例えばチタン、アルミニウムまたはニッケルから形成される、備える、または、からなる電極を含むものと解されるが、「金属電極」という用語は他の金属または合金を含む、またはからなる電極を除外するものではない。いくつかの実施形態では、「金属電極」は、異なる金属の複数の層を含んでよい。本明細書で開示される実施形態のいずれか1つ以上で利用される金属電極は、電解質溶液による化学的攻撃に対して高い耐性を有する金属または金属酸化物、例えば、チタン、プラチナ、混合金属酸化物(MMO)、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、タンタル、パラジウム、イリジウム、銀、金、またはその他のコーティング材料の層で被覆された高導電性金属、例えば銅またはアルミニウムのコアを含んでよい。
【0031】
「金属電極」は、耐酸化性コーティング、例えば、限定はされないが、白金、混合金属酸化物(MMO)、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、タンタル、パラジウム、イリジウム、銀、金、またはその他のコーティング材料でコーティングしてよい。本明細書に開示される実施形態で利用される混合金属酸化物は、ルテニウム、ロジウム、タンタル(必要に応じアンチモンおよび/またはマンガンと合金化される)、チタン、イリジウム、亜鉛、スズ、アンチモン、チタンニッケル合金、チタン-銅合金、チタン-鉄合金、チタン-コバルト合金、または他の適切な金属または合金の1つまたは複数の酸化物を含み得る。本明細書に開示される実施形態で利用される陽極は、白金および/またはイリジウム、ルテニウム、スズ、ロジウム、またはタンタル(必要に応じアンチモンおよび/またはマンガンと合金化される)の1つ以上の酸化物でコーティングしてもよい。本明細書に開示される実施形態で利用される陰極は、白金および/またはイリジウム、ルテニウム、およびチタンのうちの1つまたは複数の酸化物でコーティングしてもよい。いくつかの実施形態では、電極の周期的な極性反転を可能にするために、陽極と陰極の両方を同じようにコーティングしてもよい。本明細書に開示される実施形態で利用される電極は、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、および/またはシリ錐体部のうちの1つまたは複数のベースを含んでもイベント。本明細書に開示される電気化学セルのいずれかの電極は、プレート、シート、箔、押出成形物、および/または焼結物として、またはそれらから形成することができる。
【0032】
本明細書で使用される「管」という用語は、円筒形の導管を含むが、他の断面形状を有する導管、例えば、正方形、長方形、楕円形、または長円形の形状または正または不規則多角形の断面形状を有する導管を除外するものではない。
【0033】
本明細書で使用される「同心管」または「同心螺旋」という用語は、実質的に共通の中心軸を共有する管または交互配置螺旋を含むが、必ずしも一組の同心管または交互配置螺旋内の同心管または交互配置螺旋の各々の中心にない共通の軸を囲む同心管または交互配置螺旋囲を除外するものではない。
【0034】
一態様によれば、電気化学セルは同心管電極を含む。同心管電極の少なくともいくつかは、単極または双極としてよい。内側管電極は、耐酸化性コーティング、例えば白金またはMMOを有する陽極とてよい。外側管電極はコーティングなしで、陰極として機能してよい。あるいは、内側管電極が陰極として機能し、外側管電極が陽極として機能してもよい。いくつかの実施形態では、両方の電極が極性反転を可能にするためにコーティングされる。
【0035】
例示的な実施形態の電極は、電流が電極ごとに1回電解質を通過するように単極としてよい。電極のそれぞれは、チタン管を含み得る。陽極電気コネクタは、外側管電極と電気的に連通してよい。陰極電気コネクタは、内側管電極と電気的に連通してよい。中間管電極がある場合、中間管電極は内側管電極、外側管電極、またはその両方と電気的に連通してよい。いくつかの実施形態では、中間管電極は、表面を最大限に活用するために、内面と外面の両方に耐酸化性コーティング、例えば白金またはMMOを有する陽極としてよい。中間管陽極は、陰極として機能する2つの電極で囲んでよい。
【0036】
図2A~2Dは、CTE電気化学セルにおける電極のいくつかの可能な例示的な配置を示す。
図2Aは、電流が陽極から陰極へ1つの経路で流れる例示的な構成を示している。両方の電極はチタンで作られ、陽極は白金または混合金属酸化物(MMO)でコーティングされている。このような電極は「単極」と呼ばれる。
【0037】
例示的な実施形態の電極は、電流が電極ごとに2回以上電解質を通過するように双極にすることもできる。例示的な実施形態では、双極管電極の一方の端部(いくつかの実施形態では電極の約半分)が陰極として機能するようにコーティングしないことができ、他方の端部(いくつかの実施形態では電極の約半分)が陽極として機能するように耐酸化性コーティング、例えば、プラチナまたはMMOでコーティングすることができる。双極管電極は、陽極管電極および陰極管電極内に入れ子にし、各管電極が双極電極の一端部を囲むようにしてもよい。共通の直径を有する陽極管電極および陰極管電極は電気化学セルの長さに沿って横方向にずらせて位置させることができる。双極管電極は、電流が双極管電極と陽極管電極および陰極管電極との間を通過する電解質溶液を2つの経路で流れることができるように位置させることができる。
【0038】
追加の双極電極を挿入し、それぞれの陽極管電極及び陰極管電極とオーバラップさせて、陽極管電極と陰極管電極が電気化学セルを通る軸方向に沿って複数の双極管電極の側部に交互に位置するようにすることによって、マルチ経路平行平板電極(PPE)と同様に3つ以上の電流経路を提供するセルを組み立てることができる。
【0039】
図2Bは、電流が2つの外側電極と1つの内側電極を備えた装置を2つの経路で流れる、典型的な配置を示している。2つの外側電極の一方は、例えば陽極として機能するように内面にコーティングがされており、他方はコーティングされていない。内側電極の外面の一部は、例えば陽極として機能するようにコーティングされ、残りの部分はコーティングされていない。電流は、電解質を介して被覆外側電極から内側電極の非被覆部分に流れ、次いで内側電極に沿って被覆部分に流れ、最後に電解質を横切って非被覆外側電極に流れる。内部電極は「双極」電極とも呼ばれる。
【0040】
図2Cは、電流が複数の外側電極と1つの内側電極を備えた装置を複数の経路で流れる配置を示している。陰極部分と陽極部分を交互にし、必要に応じて電極をコーティングすることにより、電流が電解質を通って複数の経路で往復して流れることができる。経路の数はそれに応じて拡大することができる。
【0041】
一態様によれば、電気化学セルは、複数の同心管電極を含む。複数の陽極または陰極管電極を含む本明細書に開示される実施形態では、複数の陽極管電極はひとまとめに陽極または陽極管と呼ぶこともでき、複数の陰極管電極はひとまとめに陰極または陰極管と呼ぶこともできる。複数の陽極および/または複数の陰極管電極を含む実施形態では、複数の陽極管電極および/または複数の陰極管電極は、本明細書ではひとまとめに陽極陰極対と呼ぶこともできる。
【0042】
電気化学セルは、例えば、3、4、または5つの同心管を含むことができる。いくつかの実施形態では、電気化学セルは、3つまたは4つの同心管電極を含み、2つの外側管電極と1つまたは2つの内側管電極を含むことができる。4管の電気化学セルは、3管の電気化学セルと同様に機能するが、電解質溶液が2つではなく3つの流体チャネルを流れることができる。追加の電極管は、追加の陰極電極表面、陽極電極表面、および流体チャネルを提供することができる。同様に、5つの管電極を含む電気化学セルは、2つの外側管、3つの内側管、および4つの流体チャネルを含むことができる。第5の電極管は、さらに追加の陰極電極表面、陽極電極表面、および流体チャネルを提供することができる。管の数、経路の数、および電極構成(単極または双極)は変えることができる。管の数、経路の数、および電極の構成は、電気化学セルの望ましい用途に基づいて選択することができ。
【0043】
本明細書に開示される多管電極配置は、単位体積当たりの活性面積を徐々に増大する。複数の同心管電極を含む電気化学セルまたは電気塩素化セルおよび装置で使用される管の数が増えるにつれて、最も内側の管の直径が次第に小さくなり、管あたりの有効表面積が小さくなる。しかしながら、全体的な結果は、他のCTE電極装置と比較すると、多管電極の方が大幅に大きい活性表面を有する。
【0044】
本明細書で使用される、電気化学セルの「活性密度」という用語は、電気化学セル内の流体の処理を受ける流体が流れることができる活性または機能電極表面(電気化学セル内の流体の電気化学的処理に寄与する電流が流れる電極の表面)間の断面積と電気化学セルのハウジング内の総断面積との比として定義される。「活性密度」は、流体が流れることができる中心軸に垂直な平面内の面積を、中心軸に垂直な総断面積で割ったものと定義される。測定単位は無次元、分数またはパーセントである。本明細書で開示される態様および実施形態は、約46%~約52%、約50%超の活性密度、いくつかの実施形態では約75%超の活性密度、いくつかの実施形態では85%超の活性密度、いくつかの実施形態では90%超の活性密度、およびいくつかの実施形態では約95%までの活性密度、を有する電気化学セルを含む。
【0045】
本明細書で使用される、電気化学セルの「全実装密度」という用語は、電気化学セルのハウジング内の全断面積に対する電気化学セルを通る流体の流れに垂直な平面における全機能電極経路長として定義される。「実装密度」は、電気化学装置内の電極の「活性表面積」を装置の総内部体積で割ったものある。測定単位は1/長さある(例:m-1)。電極の「活性表面積」とは、電気化学装置内の電気化学反応に寄与する電流がそこからまたはそれに流れる電極の表面積である。対向表面を有する電極は、片面または両面に活性表面積を有し得る。 「陽極実装密度」は、電気化学装置の陽極の「活性表面積」を装置の総内部体積で割ったものある。 「陰極実装密度」とは、電気化学装置の陰極の「活性表面積」を装置の総内部体積で割ったものある。 「全電極実装密度」または「総電極実装密度」は、電気化学装置の陽極実装密度と陰極実装密度の合計である。本明細書に開示される電気化学セルの態様および実施形態は、陽極実装密度、陰極実装密度、および/または全電極実装密度が2mm-1以上を有することができる。
【0046】
特定の実施形態によれば、電気化学セルの陽極および/または陰極管は、電気化学反応で生成された水素がより容易に電極を通って流れて電極表面での水素マスキング効果を低減するための開口を有してもよい。水素マスキング効果は、利用可能な陽極面積を減少させ、次亜塩素酸ナトリウムの出力を低下させる。加えてまたは代りに、陽極および/または陰極は、流体透過性および/または有孔またはメッシュ材料、例えば有孔チタンまたはチタンメッシュとしてもよい。電気化学セルは、セル内で、例えば電気塩素化反応により生成された水素と結合し、水または過酸化水素を生成する酸化剤を供給するためのガス導管を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電池内で酸化剤と水素の反応を促進するために、例えば陰極上および/または陰極内に触媒が提供されてもよい。
【0047】
電極の表面積は波形の使用により増やすことができる。電気化学セルは、陽極または陰極の一方が波形で、陽極または陰極の他方が波形でないものとしてもよい。電気化学セルは、マルチチャネル波形電極形状を含んでもよい。他の実施形態では、陽極および陰極は、電極表面積を増加させるために例示のもと異なる湾曲形状を有してもよい。ただし、波形は乱流を増加させ、それに対応して電気化学セルを通る平均流速を低下させる可能性があることに注意する必要がある。したがって、波形電極セルは補償のために入口流速を上げることを必要とする。
【0048】
陰極でのまたは陰極における水素低減のための表面積は、陽極ごとに複数のガス拡散陰極を使用することで増加することができる。複数のガス拡散陰極には、軸方向または平行なガス導管を介して、例えば酸素などのガス(酸化剤)を供給することができる。
【0049】
本明細書に開示される電気化学セルの態様および実施形態は、すべてまたは実質的にすべての流体をハウジングの中心軸に実質的にまたは完全に平行な方向に陽極および陰極間の活性領域または隙間を通過するように導くよう構成および配置された陽極および陰極(または陽極陰極ペア)を含み得る。いくつかの実施形態において、隙間は、流体チャネルと呼ばれることもある。流体チャネルは、0.5mから2.0mの間、例えば約1.0mの長さを有し得る。いくつかの実施形態では、流体チャネルは3.0m以上延在してもよい。活性領域を通る実質的にまたは完全に平行な方向は、陽極および陰極(または陽極陰極ペア)に平行または実質的に平行にすることができる。活性領域を流れる流体は、活性領域を流れる間に流体の流れが乱流および/または渦流を示しても、依然として活性領域を実質的にまたは完全に平行な方向に流れるとみなすことができる。
【0050】
同心管電極、例えば、本明細書に開示される1つまたは複数の陽極および/または陰極、を含む電気化学セルのいくつかの態様および実施形態では、電極は、電極間の1つまたは複数の隙間を通して電気化学セルの中心軸(
図3Bに点線として示されている)平行な方向に流体を導くように構成および配置される。いくつかの態様および実施形態では、電極は、電気化学セルに導入されるすべての流体を電極間の1つまたは複数の隙間を通して電気化学セルの中心軸に平行な方向に導くように構成および配置される。
【0051】
電極間の隙間の幅は一定でも可変でもよい。電極間の隙間の幅は、例えば、直径で約1mm~約7mm、直径で約1mm~約5mm、または直径で約3mm~約5mmであってよい。いくつかの実施形態では、電極間の隙間の幅は、約2.0mm、約2.5mm、約3.0mm、約3.5mm、または約4.0mmであってよい。隙間の幅および電気化学セルの設計は、電気化学セルで処理される電解質のタイプに基づいて選択することができる。
【0052】
例示的な実施形態では、供給電解質溶液は、3つの管電極の間に形成された2つの環状隙間(すなわち、流体チャネル)を通って流れる。一定または可変のDC電圧、またはいくつかの実施形態ではAC電流を陽極および陰極電気コネクタ間に印加することができる。電流は、陽極の内側と外側の表面(中間の管電極)から内側と外側の陰極(内側管電極と外側管電極)に同時に流れる。電気接続は、電極と同じ材料、例えばチタンで形成することができる1つまたは複数の導電性ブリッジによって管電極間で行うことができる。電気化学反応および化学反応が電極の表面でおよびバルク溶液内で発生し、製品溶液を生成することができる。例えば、電気化学的および化学的反応が電極の表面でおよびバルク溶液内で起こり、管電極間に形成された流体チャネル内に製品溶液を生成することができる。
【0053】
一般に、電気化学システムにはブライン、汽水、または海水が供給されるが、供給溶液は限定ではない。電気化学セルの設計パラメータは、一般に、供給溶液の組成および/または製品溶液の所望の組成に基づいて選択することができる。海水は一般に、約3.0%~4.0%の塩分を有し、例えば、海水は約3.5%、3.6%、または3.7%の塩分を有し得る。海水には、ナトリウム、塩化物、マグネシウム、硫酸塩、カルシウムなどの溶解イオンが含まれる。海水は、硫黄、カリウム、臭化物、炭素、およびバナジウムのうちの1つまたは複数をさらに含み得る。海水は、約35,000mg/lの総溶解固形分(TDS)を含むこともある。一般に、ブラインは約3.5%を超える塩分を有する。例えば、ブラインは、約4.0%、4.5%、5.0%、7.5%、または約10%の塩分を有し得る。ブラインのTDS含有量は、約35,000mg/lを超えることもある。飽和食塩水は、最大約25.0%の塩分を有する。汽水は一般に塩分が3.5%未満です。汽水は、約3.0%、2.5%、2.0%、または1.0%の塩分を有する。汽水は、約35,000mg/l未満のTDS含有量を有することもある。例えば、汽水は、約1,000mg/l~約10,000mg/lのTDS含有量を有し得る。
【0054】
一般に、電解質溶液の導電率は、塩分に応じて、約0~25S/cmであり得る。約0.5%~2.0%の塩分を有する汽水は、約0.5S/cm~約4.0S/cm、例えば、約0.8S/cmまたは約3.0S/cmの導電率を有し得る。約3.5%の塩分を有する海水は、約4.5S/cm~5.5S/cm、例えば、約5.0S/cmまたは約4.8S/cmの導電率を有し得る。約5.0%~10%の塩分を有する塩水は、約7S/cm~13.0S/cm、例えば約12.6S/cmの導電率を有し得る。約25%の塩分を有する飽和ブラインは、約20.0S/cm~約23.0S/cm、例えば約22.2S/cmの導電率を有し得る。塩分と導電率は、線形関係:y=0.9132x+1.6332;に従う可能性があり、ここでyは導電率(S/cm)、xはパーセント塩分(%NaCl)である。
【0055】
一般に電気化学セル内の低速領域でスケーリングとファウリングが発生し得る。従来、スケーリングを除去するには酸洗浄が必要とされ得る。酸洗浄では、電気化学セルをオフラインにする必要があり、生産と使用が制限される。本明細書で開示されるように、電気化学セルの構成要素は、低速度の領域を縮小し、スケーリングおよびファウリングを低減するように設計することができる。自己洗浄特性を維持するために必要とされる平均流体速度は、電解質溶液の品質に依存し得る。本明細書で使用される場合、自己洗浄流体速度は、スケール形成が実質的に最小限に抑えられる平均バルク流体速度である。自己洗浄流体速度は、電気化学セル内のスケール形成を最小化、制限、または実質的に低減するように選択することができる。自己洗浄流体の速度を維持し、および/または速度が低下したゾーンを最小化すると、装置の酸洗浄の必要性を大幅に低減または排除することができる。したがって、装置は、一般的に電極またはそのコーティングが劣化するまで、はるかに長い期間に亘って連続使用状態に維持することができる。
【0056】
典型的には、電気化学セル、例えば海水を処理するために使用される電気化学セルの自己洗浄特性を維持するために、バルク流体速度は平均速度2m/sより上に維持される。例えば、室温(20~25oC)で約1000~1400ppmのマグネシウム濃度および約300~450ppmのカルシウム濃度を有する海水または水では、自己洗浄特性を維持するために、約2m/s以上の平均流速が必要とされ得る。より高い硬度、例えば最大約500ppmのCaおよび1800ppmのMgを有する海水または水(紅海の水)では、自己洗浄特性を維持するためにより大きな平均流速が必要とされ得る。このような海水は、自己洗浄特性を維持するために約2.5m/sまたは3.0m/sの平均流速が必要とされ得る。より低い硬度、例えば、約200ppmのCaと約700ppmのMgを有する海水または水(アラビア湾の水)は、より低い平均流速で自己洗浄特性を維持することができる。例えば、このような海水は、約1.5m/sまたは1.8m/sの平均流速で自己洗浄特性を維持することができる。
【0057】
約20℃または25℃を超える海水(例えば、約40℃になり得るアラビア湾の水)または約20℃または25℃未満の海水(例えば、約0℃になり得る北海の水)も、それぞれ低い平均流速または大きい平均速度で自己洗浄特性を維持することができる。さらに、汽水およびブラインは、低い平均流速で自己洗浄特性を維持することができる。
【0058】
平均流速は、電気化学セルの自己洗浄特性を維持するために、必要に応じて維持され得る。例えば、流速は、特定の電解質溶液に対して自己洗浄特性を維持するために、必要に応じ、約1.5m/sより大きく、約1.5m/sから約2m/sの間に、約2m/sより大きく、約2m/sから約2.5m/sの間に、約2.5m/sより大きく、約2.5m/sから3.0m/sの間に、または約3.5m/sより大きく維持され得る。特定の供給ストリームに対して、流速は4m/s、5m/s、6m/s、7m/s、8m/s、9m/s、または10m/sに維持され得る。以下でより詳細に説明されるように、自己洗浄速度未満の平均速度は所定の長さ以内で解消することができる。
【0059】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、電極、例えば、陰極および陽極は、ハウジング内にハウジングの中心軸を中心として同心配置することができる。電極は非金属製のハウジングに挿入し、防水コネクタでDCまたはAC電源に接続して、電気的に通電している構成要素が外部環境にさらされないようにすることができる。この設計は一般にオペレータにとって安全であり、装置と外部接地構成要素または液体との間の短絡の恐れはない。
【0060】
電極は、電極を外部環境から電気的に絶縁するとともに電気化学セルを通過する電解質溶液の液圧に耐えるように設計された非金属製ハウジング内に配置することができる。ハウジングは、非導電性で、電解質溶液に対して化学的に非反応性であり、且つシステム圧力、システムの高周波振動、および環境の低周波振動(船内など)に耐える十分な強度を有するものとすることができる。ハウジングは、最大16Barの圧力に耐える十分な強度を有することができる。ハウジングは、10m/sまでの電解質溶液流量に耐える十分な強度を有することができる。ハウジングは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、繊維強化ポリマー(FRP)、またはその他の適切な材料のうちの1つ以上を含むことができ、いくつかの実施形態では、例えば、ポリマーマトリックスに埋め込まれたガラス繊維または炭素繊維などの強化要素を含んでもよい。電極コネクタは、ハウジングの端部でハウジングの壁の外まで延在させることができる。いくつかの実施形態では、電極コネクタは、ハウジングの両端でハウジングの壁の外まで延在させてもよい。
【0061】
図3A~3Cに示されるように、電気化学セル1000は、電極1020と1040との間の隙間を維持するように構成された1つ以上のセパレータ1180を含むことができる。セパレータ1180は、電極1020と1040との間(
図3Cに示される)、例えば陰極と陽極との間に存在するように配置することができる。流体チャネル(
図3Cにおいて電極1020と1040との間に示される)を維持するために、セパレータ1180は、電極1020と1040との間の隙間の幅を維持する高さを有し、電極1020と1040を局在させるとともに、管の同心性を維持するように寸法決めしてよい(
図3Bに示される)。セパレータ1180は、流体がチャネルを流れることを許容する寸法にしてよい。
【0062】
図7A~7Bは、セパレータ1180の別の実施形態を示す。
図7Aに示されるように、各セパレータ1180は、電極管1020、1040の端部に付着するように構成し配置することができる。セパレータは、
図7Bに示すように電極管1020、1040内に配置することができる。セパレータ1180は、電極または電気コネクタと結合する1つ以上の機構部1186を含み得る。本明細書で使用される「結合」は、2つ以上の要素間の接続を指す。接続は機械的および/または電気的としてよい。結合機構部は、電極または電気コネクタに対するセパレータの回転を防止し、位置合わせを維持するために使用することができる。
図7C~7Dに示されるようなモールド成形された機構部1186は、他の結合要素の必要性を軽減し、電気化学セルの組み立てを容易にすることができる。いくつかの実施形態では、セパレータは、電極管と結合して同心電極管の同心性を維持するように構成されたスロット、クランプ、または一体型接続機構部を備えてもよい。
【0063】
セパレータは、高圧に耐えることができる化学的に不活性な非導電性材料で構成することができる。いくつかの実施形態では、セパレータは、最大16バールの圧力、システム高周波振動、および環境低周波振動(例えば、船上)に耐えるように構成することもできる。セパレータは、最大10m/sの電解質溶液流量に耐えるように構成することもできる。セパレータは、プラスチックまたはセラミックで構成することもできる。セパレータは、1つ以上のPVC、PTFE、PVDF、ABS、HDPE、FRP、または他の適切な材料で構成することもできる。いくつかの実施形態では、製造および組み立てを容易にするために、セパレータは射出成形することもできる。
【0064】
セパレータなどのフロー機構部は電解質溶液の流れを妨げる傾向があり、セパレータの下流に速度低下領域(「速度低下ゾーン」とも呼ばれる)を生じる。前述したように、平均流速の低下は電気化学セルの自己洗浄性を損なう可能性がある。したがって、自己洗浄速度未満の平均速度は、セパレータから下流の流体チャネルの所定の長さ以内で解消しなければならない。セパレータのない自己洗浄式電気化学セルは、電気化学セルの入口から例えば20mm以内で速度低下ゾーンを解消することができる。いくつかの例示的な実施形態では、
図4に示すように、速度低下ゾーンがセパレータから140mm以内で解消されるとき、自己洗浄特性が満たされる。いくつかの実施形態によれば、セパレータは、20mm以内で(
図4)または60mm以内で(
図5)速度低下ゾーンを解消するように寸法決めすることができる。
【0065】
速度低下ゾーンは、電解質溶液の流速がチャネルを通る溶液の平均流速または自己洗浄速度よりも低い領域と定義することができる。セパレータにより生じる速度低下ゾーンは一般にセパレータの下流に位置するが、電気化学セル内には他の速度低下ゾーンが存在し得る。いくつかの実施形態では、速度低下ゾーンは、平均電解質溶液流速が自己洗浄速度または流体チャネルを通る平均速度よりも少なくとも2%、5%、10%、15%、20%、または25%低い領域と定義される。少なくとも2m/sの自己洗浄速度または平均流速を有する例示的な電気化学セルに対して、速度低下ゾーンは、2m/sより低い任意の流速と定義することができ、例えば2m/sより少なくとも25%低い流速(たとえば、1.5m/s)未満、2m/sより少なくとも20%低い流速(たとえば、1.6m/s)未満、2m/sより少なくとも15%低い流速(たとえば、1.7m/s)未満、2m/sより少なくとも10%低い流速(たとえば、1.8m/s)未満、2m/sより少なくとも5%低い流速(たとえば、1.9m/s)未満、2m/sより少なくとも2%低い流速(たとえば、1.96 m/s)未満とすることができる。
【0066】
速度低下ゾーン内の任意の平均流速に関して、該ゾーンは、流体速度が自己洗浄流体速度に等しいか電気化学セル内の平均流体速度に等しい平均バルク速度に回復するとき終了する。例えば、速度低下ゾーンは、平均流体速度が2m /s(または他の任意の自己洗浄速度)に達するとき解消する、所定の速度プロファイルを有し得る。いくつかの実施形態では、速度低下ゾーンは、その平均流体速度が自己洗浄速度または電気化学セル内の平均速度の1%、2%、5%、または10%以内の速度に達するとき、終了する。したがって、2m /秒の自己洗浄速度を有する例示的な電気化学セルの場合、平均流体速度が2m /秒、1.98m /秒(1%以内)、1.96m/ s(2%以内)、1.9m/s(5%以内)、または1.8m/s(10%以内)に回復するとき、速度低下ゾーンは終了することができる。いくつかの実施形態では、速度低下ゾーンは、平均流体速度が入口流体速度、例えばセパレータの上流の流体速度に回復するとき終了する。速度低下ゾーンは、平均流体速度が入口流体速度の1%、2%、5%、または10%以内の流体速度に回復するとき終了することができる。
【0067】
速度低下ゾーンは、電気化学セルを通るバルク電解質溶液の平均流速からの速度偏差によって特徴付けることもできる。速度低下ゾーン内の速度差は、通常、速度低下ゾーンとセパレータの境界(つまり、セパレーターのすぐ下流)で最大になる。この速度差は、その差が電気化学セルの平均流速からあるパーセンテージ以内になるまで、下流で正規化する傾向がある。例示的な実施形態では、速度差は、
図22のグラフの曲線に従う。いくつかの実施形態では、速度低下ゾーン内の速度偏差は、平均流速の±20%を超えず、例えば±18%を超えず、±15%を超えない。速度低下ゾーンは、速度差が平均流速の±5%以内、±2%以内、±1%以内であるときに終了し得る。平均流速は、定義により、平均速度であるため、速度差は、電気化学セルの長さ全体にわたって自己洗浄速度からわずかなパーセンテージ内にとどまり得ると考えられる。
【0068】
セパレータは、セパレータの下流の流体チャネルで自然に発生する速度低下ゾーンを最小化するように設計することもできる。電気化学セルの自己洗浄特性を維持するために、速度低下ゾーンは最小化される。セパレータは、速度低下ゾーンを所定の長さ以内に維持するように寸法決めすることができる。一般に、速度低下ゾーンの所定の長さは、流体チャネルを通る平均流速および/または電解質溶液の組成に基づいて、スケーリングを最小限に抑えるまたは排除するように選択することができる。所定の長さは、例えば、流体チャネルの長さの約2%~5%、例えば約5%未満としてよい。いくつかの実施形態では、所定の長さは、流体チャネルの約5%、4%、3%、2%、または1%未満としてよい。特定の電解質溶液は、他の電界質溶液より大きな所定の長さを許容し得る。電解質溶液の組成、硬度、および温度は、電気化学セルの耐スケーリング性の決定に影響を与え得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、所定の長さは、流体チャネルの幅に関して記述される。例えば、流体チャネルの幅に対する速度低下ゾーンの長さの比は、120~3.5未満とし得る。この比は、3.5mmのチャネル幅に対して120mm未満の長さ、3.0mmのチャネル幅に対して102.8mm未満の長さ、幅2.5mmのャネルに対して85.7mm未満の長さ、等を持つ速度低下ゾーンに対応する。速度低下ゾーンの長さ対流体チャネルの幅の比は、100対3.5、60対3.5、または20対3.5未満とし得る。いくつかの実施形態では、所定の長さは、2.0m/秒~2.5m/秒の平均流速、たとえば、2.0m/s、2.1m/s、2.2m/s、2.3m/s、2.4m/または2.5m/sで流体チャネルを流れる電解質溶液に対して140mm、120mm、100mm、60mm、または20mm以内とし得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、セパレータは、所定のフロー領域のみをチャネルに通過可能にすることによって速度低下ゾーンを最小化するように設計される。セパレータは、流体チャネルのフロー領域の所定のパーセンテージを占める断面積を有するように寸法決めしてよい。例えば、セパレータは、流体チャネルのフロー領域の10%から35%の間の断面積を有するように寸法決めしてよい。セパレータは、流体チャネルのフロー領域の約10%、15%、20%、25%、30%、または35%未満の断面積を有するように寸法決めしてよい。一般に、セパレータは、流体チャネルを支持しながら、可能な限り小さい断面積を有するように(すなわち、最大の溶液フローを可能にするように)設計してよい。セパレータの断面積は、電気化学セルの自己洗浄特性を維持するために、セパレータの下流で発生する速度低下ゾーンを最小限に抑えながら、電極管への適切な支持を提供し同心性を維持するように設計することがでる。
【0071】
セパレータは、電解質溶液の平均速度からの偏差を、流体チャネルを通る電解質溶液の平均流速の±20%、たとえば±18%、または±15%以内に維持するように設計することができる。セパレータは、セパレータの下流の平均からの速度偏差を最小限に抑えるように寸法決めすることができる。たとえば、セパレータは、セパレータのすぐ隣における平均からの速度偏差を最小化することができる。いくつかの実施形態では、平均からの速度偏差を最小限に抑えるために、セパレータはアクアライン化してよい。本明細書で説明されるように、「アクアライン化」とは、溶液の流れに対して流線形化された形状を有する構成要素を意味し得る。アクアライン化は、平均からの下流の速度偏差を最小にする形状を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アクアライン化された形状は、下流に渦を全くまたはほとんど形成しない。アクアライン化形状は、層流を提供するものに限定する必要はなく、乱流で囲まれてもよい。いくつかの実施形態では、アクアライン化形状は、電気化学セルを通る電解質溶液の流れの乱流に殆ど寄与しない。
【0072】
特定の実施形態によれば、
図6Aに示すように、セパレータは、リング1182と、リング1182から延びる複数の突起1184とを備えることができる。セパレータは突起1182間で流体の流れを可能にする(例えば、
図3Cに示す)。セパレータの位置合わせのために設けられた機構部1186はリング1182上に、例えば、隣接する突起の間に、配置することができる。突起1184は、チャネルを通る流体の流れを可能にしつつ、電極管の間の隙間を維持するために設けることができる。したがって、突起は、流体チャネルの幅を維持する高さを有するように寸法決めすることができる。
図6B~6Dに示すように、Hは流体チャネルの幅に本質的に等しい突起の高さであり、Wは突起の幅であり、Lは流体チャネルに沿った突起の長さである。突起1184は、一端でリング1182に取り付けられ、リングから半径方向外側に、またはリングから半径方向内側に延在してよい。突起がリングから半径方向外側および半径方向内側に延在する実施形態では、
図6Aに示されるように、高さは、流体チャネルの幅の半分に本質的に等しくてよい。
【0073】
典型的には、突起は、
図6Cおよび
図6Dに示されるように、長さL(フローチャネルの下り方向に規定される)を有し得る。さらに、突起は、流れる電解質への抵抗を低減するために、流線形化またはアクアライン化してよい。いくつかの実施形態では、突起は、球形、円筒形、卵形、涙滴形、アーモンド形、ダイヤモンド形(細長いまたは対称)、または丸みを帯びた三角形であってもよい。突起は、円形、楕円形、三角形、ダイヤモンド形、または涙滴の断面形状を有してもよい。
【0074】
セパレータは、一般的に、電極管を支持するのに十分な突起を備えてよい。いくつかの実施形態では、セパレータは、2~8個の突起、例えば、3~6個の突起を有してもよい。セパレータは、例えば、3、4、5、または6個の突起を有してもよい。リングと突起の寸法は、速度低下ゾーンを最小化するように設計することができる。例えば、突起の数および配置は、速度低下ゾーンを最小化するか、または速度低下ゾーンを所定の長さ以内に維持するように選択することができる。したがって、セパレータは、流体チャネルの流れ断面積の10%から35%の間のセパレータ断面積を生じる数および幅の突起を有することができる。いくつかの実施形態では、突起は、(例えば、
図6Aに示されるように)均等な支持を提供するために、リング上に実質的に等間隔に配置することができる。同様に、突起の長さおよび幅は、速度低下ゾーンを最小化するか、または速度低下ゾーンを所定の長さ以内に維持するように選択することができる。突起は、電極に十分な構造的支持を提供するが、実質的に過度の流れ抵抗をもたさない幅(例えば、突起の数に基づく)有するように寸法決めすることができる。特定の材料に関して、突起は、適切な支持も提供する製造可能な最小幅が存在し得る。いくつかの実施形態では、突起は、高さの0.5~2倍、例えば、高さの0.5~1倍、または高さの1~2倍の幅を有するように寸法決めすることができる。
【0075】
典型的な電気塩素化セルは1~5mmのチャネル幅を有し得る。そのような電気化学セルは、0.5~3mmの幅のリング、1~5mmの高さ(チャネル幅に対応)を有する突起、1~10mmの幅を有する突起、および1~10mmの長さを有する突起を有するセパレータを含み得る。例示的な電気化学セルは、3.0mm~3.5mmのチャネル幅を有し得る。そのような電気化学セルは、1mmの幅を有するリングと、2.5~7mmの幅および5~10mmの長さを有する突起とを含むことができ、長さは幅より長い。リングは、流体チャネルのほぼ中央に配置され、突起がリングから両方向に延びていてもよい。この例示的なリングの突起の高さは、端から端までの測定値とすることができる。いくつかの実施形態では、リングは電極の一方に対して配置され、突起は反対側の電極に向かって実質的に一方向に延びる。
【0076】
前述のように、電気化学セルは、複数の同心管電極、例えば、3、4、または5つの同心管電極を含むことができる。同心管電極が追加されるごとに、追加の陰極電極表面、追加の陽極電極表面、および追加の流体チャネルが提供される。各流体チャネルは各隣接する陰極と陽極との間に画定され、各流体チャネルは他の流体チャネルおよびハウジングの中心軸と実質的に平行に延在することができる。さらに、各流体チャネルは、流体チャネルを維持するために電極間に存在するセパレータと関連付けることができる。したがって、電気化学セルは、同心電極間に存在する複数の同心セパレータを備えることができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、例えば、
図16に示されるように、電気化学セル1000は、複数の連続する電極1020、1022を備えることができる。連続する電極1020、1022は、ハウジング(
図16には図示せず)の長さに沿って配置することができる。
図17A~17Cに示すように、電気化学セル1000は、連続する電極1020、1022の間に配置された1つ以上のセパレータ1200を含むことができる。セパレータ1200は、(例えば、スロット、クランプ、または電気接続部等の機構部によって)連続する電極1020、1022と結合するように設置、配置、および構成し、電極を電気化学セル内に位置づけることができる。さらに、例えば、同心電極1020、1040および連続する電極1020、1022が存在する場合には、
図18Aおよび18Bに示されるように、複数の同心セパレータ1200を連続する電極1020、1022間に配置し、連続電極の同心性を維持するように構成することができる。
【0078】
連続する電極の間に配置されるセパレータは、複数の隣接するリング1220を備えてよい。隣接するリング1220のいくつかの実施形態は、
図19-21に示されている。例えば、セパレータは、2つ、3つ、または4つの隣接するリングを備えてよい。いくつかの実施形態では、隣接するリングの少なくとも1つは前述したような複数の突起を備える。隣接するリングは、互いにおよび/または隣接する連続電極と結合するように構成してよい。セパレータの下流に存在する速度低下ゾーンを低減するために、隣接するリングの間に生じる隙間を最小限にすることができる。例えば、前述のように、連続するリング間の隙間は、速度低下ゾーンを所定の長さ以内に維持するように寸法決めすることができる。いくつかの実施形態では、実効隙間を低減し、ひいては速度低下ゾーンを低減するために、隣接するリングの間を封止することができる。
【0079】
隣接するリング間の隙間は、セパレータの幅、例えばセパレータのリングの幅の1.60倍未満とし得る。例えば、セパレータは、1から3mmの間の幅を有するリングを備えてよい。隣接するリング間の隙間は、4.80mm未満、3.20mm未満、または1.60mm未満とし得る。隙間の幅は、0.5~4.80mm、0.5~3.20mm、または0.5~1.60mmとし得る。例示的な実施形態では、セパレータは、1mmの幅を有する複数の隣接するリングを含むことができ、複数のリングの各2つの間の隙間は、0.5~1.60mmの幅を有する。一般に、隣接するリング間の隙間の幅は、物理的に可能な限り小さくなるように寸法決めすることができる。製造が可能であれば、隣接するリングの間の隙間は実質的になくすことができる。
【0080】
特定の実施形態によれば、例えば、
図8Aおよび
図8Bに示されるように、電気化学セル1000は、ハウジング1160の遠位端にそれぞれ結合される入口および出口エンドキャップ1060および1080を含み得る。エンドキャップ1060、1080は、実質的に中心に位置する開口部1062を有し得る(エンドキャップの上面図および底面図である
図9Aおよび9Bに示される)。
図8Bの断面図に示されるように、開口部は電気化学セルの内部の陽極と陰極との間の流体チャネルと流体連通し得る。エンドキャップは、開口部と電気化学セルの流体チャネルとの間の流体連通を提供する流体導管1064(
図9Dの断面図に示される)をさらに含み得る。したがって、例えば電解質溶液などの流体は、入口エンドキャップの1つまたは複数の流体導管を通して電気化学セルに導入され、電極間の隙間、すなわち流体チャネルを通って流れ続けることができる。流体は、出口エンドキャップの流体導管を通って電気化学セルから出て、実質的に中心に位置する開口から出ることができる。
【0081】
エンドキャップ内の流体導管は、電気化学セル全体の圧力降下を最小限に抑えるように設計することができる。円筒導管では、粘性効果による圧力損失は長さに比例し、ダーシー-ワイズバッハの式によって特徴付けられる。
【数1】
ここで、
Δpは圧力損失(Pa)、
Lは導管の長さ(m)、
Dは水力直径(m)、
f
Dは摩擦係数(レイノルズ数、材料の絶対粗さと相対粗さ、および摩擦係数によって決定される)、
ρは流体の密度(kg/m
3)、および
〈v〉は平均流速(m/s)である。
【0082】
したがって、圧力降下は、長さ、水力直径、および導管の材料によって異なり得る。いくつかの実施形態において、流体導管の半径および/または長さは、電気化学セル内の圧力降下を最小化するように寸法決めし得る。さらに、流体密度と流速も圧力低下に影響を与え得る。
【0083】
圧力降下は、電気化学セルの入口圧力と出口圧力の差によって決定される。いくつかの実施形態では、圧力降下の最小化は、入口圧力を最小化することを含む。したがって、いくつかの実施形態では、入口エンドキャップの流体導管の半径および/または長さを所望の入口圧力を維持するように寸法決めすることができる。入口圧力は、例えば、125kPa、122kPa、120kPa、118kPa、117kPa、116kPa、または115kPa未満に維持することができる。ただし、入口圧力は、電気化学セルの適切な使用を促進する範囲内に維持する必要がある。入口圧力は、約115kPa~125kPa、例えば約117kPa~121kPaに維持することができる。出口圧力は、約100kPa~105kPa、例えば約101kPa~103kPaに維持することができる。最小化圧力降下は、製造および材料の制約により許容される限り、実質的に圧力降下なしに近づけることができ、例えば、25kPa、24kPa、23kPa、22kPa、21kPa、20kPa、19kPa未満、18kPa未満、17kPa未満、16kPa未満、15kPa未満またはそれ以下にすることができる。最小化圧力降下は、電解液の流体密度と平均流速(たとえば、そのような流体の自己洗浄流速)により決定され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、流体導管は、第1の半径のゾーンと、第1の半径よりも大きい第2の半径のゾーンとを含む。第1の半径のゾーンは実質的に中心に位置する開口部に隣接させ、第2の半径のゾーンは流体チャネルに隣接させることができる。例示的な実施形態では、入口エンドキャップの流体導管は、第1の直線部分、半径方向拡大部分、および第2の直線部分を有し、第1の直線部分は第1の半径に対応し、第2の直線部分は第2の半径に対応せせることができる。エンドキャップは、ハウジングの端部と結合する機構部を備えることができる。
【0085】
エンドキャップは、高圧に耐えることができる化学的に不活性な非導電性材料で構成することができる。いくつかの実施形態では、エンドキャップは、最大16バールの圧力、システムの高周波振動、および環境の低周波振動(例えば、船上)に耐えるように構成することができる。エンドキャップは、最大10m/sの電解質溶液流量に耐えるように構成することができる。エンドキャップは、プラスチックまたはセラミックで構成してよい。エンドキャップは、PVC、PTFE、PVDF、ABS、HDPE、FRP、または他の適切な材料の1つまたは複数で構成してよい。
【0086】
図10Aおよび10Bに示されるように、電気化学セルは、エンドキャップ1060の流体導管内に配置され且つ流体チャネルへの溶液の流路を規定するように構成された錐体部1120をさらに備えることができる。錐体部1120は、流体チャネルへの流路を規定するためにハウジング1160に結合することができる。いくつかの実施形態において、錐体部は、電極1020(
図11Aに示される)、電気コネクタ1240(
図11Bに示される)、または電気化学セルの他の要素に結合され、流体チャンネルへの流体流路を規定することができる。したがって、錐体部は流体チャネルの内径に等しいかまたはほぼ等しい基部直径を有することができる。
【0087】
前述したように、電気化学セル全体の圧力降下は水力直径によって異なり得る。入口錐体部1120、出口錐体部1140、またはその両方(
図8Bに示す)は、例えば流路の水力直径を変えることにより、電気化学セルの両端間の圧力降下が最小化されるように設計することができる。
図12は、例示的な電気化学セルの両端間の圧力降下のコンター図である。
図12に示されるように、流体チャネルの両端間に圧力差がある。入口エンドキャップの流体チャネルの寸法を変えることは、
図3A-Cに示されるように、入口圧力に影響を及ぼし得る。加えて、入口錐体部の寸法を変えることも、
図14Aに示され且つ
図14Bのグラフにデータで示されるように、圧力降下に影響を及ぼし得る。
【0088】
圧力降下を最小化することは、例えば、流体導管と錐体部の間に実質的に一定の流れ断面を維持することを含み得る。一般的に、錐体部は、流体チャネルに対応するように寸法決めされた基部を有してよい。環状流体チャネルの場合、基部は、環状流体チャネルの内径と実質的に一致する直径を有してよい。圧力低下を低減するために流体導管の寸法を設計することに加えて、錐体部の高さ、頂角、底角、および斜高の1つ以上を電気化学セル全体の圧力降下を最小限に抑えるように寸法決めすることができる。入口錐体部、出口錐体部、またはその両方は、20°から90°の間、たとえば30°から80°の間、または40°から60°の間の頂点角を個別に有してよい。入口錐体部、出口錐体部、またはその両方は、電気化学セル全体の圧力降下を最小限に抑えるために、必要に応じて10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°の頂角を有してよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、例えば、
図15Aおよび
図15Bに示されるように、電気化学セルは、出口錐体部の代わりに出口錐台部1122を含んでよい。出口錐台部1122は、出口エンドキャップ1080の流体導管1064内に配置され、電気化学セルから出る溶液の流路を規定するように構成することができる。出口錐台部1122は、コンター図に示されるように、電気化学セル全体の圧力降下がさらに減少するように寸法決めすることができる。出口錐体部を出口錐台部に変更することにより、出口エンドキャップの総流路面積が増加し、圧力低下がさらに減少する。
【0090】
エンドキャップの流体導管は、溶液の十分に成長した流れを可能にするような寸法にすることができる。さらに、流体導管と錐体部の間に規定される流路は、溶液の十分に成長した流れを維持するように寸法決めすることができる。本明細書で使用されるように、十分に成長した流れは、流体導管を通る流れの境界層が膨張して導管全体を満たすとき発生し、流れ特性は導管の残りの長さにわたって実質的に同じままとなる。流入長さは、流体の流れが十分に成長するために必要な導管の長さである。流路の長さは、導管と錐体部の間を移動する流れが十分に発達した流れになるようにおよび/または維持されるように、特定の溶液の流入長さより大きくすることができる。
【0091】
流路は、錐体部と流体導管の間の空間によって決定される水力直径を有することができる。いくつかの実施形態では、流路は、十分に成長した流れを維持するために、流体導管の大きな直線部分(すなわち、第2の半径のゾーン)の長さの2~10倍の水力直径を有することができる。流路は、第2の半径のゾーンの長さの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍の水力直径、または特定の電解質溶液の十分に成長した流れを維持するために必要な水力直径を有することができる。一般に、第2の半径のゾーンの長さは、適切な入口圧力と電気化学セル全体の圧力降下を維持しながら、可能な限り大きくすることができる。
【0092】
エンドキャップは、電極に電流を供給するための電気コネクタを組み込むことができるとともに、電気化学セルに空気圧シールを提供することができるので、潜在的に2つの目的に役立ち得る。例えば、エンドキャップは、電気化学セルの両端に固定されたとき、空気圧的に密閉されたチャンバーを形成し得る。キャップは、ガス導管の空気圧的および電気的経路の構成を提供し得る。
【0093】
図23A~23Dに示されるように、電気化学セル1000は、電極の遠位端に配置され且つ電極に電気的に接続された電気コネクタ1240を含むことができる。電流は、電気コネクタを介して電気化学セルに供給され、電極およびプロセス流体を通ってセル内を移動し、対応する接地接続を介して電気化学セルから出ることができる。電気化学セルに供給される最大電流は、一般に約3000A/m
2未満の動作電流密度で規定される。動作電流密度は、電極のコーティングと内部電極表面積によって異なり得る。電気化学セルの設計において、抵抗値は電気コネクタの表面積、印加電流、セル材料の抵抗率、およびセルの熱容量率によって変化し得る。
【0094】
電気コネクタは、任意の導電性で耐腐食性の材料で作ることができる。いくつかの実施形態では、電気コネクタは、1つ以上の電極と同じ材料、例えばチタンで作ることができる。電気コネクタは、例えば、結合機能部または溶接によって電極に固定することができる。電気コネクタは、連続的な導電性シートから製造することまたは溶接さもなければ導電的に接合される機能部を含むことができる。従来、電気コネクタは製造が簡単であるが、流線形に設計されていない。したがって、従来の電気コネクタは、一般に、下流に大きな低流速領域を生じる。
【0095】
本明細書に開示される多管型電気化学セルの第1の端部に第1の電気コネクタを設けて陽極電極管への電気接触を提供し、第2の電気コネクタを本明細書に開示される多管型電気化学セルの第2の端部に設けて陰極電極管への電気的接触を提供することができる。同心電極管の間の隙間に流体を流すことができるように電気コネクタに開口部を設けることができる。電気コネクタのスポークは、例えば電極管および/またはスペーサと係合させるために、例えばスロット、タブ、ピン、および/または突起などの位置決め要素を間隔を置いて備えることができる。電気コネクタの外縁を単一のコネクタまたは複数のコネクタを用いて電源に接続することができる。
【0096】
電気コネクタと電源からの電線間の接続は、安全と腐食防止のために、例えばガスケット、ネジ及び/又はボルトなどで密閉し、環境から隔離することができる。防水コネクタ(例えば、IP54コネクタ)を使用して、電気コネクタを電源に接続することができる。特定の実施形態は、オペレータを感電の危険から保護するとともに高価な耐候性筐体を不要にする高い防塵房水保護(IP)等級も提供し得る。例示的な実施形態では、電気コネクタを封止および絶縁するために、例えば、ABS、U?PVC、C?PVC、および/またはPVDF材料を使用する高密度プラスチック配管部品を使用することができる(これらの材料は、例えば、次亜塩素酸ナトリウムに対して耐薬品性を有するとともに約5~約15バールの範囲の高い達成可能な圧力定格を有するため)。市販の高IP定格ケーブルコネクタを使用して、電極との間で電流をやり取りできる。
【0097】
電気コネクタは、電気抵抗と発熱を最小限に抑えるように設計することができる。一般に、電気抵抗は装置の形状と材料の抵抗率の関数である。発熱はジュールレンツの法則に従って抵抗の増加とともに増加する。この法則は、電気導体により発生される熱量はその抵抗と電流の2乗の積に比例すると定義している。直列で動作する場合、各電気化学セル内で発生する熱は直列に累積されるため、最小限に抑える必要がある。ただし、目的の製品を生成するには、印加電流を適切な範囲内に維持する必要がある。したがって、いくつかの実施形態では、電気コネクタは、適切な電流を提供しながら、所定の材料の抵抗(したがって、発熱)を最小限に抑えるように寸法決めすることができる。
【0098】
例示的な実施形態では、電気コネクタはチタンベースであってよい。電気コネクタは、25Wと1.5kWの間、例えば25Wと100Wの間、100Wと1kWの間、または1kWと1.5kWの間、の電力を電極に伝送するように動作してよい。電気コネクタは、約100W未満の熱、例えば、約75W未満の熱、約50W未満の熱、または約25W未満の熱を発生するように寸法決めしてよい。いくつかの実施形態では、電気コネクタは、複数の電極のうちの少なくとも1つに少なくとも100Wの電力を伝送するときに約25W未満の熱を発生するように寸法決めしてよい。そのような実施形態では、電気コネクタは、少なくとも100Wの電力を伝送するとき、1℃未満、例えば、約0.5℃未満または約0.1℃未満を発生するように寸法決めしてよい。
図25Cは、電気コネクタで発生した熱のコンター図である。
図25Cの例示的な実施形態に示されるように、流体の温度は、入口における約20.05℃から電気コネクタの後で20.10℃まで上昇し、電気化学セルの出口で約20.07℃になる。他の実施形態では、電気コネクタは、少なくとも1kWの電力を伝送するときに約25W未満の熱を発生するように寸法決めされ、少なくとも1kWの電力を伝送するときに約100W未満の熱を発生するように寸法設定され、少なくとも1.5kWの電力を伝送するときに、約100W未満の熱を発生するように寸法決めされる。送信される電力は、動作要件に応じて決めることができる。
【0099】
電気コネクタは、電気コネクタの下流で生じる速度低下ゾーンを最小化するように設計することができる。
図25Dは、例示的な電気コネクタの下流の速度のコンター図である。セパレータに関して前述したように、電気化学セルの自己洗浄特性を維持するために、速度低下ゾーンは最小化される。電気化学接続部は、前述したように、速度低下ゾーンを所定の長さ以内に維持するように寸法設決定することができる。
【0100】
電気コネクタはさらに、同心電極の周りに実質的に均一な電流分布を提供するように設計することができる。内側電極1020および外側電極1040の周りの電流分布が
図25Bに示されている。電気コネクタは、実質的に均一な電流分布を提供するために、対称または実質的に対称の形状にしてよい。
【0101】
図24A~24Cに示されるように、電気コネクタ1240は、ホイール1242およびスポーク1244を含み得る。各ホイール1242は、対応する電極管への電気接続を提供するように構成し得る。したがって、複数の同心電極管を備えた実施形態では、電気コネクタは対応する同心ホイールを含んでよい。スポークは、同心ホイール間の電気接続を提供するように構成してよい。いくつかの実施形態では、スポークは、製造を容易にするためおよび抵抗を低減するために直線状にしてよいが、所望の任意の形状にしてもよい。スポークの電気抵抗は、以下の式で定義できる。
R=ρH/(WxL)
ここで、
Rは抵抗値、
ρは材料の抵抗率、
Hは同心ホイール間の隙間により決まるスポークの高さ、
Wはホイールの周囲のスポークの幅、
Lは流体チャネルに沿ったスポークの長さ
である。
【0102】
スポークの数と寸法は、電気コネクタによって生じる抵抗、発熱、および速度低下ゾーンを最小限に抑えるように選択することができる。個々のスポークの抵抗値は、約50W未満、たとえば約25W未満または約10W未満の抵抗損を生じるものとすべきである。スポークおよび電気コネクタの最大許容抵抗損は、電気化学セルを通って流れる特定の電解質溶液の熱容量率とともに、所望の電気化学反応に基づいて選択することができる。
【0103】
一般に、スポークの高さ(
図24BにHで示される)は同心ホイール間の隙間により決定され得る。したがって、高さは、流体チャネルの幅に実質的に対応し得る。いくつかの実施形態では、交互電極が電気的に接続される場合、高さは実質的に2つ以上の同心流体チャネルの幅に対応してよい。高さは、約1mmから約20mmの間、例えば約20mm、約16mm、約14mm、約10mm、約8mm、約7mm、約6mm、約5mm、約3.5mm、約3 mm、または1つ以上の流体チャネルの幅と実質的に同等の高さとしてよい。電気コネクタのホイールの幅が電極よりも小さい実施形態では、スポークの高さは、必要に応じ、同心の隣接または非隣接ホイール間の接続を提供するために1つまたは複数の流体チャネルの幅より大きくてもよい。
【0104】
スポークの幅(
図24BにWで示されている)は、同心ホイール間の適切な電気接続を提供しながら(セパレータに関して上述したように)速度低下ゾーンの長さを最小化するように寸法設定することができる。いくつかの実施形態では、スポークの幅は、スポークの高さの0.25倍から2倍としてよい。例えば、スポークの幅は、約0.5mmから約10mmの間、約0.5mmから約7mmの間、約0.5mmから約5mmの間、約0.5mmから約3mmの間、約0.5mmから2mmの間または約0.5mmから約1mmの間としてよい。スポークの幅は、約1mmから約20mmの間、約1mmから約15mmの間、約1mmから約12mmの間、または約1mmから約10mmの間としてもよい。スポークの幅は、流体の抵抗を減らすために必要なだけ小さくし得るが、同心ホイール間の電気的接続を提供するのに十分とし得る。いくつかの実施形態において、材料は小さな体積で適切な抵抗を提供するように選択することができる。従来、製造上の制約により、電気コネクタのサイズの選択が制限されていた。しかし、チタンは小さな体積で大きな抵抗率を提供し、速度低下ゾーンを縮小することができる。さらに、スポークおよび/またはホイールは、速度低下ゾーンをさらに縮小するために流線形にすることができる。
【0105】
スポークの長さ(
図24CにLで示される)は、所望の電力消費を維持しながら電気抵抗および発熱を最小化するように寸法設定することができる。所定の高さ(同心ホイール間の隙間)および幅(速度低下ゾーンを最小化するために選択された幅)に対して、長さは上記の式を用いて抵抗のしきい値に基づいて選択することができる。さらに、前述のように、抵抗は発熱を最小限に抑えるように選択することができる。いくつかの実施形態では、長さは、約1mmから約15mmの間、例えば、約5mmから15mmの間、または約7.5mmから15mmの間としてよい。
【0106】
電気コネクタの抵抗、発熱、電力消費、および速度低下ゾーンは、設けるスポークの数にも依存し得る。いくつかの実施形態では、スポークの数は、電気抵抗の最小化、発熱の最小化、速度低下ゾーンの最小化、または適切な電力消費を提供するように選択される。電気コネクタは、所望の要件を満たすために、必要に応じ、隣接するホイール間に約1~8本のスポーク、例えば約2~6本のスポーク、または約3~6本のスポークを含むことができる。
【0107】
一般に、スポークを流れる電流の量は、供給電流、管状電極の表面積、スポークの数と分布によって決まる。電気コネクタのスポークの配置は、ホイール全体の電流分布に影響を与え得る。いくつかの実施形態では、スポークは、均一な電流分布を提供するために実質的に均等に分布してよい。例示的な実施形態では、電流分布はスポークの数の増加とともに良くなり、スポークはホイール全体に実質的に均等に分布される。したがって、スポークの数と配置は、上述したように、電気化学セルの自己洗浄特性を維持するために速度低下ゾーンを所定の長さ以内に維持しつつ、適切な電流分布を提供するように選択することができる。
【0108】
さらに、隣接する同心ホイール上のスポークに対する第1のホイール上のスポークの配置は、電流分布に影響を与える可能性がある。隣接するホイールのスポークは同一線上に配置する(つまり、互いに整列配置する)か、または互いに角度的にずらせることができる。いくつかの実施形態では、隣接する同心ホイール上に設けられたスポークは、均一な電流分布を提供するために互いに実質的に均等にずらせてもよい。例示的な実施形態では、スポークの数の増加とともに電流分布が改善され、隣接する同心ホイールに設けられたスポークは実質的に均等にずらされる。
【0109】
【0110】
いくつかの実施形態では、
図29A~29Bに示すように、電気コネクタ1240は、セパレータ1180と嵌合する機構部を含むことができる。セパレータおよび電気コネクタの寸法は、要素の組み合わせによって生じ得る速度低下ゾーンへの影響を考慮して設計することができる。いくつかの実施形態では、セパレータの突起は、電気コネクタの1つまたは複数のスポークと同一直線上にあり、速度低下ゾーンを縮小することができる。他の実施形態では、セパレータの突起は、電気コネクタのスポークから角度的にずらせてもよい。
【0111】
さらに、電気化学セルの動作中、より高い電流が電気化学セルに注入されるときでも、動作温度を低く保つことが多くの場合望ましい。従来の電気化学セルは、通常、チタンの外殻に溶接されたチタンのみの電気コネクタを含んでいる。チタンの電気コネクタは一般に高度の耐薬品性を備えているが、望ましくない量の熱(および無駄なエネルギー)を発生せずに電気化学セルに電流を供給するのには最適ではない可能性がある。チタン製コネクタは抵抗率が高いため、従来のチタン製コネクタに供給する電流を制限し、空気中のコネクタの温度が過度に上昇しないようにする必要があり得る。しかし、これは、製品生成は電流入力に正比例するため、電気化学セルで生成される製品の産出量が制限されることになる。従来のチタン製コネクタは発熱するため、IP54以上の高い防塵防水レベルを有する電気絶縁材料でコネクタを完全に封入することはできない。この構成は、通常、カプセル封止された電気コネクタほど熱を閉じ込めない高価な電気エンクロージャを必要とする結果となる。これらの問題を克服するために、従来のチタン製コネクタは多くの場合大きな断面材料で作られ、電気コネクタと電気化学セルのコストを大幅に増加させている。
【0112】
銅の抵抗率は1.707x10-8Ωmで、チタンの抵抗率は7.837x10-7Ωmである。銅の電気抵抗率は、チタンの約46分の1以下の低抵抗率である。したがって、いくつかの実施形態では、電気コネクタは少なくとも部分的に低抵抗率の銅で作るのがよい。ただし、銅はチタンよりも化学腐食を受けやすいため、電気化学セルを流れる電解液と接触しないようにする必要がある。
【0113】
いくつかの実施形態では、プロセス流体または電解質(例えば、塩素などの微量の腐食性物質を含む海水)と接触する電気コネクタ部分はチタンとしてよい。この材料を流れる電流によって発生される熱は、流れるプロセス流体によって効率的に除去される。プロセス流体の自己洗浄流速は2m/sを超えるため、電気コネクタのチタン部分の温度上昇は一般に無視できる値に保たれる。空気と接触する電気コネクタ部分は、銅(またはチタンよりも抵抗率が低い別の金属または合金)としてよい。
【0114】
異なる金属、たとえばチタンと銅(またはチタンよりも抵抗率が低い別の金属または合金)で形成された部分を含む空気/液体冷却電気コネクタは、従来のチタンコネクタが示す問題を克服することができる。電気抵抗の低い金属(銅など)が、空気にさらされる電気コネクタの部分を形成するか、その部分に含まれてよい。銅は高導電性材料の一例であり、本明細書で開示される電気コネクタは、銅の代わりに別の高導電性材料または合金を使用できることを理解されたい。したがって、本明細書では便宜上「銅部分」および「銅」という用語を使用するが、これらの用語はこれらの要素が銅で形成されることに限定されないことを理解されたい。
【0115】
銅の優れた低電気抵抗により、温度上昇は小さい許容値に制限することができる。この外部導体は、処理液(海水など)と接触するコネクタの内部高耐薬品性(チタンなど)部分に結合することができる。プロセス液の水冷効果により、コネクタの内部高耐薬品性部分(チタンなど)の温度上昇は小さい許容値に効果的に制限することができる。
【0116】
デュアルメタル電気コネクタ全体は、同等の電流定格の従来のチタンのみのコネクタよりもコスト効率が高くなり得る。デュアル金属電気コネクタの外部導体は低い温度上昇を示し、電気絶縁材料でカプセル封止することができ、高価な電気エンクロージャの必要性がなくなる。また、空気/液体冷却デュアル金属電気コネクタの実施形態は、従来のチタンのみの電気化学セルコネクタの場合よりもはるかに高い電流を、開発した電気化学セルに供給することができる。
【0117】
チタン部分および銅部分は、電気化学セルのフランジ内で物理的および電気的に接続され、該フランジはコネクタ部分の周囲に気密シールを提供し、例えばガスケットを用いて外部環境から電気化学セルの内部を封止する。いくつかの実施形態では、チタン部分は、機械的締結具、例えばボルトによって銅部分に結合してよい。ボルト1420はチタン部分または銅部分と同じ材料から形成してよい。チタン部分は、電気化学装置の陽極または陰極の一方と電気接触するアームまたはスポークと、電解質などのプロセス流体を電気化学装置に流入または流出させる開口部を含んでよい。アームまたはスポークは、電気化学装置内の電極との係合を容易にする機構部、例えばスロットを含んでよい。チタン部分は、加えてまたは代わりに、締まり嵌めによって銅部分に結合してもよい。銅部分は、チタン部分から延びていても、チタン部分を完全に囲んでいてもよい。
【0118】
さらに、チタン部分は、銅部分の開口部の内側リムの相補的なねじ山と係合して銅部分の所定の位置にねじ込むことができるねじ付き外側リムを含んでよい。銅部分は、チタン部分の開口部にねじ込まれる下部円筒ねじ部分を含んでよい。
【0119】
さらなる実施形態では、銅部分は、例えば、チタンと銅の合金、または1つ以上の他の高導電性金属等の多金属電気コネクタと置き換えることができる。多金属電気コネクタはチタンよりも抵抗率を低くすることができる。多金属電気コネクタはチタン部分と溶接するか、さもなければ物理的に接続してもよい。
【0120】
流体が電気化学セルの中心管を下方に流れて隙間をバイパスするのを防ぐために、固体中心コア要素または流体フローディレクタを設けてもよい。コアは、非導電性材料、例えば、PVC、PTFE、PVDF、ABS、HDPE、または他の適切な材料のいずれか1つまたは複数で形成してもよい。コアは、陽極および陰極に機械的に接続しなくてもよい。他の実施形態では、コアを所定の位置に固定し、かつ/またはコアをハウジングまたは電気化学セルの別の要素、例えば電極またはエンドキャップに取り付けるために、1つ以上の機械的締付け具を設けてもよい。他の実施形態では、コアは、摩擦嵌合により最も内側の電極内の所定の位置に保持する。いくつかの実施形態では、コアは、陽極および陰極電極のうちの1つのみと接触してよい。陽極および陰極電極の1つはコアと接続しなくてもよく、コアと接触しなくてもよい。
【0121】
他の実施形態では、中央コア要素は、陽極電極および陰極電極の一方に電気的に結合され、陽極電極および陰極電極の一方に電流を供給するために使用し得る導電性部材としてよい。さらなる実施形態では、中央コア要素は、第1の軸方向母線および/または第1の軸方向母線と互いに絶縁された他の導電性中心要素および/または陽極および第2の軸方向母線に電気的に結合された他の導電性中心要素および/または第1の軸方向母線から電気的に絶縁され且つ陰極に電気的に接続された他の導電性中心要素を含んでよい。
【0122】
電気化学セルは内部バッフルを含んでもよい。バッフルは、電気化学セルを通過する流体の流れ方向および/または混合を制御または修正するために利用でき、バッフルがない場合の電気化学セルと比較して、流体流路に追加の路長を提供することができる。電気化学セルを通る流体の流れは、入口開口部から流体導管まで、または流体導管から出口開口部までとしてよい。
【0123】
本明細書に開示される電気化学セルは、より大きなシステムの一部として含まれ得る。システムは、いくつかの実施形態では、例えば船舶または石油掘削装置などの海上システムであり、他の実施形態では、例えば発電所、石油掘削施設またはシステムまたは他の産業施設などの陸上建物であり得る。他の実施形態では、システムは、電気化学装置の1つまたは複数の製品、例えば水を処理または殺菌するための殺菌剤を使用する、スイミングプール、または飲料水、廃水、または工業用水処理プロセスのための処理システムであってよい。
【0124】
システムは、本明細書に開示されるような1つ以上の電気化学または電気塩素化セルまたは装置を含み得る1つ以上の電気塩素化システムを含んでよい。システムは、例えば、入口エンドキャップの実質的に中央に位置する開口部を介して電気化学セルに流体接続可能な電解質溶液の供給源を含んでよい。電解質溶液の供給源は、本明細書に開示されているように、電解質溶液を自己洗浄速度以上の平均流速で流体チャネルを通して供給するように構成してよい。いくつかの実施形態において、電解質溶液の供給源は、約2m/秒以上の平均流速で溶液を供給するように構成される。
【0125】
電解質溶液の供給源は、いくつかの実施形態では、システムの外部および/または内部の供給源からの海水、ブライン、または汽水であるプロセス液体を含み得る。たとえば、システムが海上システムである場合、外部ソースは海洋であり、内部ソースは、たとえば船内のバラストタンクである。陸上システムでは、外部ソースは海洋であり、内部ソースはシステムで実行される工業プロセスからの汽水廃水であり得る。
【0126】
システムは、電解質溶液から製品化合物を生成し、製品化合物を含む製品溶液を出力するように構成することもできる。1つ以上の電気化学システムは、処理水または塩素処理水を例えば次亜塩素酸ナトリウムを含む溶液から生成し、それをユースポイントに分配することができる。システムは、例えば、電気化学セルの出口エンドキャップの実質的に中央に位置する開口部を介して、ユースポイントに流体的に接続可能にしてよい。ユースポイントは、貯蔵容器または分配所であってよい。ユースポイントは、システムの冷却水の供給源、船舶のバラストタンクの殺菌剤の供給源、石油掘削システムのダウンホール、または処理水または塩素処理水が有用である他の任意のシステムであってよい。ユースポイントは、例えば製品のバッチ再循環用濃縮容器を含み得る。さまざまなポンプがシステムを通る流体の流れを制御し得る。1つ以上のセンサが、システムを流れる流体の1つ以上のパラメータ、例えば、イオン濃度、塩素濃度、温度、または他の関心パラメータを監視し得る。
【0127】
ポンプおよびセンサはコントローラシステムと通信し、コントローラシステムはセンサおよびポンプと通信し、所望の動作パラメータを達成するためにポンプおよびシステムの他の要素の動作を制御し得る。システムの様々な要素の動作を監視および制御するために使用されるコントローラは、コンピュータ化された制御システムを含んでよい。出力装置はまた、生産水(例えば、汽水または海水)を電気化学システムまたはユースポイントに導入するために、および/またはポンプの速度を制御するために利用できるバルブ、ポンプ、またはスイッチを備えてもよい。
【0128】
1つ以上のセンサはまたコンピューターシステムへの入力を提供し得る。これらのセンサは、例えば、流量センサ、圧力センサ、化学濃度センサ、温度センサ、またはシステムに関心のある他のパラメータのためのセンサを含み得る。これらのセンサは、例えば、ユースポイントおよび/または電気化学システムの上流の、または供給源と流体連通するシステムの、これらのセンサが有用である任意の部分に設置できる。
【0129】
システムは、直列に配置された複数の電気化学セルを含むことができる。いくつかの実施形態では、システムは、直列に配置された約2~約10個の電気化学セルを含むことができる。直列の電気化学セルの数は、必要に応じて選択し、必要な特性を有する製品化合物を生成することができる。直列に配置された電気化学セルは、前述のように、圧力降下を最小限に抑えるように設計された構成要素を備えることができる。連続する順次の電気化学セルの圧力降下の影響は一般に累積的である。
【0130】
別の態様によれば、電気化学セルを動作させる方法が提供される。この方法は、本明細書に開示される1つ以上の電気化学セルを動作させるために使用することができる。この方法は、本明細書に開示されるように、電解質溶液を、例えば入口エンドキャップの実質的に中心に位置する開口部を通して電気化学セルに導入するステップを含むことができる。この方法は、複数の電気化学セルを流体接続し、電気化学セルを直列に動作させるステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、この方法は、電解質溶液を約2m/秒以上の平均流速で流体チャネルに導入するステップを含み得る。
【0131】
この方法は、自己洗浄型電気化学セル内で電解質溶液から製品化合物を生成するステップを含むことができる。電気化学セルは、製品化合物を生成するために、電極間に電圧、例えば製品化合物を生成するのに十分な電圧を印加することによって作動させることができる。製品化合物を生成するのに十分な電圧は、一般に、電解質溶液の組成、製品溶液中の製品化合物の所望の組成、電気化学セルを通る平均流速、および直列動作する電気化学セルの数に依存し得る。例示的な実施形態では、電極は一定の電流密度で動作し、平均流速が製品化合物の所望の組成を生成するために制御される。例えば、電気化学セルは、所望の組成の製品を生成するために、10m/s未満、6m /s未満、3.5m/s未満、3m/s未満、または2.5m/s未満の平均流速で運転される。同じ例示的な実施形態では、直列に配置される電気化学セルの数は、所望の製品を生成するために、例えば、10未満、8未満、6未満、4未満、または少なくとも2つの電気化学セルを選択し、必要に応じて直列に配置することができる。
【0132】
この方法は、所定の期間にわたって電気化学セルまたはシステムを連続的に動作させるステップをさらに含むことができる。前述のように、自己洗浄流速で連続的に動作する電気化学セルは、スケーリングを低減し、したがって電気化学セルの酸洗浄の必要性を低減することができる。いくつかの実施形態では、電気化学システムは、スケーリングすることなく少なくとも6ヶ月間連続して動作させることができる。そのような電気化学システムは、スケーリングなしで6、12、18、24、または36か月間連続して動作させることができる。
【0133】
例:
例1:電気化学セル全体の圧力降下
電気化学セルの流体導管と錐体部は、電気化学セル全体の圧力降下を最小限に抑えるように設計できる。例示的な実施形態において、いくつかの寸法の入口流体導管の両端間の電圧降下に関してCFDデータを生成した。このデータは、海水の電解質溶液および平均流速2m/sを想定しているが、他の電解質溶液およびそれらに対応する自己洗浄流速を用いて所望の条件を得ることがでる。いくつかの寸法の流体導管のコンター図が13A-13Cに示されている。
図13Aの例示的な実施形態は20mmの直線部分を有する。
図13Bの例示的な実施形態は50mmの直線部分を有し、その結果、平均入口圧力は119kPaになる。
図13Cの例示的な実施形態は75mmmの直線部分を有し、平均入口圧力は117kPaになる。図からわかるように、線形遷移領域への増加は圧力降下の同時減少をもたらす。
【0134】
さらに、一定の流体導管の直線長さ(40mm)において、複数の入口錐体部角度に対してCFDデータを生成した。データは、
図14A,14Bの速度コンター図に示されている。中心線に対する円錐の回転角度(つまり、頂角の半分)を10度から45度に増加させ、圧力降下を評価した。最小の圧力降下(約18.8kPaまたは2.725psi)は、頂角が50oの錐体部で観察された。
【0135】
40mmの直線部分を有する例示的な流体導管では、50°の頂角の入口錐体部が電気化学セル全体の圧力降下を最小化する。同様の条件が他の流体導管および/または錐体部の寸法についても決定され得る。同様の条件は他の電解質溶液および/または平均流速についても決定され得る。
【0136】
例2:セパレータおよび/または電気コネクタから下流の再循環効果
電解質溶液の平均流速がしきい値を下回ると、スケーリングが発生し得る。セパレータは、例えば、アクアライン形状とすることによって、下流の低流速領域を最小化するように設計することができる。
図30-
図31のマグニチュード速度コンター図に示されるように、ストレートエッジセパレーターのすぐ下流の流速は0m/sに近づくため、この場所でスケーリングが発生する確率が高くなる。矢印は流れの方向を指し、その長さが流れの速度の大きさを示す。
図30は、流体チャネルの側面図のコンター図を示し、
図31は、同じ流体チャネルの上面図のコンター図を示す。
【0137】
図32は、アクアライン形状のセパレータのマグニチュード速度コンター図である。
図32に示すように、下流の流れはより均一であり、平均からの速度偏差がより小さい。
図32に示される実施形態の平均からの速度偏差は
図22のグラフにプロットされている。海水の電解質溶液および2m/sの平均流速を想定すると、パーセント速度差は、(セパレータから)約100mmの距離において平均しきい値から±5%を超え得る。
【0138】
したがって、セパレータは、スケーリングを低減するために、平均からの速度偏差がより小さいより均一な下流の流れを生成するように設計することができる。このような設計は、速度低下ゾーンの長さを短縮し、より低い平均流速で動作する能力を追加し(より少ないエネルギーを必要とする)、電気化学セルの酸洗浄の必要性を低減または排除することができる。他の電解質溶液および/または平均流速についても同様の条件を決定することができる。
【0139】
例3:電気化学セル内のフローパラメーター
パイプ内の流れに対して、レイノルズ数は一般に次のように定義されている。
【数2】
ここで、
D
Hは管の水力直径、
Qは体積流量(m
3/s)、
Aは管の断面積(m
2)、
uは流体の平均速度(m/s)、
μは流体の粘性係数(kg/m*s)、
νは流体の動粘性係数(m
2/s)、
ρは流体の密度(kg/m
3)、
である。
【0140】
複数の流体チャネルを有する例示的な電気化学セルに対して、入口錐体部と流体導管の間のフロー領域を通る流体のレイノルズ数は57,847であると決定された。このような導管を通る近似助走距離は約380mmである。完全に発達した流れに対して、約2600を超えるレイノルズ数で乱流が発生しやすい。したがって、流体導管を通る流れは高度に乱流である。
【0141】
同じ電気化学セルに対して、同心円状の各流体チャネルを流れる流体のレイノルズ数は14,581であると決定された。流体チャネルの近似助走距離は約70mmである。流体チャネルを通るセパレータの下流の流れは層流に類似する。
【0142】
これらの値は、20℃の海水の電解質溶液および2m/ sの平均流速を想定している。他の電解質溶液および/または平均流速についても同様の条件が決定され得る。
【0143】
本明細書で使用される表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定と見なされるべきではない。本明細書で使用される「複数」という用語は、2つ以上の部品または構成要素を指す。「備える」、「含む」、「携帯する」、「有する」、「含有する」、および「伴う」という用語は、明細書または特許請求の範囲などにかかわらず、オープンエンドの用語であり、すなわち「含むがそれに限定されない」ことを意味する。したがって、そのような用語の使用は、その後に列記される部品、およびその同等物、ならびに追加の部品を包含することを意味する。ただし、移行句「から成る」および「本質的にから成る」だけは、それぞれ請求項に関する限定的または半限定的な移行句である。請求項において請求項の要素を修飾する「第1」、「第2」、「第3」などの順序用語の使用は、それ自体、1つの請求項要素のもう1つの請求項要素に対する優先度、順位若しくは順番、又は、方法のステップが実施される時間的順序を暗示するものではなく、ただ単に、ある名称の請求項要素の1つを同じ名称(順序を示す用語の使用がなければ)のもう1つの要素から区別して、請求項要素の見分けがつくようにするためのラベルとして用いられているだけである。
【0144】
このように少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明してきたが、様々な変更、修正、および改善が当業者に容易に想到し得ることは理解されるよう。任意の実施形態で説明される任意の特徴は、任意の他の実施形態に含めること、または他の実施形態の任意の特徴と置換することができる。そのような変更、修正、および改善は、本開示の一部であり、本発明の範囲内にあることが意図されている。したがって、前述の説明および図面は単なる例示である。