(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】新規な粘弾性溶液及びそのリウマチ学における使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/728 20060101AFI20220622BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220622BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220622BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220622BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220622BHJP
A61K 31/195 20060101ALN20220622BHJP
A61K 31/197 20060101ALN20220622BHJP
A61K 31/722 20060101ALN20220622BHJP
A61K 31/723 20060101ALN20220622BHJP
A61K 31/726 20060101ALN20220622BHJP
A61K 31/727 20060101ALN20220622BHJP
A61K 31/731 20060101ALN20220622BHJP
A61K 31/734 20060101ALN20220622BHJP
A61K 31/737 20060101ALN20220622BHJP
A61K 38/095 20190101ALN20220622BHJP
A61K 38/17 20060101ALN20220622BHJP
A61P 19/02 20060101ALN20220622BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20220622BHJP
【FI】
A61K31/728
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/26
A61K31/195
A61K31/197
A61K31/722
A61K31/723
A61K31/726
A61K31/727
A61K31/731
A61K31/734
A61K31/737
A61K38/095
A61K38/17
A61P19/02
A61P29/00 101
(21)【出願番号】P 2019571110
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(86)【国際出願番号】 FR2018050499
(87)【国際公開番号】W WO2018162830
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-01
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519324514
【氏名又は名称】ラボラトワール ドゥ リュマトロジ アプリケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サック-エペ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】スシュフト アラン
(72)【発明者】
【氏名】コンロジエ ティエリー
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-040236(JP,A)
【文献】特開平11-279205(JP,A)
【文献】特開2007-045734(JP,A)
【文献】特開平04-210611(JP,A)
【文献】特表2013-517263(JP,A)
【文献】特開2013-028599(JP,A)
【文献】Rheumatology and Therapy,2014年,Vol.1,pp.45-54,https://doi.org/10.1007/s40744-014-0001-8
【文献】Acta Orthopaedica Scandinavica,1973年,Vol.44, No.3 ,pp.249-255,https://doi.org/10.3109/17453677308988688
【文献】The Bulletin of Tokyo Medical and Dental University,1966年,Vol.13, No.2 ,77-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む粘弾性溶液:
- ヒアルロン
酸又は
その塩
である1~70mg/mlの多糖類、及び
- トラネキサム酸である1~70mg/mlの抗繊維素溶解剤。
【請求項2】
前記溶液は、10~30mg/mlの多糖類を含むことを特徴とする、請求項
1に記載の溶液。
【請求項3】
前記溶液は、10~50mg/mlの抗繊維素溶解剤を含むことを特徴とする、請求項1
又は2に記載の溶液。
【請求項4】
前記溶液は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール又はキシリトールから選ばれる多価アルコールを含むことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1つに記載の溶液。
【請求項5】
前記溶液は、0.1~100mg/mlの多価アルコールを含むことを特徴とする、請求項
4に記載の溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多糖類及び抗繊維素溶解剤を含む粘弾性溶液及びリウマチ学におけるこの溶液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関節は、解剖学では、2本の骨を接続し、互いに対する可動性を与えることを可能にする構造に対応する。関節は、それを構成する2本の骨以外に、骨の表面を覆う硝子軟骨、関節包の内側の滑膜により構成され、全ては筋肉の靭帯システムによって、安定化されている。可動性のある関節は、滑液の存在により特徴付けられる。滑液は、滑膜によって生じる生物学的流体であり、動きを滑らかにし、ショックを吸収して、関節軟骨を浸食から保護する。
【0003】
滑液流体は、電解質、ブドウ糖、タンパク質、糖タンパク質及びヒアルロン酸からなるプラズマ透析液である。ヒアルロン酸は、2種類の細胞:滑膜細胞及び軟骨細胞によって、インサイチュ(in situ)で合成される。滑液流体に、関節の適切な動作にとって重要な粘弾性特性を与えるのは、ヒアルロン酸である。
【0004】
骨関節炎は、軟骨基質の進行性劣化に関連する変形性関節症であり、種々の要因により発症する。主な要因は、年齢、過剰な機械的負荷(過体重、外傷、軸欠陥)、なんらかの代謝的要因(メタボリックシンドローム、II型糖尿病、肥満)及び遺伝的要因である。
【0005】
骨関節炎の場合、又は、異常な機械的過剰負荷に反応して、軟骨は、軟骨細胞がTGFβ及びIGF1を含む成長因子合成により修復しようとする初期の変化を受ける。同時に、活性化された軟骨細胞は、軟骨劣化を引き起こしている軟骨に、大量のプロテアーゼ、すなわちマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPsとも称される)を分泌する。このことは、プラスミノーゲン/プラスミン系の調節不良をもたらし、さらにMMPsの産生を刺激する。そうして、劣化の「悪循環」をもたらす。
【0006】
骨関節炎の主症状は、痛みである。この痛みを和らげるために、特に、副腎皮質ステロイドの関節内注射が60年以上使用されている。にもかかわらず、これらの注射が関節の炎症性の痛みを和らげ得るとしても、その効果は短期的なものである。そして、特に、関連する副作用のため、注射は1年に3又は4回を越えて繰り返し行うことができない。
【0007】
従って、効果的に痛みを和らげるとともに、副腎皮質ステロイドの使用に伴う不快な症状を抑制し得る代替治療を見出すために、研究が行われている。このような研究において、ヒアルロン酸をベースとする「関節内補充療法」と称される治療が見出されている。関節内補充療法は、通常ヒアルロン酸を含む粘弾性溶液を、骨関節炎の関節に注入することを含む。その目的は、関節を潤滑させ、摩擦現象を抑制し、これにより、軟骨の劣化に伴う痛みを抑制することである。実際、膝の骨関節炎では、滑液流体内のヒアルロン酸が、健康な滑液流体に比べて、質的にも量的にも、極めて著しく低下する。ヒアルロン酸は、水とともに、粘弾性の変形可能なゲルを形成する。このゲルは、関節の潤滑、及び、軟骨及び関節包靱帯(ligamentocapsular)構造の適切な動作に寄与する。
【0008】
そして、2つの世代の「関節内補充薬」は、1960年代の終わりから現れている:
-「第一世代」関節内補充薬と呼ばれる関節内補充薬は、ヒアルロン酸のみからなり、分子量、濃度、構造(直鎖又は架橋)又は量のような特徴においてのみ、互いに異なる。殺菌後において0.7×106Da~2×106Daの分子量を有するこれらの直鎖構造の製品は、0.8~2.5%の種々の濃度を有する場合、それらの濃度及び分子量に正比例する粘弾性特性を有する。架橋構造の製品は、架橋構造のタイプ、濃度、及び、注入量により区別される;
-「第二世代」関節内補充薬と呼ばれる関節内補充薬は、多価アルコール(マンニトール又はソルビトール)を含むヒアルロン酸溶液に関する。多価アルコールは、ヒアルロン酸分子を分解から保護することにより、関節内補充療法のパフォーマンスを高めることを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ヒアルロン酸は、現在リウマチ学において広く用いられているが、製品の効果に関しては依然として改善が必要である。実際、関節に注入されるヒアルロン酸溶液の安定性及び耐久性の問題により、経時的な潤滑効果が制限される。従って、骨関節炎患者の痛みを効果的に和らげるために、極めて頻繁に関節内注射を行う必要がある。従って、骨関節炎患者の快適さを向上させるために、関節内補充療法の治療において使用される関節内補充薬の安定性、延いては、関節内における滞在時間を延ばすことが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
全く驚くべきことに、トラネキサム酸のような抗繊維素溶解剤を添加することにより、関節内の関節内補充薬の安定性を大幅に向上させ得ること、そして、潤滑効果の持続時間を著しく延長させ得ることが判った。
【0011】
このように、本発明は、以下を含む粘弾性溶液に関する:
- ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、キトサン、キサンタン、アルギン酸塩及びカラギーナン、又はこれらの塩の1つから選択される多糖類、及び
- トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、プロタミン及びデスモプレシンから選択される抗繊維素溶解剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る粘弾性溶液は、関節内補充薬として使用され得るものであり、従来使用されている関節内補充薬と比較して、関節内において大幅に改善した安定性を有し得る。従って、それらの潤滑効果の持続時間は、実質的に延長される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】せん断速度の関数としての溶液の粘性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、:
用語「粘弾性溶液」は、健康な滑液流体と同等又はより大きいレオロジー特性(粘性及び弾性)を有するいかなる溶液をも意味する。溶液の粘性は、流体の非ニュートン挙動(non-Newtonian behavior)を評価するために、特に、円錐プレート型粘度計により6つの異なるせん断速度で測定され得る。また、溶液の(直鎖の)弾性は、低振幅振動のせん断強度試験により測定され得る。当該試験では、小さい正弦波せん断応力に対する変形の反応が、100~0.1Hzの間の10の振動数において測定される。
【0015】
- 用語「関節内補充薬」は、前記関節を潤滑し、軟骨劣化に伴う摩擦現象、延いては痛みを抑制するために、骨関節炎の関節に注入可能ないかなる粘弾性溶液をも意味する。
【0016】
- 用語「トラネキサム酸」は、その3つの形のトラネキサム酸を意味する。すなわち、シクロヘキサンの1,4位(パラ位)で分岐したカルボン酸基及びアミン基を有するリジンの合成誘導体、BOC-トラネキサム酸誘導体(アミン基がtert-ブトキシカルボニルにより保護された)及びFMOC-トラネキサム酸誘導体(アミン基がフルオレニルメトキシカルボニルにより保護された)である。
【0017】
- 用語「キサンタン」は、化学式C35H49O29で表される、ブドウ糖、マンノース単位及び及びこれらの分子の誘導体の組合せからなる五糖類の集合体の細菌発酵により得られる全ての多糖類を意味する。
【0018】
- 用語「アルギン酸塩」は、ナトリウム(アルギン酸ナトリウムとも称される)、カリウム、リチウムのようなアルカリ金属、メチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のような低級アミン及び置換アンモニウムカチオンと、アルギン酸の、全ての水溶性塩を意味する。
【0019】
- 用語「カラギーナン」は、紅藻から抽出された全ての直鎖多糖類の硫酸塩を意味し、その化学構造は、二糖類パターン又はD-ガラクトピラノースを形成するガラクトース及び無水ガラクトース分子の連鎖により表される。
【0020】
- そして、用語「塩」は、アルコール、ケトン、エーテル又は塩素化溶媒のような有機溶媒又は水系溶媒中でこの種の酸の作用によって生じる、医療の観点から許容可能な、追加的な無機酸塩又は有機酸塩を意味する。そのような塩の例としては、以下の塩を挙げることができる:ベンゼンスルホン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヨウ素酸塩、イセチオン酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチレン-ビス-b-オキシナフトエ酸塩(methylene-bis-b-oxynaphthoate)、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、サリチル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、テオフィリン酢酸塩(theophyllinacetate)及びp-トルエンスルホン酸塩。
【0021】
従って、本発明に係る粘弾性溶液は、上述のごとく、多糖類及び抗繊維素溶解剤を含む。好ましくは、本発明は、単独で、又は、組合わせて考慮される、以下の特徴を有する粘弾性溶液に関する:
多糖類は、ヒアルロン酸又はその塩の1つから選ばれる。好ましくは、多糖類は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸亜鉛から選ばれる。より好ましくは、多糖類は、ヒアルロン酸ナトリウムである;
多糖類の分子量は、10~4500kDa、好ましくは500~4000kDa、より好ましくは3000~3500kDaの範囲である;
溶液は、0.1~100mg/mlの多糖類、好ましくは1~70mg/mlの多糖類、より好ましくは10~30mg/mlの多糖類を含む;
抗繊維素溶解剤は、トラネキサム酸である;及び/又は、
溶液は、0.1~100mg/mlの抗繊維素溶解剤、好ましくは1~70mg/mlの抗繊維素溶解剤、より好ましくは、10~50mg/mlの抗繊維素溶解剤を含む。
【0022】
本発明に係る粘弾性溶液の例として、特に以下を挙げることができる:
- 多糖類としてのヒアルロン酸及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヒアルロン酸及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヒアルロン酸及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヒアルロン酸及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのコンドロイチン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのコンドロイチン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのコンドロイチン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのコンドロイチン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのケラタン(keratan)及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのケラタン及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのケラタン及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのケラタン及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのケラタン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのケラタン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのケラタン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのケラタン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのデルマタン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのデルマタン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのデルマタン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのデルマタン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヘパリン及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヘパリン及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヘパリン及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヘパリン及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヘパラン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヘパラン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヘパラン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのヘパラン硫酸及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのキトサン及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのキトサン及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのキトサン及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのキトサン及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのキサンタン及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのキサンタン及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのキサンタン及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのキサンタン及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのアルギン酸塩及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのアルギン酸塩及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのアルギン酸塩及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのアルギン酸塩及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのカラギーナン及び抗繊維素溶解剤としてのトラネキサム酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのカラギーナン及び抗繊維素溶解剤としてのε-アミノカプロン酸を含む粘弾性溶液;
- 多糖類としてのカラギーナン及び抗繊維素溶解剤としてのプロタミンを含む粘弾性溶液;又は
- 多糖類としてのカラギーナン及び抗繊維素溶解剤としてのデスモプレシンを含む粘弾性溶液である。
【0023】
粘弾性溶液は多価アルコールをさらに含むことができる。これにより、関節内において、分解に対するヒアルロン酸の保護をさらに改善することができる。このように、本発明は、上述のごとく規定された粘弾性溶液であって、さらに多価アルコールを含む粘弾性溶液にも関する。
【0024】
好ましくは、前記多価アルコールは、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール又はキシリトールから選ばれる。より好ましくは、多価アルコールは、マンニトール又はソルビトールである。
【0025】
好ましくは、本発明に係る溶液は、0.1~100mg/mlの多価アルコール、好ましくは1~70mg/mlの多価アルコール、より好ましくは5~50mg/mlの多価アルコールを含む。
【0026】
本発明に係る粘弾性溶液は、関節内に投与される。そうするために、溶液は、そのような投与に適合するどのような形態であってもよい。好ましくは、本発明に係る溶液は、0.1~20mlのガラス又はプラスチックポリマーのバイアルに収容されていてもよい。より好ましくは、溶液は、即時使用可能なシリンジに収容されていてもよい。
【0027】
本発明に係る粘弾性溶液は、対象の関節及びその悪化の進行具合に応じた可変的な体積で投与される。好ましくは、本発明に係る溶液は、0.1ml~10mlの量で投与される。
【0028】
本発明に係る粘弾性溶液は、連続スケジュールで投与されてもよいし、そうでなくてもよいし、また、一日のいかなる時間に投与されてもよい。好ましくは、本発明に係る溶液は、7~28日ごとに、より好ましくは7日ごとに投与される。治療期間は、患者及び症状の強度に応じて慎重に決定され得る。
【0029】
従って、本発明に係る粘弾性溶液は、関節内補充薬として使用され得る。従って、本発明は、上述のごとく、関節内補充薬としての粘弾性溶液の使用にも関する。
【0030】
本発明に係る粘弾性溶液の特性を考慮すると、その他の用途も考慮され得る。すなわち、本発明に係る粘弾性溶液はまた、以下の用途に使用され得る。
【0031】
- 美容医学において、小じわ及び深いしわを満たすために;
- 眼科学において、例えば白内障又は緑内障の手術、角膜移植、又は、眼内インプラントの処置等の、目の外科手術手順の間における細胞又は組織の保護、潤滑又は支持のために;又は、
- 泌尿器科学/婦人科学において、例えば、括約筋又は尿道の体積の増加、膣壁の潤滑又は細胞/組織の接着の低減を可能とするゲルとして。
【実施例】
【0032】
本発明は、以下の実施例によって、非限定的な方法で説明される。
【0033】
実施例1 -本発明に係る粘弾性溶液の作製-
以下の方法により、下記の表1~5に示される組成の粘弾性溶液A~Eを作製する。
【0034】
pHが7.0~7.3であり、NaCl塩の添加により容量オスモル濃度が260~320mOsm/kgに調整された、125mlのリン酸バッファを作製する。このバッファ溶液に、所望の量のトラネキサム酸及び次いでヒアルロン酸を加え、均一な粘性溶液が得られるまで、混合する。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
実施例2 -本発明の溶液の分解に対する耐性-
本発明(溶液E - 表5)による粘弾性溶液のヒアルロニダーゼによる経時的な分解に対する耐性を、トラネキサム酸を含まない参照粘弾性溶液(参照1 - 表6)と比較する。
【0041】
【0042】
そうするために、2つの粘弾性溶液の粘性の経時変化を、以下の手順に従って測定する:
- 5.8mgの酵素(ヒアルロニダーゼ Sigma、ヒツジ精巣由来、III型、凍結乾燥粉末、≧500U/mg)を、5mlのリン酸バッファPBS pH=7.3(DPBS タンポン ギブコ バイ ライフ テクノロジー(Tampon Gibco by Life Technologies))に溶解させる。
【0043】
- 溶液E及び参照溶液1におけるヒアルロン酸の分解速度を、1s-1における粘性を計測することにより測定した。
【0044】
試験は、3mlの溶液E又は参照1に対し、5μlの酵素溶液を添加して行われた。
【0045】
そして、5μlのヒアルロニダーゼを添加後の酵素分解曲線の傾きを算出した。結果を、以下の表7に示す。
【0046】
【0047】
上記結果に示すように、ヒアルロン酸分解の傾きは、15mg/mlのトラネキサム酸を加えた場合には、3倍小さい(平均:0.0042対0.015)。これは、トラネキサム酸が、ヒアルロニダーゼによる分解からヒアルロン酸を効果的に保護して、ヒアルロン酸の滞留時間及び安定性を増加させることを示している。本発明に係る溶液(配合E)。従って、本発明に係る溶液は、従来使用される溶液よりも、経時的に安定性が高く、より効果的である。