(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】サブミクロンサイズのポリマーバインダー粒子を有する多孔性の物品
(51)【国際特許分類】
B01J 20/28 20060101AFI20220622BHJP
B01J 20/12 20060101ALI20220622BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20220622BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20220622BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20220622BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20220622BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B01J20/28 Z
B01J20/12 A
B01J20/18 A
B01J20/20 A
B01J20/06 A
B01J20/04 A
B01J20/30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020085404
(22)【出願日】2020-05-14
(62)【分割の表示】P 2017555258の分割
【原出願日】2016-04-18
【審査請求日】2020-05-20
(32)【優先日】2015-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・エム・ステイブラー
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン・イー・コスロウ
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520314(JP,A)
【文献】特表2008-538321(JP,A)
【文献】国際公開第2014/055473(WO,A1)
【文献】特表2014-509833(JP,A)
【文献】特表2014-527267(JP,A)
【文献】特開2006-116421(JP,A)
【文献】特開2007-296463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0260396(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0020578(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/28
B01J 20/30 - 20/34
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C08K 3/00 - 13/08
B01D 53/02 - 53/18
B01D 53/34 - 53/85
C01B 37/00 - 39/54
C04B 35/00 - 35/84
C01B 25/32
C02F 1/28
C09K 3/00 - 3/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形で多孔性の物品であって、
a)20nm~1ミクロンの
重量平均粒径を有する
離散した粒子の形態の、熱可塑性ポリマーバインダー、および
b)前記固形で多孔性の物品の全重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントの一次活性粒子、および
c)前記固形で多孔性の物品の全重量を基準にして、0.5重量パーセント超の、5nm~500nmの平均粒径を有し、カルシウムヒドロキシアパタイトを含む二次機能性添加粒子、
を含み、
前記一次活性粒子が活性アルミナ、活性炭、カーボンナノチューブ、シリカゲル、アクリル系の粉体および繊維、セルロース繊維、ガラスビーズ、シリカ、木片、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ、無機塩、セラミック、ゼオライト、金属酸化物、銀ベースの化合物、珪藻土、タルク、ポリエステル粒子および繊維、ならびにエンジニアリング樹脂粒子からなる群より選択され、
前記固形で多孔性の物品。
【請求項2】
前記固形で多孔性の物品が、前記固形で多孔性の物品の全重量を基準にして、1.0重量パーセント超の二次機能性添加粒子を含む、請求項1に記載の固形で多孔性の物品。
【請求項3】
前記固形で多孔性の物品が、前記固形で多孔性の物品の全重量を基準にして、10重量パーセント超の二次機能性添加粒子を含む、請求項2に記載の固形で多孔性の物品。
【請求項4】
前記熱可塑性プラスチックバインダーが、前記固形で多孔性の物品の全重量を基準にして、1~30重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の固形で多孔性の物品。
【請求項5】
前記熱可塑性プラスチックバインダーが、前記固形で多孔性の物品の全重量を基準にして、5~14重量パーセントの量で存在する、請求項4に記載の固形で多孔性の物品。
【請求項6】
前記一次活性粒子の少なくとも3重量パーセントが、1ミクロン未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の固形で多孔性の物品。
【請求項7】
前記一次活性粒子が、バイモーダルな粒径分布を有し、一つのモードの平均粒径が、1ミクロン未満であり、他のモードの平均粒径が1ミクロンを上回る、請求項1に記載の固形で多孔性の物品。
【請求項8】
請求項1に記載の固形で多孔性の物品を形成させるための方法であって、
a)前記熱可塑性プラスチックバインダー粒子、請求項1に記載の一次活性粒子、およびカルシウムヒドロキシアパタイトから成る機能性添加粒子をブレンドする工程、
b)前記ブレンド物を加熱して、前記バインダー粒子を軟化させる工程、および
c)前記加熱されたブレンド物を成形して、固形で多孔性の物品とする工程、
の工程を含む、方法。
【請求項9】
前記熱可塑性プラスチックバインダー粒子が、前記活性粒子および/または前記機能性添加粒子とブレンドされたときに、分散体の形態にある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分散体ブレンド物が、スプレードライヤーの中で乾燥される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バインダー粒子が粉体の形態にあり、前記活性粒子と共にドライブレンドされる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱および成形工程が、押出プロセスの中で実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱および成形工程が、圧縮成形プロセスの中で実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱および成形工程が、非圧縮成形プロセスの中で実施される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離散したサブミクロンサイズのポリマーバインダー粒子を用いて相互に保持されたサブミクロンサイズの機能性添加粒子を含む、固形で多孔性の物品に関する。その多孔性の物品はさらに、その過半数として、1~300ミクロンの範囲の一次活性粒子を含んでいるのが好ましい。その固形で多孔性の物品は、その多孔性の物品を通過する流体の成分を、分離、沈降、および/または捕捉するのに使用される。
【背景技術】
【0002】
複合材的多孔性固形物品、たとえば多孔性分離物品およびカーボンブロック濾過物品は、業界でも公知である。それらの物品は、熱可塑性プラスチックバインダーと、活性粒子または繊維状物質たとえば活性炭粉体との混合物を使用して製造される。それらの物品は、熱可塑性プラスチックバインダーが、活性粒子または繊維状物質を、コーティングの場合とは異なって、離散した点で連結させて、相互連結されたウェブが形成されるのに有効な条件下で形成されるのが好ましい。このように配置させることによって、その活性な粉状もしくは繊維状物質が、流体またはガスと直接接触して、相互作用を及ぼすことが可能となる。そのようにして得られた複合材的固形物品は、多孔性であり、そのために、流体またはガスが、その中に浸透したり、その物品を通過したりすることが可能となる。そのような物品は、水の浄化、有機廃液の精製、および生物学的分離において特に有用である。
【0003】
米国特許第6,395,190号明細書には、15~25重量パーセントの熱可塑性プラスチックバインダー(その平均粒径は、5~25ミクロンである)、ならびに活性炭粒子(その粒子の大部分は、200~325メッシュ(44~74ミクロン)の範囲で、残りの活性炭は325メッシュ未満である)を含む、カーボンフィルターとそれらを製造するための方法が記載されている。
【0004】
多孔性のブロック物品のためのバインダーとしてのポリフッ化ビニリデンは、低い担持量で効果的な結合性を与え、その結果として、活性剤(たとえば、活性炭、ゼオライト、またはイオン交換剤)の表面の多くを閉じることなく、さらに高い効率を与えるということでその物品の性能を改良することが見出された。
【0005】
そのような複合材的多孔性固形物品、さらにはそれらの製造方法の例は、たとえば国際公開第2014/055473号パンフレットおよび国際公開第2014/182861号パンフレットに記載されている(それらそれぞれのすべての開示を、参考として引用し本明細書にすべての目的で組み入れたものとする)。それらの物品では、カーボンブロック濾過物品に従来から使用されていたポリエチレンバインダーではなく、ポリフッ化ビニリデンまたはポリアミドのバインダーを使用している。
【0006】
いくつかの用途においては、たとえば、抗菌剤の添加のように、その多孔性のブロック物品にさらなる機能を追加することが望まれる。米国特許第7,144,533号明細書および米国特許出願公開第2011/0210062号明細書に記載されているように、たとえばAgBrのような薬剤が、多孔性のブロック物品に添加された。これら参考文献のそれぞれでは、濾過装置に金属(好ましくはAgまたはCu)の塩を加えるための、最初に活性炭またはバインダーを仕込み、次いで荷電させた微生物妨害剤を添加するといった複雑な方法が記載されている。粒径約1ミクロンのAgBrを、約0.05~0.5%の量で添加することができる。
【0007】
粒子状薬剤の担持レベル、その薬剤の大きさ、そしてその薬剤の利用可能な表面積の間には、相関関係がある。濾過/活性剤としての効果を最大限に発揮させるためには、粒子薬剤の表面積を大きく利用することが望ましい。小さい機能性粒子で、最大の表面積、従って濾過物品の容積あたり、薬剤の重量あたりで、最高の分散効率が得られる。それでもなお、粒子が小さいほど、より多くのバインダーの表面が粒子薬剤で塞がれる、すなわち、一次粒子を実際に結合させるのに利用できるバインダーの表面が少なくなる。当業界では、このことに対しては、大きな機能性粒子(一般的には5ミクロン以上)(活性炭のような一次粒子とほぼ同じ大きさ)を使用するか、あるいは、ナノサイズの機能性添加粒子を、低いレベル(1%未満、好ましくは0.5%未満よりはるかに少ない量)で使用するか、のいずれかで処理している。別な方法として、もっと高いレベルでバインダーを採用することも可能かもしれないが、バインダーが多いほど、濾過で利用できる一次粒子の表面が少なくなる。機能性添加剤の多くは、反応で利用できる大きな表面積を有する、ナノサイズで入手することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6,395,190号明細書
【文献】国際公開第2014/055473号パンフレット
【文献】国際公開第2014/182861号パンフレット
【文献】米国特許第7,144,533号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0210062号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によって解決される課題は、固形で多孔性の分離物品に、より高い機能性を担持させながらも、その一方で、十分な機械的強度を維持して、加圧流体の流れの中でその物品が崩壊するのを防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことには、50~500nmの離散したポリマーバインダー粒子を使用することによって、ナノ粒子の高い担持量(>0.5重量%)を達成することが可能となり、しかも、そのバインダーが依然として、一次活性粒子を結合させるのに有効である、ということが今や見出された。そのナノ粒子は、良好な分散性を達成している。
【0011】
本発明は、以下のものを含む固形で多孔性の物品に関する。
a)20nm~1ミクロン、好ましくは50~400nm、最も好ましくは50~300nmの平均粒子離散サイズを有する粒子の形態の、熱可塑性ポリマーのバインダー、および
b)少なくとも50重量パーセント、好ましくは60重量パーセント、好ましくは70重量パーセントの一次粒子、および
c)固形で多孔性の物品の全重量を規準にして、0.5重量パーセント超、好ましくは0.7重量パーセント超、より好ましくは1.0重量パーセント超、好ましくは5重量パーセント超、より好ましくは10重量パーセント超の、5nm~10,000nm、好ましくは10~5,000nm、より好ましくは20~1,000nm、最も好ましくは25~1,000nmの平均粒径を有する粒子。
【0012】
別な方法として、その固形で多孔性の物品が、バインダーと、異なる平均粒径の一次粒子のみを含み、その一次粒子の幾分かが、1ミクロン未満、好ましくは750nm未満、より好ましくは500nm未満の平均粒径を有していてもよい。
【0013】
本発明はさらに、それらの固形で多孔性の物品を形成させるためのプロセス、およびそれらの使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用するとき、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、または3種以上の異なったモノマー単位を有する各種のポリマーを意味するのに使用される。そのポリマーは、ランダム、ブロック、スター、またはその他各種の配列をとることが可能であり、各種の重合手段、たとえば、バッチ法、連続法、エマルション法、および懸濁法などで形成させることができる。
本出願に引用された文献はすべて、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。
【0015】
「相互連結性」という用語は、本明細書で使用するとき、その活性粒子または繊維が、ポリマーバインダー粒子によって互いに恒久的に結合されているが、その活性な一次および二次の粒子または機能性粒子もしくは繊維が、完全には被覆されてはいないことを意味している。それらのバインダーが、特定の離散した点で活性粒子を相互に付着させて、組織化された多孔質の構造を作りだしている。その多孔質の構造は、流体が、それら相互連結された粒子または繊維の間を通過することができるようになっていて、その流体組成物が、活性粒子または繊維の表面に直接曝露され、それらの粒子と流体組成物の成分とが容易に相互作用して、その結果、それらの成分が選択的に分離されるようになっている。ポリマーバインダーが、離散した点においてのみ、それら活性粒子に付着しているので、そのため、コーティングにおいて完全に連結させるために使用されるバインダーが、より少量ですむ。
【0016】
本明細書で使用するとき、パーセントは、特に断らない限り、重量パーセントであり、分子量は、特に断らない限り、重量平均分子量である。
【0017】
ポリマーバインダー
本発明の複合材のポリマーバインダー粒子は、サブミクロン領域にある熱可塑性ポリマーの離散した粒子である。その重量平均粒径は、1ミクロン未満、好ましくは500nm未満、好ましくは400nm未満、より好ましくは300nm未満である。その重量平均粒径は、一般的には少なくとも20nm、好ましくは少なくとも50nmである。いくつかの場合においては、それらの粒子が、アグロメレート化して、2~50ミクロンの範囲のアグロメレート化物になっていてもよい。離散した粒子がより良好な結合性を与えるためには、そのアグロメレート化物のレベルが最小限であるのが好ましい。
【0018】
本発明で有用なポリマーバインダーは、熱可塑性プラスチックであって、たとえば以下のもの、フルオロポリマー、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル系ポリマーたとえばポリメタクリル酸メチルのホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、スチレン系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートを含む)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、および熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられるがそれらに限定される訳ではない。本発明において有用な小さなポリマー粒径を得るためには、その熱可塑性ポリマーが、エマルション(または逆エマルション)重合によって作成できるのが好ましい。
【0019】
結晶化度が低いか、または結晶化度を示さない熱可塑性ポリマーが特に有用であるが、その理由は、それらが、結晶性ポリマーよりは、可撓性が高く、容易に軟化し、そして製造プロセスの圧力に耐えうるからである。
【0020】
好ましいポリマーは、ポリアミドおよびフルオロポリマーであるが、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマーおよびコポリマーが特に有用である。
【0021】
そのバインダーがフルオロポリマーであるのが好ましい。有用なフルオロポリマーは、熱可塑性のホモポリマー、および重量で40重量パーセント超のフルオロモノマー単位、好ましくは50重量パーセント超、好ましくは65重量パーセント超、より好ましくは75重量パーセント超、最も好ましくは90重量パーセント超の1種または複数のフルオロモノマーを含むコポリマーである。フルオロポリマーを形成させるために有用なフルオロモノマーとしては、以下のもの、フッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、ペルフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、フルオロ化ビニルエーテル(ペルフルオロメチルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、より長鎖のペルフルオロ化ビニルエーテルを含む)、フルオロ化ジオキソール、C4およびそれよりも高級な部分フルオロ化もしくは完全フルオロ化アルファオレフィン、C3およびそれよりも高級な部分フルオロ化もしくは完全フルオロ化環状アルケン、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0022】
特に好ましいフルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のホモポリマーおよびコポリマー、ならびにポリテトラフルロエチレン(PTFE)のホモポリマーおよびコポリマーである。本発明は、すべての熱可塑性ポリマーおよび特には、すべてのフルオロポリマーおよびコポリマーにあてはまるが、フッ化ビニリデンのポリマーを使用して本発明を説明するであろうし、それらが好ましいポリマーである。当業者ならば、PVDFに限定した説明を理解し、他の熱可塑性ポリマー(これらも、本発明の範囲内であり、本発明に包含されるとみなされる)にもあてはめることができるであろう。
【0023】
一つの実施形態においては、フッ化ビニリデンコポリマーが好ましいが、その理由は、それらの結晶化度が低い(または結晶化度がない)ために、半晶質のPVDFホモポリマーよりも可撓性が高いからである。バインダーの可撓性によって、製造プロセスにより良く耐えることができる可撓性の高い電極や、さらには高い引き抜き(pull-through)強度、より良好な付着性、という利点が得られる。そのようなコポリマーとしては、少なくとも50モルパーセント、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも80モル%、さらにより好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデンを含み、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、およびその他各種の、フッ化ビニリデンと容易に共重合し得るモノマー、からなる群より選択される1種または複数のコモノマーと共重合させたものが挙げられる。
【0024】
一つの実施形態においては、重量で30%まで、好ましくは25%まで、より好ましくは15%までのヘキサフルオロプロペン(HFP)単位と、重量で70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上のVDF単位とが、フッ化ビニリデンポリマーの中に存在している。その末端使用環境において優れた寸法安定性を有するPVDF-HFPコポリマーを得るためには、HFP単位が可能な限り均一に分散されているのが望ましい。
【0025】
組成物においてバインダーとして使用するためのPVDFは、高分子量を有しているのが好ましい。「高分子量」という用語は、本明細書で使用するとき、ASTM法D-3835に従い、450゜F、100sec-1で測定して、1.0キロポワズより高い、好ましくは5Kポワズより高い、より好ましくは10Kポワズより高い、最も好ましくは15Kポワズより高い溶融粘度を有するPVDFを意味している。
【0026】
本発明において使用されるPVDFは、一般的には、水系フリーラジカル乳化重合を使用した、当業界公知の手段により調製されるが、懸濁重合、溶液重合および超臨界CO2重合プロセスを使用してもよい。一般的なエマルション重合プロセスにおいては、脱イオン水、重合の際に反応物質を乳化させることが可能な水溶性界面活性剤、および任意成分のパラフィンワックス防汚剤を反応器に仕込む。その混合物を撹拌し、脱気させる。次いで、所定の量の連鎖移動剤(CTA)を反応器の中に導入し、反応器の温度を所望のレベルにまで上げ、フッ化ビニリデン(および、場合によっては1種または複数のコモノマー)をその反応器にフィードする。フッ化ビニリデンの最初の仕込みを導入し、反応器の中の圧力が所望のレベルに達したら、重合開始剤エマルションまたは溶液を導入して重合反応を開始させる。反応の温度は、使用する重合開始剤の特性に合わせて変化させることができるが、当業者ならば、その方法は知っているであろう。その温度は、典型的には約30℃~150℃、好ましくは約60℃~120℃である。反応器の中で所望のポリマー量に到達したら、モノマーのフィードを停止するが、場合によっては、重合開始剤のフィードは継続して、残存モノマーを反応し尽くさせる。残存している(未反応モノマーを含む)ガスを放出し、その反応器からラテックスを回収する。
【0027】
重合において使用する界面活性剤は、当業界では公知の、PVDFのエマルション重合において有用な各種の界面活性剤を使用することが可能であり、ペルフルオロ化、部分フルオロ化、および非フルオロ化界面活性剤が挙げられる。本発明のPVDFエマルションは、重合のいかなる工程においてもフルオロ界面活性剤を用いない、フルオロ界面活性剤フリーであるのが好ましい。PVDF重合において有用な非フルオロ化界面活性剤は、本来的にイオン性、ノニオン性のいずれであってもよいが、たとえば以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、およびそれらの塩、ポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコール、およびそれらのブロックコポリマー、アルキルホスホン酸塩、ならびにシロキサンベースの界面活性剤。
【0028】
PVDFを重合させると、一般的には10~60重量パーセント、好ましくは10~50パーセントの固形分レベルを有するラテックスが得られる。
【0029】
多孔性の分離物品におけるポリマーバインダーのレベルは、1~30重量パーセント、好ましくは3~17重量パーセント、より好ましくは5~14重量パーセントの範囲である。
【0030】
活性粒子
1種または複数のタイプの一次活性粒子または繊維が、熱可塑性ポリマーバインダーと組み合わされる。その活性粒子または繊維は、充填剤や顔料だけではなく、流体(液体または気体)組成物中に溶解されるかまたは懸濁された物質の近傍に来るかまたはそれらと接触したときに、物理的、電気的、または化学的相互作用を有するものである。それらは、さらに、電子の電導のためのバッテリーの電極における有用な物質ともなり得る。それら活性粒子の活性のタイプに応じて、それらの粒子は、化学反応、物理的捕捉、物理的付着、電気的(電荷的もしくはイオン的)誘引、または類似の手段によって、溶解されるかまたは懸濁された物質を流体から分離することができる。本発明により考えられる相互作用の例としては、以下のもの:流体から、たとえば活性炭、ナノクレー、またはゼオライト粒子の中への、化合物の物理的取込み;イオン交換樹脂;触媒;電磁粒子;中和のための酸性もしくは塩基性粒子;陰極のための炭素質物質;陽極のためのLiプラス遷移金属酸化物、スルフィド、または水酸化物、抗菌のための銀ベースの化合物、ならびに有機および無機重金属低減剤、などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0031】
それら一次活性粒子は、固形で多孔性の物品の全重量の、50重量パーセント以上、好ましくは60重量パーセント以上、より好ましくは70重量パーセント以上を占める。有用な一次粒子としては、以下のもの:活性アルミナ、活性炭、カーボンナノチューブ、シリカゲル、アクリル系の粉体および繊維、セルロース繊維、ガラスビーズ、各種の研磨材、一般的な鉱物質たとえばシリカ、木片、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ、セラミック、ゼオライト、イオン交換変性ゼオライト、珪藻土、タルク、ポリエステルの粒子および繊維、グラファイト、カーボンブラック、金属酸化物、リチウムイオン-遷移金属塩、およびエンジニアリング樹脂たとえばポリカーボネートの粒子が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0032】
本発明では、2種以上のタイプの一次活性粒子も想定されている。
【0033】
本発明の一次活性粒子は、直径が一般的には0.1~3,000ミクロン、好ましくは1.0~500ミクロンの範囲のサイズであり、実質的に長さ対幅の比が無制限、そして表面積が無制限の直径0.1~250マイクロメートルの繊維である。当業界では、一次粒子としては、3~500ミクロンの平均粒径のものが代表的であり、ポリエチレンまたはその他の熱可塑性ポリマーバインダーのサイズも同様である。繊維は、長さ5mm以下に切断されているのが好ましい。繊維をスプレードライヤーに通すことは容易にはできないが、他の手段によって乾燥させて、複合材料の中で使用することができる。繊維または粉体は、その粉体混合物を十分に加熱できるだけの熱伝導率を有しているべきである。さらに、押出加工プロセスにおいては、それらの粒子および繊維が、そのフルオロポリマーバインダー樹脂の融点を十分に上回る融点を有していて、通常は望まれている多相系ではなく、両方の物質が溶融して、連続した溶融相を作ることを防ぐようにしなければならない。
【0034】
ポリマーバインダー粒子の、活性粒子または繊維に対する比率は、(0.01~30重量パーセントのフルオロポリマー固形分)対(70~99.99重量パーセントの活性粒子または繊維)、好ましくは(0.1~14重量パーセントのフルオロポリマー固形分)対(86~99.9重量パーセントの活性粒子または繊維)、より好ましくは(0.2~8重量パーセントのフルオロポリマー固形分)対(92~99.8重量パーセントの活性粒子または繊維)、そして一つの実施形態においては(0.3~6重量パーセントのフルオロポリマー固形分)対(94~99.7重量パーセントの活性粒子または繊維)である。フルオロポリマーの使用量が少なすぎると、完全な相互連結性が達成されないし、またフルオロポリマーの使用量が多すぎると、活性粒子と、その分離用物品を通過する流体との間の表面接触面積が低下する。良好な分布、小さな粒径、および低いアグロメレーションを有するポリマー粒子バインダーを効率的に使用すると、当業界で見出されているような、より大きな粒径、より非高率な分布、およびより高いアグロメレーションを有するポリマーバインダーよりも、バインダーの有効量を少なくすることが可能となる。
【0035】
一つの実施形態においては、その一次活性粒子が、サブミクロンサイズの粒子として存在することが可能であり、追加の二次機能性粒子がなくても、サブミクロンサイズのポリマー粒子によって共に保持される。また別な予想される可能性は、2種以上の平均粒径を有する一次活性物質(たとえば、活性炭)を使用することである。より小さい粒子を使用すると、それぞれの粒子にかかる圧力が低下し、粒子が破壊される機会が減る。
【0036】
二次機能性添加粒子
多孔性の物品の大部分を占める、ポリマーバインダー粒子および一次活性粒子に加えて、その物品にさらなる機能性を加える目的で、1種または複数の機能性添加剤を添加してもよい。それらの添加剤は、その多孔性の分離物品に以下のような追加の機能を付与する:生物学的開始、金属の吸着、金属の沈殿、物理的濾過、触媒活性、イオン交換、酵素の転換、酵素、抗体、細菌およびウイルスの排除、および支持基材の上へのタンパク質の固定化。これらの添加剤の多くは、5~10,000nm、好ましくは10~5,000nm、より好ましくは20nm~1,000nm、より好ましくは25~500nmの範囲の粒径を有していて、それによって、流体との相互作用のための大きな表面積が可能となっている。平均して5ミクロンよりも大きいバインダー粒子を用いると、多孔性物品の全重量を規準にして、1重量パーセント未満の極めて低い担持量しか使用できないのに対して、ナノ粒径のバインダーを使用することによって、1重量パーセント超、5重量パーセント超、さらには10重量パーセント超のレベルでナノ粒子を担持することが可能である。
【0037】
有用な微生物学的開始剤の例としては、以下のもの:金属塩、特に銀および銅の塩、たとえば、AgBr、AgCl、および銀ゼオライトが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。その他の有用な二次機能性添加剤としては、水酸化酸化鉄(ヒ素の吸着のため)、カルシウムヒドロキシアパタイト(フッ素の吸着のため)、およびリン酸塩、酸化物および硫酸塩(金属たとえば、鉛、ニッケル、およびその他有毒な金属を沈降させるため)が挙げられる。
【0038】
プロセス
固形で多孔性の物品の成分は、いくつか異なった方法でブレンドすることができる。たとえば、1種または複数の一次および/または二次粒子をポリマーエマルションに添加し、その後でその複合材料を乾燥させることもできる。そのポリマーラテックスは、撹拌しながら水を添加することによって、それが4~25重量パーセントの固形分、好ましくは10~20重量パーセントの固形分になるまで希釈することができる。希釈することによって、より良好にその活性粒子に分散させることが可能となり、そして、ポリマー粒子のアグロメレーションの可能性が低下する。次いで、十分に撹拌しながら、1種または複数のタイプの活性物質および機能性粒子を、その希釈したラテックスに添加して、ポリマー粒子と相互作用性物質との均質な水性分散体を形成させる。このプロセスは、水の影響を受けにくいかまたは疎水性の粒子ではうまくいくが、たとえばモレキュラーシーブのように、吸水性または吸湿性であることがわかっている粒子、およびラテックスに添加すると塊が生成する粒子ではうまくいかない。
【0039】
希釈されたポリマーラテックスに添加するより前に一次活性粒子を機能性添加粒子とドライブレンドすることも可能であるし、あるいは、それらのタイプの粒子をそれぞれ、希釈されたラテックスに直接添加することもできる。粒子状物質は、ポリマーラテックスの中に添加する前に、まず水の中に分散させておくのが好ましい。また別な実施形態においては、粒子状物質をポリマーラテックスに添加し、その混合物を水で希釈することも可能である。また別な代替えの実施形態においては、水の影響を受けにくい粒子をラテックスに添加して、その中に分散させることもできる。次いでそのラテックスを、乾燥させ、その中に、湿分の影響を受けやすい粒子を添加し、ブレンドすることによって、乾燥させたラテックス配合物とすることも可能である。
【0040】
その分散体のブレンド物を乾燥させると、一次活性物質と、その表面上に機能性添加粒子を有するサブミクロンサイズのポリマーバインダー粒子との複合材料が形成される。その乾燥工程は、10重量パーセント未満、好ましくは5重量パーセント未満のポリマーアグロメレートしか生成せずに複合材料を形成するであろう、いかなる公知の方法で実施してもよい。乾燥では、一般的には、熱および/または真空を使用して、水を除去し、複合材料を製造する。一つの実施形態においては、その分散させたブレンド物をスプレードライさせて、複合材料を形成させる。5~300ミクロンの平均粒径範囲を有する乾燥させたポリマー粒子のアグロメレート化物は、平均して20~500nmのポリマーバインダー粒子をアグロメレート化させることにより得ることができる。アグロメレート化物を最小限に保つのが好ましい。また別の実施形態においては、そのブレンド物の分散体をベルトコンベヤの上に流し込み、真空と熱との組合せ(一般的にはオーブン)を使用して、水を追い出し、相互作用性物質に対してポリマー粒子を焼結させる。次いで、そのようにして形成された平坦なシート構造物を集め、ロールにかけて半製品とするが、それは、ダイカットして寸法を合わせるか、またはひだを付け、さらに包み、濾過カートリッジに入れることができる。
【0041】
ポリマーバインダーは、粉体の形態で使用し、一次および二次粒子とブレンドすることもできる。一つの実施形態においては、第一工程として、特定の二次粒子(この二次粒子は、個々のポリマーバインダーのアグロメレート化粒子の粒径よりも小さい平均粒径を有している)をポリマーとブレンドするのが有利であることが見出された。少量の無機塩またはシリケート、たとえば炭酸カルシウムの粒子を、3~20ミクロンのPVDFアグロメレート化物に添加すると、その炭酸カルシウムが、スパーテルを用いて軽く物理的にブレンドするだけで、PVDFのアグロメレート化物を解離させて個々のサブミクロンサイズの粒子にするのに役立つことが見出された。次いで、そのポリマーバインダー/二次粒子のブレンド物に一次粒子を添加することができる。このことは、その一次粒子が、配合物のマトリックスの中に均質に分散されるよりは、同様の物質とアグロメレート化しやすいような場合には、特に有用である。
【0042】
本発明の乾燥した複合材的組成物は、当業者に公知の各種の方法によって、有用な対象物に成形することができる。そのプロセスは、そのポリマー粒子を軟化させることができる方法であるが、ただし、それらを溶融させて、それらが他のポリマー粒子と接触しているところまで流動して、アグロメレートや連続層を形成するようなことを起こしてはならない。考慮される最終使用において効率的であるために、そのポリマーバインダーが、離散したポリマー粒子のままで留まって、相互作用性粒子を結合して相互連結されたウェブとし、それによって、気体および液体が容易に流動し、その相互作用性物質と接触するようになっている。
【0043】
一つの実施形態においては、その乾燥した複合材料が、導電性基材の少なくとも一つの表面に適用され、電極または電池セパレーターを形成する。乾燥した複合材料は、米国特許第7,791,860号明細書、米国特許第8,072,734号明細書、および米国特許第8,591,601号明細書に記載されているようにして、たとえばカレンダリングのような手段により、前記導電性基材の上に圧着させてもよい。従来技術のプロセスにおいては、ポリマー粒子を乾燥させ、貯蔵した後で、活性物質とブレンドするので、アグロメレーションが起こり、ポリマーバインダーを均質に分散させるのが、極端に困難となっていた。
【0044】
一つの実施形態においては、その乾燥した複合材料を、当業者に公知の分散助剤の手段により、再分散させて、水性または溶媒の分散体とする。ポリマーバインダーは、均質に分散され、非アグロメレート化された粒子の形態で、その複合材料の一部として残るであろう。次いでその分散体を、典型的なコーティング手段により導電性基材に適用し、乾燥させて、電極またはバッテリーのためのセパレーターを形成させることができる。
【0045】
また別の実施形態においては、そのポリマーバインダー粒子、一次活性粒子、および二次機能性添加物粒子を、たとえば米国特許第5,331,037号明細書に記載されているような押出加工プロセスで、多孔質のブロック物品に成形することも可能である。本発明のポリマーバインダー複合材料を、他の添加剤たとえば加工助剤と共にドライブレンドし、押出加工、金型加工または成形して物品とする。熱、圧力および剪断力の下で、連続押出加工することで、バインダー、相互作用性粒子、空気、および/または他の添加剤からなる、無限の長さの、三次元多相プロファイル構造を製造することができる。バインダーを相互作用性物質に強制点接着させて連続のウェブを形成させるためには、加える圧力、温度、および剪断力の臨界的な組合せが使用される。複合材料と添加剤とのブレンド物を、バインダーの軟化温度を上回る温度とし、顕著に高い圧力をかけてそれらの物質を圧密化させ、十分な剪断力をかけて、バインダーを拡げて、連続のウェブを形成させる。その多孔質のブロック物品は、液体および気体のストリームを分離および濾過するのに有用である。
【0046】
さらに別の実施形態においては、コンベヤベルトの上で複合材料を乾燥したシートに成形し、その成形されたシートから物品を得る。
【0047】
また別の実施形態においては、そのブレンド物を、圧縮成形機に加え、十分な熱と圧力をかけて、その複合材料のブレンド物を結合させて、バインダー、相互作用性粒子、空気、および/または他の添加剤の多相系とすることも可能である。
【0048】
一つの実施形態においては、非圧縮成形プロセスを使用して、複合材料粒子状粉体を最終物品とするが、その非圧縮プロセスでは、重力しか使用せず、圧縮力を加えない。
【0049】
使用
他のバインダー物たとえば、典型的に使用されているポリエチレンに比較して、フルオロポリマーおよびポリアミド物質の、化学的な不活性さ、生物学的清浄度、および優れた機械的および熱機械的性質などを含めた性質が優れているために、本発明の分離用物品は、広く各種の要求の厳しい環境において使用することができる。高温、高度に反応性、アルカリ性、または酸性の環境、無菌環境、生物学的作用物質との接触は、本発明の分離用物品がその他のポリマーバインダー系よりも明らかに有利になる環境である。その分離用物品は、分離用物品を通過する流体を精製し、それから望ましくない物質を除去するのに使用して、各種の商業的または消費者向けの用途において使用される、より純度の高い流体を得ることが可能である。その分離用物品はさらに、流体ストリームから物質を捕捉し、濃縮するためにも使用され、次いで、それら分離用物品から捕捉した物質をさらなる使用のために除去することもできる。その分離装置は、飲用水の精製(熱水および冷水)のため、さらには工業的使用のために使用することができる。「工業的使用」という用語は、高温(50℃より高い、75℃より高い、100℃より高い、125℃より高い、さらには150℃より高い、ポリマーバインダーの軟化点まで;での使用、有機溶媒との使用、ならびに医薬的および生物学的な清浄で高純度での使用を意味している。
【0050】
本発明の分離物品は、どのようなサイズ、どのような形状であってもよい。一つの実施形態においては、その物品が、連続押出成形によって形成された各種の長さの中空チューブである。水またはその他の流体が、加圧下にそのチューブの外側を通り、チューブの外側から内側へと濾過され、フィルターを通過した後で捕集される。
【0051】
本発明のいくつかの物品としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
紙フィルター媒体の上に複合体ラテックスをコーティングすることができる、オイルフィルター。
重金属の低減、抗菌剤の低減、イオン性混入物の低減、および医薬品の低減のためを含む、カーボンブロックの濾過系
イオン交換膜またはカラム。
化学反応を促進させるための触媒媒体。
薬学的および生物学的活性成分のバイオセパレーションおよび回収。
他のガスからのガス分離、水性および非水性媒体中に溶解しているガスの分離、およびガス中に浮遊している粒状物からのガス分離。
化学的スクラバー、特に極めて酸性の高い環境における煙道ガスのためのもの。
耐薬品性の保護衣およびカバー。
スケール付着防止および有機汚染物の除去のための熱水プロセス(>80℃)濾過。
自動車排気ガスの濾過。
閉ループ工業用水系。
工業用水処理。
温室ガスの排気、ベント、および煙突の捕捉。
汚染された地下水の処理。
ブラインおよび塩水の飲用水への処理。
粒状物フィルターとしての使用。
オゾン曝露における処理。
以下のものの精製および/または濾過:
脂肪族溶媒、
強酸、
高温(>80℃)の化合物、
炭化水素、
フッ化水素酸、
ディーゼルおよびバイオディーゼル燃料、
ケトン、
アミン、
強塩基、
「発煙」酸、
強酸化剤、
芳香族化合物、エーテル、ケトン、グリコール、ハロゲン、エステル、アルデヒド、およびアミン、
ベンゼン、トルエン、ブチルエーテル、アセトン、エチレングリコール、二塩化エチレン、酢酸エチル、ホルムアルデヒド、ブチルアミンの化合物、など。
塩水、井戸水、および地表水の濾過を含む、飲料水の濾過。
蒸発調節装置。
炭化水素エネルギー貯蔵装置。
水性、非水性、およびガス性の懸濁液または溶液からの無機およびイオン性の化学種の除去、それらのものを、非限定的に挙げれば、たとえば以下のものである:カチオンの水素、アルミニウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム;アニオンの硝酸塩、シアニドおよび塩素;金属、非限定的に挙げれば、たとえばクロム、亜鉛、鉛、水銀、銅、銀、金、白金、鉄、およびその他の貴金属または重金属および金属イオン;塩、非限定的に挙げれば、たとえば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム;ならびに、水溶液懸濁液からの有機化合物の除去。
【0052】
例示的に挙げた用途および本明細書における記述に基づけば、当業者ならば、本発明の複合体固形物品のための極めて多種のその他の用途を思いつくことができるであろう。
【実施例】
【0053】
実施例1:
73重量%の珪藻土(平均粒径、44ミクロン)、16重量%のKyblock(登録商標)ホモポリマーフルオロポリマーバインダー(平均粒径、5ミクロン、アグロメレート化物、ASTM D 3835に従い、232℃、100s-1で20キロポワズの溶融粘度を有する)、および11重量%のカルシウムヒドロキシアパタイト(平均粒径、250nm)を、ドライブレンドして、均質な混合物とした。次いでそのブレンド物を、中程度の圧力下、450゜Fで2インチ/分の速度でエクストルーダーの中を通して処理した。その成形品は、多孔性で筒状の構造物で、圧縮抵抗の点で、実質的な機械的強度を有していた。
【0054】
実施例2:
81.8重量%の珪藻土(平均粒径、44ミクロン)、14.6重量%のKyblock(登録商標)ホモポリマーフルオロポリマーバインダー(平均5ミクロン、アグロメレート化物、ASTM D 3835に従い、232℃、100s-1で20キロポワズの溶融粘度を有する)、および3.5重量%の炭酸カルシウム(平均粒径、3.5ミクロン)を、ドライブレンドして、均質な混合物とした。次いで、そのブレンド物を、300psiの低い充填圧の下、180℃で1分かけて、圧縮成形した。サンプルを圧縮金型から取り出し、オーブン中、180℃で10分かけて硬化させた。そのようにして得られたものは、多孔性で棒状の構造物で、曲げ抵抗の点で、実質的な機械的強度を有していた。
【0055】
実施例3:
74重量%の珪藻土(平均、44ミクロン)、14重量%のKyblock(登録商標)ホモポリマーフルオロポリマーバインダー(平均粒径、5ミクロン、アグロメレート化物、ASTM D 3835に従い、232℃、100s-1で20キロポワズの溶融粘度を有する)、3重量%のCaCO3(平均粒径、3.5ミクロン)、4重量%のTMAC(アパタイト塩、Arkema Inc.製、平均粒径、250nm)、および1重量%の銀ゼオライト(平均粒径、3.5ミクロン)を、ドライブレンドして、均質な混合物とした。次いでそのブレンド物を、中程度の圧力下、450゜Fで2インチ/分の速度でエクストルーダーの中を通して処理した。その成形品は、多孔性で筒状の構造物で、圧縮抵抗の点で、実質的に機械的強度を有していた。
【0056】
実施例4:
81重量%の珪藻土(平均粒径、44ミクロン)、14重量%のKyblock(登録商標)ホモポリマーフルオロポリマーバインダー(平均粒径、5ミクロン、アグロメレート化物、ASTM D 3835に従い、232℃、100s-1で20キロポワズの溶融粘度を有する)、および3重量%のCaCO3(平均粒径、3.5ミクロン)を、ドライブレンドして、均質な混合物とした。次いでそのブレンド物を、中程度の圧力下、450゜Fで2インチ/分の速度でエクストルーダーの中を通して処理した。その成形品は、多孔性で筒状の構造物で、圧縮抵抗の点で、実質的に機械的強度を有していた。
【0057】
実施例5:
12重量%のKyblock(登録商標)ホモポリマーフルオロポリマーバインダー(平均粒径、5ミクロン、アグロメレート化物、ASTM D 3835に従い、232℃、100s-1で20キロポワズの溶融粘度を有する)、8重量%のSZT(Arkema Inc.製、3~4ミクロンの粒径)、80重量%の活性炭(20~325メッシュ)を、ドライブレンドして、均質な混合物とした。次いでそのブレンド物を、低い圧力下520゜Fで30分間、金型の中に入れておいた。その金型をオーブンから取り出し、1000psi未満の圧力を2分間かけた。その金型を250゜Fまで冷やしてから、成形品を金型から抜き出した。
【0058】
実施例6:
12重量%のKyblock(登録商標)ホモポリマーフルオロポリマーバインダー(平均粒径、5ミクロン、アグロメレート化物、ASTM D 3835に従い、232℃、100s-1で20キロポワズの溶融粘度を有する)、10重量%のTMAC(1~10ミクロンの粒径)、88重量%の活性炭(20~325メッシュ)を、ドライブレンドして、均質な混合物とした。次いでそのブレンド物を、低い圧力下520゜Fで30分間、金型の中に入れておいた。その金型をオーブンから取り出し、1000psi未満の圧力を2分間かけた。その金型を250゜Fまで冷やしてから、成形品を金型から抜き出した。
【0059】
本明細書においては、実施形態は、明瞭かつ簡潔な明細書を書くことを可能とするようにして記載してきたが、それらの実施形態は、本発明から外れない範囲で、各種の併合または分離をしてもよいということが意図されており、このことは認められるであろう。たとえば、本明細書に記載の「好ましい態様」は、本明細書に記載されている本発明のすべての態様にあてはめることができるということは認められるであろう。
【0060】
本発明の態様には、以下の項目が含まれる。
[態様1]
固形で多孔性の物品であって、
a)20nm~1ミクロン、好ましくは50~400nm、最も好ましくは50~300nmの平均粒子離散サイズを有する粒子の形態の、熱可塑性ポリマーバインダー、および
b)少なくとも50重量パーセント、好ましくは60重量パーセント、好ましくは70重量パーセントの一次活性粒子、および
c)前記固形で多孔性の物品の全重量を規準にして、0.5重量パーセント超、好ましくは0.7重量パーセント超、より好ましくは1.0重量パーセント超、好ましくは5重量パーセント超、より好ましくは10重量パーセント超の、5nm~10,000nm、好ましくは10~5,000nm、より好ましくは20~1,000nm、最も好ましくは25~1,000nmの平均粒径を有する二次機能性添加粒子、
を含む、固形で多孔性の物品。
[態様2]
前記熱可塑性プラスチックバインダーが、前記固形で多孔性の物品の全重量を基準にして、1~30重量パーセント、好ましくは3~20重量パーセント、より好ましくは5~14重量パーセントの量で存在する、態様1に記載の固形で多孔性の物品。
[態様3]
前記一次活性粒子が、活性アルミナ、活性炭、カーボンナノチューブ、シリカゲル、アクリル系の粉体および繊維、セルロース繊維、ガラスビーズ、研磨材、鉱物質、シリカ、木片、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ、無機塩、セラミック、ゼオライト、イオン交換変性ゼオライト、金属酸化物、銀ベースの化合物、珪藻土、タルク、ポリエステル粒子および繊維、エンジニアリング樹脂粒子、ならびにポリカーボネートからなる群より選択され、前記一次活性粒子の少なくとも3重量パーセント、前記一次粒子の好ましくは少なくとも5重量パーセント、好ましくは少なくとも10重量パーセント、好ましくは少なくとも20重量パーセントが、1ミクロン未満、好ましくは750ミクロン未満、より好ましくは500ミクロン未満の平均粒径を有する、態様1または2の記載の固形で多孔性の物品。
[態様4]
前記機能性添加粒子が、生物学的開始剤、金属の吸着剤、金属の沈殿剤、物理的濾過剤、触媒、イオン交換樹脂、酵素、抗体、および支持基材の上へ固定化されたタンパク質から選択される、態様1~3のいずれか1項に記載の固形で多孔性の物品。
[態様5]
前記一次活性粒子が、バイモーダルであって、一つのモードの平均粒径が、1ミクロン未満であり、他のモードの平均粒径が1ミクロンを上回る、態様1~4のいずれか1項に記載の固形で多孔性の物品。
[態様6]
態様1に記載の固形で多孔性の物品を形成させるための方法であって、
a)前記熱可塑性プラスチックバインダー粒子、一次活性粒子、および機能性添加粒子をブレンドする工程、
b)前記ブレンド物を加熱して、前記バインダー粒子を軟化させる工程、および
c)前記加熱されたブレンド物を成形して、固形で多孔性の物品とする工程、
の工程を含む、方法。
[態様7]
前記熱可塑性プラスチックバインダー粒子が、前記活性粒子および/または前記機能性添加粒子とブレンドされたときに、分散体の形態にある、態様6に記載の方法。
[態様8]
前記分散体ブレンド物が、スプレードライヤーの中で乾燥される、態様7に記載の方法。
[態様9]
前記バインダー粒子が粉体の形態にあり、前記活性粒子と共にドライブレンドされる、態様6~8のいずれか1項に記載の方法。
[態様10]
前記加熱および成形工程が、押出プロセスの中で実施される、態様6~9のいずれか1項に記載の方法。
[態様11]
前記加熱および成形工程が、圧縮成形プロセスの中で実施される、態様6~9のいずれか1項に記載の方法。
[態様12]
前記加熱および成形工程が、非圧縮成形プロセスの中で実施される、態様6~9のいずれか1項に記載の方法。