(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】情報通信装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20220622BHJP
H05K 5/04 20060101ALI20220622BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
H05K7/20 B
H05K7/20 F
H05K5/04
G06F1/20 B
G06F1/20 C
(21)【出願番号】P 2020142458
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】393010318
【氏名又は名称】エレコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 篤
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137444(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H05K 5/04
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に少なくとも一部が埋設して設置される情報通信装置であって、
金属の箱形状の筐体と、前記壁の室内側であって前記筐体の
前面に配置されるフロントカバーと、電源基板と、メイン基板と、無線LAN用アンテナと、WAN接続端子と、を備え、
前記電源基板は、前記筐体の
側面の内側で前記筐体に固定され、
前記メイン基板は、前記筐体の
前面の外側で前記筐体に固定され、前記フロントカバーの内部に配置され
、
前記電源基板に搭載された電子部品と、前記筐体の前面の内側との間に隙間が設けられた、情報通信装置。
【請求項2】
前記電源基板は電源回路を含み、前記メイン基板はネットワーク回路および無線LAN回路を含み
、
前記メイン基板は、前記筐体と反対の面にヒートスプレッダを有し、
前記メイン基板から生じる熱は、前記ヒートスプレッダから前記フロントカバーの内部空間に拡散されるとともに、前記筐体の
前面に拡散されて放熱され、
前記電源基板から生じる熱は、前記筐体の
側面に拡散されて放熱される、請求項1に記載の情報通信装置。
【請求項3】
前記メイン基板と前記ヒートスプレッダとの間、および、前記メイン基板と前記筐体との間に熱伝導率が高く非導電のサーマルパッドが挿入された、請求項2に記載の情報通信装置。
【請求項4】
前記WAN接続端子はPOE(Power over Ethernet)に対応し、前記電源回路は前記WAN接続端子から供給された電力を所定の電圧に変換して前記ネットワーク回路および前記無線LAN回路に供給する、請求項2
または3に記載の情報通信装置。
【請求項5】
前記フロントカバーは、ハット形状からなり、天面と、前記天面から形成された第1側面と、前記第1側面に対向する第2側面と、前記ハット形状のつば部からなる、前記第1側面に連設された第3面および前記第2側面に連設された第4面とを有し、
前記無線LAN用アンテナは、第1アンテナユニットおよび第2アンテナユニットを備え、前記第1アンテナユニットは前記第1側面と間隙を有した状態で前記第3面に立設され、前記第2アンテナユニットは前記第2側面と間隙を有した状態で前記第4面に立設された、請求項
1から4のいずれか1項に記載の情報通信装置。
【請求項6】
さらにLAN接続端子を備え、前記WAN接続端子は前記筐体の側面に固定され、前記LAN接続端子は前記フロントカバーの前面に固定される、請求項
1から5のいずれか1項に記載の情報通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報通信装置、特に、電源回路とネットワーク回路と無線LAN回路とWAN接続端子とLAN接続端子と無線LAN用アンテナとを備え、壁に少なくとも一部が埋設されて設置される情報通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記情報通信装置に関連して、以下の発明が出願されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2013-157738号公報)には、無線LAN接続と有線LAN接続とを同時に可能としながら、情報コンセントに取り付けた状態で嵩張らないようにする情報通信ユニットにおいて、WAN側と接続する第1接続部と、商用電源線を接続する電源接続部と、第1接続部を通す情報データを、外部の情報端末装置と送受信可能な無線送受信部と、電源接続部からの交流電気を直流電気に変換して無線送受信部に供給するコンバータと、LAN側の通信ケーブルを接続する第2接続部とを、ユニット本体に一体に設け、ユニット本体は、設置対象部に設けられている情報コンセントに埋設可能に構成してあると共に、情報コンセントに埋設した状態で、第1接続部とコンバータとが、情報コンセントの表面板の面方向に隣合うように構成された情報通信ユニットが開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2018-137444号公報)には、情報通信ユニットに用いることのできる、基板に設置された電子部品から発生する熱を効果的に放熱する放熱構造において、基板の表裏方向の一方側に電子部品が配置され、電子部品から発生する熱を、基板の表裏方向の他方側に伝熱する第1伝熱部と、基板の表裏方向の他方側から一方側に延設されて、第1伝熱部にて基板の表裏方向の他方側に伝熱された熱を、基板の周囲を通して放熱部に伝熱させて放熱する第2伝熱部とが備えられている放熱構造が開示されている。
【0005】
また、特許文献3(特開2006-286757号公報)には、高放熱性を維持しつつ、小形な、電子機器の放熱構造において、複数の発熱電子部品を表裏に実装した回路基板と、前記回路基板を互いに対向させて複数収納することができる熱伝導性を有する筐体からなり、前記筐体により各々の発熱電子部品の放熱を行う電子機器の放熱構造において、筐体は内部に筐体側面と一体となった内部隔壁を有しており、回路基板は内部隔壁の両面を挟み込むように2つ取り付けられており、回路基板の表裏に実装された複数の発熱電子部品を内部隔壁に押し当てることにより、発熱電子部品の熱を内部隔壁に伝熱させ、外部へ放熱させる構成が開示されている。
【0006】
また、非特許文献1(RFCMOS技術によるBluetooth無線トランシーバLSI)には、0.13μm微細CMOS技術によるBluetooth(登録商標)無線トランシーバLSIの受信感度の温度特性を含めた詳細な特性が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-157738号公報
【文献】特開2018-137444号公報
【文献】特開2006-286757号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】RFCMOS技術によるBluetooth無線トランシーバLSI、阿川謙一他著、東芝レビューVol63No.7(2008)27頁-30頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末のようなモバイル通信端末を用いて室内などで通信を行う場合、WAN側に接続された無線LAN用ルータを介してインターネットに接続することが多かった。しかし、無線LAN用ルータとモバイル通信端末との距離が長い場合、あるいは途中に障害物が存在する場合などにおいては、モバイル通信端末が安定してインターネットに接続できないことがあった。
【0010】
一方、各部屋に亘って通信ケーブルを配設して有線LANでモバイル通信端末と接続すれば安定してインターネットと接続することができる。しかし、この場合、モバイル通信端末には有線LANの端子がない、有線LANの端子があっても室内でモバイル通信端末と部屋に配設された有線LAN端子の間に通信配線を配設すると歩行の邪魔になるなどの課題がある。
【0011】
最近、これらの課題に対する解決策として、部屋に配設された有線LAN端子に無線LAN回路を追加した情報通信装置が使われ始めている。
上記情報通信装置は無線LAN回路および無線LAN回路に電源を供給する電源回路を備えており、一定の発熱が避けられない。
しかし、上記情報通信装置は通常少なくとも一部が壁に埋め込まれるため、形状が小型でなければならないが、形状が小型であること、および少なくとも一部が壁に埋め込まれることから、どうしても放熱性能が従来の据え置き型の無線LANルータに比べて劣る。
そして、その場合、LNAなどのRF回路は周囲温度が上昇すると雑音が増加し、無線LANの受信感度が低下するとの課題がある。この雑音の増加はLNAのバイアスが最適点からずれるなどの理由もあり、バイアスの最適化である程度の改善を図ることはできるが、原理的に抵抗の雑音電圧は絶対温度のルートに比例してすることから、温度が上がると受信感度が劣化するとの傾向は避けることができない。
したがって、放熱性能が従来の据え置き型の無線LANルータに比べて劣る、小型で壁埋め込みの無線LANを備えた情報通信装置では、いかにしてRF回路を含む無線LAN回路の温度の上昇を抑えるかが重要である。
【0012】
特許文献1に記載の発明の目的は、無線LANを備えた、嵩張らない情報通信ユニットを提供することにあり、情報通信ユニットの放熱性能については開示も暗示もされていない。
【0013】
特許文献2に記載の発明は、無線LANを備え、少なくとも一部が壁に埋め込まれた情報通信ユニットに適用することのできる放熱構造の発明である。
特許文献2の情報通信ユニットでは、ユニットの後方側ケーシングにアルミなどの金属を用い、ユニットの後方側に発熱の多い電源部品を搭載した基板を配置し、電源基板の熱をユニットの前方側の基板を介して、第1板状体に放熱し、さらに第1板状体から後方ケーシングに放熱するとの構成を開示している(
図6参照)。
この場合、電源部品を搭載した基板の熱が無線LAN回路などを搭載した前方側の基板に伝わり、無線LAN回路の温度が上昇するとの課題がある。また、通常、電源回路では多くのノイズが発生するが、特許文献2の情報通信ユニットには、このノイズが無線LAN回路に伝わり、無線LAN回路の特性が劣化するとの課題もある。
【0014】
特許文献3の電子機器の放熱構造では、熱伝導性を有する筐体に内部隔壁を形成し、2枚の回路基板を内部隔壁の両面を挟み込むように取り付け、複数の発熱電子部品を内部隔壁に押し当てることによって、発熱電子部品の熱を内部隔壁に伝熱させ、筐体から外部へ放熱させる構成にしている。
図8に特許文献3の
図1に記載の放熱構造の側断面図を示す。
図8では、発熱電子部品および発熱部品を含む2枚の回路基板の間に筐体の内部障壁が挿入され、筐体の内部障壁で吸収された熱が筐体側面から放熱されるとの構造を備えている。
この構造の場合、発熱電子部品および発熱部品からの放熱という観点では有効ではあるが、この構造を電源回路を備える電源基板とネットワーク回路と無線LAN回路とを備えるメイン基板とからなる情報通信装置に適用した場合、筐体側面が2枚の基板を共通に覆っているため、発熱の多い電源基板の熱がメイン基板に伝わり、かえって、メイン基板の無線LAN回路の温度が上昇するとの課題がある。
【0015】
非特許文献1には、-40度に比べて+90度でBlueoothの受信感度が1.4dB劣化するとのデータが記載されている。この温度特性はBCS-TC技術という世界トップレベルの技術により実現されたもので、通常の無線LANでは周囲温度の上昇による感度の劣化はさらに大きい。
【0016】
本発明の主な目的は、壁に少なくとも一部が埋設されて設置される情報通信装置において、回路からの発熱を壁の内部側に効率よく放熱するとともに、無線LAN回路の温度上昇を最小限に抑える放熱構造を備えた情報通信装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、電源回路が発生するノイズによる無線LAN回路への悪影響を最小限に抑える構造を備えた情報通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)
一局面に従う情報通信装置は、壁に少なくとも一部が埋設して設置される情報通信装置であって、金属の箱形状の筐体と、壁の室内側であって筐体の一面に配置されるフロントカバーと、電源基板と、メイン基板と、無線LAN用アンテナと、WAN接続端子と、を備え、電源基板は、筐体の内部で筐体に固定され、メイン基板は、筐体の外側で筐体に固定され、フロントカバーの内部に配置される。
【0018】
この場合、情報通信装置の電源基板とメイン基板からの放熱は以下のようにして行われる。
電源基板からの熱は金属の筐体に伝わり、筐体の側面から壁の内部に放熱される。
メイン基板からの熱は筐体の外側の面から同様に筐体の側面を介して壁の内部に放熱されるとともに、メイン基板の前記筐体と反対の面からフロントカバーの内部空間に放熱される。
特に、電源基板からの熱が筐体の側面、すなわちメイン基板の後方から壁の内部に放熱され、メイン基板に伝わりにくいことから、電源基板に搭載された電源回路からの発熱を効率よく放熱するとともにメイン基板に搭載された無線LAN回路の温度上昇を最小限に抑えることができる。
また、電源基板は、金属の筐体の内部に配置され、メイン基板は筐体の外側に配置されることから、メイン基板は電源基板の発生するノイズの影響を受けにくい。
また、情報通信装置には無線LANルータモードと無線LANアクセスポイントモードとを切り換えることができるモード切替スイッチを備えていてもよい。無線LANアクセスポイントモードの場合、WAN接続端子はLANに接続される。
【0019】
(2)
第2の発明にかかる情報通信装置は、一局面に従う情報通信装置において、電源基板は電源回路を含み、メイン基板はネットワーク回路および無線LAN回路を含み、電源基板は、筐体の一面とは異なる面で筐体に固定され、メイン基板は、筐体と反対の面にヒートスプレッダを有し、メイン基板から生じる熱は、ヒートスプレッダからフロントカバーの内部空間に拡散されるとともに、筐体の一面に拡散されて放熱され、電源基板から生じる熱は、筐体の一面とは異なる面に拡散されて放熱されてもよい。
【0020】
この場合、電源回路を含む電源基板からの熱は金属の筐体に伝わり、筐体の側面から壁の内部に放熱され、無線LAN回路を含むメイン基板からの熱は筐体の一面から同様に筐体の側面を介して壁の内部に放熱されるとともに、メイン基板の外側を覆うヒートスプレッダを介してフロントカバーの内部空間に放熱される。
特に、電源基板からの熱が筐体の側面、すなわちメイン基板の後方から放熱され、メイン基板に伝わりにくいこと、および、メイン基板はさらにヒートスプレッダに覆われ、電子部品からの熱がヒートスプレッダを介して効果的に拡散されることから、電源基板に搭載された電源回路からの発熱を効率よく放熱するとともにメイン基板に搭載された無線LAN回路の温度上昇を最小限に抑えることができる。
【0021】
(3)
第3の発明にかかる情報通信装置は、第2の発明にかかる情報通信装置において、メイン基板とヒートスプレッダとの間、および、メイン基板と筐体との間に熱伝導率が高く非導電のサーマルパッドが挿入されてもよい。
【0022】
この場合、メイン基板からヒートスプレッダへの熱伝導、およびメイン基板から筐体への熱伝導の効率がさらに向上し、メイン基板に搭載された無線LAN回路の温度上昇をさらに低く抑えることができる。
【0023】
(4)
第4の発明にかかる情報通信装置は、第2の発明から第3の発明にかかる情報通信装置において、電源基板に搭載された電子部品と、筐体の一面の内側との間に隙間が設けられてもよい。
【0024】
この場合、電源基板の発熱のより多くが、筐体の側面に伝わるため、電源基板の発熱による筐体の一面に対向する面の温度上昇がより低く抑えられ、その結果、メイン基板に搭載された無線LAN回路の温度上昇をさらに低く抑えることができる。
【0025】
(5)
第5の発明にかかる情報通信装置は、第2の発明から第4の発明にかかる情報通信装置において、WAN接続端子はPOE(Power over Ethernet)に対応し、電源回路はWAN接続端子から供給された電力を所定の電圧に変換してネットワーク回路および無線LAN回路に供給するようにしてもよい。
【0026】
この場合、WAN接続端子がPOEに対応するWANに接続されていれば、電源回路がWAN端子から供給された電源を無線LAN回路およびネットワーク回路に必要な電源電圧に変換して供給することにより、別途AC電源配線を接続する必要がなくなる。
また、WANがPOEに対応しない場合には、AC電源配線を電源回路に接続し、情報通信装置の電源回路をAC電源に対応する電源回路とすることにより、同様に情報通信装置を稼働することができる。
【0027】
(6)
第6の発明にかかる情報通信装置は、第2の発明から第5の発明にかかる情報通信装置において、フロントカバーは、ハット形状からなり、天面と、天面から形成された第1側面と、第1側面に対向する第2側面と、ハット形状のつば部からなる、第1側面に連設された第3面および第2側面に連設された第4面とを有し、第1側面および第2側面の両外側にそれぞれ、間隙を有した状態で無線LAN用アンテナを配置した第1アンテナユニットおよび第2アンテナユニットが第3面および第4面に立設されてもよい。
【0028】
この場合、無線LAN用アンテナを配置した第1アンテナユニットおよび第2アンテナユニットがフロントカバーの第1側面および第2側面の両外側にそれぞれ、間隙を有した状態で立設しているため、無線LAN用アンテナおよびその周囲の温度がより低くなり、温度上昇による無線LANの受信感度の劣化が抑えられる。
【0029】
(7)
第7の発明にかかる情報通信装置は、第2の発明から第6の発明にかかる情報通信装置において、さらにLAN接続端子を備え、WAN接続端子は筐体の側面に固定され、LAN接続端子はフロントカバーの前面に固定されてもよい。
【0030】
この場合、WAN接続されるWAN配線を壁の中を経由してWAN接続端子に配線し、室内のパーソナルコンピュータなどのホストに接続される有線LAN配線をフロントカバーに固定されたLAN接続端子に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態の情報通信装置の外部形状を示す模式的斜視図である。
【
図2】実施形態の情報通信装置を上下方向の中心付近において水平面で切断した場合の模式的断面図である。
【
図3】
図2の模式的断面図において、熱伝導の経路を示した模式図である。
【
図4】実施形態の情報通信装置を上下方向の中心付近において水平面で切断した場合の模式的断面図の他の例である。
【
図5】実施形態の情報通信装置を上下方向の中心付近において水平面で切断した場合の模式的断面図のさらに他の例である。
【
図6】実施形態の情報通信装置の模式的ブロック図である。
【
図7】実施形態の情報通信装置を壁に埋設した一例を示す模式図である。
【
図8】特許文献3の
図1に記載の放熱構造の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0033】
[実施形態]
図1は実施形態の、情報通信装置1000の外部形状を示す模式的斜視図であり、
図2は実施形態の情報通信装置1000を上下方向の中心付近において水平面で切断した場合の模式的断面図、
図3は
図2の模式的断面図において、熱伝導の経路を示した模式図、
図4は
図2の模式的断面図の他の例、
図5は
図2の模式的断面図のさらに他の例である。また、
図6は実施形態の情報通信装置1000の模式的ブロック図である。
【0034】
(情報通信装置1000のブロック構成)
情報通信装置1000は、
図6に記載されているように、無線LAN回路500、ネットワーク回路510、および電源回路520を備える。無線LAN回路500には第1アンテナユニット410および第2アンテナユニット420が接続され、ネットワーク回路510にはLAN接続端子720およびWAN接続端子740が接続されている。電源回路520にはPOE対応のWAN接続端子740が接続されている。すなわち、
図6の電源回路520は、WAN接続端子740から供給された電源を無線LAN回路500およびネットワーク回路510に必要な電源電圧に変換して供給するPOE対応の電源回路520である。
もし、WAN接続端子740が接続するWANがPOE対応でない場合には、AC電源配線(図示せず)を接続し、情報通信装置1000の電源回路520をAC電源に対応する電源回路520とすることにより、同様に情報通信装置1000を構成することができる。
なお、
図6には図示されていないが、情報通信装置1000は、電話回線接続端子710を含んでもよい。
また、情報通信装置1000には無線LANルータモードと無線LANアクセスポイントモードとを切り換えることができるモード切替スイッチ(図示せず)を備えていてもよい。無線LANアクセスポイントモードの場合、WAN接続端子740はLANに接続される。
【0035】
(情報通信装置1000の構造)
情報通信装置1000は
図1および
図2に示すように、開放された面を有する直方体の箱形状の金属の筐体300の開放された面に対向する一面の上に、合成樹脂の成形品で形成されたフロントカバー200が係合されている。また、筐体300の開放された面は、裏面カバー350で覆われている。すなわち、筐体300とフロントカバー200と裏面カバー350とが情報通信装置1000のケースを構成している。
筐体300は、伝熱性に優れたアルミニウム等のダイキャストからなることが好ましい。また、
図1および
図2に示すように、筐体300の側面には、複数の溝が形成されている。これは、複数の溝を形成することにより、筐体300の側面の外表面積を増加させて、放熱効果を最大限に発揮させるためである。筐体300にはWAN接続端子740(図示せず)を固定するための開口部741が設けられている。
【0036】
フロントカバー200の断面形状は、ハット形状からなり、天面210と、天面210から形成された第1側面220と、第1側面220に対向する第2側面230と、ハット形状のつば部からなる、第1側面220に連設された第3面260および第2側面230に連設された第4面270とを有し、第1側面220および第2側面230の両外側にそれぞれ、間隙を有した状態で無線LAN用アンテナ400を配置した第1アンテナユニット410および第2アンテナユニット420が第3面260および第4面270に立設している。
また、フロントカバー200の天面210には、LAN接続端子720を固定するための開口部721、電話回線接続端子710を接続するための開口部711、電源スイッチ730、電源および動作モードを示すLED750が設けられている。なお、情報通信装置1000において、電話回線接続端子710が不要である場合は開口部711も不要である。
本実施の形態においては、筐体300が建物の壁内に埋設して設置され、かつフロントカバー200および無線LAN用アンテナ400が建物の室内側に突出するように設置される。そして、
図7に示すように、壁の埋設穴とフロントカバー200の第3面260および第4面270との全体を覆うように化粧カバー900が設けられる。
【0037】
図2は
図1の情報通信装置1000の上下方向中心付近を水平面で切断した断面図である。
図2に示すように、電源基板100は筐体300に固定されている。電源基板100には発熱量の大きい電源基板100の電子部品110を含む電源回路520が搭載されている。
また、裏面カバー350に対向する筐体300の面の外側には無線LAN回路500およびネットワーク回路510が搭載されたメイン基板150が配置されている。メイン基板150のフロントカバー200側にはLSI他のメイン基板150の電子部品160が搭載され、電子部品160の上には高熱伝導の金属で形成されたヒートスプレッダ180が配置されている。回路を動作した際に発熱するのは電子部品160であり、電子部品160の上にヒートスプレッダ180が設けられることによって、電子部品160の熱がメイン基板150の全体に拡散されるため、電子部品160の熱を、フロントカバー200の内部空間を通じて外部に放熱するとともに、筐体300を通じて効率よく放熱することができる。
電源基板100とメイン基板150とはコネクタ190およびコネクタ191で接続されている。また、図示はされていないが、メイン基板150と第1アンテナユニット410および第2アンテナユニット420との間もコネクタで接続されている。
【0038】
(情報通信装置1000の熱の伝導経路)
図3に
図2の模式的断面図における、熱伝導の経路を示す。
電源基板100自体および電源基板100に搭載された電子部品110で発生した熱は主として経路T1により筐体300の側面に伝わり、筐体300の側面から経路T2により壁の内部に放熱される。電子部品110で発生した熱は一部、筐体300の裏面カバー350に対向する面(以降、筐体300の前面ともいう)にも伝わる。しかし、電子部品110の熱が直接筐体300の前面に伝わると、その熱は結果的にメイン基板150にも伝わることになる。したがって、電子部品110の熱のうち直接筐体300の前面に伝わる量が少なくなるよう、電子部品110と筐体300との間には隙間を設けるようにしている。
【0039】
一方、メイン基板150およびメイン基板150の電子部品(無線LANLSI等を含む)160で発生した熱は経路T3により筐体300の一面に伝わるとともに、経路T4によりメイン基板150およびメイン基板150の電子部品160を覆うヒートスプレッダ180に伝わる。
筐体300の前面に伝わった熱はさらに金属の筐体300の前面から側面に伝わり、側面から経路T2により壁の内部に放熱される。
【0040】
一方、ヒートスプレッダ180に伝わった熱は、経路T5によりフロントカバー200の内部空間を経由し、フロントカバー200の表面から放熱されるとともに、メイン基板150を通じて筐体300に拡散される。
したがって、情報通信装置1000では電源基板100とメイン基板150からの発熱が筐体300の側面から壁内部に効率的に放熱されるとともに、メイン基板150からの発熱がヒートスプレッダ180、フロントカバー200の内部空間、フロントカバー200の表面の経路で効率的に放熱されることから、メイン基板150に搭載された無線LAN回路500の温度上昇を最小限に抑えることができる。そして、その結果、無線LAN回路500の温度上昇による受信感度の劣化を最小限に抑えることができる。
【0041】
(メイン基板150からの放熱の他の例)
図4に、情報通信装置1000の模式的断面図の他の例を示した。
図4では、メイン基板150の上にヒートスプレッダ180がなく、メイン基板150およびメイン基板150に搭載された電子部品160の熱は直接、フロントカバー200の内部空間に放熱される。
この場合、メイン基板150からフロントカバー200の内部空間への放熱効率は低下するが、メイン基板150および電源基板100からの熱は金属の筐体300から壁の中に効率よく放熱されるため、電源基板100およびメイン基板150の発熱が少ない場合は、ヒートスプレッダ180はなくてもよい。
【0042】
(メイン基板150からの放熱のさらに他の例)
図5には、情報通信装置1000の模式的断面図のさらに他の例を示した。
図5では、メイン基板150と筐体300との間、およびメイン基板150とヒートスプレッダ180との間(およびメイン基板150の電子部品160とヒートスプレッダ180との間)にサーマルパッド185が挿入されている。サーマルパッド185としては熱伝導率が高く非導電の物質が好ましく、例えば高熱伝導性シリコーンのサーマルパッド185が使用可能である。
サーマルパッド185をメイン基板150と筐体300との間、およびメイン基板150とヒートスプレッダ180との間に挿入することにより、メイン基板150から筐体300およびヒートスプレッダ180への熱伝導率が高まり、メイン基板150に搭載された無線LAN回路500の温度上昇をさらに抑えることができる。
【0043】
また、情報通信装置1000では、電源基板100は、金属の筐体300の内部に配置され、メイン基板150は筐体300の外側に配置されることから、メイン基板150に搭載されている無線LAN回路500は電源基板100に搭載されている電源回路520の発生するノイズの影響を受けにくい。
【0044】
本発明において、電源回路520が『電源回路』に相当し、ネットワーク回路510が『ネットワーク回路』に相当し、無線LAN回路500が『無線LAN回路』に相当し、WAN接続端子740が『WAN接続端子』に相当し、LAN接続端子720が『LAN接続端子』に相当し、無線LAN用アンテナ400が『無線LAN用アンテナ』に相当し、筐体300が『筐体』に相当し、フロントカバー200が『フロントカバー』に相当し、情報通信装置1000が『情報通信装置』に相当し、電源基板100が『電源基板』に相当し、メイン基板150が『メイン基板』に相当し、ヒートスプレッダ180が『ヒートスプレッダ』に相当し、サーマルパッド185が『サーマルパッド』に相当し、電源基板の電子部品110が『電源基板に搭載された電子部品』に相当し、天面210が『天面』に相当し、第1側面220が『第1側面』に相当し、第2側面230が『第2側面』に相当し、第3面260が『第3面』に相当し、第4面270が『第4面』に相当し、第1アンテナユニット410が『第1アンテナユニット』に相当し、第2アンテナユニット420が『第2アンテナユニット』に相当する。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0046】
100 電源基板
110 電源基板の電子部品
150 メイン基板
180 ヒートスプレッダ
185 サーマルパッド
200 フロントカバー
210 天面
220 第1側面
230 第2側面
260 第3面
270 第4面
300 筐体
400 無線LAN用アンテナ
410 第1アンテナユニット
420 第2アンテナユニット
500 無線LAN回路
510 ネットワーク回路
520 電源回路
720 LAN接続端子
740 WAN接続端子
1000 情報通信装置